2017/6/24 0:29日本経済新聞 電子版 東京都千代田区)党首の応援演説を聞く有権者ら(23日)
小池系VS自民 幕開け 過半数へ攻防、シナリオ分析
2017/6/24 0:29日本経済新聞 電子版
東京都議選(定数127)は23日告示され、9日間にわたる選挙戦の幕があがった。勝敗の分水嶺となるのは過半数の64議席。小池百合子知事は自ら率いる地域政党「都民ファーストの会」や選挙協力を結ぶ公明党などと合わせて奪取を目指す。一方の自民党は過半数阻止に向けて総力戦だ。今後の都政や国政に影響する戦いを3つのシナリオで追った。
■小池系大勝 余波は国政へ
「改革をともにする仲間と安定的な過半数を目指す」。都議選での勝利に執念を燃やす小池氏が掲げる目標だ。都民フの公認候補は50人。このほか23人を擁立した公明党や、4人が立候補する地域政党「東京・生活者ネットワーク」、都民フが推薦する無所属候補11人を合わせた88人が「仲間」にあたる。
この「小池支持勢力」で過半数を奪取し、さらに都民フが第1党になれば議会の主導権は完全に小池氏が握ることになる。敵視されてきた自民党は弱体化。小池氏が訴えてきた受動喫煙防止条例や法人2税(法人事業税、法人住民税)の引き下げなどの独自政策も実現しやすくなる。
都政運営で強力な指導力を発揮できれば、有力な「ポスト安倍」候補が見当たらない国政でも、小池氏の待望論が高まる可能性もある。小池氏本人は現時点での国政進出を否定しているが、自民党内には「都政での実績づくりは国政に進出する布石だ」との見方が絶えない。支持率が低迷する民進党など野党議員からも「小池新党」への合流論が強まることが予想される。
学校法人「加計学園」問題への対応などで逆風が吹く中で、高まる小池氏の存在感は安倍政権にとっては新たな波乱要因だ。安倍晋三首相が検討する内閣改造や衆院解散の時期にも影響を与える可能性がある。
■痛み分け 自民にも存在感
小池支持勢力で過半数を得るが、第1党は自民党——。こんな選挙結果も想定できる。小池氏の目標は達成するものの、最大会派である自民党も善戦した「痛み分け」ともいえる結果だ。自民党は前回選で59人の候補者全員が当選する歴史的勝利を収めたが、今回はそこまでの勢いはない。第1党を死守できれば「御の字」というのが自民党の本音だ。
この場合、自民党は都議会で一定の存在感を保つことができる。都議会の議長は第1党から出すのが慣例。議会対策にたけた自民党が公明党など他会派を切り崩す動きが出てくることも予想され、公明党が相対的な地位を高める場面も出てくる。小池氏が同党に政策面で配慮を強め、指導力が発揮できなければ国政への影響は限定的だ。自民党内には公明党の対応は小池氏の支持率次第との見方がある。
■自民が勝利 都政で対立激化
小池支持勢力で過半数に達しなかった場合は、小池氏の都政運営が暗礁に乗り上げる可能性が高い。豊洲市場移転だけでなく、条例案や予算案を本会議で成立させるためには他会派の協力が不可欠となり、政策面で大幅な譲歩を迫られることになる。
敵視されてきた自民党は小池氏側に反転攻勢に出るとみられ、小池氏が守勢に回る場面も増えそうだ。小池氏側と自民の対立関係が続いて都政が停滞すれば、小池氏の求心力も低下。小池氏の国政復帰説もしぼむのは避けられない。
過去の都議選結果は国政と連動してきた。日本新党が20議席を得て躍進した1993年の都議選は同年の非自民連立政権の発足の布石となった。2009年の都議選では民主党が第1党となり、直後の衆院選で民主党政権が誕生した。都議選で各党とも国政並みの選挙態勢を取るゆえんだ。
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