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facebookへのアクセスが規制されている中国で、企業がfacebookみたいにオンライン・プロモーションやブランディングに活用しているのが「開心網」。いまのところ「公式ファンページ」(ブランド・ページ)を設けているのは、外国ブランドが中心です。外国ブランド系のファンページのファンの数をまとめてみました(2011年6月24日現在)。中国での人気やビジネスの大きさが、ファンの数を比例するわけではありません。ブランドそのもののパワーだけではなく、インダストリーや、そのブランドのファンページへの取り組み方、ファンへのインセンティブなどが、定量的に大きな影響を及ぼすからです。とはいえ、中国のネットユーザーにおけるブランドのプレゼンスや、企業側のウェブ・マーケティングへの姿勢が、ある程度読み取れるのではないかと思います。半年後、1年後にどう変化しているかも、興味深いところです。どうぞ、ご参考まで。ピンクのフラグは、日本系のブランドです...。
2011.06.24
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ほんらい中国のネット企業には外国資本が出資できませんし、外国市場に上場もできません。インターネット産業は外資規制の領域になっているからです。厳密に言えば、インターネットによってコンテンツを発信しその対価として収益を得るようなビジネスモデルが対象ですが、ウェブサイトで様々な種類のコンテンツを発信するたびに、当局にお伺いを立てて「許可証(ビジネス・ライセンス)」をいただかなければならず、外資企業だとだろいろ邪魔されたりするので、実質的には中国国内資本の企業でなければ、中国でウェブビジネスをうまく進めていくことができない仕組みになっているのです。けれども、百度、SINA、SOHUをはじめ、中国の主要なネット企業は海外市場に上場していますし、多くのネット企業は中国国外のベンチャー・キャピタルや事業会社からファイナンシングをうけています。実際にそれができているのは、コントロール・アグリーメント((支配権合意書。中国語では「控制協議」と書く)という契約上のからくりがあるからです。この契約により、外資企業が資本関係を持たずに、中国国内資本のネット企業を実質支配できるとされているのです。外国資本を集めたり、外国市場に上場しようと考えている中国企業は、まず中国国外に持株会社をつくります。そして、その会社が資金調達を行うのです。中国国外の持株会社は、100%出資の子会社を中国国内につくります。この会社の株主は外国企業なので外資扱いになってしまいますが、この会社と元来の事業会社が様々な契約を締結することによって、結果的に中国国外の持株会社が元来の事業会社を実質支配する仕組みを作るわけです。一般的に元来の事業会社の株主は、その企業の中国人ファウンダーですから、中国国内資本の企業ということになります。コントロール・アグリーメントは、中国国内の企業と中国人株主との間で結ばれる、紳士協定みたいなものです。この当事者間の約束ごとを支持してくれる法的な根拠が中国にはありません。あくまでも当事者間同士の取り決めなのです。もちろん大抵の場合は、もし約束を破ったなら、事業会社の株式を持株会社に無償譲渡する、という条項を盛り込むことによって、リスクヘッジを施します。慎重な場合は、中国国内資本の事業会社の株式に質権を設定します。でも、このリスクヘッジ策そのものに矛盾があるのです。もし、事業会社やその株主が約束を破って、持株会社がその株式を取得したらどうなるでしょうか?持株会社は外資企業ですから、事業会社も外資企業になってしまいます。つまり外資規制に抵触してしまうので、ビジネス・ライセンスが剥奪されてしまうことになり兼ねないのです。こうしたストラクチャーを考え出し、中国国外の証券市場への上場を目指す中国企業に高値で売りつけたのは、世界的な監査法人や法律事務所です。彼らも法的にはグレーゾーンであることを当事者には説明しているのですが、コントロール・アグリーメントのリスクヘッジ策の非実効性については市場参加者に積極的には開示していませんでした。もちろん、公開されている情報をもとに考えれば、わかるような内容ではありますが。ともあれ、百度もSINAもSOHUもYoukuも当当網も人人網も、このような投資ストラクチャーとコントロール・アグリーメントによって、中国国外証券市場で上場を果たしているのです。アリババグループのトップであるジャック・マーが、その実質支配子会社であった第三者決済サービスのアリペイ(支付宝)を、取締役会の議決を経ずに、アリババグループから切り離した、とされる一件は、単純化すれば、上述のコントロールアグリーメントをアリペイ側が一方的に破棄した、という事象に置き換えられます。かつてのアリペイは外資規制のビジネス領域では無かったはずですが、恐らく中国における外資企業のさまざまな不利益を考慮して、アリババグループは、資本関係によってでは無く、コントロール・アグリーメントによって、アリペイを実質支配・完全子会社化していたのです。昨年、中国の中央銀行は、「非金融機関による決済サービスの管理弁法」を発表し、インターネットを利用した第三者決済サービスを許認可制にすることを決め、原則として中国国内企業でなければライセンスを与えない方針としました。【中国国内企業でなければライセンスを与えない】これは、前に述べたインターネット・サービス・プロバイダー、例えばNASDAQに上場している百度やSINAと同じ条件になった、ということであって、コントロール・アグリーメントによって支配権を外資企業である持株会社に譲っているにせよ、アリペイの事業会社は中国国内企業ですから、第三者決済サービスのライセンスを受ける条件は満たしていることになるはずです。ところが中央銀行は、コントロール・アグリーメントによって外国資本の持株会社に実質支配されている中国国内企業を、許認可の対象から外す方針を突きつけたようなのです。ライセンス申請時に重要な契約をすべて開示し、外国資本の影響力をも審査対象にする、と。こういったルールがドキュメントとなって公開されることはまずありません。一般にドキュメントとなった中国当局のルールは大雑把なもので、運用の子細は担当責任者次第なのです。これがいわゆる「人治主義」であり、担当責任者へのもてなし次第では有利に運用してもらえるので、腐敗の温床ともなっているわけです。最近Tencent傘下の第三者決済サービスであるテンペイ(財付通)が、かつてのアリペイ同様、コントロール・アグリーメントによって、香港上場企業であるTencentの実質支配を受けている、という業界関係者にとっては周知の事実が公になり、ライセンスが剥奪されるのではないか、という情報すら流れていますから、中国人民銀行による第三者決済サービスへの外国資本の影響力排除の方針は、確固たるものだと考えられます。アリババグループとアリペイの一件を、「ジャック・マーは約束を守らない、中国企業は信用できない」と問題を矮小化して捉えるべきでは無いと思います。想像するに、アリババグループ側も主要株主でありボード・シートを持つYahoo!やソフトバンクに対して、中央銀行の指針やコントロール・アグリーメントのリスクをきちんと説明していただろう、と。そしてYahoo!・ソフトバンク側はエビデンスを求めたのではないか、と。「アリペイは資本構成としては完璧に中国国内企業じゃないか、コントロール・アグリーメントを結んでいるとライセンスがもらえないなんて、誰が言っているのか、どこに書いてあるのか、エビデンスが無ければ納得できない...。」そうは言われも、「コントロール・アグリーメントが残ったままだと、ライセンスが下りません」なんて書かれたルールは無いわけですし、中央銀行に尋ねても曖昧な回答しか得られなかったのでしょう。中国のルール運用は「人治主義」。アメリカや日本の会社が求める確証など得られるはずが無いのです。中国国外の役員を説得できるような材料を揃えることはできなかったのでしょう。だから議決も行われなかった。そうしてYahoo!やソフトバンク、さらにはメディアまでが「ジャック・マーは、こうした中国の規制強化を悪用して、成長が期待されるアリペイを自分のモノにしようとしているのではないか...。」と疑心暗鬼に陥っていったのです。中国も未だにコントロール・アグリーメントによる事由は、ジャック・マーの一人芝居(言い訳)に過ぎない、との論調も多いのですが、中央銀行がコントロール・アグリーメントの解除をライセンス付与の条件とする、とアリペイに示唆したのは事実だと思われます。コントロール・アグリーメントによる外資規制対策が、中国政府関連機関から疑義を唱えられた、という事実こそ、この問題の本質と捉えるべきでしょう。上述のとおり、中国国外に上場している中国のインターネット関連企業はことごとくコントロール・アグリーメントによって、中国国内企業にしか付与されないライセンスを得てビジネスをしているわけです。中国当局が、「外資とコントロール・アグリーメントを締結している中国国内企業は外資企業と同等に扱う」と、運用方針を変えてしまえば、上場企業は事業会社を持たない、すなわちビジネスの実体を持たない持株会社に過ぎなくなってしまうわけです。このことが市場参加者にとって大きなリスクとなるため、アリペイのトラブルが広がって以来、中国国外に上場している中国のインターネット関連企業の株価が軒並み下がってしまったのです。自分の情報をGoogleで検索し、気に入らない結果が多かったことに腹を立て、Googleなど中国から追いだしてしまえ、と指示したとされる党中央政治局常務委員・李長春さんは、中国のインターネット関連ビジネス推進の旗振り役でもあり、環境に優しい産業としてさまざまな優遇政策を推し進めています。もちろん中国国内のインターネット産業成長には、中国国外からの投資資金が欠かせない、ということを彼らは十分承知していました。ですから、インターネットの主たる監督省庁である工業情報化部はコントロール・アグリーメントによる外資の参加をむしろ歓迎さえしていたわけです。この方針がすぐにでも転換されるとは思えないのですが、コントロール・アグリーメントによるライセンスの付与というグレイな状態は、中国当局による言論統制の強化のための格好のツールになることは間違いありません。体制に不利な情報を流布するようなことがあれば、コントロール・アグリーメントを盾にライセンスを取り上げることができてしまうのですから!アリペイのアリババグループ離脱事件が浮き彫りにした問題は、中国企業がビジネスルールを尊重しないこと、とか中国国外市場に上場する中国インターネット企業の企業価値に関するリスク、とか経済的な視点でしか、取り上げられていませんが、中国のインターネット企業は、当局の胸先三寸でその企業生命を絶たれる状況に常に置かれていることが露呈したことこそ、重要であって最大の恐怖なのです。人民に影響力を持つウェブサイトほど、中国政府の顔色を伺いながらビジネスを行っていかなければ、ならないのです。
2011.06.22
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ついでもあったので、中国のECプラットフォームの最新情報をまとめてみました。まず、1日あたりの来店者の推計から。Alexaなどのデータを元に独自にページビューやユニークユーザー数を算出しているChinazの直近1ヶ月の平均ユニークユーザー数を来店者数とみなしています。1位 淘宝網(TAOBAO) 約2億5,000万人2位 京東商城(360Buy) 約210万人3位 拍泊網(PaiPai) 約180万人 (Tencent)4位 アマゾン中国(卓越網) 約120万人5位 当当網(DangDang) 約100万人6位 VANCL(凡客誠品) 約100万人7位 拉手網 約82万人8位 美団網 約52万人9位 麦網(M18) 約45万人10位 一号店 約38万人淘宝網(TAOBAO)が圧倒的強さを堅持しているのが分かります。淘宝の来店者のうちB2Cモール(淘宝商城)は2割未満と推測されます。3位の拍泊網
2010.12.08
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最近日本のマスメディアなどでも、盛んに中国のEコマースが取り上げられています。確かに、中国のインターネット・ユーザーは3億3,800万人(09年6月・CNNIC発表)、Eコマースの市場規模は1,800億RMB(約2.5兆円・iResearch2009年予測値)で、毎年2倍近い成長を遂げています。国土が広大な中国マーケットをカバーするには、オンライン・ストアなどの無店舗販売のシステム構築が効率的でもあります。オンライン・ストアは、多数の実店舗や小売店網を整備する必要が無く、販売スタッフも用意する必要が無いので、一般的には参入障壁が低いと考えられています。もちろん、自社でシステムを用意したり、物流(納品の仕組み)を整備したりするには、それなりの覚悟が必要ですが、楽天市場のようなショッピング・モールなどに出店するのであれば、個人でも零細企業でも簡単に販路を拡大することが可能です。ご存知の通り、中国ではTAOBAO(淘宝網)がEコマースのプラットフォームとして最大かつ最強です。TAOBAOの一日の取引高は、中国最大の百貨店チェーンやいまや中国最大のDSチェーンといえるウォルマートの一日の売上を上回っています。こうした中、数多くの日本企業からTAOBAOに出店したい、とのお話が舞い込んできます。またネット上には「TAOBAO出店代行」をうたったサービスも数多く出現しています。でも、はっきり申しあげましょう。現時点では、中国に現地法人を持たない外国企業はTAOBAOに出店できません。厳密に申しあげれば、"個人"の資格として出店することは不可能ではありません。ただ、会社のビジネスとして出店するのはきわめて難しいと思ったほうが良いでしょう。TAOBAOは元来C2Cのプラットフォームなのです。つまり、個人による出店販売、購入者個人がリスクを持った上での購入が原則でした。つまり、ヤフオクみたいなものです。しかし、粗悪品、まがい物、詐欺などがあとを絶たず、企業による品質保証を受けられるサービスを求める利用者の声に押され、2年前にB2CプラットフォームであるTAOBAOショッピングモール(淘宝商城)をオープンさせたのです。TAOBAOショッピングモールはブランドショップとも呼ばれ、正規販売権を持つ企業しか出店できませんし、見込み客からのお問合せ対応やアフターサービス体制に対して厳しい条件がつきます。その分、利用者は安心して利用できますし、何よりも中国の公給領収書の発行を受けられますので、会社や役所の経費で何でも揃えることの多い中国の人たちにとっては利用し易くなったのです。TAOBAOを覗いていただければ一目瞭然ですが、まさに玉石混交。フェイク(偽物)、並行輸入品から、メーカー保証付きのデジタル製品、本物の高級ブランド品に至るまで、怪しげなものも確かなものも何でも売られているのです。TAOBAOショッピングモールは、正規品とアフターサービスを保証するB2Cのプラットフォームですから、普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)のお店よりも断然集客力がありますし、売上も上がります。そうでなくとも、日頃からフェイク(偽物)やコピー商品、並行輸入品(非正規ルート販売品)に悩まされている日本企業であるならば、そうした怪しげな商品が並ぶ普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)に出店するのでは意味が無いので、B2CのTAOBAOショッピングモールへの出店を望むはずです。ところが現時点で、TAOBAOショッピングモールには、中国国内で小売販売ができる資格を持った企業でなければ出店できません。ですから、少なくとも中国に現地法人を持っていなければ日本企業は出店できないのです。更に申しあげれば、中国国内で小売販売ができる資格というのが、外資系企業にとっては獲得しにくい状態になっています(厳密には、無店舗販売ライセンスと言う外資企業では更に取得しにくい資格すら必要と言えます)。もちろん、TAOBAOショッピングモールに出店するのではなく、自力でECサイトを立ち上げることも不可能とは言えません。けれども大きな覚悟が必要です。第一に、中国からアクセスできなくなることを覚悟しなければなりません。日本(中国国外)にホスティング(サーバーを設置)する場合、まず課題になるのは中国からのアクセス速度。ご存知の通り、中国にはゴールデン・シールド(金盾)というインターネット上の情報を検閲・制限するシステムがあるので、国外へのアクセスにボトルネックが存在します。ですから中国国内のサイトの場合、中国の利用者が快適にショッピングができません。更に怖いのは、いつアクセス禁止になっても文句が言えないのです。サイトに中国当局が秘かに定めるNGワードが含まれていたり、中国当局にとってよろしくないサイトがリンク先に含まれていたり、或いは中国当局に目をつけられているネットユーザーが頻繁に訪れたりすると、いつの間にか中国からアクセスできなくなったりします。極端な例ですが、ある日本企業のオンライン・ストア(日本でホスティング)は、トラフィックが急激に伸びた途端、中国からアクセスできなくなってしまったこともありました。第二に、売上代金を受け取れなくなったり、突然中国当局に税金を請求される覚悟をしなければなりません。まず、日本から中国にモノを売る立場の出店者は、日本の銀行口座に代金を送金してもらわなければなりません。中国では居住者か現地法人を設立しなければ、原則として銀行口座が開設できないからです。第三者型電子決済のプラットフォームとして、中国ではAlipay(支付宝)が最も普及しています。中国のお客さまが人民元で支払った代金を、Alipayが日本円か米ドルなどに変換して日本の銀行口座に送金してくれれば良いのですが、そんなに甘くありません。Alipayは日本への送金も可能と宣伝していたこともありましたが、実際のところ毎月10万円くらいまでが限度です。中国の外貨管理は厳しいので、人民元から日本円や米ドルなどの外貨への両替やその外貨を中国国外に送金する際の制約があります。商品の売買がきちんと証明できれば良いのですが、Alipayは決済代行をしているだけで日本の出店者と中国の購入者の取引に関わっているわけではありません。毎月10万円程度の売上しか日本で受け取れないとなると、企業として取り組むのは難しいでしょう。PaypalやVISAなど国際クレジットカードによる決済であれば、日本で代金を受け取れる可能性もより大きくなりますが、これらの決済方法を利用できるのはAlipay利用者の10分の1くらいですから、Alipayを導入しなければ売上も伸びない、というのが現状です。税金の問題は、輸入関税ではありません。日本から小口で直接購入者に商品を送るのであれば、一般的には個人輸入と判断されます。税関審査で輸入関税を求められることがありますが、数百元(日本円なら数千円)くらいの商品であれば、見逃される場合がほとんどです。課税を求められたとしても、中国で受取る側つまり購入者が納税することになります。購入者が納税せずに商品を受取らず、返品になるというリスクはあります。けれども、より大きなリスクは営業税や増値税(付加価値税)などの間接税や企業所得税などを中国側から請求される危険性があるということです。アメリカのAmazonに対して日本の国税当局が噛み付いたのと構造は一緒です。売買と言うビジネスが日本で発生したのか中国で発生したのかという解釈の問題ですが、下手をすると中国からの売上に対して中国での所得と言いがかりをつけられて、後になってから税金を払え、と言われかねません。このように考えていくと、日本からの遠隔操作で中国向けECでビジネスを行うのはリスクが大きく実入りが少ないお話ということになります。つまり、本格的に中国でオンラインでモノを売りたいというのであれば、中国に現地法人をセットアップして現地でのオペレーション体制を整えていくことが肝要だということです。それにはお金も時間も労力もかかりますが、広い中国に実際の販売網を築くことに比べたら、うんと安上がりなのです。中国のマーケットの大きさの魅力は、もはや上海、広東、北京などの都市部には無いのです。沿岸部や都市部にこだわっていては、かつての日本軍と同じ悲劇をうむことになりかねません。広い中国では、拠点を押さえるだけではダメなのです。点と点を結ぶ線でもダメです。面としてカバーしなければ、中国マーケットの魅力は激減してしまいます。"僻地のゲリラ戦"を生き抜くためには、拠点を押さえても勝ち得ません。そうした点において、広大な中国全地域に中間層向けの販売網を構築するのと同義のオンライン・ストアは、なお低リスクで高リターンが見込める戦術ですし、インターネットは極めて有効なマーケティング・ツールなのです。日本から遠隔操作でこそこそ行うようなものではありません。参入障壁は高くても、真剣に取り組むべきだと思うのです。
2009.11.22
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『China Joy』(中国国際数碼互動娯楽展覧会(中国国際デジタル・インタラクティブ・エンタテイメント・エギジビジョン)(主催-中国新聞出版総署、中国科学技術省、中国工業情報化部、国家体育総局、中国国際貿易促進委員会、中国国家版権局、上海市人民政府)に行って来ました。会場の上海新国際展覧中心は、若いゲーマーでごった返ししていました。特に人気オンラインゲーム・オペレーターが集中したW1館は、東京の通勤ラッシュの電車の中のような大混雑。中国のオンラインゲーム人気を実感する光景でした。中国のネットユーザーは3億3,800万人(CNNIC:09年7月発表)。内64.2%がオンラインゲームを利用しているので、単純計算すると中国のオンラインゲーム・ユーザーは、2億1,700万人と言うことになります。ラッシュ時の通勤電車並みに大盛況のChina Joy会場China Joyでは、中国の有料ユーザー数が1,100万人を越える超人気のオンラインゲーム『World of Warcraft(魔獣世界)』の元オペレーター"The 9(第九城市)"と新オペレーター"Netease(網易)"が隣り合った位置にブースを構え話題になりました。『World of Warcraft(魔獣世界)』は、アメリカのBlizzard Entertainment社が開発し、美しい3Dグラフィックながら低スペックのパソコンでも楽しめるため、アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパや韓国、そして中国で巨大な固定ユーザーを抱える超人気オンラインゲームに成長しました。中国市場で『World of Warcraft(魔獣世界)』を大きく育ててきた"The 9(第九城市)"が、Blizzard Entertainment社からこの5月に突然中国でのオペレーション契約の打ち切りを告げられました。ポータルサイトを運営する"Netease(網易)"が、非常識なレヴニューシェア(収入の分配率)を提示して、中国でのオペレーション権を奪い取ったのです。"The 9(第九城市)"の『World of Warcraft(魔獣世界)』は6月で運営が中止されました。"Netease(網易)"はユーザーアカウントの移行作業に手間取っていて、7月末にようやくベータ版での運営を始める見通しとのこと。この1ヵ月半、ユーザーはゲームを楽しむことができない状況にああり、新オペレーター"Netease(網易)"への不満は爆発寸前でした。そうした中、China Joyの会場で"Netease(網易)"は"新生"『World of Warcraft(魔獣世界)』を必死にアピールしていましたが、ユーザーの反応は冷めた感じのものでした。きっと固定ユーザーを大きく減らしての再スタートとならざるを得ないでしょう。いっぽう『World of Warcraft(魔獣世界)』というキラーコンテンツを奪われた、向かい側の"The 9(第九城市)"のブースは、FIFA公認サッカーゲームを中心にプロモーション展開していましたが、『World of Warcraft(魔獣世界)』が抜けた穴を挽回するのは不可能でしょう。因縁のThe 9とNeteaseのブース日本では、ファミコンやプレステなどのコンソール・タイプのゲームが"テレビゲーム"のマーケットを作り、PSP、DS、PS3、Wiiなどに受け継がれて、オンライン対応となっていきました。『ドラゴンクエスト9』は任天堂DSを持っていなければ遊べません。しかも、スクエア・エニックスが販売するソフトウェアの収入の一部が任天堂に入って、ハードウェア事業の損失を補填(利益を上積み)する、と言う典型的な"囲い込み型"のビジネス・モデルでした。プレステ2で『ドラクエ8』を遊んでいた人が、『ドラゴンクエスト9』を遊ぶには、ハード(任天堂DS)とソフトで2万円以上の出費を余儀なくされるのです.....。エンタテインメントの初期費用に2万円も3万円も出せるのは、世界的に見ればごく少数の富裕層でしかありません。いっぽうパソコンとインターネット環境があれば楽しめるオンラインゲームは、初期費用はほぼ無料。パソコンを持たない人たちでも、韓国ならPCバン、中国ではネット・バーと呼ばれる"インターネット・カフェ"で、1時間100~200円程度で楽しめます。ゲームそのもののランニング・コストも、結構遊んで1ヶ月1,000円~2,000円くらいが標準です。新興国ではパソコンやインターネットの普及にあわせて、オンライン・ゲームの市場が発展してきたのです。