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亀梨和也さん主演連続ドラマ原作・染井為人さんの「正体」を読みました。ドラマは見ていないのですが、たまたま本屋さんにあったのが目に留まりました。正体 (光文社文庫) [ 染井為人 ]読み終わった時涙が出て、親しい人を亡くしたような気持になりました。2歳の幼児とその両親の一家3人を殺し死刑判決を受けた少年が脱獄した。彼は転々と居場所を変えて、職を変えて、名前を変えて生き延びていた。殺された夫の母親が同居していたが、押し入れに隠れた彼女だけ助かった。一時娘の所に身を寄せていたが、グループホームに入所して暮らしていた。彼女は認知症と思われ、物忘れが多く、事件の記憶をなくしていた。逃亡中の少年は、中々見つからず、様々な場所で潜伏生活が続いていた。発見されそうになると…上手に逃げ切り、また違う場所へと逃亡した。逃亡先で一緒に働いたことのある人々は、皆一様にいい人だった、という。彼が殺人犯だとは到底思えないし、思いやりのある優しい人だったとも言った。次第に少年が何故そんな惨殺な事件を起こしたのか?人々は疑問を持ち出した。工事現場、スキー場の旅館、新興宗教の説教会、グループホーム等で働く少年、誰もが信じられない思いであったが…一人の弁護士が彼を助けようと立ち上がる。それぞれの職場、きちんとした履歴書の必要のない劣悪の条件の職場でも文句を言わず働く少年は、何故か分厚い法律書を持ち、人々の窮地を救うのだった。転々と職場を変えて、犯人に似ていると疑われ、発見されそうになると逃げる。まるで昔あったアメリカのテレビドラマ「逃亡者」を見ているようでした。無罪なのに有罪、それも死刑判決を受けた少年の冤罪事件を扱った作品です。「無実」を訴える少年、警察の在り方、最後の悲しい結末に涙を誘います。正体 (光文社文庫) [ 染井為人 ]染井為人さん:1983年千葉県生まれ、芸能プロダクションにで、マネジャーや舞台のプロディーサーを務める。2017年「悪い夏」で横溝正史ミステリー賞受賞デビュー。悪い夏 (角川文庫) [ 染井 為人 ]海神 (光文社文庫) [ 染井為人 ]正義の申し子 (角川文庫) [ 染井 為人 ]
2024.05.17
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映画「ドラゴン・タトゥー」のハリゥッド版DVDを見たら、原作も読みたくなりました。ドラゴン・タトゥーの女 【DVD】図書館で映画の原作「ミレニアム1、上・下」を借りてきて読み終わりました。殆ど映画と同じ内容ですが、翻訳物特有の難解さで中々読み進めませんでした。何度も後戻りしながらも読んでいるうち、映画を見ていたから理解できたかな?背中一面にドラゴンの刺青、それを取り囲むような小さな刺青をしていて、顔や身体にピアスをいくつもしている小柄なリスベット・サランデル。彼女はフリーの調査員で、何故か弁護士の後見人がついています。無表情で黒づくめ、殆んど笑わないドラゴン・タトゥ―の女・リスベット。映画を見ていて彼女に惹かれ、彼女の人生に何があったか?知りたくなります。それで、今は2作目「ミレニアム2、上・下」を読んでいるところです。この2作目でリスベットの過去が暴かれて、痛みと共に怒りも覚えました。作者のスティーブ・ラーソンは、この「ミレニアム・3部作」を書いて亡くなりました。スエーデンでもベストセラーとなり、今では色んな国々の読者が増えているそうです。我が家の小さな畑では、アスパラガスがぽつん、ぽつんと顔出しています。アスパラをサランラップに包んで、電子レンジでチンしてサラダで食べました。ほんの飾り程度だけど、自分で作った野菜を食べる愉しみを味わっています。晴耕雨読…晴れたら庭仕事、雨の日は読書して、「ミステリー」は疲れ治し、やっと北国の春の喜びを嚙みしめることができるようになりました。
2024.05.03
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山本文緒さんの「ブルーもしくはブルー」を読みました。1996年初版の大ベストラーで、2003年にドラマ化されています。あの人と結婚していたら…と、ふと過去をふり帰り後悔とも言えない思い、どんな人生になったのかな~?そんな思いに駆られたことありませんか?高収入で見てくれもいい男性を選んだ佐々木蒼子は、幸せと程遠い暮らしだった。こんなはずではなかった~、冷たい夫に虚しい気持ちを抱きながら愛人を持つ蒼子。ある日、その愛人と旅行に行った帰り、気まぐれをおこして一人博多に寄る。そこで、偶然街中でかっての恋人河見の幸せそうな姿を見かけ驚いてしまう。一緒にいた女性は、自分とうり二つの女性だった。好奇心を抑えきれず、二人の後をつける蒼子だったが、その自分そっくりの女性も同じ蒼子という名前だった。ブルーもしくはブルー (角川文庫) [ 山本 文緒 ]山本文緒さんは、2001年に「プラナリア」で直木賞受賞しています。
