AKIYAN'S SHOW

AKIYAN'S SHOW

2004.12.03
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テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: カテゴリ未分類
右大腿骨と右上腕骨を骨折した親父。

肺の水に関しては、突発性のものであり、癌の進行とはあまり関係ないとのこと。

とりあえずひと安心だ。

さらに腕に関しては手術をしない方向にした。

固定されていれば、とりあえずの生活には影響ないからだ。

問題は足の方。

折れた部分はやはり癌に侵されていた部分。

長いプレートを埋め込むことになる。

一番ネックになっているのが麻酔だ。

レントゲンを撮った際、脊髄にも癌が転移しているかもしれないという事が判明した。

これでは部分麻酔での手術は行えない。

すると選択肢は全身麻酔のみ。

しかも肺に水が溜まっている。

全身麻酔は、麻酔を吸い込むことで利かせるもの。

癌とは関係ないとはいえ水が溜まっているということは、麻酔の影響で合併症が起こりやすいという。


手術をするべきか…、しないべきか…。

選択はすべて俺に任された。

お袋とも話し合った。姉とも話し合った。

かなり悩んだ。

そしてこちらで決めた判断は……


「手術をしない」


命のリスクを考えた場合、まだ動けないだけの方がマシ、と考えた。

母も親父も納得してくれた。


担当の整形外科医に手術をしない旨を伝える。

整形外科の先生もずいぶんと悩んでくれたようだ。

翌日、先生から電話が入る。会ってもう一度話したいとのこと。

とはいってももう手術をしないと決めたので、よほどのことがない限り変わらないが、

話を聞くこと。

今度は整形外科医のほかに、麻酔科の先生が同席。

麻酔の事で悩み、そして決断したので、麻酔科の偉い先生が話をしたいとの事だった。

麻酔科の先生が考え抜いて出した案は、

   足を吊ったままで一生を過ごすのはかわいそう。

   全身麻酔の他に何か別案がないか考えた。

   幸い脊髄の癌は骨の部分という可能性があり、脊髄そのものは安心だと想定。

   骨を避けるような形で、髪の毛ほどの細い注射針で脊髄に麻酔を打つ。

   つまり部分麻酔が可能かもしれない。

   念のため明日細かい検査をしてみる。

   それからでも決めるのは遅くない、との事。


それならばぜひ手術をしてほしいとお願いした。

肺への影響がなく、合併症の心配がない、つまりただの骨折の手術ということなら、ぜひと。

検査の結果、脊髄には癌は転移していないとの事。



手術は無事に終わった。体への影響もなかった。

これで先が明るくなった。

車椅子に乗れば、散歩もできる、家にも帰れる、多少の自由が利くかもしれない。



しかし現実はそんなに甘くはなかった。

足を吊ったままの生活というのは回避されたものの、動けない生活は変わらなかった。

足がどうのこうのというよりも、癌の進行の方が早かったのである。

手術は成功したものの、痛みは消えない。

別の個所、別の個所がどんどん痛くなっていく。

痛くて動けないのだ。


経つこと1ヶ月。

その頃からお袋が病院に寝泊りするようになった。

また先生から、帰宅の許可が下りる。

2~3泊程度だったら、何度でもしていいとのことだ。

つまり「もうお父さんの好きなことをさせてあげてください」ということらしい。

結局帰ったのは、許可が下りてすぐの1度だけ。

あとはずっと病院で、お袋との二人三脚の生活。


月1回から二週間に1回、そして週1回。

時がたてばたつほど、病院へ行く回数が増える。


亡くなる1ヶ月前くらいの時、

あれだけ食べるのが大好きだった親父も、

ご飯ひと口だけ、味噌汁少しだけ、カロリーメイトのドリンク少しだけ、といった具合だった。

見る見るうちにやせていく。

その姿を見た姉が病室で泣いてしまった。

今まで涙はタブーだったのに…

すると親父は姉に向かって「この馬鹿が!泣くんじゃねぇ」って。

それはいつもの親父だった。うれしかった。


亡くなる1週間前にはもう、ほとんどご飯を口にすることはなかった。

かっぷくの良かった親父の面影は、もうない。

母いわく水だけになってしまったらしい。

前までは左腕は動かせていたのに、それもやがて動かなくなっていた。

「ハイファイブ」じゃないけれど、親父と俺との挨拶があったのに、それももうできなくなっていた。


そして亡くなる3日前、みんなでお見舞いに行った。うちの家族も、姉の家族もみんなで。

そのときもう親父はしゃべれなかった。

でも耳は聞こえている。こっちの言うことはわかっているらしい。

話し掛けて意味がわかれば、瞬きで合図を送ってくれた。

しゃべれないけれど、目も見えているかわからないけれど、一生懸命話し掛けた。

このとき初めて涙が出た。

何でかわからないけれど、涙が止まらなかった。

悔しかったのかなぁ。


そして11月23日の朝、お袋から電話が入る。

もう危篤状態に入ったとのこと。

すぐに家を出たが、亡くなった知らせを聞いたのは中央線の電車の中だった。

姉も間に合わなかった。

でもいいんだ。お袋がそばにいたから。親父も安心したと思う。



お通夜・告別式併せて360名の方々が来てくれた。

会社を経営していたこともあるが、町内会長だったこともある。

ホントに人が好きだったんだなぁ。まだまだかなわないや。


でももう安心してください。お袋は俺に任せて。

本当に今までありがとうね。親父殿。





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Last updated  2004.12.04 18:16:30
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Comments

kakun9016 @ Re:ウィ~ッス!(02/10) こんにちは! 久しぶりにやってきました …
さっちょん9761 @ Re:ウィ~ッス!(02/10) お久しぶり~!! 元気そうで良かった~…
bittersweet @ Re:ウィ~ッス!(02/10) しばらく書かないと、モチベーションって…

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