中国でもPSPやWiiを楽しんでいる人たちがたくさんいますが、この人たちはあくまでも"富裕層"であって、世界的にみれば、オンラインゲームのマーケットのほうが圧倒的に大きいのです。そんな中、China Joyに出展していたゲームの中で、日本製はたった一つ(コーエーの『三国無双オンライン』)。しかも、中国のローカル・オペレーターへのライセンス供与と言うことで、日本ブランド(メーカー)としの出展は一社たりともありませんでした。7年前北京で開催されたChina Joyでは、日本のゲームソフトの会社が何社か出展していました。ファイナルファンタジーなど、日本のゲーム・キャラのコスプレ姿の来場者もたくさん目にしました。ところが、ことしのChina Joyでは日本産ゲーム・キャラは姿を消しました。オペレーター・ブースのステージでのデモンストレーションは、中国産か韓国産のゲームキャラクターのコスプレ。かつてのぎこち無さも消えて、メイン・トレンドとして確立した感すらあります。ゲームと言えば日本というのは、すっかり過去のお話になってしまいました。中国製ゲームの中国製キャラクターの中国人によるコスプレ・ショウコミック、アニメ、ゲームなどのコンテンツが、日本の基幹産業になる、などとおっしゃっている方がいますが、このままでは終わっちゃいますね、少なくともゲームは。コミックやアニメも同様の運命を歩むことになるかも知れません....。例えば、宮崎駿のアニメは中国でもたいへんな人気がありますが、正式に映画館で上映されたことも無ければ、正規版のDVDが流通しているわけでもありません。その理由をシンプルに言ってしまえば、海賊版やまがい物が横行する中国では、版権ビジネスで収益を刈り取るのが困難だ、と思い込んでいるからです。この考えは間違っています。日本ほど厳格に版権を収益化できないかも知れませんが、中国なら中国なりの収益化ビジネスモデルは存在するのです。かつて日本製品の輸出は、欧米など先進国向けに成功しました。そして、各国に一定比率で存在する"富裕層"向けに高品質の製品やサービスを提供することで成功をおさめてきました。中国マーケットに対しても、「富裕層を狙え」みたいな合言葉が日本企業内で浸透しているようです。中国の富裕層は確かに増えています。でも1億人とか2億人でしょう。インドは?中東は?アフリカは?と考えていくと、マーケットとして巨大かつポテンシャルが高く、真に魅力的なのは、新興国の富裕層ではなく、ボストン・コンサルティング・グループが"ネクスト・ビリオン"を呼んでいた、新興国における富裕層と貧困層の中間層向けマーケットなのだと思います。数年後には10億人規模の市場を形成するので"ネクスト・ビリオン"なのですが、このボリューム・ゾーンを狙っていかなければ、経済大国としての日本のプレゼンスは無くなってしまうでしょう。などという考えのままでは、日本のアニメやゲームなど日本のポップカルチャーもいずれは衰退してプレゼンスを失っていくことになるでしょうし、ビジネスとしても風化してしまうでしょう。ご存知の通り、日本のケータイは端末もコンテンツも世界的には苦戦を強いられています。端末メーカーは、通信オペレーターが決めたスペックに基づいて端末を用意し、コンテンツ・プロバイダーもほぼ統一された端末機能に最適化されたコンテンツを用意して、通信オペレーターが"公式サイト"というお墨付きを与える。こうしたビジネスモデルは、総務省(郵政省)や経産省(通産省)の強力な行政指導と、新興国の中間層一人当たりの月収と同じくらいの通信費やコンテンツ代を支出可能な富裕層が居てこそ成り立つわけで、島国ニッポンの特殊モデルに過ぎないのです。そんなビジネスモデルに甘んじてきた日本の端末メーカーもコンテンツ・プロバイダーも、海外では競争力が無いのです。日本型或いは先進国型或いは富裕層向けのビジネスモデルを見直すことこそ、沈み行く日本を立ち直らせるための唯一の処方箋ではないでしょうか。117億円もかけて"国立メディア芸術総合センター"を作ろうとする構想は、過去の遺物・産物を懐かしむ程度のものにしかなりません。日本の主幹産業として、アニメやゲームを育てていくと言うのであれば、ビジネスモデルの構造改革を側面から支援していくことこそ重要なのだと思います。それは貧困アニメーターを救い上げるなどと言う単純な話ではありません。単純労働の人件費など所詮新興国に敵うわけが無いのですから、指導系に切り替えていくとか。繊細なものづくりの部分は日本人固有の価値として尊重し保持しつつも、海外の非富裕層向けのビジネスを早急に整えていかなければ、家電、半導体、IT製品などに続いて、日本の誇るアニメやゲームも衰退化していくようで心配です。おまけ(China Joyのキャンペーン・ガール)
2009.07.27
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中国内地以外の株式市場に上場している中国のネット系企業の「勝ち負け」が明確になってきているような感じを受けています。「勝ち組」は、何と言っても世界最大シェアのインスタントメッセンジャーQQのプロバイダーで中国トップPVのポータルサイトのオペレーターでもあるTENCENT(騰詢)で、時価総額は2兆円を越えています。そして、お馴染み中国での実質シェアが80%を越える検索サイトのBAIDU(百度)。TAOBAO(淘宝)打倒のために立ち上げたC2C型のECモール"Youa"のほうは、なかなか軌道に乗っていない様子ですが、一時低迷した株価は復活の兆しを見せています。更には、ALIBABA(アリババ)。中国のECプラットフォームにおいて圧倒的なシェアをキープするTAOBAO(淘宝)やALIPAY(支付宝)も運営しているのに、意外に低めのバリュエーションではないか、とも思ってしまいます。いっぽう「負け組」の筆頭はFOCUS Media(分衆傅媒)と言い切ってよいでしょう。エレベータホールなどに設置したテレビモニターで広告を放映するディスプレイ・アドが一世を風靡して、中国のネット広告エージェンシーに次々とM&Aを仕掛けて膨張したFOCUS Mediaでしたが、2008年決算では巨額の貸倒損失を計上し、キャッシュフローが危うくなってきました。現業であったディスプレイ・アド事業をSINA(新浪網)に売却する計画を発表したものの、どうもご破算になってしまったようです。株価も一時期の10分の1。いよいよアブナイ企業の筆頭になりつつあります(参考=拙ブログ)。The 9 Limited (第九城市)は、稼ぎ柱であったオンラインゲーム"World of Warcraft(魔獣世界)"の運営権をNETEASE(網易)に奪われてしまいました。CCTV(中国中央電視台)のキャスター出身の美人CEOに代わってからの大失態で、苛酷なリストラの真っ最中です。FOCUS Mediaのディスプレイ・アド事業を買収しようと目論んだSINA(新浪)も「負け組」濃厚と言えそうです。QQ、SOHU、NETEASEといった主要ポータルが、インスタントメッセンジャー、オンラインゲーム、Eメールサービスなどからの収入をバランス良く取り込んでいるのに対し、SINA(新浪)はポータルサイトの広告収入の依存度が高いので、安定性や収益性のうえで課題があるわけです。ちなみに、ALIBABA(アリババ)の創業者・馬雲(Jack Ma)が"代用教師"から身を興した、と言うのは有名な出世話となっていますが、これはどちらかと言うと例外的で、多くの中国のネット系企業のトップは、スタンフォードやMITなどの修士課程で学んできた海外留学からの帰国組です(しかも、ほとんどアメリカ帰り)。日本のネット系企業がNASDAQなど海外市場での株式上場を目指さないのは、またどうしてもドメスティックで囲い込み的なビジネスモデルで留まっているのも、海外留学やビジネス経験の無い創業者やトップが多いからかもしれません(三木谷さんはハーバード出ですけど)。以下、主な中国ネット系企業のトップの経歴と時価総額。「海帰」(海外帰国組)は、中国語の発音が同じなので「ウミガメ」(海亀)です。TENCENT(QQ) - 世界最大シェアのインスタント・メッセンジャーと中国語最大PVのポータルサイト総裁・劉 [火只]平(ウミガメ・40代前半)ミシガン大学で電子工程を学び、スタンフォード大学で修士。HKSE(0700.HK) /時価総額:2兆2,500億円(180.5B HK$)BAIDU(百度) - 中国での検索エンジンシェア80%創業者・総裁兼CEO・李彦宏(ウミガメ・40歳)北京大学情報管理学部卒業、ニューヨーク州立大学バッファロー校にて修士号取得。2000年、BAIDUを設立。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(BIDU)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:1兆900億円(11.47B HK$)ALIBABA(アリババ) - 世界最大のB2Bプラットフォーム"ALIBABA"、中国最大のECプラットフォーム"TAOBAO"、Yahoo!中国創業者・馬雲(44歳)杭州師範学院外国語科卒業後、杭州電子科技大学で英語を教える。1999年、ALIBABAを創業。2006年、香港株式市場上場。HKSE(1688.HK)、フランクフルト、ミュンヘン、他 / 時価総額:1兆120億円(80.93B HK$)KINGSOFT(金山軟件) - ウィルス駆逐や翻訳ソフトの開発販売、オンラインゲーム運営創業者・董事兼CEO・求伯君(44歳)人民解放軍国貿科技大学情報システム科(短期大学卒業資格)。2000年、KINGSOFT董事長。2005年、香港株式市場に上場。HKSE(3888.HK)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:9,000億円(7.22B HK$)NETEASE(網易) - ポータルサイト大手、フリーメールサービス、オンラインゲーム運営共同創業者・CEO・丁磊(37歳)中国電子科技大学卒業。1997年にNETEASEを創立。2000年、CEOを退任しCTOとなる。2002年、NASDAQ上場。2005年、CEOに返り咲く。NASDAQ(NTES) / 時価総額:5,000億円(5.34B HK$)SOHU(捜狐) - ポータルサイト大手、オンラインゲーム運営創業者・CEO・張朝陽(ウミガメ・44歳)清華大学卒業後、MITで博士号を取得。1998年SOHUの前身となる愛特信公司を設立。2000年NASDAQ上場。NASDAQ(SOHU)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:2,300億円(2.45B US$)SINA(新浪) - ポータルサイト大手CEO兼董事総裁・曹国儀(ウミガメ・39歳)復旦大学卒業。オクラホマ大学コミュニケーション学修士、テキサス大学オースティン・ビジネススクールMBA。1999年、SINA財務副総裁。2006年、SINAのCEOに。NASDAQ(SINA) / 時価総額:1,700億円(1.77B US$)Perfect World(完美時空) - オンラインゲーム運営創業者・董事長総裁・池宇峰(37歳)清華大学化学系卒業。P&Gに入社後、1995年起業。2004年、Perfect World(完美時空)を創業。2009年、NASDAQ上場。NASDAQ(PFWD) / 時価総額:1,620億円(1.71B US$)FOCUS Media(分衆傅媒) - オフィスビル・高級マンション内におけるディスプレイ・アド、インターネット広告代理創業者・CEO・江南春(35歳)華東師範大学卒業。大学三年生のときに広告会社を起業する。2003年、FOCUS Mediaを創設。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(FNCN) /時価総額:1,050億円(1.09B US$)The 9 Limited (第九城市) - オンラインゲーム運営総裁・陳暁薇(ウミガメ・女性・多分41歳)ピッツバーグ大学でバイオ化学の博士号を取得。CCTVでキャスター及びプロデューサーを経て、バイオ薬品会社経営陣からネット系への転職。08年5月に総裁就任。NASDAQ(NCTY) /時価総額:230億円(242.96M US$)SHENDA TECH(盛大) - オンラインゲーム運営創業者・董事長兼CEO・陳天橋(35歳)上海の復旦大学卒業。1999年、盛大を創業。2005年、NASDAQ上場。NASDAQ(SDTH)、フランクフルト、ベルリン、他 / 時価総額:220億円(224.4M US$)ちなみに、日本はというと....。ヤフー株式会社(ヤフージャパン)社長・井上雅博東京理科大学理学部卒業、ソフトバンクからヤフージャパンに。東証1部・JASDAQ(4689) / 時価総額:1兆7,500億円楽天株式会社創業者・代表取締役会長兼社長・三木谷浩史一橋大学商学部卒業、ハーバード大学にてMBAを取得。1997年、株式会社楽天を設立。JASDAQ(4755) / 時価総額:8,000億円株式会社ミクシィ創業者・代表取締役・笠原健治東京大学経済学部経営学科卒業。2004年、mixi開設。マザーズ(2121) / 時価総額:1,000億円株式会社サイバーエージェント創業者・代表取締役社長・藤田晋青山学院大学経営学部卒業、インテリジェンスに就職。1998年、サイバーエージェント設立。マザーズ(4751) / 時価総額:600億円こんなんだっけ.....。
2009.07.22
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営業収入において、CCTV(中国中央電視台)に続き、SMG(上海メディアグループ)を凌ぐ、中国第2のメディア・グループに成長した『Focus Media(分衆)』グループ。元々エレベータのポスターボード広告屋だった『Focus Media』が、薄型ディスプレイを取り入れて急成長し、NASDAQへ上場を果たし、中国の大手インターネットエージェンシーを買い捲った快進撃は、以前このブログでもご紹介したことがあったかと思います。その『Focus Media』が中核事業であるオフィスビルなどのディスプレイ広告事業を、中国のトップポータルサイトである『SINA(新浪網』に売却することを発表しました(Hexun Newsなど)。高収入・高消費の若者が集中する高級オフィスビルの"エレベータ待ち時間"に注目し、エレベータ周辺に薄型ディスプレイを取り付けてCFを放映する。『Focus Media』の成長はここから始まりました。NASDAQに上場すると、株式交換を利用して、中国のトップ・インターネットエージェンシー『Allyes(好耶)』を始め、大手ネット広告代理店を買収しまくり、インターネット・トラフィック情報などの調査会社『iResearch』なども傘下にしました。飛ぶ鳥をも落とす勢いだった『Focus Media』がつまづいたのは、携帯電話を利用したダイレクト・メール事業。携帯キャリア『China Mobile(中国移動通信)』のユーザー・個人情報を利用して、ターゲッティングの効いたマーケティング事業を始めたのですが、個人情報の商業流用ということで、世の中のバッシングを浴びてしまったのです(拙ブログに関連記事)。社会問題にまで発展し、中国でも個人情報保護法みたいなものが整備されるきっかけにもなりました。『Focus Media』は11月に携帯電話ダイレクト・メール事業から撤退、多額の損出を出してしまったのです。そもそも『Focus Media』は、株式交換を利用してM&Aを繰り返してきました。『Allyes』の買収価格は3億ドル(約300億円)と言われていますが、そのすべてを『Focus Media』が新たに発行する株券によって支払っているのです。世界的な金融危機で株価が下がれば、たまったものではありません。一時は100ドル近くあった『Focus Media』の株価は、6ドル以下まで下落しました。しかも、積極的に買収した会社群の財務状況が芳しくなく、ネット広告代理店では巨額の滞留売掛金が発覚。買収に要したのれん代の償却すら、ままならない状況に陥ったのです。しかも、事業清算となるとキャッシュに直接影響してしまうわけで、携帯電話ダイレクト・メール事業撤退と株価の低迷により、『Focus Media』は一気に資金難に陥ってしまったのです。12月に入り、業界筋では、『Focus Media』が『Allyes』を中核としたインターネット広告事業をGoogleに売却する、との噂がささやかれていました(Marbridge Dailyなど)。事実、『Focus Media』はGoogle傘下のDouble ClickやMSN(Microsoft)と売却話を進めていたようです。ところが『Focus Media』は自分が株式交換で『Allyes』を買収した際の3億ドル(約300億円)と言う条件を曲げずに、「このご時勢、自分の立場も弁えず何考えてるんだ」と一蹴されてしまったようです。同時進行で、ディスプレイ広告事業を『SINA(新浪網』に売却する交渉をしていたことになりますが、『SINA』も新株4,700万と株式交換ということになったようです。時価だと12億ドル(約1,200億円)ということになりますから、ディールクローズ予定の09年6月まで『SINA』の株価が現状維持してくれれば、『Focus Media』としては儲けモノになるかもしれません。中核のディスプレイ広告事業を売却後の『Focus Meida』には、インターネット広告事業くらいしか残りません。しかも、巨額な滞留売掛金とのれん代は残ったままです。08年の決算は監査法人が意見を保留する危険性も大きく、NASDAQ上場廃止の可能性すらあります。当然のことながら、『Focus Media』のファウンダー江南春はインターネット広告事業の売却先を探すのに躍起です。近い将来、『Focus Media』は事業会社を持たないペーパーカンパニーに成り下がってしまうことでしょう。それでも、江南春を始めとする『Focus Media』の設立メンバーたちは、『Focus Media』自体の上場益や『SINA』の株式など、巨額の財産を手に入れたことになります。そして、経済犯として司直の手を逃れるために、近い将来カナダあたりに逃亡してしまうのでしょう....。さて、買収したほうの『SINA』のほうはと言うと、買収後の営業収入は8億ドル(約800億円)を越え、CCTVの100億RMB(約1,400億円)には及ばないものの、SMG(上海メディアグループ)を凌ぐ、中国第2のメディア・グループとして君臨することになります。蛇足ながら、誰が見てもインサイダー取引と言える動きを『Focus Media』の株価がしていたことを指摘しておきましょう。『SINA』による『Focus Media』中核事業の買収が発表されたのは、22日のNASDAQ市場が開く前のことでした。ところが発表前の18日から『Focus Media』の株価が急激に上がり始めています。17日終値が8.37ドルに対し、19日終値10.98ドル(Yahoo! Finance)。片や『SINA』は19日終値29.23ドルまで変な動きはしておらず、買収発表後の22日始値が26.36ドルと、一気に下落しました(Yahoo! Finance)。『Focus Media』関係者のモラル、ってこんなものでしょう。
2008.12.24
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最近、日本のインターネット広告会社などが、中国語サイト向けのSEO(検索サイト最適化)サービスを売り込んだりしています。うん、確かに日本やアメリカではSEOが花盛りですね。GoogleやYahoo!の検索結果のできるだけ上位のクリックされ易い位置にウェブサイトのリンクを表示することができるか、これは見込み客をウェブサイトに呼び込むためには、たいへん重要な施策と言えるでしょう。中国関連のキーワードでググったときに、偶然にも自分のブログが検索結果の上位に表示されたりすると、何となく嬉しくなったりもします。いまは日本の大企業だけではなく、温泉旅館やブランドショップまでが、中国の人たち向けの中国語サイトを用意しているくらいですから、そうしたウェブサイトに見込み客を呼び込むための施策は注目に値するでしょう。ところが私は中国語サイト向けにSEOにあまりお金をかけることはお勧めしていません。答えは至ってシンプルで、SEOよりもリスティング広告(キーワード)を購入したほうが一般的に安く済むし確実だからです。まず、様々なデータにより若干の差異はありますが、中国のネットユーザーの6割から7割はネット検索に『百度(Baidu)』を利用しています。Googleを利用しているのは15%~20%程度。Yahoo!は10%くらいです。ですから、対象ウェブサイトに見込み客を呼び込むためには、まず『百度(Baidu)』の検索結果で"目立つ"ようにするのが重要になります。さて、その『百度(Baidu)』の検索結果画面をご覧になってみてください(リンクは「美白」と言うキーワードの検索結果です)。幅の広い左側の検索結果に、どうしても目が行き易くなると思います。Googleでは、オーガニックな(人為操作を加えていない)検索結果が左側に並びますから、『百度(Baidu)』でもそうかと思ってしまいそうですが、検索結果の上位はリスティング広告である場合が大半です。リスティング広告による表示なのか、オーガニックな検索結果なのかは、リンクURLの後にさりげなく表記されてはいます。「推広」と書いてあれば前者であり、「百度快照」と書いてあれば後者です。人気キーワードの場合、検索結果の1ページ目がすべてリスティング広告による表示であったりしてしまいます。幅の狭い右側の部分は、Googleで言うところの「スポンサーリンク」で、こちらもリスティング広告の表示です。一般にインターネット・ユーザーは、検索結果画面の左側のT&D(説明文)を読みながら、上から順に、自分が求めている情報がありそうなサイトを探して、クリックして行くわけです。SEO(検索サイト最適化)は、一般にオーガニックな(人為操作を加えていない)検索結果への対策です。ところが『百度(Baidu)』の場合、上述の通りオーガニックな検索結果より、リスティング広告の表示のほうが、上位になります。逆の言い方をするなら、左側の表示結果を上位にしたければ、リスティング広告を利用すれば良いのです。コストはどうでしょう?『百度(Baidu)』の左側検索結果のリスティング広告の料金は、Googleの「スポンサーリンク」とほぼ同様の仕組みで、1クリックあたりの金額(CPC)を広告主によるオークションによって決定されます。最低入札金額は0.3RMB(約5円)。大多数のキーワードは1RMB(約15円)以内で購入することが可能です。しかも、その多くは1RMB以内で検索結果ページの最上位に表示させることもできるのです。仮に、SEOのために3万RMB(約45万円)のお金を費やするのであれば、その3万RMBを『百度(Baidu)』のリスティング広告に費やしたほうが、確実に3万人のユーザーを目標のウェブサイトに呼び込むことができると言うわけです。ですから、中国語のウェブサイトに見込み客を呼び込みたいと言う企業の皆さまに、私はまず『百度(Baidu)』でのリスティング広告をお勧めします。もちろん、ウェブサイトを制作するにあたっては基本的なSEO施策は行うべきですが、日本と同じようにYahoo!やGoogle向けのSEO対策を多額のお金をかけてまで行うのは、費用対効果から考えても甚だ疑問だと言うことです。ちなみに、韓国語のウェブサイトについても同様なことがいえます。韓国のネットユーザーの約70%は、『NAVER』と言うポータルサイトを利用して検索しています。この『NAVER』の検索結果も上位表示部分は"Paid Search"と呼ばれ、Overtureの韓国法人が独占的に販売しているリスティング広告の一種なのです。日本企業向けに、中国語や韓国語のウェブサイトのSEOを売り込んでいるウェブ制作会社やネット広告会社がありますが、費用対効果を考えるのであれば、まずリスティング広告を始めてみるのが良いのではないでしょうか。
2008.08.23
