本の虫の読書ノート

本の虫の読書ノート

2023.05.17
XML
カテゴリ: ミステリー

無駄な描写がない読みやすい文章のうえ、人間心理を深く描いています。



初めて読む作家さんで、読み始めた時「うまいな~」と思いましたら、
京都府立大学で文学部文学科で「国文学・中国文学」を専攻した方で、
現在高校で国語教師をしているそうだから、そうか、と納得しました。


一見単純そうな筆運びなんですが~、どんどん違う方へと展開します。
そして、最後のどんでん返しに、「えっ?」と途方にくれました。

粗筋は…

10年前父親を殺され、母親も失踪、親戚に別々に引き取られた姉妹。
高校を卒業後、二人は親戚の家を出て、同じ街に住みながら、
安いファミリーレストランで年に数回会うだけだった。

二人とも派遣社員で待遇の悪い愚痴を言ったりするだけで、
お互いの深い暮らしには触れなかった。

姉は美桜(みお)、妹は妃奈(ひな)という名前だった。

妃奈は綺麗で優しく、美桜は歯並びが悪いことで劣等感の塊だった。
美桜は母方の祖母に引き取られたが、治療費は出してくれなかった。

妹の妃奈は保険外交員として働いていたが、派遣だから給与は安かった。
姉の美桜にしても大学の事務員だけど、やはり派遣だから同じようなもの。

二人ともいつ派遣を切られるか~びくびくしながら暮らしていた。

そんなある日、警察から妹が殺されたことを知らされた。
押しかける報道陣、美桜は父親が殺された時のことを想いだす。

「人を殺してみたかった…」犯人の高校生が言った言葉。

お父さんは、誰でもよかっただけで、殺されたの?美桜の心の底に潜む
激しい怒り、苦しさ、歯並びだって…父親が殺されて貧しくなったから。


そして、保険外交員だった妃奈にも「生前保険金殺人」の疑いがかけられる。

歯並びが悪いから、と中学生の頃から笑われていじめられていた美桜。
美貌の妹を羨ましいと思う気持ちはあったが、妹の潔白は信じていた。


すごくスピード感があって、ぐいぐい引っ張られるように読みました。

初めに無駄のない文章と書きましたが、もう少し無駄もあった方がいいかな?
そんな物足りなさも感じた「レモンと殺人鬼」でしたが、レモンの意味は?
と疑問に思う方は、ぜひ読んでみてください。

人の心に巣くう劣等感や優越感…悪気がない言葉にも人を傷つけること、
「いじめ」が多発する今の時代の教師だからこそ書いたのでしょうか?
そんな素朴な疑問も感じた作品でした。











お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023.05.17 05:42:55
コメント(0) | コメントを書く
[ミステリー] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Profile

蒼い芥子

蒼い芥子

Freepage List


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: