ーーー 記事 ーーー
科学的根拠に基づくがん予防
驚異的な効果の“5つの習慣”とは?
最新の医学研究からわかった予防法は意外にも……
みなさんに問題です。
問)がん予防法を徹底すれば、どれくらいがんのリスクを下げられるでしょう?
実は、 生活習慣を見直すだけで、がんのリスクは驚くほど下がるのです。
ぜひ、本文を読んで確かめてみてください。答えは記事の最後にあります。
前回、日本人のがんの原因として、どんな要素がどれくらいを占めているかを住民調査のデータなどから推計した国立がん研究センターの研究を紹介しました(Ann Oncol. 2012 May;23(5):1362-9.)。
それによると、 まず「喫煙」が大きく、男性ではがん罹患の29.7%、がん死亡の34.4%、女性は、がん罹患の5.0%、がん死亡の6.2%を占めていました。
また、「感染」も大きく、男性ではがん罹患の22.8%、がん死亡の23.2%、女性ではがん罹患の17.5%、がん死亡の19.4%と推計されています。
三番目に大きいのが「過度の飲酒」で、男性ではがん罹患の9%、がん死亡の8.6%、女性はがん罹患、がん死亡とも2.5%が、過度の飲酒に起因すると考えられています。
最先端の研究からわかった科学的な予防法は意外にも…
つまり、これらの要素をできるだけ避けることで、がんを予防することができるのです。実際に、これらの研究などをもとにした、具体的ながん予防法が提唱されています。どんなものか、国立がん研究センターが作成したパンフレットから抜粋してご紹介しましょう(「日本人のためのがん予防法」平成27年2月)。
<喫煙> たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける
<飲酒> 飲むなら、節度のある飲酒をする
<食事> 偏らずバランスよくとる
<身体活動> 日常生活を活動的に
<体形> 適正な範囲内に
<感染> 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。機会があればピロリ菌感染検査を
いかがでしょうか。あまりにも当たり前のことばかりで、拍子抜けした人が多いのではないでしょうか。ですが、これが現時点で、第一線の医学研究から導き出された科学的ながん予防法なのです。
まだまだ多い日本人の塩分摂取量
<喫煙>の害については言うまでもないでしょう。タバコは肺がんだけでなく、あらゆるがんのリスクを上げます。また、がんだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高めます。ですから、健康のためにタバコは是非ともやめるべきなのです。この予防法でも「タバコを吸っている人は禁煙をしましょう。吸わない人は他人のたばこの煙をできるだけ避けましょう」という目標が設定されています。
<飲酒>については、「飲む場合はアルコール換算で1日あたり約23g程度まで」とされています。これは、日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル3分の1程度に相当します。これぐらいの適度の量の飲酒なら心血管疾患のリスクを下げるとされていますが、 アルコール摂取量に比例してがんのリスクも高くなります。
ですから、呑兵衛はお酒を控え、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないことが大切です。
<食事>では 、「塩蔵食品、食塩の摂取は最小限に」
することが強調されています。なぜなら「いくら」「塩辛」「練うに」「漬物」「塩魚」といった、塩分濃度の高いものをよく食べる人ほど、 胃がんのリスクが高くなる
という研究結果が出ているからです。このパンフレットで設定されている1日当たりの食塩摂取量の目標値は、男性が9g未満、女性が7.5g未満で、高塩分食品は週に1回未満とされています。2015年の20歳以上の日本人の1日当たりの食塩摂取量の平均値は男性11.0g、女性9.2g(平成27年「国民健康・栄養調査」)ですから、まだまだ多いと言えるでしょう。
熱いもの、ハム・ソーセージ、赤身肉に注意!