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「来月からガソリンが値上がりします!!今すぐ、満タンにしておきましょう。」そんなケータイ・メール(ショートメール)が北京の自家用車所有者に送りつけられてきたそうです。日本では暫定税率の一時撤廃を見込んで、早くも4月1日からガソリンの値下げに踏み切ったガソリン・スタンドに車列ができたそうですが、中国・北京でも翌月からの値上げに対抗しようと、ガソリン・スタンドに車列ができたそうです。実はこのケータイ・メールが一種の"囮広告"であったことが判明しました。ガソリンに含まれる鉛など成分の規制が厳格になるため、在庫を早々に売り切ってしまおうと考えた石油会社の策略だったのです。中国でもケータイのダイレクト・メールにはイカガワしいものが多いので、中国の人たちは安易に信じたりしません。ところが、このメールは多くの人が信じてしまいました。なぜなら、発信元が100番から始まるケータイ・キャリア(=通信会社。日本ならDocomoやauやSoftbank)だったことと、メッセージの最後に大手石油会社の社名まで入っていたからです。この"囮広告"は2つの点から"効果的な"マーケティング手法だったといえます。まず、北京に住む自家用車所有者に絞り込んでダイレクト・メールを送ったということ。つまり、ガソリンが必要な消費者だけに照準を合わせた高度なターゲット・マーケティングだったと言えます。次に、ケータイ・キャリアがそのダイレクト・メールの発信元だったということ。スパム・メールが氾濫する中、疑わしい発信元からのメールであれば、フィルタリングに引っかかって受信すら拒否できるとか、仮に受信しても開かない(読まない)でゴミ箱行きとかできちゃうわけですが、さすがに100番(ケータイ・キャリア)が発信元だと何か重要な通知かと思って、多くの受信者が開いてしまうことになります。つまり"開封率"が極めて高いダイレクト・メールだったわけです。見込み客をできる限り絞り込んで、見られる可能性の高いメッセージを届けることこそ、究極のマーケティング・コミュニケーションと言えます。なぜこんなことができるか、結論から申しあげれば、ケータイ・キャリアが莫大な個人情報を集めていて、それを一部のケータイ・ダイレクト・メールの広告会社が利用できているからなのです。さすが情報管理と統制と個人の行動に目を光らせている中国だけあって、ケータイ・キャリアは契約者の氏名や住所のみならず、多くの情報を収集し管理しているようです。自家用車所有者ならば、例えばベンツを購入した、というような情報まで握っているようです。もちろん、性別や収入、学歴、趣味や嗜好性などの情報まで管理しちゃっている様子です。きっと通話を盗聴したり、メールやケータイ・サイトへの訪問利益を分析しているのでしょうね....。もちろん、ケータイ・キャリアを後から操っているのは中国の政府当局であることは言うまでもありませんけど。3月15日(かつては3月8日だったのですが...)は中国の「消費者の日(消費者権益日)」です。消費者保護の観点から、メディアが様々な特集を組みますから、日頃後ろめたいことをしている企業は恐々諤々としてこの日を迎えるわけです。いわゆる"偽装食品"や"品質不備"はこの日に叩かれるべき事象なのですが、日中関係がよろしくないときには、日本ブランドが批判の矢面に立たされたりしていました。ことしの「消費者の日」の"告発"番組の目玉は、CCTV(2チャンネル)が放送した"個人情報"に関する特集でした。エレベータ・ホールのディスプレイ広告から成長し、いまや中国トップのオンライン・エージェンシーをはじめ多数のメディア企業を傘下におさめるNASDAQ上場企業"FOCUS Media(分衆伝媒)"の子会社であるFOCUS Mobile(分衆無線)と言う広告会社が、中国のモバイルユーザー5億人のほぼ半数に関する様々な個人情報を利用してケータイ・ダイレクト・メールのビジネスをしている、と暴露したのです。その個人情報たるや、保険や金融商品の購入履歴、銀行の預金残高、住居のレベル(持ち家なら高級マンションなのかどうか)などまで含まれていたのです。FOCUS Mobile(分衆無線)はこうした個人情報を"売り"にして広告主を集めており、幹部社員が広告主に売り込んでいる様子を、生々しく隠し撮りされてしまい、CCTVで曝されてしまったわけです。このスキャンダルは、「短信門事件」("短信"はショートメールのこと。中国では"活力門事件"を呼ばれたライブドア事件に引っ掛けた感じです)として他のメディアやネットを通じて中国じゅうに広がりましたが、さすが中国のお国柄、そうした個人情報がどのように収集され管理されているのか、についてはほとんどスルー。そうした個人情報をビジネスに利用したFOCUS Mobile(分衆無線)と、片棒を担いだとみられたケータイ・キャリアに非難が集中したのです。特にメディアと広告ビジネスで"一人勝ち"状態のFOCUS Mediaは批判の矢面に立たされ、グループ・トップの江南春が謝罪声明を出すまでに至ったのです。今後はユーザーの事前承認を得たPermission Mailのみのビジネスにすると明言しましたが、果たしていかがなものでしょうか....。ちなみに、ネットのBBSなどに書き込まれたFOCUS Mediaに対する非難コメントは、キレイに削除されたり、或いは擁護のコメントによって薄められたりしたことは、言うまでもありません。元来、中国では個人情報に対する意識が極めて低く、同僚の給料から家の間取りまであっという間に筒抜けになるのが当たり前、と言う雰囲気でした。そのくらい口が軽い、というか情報管理の意識が浸透していなかったのです。まして当局が様々な手段で個人情報を収集している、と言う暗黙の了解と諦めがあるので、秘密の情報が公然と曝されなければ良し、と考えている人も多いようです。とは言え、最近ではこうした(たぶん当局が"治安維持"のために収集している)個人情報がビジネスに流用されるようになると、中国人民の不満も抑えきれなくなっていくでしょう。そこで、ようやく中国でもオンライン(ネット上)での個人情報などを保護するための「オンライン商業データ保護規定」を6月施行に向けて、準備しているようです。それにしても、"商業"って入っているところが中国っぽいですね。
2008.04.03
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いま、中国ではオンライン・マガジンが"ホット"です。POCO(Alexaランキング300位台)をはじめ、ZCOM、ieBookなどのオンライン・マガジンを集めたポータルサイトがたくさんあり、そうしたポータルからたくさんのオンライン・マガジンを購読することができます。それらのマガジンは、実際に雑誌として販売されているものが多く、"電子版"としてリアルなペーパー仕様マガジンのサマリーであったり、コンセプトを同じくしながらも別編集になっていたりします。たとえば中国の最も売れている女性誌のひとつである中国の"Ray"(瑞麗)もオンライン・マガジン化されていて、上述のポータルサイトなどから無料で気軽に購読することができるのです。もちろん、雑誌社などとは別にオンライン・マガジンを提供している企業もあります。著名タレントが編集長を引き受けているものから、経済や自動車情報の専門誌など、とにかくたくさんのラインナップが揃っています。日本のオンライン・マガジンは専用のリーダーをインストールしないと表示できない場合が多いのですが、中国のオンライン・マガジンはウェブからダウンロードすれば誰でも見ることができるようなファイル形式になっています(多くはflashをexeファイル化しています)。日中のビジネス・モデルの違いが、オンライン・マガジンのファイル形式に如実に顕れていると言えます。日本の場合、有料のオンライン・マガジンが多いようで、購読料で稼ごうと言う魂胆です。誰でも読めるようなファイル形式だと、回し読みされてしまい、有料購読者が増えません。だから、プロバイダーは競い合って、独自のマガジン・リーダーを開発して、無駄なお金を使ってしまいます。挙句の果てに、お金を払うにはいまいちのオンライン・マガジンが多いので、なかなかポピュラーになりません。楽天のように、いわゆる"囲み込み系"を狙っているのですが、たぶん狙い通り行っていないようです。中国の場合、無料のオンライン・マガジンが多いので、コピーされようが回し読みされようが構わないのです。と言うより、むしろ大歓迎なわけです。なぜならば、広告収入をベースとするビジネスを狙っているからです。ですから、どんなPCでも表示できるようなファイル形式にして、メールに添付してお友達同志で転送しあったり、フラッシュ・メモリーでやり取りできるようにしています。一般に広告は、より多くの人に見てもらえれば、より多くの価値=値段がつきます。オンライン・マガジン=雑誌はクラス・メディアですから、購読者層がかなりセグメンテーションされます。より多くの見込み客により効率的に広告を表示することこそ、広告主がいつも求めて止まないことなのです。日本では、それなりのオンライン・マガジンを制作するのに、3ヶ月くらいの時間と数百万円のお金がかかるそうです。中国では、50ページくらいのオンライン・マガジンを制作するのに、3~4人のチームで1ヶ月で完成するそうです。リアルな雑誌のオンライン・マガジン化であれば、原稿と写真などの素材は使い回しができますから、コストのほとんどは人件費になります。きっと20万円とか30万円あればできちゃいますよね。もっとも最近は、動画系サイトが進化してしまって、オンライン・マガジンなど用済みだ、と言うご意見もあろうかと思いますが、読者の意思でページをめくれたり、リードから興味のある記事だけクリックして本文を楽しんだりできるので、基本的に流れっぱなしで視る側が時間をコントロールできないムービーとは違う魅力があるはずです。音楽だってムービーだって埋め込めるわけで、ムービーよりもずっとインタラクティブなコンテンツと言えるのではないでしょうか。しかも雑誌など、既にペーパーメディア向けのコンテンツをお持ちの方にとって、オンライン・マガジンは制作面での親和性が高いわけです。写真と文章が基本ですから....中国で最も人気のオンライン・マガジンの"KAILA(開[口]篇に[拉]=月刊)"は毎月1,100万件のダウンロードがあるそうです。これだけで、世界で最も発行部数の多い読売新聞を圧巻しているのですが、メール転送などで回し読みされる数を含めると、2,000万人以上にデリバリーされている計算になります。このオンライン・マガジンに挿入されている広告ページにしても、ペーパーの雑誌とは違ったさまざまな細工ができますから、メディアとしての価値は相当なものになると思います。ただ中国チックで悪質な(!?)オンライン・マガジンも氾濫しています。日本のグラビア・アイドルの写真集などは、スキャンされてそのままオンライン・マガジンとしてアップロードされたりしています(見るほうはありがたいのですが....)。exeファイル形式ですから故意、偶然にかかわらずウィルスがついてくることもありますし、その場合の被害は甚大です。こうした中国の"無防備さ"が背景にあるので、オンライン・マガジンが普及しているとも言えるでしょう。日本の雑誌社などコンテンツ・ホルダーはオンライン・マガジンには消極的ですね....。コストはかさむし、写真やモデルの版権処理も面倒だし、何のメリットも無い....むしろ本体(ペーパーの雑誌)の販売部数に悪影響を及ぼす、みたいに思ってらっしゃるのではないでしょうか?でも中国の主要雑誌の多くはオンライン・マガジンも発行して、さらに儲けようと試みているわけです。
2007.10.19
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北京オリンピックまでちょうどあと1年と言う8月8日の夜8時8分、天安門広場では"あと1年"の宴もたけなわの頃、私は北京で結構シビアなお仕事の打合せに参加していました。中国を代表するネット企業2社の若きCEO2名と、ある意味で日本を支配する大会社の経営企画室の人たちが、業務提携をするかしないかという打合せの場に、何故か"立ち会い"を求められてしまったのです。この打合せの中で、日本を代表するようなビジネスマンのお一人が、北京オリンピックまであと1年のその日のことを話題にし、この1年が最大のビジネス・チャンスであるようなことを口にしたのですが、北京の若きCEO二人は口を揃えて、「后奥運(ホウ・オウユン)=オリンピックの後」と言う言葉を使ったのが印象的でした。日本では、北京オリンピックまでが中国ビジネスのひとつの区切りで、その後の経済の収縮を懸念する意見が主流を占めているように思えます。2010年には上海で国際博覧会がありますが、その間をどう"食い繋ぐ"か、或いはそれまで中国の経済が成長基調でいれらるのか、或いは来年の北京オリンピックとともに中国のバブルは弾けて、それがトリガーとなって政体まで崩壊してしまうのではないかとか、仕事で中国に深く関わっている人たちですら自虐的で悲観な憶測を楽しんですらいるわけです。それでいて多くの日本の企業組織は、オリンピック後の対中国施策に有効と思える手を打つことも無く、ただ状況を見守るという姿勢で、その前、つまりオリンピックまでに稼げるだけ稼げればいいだろう、という雰囲気すら漂っています。ところが、どっぷりこんとオリンピック・バブルに浸っているのでは思えるウェブ系中国新興企業の若き経営者の多くは、意外と冷静に北京オリンピック以降のビジネス・プランを持っている感じを受けています。今週も北京で何人かとお会いしているのですが、「后奥運」という言葉をよく耳にします。オリンピック景気は当然折り込み済み、或いは既に刈り取り済み、或いは自身のビジネス・テリトリーには差ほど影響をもたらさない、など2008年の予測に関しては、日本の企業などが考えるほど熱くなっていません。むしろ、彼ら彼女らの多くは2008年8月以降に当然ながら来ると予想できる"祭りの後"の虚無感をどう埋めていくか、或いはどう利用するか、と言うことを既に考え尽くしている様子です。マクロ的にみれば、北京オリンピックを境に、海外からの資金の流入は減少傾向に向かうでしょう。中国国内企業にとってこれはある意味でチャンスになります。しかも、かつてのアメリカや日本がそうであったように、情報サービスのカテゴリーであれば、経済が低成長に移行しても、一回り大きく成長するとか頭ひとつ抜け出すような方向は十分見出せるでしょう。もっと小っちゃく考えるなら、他人(外国資本や競合他社)がお祭りに浮かれている間に力を蓄えとこう、みたいなキリギリスじゃなくて蟻クンみたいな経営者がたくさんいらっしゃるのだな、という感じです。そこのところは、中国の地に足が着きかねている日本などの"一見さん"とは大違いで、中国で一生喰っていこうと思っている彼ら彼女らだからこそ、当然のことながらもっと長いレンジの中で、いまの状態を冷静に分析することも可能なのでしょう。よくよく考えてみれば、いまさら北京オリンピックがどれほどの機会を作ってくれると言うのでしょう?共産党の政権にとっては、ナチス・ドイツのベルリン・オリンピックよろしくパブリック・リレーションの絶好の機会ではあるでしょう。観戦に普段より多くの外国人がやってきてお金を使っていってくれるでしょう。そのために、競技場もホテルもビルも道路もきれいにしているところです。でも、たかが"運動会"(奥運の"運"は運動会の"運"ですよ)じゃないですか。上海の人なんか冷ややかですし、北京の住民だって意外と冷静なものです。もちろん、これを機会に大儲けする輩も居なくは無いでしょうが、商業活動の持続性を考えれば反動に悩まされることになるはずです。とある日本の巨大広告会社であっても、株式を上場してしまうとワールドカップやオリンピックの翌年の前年割れ決算を"祭りの後"現象だと言い逃れしたとしても株価が持ち直すことは無いわけで、持続可能な成長を実現できる経営こそが求められている世の中になっているのです。北京オリンピックで一儲けしようと企んでいる日本の会社は星の数ほどあるでしょうが、一部の中国の若き経営者のように外的環境の変化を言い逃れにせずに済むように、ビジネス・プランを見据えることこそ、大切なのではないだろうか、と思う今日このごろでした....。
2007.08.31
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WPP、IPGと並ぶグローバル・メガ・エージェンシー・グループのオムニコム・グループが、中国の大手ネット広告会社創世奇跡(Wonder Ad)を買収した、というニュースが流れました(iResearch)。買収価格は2,000万US$との報道ですが、きっと出資比率は34%~49%の範囲内でしょうから、プレ・バリュエーション(買収交渉時の企業価値)として、4,000万~6,000万US$(約50~70億円)の値がついた、と考えてよいでしょう。ちなみに、この創世奇跡(Wonder Ad)の2006年の推定売上高は1億~1.3億RMB(約16~20億円)、営業利益は500万~1,000万RMB(約8,000~1億6,000万円)ですから、この会社の将来の成長を考慮せずに計算するなら、オムニコムは投資の回収に40~50年もかかることになります。中国のWeb関連会社はもちろんのこと、ネット広告会社も、内外からの投資バブルに沸いている感があります。記憶に新しいのは、2006年の時点で中国最大手のネット広告会社であった好邪(Allyes)が、エレベータホールのモニタ広告屋のFOCUS Mediaに、2億2,500万US$(約300億円)で完全買収された、という出来事でしょう(拙ブログ)。06年の好邪(Allyes)の売上高が推定で5億RBM(約80億円)、営業利益は2,000万~3,000万RMB(約3億~5億円)と想像できますので、投資回収に100年もかかるかもしれない、というとんでもなく高い金額で買収したといえなくもありません。企業価値の大雑把な計算の仕方として、営業利益マルティプルというのがありますが、上述2つの会社は1年間の本業で稼ぎ出す利益の50倍から100倍もの価値が認められた、というわけで、単純に考えると、チョー"バブル"な状況になっているのです....。こうした"買収バブル"を引き起こしている要因の一つは、中国のネット広告市場が引き続き、急成長するという期待感です。中国のネット広告市場は2006年時点で46億~60億RMB(約740億~1,000億円)といわれていて、まだ日本の3分の1程度です。けれども、成長率は44%と日本やアメリカより大きいわけです。しかも、今後数年間は30~40%台の成長が予測されているらしく、4~5年後の市場規模は3倍から4倍になると言われてます。もう一点は、中国の大手ネット広告会社は比較的営業利益率が高く、5~10%を超えているエージェンシーもあることです。いっぽう、世界的にみるとメディア取引の仲介を主業務とするエージェンシーの利益はどんどん低下する傾向にあります。あの天下の電通の営業利益率は3.3%でしかありません(とはいえ、この数字がいかに放漫経営の賜物かということには、あとで軽く触れることにします)。エージェンシー業務の中でも、メディア取引の仲介業務はあまり頭を使いません。ましてネット広告は実施や効果について客観的に"証明可能"ですので、テレビ広告を売り込むような"屁理屈"をクライアントに垂らしこむ必要性が少ないのです。ですから、若くてモチベーションの高いスタッフがいれば、案外回していけるものです。中国では、そーゆー人材の費用は、まだ高騰していないので、販売管理費を比較的安く抑えることができ、一定の営業利益が確保できているわけです。ウェブ・デザインなんかになると、そーゆーわけにも、いかなくなるのですけど.....。ですから、大手ネット広告会社への投資は、3年先の黒字化の目処すら立たないような、中国のあきれたWeb2.0企業のスタートアップなんかより、よほど堅実にリターンが望めるとも言えましょう。さらに、優良なグローバル・ブランドの広告主を取り込んでいるグローバル・メガ・エージェンシーの傘下となれば、更なる売上げの増大が期待できるわけです。電通やオーバーチェアの例を引くまでも無く、メディア取引はそのシェアを拡大すればするほど、コスト競争力が高まる仕組みになっています。たくさんの広告を集めれば、メディアの仕入れ値が安くなる仕組みだからです。ローカルのネット広告会社がグローバル・メガ・エージェンシーと提携すれば、営業利益率がさらに高まる可能性が高いわけです。ですから、日本であれほどメディアの取り扱いをかき集めている電通の営業利益率が3.3%というのは、国際的な常識から見てとてつもなく不思議なお話なわけなのです....。莫大な利益がどこかに消えてしまっているのに、そのおこぼれを授かっている持ち合い安定株主が多数派を占めているので、騒ぎにならないのでしょうかね。このように、中国の大手ネット広告会社の企業価値=買収価格は急騰しているのは、市場の拡大が見込まれ、(この種の業界としては)比較的高い営業利益率が確保され、資本提携やM&Aによるスケールメリットにより更なる営業利益が期待できる、という一応の理由があるからで、決して"バブル"とは言い切れない感じもするのです。例えば、今年の売上げが2億RMB(約32億円)、営業利益1,400万RMB(約2億2,000万円・営業利益率7%)のネット広告会社でも、向こう3年間35%の勢いで成長すると2010年の売上げは5億RMB(約80億円)になり、スケールメリットで営業利益率が10%に改善できるなら営業利益は5,000万RMB(8億円)になるという可能性を秘めていることになるわけで、50億円くらいで買収できるのであれば、かなりまともなお買い物と言えるでしょう。こうした優良な中国のローカル系ネット広告会社には、次々と資本提携やM&Aの話が舞い込んでいるようです。こうした話がまとまれば、創業者には一夜にして数億~10数億円のキャッシュが転がり込んでくるわけです。この種の創業者は30代前半の留学帰国組が多く、5~6年前に創業したばかりの頃には、一緒にお酒を飲み交わした知人も少なくありません....。なんと羨ましい限りぃ。もちろん、こうした"バブル"な風潮に便乗して、ベンチャー・キャピタルに"秀水市場"並みの売値を突きつけるような悪徳ネット広告会社もたくさん存在することを忘れてはなりません。先日訪問した、アフィリエート系のネット広告会社など、創業後3年間赤字続きで、向こう3年間も黒字化する見込みは無いというビジネス・プランを堂々とご披露しながら、中国でもアフィリエート系広告は急成長する、というだけの理由で、のほほんと1億RMB(約16億円)もの投資を求めてらっしゃいました。いくらネット広告の成長が見込めるとしても、あぁいうのに、引っかかっちゃうと、きっと大変なことになっちゃうでしょう。
2007.06.21
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2007年4月4日にGoogle(中国)は中国語の入力システム「Googleピンイン」を発表しました(Nikkei BP Net)。中国語入力システムは、日本語同様Microsoftが無料で提供しています。でも、あまり入力効率が良く無いようなので、別な入力システムを利用している方も多いようです。日本のATOKにあたるような有料の製品版としてはUNIS(清華紫光)があります。ほかにも、部首入力に似たウービー(五筆)のようなピンイン(日本語のローマ字入力のようなもの)以外の入力システムなど、ネット上で無料でダウンロードできるようなものもたくさんあります。フリーの中国語入力システムの中で人気が高いのが、捜狗輸入法(SOGOU Input System)です。これは、中国の老舗ポータルサイト「捜狐(SOHU)」の検索サイトである捜狗(SOGOU)が開発したもので、もちろんだれもが無料で利用できます。残念ながら日本語OSには対応しておらず(英語OS対応版はあります)、私は利用したことが無いのですが、自社調査によると単語変換の正確さはMicrosoft Pinyin IM 2007より25%も高いそうです。きっと、辞書がいいんだろうなぁ、と素人ながらにも思ったりしていました。こうした中、"言葉の魔術師"Googleが中国語入力システムを発表したと言うことで、中国でも期待が大きかったと思います。ところが......「Googleピンイン」の辞書データベースが盗用だったことが明らかになったそうです(CNET Japan)。しかも、こともあろうかGoogleがライバル視していたであろう捜狗輸入法(SOGOU Input System)からパクった、というから驚きです。Google自身も自社ブログで、4月4日の1st リリースには実験段階で使っていたGoogleのモノではないデータベースが含まれていたことを認め、ユーザーと捜狐(SOHU)に対するお詫びの意を表わしました。しかし、4月8日正午にリリースしたVer.1.0.17.0からは、Google独自で開発した辞書データベースを使用している、と表明したのです。これに対して、捜狐(SOHU)側は4月8日のバージョンも、変換一致率が80%近い。許容範囲は4割くらいだ~、最新バージョンもこ盗用だろう、と言っているそうです。ちなみに、百度(Baidu)とGoogle中国では検索結果が大きく異なります。最初のページの一致度は平均30%くらいでしょう。もちろん、SEOの効果に拠るところもありますが.....。さて、Googleが組織的・意図的に捜狗輸入法(SOGOU Input System)の辞書データベースをパクっのかは、疑問が残ります。個人的にはそうでないと信じたい気持ちです。ただGoogle自身も認めるように、1stリリースで捜狗(SOGOU)のデータベースが使われていたのは事実です。開発過程でダミーのように使っていた他社の辞書が、たとえ"試供品"とはいえ公にリリースされてしまうことなどあり得るでしょうか?担当者レベルの単純なミスだとしても、Googleの管理体制は非難されるべきでしょう。或いは、Googleですら、中国でビジネスをしているとパクり体質になってしまうのでしょうか?当然ソフトウェアも含まれる知的財産侵害でアメリカが中国をWTOに提訴したばかりだというのに(東京新聞)、こともあろうに今やそのアメリカを代表する企業とも言えるGoogleが中国企業の知的財産をパクるなんて....。Googleには、納得のいく事実の説明をお願いしたいものです。
2007.04.10
