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2024.06.09
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カテゴリ: 観照

六条院春の御殿1/4縮尺展示の左側には、通路を挟んで 寝殿造の建物の一部を再現した空間 が設けてあります。北側には襖障子が仕切りとなり、西側と南側には御簾が掛けられた板敷きの部屋空間が再現されています。
ここが、等身大の実物装束その他、 平安時代の風俗を実物大で展示する空間 になっています。


    南側の 御簾越しに眺めた女房の姿

この等身大の女房(人形)が着ているのは、三条天皇の中宮妍子が女房たちに着せた 「二十枚の重袿(カサネウチギ)」 を再現したものです。
妍子は藤原道長の娘であり、 藤原妍子が皇大后として大饗(ダイキョウ)を主催したとき に、二十枚の重袿を女房に着させるという華美な演出を行ったと言います。

この 案内文が傍に掲示 してあります。


この時の女房たちの衣装について、 『栄花物語』巻24「わかばえ」に記述が残されている と言います。






表着(ウワギ)は萌黄色で菱形文様の織物、唐衣(カラギヌ)は秘色の返襟で、桜色の亀甲文様です。


単の上に、重袿として三色を内側から6枚、6枚、7枚と重ねて着ています。

重袿は、「過差(カサ)の禁制で5枚が基本となり五衣(イツツギヌ)と呼ばれた、複数の色の重なりで『かさね色目』を表現することは女房装束の華とされた」 (資料1) そうです。


    裳 を背後に大きく広げ、 二筋の引腰 が伸びています。

掲示の案内に記されていますが、当時藤原道長は装束の倹約令を発令していたそうです。それに対して妍子が華美な重袿の演出をしたことに「とんでもないことだ」と怒ったと言います。 (資料1)



   御簾のすぐ傍の衣桁に掛けてあるのは、 「袍(ホウ)」 です。
法華経千部供養の場面で殿上人たちが着用しているのは束帯です。平安時代の貴族男性の昼の装束で、正装です。束帯の表衣と言われるのが「袍衣」になります。
当時の貴族の勤務服として、この袍の色は、身分秩序として位により色が定められていました。(掲示の案内板より)

ここには、 位袍 と称された、 位と着用できる色の関係が反物で展示されて います。
左から順に:
 一位 深紫 人臣の最高位。太政大臣のみ着用。紫根(シコン)で染められた色
 二位 浅紫 左大臣と右大臣が着用。紫根で染められた色
 三位 浅紫 大納言・中納言・近衛大将などが着用。紫根で染められた色
 四位 深緋 近衛中将が着用。日本茜で染められた色。
 五位 浅緋 四位・五位以上が昇殿を許され「殿上人」に。日本茜で染められた色。 (掲示の案内板より)

左から順に:
 六位 深緑 六位以下は「地下(ジゲ)」と称される。刈安と蓼藍で染められた色。
 七位 浅緑 大学寮の博士、陰陽師など。 刈安と蓼藍(タデアイ)で染められた色。
 八位 深縹 雅楽寮の楽人たちの中の諸師達が着用。蓼藍で染められた色。
 初位 浅縹 最下位の位。蓼藍で染められた色。 その下は位のない「無位」  (掲示の案内板より)
つまり、袍の色を見れば、貴族の位階が判然とわかったのです。




この展示空間の南端側に、 「公家女房晴れの装い」 として、等身大の衣装が展示されています。
平安時代中期に、唐様を変化させて日本独自の十二単(ジュウニヒトエ)が完成します。

こちらも拙ブログ記事で既にご紹介しています。併せてご覧いただけるとうれしいです。
観照 京都・下京 風俗博物館 2020年の展示 -2 小袖の展示、草木染め、十二単
観照 京都・下京 風俗博物館 2019年2月からの展示 -6 四季のかさね色目・「晴れの日の正装」
観照 風俗博物館 2018年前期展示 -2 十二単の変遷とかさね色目



この十二単の展示の近くに、 「継紙」 の一例が展示されています。
継紙とは、異なる質や色の紙を継いだ料紙のことです (掲示案内より)
継紙の技法 には、
切り継ぎ : 主に直線的に切った紙を継ぐ
破り継ぎ : 破いた紙を継ぐ
重ね継ぎ : 薄様の紙を重ねる
があり、また、「 金銀の箔や砂子を散らしたり、金泥で蝶や鳥、折枝などを描いたものなど 継紙には様々な趣向が凝らされています」
継紙は鑑賞用あるいは誰かに送る文用に用いられています。継紙が成立したのは平安時代だそうです。料紙そのものの美が関心の対象にもなっていくのです。 (掲示案内より)

北側の襖障子

この北側に、
草木染で染めた松かさね
蓮糸織り
この箇所も作品を変えながら 草木染めの常設展示コーナー となっています。
こちらも拙ブログ記事で過去にも触れています。上掲の2020年の拙ブログ記事をご覧ください。


      衣装の文様 について、この案内パネルが掲示されています。

時間をかけて鑑賞していくと、コンパクトながら、 平安時代の世界へ、『源氏物語』の世界へ、タイムスリップできる空間が広がっています。

これで今期展示のご紹介を終わります。
ご覧いただきありがとうございます。

参照資料
1. 当日いただいた小冊子 「風俗博物館 令和6年2月~ 展示」号

補遺
風俗博物館 ​  ホームページ
国宝「三十六人歌集」特別公開特集② ​ :「ことしるべ Kotoshirube」
西本願寺本三十六人家集 ​    :ウィキペディア
王朝継ぎ紙の世界 ​  ホームページ 王朝継ぎ紙研究会

 ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -1 法華経千部供養(1) へ
観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -2 法華経千部供養(2) へ
観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -3 法華経千部供養(3) へ ​ 
観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -4 産養(ウブヤシナイ)へ
観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -5 かさね色目に見る美意識 へ
観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -6 遊びと日常 & 竹取物語 へ





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Last updated  2024.06.09 15:52:10
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Re:観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -7 等身大の装束展示ほか(06/09)  
Jobim さん
ほんとうにすごい展示ですね
事細かにご紹介いただき、ありがとうございました (2024.06.09 16:52:26)

Re:観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -7 等身大の装束展示ほか(06/09)  
Jobim さん
ほんとうにすごい展示ですね
事細かにご紹介いただき、ありがとうございました (2024.06.09 16:52:28)

Re[1]:観照 京都・下京 風俗博物館 2024年2月~ の展示 -7 等身大の装束展示ほか(06/09)  
茲愉有人  さん
Jobimさんへ

お楽しみいただければ、うれしい限りです。
(2024.06.10 18:28:38)

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