食塩以外では、「野菜や果物不足にならない」「飲食物を熱い状態でとらない」とされています。熱いものを食べると、食道がんや口腔・咽頭がんのリスクが上がります。また、ハム、ソーセージなどの加工肉や、牛、豚などの赤身肉は大腸がんのリスクを上げる可能性があります。ですから、焼肉やステーキが大好きという人は、食べる頻度を控えたほうがいいかもしれません。
熱々の飲み物やステーキ、焼肉はおいしいけれど…
「太り過ぎ」だけでなく「やせ過ぎ」もがんのリスクを上げる
<身体活動>では、「たとえば、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分程度行いましょう」とされています。 身体活動は、大腸(結腸)がんのリスクを下げることが、「ほぼ確実」と評価されています。
それだけでなく、1日8000歩以上歩けば、高血圧、糖尿病、がん、認知症、うつ病などを予防できるとする研究もあります。
無理に1万歩以上歩いたり、激しい運動をやり過ぎると逆効果になりかねませんが、適度によく体を動かすことで、がんだけでなく、多くの病気予防になるのです。
<体形>は、「体重kg÷身長mの2乗」で計算される体格指数(BMI、標準は22)が、中高年男性は21~27、中高年女性は21~25の範囲内になるよう体重を管理することが目標とされています。
とくに女性は、閉経後に太っていると乳がんのリスクを上げることが「確実」と評価されている
ので要注意です。また、 大腸がん、肝がんのリスクを上げることも「ほぼ確実」とされています。
ただし、過度なダイエットは禁物です。BMIが21未満のやせだと、がんのリスクが上がることも示唆されているからです。一方、BMIが30以上だと明らかにリスクが上がりますが、これほど太っている人は、日本人では20人に1人もいません。ですから体形に関しては「太り過ぎ」だけでなく、「やせ過ぎ」にも注意したほうがいいのです。
5つの生活習慣を見直せば男性はがんのリスクが半分近くに
<感染>については、前回も解説したとおり、B型およびC型の肝炎ウイルス(肝がん)やヘリコバクター・ピロリ(胃がん)などが、リスクを上げる
ことがわかっています。これらの感染の有無について一度は検査を行って、感染していたら専門医に相談をして、適切な対応を取ることが大切だと言えるでしょう。
これらのうち、<感染>をのぞく5つの項目(喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形)は、日頃の生活習慣に関わることです。もう一度ここでおさらいしてみましょう。
(1)<喫煙> たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける
(2)<飲酒> 飲むなら、節度のある飲酒をする
(3)<食事> 偏らずバランスよくとる
(4)<身体活動> 日常生活を活動的に
(5)<体形> 適正な範囲内に
これらの生活習慣を実践することで、どれくらいがんのリスクが下がるかも推計されています(国立がん研究センターがん対策情報センターパンフレット「科学的根拠に基づくがん予防」2016年7月第1版第3刷)。
それによると、
5つのうち2つ実践すると男女とも14%、3つ実践すると男性28%、女性27%、4つ実践すると男性39%、女性32%、5つ実践すると男性43%、女性37%リスクが低下すると推計されている
のです。これに感染対策が進めば、もっとリスクは減ることになるでしょう。
日本人のがん予防法を見て、拍子抜けした人も多かったと思いますが、実はこれぐらい効果の大きなものなのです。しかも、多くの公費が費やされているがん検診と違って、これらの予防法は自分でできることばかりで、お金はほとんどかかりません。タバコをやめれば、支出の節約にもつながります
がん予防はあらゆる病気予防につながる「究極の健康法」
さらには、 がん予防法は高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、うつ病、認知症等々、様々な病気予防にも通じるものなのです
。まさに「いいことづくめ」で、もしかしたら、「究極の健康法」と言えるかもしれないのです。
実際、むかしに比べ、タバコを吸う人も、塩分摂取量も減りました。輸血や血液製剤の感染対策も進んでいます。さらに、健康ブームで食事に気を使い、意識的に運動する人が増えました。そうしたことが功を奏して、日本人のがんは減っているのです。
「え、がんが減っている? ウソつけ!」と思った人もいることでしょう。確かに、おっしゃる通り、罹患者の数だけ見れば、日本人のがんは増えています。でも、見方を変えれば、実は「日本人のがんは減っている」と言えるのです。
次回、それについて解説したいと思います。それでは最後に、 冒頭の問題の答えはこちらです。
問)がん予防法を徹底すれば、どれくらいがんのリスクを下げられるでしょう?
答)最大で、男性43%、女性37%も低くなると推計されています。
鳥集 徹
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