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中国のトップ携帯電話キャリアであるチャイナモバイル(中国移動)が2006年の業績を発表していました(自社サイト。それによると、純利益は660億RMB、日本円にするとほぼ1兆円だそうです。ニューヨーク市場に上場しているくらいだから、粉飾しているとも思えません。日本が誇る最優良企業と言われているトヨタ自動車の06年3月期の当期利益が1兆3,700億円でしたから、中国国内でしか稼いでいない企業としては、破格の収益率と言えるでしょう。ちなみに日本のトップ携帯キャリアであるNTTドコモは6,100億円(06年3月期)くらいなものです。まぁ日本では9,500万くらいの契約の取り合いで一喜一憂する状況ですが、チャイナモバイルの契約者数は既に3億を越えているのです。しかも、13億人すべてがケータイを持てるような環境にあるわけでは無いのですが、それでもあと2億か3億くらいのマーケットは残っています。毎月のARPU(1契約あたりの平均収入)は90RMB(約1,350円)ってところで、日本と比べたらかなり低いのですが、それでも3億を掛けると、270億RMB(約4,000億円)ものキャッシュが毎月毎月入ってくるのです。もちろん広い中国ですから、設備投資にも莫大なお金がかかりはしますが、中国ビジネスのウマミである"数の論理"が活かされていると言えるでしょう。チャイナモバイル・ユーザーの1%が月5RMB(約75円)のコンテンツを買ってくれれば、毎月1,500万RMB(約2億3,000万円)の収入になるわけで、日本のモバイル・コンテンツ屋さんもいろいろ頑張っているようですが、そこは中国、そう簡単にはよその国に分け前を譲ったりしてくれていないようです。さて、チャイナモバイルがドコモだとすると、auみたいな存在がチャイナユニコム(中国聯通)です。こちらもマーケットの拡大に乗じてある程度契約数を伸ばしてはいるのですが、都市部に特化したCDMAネットワーク構築が祟ってしまい、これからも成長が望めるはずの農村部ではチャイナモバイルに水を空けられる格好になっている様子です。チャイナモバイルの"一人勝ち"状態を逆手にとって(?)、胡散臭さが増しているのが3Gライセンス問題(参考:中国情報局)。来年8月の北京オリンピックのときには、3Gサービスが始まっていないと、ちょっとメンツが立たないかも知れない中華的事情もあるのですが、もう一つの中華的メンツであるTD-SCDMAという中国独自の規格(とは言っても、その技術の多くは欧米頼みらしいのですが)の"なすりあい"がキャリア間で繰り広げられているのです。中華的ご自慢の規格ならば率先して導入すると手を挙げればいいのに、どのキャリアも実用実験にすら消極的な状況でした。誰もババを引きたくないくらい、TD-SCDMAは怪しげなのでしょう。そんな中、TD-SCDMAの導入に二の足を踏んでいるモバイル・キャリアに脅しをかけるように、固定電話中心のキャリアであるチャイナテレコム(中国電信)にTD-SCDMAによる3Gライセンスをプレゼントしちゃおうみたいな話まであったようで、この際だからチャイナユニコムと合併すればぁ、みたいな、政府当局によるキャリア再編指導まで疑われるようになりました。モバイルに参入したいチャイナテレコム、このままでは泡沫キャリアになりかねないチャイナユニコムをうまく脅しつつ、王様であるチャイナモバイルにさっさと中国が誇るTD-SCDMAを導入してもらいたい、と言うのがきっと政府当局の本音であるわけで、年間10兆円もの純利益を出しているのなら、少しくらいコケてみるのも良いのではないか、と私としては思ったりもしています。
2007.04.01
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以前、エレベータ広告屋としてこちらのブログでも取り上げたことのあるFOCUS MEDIA(分衆媒伝)という、自社で設置した液晶モニタで広告を流す、スクリーン広告を手掛ける中国の広告会社が、中国最大のインターネット広告会社であるAllyes(好耶)を2.25億USドル(約300億円)で買収したそうです(eNet.com.cnほか)。2006年の中国のネット広告市場は60億RMB(約900億円=iResearch発表)くらいで、Allyes(好耶)は5億RMB(約75億円)ほどの売上があったと考えられ、売上高では中国トップのネット広告会社です。ちなみに、日本のネット広告市場はモバイルも含めて3,630億円(電通発表)。ネット広告会社トップのサイバーエージェントの06年の売上は250億円くらい(同社公開資料より)、時価総額は720億円くらいです。中国のネット広告市場は、日本の5分の1以下、トップ広告会社の売上は3分の1以下にも拘らず、買収価格(時価総額)は2分の1ちょっと、ということになります。とは言えインターネット広告の伸び率は、日本が30%程度なのに対し、中国は50%くらいですし、広告取引に電通や博報堂のような"オールド・エージェンシー"が介在することが少ない中国では、ネット広告会社の収益性も高いので、300億円のお買い物は、決して割高とは言えないでしょう。AllyesはアメリカのIT情報企業IDCのVC会社とNASDAQへのIPOを目指していたのですが、一足先に上場を果たしたFOCUS MEDIAからの買収を選んだわけです。IDCは7,500万USドル(約90億円)ものキャッシュを手に入れたことになります。これまでのFOCUS MEDIAは、どちらかと言うとロウ・テクでした。スクリーン広告で流す映像も、ネットワークで配信するのではなく、広告映像の入ったDVDを自転車に乗ったお兄ちゃんが一箇所ずつ取り替えて回る、といったものでした。メディアとして競合するためか、インターネット広告事業も泣かず飛ばず、といった感じだったのです。いっぽう、FOCUS MEDIAの最大の強みは、数多くのクライアントを抱えているということ。しかも、オフィスビルのエレベータホール前や高級量販店の店内に設置されているスクリーン広告のターゲットはインターネット広告のターゲットと一致していて、コラボレーション効果も高いと思われます。テレビ広告なんかで"無駄打ち"しなくとも、スクリーン広告からのネット誘導が可能ですから、広告主にとってもコストパフォーマンスの良いメディア・ミックスをワンストップで行えるようになるかもしれません。
2007.03.04
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"百度(Baidu)"は、中国大陸における検索サイトで約2/3という圧倒的なシェアを誇っています。いまのところ、GoogleもYahoo!も太刀打ちできません。国家権力から管理されるのはまだ許せるが、Googleみたいな"アメ公野郎"にあらゆる情報の支配をされることには耐えられないのという、中国人民の愛国心とか民族意識も少しは働いているのかもしれませんが、やはり便利だから支持されている、と言う側面が大きいのではないかと思います。キーワード検索だけではなく、ほとんどパクリとも言える様々なサービスにより、ポータル化を推進しているのです。例えば、Wikipediaみたいな"百度百科"、ブログサービス"百度空間"、「はてな」みたいな人力検索の"百度知道"、ソーシャル・ブックマークの"百度捜蔵"、Google Mapそっくりの"百度地図"、Gyaoみたいな"百度下?"、「2チャンネル」みたいなBBS"百度貼?"。もちろんGoogle同様にイメージ、ニュースの検索もあります。最近はYouTubeそっくりの動画検索"百度視頻捜索"まで始めてしまいました。これらのサービスの多くは、モバイルにも対応しています。中国ビジネスに関わる日本人にとって便利なのは、"百度法律捜索"。中央や政府の法律や規定などを、百度独自でデータベース化しています。個人的に重宝しているのは、"百度国学"。中国の古い書物を独自に電子化して、表示してくれるサービスです。『論語』も『西遊記』も『水滸伝』も全文を入手することができます。さて、こうした"百度"のサービス・メニューの中でも特に人気が高く、中国っぽいのが、"百度MP3"という音楽ファイル検索サービスです。楽曲名や歌い手からダイレクトに音楽ファイルを、直リンクでリストアップしてくれます。MP3ファイルだけではなく、歌詞やミュージック・クリップのFlashファイルまで教えてくれます。中国では当然のことながら、リンク先の多くが知的所有権を無視した違法サイトだったので、2005年9月の段階で、外資系の大手レコード会社が訴訟を起こしました。当初はレコード会社に有利とみられましたが、2006年末になって、一部の地方法院(裁判所)で百度側に有利な判断が示されました。そして2007年1月16日、原告の1社であったイギリス資本の大手レコード会社であるEMIは、百度と共同でプレスコンファレンスを開き、両者の提携を発表したのでした(MyComジャーナル/1月22日付け)。これは百度とEMIの和解、実質的には百度の勝利と言えるでしょう。で、どのような提携をするのかというと、百度は百度のサイト内にEMIミュージック・コーナーを設置し、その中でEMIグループの中国系アーティストの音楽を無料で試聴できるようになる、というものです。ただし、このサイトでは広告が表示されるとのこと。恐らく、簡単にはダウンロードできないようにして、広告収入が試聴料とバーターになるというプロモーションのスキームなのでしょう。結局のところ、百度の影響力にEMIが屈したということになるのではないでしょうか。ただ、今回の"和解"はYouTubeなど動画・音楽などのポータル・サイトに違法投稿され続けているコンテンツ・ホルダーに少なからぬ影響を与えるのではないかとも期待しています。違法なファイルのアップロード、それに対するライツ・ホルダーの削除要求、と言ういたちごっこから脱却したいと考えるなら、ライツ・ホルダーがプロモーションの一環として、YouTubeなどに合法的にコンテンツを提供するのも、一つの解決策でもあるはずです。この際だから日本のテレビ局も、広告付きで構わないのでYouTubeなどに自らのコンテンツの一部を積極的にアップロードしてみてはいかがでしょう。たくさんではないにせよ広告収入もあるでしょうし、番組宣伝やDVD化へのプロモーションにもなるのではないでしょうか?百度、本日の時価総額は、EMI(19億ポンド)とほぼ同じ38億ドル(約4,700億円=日テレとも同レベル)。
2007.02.15
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まずはNetEaseの記事より。中国最大のインターネット検索サイトである『百度』が日本進出計画を発表しました。既に半年前から準備に取り掛かり、日本語とベトナム語に精通したサーチエンジンの技術者の人材も確保し始めています。『百度』の国際化戦略が正式に動き出しました。『百度在銭網絡技術公司』董事会主席兼CEOの李彦宏さんは昨日、2007年に日本の検索サイト市場に進出し、日本語による検索サービスを提供、国外においてGoogleやYahoo!などの巨頭との競争に挑む、と発表しました。李さんによると、日本進出のタイムラインは準備中ですが、すで日本人社員を雇用し始め、東京オフィス設立の準備を進めているとのこと。日本進出後は、アジアやその他の地区の市場に進出する計画もあるようです。『百度(Baidu = バイドゥ)』は中国で最も利用されている検索サイトです。2005年8月にはアメリカのNASDAQで株式公開を果たしました。とは言え、この『百度』が日本市場に殴り込みをかけることになったのには、ちょっとした台所事情があるようです。Alexaによると世界4位のアクセス数を誇る『百度』。中国での検索サイトのトラフィックでも、2位のGoogle(26.9%)を大きく引き離して、46.5%のシェアを誇る『百度』ではありますが、広告収入では中国トップのポータルサイトである『新浪網(SINA.com)』の7.38億RMBに大きく水を空けられており、『雅虎中国(Yahoo!)』とほぼ同じ3億RMB程度でしかないのです。これは中国のインターネット広告市場シェアの10%に届きません(以上iResearchのデータより)。中国のポータルサイトをご覧になっていただくとお分かりになると思うのですが、FlashやGIFアニメーションをコテコテに使ったPicture in Pictureなどの広告があちこちで輝いています。広告を出す側も見る側も、こうした派手派手な感じがお好き、と言うお国柄なのでしょう。いっぽう、『百度』のトップページも検索結果ページも、Googleに習って(か、真似てか)いたってシンプルで、バナー広告一つありません。検索画面の右側に、Googleで言えば"アドワーズ広告"(検索ワード連動型広告リンク)が表示される仕組みなのですが、その表示内容が意外と使えないのです。人気ワードになると競札で高値を付けてくれた広告主に売り渡すのでしょうが、どうも怪しげな企業(よく解釈するなら、いわゆる"ロングテール"のしっぽが、お金持ちだったりするのでしょう)ばかりが並んでしまって、必要とする情報にたどり着けないことが多いのです。こんなこともあって、中国ではユーザーが検索ワード(コンテンツ)連動型広告リンクをあまり信用しないようですし、大企業もあまり積極的に広告として利用していないようです。きっとそんなこともあって、アクセス数が多いのに中国ではあまり広告収入を得られていない『百度』は、なんとか日本で広告収入を確保しようと考えている感じです。確かに『百度』が中国と同じように日本でも利用数でトップシェアを確保できるとすれば、広告収入は中国のそれよりきっと多くなるとは思います。でも、『百度』ユーザーは、日本でそこまで増えるものでしょうか?『百度』の魅力はなんと言っても"MP3検索"です。音楽系のファイルだけではなく、Flashやrmファイルも対象となるので、MTV(ビデオクリップ)なんかも、かなり正確に探し出すことができるのです。2002年当時『捜狐(SOHU)』の検索サービスが圧倒的なシェアを誇っていたのに、短期間のうちに『百度』がトップシェアに躍り出たのは、"MP3検索"の人気が大きかったはずです。基本的には、『百度』によりリスト化された"MP3検索"の結果をクリックすると、直接音楽ファイルの再生が始まります。無料で試聴やダウンロードが可能なサイトのファイルに直接リンク付けされているのです。歌詞もテキストで提供していますが、こちらは明らかに『百度』サイト内のコンテンツになっています。日本でこんなサービスを提供できたら、あっという間に大人気になるでしょう。でも『百度』の"MP3検索"は、中国だからこそ(!?)できたサービス。検索結果から得られる音楽ファイルや転載されている歌詞の多くが、著作権をクリアにしていないものなのです。たどり着く音楽ファイルのほとんどは、著作権無視のサイトにアップロードされているものです。当然のことながら、国際レコード連盟などの著作権者団体は抗議しているわけですが、『百度』側は「対象ファイルをリスト化しているだけ」と主張しているようで、いまも係争中です。Youtube人気などで、ネットにおける著作権のハードルは随分下がりつつあるようにも思えるのですが、この"MP3検索"というサービスは、たくさんの音楽ファイルが無料でネット上に公開されていなければ、あまり役に立たないのです。日本では取締りが厳しいのか、倫理観が強いのか、著作権侵害が疑われるコンテンツは、ほとんど公開されていませんから、中国(人)のサイトを頼ることになるのでしょうか...。日本人が聴きたがりそうな音楽(最新の日本のポップスや洋楽)も、随分中国(人)のサイトにはアップロードされていますから...。とはいえ、日本でこんなサービスを提供したら、あっという間に大問題になってしまうでしょう。『百度』のCEO李彦宏さんは、中国語と日本語の類似性を指摘した上で「日本のサーチエンジンユーザーが既存サーチエンジンのユーザーフレンドリーな代替サービスとして百度の強力な日本語検索技術を認めてくれることに自信を持っている」(gooニュース)そうですが、うまく行きますでしょうか....。AlexaのGlobal Top10サイトのうち3つが中国語サイトです。これはやはり中国(語)のネットユーザー数が有利に働いているのであって、これらの中国語サイトが言語の壁を越えても優れていると言う結果ではないと思います。世界第3位のネットユーザー数を誇る日本(語)のサイトが一つも入っていないのは、やはりそれだけ日本の市場環境が厳しいとも解釈できるはずです。私としては、『百度』の日本市場進出が、簡単に成功するとは思えないのですが....。一時はNASDAQ公開時の半値まで下がっていた『百度』の株価は、9月あたりから急に上がり始めて、今週は公開当時の初値を越えました。個人的にはビミョーな感じ。
2006.12.06
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中国では90年代初頭以降、日本のテレビドラマがあまり放映されていません。江沢民さんが反日を推し進めるために日本のテレビ番組を締め出したとか、プロセスにおいては、様々な推測が可能ではあります。しかし、この数年間の状況を冷静に考えてみると、市場原理に基づく結果である、と言うのが真っ当だと思うのです。日本のテレビドラマが中国で放映されないのは、中国当局の"意地悪"によるものでは(ほとんど)無いと言うことです。先端技術の輸出が振るわなくなったいま、コンテンツこそ日本の輸出品の花形になる、と経済産業省あたりが張り切っちゃっているのですが、テレビドラマにしても映画にしてもゲームにしてもアニメにしても、フツーの商品とほぼ同様の仕組みで取引されるわけです。シンプルに言ってしまえば、需要と価格合理性があれば取引が成立するのです。中国において、日本のテレビ番組があまり放映されないのは、この関係が成り立たないからです。スゴク単純化すると、日本のテレビアニメ: 中国での需要=有 / 価格合理性=無日本のテレビドラマ: 中国での需要=無 / 価格合理性=無だから、取引が成立せず放映されていない、と言うのが事実でしょう。2005年に、CCTVを除く中国のテレビ局で放映されたテレビドラマは時間換算で約9,000時間。内1/3にあたる約2,000時間は外国製ドラマ(中国の立場で言えば、輸入ドラマ)を放映できるのです。ところが、実際放映された外国製テレビドラマはローカル局全体で70作品(シリーズ)、約1,200時間程度に過ぎません。しかも、この70作品の中で日本のドラマは1作品のみでした(2005年に許可され放映された作品なので、過年度に輸入許可を得て再放送などで放映されている作品を除きます)。なんと韓国作品が28、香港作品が18、台湾作品が15、シンガポール作品が5、インド、イタリア、アメリカ作品がそれぞれ1つでした。なぜ韓国作品がこんなに多いのでしょうか?それは需要と価格合理性が有るからです。前回のエントリーでご紹介しましたとおり、中国のテレビドラマ視聴者層の中心は35歳以上の女性(主婦)です。高学歴でも無ければ"小金持ち層"でも無い人たちなのです。日本でも韓流ブームが韓国ドラマから火がつきました。韓国ドラマはストーリーが比較的シンプルで、登場人物の行動や心の動きも予想される範囲内である場合が多いので、日本でも主婦層を中心に人気が高まりました。高学歴、"小金持ち"という部分は置いておいて、やはり中国でも主婦層が受け入れ易い"つくり"であったのでしょう。しかも、1作品あたり60分弱で最低20話はありますから、連続ドラマを1日あたり2~3話連続して毎日放映するという、中国の標準的な番組編成であっても、1週間以上は放映を続けることができるのです。さらに、(これは想像の域を出ませんが)日本のテレビドラマより合理的な値段で購入できるのでしょう。これだけ韓国ドラマの比率が突出したのは、市場原理に基づく結果と言えるでしょう。ですから、最近では中国当局が"規制"に乗り出す動きもあるようです。特定の国家の番組だけが多く放映されるようになるのは、中国に限らずどこの国でもあまりよろしくないお話でしょうし。こうした規制の動きに対して、韓国側は、中国との共同制作やキャスト、スタッフ、スクリプトの単体販売などの方法で乗り切ろうとしています。努力してるんです。いっぽう最近の日本のテレビドラマのほとんどは、F1層向けに準備されています。F1層と言うのは20~34歳までの若い女性のことで、この人たちの中で話題になれば、若い男性もおじさんもおばさんも、みんなついてきてくれると考えがあったのです。また、日本の都市生活者でなければ共感しにくい設定である場合が多く、心を動かすようなストーリーは"クサイ"と言われて敬遠されがちです。しかも、日本のテレビドラマは通常11~12話で完結してしまいます。中国の標準的な番組編成なら、月曜日に放送が始まって土曜日には最終回が来てしまうので、話題作りができないうちに終わっちゃうのです。さらに、番組の値段が高い安いと言う前に、日本のテレビドラマを中国で放映するとなると日本側のほうに障壁が多いわけです。海外への番組販売を前提に制作されているケースが未だに少なく、権利や承諾を一つずつ詰めていかなければならなかったり、人気タレントやそのマネージメント事務所に頼ったキャスティングが多いため、そのタレント売り出しの海外戦略に左右されて、"海賊版王国"と言われている中国が敬遠されたりしてしまうのです。また、"ものづくり"にこだわる日本だからこそなのかもしれませんが、翻訳された現地版についても日本の作り手がしっかりと管理したがります。こうして、自ずと時間とコストがかかってしまい、結果的に買い手にとって合理的な値段で番組を販売することができなくなるケースが多いのです。そして、何よりも日本のテレビドラマに関わっている人たちの多くは、中国での放映=中国への番組販売に関して消極的です。こんなワケですから、日本のテレビドラマが中国でほとんど放映されないことを、中国当局の"意地悪"によるものだと考えるのは止めるべきです。このことは、テレビドラマだけではなく、テレビアニメにも言えます。日本のメディアは一時期「中国当局が日本のアニメを締め出した。」「日本を狙い撃ちにした。」などと報道していましたが、日本だけを狙い撃ちにしているわけではありません。例えば日本が製鉄業を守るためセーフガードを発動して、最大の輸入元が中国だった、みたいなお話なのです。しかも、テレビドラマと同様に、テレビアニメに関わっている人たちの多くは、中国での放映=中国への番組販売に関して、消極的です。日本人は、近代以降の自国の歴史、とりわけアジアに対して自虐的である必要は無いと思うのと同じくらい、中国におけるビジネス上の障壁を中国当局の政治的思惑に帰する被害妄想は止めたほうが良いと思います。しかも、自虐史観を非難する方に被害妄想になられる方が多いのは不思議な感じすらしてしまいます。外国とビジネスをする以上、日本国内で完結するお仕事よりも障壁が高いのは当然でしょう。実際には"意地悪"されることだってたくさんありますが、根本要因を中国と言う国家そのものだと決め付けてしまうのは、あまりにも短絡的に思えたりします。そうした日本人の甘えの中にこそ、チャイナ・リスクが潜んでいるのでは無いでしょうか。ちょっと話が飛躍しすぎてしまいました....。
2006.10.31
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前回に引き続き、代金回収についてのお話です。中国では、支払期日が遅れることを覚悟するくらいの度量は必要な気がしておりますが、不良債権化してしまい、回収不可能になっては、元も子もありません....。当たり前のお話ですが、代金回収において最も有効な対策は、前金か現金で取引することです。最も有効ではありますが、簡単なことではありません。前金を払ってでも手に入れたい商品やサービスで無ければ、中国の取引先は易々と前金払いなどしてくれるはずはありません。コンシュマー向け商品ならば、ブランド力があって、消費者からも強い引き合いがなければ無理でしょうし、B to Bならば、オンリー・ワンくらいの技術力やサービス力が伴わないと、前金取引きは難しいはずです。中国の経営者の多くは、支払を引き伸ばすことが、有効な経営術だと思っていますから....。前金取引きに固執するあまり販路を広げられず、店頭に並ばない日本ブランドの商品がたくさんあります。ウリスク・ロウリターンの典型みたいなお話ですが、前金取引きには限界があり、後払いの信用取引をしている企業が大半のはずです。ですから、支払の遅延や売掛金の不良債権化への対策と心構えが必要だと思います。前回ご紹介した広告会社オグルビーのように債務者を訴えてしまうことが、ほぼ最終的な対策となります。オグルビーの場合は、恐らく相手先をメディアに曝してプレッシャーを与えるというパブリシティ効果も期待して、いきなり法院(裁判所)に提訴したようですが、一般的には仲裁委員会に調停を求めるケースが多いようです。契約書の中で「問題が生じた場合、所轄の仲裁委員会の調停によって解決する」と記載する場合が多いからです。もちろん双方が同意すれば、「法院(裁判所)で紛争を解決する」という契約にしても構わないのですが、中国企業(或いは弁護士)は、仲裁委員会での調停を望むことが多いようです。仲裁委員会に調停を求めると、双方で仲裁委員を選定します。仲裁委員は専門の裁判官ではなく、いわゆる"有識者"による仲裁委員名簿の中から選ばれます。アメリカの陪審員やいずれ日本で導入される裁判員の制度に近いのかもしれません(ちなみに北京仲裁委員会の仲裁委員名簿には日本人などの外国人も登録されているとのことです)。紛争(債権金額)の大きさにより、3人だったり5人だったりします。仲裁委員は双方の言い分を聞き、契約書や取引きのエビデンス(証明資料)などの資料をもとに裁定を下します。代金未払い事案の場合、契約書が整っていて取引きのエビデンスがきちんと提示できれば、ほとんどの場合、"勝訴"、つまり「早くお金を払ってやりなさい」という裁定が下るはずです(債権の全額認められるとは限りませんが)。双方がその裁定に同意すれば、支払期限や金額などを明示した双方合意の調停書が仲裁委員会によって作成されます。これで、一件落着.....。というわけにはなかなか行きません。仲裁委員会には強制執行権が無いからです。どちらかと言うと"好意的な債務者"であれば、じたばたせずに調停書どおり支払うかもしれません。でも"悪質な債務者"の場合、調停書どおりにやすやすと支払うことはないでしょう。ですから、仲裁委員会で債権者側の主張が認められたからと言って、債権が回収できると安心してはいけないのです。債務者に仲裁委員会の調停どおり支払う意志が無いようでしたら、法院(裁判所)に訴えるしかありません。法院(裁判所)の判断に逆らえば、刑事罰が待っています。ところが、法院(裁判所)に提訴したから一安心、というわけにも行きません。"悪質な債務者"の場合、このあたりの段階で"支払い能力"が無くなってしまっているケースが多いのです。無くなるのではなく、故意に無くしているのですが。つまり仲裁委員会に招聘されたあたりから着々と準備を進めて、提訴された企業を解散・破産させたり、別の会社に資産や事業を譲渡したり、法人代表の個人資産を親戚や知人に移転したりします。債権者側が裁判で勝訴したとしても、債務者側に"支払い能力"が無ければ、強制執行も刑事罰も逃れてしまい、債権は回収不能に陥ってしまいます。仲裁委員会で有利な調停を得ても、裁判で勝訴しても、取りっぱぐれる時は取りっぱぐれてしまうワケです。なお、いきなり法院(裁判所)に提訴したとしても、"悪質な債権者”の場合、同じような状況に陥ってしまいます。そこで知人の中国人弁護士さんからお聞きした、ちょっとだけ有効な対策をお教えします。仲裁委員会に調停を申し込むと同時に、債務者の資産(金融口座)を差し押さえる(凍結する)という方法です。口座差し押さえには法院(裁判所)権限による強制執行が必要になりますが、仲裁委員会への調停申請内容の合理性が高い場合、債権と同じくらいの金額の供託金(保証金)を用意することによって可能になるようです。供託金は債権の査定に差が出た場合、その分の利息に充てられますが、調停で100%債権が認められれば、全額返金されるとのこと。仲裁委員会は債権者側が調停を申請すると、一週間ほどで債務者側に通知し招聘をかけますから、その一週間のうちに債務者側の金融口座を差し押さえることに成功すれば良いのです。債務者の金融口座に債務以上の残高があれば、債務の金額分の引き出しができなくなります。ここまでしてしまえば、債務者は仲裁委員会の調停金額を支払わざるを得なくなるはずです。ただ、仲裁委員会の調停が下る前に、法院(裁判所)に資産差し押さえをしてもらうわけですから、債務者側の金融口座の情報など債権者側の準備も大変ですし、それなりのコネクションやパワーが必要なようです。端的に言ってしまえば、契約書や取引きのエビデンスを完璧に整えておくのは基本の基本で、あとは仲裁委員会や法院(裁判所)と強いコネクションを持つ弁護士さんを確保することが肝要、ということでしょうか....。
