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2019年12月13日

三菱の決断?造船再編

造船再編の波は大きく押し寄せる?


『三菱重工、長崎の主力造船所を売却 業界再編が加速』(2019/12/12 18:00日本経済新聞 電子版)


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53272000S9A211C1MM8000/



三井E&S千葉工場の売却にはじまり、今治とJMUの資本提携、そして今回は三菱(MHI)の100万トンドックである香焼工場が売却される運びとなりました。私はオイルショック手前あたりから2014年までの中手造船業を中心に大学院で研究してきましたが、今回ほど動きが激しかった時はそうそうありませんでした。


ちなみに、最も動いたのは2度の設備処理時に行われた造船業界の再編です。


香焼工場とは


造船研究をしている方は必ず一度は耳にするのが、この香焼工場です。実は、 三菱重工長崎造船所には3つの工場 があります。本工場と香焼工場、そして諫早工場です(諫早は造船とは関係ありませんので本記事の対象としません)。


本工場



本工場は江戸幕府により設立された工場で、明治維新にて三菱重工に払い下げられた歴史があります。かつて戦艦武蔵を建造したのもこの本工場で、いまもなお艦船建造の中心地として国防に大きく貢献してます。


艦艇のほか中型の客船も手掛けております。


特にDDG型護衛艦は最新のまや型とこんごう型4番艦を除き全艦建造しております。スリーダイヤの実力、恐るべきですね。


香焼工場



夢の100万トンドック です。VLCC(超大型石油タンカー)の連続建造を目的に作られた設備で、 間違いなく日本最大の造船所 といえます。


残念ながら完成からわずか数年でオイルショックが生じ、その力をフルに利用されることはありませんでした。


よもやま話ですが、超大型船建造を目的に作られたため、クレーンなどの設備もまた巨大なものでした。オイルショックでVLCCの受注が得られなくなったため中型のバルク船建造となったのですが、建造に使う鉄板が小さすぎて落下したこともあるそうです。


売却後どうなるの?


売却先としては 大島造船所 があげられているそうです。


大島造船所:バルクの大島


大島造船所ですが、名前を知らない方もおられることだと思います。こちらは、南一族が経営する造船中手企業で、工場も長崎にしかありません。しかし、 国内建造量では今治、JMUに次ぐ第3位 で、業界では知らない方はおりません。


創業がオイルショックの翌年という非常に厳しい時であったため、創業当初からコストダウンに力を入れておりました。小史が こちら に記載されておりますので、ぜひご覧ください。


この大島造船所、「 バルクの大島 」と呼ばれてます。ひたすらバルクキャリアに特化し建造しているめ、建造した船の数は1工場としてはぶっちぎりで国内1位です。設備としてはVLCC建造可能なドック1基(535m*80m)しか有しておりませんが、バルクキャリア4隻を連続生産しております。


2017年にベトナムで操業予定の造船所を計画しておりましたが、造船市況の悪化に伴い造船所は中止、設計部門のみ設立することとなりました。



海事プレス社COMASSという雑誌があり、大島造船所に関する特集が組まれていたことがあります( https://ci.nii.ac.jp/naid/40020238783 )。


売却後の三菱と大島


三菱の造船所としては、現在長崎造船所(本工場と香焼工場)、下関造船所が商船建造を担っております。なお、神戸には潜水艦建造専門の工場があります。


香焼を売却すると、長崎本工場にて艦艇、客船を建造。下関にて客船とLNG船の建造というふうに生産分担が可能です。今治との合弁会社MILNGで受注したLNG船も、香焼や下関にて基本的に建造されております。


一方の大島造船所にとっては、県内に国内最大の造船所を取得でき、より一層バルクキャリア建造の隻数を増やせることとなります。問題としては、香焼が大きすぎる事でしょうか?


三菱と大島の提携、MILNGの行方は


実は三菱は今治、名村、大島と提携関係にあります。


https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HUD_U7A610C1TJ1000/


なので、今回の売却先に大島が選ばれるのは特におかしな話ではありませんでした。ただ、 香焼は超大型船やLPG船、LNG船建造の拠点であり、MILNGはどうなるのでしょうかね。


おわりに


三菱はオイルショック後に客船やLNG船、LPG船など高付加価値船に特化する戦略を取りました。日立造船のように造船から撤退したわけでもなく、住友のようにアフラタンカーやパナマックスタンカーに特化するのとは別の戦略です。


しかし、超大型客船で2000億円以上もの損失を出し、重工本体から切り離されたのは記憶に新しいと思います。高コスト体質と政府支援の無さが、逆に低コストかつ違法ともいえる政策支援を得ている韓国に勝てないのは明白ですが、現状その打開策を行ってはおりません。


国内で中〜大型客船を建造しているのは三菱のみといって過言ではありません。客船の技術力維持のためにも、ぜひ三菱にはがんばってほしいとことです。


※本記事において使用している画像は MHI のHPより利用しております。

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