移転も残留も消えた PT報告書に両市場“共存”の大胆プラン
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/206856
世界に類を見ない歴史と文化を誇る市場の存続は、ほぼ確実だ。
市場移転問題を検証する東京都の「市場問題プロジェクトチーム(PT)」が5日、豊洲開場と築地再整備の双方の課題を併記した報告書をまとめた。
報告書は約1週間の微修正作業後、小池百合子都知事に提出される。
築地再整備は、「営業しながら」と、「別の場所に移転してから」の2案を提示。工期は3年半〜15年、工費は約800億〜1388億円と見積もる。
注目すべきは、公営市場の健全な運営を規定する「卸売市場法」の枠組みから、築地市場を外すというアイデアだ。この意図について、10回に及んだPT会議を全て傍聴したジャーナリストの池上正樹氏はこう分析する。
「PTの狙いは2つ。まず、築地再整備の工期とコスト削減には、民間の経営手法を取り入れた方がいい。そのため、参入障壁となっている法の枠組みを取り払うのがベストと考えているのでしょう。もうひとつは、希望する業者だけ豊洲市場に移り、築地市場は法的な『卸売市場』としての位置付けから解放する。豊洲市場は『IT物流センター』としての機能を強化し、築地はこれまでの市場の姿を生かして『食のテーマパーク』として存続させる考えです。会議後の囲み取材が終わり、PTの小島敏郎座長に『豊洲市場を開場しても、築地市場は潰さないんですよね』と聞くと、『まあ、そうですね』と認めました。とにかく『築地ブランド』は生かすということでしょう」
確かに小島座長は会議中、「築地は捨てない」と強く連呼していた。事実上の「築地民営化」を盛り込んだ報告書を受け、小池知事はどう判断するのか。
「これまでのPTの作成資料を見ると、小池知事の考えが随所に反映されています。例えば、報告書の『築地改修のコンセプト』には、『伝統と革新の融合』との文言が盛り込まれた。小池知事は昨年末『東京ブランドのあり方検討会』で全く同じ発言をしていました。小池知事がよく口にする『持続可能な市場』や『ワイズ・スペンディング(賢い支出)』といった考えは、開場すれば年間100億円以上の赤字が発生する豊洲市場には当てはまらない。今後、新たな市場のあり方を模索することになるでしょう」(池上正樹氏)
報告書について「大変な力作」と評価していた小池知事。“時限爆弾”の解除に一筋の光が見えてきたか。 以上。
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