画像(ロシア・ロストフ州)=ロイター
ウクライナの親ロ派地域住民、交錯する歓喜と悲痛の叫び
ウクライナ情勢
日本経済新聞WEB版2022年2月23日 4:02 (2022年2月23日 4:41更新)
ロシアが21日に国家独立を承認したウクライナ東部の親ロシア派占領地域では、住民から喜びの声が聞こえた一方、「今度は戦争が起きるのか」(ルガンスク市のタチヤナさん)といった悲痛な声も聞こえた。SNS(交流サイト)や電話取材を通じて公式発表では分からない親ロ派住民の声を集めた。
親ロ派占領地域には約360万人が暮らし、 このうち約80万人がロシアの国籍を持つ。 親ロ派とウクライナ軍の戦闘拡大が伝えられており、ロシア非常事態省によると、22日朝までに女性や子供、高齢者など9万人の住民がロシアに避難した。親ロ派住民もまた紛争の被害者だ。
ロシアによる独立承認から一夜明けた22日には、SNSの「ブ・コンタクテ」上で、マケエフカ市のヤニナさんが「娘とともにこの歴史的な出来事に拍手したわ!」と書き込んだ。祝福の声が数多く寄せられていた。ロシア国営テレビは21日夜、親ロ派地域でロシアの国旗を掲げた自動車が列をなし、花火や歓声が上がる光景を放映した。
ただ、状況を冷静に見つめる人も少なくない。モスピノ市のダリヤさんは「なぜ大騒ぎをしているのか分からない。私は(親ロ派の部隊に)夫も父も弟も取られた」と書き込みをした。独立承認後、ロシア軍が親ロ派部隊とウクライナに侵攻し、多くの死亡者が出ると不安にかられる人も多い。
親ロ派やロシアはウクライナ政府軍による砲撃や破壊工作がエスカレートしていると主張しているが、住民の間では不審に思う声も少なくないようだ。「恐ろしいプロパガンダ(宣伝活動)の機械が全力で動いている」。ドネツク市に住むユリヤさんはSNSを通じてこう訴えた。
同じくドネツク市のカリーナさんは、市内の水道管がウクライナ軍の砲撃で破壊されたとの公式発表に「(親ロ派が)自分たちで壊したものを復旧させようとしている」と憤った。親ロ派地域では水道や天然ガスの供給が各地で寸断されていると伝えられている。
18日には親ロ派地域から隣り合うロシアへと住民の避難がバスや列車で始まったが、自宅に残る決断をする人も少なくない。ドネツク市のエレナさんは「ワクチン接種みたいに強制されている」と書き込んだ。エナキエボ市のマリーナさんは「なぜ、尻をたたかれて追い立てられなければいけないのか」と不満を示した。
高齢者の間では住み慣れた土地を離れることが難しいと感じ、自宅に残るという選択をした人も多いという。マケエフカ市のスベトラーナさんは電話で、年金生活者だが「だれも去ろうとしない。(自宅が)略奪されるのが怖い」と語った。(モスクワ=石川陽平)
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