2024.04.13
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伏尾美紀さんの「北緯43度のコールドケース」を読みました。第76回江戸川乱歩賞受賞作で、札幌が舞台の幼児誘拐事件です。北緯43度のコールドケース [ 伏尾 美紀 ]この作品、新刊で出た時にすぐ読みたいと思って図書館に予約したのですが、あまりにも順番が遅いので中止、もう文庫本になっていたので購入しました。3歳の女の子が自宅の庭から姿を消して、何者かに連れ去られてしまった。2日後身代金の要求があり、受け渡しの場所は夕刻の札幌駅に指定された。しかし、犯人は逃げる途中で電車に引きずられ死亡、誘拐された幼児は不明、未解決事件となって月日が経ってしまったが、5年後8歳の死体で発見された。宮部みゆきさんが「新人離れしている」というコメントを添えていますが、すいすい読み進めないのが難点といおうか~事件を追いながら、先に進まない。博士号を持った異色の刑事・沢村依理子が何故刑事になったか~?という面と、警察という男社会の組織の中で女刑事としてどう向き合ったらいいか?という悩む姿も盛り込んでいるから、中々事件の核心までたどり着けないもどかしさ。そして、人として老いていくにつれ家族に頼らないと生きていけない現実があり、認知症になったら、介護されるようになったら…等身大の悩みや苦しみを味わう。女刑事が「結婚だけが~」という力みはないけれど、やはり女が働くということに視点を当てて生きずらさ、苦しさを織り込んで描いたミステリー作品だと思った。筋を追うだけで一気に読んでしまったが、もう一度ゆっくり読みたい作品です。(写真・札幌郊外)北緯43度のコールドケース [ 伏尾 美紀 ]
2024.04.04
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伊勢谷武さんの「アマテラスの暗号」を読みました。日本とイスラエルの古代史をテーマにしたミステリーです。詳細は:アマテラスの暗号(上) (宝島社文庫) [ 伊勢谷 武 ] アマテラスの暗号(下) (宝島社文庫) [ 伊勢谷 武 ]昔から「日本人はどこから来たか?」に興味があって様々な本を読みました。その中で「日本人とユダヤ人同祖」説に惹かれて、あれこれ読んだものです。ユダヤ人、というのは今のユダヤ人を指すのではなくて、「失われたイスラエル十支族」のことを言います。紀元前722年(又は721年)北イスラエルはアッシリア帝国に征服され、ほとんどの人々はアッシリアに強制移住させられました。イスラエル人の父祖にヤコブという人がいて、ヤコブは後に自分の名前をイスラエルと改め、彼の子孫がイスラエル民族と呼ばれるようになったのです。彼には12人の息子がいて、その子孫がそれぞれ「イスラエル十二支族」を形成。この十二支族が「イスラエル人」と呼ばれる人々で、カナンで暮していました。やがてイスラエル人は、紀元前10世紀なってソロモン王のもとで大いに繁栄、しかしソロモン王の死後、王朝は南北に分裂、二つの国になってしまいました。十二支族は「北王国イスラエル」と「南王国ユダ」に分かれてしまいます。北王国は「サマリヤ」とも呼ばれ、南王国が「ユダヤ」とも呼ばれました。そして、アッシリアに連れ去れた「北王国イスラエル」は解放されることなく、いずこかへ消えてしまったという歴史の謎が残されていました。イスラエル人が日本へ来ると不思議な懐かしさを覚えるそうです。日本人が説明できない風習、彼らには意味が理解されるとか。多くの神社の形式、祇園祭りとか諏訪神社の祭りなどに古代イスラエルとの類似、日本書紀にも旧約聖書に似た出来事があり、古代の日本に十支族がたどり着いて、当時そこへ住んでいた人たちと混血して、今の日本人となったのではないのか?と、多少荒っぽいですけど巷で言われている「日本人、ユダヤ人同祖」論です。粗筋~ニューヨークで暮す賢司・リチャーデイーは、日本人の父とはイタリア人の母と離婚したせいで、40年以上会っていなかった。その父からニューヨークで賢司に会いたいと手紙をもらっていたのだが、会う予定の日に殺されたと、ニューヨーク警察から連絡が入った。父は籠(この)神社の第八十二代宮司をしていた海部直彦といい、次男だったからアメリカに留学できて、そこで母と会い結婚。しかし、長男が早くに亡くなってしまって籠神社を継ぐことになった。母は敬虔なキリスト教徒、宗教が邪魔して離婚となったと聞いていた。