2006.06.14
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パソコンの中を整理していたら、1998年4月付けの"ブリーフィング・シート"が出てきました。"ブリーフィング・シート"とは、広告主がエージェンシーに業務を依頼する際の要望書みたいなものです。その中には、広告主が捉えているマーケットの状況なども説明されていますし、広告目標や予算なども書かれています。この内容をベースにエージェンシーに対してブリーフィングが行われ、質疑等のやり取りを得て、エージェンシーは広告主のために最善のプランを準備してプレゼンテーションを行います。この"ブリーフィング・シート"の広告主は、中国で私企業として最初にインターネット接続サービスを開始したISPでした。正直なところ、少なからぬ日本の広告主はエージェンシーに対する"ブリーフィング"があまりお上手ではありません。広告主とエージェンシーの"馴れ合い"的関係がそうさせているのかも知れませんが、8年前に中国企業が用意してくれた"ブリーフィング・シート"は欧米企業顔負けの精緻なもので、エージェンシーにとってはありがたい内容のものでした。この"ブリーフィング・シート"から、1998年当時の中国のインターネット事情を振り返えることができて面白いので、機密に触れない範囲でご紹介したいと思います。1997年のパソコンの出荷量は400万台で、北京市では家庭向けに50万台が出荷済だったそうです。市街地における家庭普及率は10%を超えたとされています。いっぽうインターネット・ユーザーは中国全土で62万人、北京市で約12万人でした。当時、北京では中国郵政省傘下の国有のインターネット接続業者2社がISPとして有力でした。どちらもCHINANET(中国公用計算機互聯網)を1次プロバイダーとする2次プロバイダーで、ガリバー状態のA社のバックボンは17MB、B社にいたっては256KBだったようです。しかも当時最大シェアを誇ったA社は、インターネットなのに国内サイトにしか接続できない、と言うスグレモノでした!!わが広告主は、新参者ながら512KBのバックボンを確保し、しかも海外サイトにも繋がるISPという位置づけであったのです。広告主ISPユーザーの80%は海外とのトラフィックという衝撃的なデータも含まれていました。当時は中国国内のポータルもISP(接続プロバイダー)のホームページくらいで、有力なサイトが少なかったようです。わが広告主の接続サービスは、もちろんダイアルアップのみでしたが、面倒な申込み手続きが不要で、料金は電話代と一緒に請求されるという"ダイヤルQ2"タイプをいち早く採用しました。その後、A社が追従して、中国のダイアルアップ接続はダイヤルQ2"タイプが主流になっていきます。私企業で海外サイトにも接続OK、しかも申込みの必要無し、と言う有利な条件と、多分我が社の広告戦略の効果のおかげで(?)、わが広告主は、翌1999年末にはバックボンを約60倍の32MBまで確保し、売上高でB社を追い抜き、中国No.2のISPになりました。1999年当時中国から海外への接続をほぼ独占していた、CHINANET(中国公用計算機互聯網)の国際帯域幅が291MBだったようなので、10%のトラフィック・シェアを獲得したことになります。97年時点で62万人だったインターネット・ユーザーも、2年後には16倍の約1,000万人に達しました。さて1998年4月の広告主の"ブリーフィング・シート"に戻ると、自社HPの"ポータル化"、"eコマース"、"ネットオークション"、"トラフィック量の平坦化"などのワードが既にあったことに驚かされます。現にこの広告主はこの年、独自の検索エンジンを開発し、ネットショッピングも取次ぎ、自社HPの"ポータル化"を推進しました。しかし、国内ニュースなどの情報量が弱点となり、A社系のポータルサイトに水を空けられてしまいます。国営メディアなどの協力関係を築くのが遅れたようで、私企業であったことがアダになってしまったようです。接続サービスについても、電話会社が本格参入することによって、2000年以降、勢いを失ってしまいます。2006年。中国全体で見るとパソコンの家庭普及率は5%程度と言われています。ところが北京の市街地では70%を越えています。CNNICの発表によると、2005年末のインターネットユーザーは1億1,100万人。8年間で180倍になりました(北京市は36倍)。最近では、中国当局の禁止ワードを日本のサイトでググると、その検索サイトへのアクセス自体が一定時間できなくなる、なんて"ワザ"まで管理側は用意しているようですが、"いたちごっこ"のこの世界ですから、無駄な抵抗は止めて欲しい、と願っています。
2006.05.11
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休日で一時帰国した際に梅田望夫さんの『ウェブ進化論』を購入し、さっそく読ませていただきました。私が興味を抱いたのは、「こちら側」と「あちら側」についてでした。ネットにおける「こちら側」はユーザーが利用している端末、つまりパソコンやケータイなどで、「あちら側」はユーザーが端末を通して得られる端末には完全な状態では存在していない情報やサービスなど、つまりGoogleのような検索サイトなどです。楽天もGyaOもLivedoorも、この意味では「あちら側」であって、MicrosoftやIntelやDELLやCiscoなどはビジネスモデルとしては「こちら側」にあるというわけです。乱暴に言ってしまえば、「こちら側」のビジネスは劇的な成長が見込まれず、「あちら側」のビジネスこそ、これからの成長株という感じでしょうか。「あちら側」と「こちら側」の"栄枯盛衰"を象徴するのが、Googleの株式公開とIBMパソコン事業のLenovo(聯想)への売却だそうです。「あちら側」のことはシリコンバレイがやってあげるから、「こちら側」のことは中国あたりに任せておけばよい、という文脈だったようです。さて日本はというと、90年代初頭までは、半導体にしてもパソコンにしても世界のトップシェアを占めてたことがあったわけで、「こちら側」のハード面の主役を担うほどトレンドをキャッチアップしていたことになります。その後、「こちら側」のハード面での主役は韓国や中国などに譲ってしまいましたが、GoogleやAmazonのような「あちら側」の世界規模のメジャープレイヤーはまだ日本から出現していない、ということになります。単純化してしまうと、「あちら側」はシリコンバレイが、「こちら側」は中国が受持つことになってしまうと、日本の出番は無くなる、ということになってしまいます。しかも、中国が「こちら側」に甘んじているか、というと、私にはそうは思えません。むしろ「あちら側」においても、日本を追い越してしまうようなポテンシャルを持っていると思えるのです(一部では追い越しているかもしれません)。そのお膳立てとして中国に整っているのは、梅田さんの著書の言葉を借りるなら、「ロングテール」と「オープンソース」ということになるでしょう。この場合の「ロングテール」を乱暴に説明するなら、マーケット全体の80%が大衆マーケット("「恐竜の首」側マーケット")だとすると、残りの20%に満たない"「ロングテール」側マーケット"のこと。マスメディアは大衆を網羅します。伝統的な広告はできるだけ多くの消費者への訴求を目指します。1,000万部発行する新聞のほうが1,000部のミニコミ誌より影響力がありますしビジネスとしても成り立ち易いですし、大量生産のほうがコストが安く済みマーケティング費用の単価も小さくなります。いっぽうAmazonや楽天市場のようなネットのネットの「あちら側」なら、一人か二人しか買わないような書籍やこだわりグッズをミリオンセラーと同じようにお店に並べておいても、マーケティングの費用はたいしてかかりません。これまで日本をはじめ外国企業が中国に魅力を感じて進出してきたのは、主として「ロングテール」側のマーケットに勝算があると思えたからでしょう。日本の"大衆"と同等以上の購買力を持っているのは、中国人民の10%未満と言われています。大衆マーケットに対してならテレビなどマスメディアで広告したほうが効率的ですが、「ロングテール」側のマーケットに対してはネットによるマーケティングが効果的です。中国は数年前からこうしたバックグランドを持っているのです。次に「オープンソース」。梅田さんはウェブ・サービスにおけるAPI(Application Program Interface)の公開について述べてらっしゃいますが、これも中国流に乱暴に当てはめてしまえば「知的財産権の軽視」になるでしょう。新作映画の海賊版DVDが100円程度で堂々と売られているお国柄です。他人の知的財産権に対して甘いのは周知の事実ですが、自らの知的財産権の侵害に対しても比較的寛容にならざるを得ない環境といえます。しっかりしたルールやマナーのうえで成り立つ「オープンソース」とは明らかに違いますが、技術情報の公開・流通に対しては、日本のように閉鎖的ではないと言えるでしょう。日本の閉鎖性は、例えばブログ・サービスやアフェリエイトなどにも顕著に現れています。例えば、楽天市場のアフェリエイトは楽天広場以外のブログでは機能しませんし、一部のブログ・サービスではそこにユーザー登録しなければコメントも残せない状態だったりしていました。顧客の囲い込み戦法です。いっぽう中国におけるウェブの開放性は、ニュースサイトが転載のみで成り立ってしまうくらいですし、Googleをパクったような検索サイト百度が、中国マーケットにオプティマイズされたサービス・メニューを次々とリリースしていくことからも明らかでしょう。わが日本はいまだ「恐竜の首」側、つまり大衆マーケットにしがみついています。そして、東証のシステム拡大に何十億円という出費を強いられるくらいの、閉鎖的な下請け作業構造が存在しています。ネットの「あちら側」で頭角を現すのは、日本よりも中国のほうが先のように思えるのです。逆説的かもしれませんが、政策の支援も中国のほうが、的を得ているように思えます。例えばモバイル・コマースについて、中国の2大キャリアはあらゆる代金の集金ができることになっています。通信・通話料金の集金しかできないように規制されているドコモよりは「お財布ケータイ」などのビジネス展開がし易いわけです。中国当局がこれまで知的財産権侵害の取り締まりに消極的だったのも、中国的「オープンソース」を浸透させるためだったかもしれません....これは蛇足でした。中国は「こちら側」だけではなく「あちら側」にも触手を伸ばすことになるでしょう。「あちら側」は中国には無理、と鷹をくくっていては危険だと思います。例えば自動車産業において、「こちら側」は鉄鋼などの素材産業、「あちら側」は車体やエンジンの開発、と張拡大解釈するなら、多くの日本人の意識の中には、「こちら側」は中国やインドが担うことになっても、「あちら側」は日本にしかできない、的な安心感が存在しているように思えます。しかし、中国的「オープンソース」と「ロングテール」側マーケットの取り込み易さという土壌により、中国独自の開発・設計が加速しています。中国独自開発のクルマなんて誰が買う、なんて思うでしょうが、中国人民が買えば充分なわけです.....。ネットにおいても「あちら側」もアメリカと中国の挟み撃ちにあって、日本は「どちら側」にも無くなってしまうような気がして心配です。梅田望夫さんの『ウェブ進化論』
2006.05.06
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中国ではケータイ・ユーザーが4億人を越えました。日本の5倍ってところでしょうか。それもあって、モバイル・ビジネス先進国の日本の企業は、中国での展開に積極的です。確かに日本ではこの4~5年でケータイで何でもできるようになり、モバイル系のサービス/コンテンツ・プロバイダーが急成長しました。でも最近は日本国内が頭打ちになりそうなので、中国で頑張ろうと言う感じもあるでしょう。実は既に中国でもケータイで日本とほぼ同じようなことができちゃいます(お財布ケータイはまだですが)。ただ利用状況はというと、SMS(ショートメールサービス)やポータル・サイト(一部"勝手サイト")による情報提供サービス以外は、あまりパッとしません。日本の業界の方は良く、中国には「優れたコンテンツやサービスが無いから利用者が増えない」とおっしゃいます。でも「利用者が増えないから、優れたコンテンツやサービスが出現しない。」という側面も検討しなければなりません。まず4億人のケータイ・ユーザーはどんな人たちで構成されているのか、冷静に考えてみる必要があります(まぁ、きちんと考えている日本企業もありますが)。中国のユーザーARPU(1ヶ月あたりの通信・通話料金としときましょ)は、平均すると100RMB(約1,500円)に届きません。日本ではここ最近APRUが下がる傾向にあるようですが、それでも平均8,000円くらいでしょうか(日本のケータイ料金が世界的にみて、べらぼうに高いせいもあります)。ただ特に中国ではこの種のデータの「平均」ほど意味の無い数字はありません。中国のユーザーの8割は100RMB未満です。つまり、ケータイに月100RMB(約1,500円)以上お金を使える中国のユーザーは、日本のケータイ・ユーザー全体と同じ、つまり8,000万人くらいになります。しかも彼らが月8,000円くらい使うかと言うとそうではなく、月500RMB(約7,500円)以上のユーザーは全体の1%程度というデーもあります。中国のケータイの月基本料はキャリアやサービス内容によって異なりますが、だいたい50RMB(約750円)です。市内だと3分通話して1RMB(約15円)程度。1日平均4~5分市内通話をすると月100RMB(約1,500円)になる計算です。通信・通話料金が異常に高い日本にいる方からみれば、安く思えるでしょうが、多くのユーザーはこの月100RMBの出費が限界と言ったところです。プリペイド式ケータイは50RMBの月基本料がかかりません。その分、通信・通話料金の単価は高くなるのですが、月120RMBくらいまでの利用であれば、プリペイド式のほうが長く通信・通話できるという計算になります。中国ではユーザーの6割がプリペイド式ケータイの契約です。ケータイ・ユーザーの中で、比較的恵まれた経済環境にある大学生であっても、躊躇いがちにケータイを利用する人が多いようです。こちらからケータイに電話すると「通話ではなくSMS(ケータイ・メール)で連絡してくれ」などとセコイことを言ってきたりします。中国では音声通話を受ける側も、市内通話と同額程度の料金が課金されますから、電話を受ける側もお金のことを気にしなければなりません。その点、SMS(ケータイ・メール)は受信側は課金されないので、安心のようです。いろいろ調べてみますと、月100RMB以上のお金をケータイに費やすことができるユーザーの大半は、ケータイ費用を会社経費で精算できるビジネスマン(ウーマン)です。つまり現状では、通信費を個人負担しているケータイ・ユーザーのほとんどは、お財布の状態を心配しながら、必要最小限の場合にのみケータイを使っている、と言うことです。日本におけるモバイル・ビジネスの推進役は、女子高生や大学生など20代前半までの若い層でした。写メール、ムービー・メール、着メロ、ゲームなど、実用よりはむしろ"生活に彩り"を添えるサービスから急成長してきたと言えます。それから情報提供サイトやコマース・サイトが出てくるのですが、やはり主役は20代までの若者です。日本ではビジネス向けコンテンツも充実していますが、若者向けの"勝手サイト"のほうが勢いがあります。いまでも、日本の女子高生は月15,000円くらいケータイにお金がかかっていると言います。前述の通り中国でも既に、画像/動画メール、着メロ、ゲーム、"勝手サイト"、コマース・サイトみんなあります。でも利用頻度は決して多くないのです。特に、若者にとってケータイはいまのところ通話とSMS(ケータイ・メール)の道具というイメージが強いのです。前述の経済的事情もありますが、お国柄の違いも見逃せないと思います。(財)日本青少年研究所の調査によると、「大衆文化に非常に興味がある」と答えた高校生が日本では62.1%だったのに中国では35.2%に過ぎません。一方で「携帯電話や携帯メールに非常に興味がある」日本の高校生が50.3%であるのに対し、中国では17%です。他の調査結果もみていただければ分かるのですが、中国の高校生は”生活の彩り"よりも"実用"を重視する現実主義者という感じなのです。これらを整理しますと、中国では若者向けのエンタメ系コンテンツのマーケットは当面過大評価できないのではないかと思います。ポテンシャルが高いのはビジネスマン向けのビジネス・コンテンツと言うことになりそうで、数は少ないお金持ち&会社持ちユーザーに高価値コンテンツを高い料金で提供する方向のほうが、ハズさないように思えます。ただここで課題になるのは、課金や料金回収手段でしょう。このあたり中国は、日本から遅れをとっていますし、キャリアの頭も固いですし、プロバイダーやディストリビューターやユーザーの金払いもちょいと心配と言った感じでしょう。ケータイ・ユーザーの数は4億人からまだまだ増えていきそうですが、ユーザー全体がモバイル・ビジネスのパイになるかと言うと、決してそうではないだろう、というお話でした。
2006.03.08
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パソコン、ふんぱつしてThink-PadのZ60mに換えました。いままではThink-PadのR50pでした。"IBM"ユーザーだったのです。その前はソニーのVAIOのGRX90のユーザーでした。そういえば、90年代は鈴木亜久里が広告に出ていた東芝のDyna Bookを使っていました。節操が無いのですが、私のノートPCへのロイヤルティは、東芝 --> ソニー --> "IBM"という変遷をたどっていったのです。先日買い換えたノートブックのブランドは"IBM"と自分では思っているのですが、マニュアルも保証書も"LENOVO"(聯想)のThink Padではあります....2000年代初頭、中国におけるノートPCのマーケット・シェアのトップはでした。もちろん、いまよりもマーケット・スケールはとても小さかったのですが、それなりのプレゼンスがあったのです。そのころには既に、というパソコン関係の組み立て・製造会社があって、のDyna Bookは主にそのの関連会社のリテーラー・ネットワークを通じて販売されていました。ところが、2000年春にいわゆる「東芝ノートパソコン事件」が起きました。記憶装置にデータが失われる危険性のある不具合が見つかり、アメリカでユーザーの集団訴訟が起きました。アメリカのユーザーには多額の和解金を払うことで和解しました。同じ不具合を持つノートパソコンは中国でも販売されていましたが、中国のユーザーには和解金を払わず不親切な英文マニュアルの修正ソフトを無料配布する、と言う対応を行ったのです。「アメリカと中国で対応が違うのは"差別だ」とユーザー(や野次馬)が怒り出し、メディアも厳しく非難するようになると、ようやく日本から北京に副社長を遣わし、記者会見で事情説明を行ったのです。ところが、この記者会見が裏目に出てしまい、中国のメディアやユーザーの憤怒の火に油を注ぐような結果になってしまいました。この"事件"がマーケット・シェアの落ち込みにどの程度影響したのかは定かではありませんが、一時的であるにせよのブランド・イメージが傷ついたのは確かでしょう。私がむしろ注目したいのは、文彬という方が「東芝は中国で何を間違えたのか」で指摘している"東芝はテキサスでの訴訟和解を中国総代理店には情報を交換したが、ホームページによる無料修正ソフト(Software Patch)を配付する以外、ユーザーへの直接の説明は何もしかった。"というところです。ここで言う「中国総代理店」はの関連会社のことです。きっとユーザーサポートに関する役割分担や責任が、との間で明確になっていなかったのでは無かったでしょうか?結果としてこの事件以降(或いはこの事件の前から関係が良くなかったのかもしれませんが)、との関係は悪化していきます(2003年には「不仲説否定」:Searchina 2003年11月09日の記事)。この間に、は中国最大のITサプライヤーに成長し、はIBMのPC部門を呑み込んでしまい、オリンピックのTOP(グローバル)スポンサーにまで成り上がりました。片や中国におけるのノートパソコンのマーケット・シェアは急下降して行ったのです(Searchina 2004年06月26日の記事)。(いまはから独立しています)、その実質的な親会社だったは90年代後半、中国で人気だったのノートパソコンを独占的に販売することによって成長してきた側面もあるのですが、いまでは少なくとも中国のIT領域においてよりプレゼンスが高くなった、と言うお話でした。以前エントリーしたことのあるという中国のITブランドにも、似たような雰囲気を感じてしまいます。というブランドは、北京のという会社が自社開発した製品につけたものです。昨年の「抗日戦勝記念日」に合わせて「V815+」(VはVictoryですよ!!)という型番名のデジカメを発売して、一躍有名ブランドになりましたが、もともともと同じような外国ブランドIT製品のディーラーなのです。特にとの関係が強く、2000年代初頭にはのデジカメやムービーカム、その後ノートパソコンVAIOの販売で儲けたのではないかと推測します。いまでも北京のソニー専売店の多くがの子会社のリテーラーであることは、領収書をもらえば分かります。を中心に日本や海外のIT製品を中国で販売してきたは、自社ブランドを創り上げ、デジカメやMP3プレイヤーなどでプレゼンスを高めているのです。=、=は、それぞれやを中心とした外国ブランドのIT製品の代理販売を通じて、製品の技術やITマーケットを熟知していき、いまや中国ではやを越える(或いは脅かす)存在になってしまったと言うことです。前述の通りの場合、中国の販売総代理店であったとの関係が昔から何となくしっくり行っていなかったのではないか、と思えるフシがあります。2000年に発生した「東芝ノートパソコン事件」こそ、その象徴たるできごとであり、"分水嶺"だったように思えるのです。一方は現在でも=との共存を模索しているように思えます。前述の通り、の子会社が相変わらずの専売店を多面展開していますし、いまのところ最も競合するデジカメに関しても、のラインナップの中心は実売1,000RMB台で、2,000RMB以上が中心のと購買層が重ならない状況になっています。片や「中国人のブランド」を強調する「愛国ブランド」、片や品質問題で不合格を喰らうということで、胡散臭い想像もできそうですが....※この話題、とある日中のコミュニケーションの研究者との酒飲み話からインスピレーションされました。W先生、ありがとうございました....
2006.03.02
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旧正月の休暇で日本滞在中、どのチャンネルも似たようなライブドア関連のテレビ番組にさすがに辟易してしまい、DVDをレンタルに行きました。日本で暮らしていたら、当たり前のことなのかもしれませんが、レンタル料が異常に高く感じてしまいました。中国で海賊版を2~3枚は買えてしまう値段なんですね。このブログでも何度か取り上げましたが、中国では120円ほどで海賊版DVDが手に入ります。しかも、こっそりと買う、と言う感覚ではなく、堂々とした店構えをしたDVD Shopなどでも購入できます。豪華パッケージ入りのものも多く、フツーの人には正規版なのか海賊版なのか見分けがつきません。その手がかりは販売価格なのですが、中国の国産映画などのタイトルは正規版でも200円くらいですし、ハリウッド物でも300-400円で販売されています。しかも正規版料金で販売している"悪質な"海賊版"も横行しているくらいですから、もうほとんどボーダーレスです。正規版だけを販売しているようなお店を探すことのほうが困難です。DVDや音楽CDの場合、海賊版と正規版の価格差も小さく(とは言え2倍くらいするので、現地生活者にとっては大きな違いですが)、小売店の中ですら混在していたりするので、対策と言ってもどうしようも無い状況ではありますが、映画やドラマのDVDなどは、あくまでも"2次使用"ですから、いずれ両者の間で歩み寄りも可能なのではないかと期待してはいます。ところが、ゲームやコンピュータ・ソフトとなると状況は違ってきます。コンソールタイプのゲームの場合、ハードもソフトも日本とほぼ同じ価格で販売されています。プレステやNintendoの正規ソフトなら1タイトル5,000-7,000円と言ったところですね。ところが海賊版の場合は150円程度で、しかも複数のタイトルが1枚のディスクにてんこ盛り状態だったりします。コンピュータ・ソフトとなると、例えばOSやOfficeソフトの場合、正規版は中国でも2万-4万円はするわけですが、海賊版はタダだったりします。IBMのPC部門を買収したLenovoなど著名ブランドの中国国内販売向けPCは、付属ソフトはもちろんのことOSのWindowsすらインストールされていないタイプが中心です。そのままスイッチを入れるとBIOSの画面を眺めることになるだけなのですが、ほとんどの販売店ではご丁寧にも"無料"でWindowsやOfficeなどのソフトをインストールしてから納品してくれます。もちろんデスクで購入して自分で好みのソフトをインストールすることもできますが、海賊版ですと2-3万円のWindowsも10万円以上するAdobe Premiumも100-200円です。ITモール街でしたら、MicrosoftやAdobe正規販売店のお隣で平気で海賊版が売られていたりします。海賊版の使用は、個人に限らず一般企業でも平気で行われています。従業員5人10人の中小企業だけではなく、数1,000人規模の大企業であっても、海賊版ビジネス用ソフトをつかっているところがたくさんあるのです。オフィスで利用するパソコンは、液晶モニタのデスクトップでも5万円くらいから手に入ります。OS無です。ところがOSやOfficeなどの正規版ソフトのライセンスはコンピュータ本体と同じくらいの値段がします。月収5万円と言えば、北京でも高給取りの部類に入りますから、正規版ソフトを導入するために、日本的感覚ですと30~50万円も負担しなければならない、と言うことになります。中国ではオフィスにコンピュータが普及し始めた段階で、ソフトウェアの費用負担など考慮しない会社経営が一般的だったのです。高価なソフトウェアを経費負担しなくて良かったので、多くの企業が成長できたのでしょう。そもそも、中国の会計制度ではソフトウェアを資産計上する慣習がありません。ウチの会社はキチンと正規版を利用していますが、経理責任者にソフトウェア費用を資産計上して減価償却しようと言っても、そんな慣習は無いと一蹴されてしまいました。ソフトウェアを購入するたびに、販売管理費(経費)として一括処理しています。まぁ高価な正規版であっても、100円ちょっとで同じ機能の海賊版が手に入るワケですから、資産価値はゼロということで、ある意味合理的な会計処理だなぁ、などと納得していますが。こういうわけですから、いきなり正規版を導入しろ、と言われると、経費の負担増で、経営が成り立たなくなってしまう企業が、中国にはたくさんあるように思えます。とは言え、DVDやゲームに比べると、汎用コンピュータ・ソフトは少数のメーカーが寡占的に販売していますから、メーカー側もいろいろ対策を講じています。Micorosoftは、たくさんのパソコンを利用しながら1台たりとも正規版を利用していないインターネット・カフェのチェーンなどを、見せしめ的に訴えたりしています。Adobeの場合、ビジネスで頻繁に利用する業種は限られているわけですから、そうした企業を定期的にパトロールして、海賊版をインストールしてあるMacを見つけ出すと持っていったりしています。映像編集やデザインでAdobeのソフトウェアを使用している会社は、Macを持っていかれると仕事が成り立たないので、しぶしぶ正規版を購入するハメになるのです。10台分ですと100万円以上になりますから、中小企業ですと会社存続の危機になってしまいます。あまり強硬な態度に出ると、国家ぐるみで開き直られてしまい、政策発動でLinux紅旗などにスイッチされてしまいかねませんから、Microsoftあたりは"柔軟な"対応に終始しているようですが....ところで、海賊版使用による"恩恵”を、間接的には日本企業や日本人も受けているのではないでしょうか。例えば、CG、CAD、動画編集などが、日本と比べて安くできるから、と中国にアウトソーシングしている日本企業はたくさんあります。人件費が安いから安く済むと考えるのがは当然ですが、実は海賊版使用でソフトウェアが安いことも安価の要因になっていると言えるでしょう。日本の料金には、パソコンなどの設備やソフトウェアの減価償却分も反映されていますが、ここ中国では高価なソフトウェアの減価償却なんて考慮する必要の無い企業がたくさんあるわけですから....海賊版が氾濫する中国のことを批判したり、知的所有権侵害の被害者として抗議することは容易いのですが、日本も間接的にはこの"海賊版天国"の恩恵を受けていることも考える必要があるのかもしれません。
2006.02.08
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livedoorに関するエントリーには、たくさんの参考になるコメントやトラックバックをいただき、この場をお借りしてお礼申しあげます。私は中国で仕事をしているのですが、好き嫌いに関わらず、当面の間、日本は中国と付き合っていく必要があると考えています。日本が将来にわたって国際社会のリーダー的立場を維持できるかどうかは、特に経済領域においてこの国とどう関わっていくかに左右されるのではないか、とも考えています。これまでは中国の労働力や消費市場を日本企業の企業活動にどのように組み込んでいくか、が主流でしたが、これからは世界市場全体にわたって中国企業とどのように競争し或いは協力していくか、が主眼になると思います。中国を軸に国際社会の勢力図が変化していることは事実で、日本は社会・経済や企業のドメスティックな体質を変革し、子孫に誇れる独立した豊かな国家として生き残らなければならないと思うのです。極論すれば、中国に呑み込まれるようなことがあってはならないと思うのです。中国のいまを観察することによって、中国の弱点を掴むことができると同時に、いまの日本の弱点も見えてくるように思えるのです。前者は日本のメディアでも頻繁に取り上げられているようなので、私のブログでは後者を中心に取り上げていくようにしてきました。中国に内在する問題点の多くが日本にも存在すると思いますし、それが弱点なら先に改善できたほうが良いと思います。livedoorの話題自体は中国や北京に直接関係してはいないのですが、もう一度私なりに整理してみました。(1)現時点では「グレイ」であって、まだ「黒」ではないと思います法治主義の立場を取れば、司法で有罪が確定して初めて「黒」と言えるでしょう。法律の下位概念として、例えば証券取引等監視委員会などのルールに抵触する疑いがあって何らかの処分があったとしても、その処分が適法か司法の場で確認する権利があるはずです。私もaudito(会計監査)を受ける立場にあります。通常監査では何ら改善意見も無かった会計処理について、親会社の監査室より指摘を受けたことがあります。その指摘について別の監査法人により再監査していただいたところ、改善意見だらけの監査報告書になってしまいました。会計士や法律家の方からコメントやトラックバックをいただいており、専門的なところはお譲りしますが、会計処理が適切かどうかの判断は、環境や解釈によって変わるはずです。会計処理に絞っても、少なからぬ企業がグレイの部分を抱えているのは事実だと思います。監査法人は、明らかに「黒」の会計処理を認めることはできませんから、解釈や説明によって乗り切れるグレイの部分は一応「白」になるのですが、最近は監査法人へのプレッシャーが高まってきて、解釈の責任が問われるのではないかと胃を痛めている会計士の方も多いようです。livedoorに関しても、現時点で報道されている問題点に関してのみ言えば、専門家の方が100%「黒」と言い切れる会計処理とは言えないようです。もちろん、監査範囲で明らかにできなかった部分まで調査するのが"強制捜査"の一つの目的ではあるでしょうから、問題の核心は他にあるのかもしれませんが。誤解を怖れず1985年の「豊田商事事件」を例に上げるなら、豊田商事に強制捜査が入り永田会長が事情聴取をされたと言う時点で(関連会社社員に既に逮捕者は出ていたようですが)、世論はほとんど「黒」と判断してしまいました。そして報道陣のカメラの前で"私刑"に遭って抹殺されました。詐欺の被害者の怒りを趨勢とするメディアの報道などにより「黒」と断定され、司法判断を待たずに抹殺されたのです。livedoor関連株で大損したりした"被害者"はたくさんいらっしゃると思いますが、現時点では「グレイ」です。司法だって結局は人の判断ですから、メディアや世論の影響で「黒」になる場合もあるでしょうし、その反対になる可能性もあるはずです。(2)強制捜査発動には、権力による何らかの意図が働いていると思います社会的に大きな影響力が予想される事案の強制捜査には、ほとんどの場合、権力による判断が機能していると考えて良いと思います。それは"GOサイン"を出すという積極的な判断よりは、むしろ現場からの承認要請に"STOP"をかけるというような消極的判断のほうが多いのかもしれません。もちろん、"GOサイン"が出るのは、確実に立件ができるとか裁判を維持できるとか有罪に持ち込める可能性が極めて高い、などの理由によるのでしょうが、政治的意図が含まれる場合もあるはずです。livedoorの強制捜査について何らかの意図が働いている、と言う前提で話を進めるなら、その意図とは何なのでしょうか?ひとつはフィナンシャル・タイムの社説が述べたような「年老いた守護者の復讐(ふくしゅう)」。既得権益者にとって目障りな存在者に打撃を加えようとする意図。或いはグレイな方法で急成長を遂げている”IT関連"などの急進企業の国際的な競争力を高めるため、崩壊しかねない手法を繰り返す象徴的な企業をスケープゴートとして警鐘を鳴らす意図。前者の場合、日本経済は"成熟した大企業"による既存手法により、復活を遂げつつあるのだから、怪しげな新興企業は出過ぎた真似をしないで欲しい、と言う意図だと考えます。後者の場合、日本経済は元気のある若い新興企業のおかげで、随分活性化してきたのは事実だけど、あまり調子に乗っているとそのうち禿げ鷹ファウンドなどに丸ごと日本を乗っ取られてしまう、そうならないうちに象徴的な企業にお灸を据えておこう、と言う意図だと考えます。もちろん他にも、小物政治家の保身だとか、耐震強度問題からの視線そらしだとか、いろいろ考えられるでしょうが、意図を働かせた権力に敢えて性善説を適用すれば、この二つの方向性になるのではないでしょうか。(3)現時点で"潰す"のは残念だと思います私は上述のような前提で考えているのですが、今回livedoorの強制捜査に踏み切った判断、そして「ヒーロー」作りに加担しておきながら180度方向転換して「悪者」扱いにしてしまう大衆メディアの報道の潮流に関して、個人的に残念だと思っています。第1に、気分的な問題。若い世代の経営者や新しい経営手法によって日本もようやく活気付いてきた感じで、少なからぬ若者が夢ややる気を取り戻しつつあった時期に、その象徴的な企業と経営者が権力によって「悪者」になってしまったことです。第2に、権力による判断が常に正しい、と言う日本国民の思い込みを増長させてしまったこと。私には本件も小泉さんの劇場型政治手法の一つのパーツにすら思えます。こうしたことに批判的なクラス・メディアも存在しますが、潮流として大衆メディアも権力側に大きく加担しているように思えるのです。国民の敵、国家の敵を権力側が仕立てて、大衆メディアがその世論を盛り上げる。捜査当局からもたらされる情報をろくな検証もせず、"被害者である国民にとって必要な情報として垂れ流す。そんな「悪者」を成敗してくれる権力に、国民の多くは何の疑いも持たなくなってしまうのではないでしょうか。livedoorに関して言えば、フィナンシャル・セグメントの占める割合が圧倒的に大きく、他の"IT関連"といわれる急進企業と同一視で考えることができないと思っています。ただ私の知りうる限り、多くの"IT関連企業"も"成熟した大企業"も、多かれ少なかれグレイな会計処理や取引きをしているハズです。単純に”出過ぎた”から叩かれたのか、日本の将来を危惧する考慮をもって政治判断だったのか、或いは別に何らかの意図があるのか、大衆メディアであるテレビや新聞はもっと様々な角度から取材して、より多くの国民に情報を提供して欲しいと願っています。株価が暴落し怒っている方々の気持ちはお察ししますが、大衆メディアや政権政党の一部勢力が、株価上昇の一翼を担ったのは事実だと思うのです。
2006.01.22
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日本経済が上り調子になったワケを、キチンを考えていない人たちが強制捜査にgoサインを出したとしか思えません。ライブドアなどの"IT関連企業"は、株価上昇や個人投資家の拡大に大きな貢献をしてきたはずです。日本の実態経済より株価の上昇幅が大きいことを危惧する方もいらっしゃいますが、少なくとも"気分的"に日本を"暗黒の90年代"から解放したのは、巨大自動車会社の業績よりも彼ら"IT関連会社"だったと思います。東証のシステムがパンクしたりして、結局日本のハジを海外に曝すハメになってしまったことにおいて、上海領事館員自殺問題と似たような、日本の"内輪揉め"のようです。21世紀になって、日本企業も何かの一つ覚えのように"コンプライアンス"(企業活動において法律やルールを守ること)を口にするようになりました。違法行為は咎められるべきだとは思います。しかしながら、誤解を怖れず申しあげれば、社員・株主・顧客といったその企業の"ステイクホルダー"や社会一般にプラスになるような"グレイ・ゾーン"であれば、ある程度は許容されても良いのではないか、と私は考えます。ルールが守られているか破られているかを簡単には判断できないから、スポーツ競技には"審判"がいるわけですし、社会に”司法”があるのです。逆説的に申しあげれば、"審判"がいなければ、白黒ハッキリさせる必要の無い、どちらとも判断可能な"グレイ・ゾーン"が、世の中にはいくらでも存在するのです。企業活動の多くもそのようにして成り立っているのですから、無理やり外から"審判"を呼んでこなくとも、"市場"に判断を委ねたほうが良い場合も多いと思います。一応企業には外部監査という制度もあるわけで、司法のような"審判"が必要となるのは、”社会一般にとって見過ごせない問題”に限定すれば良いのではないか、くらいに思ってしまいます。「不正に40億儲けた影には、40億の損失を被った投資家もいる」とか、「ルールを厳守せねば市場経済が成り立たない」などと反論されてしまえば、その通りです。ライブドアは見過ごすことのできない"ルール破りの悪人"になるかも知れません。でも、「ライブドアだけが悪人だ」とは、決して言えないでしょう。"審判"が意図的に見過ごしている巨悪の存在が無いとも言えないでしょう。フィナンシャル・タイムスの社説が言うように「年老いた守護者の復讐(ふくしゅう)」(Nikkei Net)とみるのが真っ当に思えてなりません。中国でお仕事をしていると、"コンプライアンス"の解釈と執行について、いつも考えさせられます。ルールや法律(規定)を堅物に守り抜くと、なかなかビジネスを進められません。一点の曇りなく両国の法律や規定を遵守している、と言い切れる日系企業が中国でどれほどあるのでしょうか?ほとんどの企業では、海外送金、通関、雇用、ビザ、税務、政府機関への付け届けなどなどで、きっと何らかのルール違反を意識的に行っていると思います。日本の本社は、必ずといっていいほど"コンプライアンス委員会"みたいなものがあり、中国事業や中国関連取引は、"注目の的"になっています。でも"コンプライアンス委員会"の改善勧告などをまともに聞いていたら、他の会社に遅れを取ってしまうでしょう。審判の見えないところで、相手選手にケリを入れるサッカー選手をフェアな奴と思う方は少ないと思いますが、そうしないと勝てない世界では無いですか.....じゃあ、日本ではどうなんですか、と問いかけると、日本国内でも"グレイ・ゾーン"から足を洗えてない場合が多いのです。中国だけが特別なわけでは無いようです。つまり、いまのところは"コンプライアンス"を徹底すればするほど、その企業の競争力が削がれてしまいかねない環境であると言えるでしょう。株価を上げるために"コンプライアンス"を謳っているのでしょうけど、結局は株価を下げる結果になりかねません。私は"不正"を奨励しているのではありませんが、グレイ・ゾーンが"必要悪"であることも事実だと思います。全世界のすべての企業が一斉に、グレイ・ゾーンから脱しない限り、ルール破りは無くならないでしょう。"グレイ・ゾーン"にも節度がある、ライブドアの場合、"出過ぎた杭(釘子)"だから"打たれた"と言ってしまえばそれまでです。日本は"横並び"を尊重しますから.....この"横並び"尊重思想こそ、日本経済停滞の要因だったと思います。ライブドアのような、様々な意味で"出過ぎた"企業が出現したからこそ、若者は夢を甦らせ、株式市場は注目され、"守旧派企業"ですら刺激を受け変革を余儀なくされようとしていたのではないでしょうか?確かに、日本の"IT関連企業"は危ういことをやってきていると思います。"グレイ・ゾーン"に足を踏み入れることは、リスクを抱えること。このことをしっかり認識しているのであれば、わざわざ"審判"を呼んでこなくとも良いのではないかと思うのです。仮に、錬金術が生み出した"薄っぺらな企業"だったら、司法が裁かなくとも、いずれ崩壊するのが市場の論理ではありませんか....”年老いた守護者"も、いきなり"本丸"を潰さなくとも、別の方法で"警告"を連発するなど、もっと大人の対応もできたのではないか、と思うのです。理由はどうあれ、若くて元気のある企業が、意図的に潰されるような国家体質では、この先中国に打ち負かされてしまうようでなりません....
2006.01.19
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GDPの成長率を2年さかのぼって2桁に上方修正した中国ではありますが、高所得者層向けの消費財などは生産過剰で在庫が溢れている感じです。大都市の不動産も下落していますし、赤字企業も続出で、そろそろ本気で「中国経済崩壊だ」と声高に主張するひょーろん家の方も出現しそうです。「崩壊」とまで行かなくとも、2006年は1桁成長に留まるとか、ちょっと一息つくのではないかとか、様々な観測が飛び交っているようです。私も都市部の成長は鈍化傾向にあると肌では感じています。都市部の高所得者層向けの消費が落ち着いてきているように思えるのです。だからと言って油断してはいけません。「数の論理」は健在ですから...「SAPIO」の記事(12/28・1/5号)を読んで岸宣仁さんのことを知ったのですが、岸さんの「中国が世界標準を握る日」を読みました。一言で申しあげれば、日本企業が中国の模倣品対策に躍起になっているうちに、中国が"世界標準"を握り、日本のモノが"模倣品"になってしまいかねない、と言うお話です。かつて"世界標準"には日本が関わりつづけて来ました。古くはベータやVHS、オーディオCD、JPEGのJはJapanのJですし、いまは次世代DVD規格で、2つの陣営が争っていますが、どちらも日本企業がリーダー的役割を果たしています。"世界標準"の中には、たくさんの特許が埋め込まれていますから、そうした特許を持つ企業が"世界標準"化に成功すれば、たくさんの特許収入を得ることができます。裏を返せば、"世界標準"規格の製品を生産する企業は、特許料を支払わなければなりません。かつて中国企業は、"世界標準"やそのために必要な特許にはあまり縁がありませんでしたから、モノを作れば作っただけの特許料を、主として日本や欧米の企業に支払わなければならなかったわけです(特許料を払わないケースも多いと思いますが)。ここで見過ごしそうなのが、"世界標準"は誰が決めるか、と言うことです。様々な組織や機関があることはあるのですが、最終的には消費者が決める、と言っても良いでしょう。ブルーレイとHD-DVDの争いも、プロセスの中ではソフト・コンテンツ・プロバイダーの動向など大企業の綱引きもあるのですが、ベータvsVHSのときと同様、たくさん売れたほうが生き残る、と言うことです。中国にやってきた日本人は「中国のケータイは日本で使えないから不便」と嘆きます。ここに"落とし穴"があります。中国のケータイは、日本以外の多くの国や地域でそのまま使えます。一方、日本で最も普及しているタイプのケータイは、中国だけではなく欧米アジア諸国などほとんどの国ではそのまま使えません。規格が違うからです。では数の論理でどちらが標準か、と強引に判断するなら、中国のケータイのほうが"標準"になってしまいます。なんと言っても、中国のケータイユーザーは3億人。日本はようやく8,000万人を越えたようですが、どう考えても3億人になることはあり得ません。中国のケータイはいまは中国独自の規格ではなく、欧米規格なのですが、中国向けにケータイを生産する日本の端末メーカーは欧米企業に特許料を払っているわけです。第3世代のケータイ方式を中国は独自に開発しています。あり得ないとは思いますが、通信事業はどの国も政治の力が強く働きますから、中国当局が強引に中国独自方式の3Gを採用してしまったら、その方式が"世界標準"になりえてしまうと言うことです。中国は1.5G(次世代よりちょっと手前)のDVDで独自規格を確立しちゃいましたし、ワイヤレスLANにも独自方式があります。莫大な量的需要が期待されているICタグのフォーマットに関しても、独自規格を売り込み中とのこと。中国が国を挙げて独自規格を採用すれば、"世界標準"になってしまう可能性が大きいということです。13億の民の力は大きいのです。たとえモノが買える人が3億人しか居ないとしても、です。もし、中国の独自規格がどんどん"世界標準化"したらどうなるでしょう。日本メーカーは中国に特許料を払って、そのフォーマットでモノ作りしなければならなくなってしまいます。コピーの生産と一緒です。いまは中国製品は日本の技術を模倣している、と言ってられますが、そのうち日本製品は中国の技術を模倣している、ということになりかねないわけです。日本の政府や関連組織が、重い腰を上げてようやく"海賊版対策"などとやっている間に、日本のほうが"海賊版"扱いされかねない事態になるかもしれません。もちろん、こうした事態を防ぐべく努力している日本企業もたくさん存在するのですが、両国政府の不正常な関係が続けば、民間の努力は水泡に帰してしまうかもしれません。技術大国日本の危機です。モノ作りにおける日本はホント優秀だと思いますが、それに甘んじていてはヤバイ感じになってきました。モノにはそれを使う人たちがいることを忘れてはなりません。そして、使う人が(潜在的にでも)たくさん存在する国のことも....
2006.01.12
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たくさんの日本企業が中国市場でモノを売るようになって、また時折NHKなどが中国で"活躍する"日系企業をニュースや番組でちょうちん記事よろしく取り上げたりしていますから、日本から見ると中国は日本ブランドで溢れかえっているように思われている方も多いと思います。でも日本ブランドは、コンシュマー製品の領域では大活躍しているわけではありません。マーケットシェアのトップ5に日本ブランドが入るカテゴリーと言えば、デジカメとムービーカム(いわゆるビデオカメラ)、インクジェット・プリンタくらいなものです。残念なことに日本が誇る自動車ですらブランドとしてトップ5にランキングされるかどうか微妙な状態です。ましてトイレタリーや食品など、"巨大市場"と呼ばれる中国に適したカテゴリーになると、まだまだです。日本と同様にデジカメについては一巡してしまい販売数量は下降しています。でも日本と違うところは、貧乏人でデジカメを買うことができなかった人たちも一山当てるとお金持ちになってデジカメを買えるターゲットにアップグレードすることでしょう。ですから、こうした贅沢品は、お金持ち層の需要が一段落したからといって諦めることは無いのです。絶対数量は減りますが、中国の小金持ち層は日々エントリーしていますから。ムービーカム市場はデジカメよりも更に小さなマーケットです。そもそも中国は(多くの新興国家同様)再生文化圏です。VHSのビデオデッキなど必要としませんでした。既存の映像ソフト(VCDやDVD)を再生できれば良かったのです。テレビ番組を録画して楽しむという日本のような録画文化が発展しなかったので、ハードディスク・レコーダーなども、イマイチ需要を喚起しきれていないのです。ムービーカムもどちらかと言うと録画文化の産物ですから、日本なんかよりはもともと需要が小さかったわけです。ところが中華民族の多くは写真が大好きで、特に自分が被写体になるのを楽しむことが多いので、デジカメはかなりヒットしました。デジカメでもある程度のムービー撮影は可能ですが、やはり自分がテレビに出演でもしているようにテレビ画面で美しい動画を楽しめるのは魅力的ですから、ムービーカムの存在意義は大きいのです。それでも、VHSテープに慣れ親しんだ日本人とは違い、カセットテープからいきなり光ディスクに進化を遂げた中国の人たちにとっては、小さなDVテープとは言え扱いにくいものだったようです。ところが、DVDに録画できるムービーカムの登場により、そうしたハンディキャップを克服することが可能になりました。ムービーカムをデジカメの延長線上で捉えている中国の消費者が多いので、解像度(画素数)は大きければ大きいほど人気が高くなります。デジカメ・クラスの動画では自分がテレビドラマの主人公になれないので、高画質のムービーカムを求めるのですから。中国ではS社はDVD録画タイプのムービーカムの販売に力を入れていますが、J社が最近発売したハードディスク録画タイプは中国でブレイクするのではないかと秘かに期待しています。DVテープでもDVD-Rでも1つ50RMB以上しますが、30GBと大容量のハードディスクならそうした出費が要りません。月給の2倍も3倍もするムービーカムを購入する人たちが多いわけで、ランニングコストについては"セコく"考えざるを得ないでしょう。ちなみに、中国におけるムービーカム市場は、日本ブランドのS社-P社-J社-C社の4社で80%のシェアを占めています。SAMSUNGが10%弱のシェアを持ちますが、90%は日本ブランドです。購入者も月収3,000RMB以上の家庭から2,000RMB台の家庭へと広がりを見せていて、旅先での自分自身や自分の可愛いベイビーをムービースターとして演出したいと願っている人たちにとって、結構欲しいモノになっています。日本ブランドはこのチャンスを逃さずに頑張って欲しいものです.....
2005.11.15
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日本の一般紙にまで取り上げられた中国のテレビ番組「スーパー歌姫」については、もう多くを語る必要は無いでしょう。それにしても、中国人のビジネス魂とそのスピードは凄まじいものです。テレビ番組の決勝戦(8月26日)から一週間も経たない9月1日に、「スーパー歌姫・トップ10(超級女性終極PK)」CD+VCDがリリースされました。番組の決勝に勝ち進んだ10人の"歌姫"が1曲ずつと全員で歌う曲が1曲、合わせて11曲のミュージックCDに、見事トップ1の座を勝ち得た李宇春など2曲分のミュージックビデオのVCDが付いて、小売価格は28RMB。海賊版が普及する中国ではミュージックCDも海賊版の流通量のほうが圧倒的に多く、1枚あたり7~8RMBといったところ。海賊版のVCDも同じくらいの値段ですから、正規版とは言え28RMBは決して安い感じがしない値段と言えます。ところが本日の報道によると、このCD+VCDは発売開始3時間で60万枚を売り切ったそうです(中安娯楽ネット)。事前予約がこのくらいの数だったらしく、既に全中国で100万枚を突破した模様です。この報道がホントだとすると、発売初日にしてミリオンセラーを達成したミュージック・コンテンツと言うことになります。しかも、これが"正規版"であることがスゴイ点です。日本では洋楽として扱われたUtadaの"EXODUS"が6週間で100万枚売ったのが「史上最速」ということにになっているようです(ORICON STYLE)。最近はネットからのダウンロードやCDコピーによりCDそのものの売上が減少しましたが、中国でも事情は似たようなものです。怪しげなダウンロード・サイトからは最新の楽曲が無料で入手できちゃいますし、ご存知のとおり海賊版市場が幅を利かせています。中国の海賊版のことは何度かエントリーしました。海賊版が幅を利かせているのは値段が安いと理由もありますが、正規版より流通網がしっかりしていて(?)入手しやすい、正規版で未発売の外国の音楽や映画がある、などの背景もあるのです。ただ「スーパー歌姫」のようなスピードで、話題がまだホットなうちに正規版をリリースすれば、正規版に分があることがわかります。現に、このCD+VCDが発売されてすぐに、海賊版サイトではMpeg3でダウンロードできる状況になりましたし、あと2~3日すれば海賊版のパッケージソフトも流通を始めるでしょう。ただ、正規版で100万枚売ったのですから、その分海賊版市場が小さくなったことは事実でしょう。マーケットのセグメントをとやかく言っていると中国ではキリがありません。中国ならではのスケールメリットを活かすこと、スピードを以ってあたること。「スーパー歌姫」プロジェクトは良い成功例ではないでしょうか。
2005.09.02
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いきつけのDVDショップに行きました。ここで販売されているDVDはいわゆる"海賊版"で、中国はもちろん、欧米や韓国、日本の映画やテレビドラマのDVDが所狭しと並んでいます。先日は「いま、会いにいきます」を買いました。日本でDVD販売されて1ヶ月も経たないうちに海賊版が出回るのです。ところが昨日は様子が違いました。店頭にほんの少し商品が並んでいるだけで、店内に商品はありません。ぎっしりとDVDが並んでいたはずの棚は空っぽです。店番の女の子に聞くと、取締りで"違法"DVDをみんな持っていかれてしまったそうです。それでも店を開けているのですからスゴイのですが.....さらにその女の子が言うには、海賊版は別の場所でひっそりと販売を続けているとのこと。さっそく、そこに行って、顔見知りの店員さんから事情を聞きました。細かい事情を書くのは止めておきますが、DVDショップの営業ライセンスに対して権限を持つ工商行政管理局という機関ではなく、北京市の公安局が乗り込んできて、海賊版を根こそぎ持って行ったそうで、お店の責任者が"しょっ引かれて"しまったそうです。しかも、公安は中国大陸のとある正規DVDディストリビューター(販売元)と組んで、そのDVDディストリビューターが正規版を販売しているDVDの海賊版を中心に"ガサ入れ"を始めたそうです。この店員さん曰く、「公安も商売から仕方が無い。こっちも金が続かないし....」。以前、田中宇さんが上海のカラオケ屋の著作権保護対策について書かれていましたが、この仕組みが海賊版DVD対策にも利用されているのだろう、と確信を持ちました。つまり、正規版DVDの販売元が公安に取締りを依頼する、と言うことです。これだけなら、当たり前のことなのですが、摘発の成果に応じて、正規DVDディストリビューターが公安にキックバックを支払う、という仕組みです。私が以前から、「海賊版対策は中国の信頼できる販売元に委ねるのがベスト」と言っているのは、つまりこういうことなのです。残念なことではありますが、中国におけるキックバックの習慣は避けられない事実です。企業にしても政府機関にしても、上層部の人たちは徐々にそうした習慣から抜け出ようとしつつありますが、現場ではキックバックが常識のままです。相手が政府機関の方(つまり公務員)となると、これは立派な犯罪になります。ところが、たとえば公安部門が金で動く(動かない)、ということは、夜の世界に詳しい日本人にとっては周知の事実でしょう。夜の世界の場合は、違法/不法行為を見逃すとか多めにみるという場合が多いわけですが、海賊版摘発のように違法/不法行為を積極的に取り締まってもらうためにも、お金がかかったりするのです。良い・悪いの議論を敢えて避ければ、これが"現実"なのです。さて、実績のある中国の正規版DVDディストリビューターは、自社が販売元となっている正規DVDの売上を伸ばすために、その海賊版の販売を止めさせなければなりません。例えば訴訟を起こすなどの正攻法で対応しても効果が無いことを理解しているのでしょう。ですから、各地の公安と依頼して、海賊版DVDの販売店に踏み込んでもらうわけです。そして、そのお礼を支払う。こんな仕組みで海賊版を取り締まっているのだと思われます。この場合、海賊版DVDの販売店のほうも公安とうまくやって取締りを逃れることができるのかもしれませんが、こうしたお店は個人営業の零細企業が多いですから、資金力で優位にある正規版DVDディストリビューターが勝ことになると思います。日本のコンテンツ・ホルダーや関連政府部門は、いま中国における海賊版対策に"真剣に"取り組み始めています。政府関連の偉い方が中国にやってきて、中国政府の関連機関の偉い方に協力要請したりしています。中国の偉い方は、「協力は惜しまない」と言うでしょうし、そのための賄賂などは要求しないでしょう。そして、たまに"見せしめキャンペーン"を実施して、日本などからわざわざお願いにやってきた方の”メンツ"を保ってあげたりするでしょうが、現場での取り締まりとなると、直接的な影響力があるわけではありません。少なくとも"即効性"は極めて乏しいわけです。とは言え、コンテンツ・ホルダーなど日本の会社が中国の現場の公安に"非公式"な協力要請をするなんて、不可能でしょう。贈収賄という犯罪行為に参加するワケですから....こうして日本企業が道義を通しているうちに、台湾や韓国、アメリカのコンテンツホルダーなども、中国人や中国のディストリビューターなどを介して、自社の権益を拡大しているかもしれません。海賊版取締りを行うには、現時点ではこうした中国式手段が有効であることは確かだと思います。でも、こんな話を日本の会社に進言するものなら、「キミは中国で長く仕事をしているから、善悪の判断が中国的になってしまった」などとお咎めを受けることになりかねません。中国の正規版DVDディストリビューターにしても、自社のビジネスと権利を守り抜くため"命懸け"で行っている"違法行為"なのだと思います。日本式(或いは国際的??)なやり方ではうまく行かない。けど、中国式のやり方は受け入れられない。海賊版対策もその一例のように思えます。
2005.08.01
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丸10日の休暇を終えて北京に帰ってくると、エキサイト・ブログに接続できません。きのうまで、日本では接続できていました。そこで、北京の知人と日本の家族に、接続チェックを依頼すると、やはり北京からエキサイト・ブログに接続できません。ちなみに、エキサイトのポータルもフレンズもアクセスOKで、exblog.jpドメインだけがアクセスできない状態になっているようです。もしかしたら、私のせいなのかと心配です。もう一つのブログ(ぺきん日記)をエキサイト・ブログにもっていて、4月9日の北京でのデモのことをレポートしたり、"ナマ写真"をアップしたりしていましたから、事態の収拾を進めているこちらの政府当局がこちらからアクセスできないようにしたのかも知れません。それにしても、エキサイト・ブログのURLはユニーク・ドメインになっているのですから、私のブログが気に入らなければ、beijing.xblog.jpというドメインだけをアク禁にすればよいものを、みんなまとめてアク禁にしてしまうなんて、ちょっと大雑把過ぎるような感じがします。そんなわけで、ぺきん日記のほうは、暫らく更新もお休みです。ところで、中国のネット検閲システム。Gold Shield (金盾)などと呼ばれているのですが、この技術ってアメリカの某社が提供してて、しっかりビジネスにしちゃっているのです。人権云々と主張されているお国柄なのに、政治とビジネスは別なのでしょうね。アメリカ好きの日本の人たちは、アメリカのこうした側面こそ見習うべきではないでしょうか?このブログは、アク禁になりませんように....
