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2010年09月14日
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「ことばの力 平和の力」小森陽一 かもがわ出版
小森陽一は深読みが得意な文学者らしい。そして何より饒舌である。その2点を抑えておかないと、小森陽一の講演録はついていけないところがあるかもしれない。

彼の講演を聞いたとき、そのあまりもの早口と、その語りがぐるりぐるりと回って元のところに収まるさまと、ひとつのエピソードと別のエピソードを繋げる知識の豊富さと
その鋭さ。に感心したり、あきれたりした。それを理解しながら読んだほうがいい。つまり彼の語りのリズムを理解したほうがいいのだと思う。

非常に勉強になったのだが、私も小森陽一に習い「ぐるりぐるりと回って」(私のいつもの本性だとも言える)本筋とは関係のないところを紹介します。


 (ロンドンの夏目漱石が友人の正岡子規を慰める為に送った私信「倫敦消息」にこのような記述がある)「露西亜と日本は争わんとして争わんとしつつある。シナは天子モ蒙塵の辱めを受けつつある。英国はトランスヴハールの金剛石を掘り出して軍事費の穴を填めんとしつつある。この多事なる世界は日と無く夜となく回転しつつ、波瀾を生じつつある間に我輩のすむ小天地にも小回転と小波瀾があって、わが下宿の主人公はその甚大なる身体を賭してかの小冠者差配と雌雄を決せんとしつつある。しかして我輩は子規の病気を慰めんがためにこの日記を書きつつある。」
 ロシアと日本が一触即発の危機にある中、日本は日清戦争に勝ったものの、しかし三国干渉によって清国を支配できませんでした。清国はロシアとドイツとフランスに租界を支配されて欧米列強に徹底して辱められていました。全世界に植民地をもった「偉大な大英帝国」あまりにも軍事費がかさみ、国家財政が赤字になり、トランスヴァール共和国(現南アフリカ共和国)で金鉱が発見されたので、それを分捕るために国際的孤立が避けられない戦争(南ア戦争)を起こそうとしていました。そういう「多事なる世界は日と無く夜と無く回転しつつ」つまり大きな世界が回転していて、それが「波瀾を生じつつある」と書いているのです。
 これは理系の発想です。なぜ地球上に波が立っているのか、それは地球が回転しているからです。大きな波の打ち寄せ方というのは、満潮と干潮があるように、地球の自転と月の距離との関係で引力によって決まってきます。そうして水面が常に動いているから波が起こるわけです。同時に波は風でも起きるのですが、地球上の大きな風がなぜ起きるのかというと、地球が自転しているから大気がその反対方向に動き、偏西風が吹き付けるからです。夏目金之助は建築家になりたかったくらいですから、理系の発想をしたのでしょう。
 このおおきな地球の規模の回転と共に、自分の住んでいる小天地にも「小回転」と「小波瀾」が起きている。ここが夏目漱石的発想の一番大事なところだと思います。自分の身の回りのどんな小さなことでも、元をたどっていけば、世界情勢の中から必然的に生み出されている事態だと、そういうふうに認識しようという発想です。
 大回転の中の小回転というのは、その規模にもかかわらずどんな小回転も大回転も同じ構造を持っているのです。なに?その話、という顔をされていますが(笑)、実験をしてみると、一発で分かります。コーヒーを飲むとき、カップの中でコーヒーをおおきくすばやくかき混ぜてください。その渦の真ん中ではなく、脇のほうにミルクをちょこっと落としてみます。そのミルクはみごとに小さな渦巻き運動をします。回転運動です。どこを取っても、どんな部分を取っても渦巻き運動になります。
 渦巻き運動がなぜ起きるのかというと、<矛盾>があるからです。回転運動というのは、ある一点にはたらく力が反対方向につりあったときに起こります。(略)


その後漱石の「小回転」は大家の夜逃げに関係していて、それは英国の中産階級の没落に関係して、それは…という解説に移っていくのですが、それはともかく私は早速「実験」をしてみました。

15小回転と大回転.JPG
実験というのは理論とおりうまくはいかないものです。綺麗ではありませんが、しかし、それでもカップに落としたミルクは回転しました。

自分の身の回りのどんな小さなことでも、元をたどっていけば、世界情勢の中から必然的に生み出されている事態なんだと改めて思った次第です。





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最終更新日  2010年09月14日 10時24分51秒
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