父の死を知って、イタリアに里帰りしていた母も慌てて帰って来た。そして、「あなたのお父さんは、日本のタブーのために殺された」と青ざめた。賢司は友人たちとともに真実を知りたいと、日本へ行くことを決意した。題名の「アマテラスの暗号」とどんな関係があるの?と思うかな?それは読んでのお楽しみ~と言いたいので、触れませんでした。翻訳物みたいで言い回しが難しく、テンポが速いので何とか読めました。十支族が古代日本との繋がりがあるのでは?という知識があったので、何とか読みこなせた~という面もあり、皇室の謎が暴露される作品です。これは小説だから書けた「古代イスラエル人が日本人になった」ということで、いろんな本も出てますが、これが事実ならすごい問題がはらんでいます。宮内庁が古代天皇の陵墓を調査させないのも意外とこれが事実だったりして、と考えてしまいますが、知らない方がいいのかな?とも思いました。2020年10月に出版された作品の文庫化したものです。いろんな本を読みましたが、もう売っていないだろうと思っていたら、検索すると中古でありましたから、興味のある方は是非読んで下さい。【中古】 聖書に隠された日本・ユダヤ封印の古代史 失われた10部族の謎 Natura‐eye Mysteria/マーヴィン・トケイヤー(著者),久保有政(訳者)【中古】 大和民族はユダヤ人だった イスラエルの失われた十部族 たまの新書/ヨセフアイデルバーグ(著者),中川一夫(訳者)【中古】 驚くほど似ている日本人とユダヤ人 / エリ コーヘン, 青木 偉作 / KADOKAWA(中経出版) [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】
2024.03.13
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昭和30年代が舞台のサスペンスで、時代背景が古いですが面白かったです。名門私立女子校で英語教師をしていた篠田十希子は、幸せの絶頂にいました。同じ学校の英語教師の同僚と婚約して、結婚まであと少しというとき、同窓会に行って来ると言っていた母親が突然亡くなったと知らされます。商社の年下の妻子ある男性と心中したというのです。夫を戦争で亡くし、一人娘を抱えて友人が経営する料亭で必死に働きながら、十希子を大学まで行かせてくれて、娘の結婚を何より喜んでいたのです。十希子には、母が心中するなんて信じられませんでした。夜の塩【電子書籍】[ 山口恵以子 ]そして、教師としての職を失い、結婚も相手の親の反対で破談になりました。真相を確かめたくて、母と同じお店の仲居として働くことを決意します。まるで松本清張の小説を読んでいるような錯覚を覚えました。昭和という時代背景、強く逞しく世渡りしていく女性の姿に息もつかず読んでしまいました。女は強い方がいい、読み終わったあとの感想でした。昭和時代を生きてきたので時代背景がすんなり理解できましたが、若い人にはチンプンカンプンの描写もあるかもしれませんね。食堂のおばちゃん (ハルキ文庫) [ 山口恵以子 ]山口恵以子さんの小説は初めて読みました。「食堂のおばちゃん」という作品は知っていましたが、同じ作家さんとは知りませんでした。婚活食堂 1 (PHP文芸文庫) [ 山口 恵以子 ]シリーズもありますね。
2024.01.31
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今、同性同士の恋愛やら結婚が社会問題にされているけれど、恋愛とも違う…憧れから同じ人物になりたいと願望する青年。不可解な思いで読み進み、最後は理解不能でした。一人の青年に対する見方が人によって随分と違い、どの部分が本当の姿なのか?わかりませんでした。2度読みなおしましたけれど~嫌な思いが残りました。初めて会う人 [ くわがき あゆ ]他にはこんな作品もあります。焼けた釘 [ くわがき あゆ ]私の一押し~!師走になると、毎年買っている「切れ子(たらこ)」、形が崩れたり、切れたりしたタラコですけど、味は変わらず沢山食べられるから重宝しています。熱々の白いご飯にのせて食べるのが一番美味しいけれど、たらこスパゲティもいけます。暮れとお正月の楽しみです。【100円OFFクーポンあり】【送料無料】虎杖浜たらこ切れ子 500gX2個パック【お中元】【お歳暮】【ギフト】【たらこ】【タラコ】価格:3,980円(税込、送料別) (2023/12/17時点)
2023.12.21
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図書館で予約していた「越境刑事」、やっと順番が来ました。県警のアマゾネスと呼ばれる千葉県警の高頭冴子の活躍するシリーズ2作目、中山七里さんの作品は、奇想天外な所もあるけれど、これも面白かった。留学生が相次いで行方不明の噂を耳にした冴子。それとなく探っているうち、中国国籍の新疆ウイグル自治区出身のカーリーの死体が発見された。そしてカーリーの雇い主カーデルも殺害された。冴子に保護を求めていたカーリーの同僚のレイハンが姿を消した。冴子は事件の背景には中国公安部が絡んでいると掴む。冴子はレイハンを探しに部下と二人中国へ乗り込むことにした。ウイグル民族が置かれた状況をあまり知らなかったことなど、読んでいて憤りを感じ、また胸に迫るものがありました。越境刑事 [ 中山 七里 ]
2023.10.20
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家族の愛と闇に迫る傑作ミステリーだそうですが…悲しすぎる物語でした。クリスマスイブの夜、ホームレスの女性が遺体で発見された。年齢は50代と推定された。何故、彼女はホームレスになったのだろうか?風変わりな刑事三ツ矢と女性刑事・田所コンビが謎を追う。風変わりな刑事の三ツ矢、と何度も同じような描写が入る、その辺がかったるしくて、イラつきながら読んだものです。彼女が最後に見たものは [ まさき としか ]去年、衣類の断捨離をし過ぎて、秋に着る服が少ないことに気がついた。まったくドジである。断捨離もなかなか腰があがらない時もあるけれど、つい処分するスッキリ感にハマってしまい、後で後悔してしまう。シニア向けの服って、いかにもシニアというのが多くて欲しい服がない。もちろん、高い高級品はそれなりにお洒落だし、品がある。でも、年金生活では買えないことが多い。手軽な価格でお洒落な服を見つけるのは難しい。
2023.09.04
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まさきとしかさんは、親と子、家庭の間に生じる軋みに焦点を当てて、ミステリーでも家庭をテーマに書いている札幌在住の作家です。(解説より)この作品は会話が多くて、読後感は「すっきり」しなかったのですが、人の優しさが人を救うという温かな余韻が残る不思議な作品でした。クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルで女性の遺体が発見された。乱暴されたような着衣の乱れがあったが、顔は穏やかにみえた。乱暴か物取りの犯行か?と思われたが、千葉県で起きた未解決事件、刺殺された男性のカバンに彼女の指紋がついていたことが判明した。女性は松波郁子という名前のホームレス、年齢は50代。そんな年齢の女性がホームレス…?二人の接点を調べる警視庁捜査一課の三ツ矢と戸塚警察署の田所、変わり者と言われる三ツ矢の独特の推理で核心へ導かれる。子供の家庭内暴力とか、親の虐待とか現実に起こっている今の社会、幸せそうに見える家庭の中で起きている空虚感、親の何気ない言葉が子供を傷つけている…家族の崩壊を招いたのは何か?問う作品でした。文体は易しく読みやすい文章ですが、現在と過去が並行して書いてあり、会話部分が多いことが逆にダレてしまい、とても私には難解でした。まさきとしかさんの作品は初めて読みましたが、題名は見知っていました。「完璧な母親」「能金家のひとり娘」「大人になれない」「一番悲しい」「祝福の子供」~よく行く本屋さんで売上ベスト10入りしていました。てっきり男性の作家さんと思っていましたが、女性でした。特に母と娘の難しい関係に目を向けているのは、そのためかな?彼女が最後に見たものは [ まさき としか ]価格:858円(税込、送料無料) (2023/6/9時点)
2023.06.07
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北海道警の鷹見健吾は、7年前に妻に去られた孤独な刑事だった。ある日、ススキノの店で出会った警察学校の同期だった倉田から、函館で妻の美鈴に似た人を見たと伝えられた。心が揺れる鷹見、どうして妻が出ていったのか?絶えず付きまとう疑問だった。そんな時、定山渓温泉で身元不明の30代の女性の死体が発見された。北開道生まれの作家で、大学中退後アメリカやアジアを放浪している。帰国後、脚本家としてデビューして、テレビドラマの脚本、劇画原作、そして本格警察小説を書きだして脚光を浴びている。北海道出身の作家だから、何となく親密感を抱いてしまいました。「消えた女」を読みながら、登場人物さえも見直に感じていました。事件を追う鷹見、消息不明の妻・美鈴の意外な事実~読みやすい文体、ドキドキしながら一気に読んでしまいました。この「消えた女」は初めて読んだので、他の作品も読んでみたいですが、↓「異邦の仔」は、特に読んでみたと思いました。
2023.06.02
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テレビドラマ「相棒」「TRIC>12」等の脚本を書いている方で、最初に「幻夏」を読んだ時、それを知って納得しました。文章の描写が映像のように頭に入ってくるように「幻夏」を読み、「天上の葦」は、今の日本の在り方を見ると恐ろしくなりました。一人の老人が渋谷のスクランブル交差点で、空を指差しながら亡くなった。その情景は、すぐに正午のニュースの冒頭に街のライブ映像として放映された。彼は96歳、埼玉県秩父市の介護施設の入居者で、死因は心疾患による病死だった。彼の名前は正光秀雄といい、かって世田谷区で町の産科医として52年働いていた。興信所を開いている鑓水七雄の所に奇妙な依頼が舞い込んだ。あのスクランブル交差点で亡くなった正光は、何故空を指差したか?その理由を2週間で調べ、わかったら1000万円支払うという。借金を背負っていた鑓水は、この話に飛びついた。鑓水七雄の生い立ち、その友人・刑事の相馬亮介、調査員の繁藤修司、それぞれ癖のある人物だけど、妙に実在感があり、親しみを感じました。日常的にウクライナとロシアの戦争をテレビで見るという不可解な今、かって日本が戦争へと突き進んだ時代の過ちを正したいという願いがひしひしと感じさせられたミステリーでした。政府による言論統制の恐ろしさ、今起こっているウクライナ侵略の理不尽さ、過去の戦争がどんなに惨たらしかったか?考えさせられた作品でした。この小説は2017年出版されたものですが、その頃から急に世の中の空気が変ってきたと感じた太田愛さんが、今書かねば…と思った作品だそうです。割と本を読むのは早い方ですが~読み終わるのに時間がかかりました。今、私達は「戦争」は反対、絶対「核」の使用は反対と強く言わねば、自分の子供たち、孫たち、その先の人々のためにも声高く言わねば、読んだ後に、そんな気持ちにさせられました。天上の葦 上 (角川文庫) [ 太田 愛 ]価格:924円(税込、送料無料) (2023/5/28時点)天上の葦 下 (角川文庫) [ 太田 愛 ]価格:880円(税込、送料無料) (2023/5/28時点)
2023.05.28
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2023年第21回「このミステリーがすごい」大賞・文庫グランプリ受賞作です。無駄な描写がない読みやすい文章のうえ、人間心理を深く描いています。初めて読む作家さんで、読み始めた時「うまいな~」と思いましたら、京都府立大学で文学部文学科で「国文学・中国文学」を専攻した方で、現在高校で国語教師をしているそうだから、そうか、と納得しました。 一見単純そうな筆運びなんですが~、どんどん違う方へと展開します。そして、最後のどんでん返しに、「えっ?」と途方にくれました。粗筋は…10年前父親を殺され、母親も失踪、親戚に別々に引き取られた姉妹。高校を卒業後、二人は親戚の家を出て、同じ街に住みながら、安いファミリーレストランで年に数回会うだけだった。二人とも派遣社員で待遇の悪い愚痴を言ったりするだけで、お互いの深い暮らしには触れなかった。姉は美桜(みお)、妹は妃奈(ひな)という名前だった。妃奈は綺麗で優しく、美桜は歯並びが悪いことで劣等感の塊だった。美桜は母方の祖母に引き取られたが、治療費は出してくれなかった。妹の妃奈は保険外交員として働いていたが、派遣だから給与は安かった。姉の美桜にしても大学の事務員だけど、やはり派遣だから同じようなもの。二人ともいつ派遣を切られるか~びくびくしながら暮らしていた。そんなある日、警察から妹が殺されたことを知らされた。押しかける報道陣、美桜は父親が殺された時のことを想いだす。「人を殺してみたかった…」犯人の高校生が言った言葉。お父さんは、誰でもよかっただけで、殺されたの?美桜の心の底に潜む激しい怒り、苦しさ、歯並びだって…父親が殺されて貧しくなったから。そして、保険外交員だった妃奈にも「生前保険金殺人」の疑いがかけられる。歯並びが悪いから、と中学生の頃から笑われていじめられていた美桜。美貌の妹を羨ましいと思う気持ちはあったが、妹の潔白は信じていた。すごくスピード感があって、ぐいぐい引っ張られるように読みました。初めに無駄のない文章と書きましたが、もう少し無駄もあった方がいいかな?そんな物足りなさも感じた「レモンと殺人鬼」でしたが、レモンの意味は?と疑問に思う方は、ぜひ読んでみてください。人の心に巣くう劣等感や優越感…悪気がない言葉にも人を傷つけること、「いじめ」が多発する今の時代の教師だからこそ書いたのでしょうか?そんな素朴な疑問も感じた作品でした。レモンと殺人鬼【電子書籍】[ くわがきあゆ ]価格:780円 (2023/5/17時点)
2023.05.17
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5月14日TVSテレビで夜の8時から放映された「神の手」を見ました。原作を読んでいたのですが、粗筋をぼんやり覚えているだけでした。ドラマを見ているうちに、いろいろ想いだしましましたが、原作を読まない人が見たら、内容がよくつかめないのでは?そう思い乍見ましたが、やはりそれはドラマ化するのに内容を要約したせいでしょうね。原作では白いシャツに黒のスラックスの地味な人とある主人公の木部美智子、ドラマでは清楚な美人でじみっぽけど、それなりにお洒落な感じでした。これは映画化でも言えることは、原作を先に読んで抱くイメージが違うと、それが内容的に「イマイチだ」と思ってしまうが、ドラマは良かったです。ドラマを見た方もいると思いますが、少しだけ粗筋を書きます。編集者が「神の手」と呼びたくなるような小説を書く女性がいた。しかし、彼女は世に出る前に多くの作品だけを残して失踪した。木部美智子は、3年前の未解決の幼児失踪事件を追っていた。ある日、昔の同僚から「会いたい」と電話が入る。約束の場所で待っていても彼女はこなかった。美智子は、彼女が自殺したという知らせを受けるが、自殺するような女性ではない、殺されたと考えた。未発表の小説と幼児失踪事件、一見関係がないようなことが一本の線で繋がっている、と美智子は確信した。小説は、もっと複雑で~よく理解できない部分がありましたけれど、前に図書館で借りた本なので、ドラマを見てスッキリしました。もう一度原作を読んでみたいと思いました。神の手 (集英社文庫) [ 望月諒子 ]価格:935円(税込、送料無料) (2023/5/16時点)
2023.05.16
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2011年「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー、法医昆虫學捜査官・仕立屋探偵桐ケ谷京介シリーズがある。主人公・奈緒は、地蔵を信仰する閉ざされた小さな集落で生まれ育った。16歳になるまで、地蔵をみてはならないという村の掟のがあった。奈緒はこの村から出たい一心でがむしゃらに勉強して、成績が良かった。この村から出たい、それが奈緒の夢であり願望であった。勉強さえできれば、東京の大学へ行くことも可能だ、彼女は一途にそう思い、家の手伝いをしながら勉強に励んでいた。朝早くから家業の農家を手伝い、学校に通う日々。彼女には、心から友達と思える級友はいなかった。ある日、東京から新しい移住者が引っ越してくることになった。4人家族で、奈緒と同じ年の女の子がいるという。彼女と偶然会い、お互い心に響くものがあって、二人は親しくなる。その転校生・亜矢子は、奈緒を頼りにして村に馴染もうとする。しかし、村人は新しい移住者に異常にまで警戒心を募らせるのだった。亜矢子が村に馴染もうとするが、よけい村人の反発をかってしまう。しかし、奈緒の眼からみたら、村人の方が亜矢子達をいじめている、と思えて仕方なかった。ますますこの村から出たいと思うのだった。寝たきりの曾祖母、祖父母、両親、そして兄という家族構成の中で、長男の兄は勤めに出ていて、家業の農家は少しも手伝っていない。余所から嫁に来た奈緒の母は、何年経ってもよそ者としてしか扱われず、寝たきりになった曾祖母の面倒は祖母が看て当たり前の暮らし。なぜ農家に嫁の来てがないのか、という問題もこの作品で問うているが、昔からのしきたりにがんじがらめに従った人々の哀しいミステリーです。ミステリーとしては、少し尻切れトンボのような思いを抱いた。でも、内容的には古い因習と向き合い、そこから抜け出そうとする奈緒のメソメソしない逞しさがあり、読みごたえがありました。うらんぼんの夜 [ 川瀬七緒 ]価格:1,760円(税込、送料無料) (2023/5/15時点)
2023.05.15
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誰からも愛されていた、著名なヴァイオリニストが殺された。関東フィルハーモニー管弦楽団の第一ヴァイオリンの久米充、48歳。人格者/佐藤青南【3000円以上送料無料】捜査一課の音喜多弦は、変わり者の鳴海桜子とペアを組まされた。鳴海は音楽隊志望の刑事で、何故か捜査一課に配置されていた。二人は聞き込みを始めるが、久米を悪く言う人はいなかった。何故久米は殺されたのか?捜査は難航した。そんなある日、一人の女性が「私が殺しました」と自首してきた。外面がよく、家族には気難しい顔しか見せない人間が結構いる。男性に多いが、そんな背景が殺された久米の家庭にはあった。音楽隊志望の鳴海、子供の頃の体験が事件の背景を暴く。あまりクラッシック音楽に詳しくないので、戸惑いながら読みました。子供にピアノやヴァイオリンを習わす親は多いし、もしかしたら才能があるかもしれない、と子供が嫌がっても続けさせる親も多い。余程の才能があっても、プロとして生きていくのは大変だという教訓も織り交ぜたサスペンス小説でした。【中古】人格者 /中央公論新社/佐藤青南(文庫)価格:399円(税込、送料無料) (2023/5/10時点)
