※このファンブログさんが、2025年1月22日(水)から
新規投稿等ができなくなり、
2025年4月22日(火)にサービス終了ですって。
閲覧も不可能になるそうなので……。
まあ、小説のデータ自体はいろんな予備保存をしているので、
改めて自分のホームページや小説サイトに載せる予定ではありますが。
インポートとかエクスポートとか……できるかは微妙。なにせ機械音痴なので。
とりあえず今月の22日まではこちらにも載せておきますね。
それ以降のお知らせなど、今後はまた昔の『幻灯花日誌』の方のブログを復活させるか、
ホームページ の方で更新していくと思います。
短い間でしたが、こちらのブログも読んでくださった皆様、
ありがとうございました!!
以下『眠虎の民〜ネコノタミ〜』4−9本文です。
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『眠虎の民〜ネコノタミ〜』
第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【九】
声の感じから若い男性だと判断したが、その人物は見れば見るほど、人間というよりは『神仙』と言うほうがしっくりとくる外見をしていた。
白く抜けるような髪と肌の色。
それはギンコやフーカの白色人種のものとはまた違い、どこか氷のような透明感と冷たさを感じる、性別や人種を超えた先の白さのようだった。
その両肩には一羽ずつ、鳩ほどの大きさの白い鳥が止まっていた。
その彼ら全てを覆うように、天蓋のような布の付いた大きな笠が、頭上に浮遊している。彼の周囲はそのせいか、霧や氷の粒が光を受けるように、常にキラキラと輝いている。
時代劇などで見かける、ベールのような薄い布地の付いた編笠によく似ていたが、笠と布は独立しているようで、金属製のように見える笠の部分だけが、ゆっくりと回転していた。
彼の纏う水色と白で構成された、優雅だがどこか堅苦しそうにも見える衣服は『官服』なのかもしれない。この宮内で同じような色とデザインの服をまとったネコたちを何度か見かけている。
「ただでさえマレビト登録が遅れているというのに、悠長に土産物を物色している場合で……」
その人物はそう言いながら、ツカツカと階段を早足で降りようとしたのだが、その途中で歓声が上がった。
「キャー!! 上善《ジョウゼン》様よー!!」
「こっち向いてー!!」
世界的なスターに対するファンの声援のように、土産物売り場にいた民衆から甲高いざわめきが広がる。
主に若い女性の声が多いようだが、男性からも声援が上がった。
『ジョウゼン』と呼ばれた彼は、「しまった」という表情で階段の中程で足を止めた。そして条件反射のように軽く右手を上げた。
そこにはギンコの手甲と指輪によく似た物が付けられていた。
水先案内人《ミズサキ》の印と、魔神輪《チャクラム》だ。
それとほぼ同時に「受け取ってーっ!!!!!」という、多数の女性の声と共に、何か緑色の物体が三十個以上、彼に向かって投げられた。
熱狂的なファンが芸能人やスポーツ選手に花やぬいぐるみを投げて贈る姿に似ていたが、それらは全て彼に届く前に空中で停止した。
大きさや形はまちまちだが、どうやら『感石』のようだ。
ジョウゼンはどこか申し訳なさそうに、目と口の端で微笑んだ。
そして階下の民衆に向かって会釈をすると、囁くように呟いた。
『霧《きる》』
その途端に、全ての感石は凍りつき、粉々になった。
液体窒素で凍らせたバラの花びらが砕け散るように。
『散《ちる》』
続けてそう言うと、右手を外に向けて払った。
粉微塵になった感石は全て、風に乗るようにどこかへ消え去った。
「はぁ〜ん!!!!!」
崩れ落ちるように、感石を投げた女性たちがその場に座り込んだ。
彼女たちの投げた感石の片割れも、全て手の中で粉々に崩れ落ちたようだった。
だが彼女たちの様子は、心からショックを受けて悲しんでいるというよりは、そんな状況に酔って楽しんでいるようにも見える。
「気にすんな。あれはここの恒例行事みたいなもんだ」
呆然とその様子を見つめていたスズに、肩に乗っていたダンテが言う。
「下手に受け取って気を持たせないだけ、誠実なのよ」
フーカが、どこか誇らしげに言い添える。
「ほら、あるじゃん? 子供の頃から活躍してるスポーツ選手とかさ、赤ちゃんの頃から国民に愛されてる王室の王子様とかさ。
ボクらが『しゃべるホワイト子ライオン』なら、あいつは『産まれたてのふわっふわのユキヒョウの赤ちゃん』みたいなもんなんだよ。しかもアルビノの」
ギンコが、なぜか憎々しげに説明した。
(触れなくてもパンダの赤ちゃんを動物園に観に行く人たちのような心境なんだろうか)
何か違うような気もしたが、スズはスズで納得した。
【2025年1月11日
『眠虎の民〜ネコノタミ〜』
第四章『水の国の転輪聖王(チャクラヴァルティン)』【九】了】
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