2023.05.10
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昭和49年7月27日、5歳の男の子が自宅からいなくなり、誘拐された。脅迫電話と手紙で3度の身代金要求があったが…犯人は姿を現さなかった。真犯人 小学館文庫 / 翔田寛 【文庫】そして、事件発生から23日後、その子が遺体となって発見された。犯人が捕まらないまま、あと1年で時効を迎えるという昭和63年、特別捜査班を編成させ、事件の見直しを命じた男がいた。それでも犯人はあぶり出せることなく、特別捜査班は解散された。平成27年8月、静岡県裾野市で一人の男が殺された。身元を調べるうち、誘拐された男の子の実の父親だった。事件を追う刑事たちの執念で物語が進むので、面白かった。しかし、事件の背景にある親子の愛憎が哀しい。読んでいて刑事たちの苦労、苦悩、キャリア志向の上司への反感、手に取るようにわかり、読みごたえがある一冊でした。テレビでドラマ化されていたのは知りませんでした。テレビでは、どう描かれているのか、ちょっと興味深いです。【中古】 連続ドラマW 真犯人 DVD−BOX/上川隆也,小泉孝太郎,内田有紀,翔田寛(原作),やまだ豊(音楽) 【中古】afb価格:5,940円(税込、送料別) (2023/5/4時点)
2023.05.05
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内科医の工藤孝明は、茨城の小さな町の個人病院に勤めて2年目だった。工藤は背の高い顔だちの整った青年だったが、律義で真面目だった。要領が悪く、よく看護師に怒られ、そして患者に甘いとみられがちだった彼が大学病院の研修医だった時、入院患者の悪徳宗教家が死亡した。それはよくある事だが、ある老婆が「私が呪い殺した」と名乗り出たことで、若い研修医の工藤はあらぬ疑いをかけられ、大学病院を追われた身だった。その彼を受け入れてくれたのが、個人病院の院長・藤原信太郎だった。工藤は患者の気持ちに添い、よく働く医者だったから、藤原は満足していた。工藤の患者がまた一人亡くなった。「呪い殺された」という噂がささやかれるようになる。真相を突き止めるべく、ルポライターの木部美智子が動き出す。一つの事件の真相を追うというより、木部美智子というルポライターの人物像を縦に、社会の暗部をあぶり出すという構造になっている。いろんな要素を少し詰め込み過ぎないかな~?という思いで読み終わった。「呪い」なんて本当にあるわけよ、というのが私の感想でした。【中古】呪い人形 /集英社/望月諒子(文庫)
2023.04.29
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30年前起きた「連続幼女殺人事件」の死刑判決を受け、収監されていた二人組の犯人の一人が獄死した。亡くなったのは、亀井戸建(65歳)で喉頭癌だった。手術を望まなかったので、痛みを緩和するなどの処置をしていたが、検査から数日後容態が悪化して収容所で亡くなった。亀井戸は死刑判決後すぐに控訴したが、受け入れられなかった。もう一人の死刑囚・伊予淳一(63歳)は、今も再審を請求している。亀井戸の死を朝刊で知った星野誠司は、複雑な思いだった。30年前、予備班だった彼は様々な書類を作成し、管理し、整理したが、実際の捜査には加わっていなかった。しかし、彼の中では心の奥に引っかかりを感じていた事件であったが、警察を退職してから6年も経っていた。星野は大学生の孫とその友人に手伝ってもらいながら、再調査することで冤罪の疑惑を晴らそうとする。かなりリアルな描写があり、読むのが躊躇うところもありました。実際に起きた足利事件等の冤罪事件を絡めながら冤罪がいかに起きるか?彼ら二人の生い立ちや性格を細かく調べ直し、真相に近づいていく。インターネットに疎い年代の星野は、若い孫とその友人の協力を得ながら、動画を使い世論を動かす作戦に挑戦しようと試みます。人物描写がすごくリアルで、登場人物が抱える問題を絡めながら、嫌な人物もたくさん出てきますが、何故冤罪になってしまったか?弱い人間に添う目線が優しいです。櫛木里宇さんの作品はホラーが多いです。
2023.04.09
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何かサスペンスが読みたくなって、買ってきた一冊です。今、認知症の高齢者による運転事故が多く、社会問題になっているが、その認知症かもしれないという老人が交通事故を起こし、フリージャーナリストが取材するという形で物語はスタートする。86歳の老人がコンビニに車を突っ込み、店長を死亡させたという事故が起きた。週刊誌の編集長から依頼を受け、フリーのライター俊道律は取材を始めた。運転していた落井正三は、どうも認知症気味だったという話だった。先ず、俊道律が死亡した店長のオーナーでもある父親・宏に会いに行くと、息子の死を嘆くどころか、事故現場の金銭的損害ばかり気にしていた。加害者の落井正三は、福井と岐阜の県境に聳える野伏ヶ岳の、福井県側の麓にある埜ヶ谷村という小さな村落に住んでいた。運転していた軽トラックも本人所有のものではなくて、村人が車検が切れたので放置してあった車だった。埜ヶ谷村に行ってみよう、と俊道律は思った。そして、彼はその村には奇妙な風習が残っていることを知る。俊道律は調べれば調べるほど不可解な村の様子に困惑し、親切そうな村の人の態度が、逆に疑惑を感じるようになった。認知症の運転事故という一つのテーマに織り交ぜて、災害や人口減少という現状から村の存続を願う強い思いが底辺にあって考えさせられました。認知症を匂わせて、ある意図で事故を起こした落合正三の思いやりが切ない作品でした。夫75歳、運転できるのは80歳位までかな~?と話すようになりました。運転免許を持たない私は、隣に座っているだけですが、それも怖い。精神科医の和田秀樹医師は、高齢者だからといって運転免許返納を家族が強制しては、余計認知症になりやすいと書いています。だから、認知症も怖いし、事故を起こしやすくなる不安もありで、他人事では無い思いで読んでいました。悪い夏 (角川文庫) [ 染井 為人 ]海神 [ 染井為人 ]
2023.04.05
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伊岡瞬さんの「不審者」は、意外な結末に…少しがっかりしました。自宅で校閲担当をしている折尾里佳子は、夫の実家で暮していた。会社員の夫、幼稚園児の息子、そして75歳の義母の4人暮らしだった。義母とは息子・洸太が小さい時は助けてもらったと思ってはいたが、最近はぎくしゃくして、里佳子にとって頭の痛い存在になっていた。ある日、夫・秀嗣は一人の客を自宅に招いたという。客が誰か?と聞いても笑ってごまかす夫。約束の日にやって来たそのの男性は、20年以上音信不通だった兄だという。秀嗣の両親は離婚して、父親は兄を連れて実家を出ていったと聞いていた。しかし、母親の治子は息子の雄平でないと言い張った。中学一年生の時、別れたきりだが「息子の顔は忘れない」という。しかし、秀嗣は母親がこのごろ物忘れがひどいから、と治子の言葉を取り合おうとはしなかった。それで、雄平と名乗る男は母親と二人で話をさせて欲しいといい、しばらく治子の部屋で話し込んだ後、納得してくれたと言った。その日から、無職で家がないという雄平は、居候することになった。小さな諍いはあったにせよ、平和に暮らしていた家族、次第に不可解な出来事が起こるようになる。最初に書いたように、結末が「なあんだ」という期待外れの気持ちにさせられますが…内容的には心理的サスペンスのように思いました。第25回横溝正史受賞・デビュー作いつか、虹の向こうへ (角川文庫) [ 伊岡 瞬 ]
2023.04.01
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高級老人ホームで暮らす資産家の一人の老女が殺された。その老女の名前は、笹本弥生といって孫の健文と骨肉の争いをしていた。健文は26歳の大学院生だったが、よく弥生にお金をせびりに来ていた。その時の弥生は、孫にヒステリックに当たり散らしていることが多かった。その弥生が「もう一人の孫がいる」と言いだした。老人ホームの担当のヘルパーのことを、「私の孫」というのだ。その孫に全財産を譲る、という遺言書を渋る顧問弁護士に作成させた。弥生一代で築いた遺産は数億円である。そんな中で弥生は殺された。関東大震災、東京大空襲を一人で生き延びた少女は、闇市でのし上がり、やがて冷酷な金貸しとなって莫大な資産を得た。一人の女性の生きざまが描かれたサスペンスです。望月諒子デビュー作神の手 (集英社文庫) [ 望月諒子 ]
2023.03.29
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