2005.05.08
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日中関係を正常化していくためには、民間や大衆レベルでの文化交流による相互理解が大切だと思っています。特にポップスやテレビドラマやゲームやアニメや映画などの日本のエンタテインメントを、江沢民時代以降強化された"愛国教育"を受けてきている中国の若者に楽しんでもらうことは、いまの日本の状況を知ってもらう上で有効だと思います。そもそも90年代以降、中国のメジャーなテレビ局で放映される日本関係の映画やドラマは、あの時代の日本軍の"侵略"や"悪さ"を取り上げたものばかりで、コンテンポラリーなテレビドラマもアニメも映画もほとんど放映されていないのですから。もちろん、時代に敏感な若者は、何もテレビだけではなく、他の手段で、日本のポップカルチャーに接することができます。でもそれは、日本で巻き起こった"韓流"のようなブームにはなりません。数十年前の日本の洋楽ファンが深夜放送でビルボードのチャートを知り、大都市にある数少ない輸入盤専門店に行ってレコードを買うようなもので、特に北京あたりでは日本のコンテンポラリーなエンタテインメントに接している人たちは、マイナーに属します。テレビで日本のドラマやアニメが放映されなくなったのは、中国の政策(国産コンテンツ制作振興)の影響が大きいのです。日本だけ毛嫌いしているわけではなく、同じ"中国"のはずの台湾や香港制作のテレビ番組の放映にも制限があります。また、日本のテレビドラマやアニメのDVDにしても"正規版"が中国大陸で販売されているケースはほとんどありません。でも、日本のテレビドラマやアニメ、映画に興味のある人は、そこら中で売っている海賊版DVDやインターネットのコンテンツ・ポータルで容易に見ることはできます。CATVのペイパービューでも見れたりするのですが、こうしたもののほとんども海賊版DVDを使って配信しちゃっているようです。日本の番組がメジャーなテレビ局でなかなかオンエアされないのは、国内コンテンツ振興のための外国番組規制とセンサーシップ(番組内容の検閲)という大きな障壁があるからですが、DVDやゲームなどはセンサーシップが比較的ゆるいので、正規版がなかなかリリースされない理由は、別のところにもあると考えています。一つは日本のコンテンツの権利処理の未熟さ、もう一つは海賊版が出回るのを恐れて、と言う日本のコンテンツホルダー側の原因です。コンテンツの権利関係は複雑です。アニメであれば、原作者はもちろん、アニメ制作会社、日本で放映したテレビ局、原作コミックの出版社、さらに広告会社などがそれぞれ関連権利を所有しています。プロジェクトを始める時点で、海外でのオンエアやDVD化についてまで約束していればよいのですが、そうでない場合が多く、中国でオンエアやDVD化の話が出ても各権利者にいちいち承認を取らなければなりません。生身の人間が出演するドラマなんてもっと大変です。映画などは最初から2次使用、3次使用を想定して、権利関係をクリアにしていますが、日本のテレビ番組の場合、そうではないケースが多いのです。もちろん、日本のコンテンツ・ホルダーが中国で一番心配しているは"海賊版"です。中国で正規版をリリースしても、海賊版がスグ出回ってビジネスにならない、と思ってらっしゃる方が圧倒的に多いようです。でも私に言わせると、「正規版が出てないから海賊版が出回っている」のです。事実、北京で出回っている海賊版の日本のDVDのほとんどは、中国大陸で正規版が販売されていないコンテンツです。正規版のライセンスを与えている台湾や香港からの横流しがほとんどです。正規版が出ていないから見たいと思ったら海賊版で見るしかないわけですし、正規版を販売していなければ、海賊版の取り締まりにも迫力がありません。まず正規版を出してから、海賊版のことを考えてみてほしいと思うのです。日本のコンテンツ・ホルダーに希望したいのは、まず最新作を持ってくること。一世代前の作品などでお茶を濁していると、かつての日本の白物家電や携帯電話のように、いま日本が世界に誇れるコンテンツ産業の中国マーケット参入も手遅れになってしまうでしょう。そして、信頼できる現地のディストリビュータのモチベーションを利用することです。海賊版が彼らのビジネス上の障壁となるのであれば、彼らが取り締まってくれるでしょう。日本から乗り込んで、海賊版対策などと考えるより格段に有効だと思います。さらに、編集権である程度譲歩すること。不適切と思われる画面のカットや翻訳について現地ディストリビュータの要求を頑なに拒否するのではなく、柔軟に対応するということです。これはアート(原作者)とビジネスの間に立たされるコンテンツ・ホルダーが最も苦労するところですが。それで最後は、長期的な視野に立ったビジネス・プランで臨むこと。海賊版DVDの相場が1枚8元という現時点で正規版の価格が5倍も6倍もしたら、なかなか売れはしないでしょう。ですから販売価格も安く抑えなければなりません。いまは簡単には儲からないと思います。でもいずれ正規版が海賊版を駆逐する、と私は信じています。正規版への参入によって、中国のマーケット・ニーズを直接掴む事もできますから、将来中国向けのコンテンツを中国で制作する際にも圧倒的に有利になると思います。そして、日本の"いま"の文化を中国の若者に触れてもらうことは、将来の両国の関係にきっと有利に働くでしょう。北京の30歳前後の人たちの多くは、幼い頃「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」をテレビで見て感動したそうです。20代の若者の一部はVCDで「東京ラブストーリー」を見たことがあるそうです。でもいまの大学生は、ゲーマーやアニメフリークを別としてあまり日本の大衆文化に積極的に触れる機会がありません。旧日本軍の"蛮行"テレビ番組だけではなく、いまの日本の若者の生活や考えが見て取れるテレビドラマを多くの人たちが見れるようになったら、あんなデモも起こらなくなると思ったりするのです。
2005.04.21
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IBMパソコン部門の買収を発表した「聯想(LENOVO)」ですが、マスコミを含め北京の人たちのウケはあまり芳しくないようです(毎日Web)。マスコミの論調は:(1)IBMの不採算事業を不合理な金額で買い取ることになった聯想の将来に悲観的(2)聯想がIBM並みのコンシュマ・サポートを提供できるかという疑問(3)利ざやの大きな企業向けソリューション・サービスに特化したとしてもIT業界のキングである続けるであろうIBMのしたたかさなどクールなもので、聯想による企業買収を手放しに褒め称えたり祝福する論調はあまり見受けられません。ポータルサイトSOHUの評論(中国語)は、この二つの企業のカルチャー・ギャップを「北京-ニューヨーク間6,800マイルの距離」と表し、そう簡単には縮まるはずが無い、と酷評しています。とかく中国は、アメリカや日本などに対する優越性を重視していますから、アメリカの一流企業を中国企業が買い取る、というニュースは、国家挙げて祝福され、歓迎されるものだと思っていました。発表のあった日のNHKでは、インタビューに答える北京市民は皆大喜びしていましたが、私同様に中国の反応を見誤ったNHKの早とちりで、少数意見をオンエアしてしまったようです。私の周りの北京の人たちも、このニュースには思いのほかクールな反応でした。聯想の本社は北京にあります。排他的な北京っ子であっても、この地場企業の「快挙」には誇りを持っても良さそうなものですが。いろいろ理由を聞くと:(1)今回の買収はあまりにも「儲からない買い物」だと思われているようです。中国人の商売感覚では、話題性があろうと儲かりそうの無い投資をする奴はあまり賢くないらしいのです。(2)この買収発表後に就任した聯想の新しいCEOがアメリカ人なのも気に入らないようです(中国青年報ウェブ・中国語)。元々IBMでThinkPad事業を統括してきた人材ですから、「北京-ニューヨーク間6,800マイルの距離」を縮めるために、当たり前と言えば当たり前の人事なのですが、中国を代表する企業だったら中国人にやらせぇ、と言う感情が、中国人にはあるようです。(3)聯想(LENOVO)の日頃のサービスに対する不満があるようです。他の国産パソコン・ベンダーと比較するとLENOVOのサポートはあまり良くないらしいのです。北京の人が「北京っぽい」と言う位ですから、かなり官僚的なのでしょうか。そう言えばウチのオフィスのデスクトップもいつの間にかLENOVO(旧LEGEND)からFortune(方正)に変わっていきました。IT担当の社員に聞いたら「頭にきたから」だそうです。実はこの「サービス」と言うのが、中国におけるブランド・イメージの重要な構成要素にもなっているのです。中国のグローバル企業と言えば、まずはHAIER(ハイアール・海爾)を思い浮かべます。次あたりが聯想(LENOVO)って感じでしょうか。ハイアールのほうは山東省の青島の企業なのですが、田舎者を馬鹿にしがちな北京っ子にあっても、比較的ウケが良いのです。北米では小型冷蔵庫、中東やヨーロッパではエアコン・洗濯機のマーケット・シェアがトップクラスという実績を、既に確立している中国ブランドだから、中国の人たちが誇りに思っているかと言うと、そうでもないようです。ハイアールは、どちらかと言うと中国にしては控えめで実直な会社なので、こうした海外での成功を大々的にPRしてませんから、フツーの中国人はハイアールの海外での実績をあまり詳しくは知らないようです。いろいろ聞いてみると、ハイアールはサービスが良いらしいのです。ハイアールはCRMに力を注いでいて、そのサポートの緻密さは日本のテレビ番組などでも取り上げられているくらいですが、相変わらず丁寧なサービスを維持しているのでしょう。私自身、この二つの企業を訪問したことがあります。ハイアールには暖か味を感じましたが、聯想のほうは「北京っぽい」感じ、つまりクールな感じがしました。こうした感じがコンシュマに対するサービスにも現われているのかも知れません。聯想(LENOVO)とハイアール。中国を代表するグローバル企業と言えるのでしょうが、北京では、ハイアールの好感度のほうが高いようです。IBMパソコン部門の買収を、華々しくお祝いしてもらえなかった聯想との決定的な違いは、サービス、CSにあるような気がします。中国の消費者はアフタ・サービスやサポート体制をほんとに重視しますから、中国で事業展開する日本企業もほんとに気をつけなければなりません。
2004.12.11
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中国最大のITベンダーの聯想グループ(LENOVO)によるIBMのパソコン事業の買収が発表されました。日本列島を飛び越えて、中国とアメリカで繰り広げられるビッグ・ディールに、何だか日本だけが取り残されて行く、という気分になってしまったのは、私だけでしょうか。日本の多くの企業が、中国への投資とか合弁事業の設立とか、或いは技術供与だとか資金援助だとか言っているのに、天下のIBMは中国企業への売却を望んだのです。80年代の日本企業はアメリカの魂やシンボルまで買い漁った、と言われたことがありました。いまや、ロックフェラーセンターやMGMは既に日本企業の手を離れましたし、コロンビア映画はスパイダーマンに支えられて何とかソニーの手の中に残っている、という状況でしょう。いまや欧米の眼差しは、日本を通り越して、中国に注がれているわけです。こうした商談も決定までにあれこれと時間がかかり政府も協力的でない日本企業よりは、トップ判断で即決し政治的にもメリットの大きい中国企業と行っていく、と言うトレンドが一層強くなるでしょう。日本も中国、中国、なんだから、同じじゃないか、と言われるかもしれません。しかし、「世界最大のマーケット」と言われている中国で、世界第二の経済大国である日本の存在感は、思いのほか希薄です。例えば消費市場のトレンドで言えば、クルマはドイツかフランスの合弁、スーパーはフランスかアメリカ、ケータイはフィンランドか韓国ブランド、家電やパソコンは中国ブランドで充分です。日本ブランドが幅を利かせているのはデジカメくらいでしょう。ある程度見識を持った中国の消費者にとって、日本の中国における経済活動は、ドイツやフランスやフィンランドや韓国やロシアと大きな差が無いように見えているのです。ご存知の通り、日本のODAについては多くの人民が知らされていません。企業活動を考えた場合、日本はアメリカに次ぐ経済大国と言えるだけの活動を中国で展開しているように感じられないのです。2003年の中国の輸出入総額は日本がNo.1、次いでアメリカ、EUの順なのに、です。これは、日本の暗黒の90年代に中国ビジネスが停滞したこと、日本企業のビジネスに対する姿勢、日本のPR下手、そして政策によって創られる日本に対するイメージ、が大きく影響しているのだと思います。経済分野のみならず、政治分野においても、日本が取り残されつつあるのではないか、と私は危惧しています。クリントンが大統領だった頃、日本を飛び越えて中国にやってきました。中国とアメリカは、実は相思相愛の間柄にあると私は考えています。共和党政権になっても、その核心は変わらないでしょう(学生時代私と劇団をやっていた田中宇の「米中論 何も知らない日本」の受け売りですが)。そうした米中の蜜月関係を日本の政治家はどの程度押さえているのでしょうか。ユーロと言う基軸通貨を媒介に関係が深まりつつあるヨーロッパのほうも、フランスは武器の売り込み、ドイツは国連安保理常任国入り工作、といろいろ狙いはあるにせよ、中国との外交により力を注いできています。日本のリーダーがアメリカ、アメリカ、と叫べば叫ぶほど、ヨーロッパも日本を相手にしたくなくなるでしょう。以前、中国各地とアメリカ各地を結ぶフライトのほとんどは日本経由でした。でも今では日本に立ち寄るのはUA便くらいのもので、日本を飛び越えて(ホントは北極圏を通っているので、日本上空は通過しないハズですが)、中国とアメリカで直接行き来しているのです....
2004.12.08
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アメリカのIBMがパソコン事業を中国のLENOVO(聯想)に売却すべく交渉している、との話。売却価格が10~20億US$になると言うから驚愕です。確かにIBMにとってパソコン事業はある意味でお荷物だったのでしょう。世界的にはDELLやHPに水を空けられてしまいましたし、利ざやも大きくない。コンソールやソフトウェアは他社頼みだから、IBMとしてはアッセンブルをやっているだけの気分なのでしょう。独自技術を発揮できる分野では無いと思っているのかもしれません。でも、VAIOに一時期浮気した私も、結局戻る鞘はIBMのノートブックでした。耐久性と操作性というビジネス・ユースには不可欠な二つのスペックにおいて、IBMにかなうモノはいないと思っていました。IBMにとってパソコン事業など、子供相手におもちゃを売っているようなものなのかもしれません。BtoBのSolution領域のほうがシェアも利ざやも大きいので、この分野で他社を引き離すほうが効率的なのでしょう。でもまさか本気で事業売却を考えているなんて思いもしませんでした。こんなニュースを耳にすると、NECや富士通は別として、Panasonicや日立やSHARPやJVCのパソコンまでが秋葉原に並んでいることが思い出され、なんだか日本企業って、ホントお人好しというか商売ベタなんだな、って思ってしまいます。しかも、交渉相手は中国のPCメーカー&ディストリビュータのLENOVO(聯想)という話。私はこの会社の本社ビルに行った事があります。10年ほどで東アジアのPCトップメーカーに成長した企業だけあって、若い社員が皆自信に満ち溢れていました。ビジネス交渉は常に強気で、礼に欠くような姿勢すら感じました。東芝のパソコンのディストリビュータとして頭角を著しつつ、自社ブランドの力が増すと、こんどは東芝に対して相当厳しい条件を突きつけてきた、という話も聞いたことがあります。個人的には「成り上がり」企業と言う雰囲気をすごく感じています。バブルが弾け始めた10年ほど前、私は日本IBMのコンシュマ部門に出入りしていましたが、あの頃の日本IBMを考えると、いまのLENOVOには相容れないものを感じてしまいます。そもそも、LENOVOに10億~20億と言われる売却費を調達するだけの資金力があるのかどうかも疑ってしまいたくなります...報道によると、IBMは当初、東芝に売却話を持ちかけていたとのこと。ま、お断りするにはそれなりの理由があったのでしょうが、IBMが次の交渉相手に選んだのがこの東芝と因縁のあるLENOVO(聯想)だとは、IBMも何を考えているのか...東芝にも、LENOVOにも、もう自社ブランドによるパソコン事業は止めたほうがよい、とでも言っている気がしてなりません。LENOVO(聯想)本社のロビー
2004.12.03
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ご存知の通り、中国は偽物(フェイク、模造品、模倣品)と海賊版の宝庫です。世界に向けた製造(密造?)基地であるとともに、恐らく世界最大の偽物マーケットでもあるでしょう。被害を受けているのは、日本や欧米の有名ブランドや著名アーティストの作品だけではありません。中国国内のブランドや著名アーティストもやはり偽物の被害を受けています。模造品が多いのはタバコと酒です。これらは模造品の成分構成によっては生命をも奪い取ってしまいます。農村部で中国側との宴席で出された著名ブランドの白酒が実は偽物だったため、命を落としてしまった日本人もいます。中国国内アーティストのCDや映画のDVDの海賊版もたくさん出回っています(「ぺきん日記」 11月13日)。北京の伝説のロックスター崔健を中心に「知的財産権の侵害は文化の再創造への機会を危うくするもので、結局被害を受けるのは中国人民だ」という主張の元で、民衆に訴えるキャンペーンを展開していますが、焼け石に水です。つまり、中国の知的財産権保護の体制は日本や海外に対してのみ甘い、とは言えないと思うのです。また、中国でも知的財産権の保有者はその侵害を防ぐため、いろいろ努力をしている、と思うのです。それでも尚、偽物はなくならない、と言うのが現実なのです。日中政府間や民間の間で、さまざまな対策会議(Asahi.com 11月20日)が行われているようですが、中国政府が対策に本腰を入れるかどうか別にして、そうしている間にも、偽物は製造され市場に流通していくのです。この現実を受け入れて、被害をできるだけ小さく食い止めることのほうが先決だと思います。家電などの耐久消費財に関して言えば、中国都市部の消費者の偽物に対する意識は高まっています。本物ブランドを買い求める消費者は、偽者でないか徹底的に検証します。肌に直接影響を与えるシャンプーなどの日用品やお口に入る食品なども、信頼のおけるブランドの商品を選びますし、その商品が偽者でないか、極端な話、スーパーで栓を空けて確かめたり、正規品の空きパッケージと比較したりして、自分でよく確認してから購入します。中国都市部の消費者は一般的にブランド信仰者ですから、ブランドの信頼度が大きければ、そうしたブランド品を購入できるだけの経済力を持っている人たちは、きっと自ら偽物を嗅ぎ分けて、本物を購入するでしょう。ですから、日本企業もブランド力を強くすること、販売価格に見合うだけの特長(技術力や高品質)を保持すること、によって、中国都市部での偽物対策ができると思います。農村部に関しては、手の施しようが無いかもしれません。人口比では圧倒的に大きなマーケットかもしれませんが、かと言って日本など海外ブランドの商品を買うほどの経済力が無いわけですから、対策するだけ無駄かもしれません。一番良いのは、彼らの経済水準に見合う価格帯の商品を作ってあげることでしょう。ただ、日本企業が直接製造販売していたら、きっと採算が合わないので、農村部に強い中国企業にやってもらうのです。ライセンスや特許を製造数量で縛らずに、期間を区切って売り渡してしまうのです。多額のライセンス料は期待できませんが、偽者対策に費用をかけるのではなく、若干の収入を獲得できるのです。うまくいけば、ライセンスを売り渡した中国企業が、自分のマーケットにおける偽物対策までやってくれるかもしれません。自分の会社の商品の売れ行きに影響するからです。もちろん、この場合、農村部(低所得者マーケット)向けの第2ブランドを用意したほうが良いでしょう。経済力の無い国向けに医薬品の特許料を安くする、という動きにも似ていると思います。本物を買えないから偽物を買わざるを得ない人たちには、こうした方法で、偽物を駆逐してみてはどうなのでしょうか。映画や音楽などの知的財産権侵害の対策はもっと困難でしょう。何せ、中身自体は「本物」ですし、違法コピーであっても、画質や音質がほとんど劣化しないデジタルの世の中ですから、本物を買える経済力を持った中国人民であっても、海賊版に手を出すでしょう。日本で行われている対策同様、正規版に付加価値をつける、ということも考えられます。ただボーナストラックやメイキング映像では簡単にコピーされてしまいますから、別の付加価値が必要でしょう。2002年北京工人体育場で開催されたGLAYの北京公演では、中国のファンは海賊版の4倍以上の値段がする正規版CDを購入してエントリーしました。2ヶ月で10万枚近い正規版CDが売れたそうです。中国における正規版CDの販売数量としては画期的な数字です。これはヒントになるかもしれません。ただ、GLAYの北京公演には付加価値と呼べないほどのコストがかかっているでしょうけど。日本企業が直接海賊版対策を行うのではなく、中国同業者を味方につける、と言うのが私の方向性です。信頼性が高い有力な中国のベンダーに版権を売り渡してしまいます。販売数量に応じたロイヤリティーではなく、売り渡しです。中国のベンダーは、販売数量が多ければ多いほど儲かることになりますから、海賊版に対してもきっと目くじらを立てることになります。商売上手な中国人でしたら、自分の利益を侵害するライバルを見過ごすことはできないはずです。どこまで効果が得られるかは未知数ですが、日本と中国の有識者で「対策会議」に明け暮れているよりはマシかもしれません。知的財産権の所有者は多額の収入を期待することはできませんが、海賊版対策のためのコストはかからないのです。中国政府の厳しい対応を迫ることももちろん重要ですが、巨大かつアンコントロールなマーケットの中国で、スグに答えを求めるのは非現実的だと思います。富裕層の多い都市部マーケットには、日本の技術力とブランド力をしっかり打ち出すこと。貧困層の多い農村部マーケットには、その経済力に見合った知的財産権の換金方法を模索すること。そして、それぞれのマーケットに有力で信頼度の高い中国企業をうまく巻き込むこと。こんなことから始めてみてはいかがかな、と思うのでした....
2004.11.22
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今月末から中国のテレビ番組制作会社に外国資本の参入が認められることになりました(人民網日本語版)。中国のテレビ番組の制作~放送の仕組みは、欧米に似てきています。日本の場合は、公共の電波を所有するテレビ局が決めた企画を番組制作会社に発注して、制作してもらうことが一般ですから、テレビ番組の制作会社はテレビ局の「下請け」的な位置づけが強くしています。ところが、欧米では番組制作会社が独自の企画と独自の資金で番組を制作し、それを各テレビ局に販売する、と言う方式が一般的です。ですから、人気の高い番組を制作できる会社は、テレビ局よりも発言力が大きかったりしますし、たくさんのテレビ局が放送してくれるような番組を制作すれば、巨額の富を手にすることも夢ではないのです。中国の場合、権威性の高い中央電視台や都市部のローカルテレビ局は、独自の企画と資金で番組を制作し、或いは番組制作会社に外注するのが主流でしたが、資金力の小さい地方のテレビ局では、番組制作会社によって完成した番組を購入して放送していました。そして、番組制作会社が制作し地方のテレビ局で放送された番組の人気がどんどん高まってきて、大きなテレビ局も次第に番組制作会社からの番組購入を増やすようになったのです。こうした状況ですから、中国におけるテレビ番組制作会社の位置づけは、日本のように低いものではありません。WTOの外圧による規制緩和であって、ニュースや報道系の番組は除外される、と言うことを差し引いても、中国のコンテンツ産業が活性化される第一歩になることは間違いありません。そもそも、中国では外国テレビ番組の放送に大きなハードルがあります。総放送時間の何%以上外国製のテレビ番組を放送してはいけない、という「総量規制」、そして政府関連機関による「検閲」が主たるものです。また、番組を供給する側にとっては、視聴可能な人口に対して放映権料や番組販売の対価が安すぎる、と言うことや、一度中国で放送してしまうと海賊版のVCDやDVDが出回ってしまいパッケージソフトの販売収入が期待できない、と言った問題も大きいのです。ですから、外国の番組制作会社などコンテンツホルダーにとってもイマイチ踏み込みにくい市場でした。これが今回の規制緩和によって、直接投資ができる環境が整ったことになります。欧米の番組制作会社が挙って参入してくるでしょう。そして、日本の番組制作会社にとっても、日本における「下請け」的立場からの転換を図る良い機会ではないでしょうか。特に、日本が得意とするアニメーションの分野などには、中国のマーケットに大きな隙間が残されているのです....
2004.11.19
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日本の大手ゲームソフト会社が、その会社の人気ゲームソフトの海賊版を製造販売していた北京のP社を相手取って、訴訟を起こして、実質的勝訴ともいえる和解にこぎつけました。和解内容はP社が、(1)著作権侵害の事実を認めること、(2)和解金を支払うこと、(3)謝罪広告を掲載すること、の主として3点。(2)の和解金の金額がどれくらいなのか分かりません。ただ、海賊版による損害をチャラにできるくらいの金額とは思えません。この裁判によって、この日本のゲームソフト会社の海賊版が一掃されるのでしょうか?現実はそうは行かないと思います。まず、P社以外にもたくさんの会社が日本の人気ゲームソフトの海賊版を製造販売しています。P社が訴えられたのは、比較的大きくしっかりしていた会社だったからでしょう。実際は「地下に潜った」海賊版の製造販売組織が無数にあって、訴訟相手を特定することすら難しい状況なのです。次に、この裁判の結果が、P社以外に海賊版を製造販売している組織に対する抑止力になるかですが、こうした効果もあまり期待できないと思います。私の経験上、中国で裁判を起こすことは「骨折り損のくたびれもうけ」です。苦労して裁判を起こし、勝訴し、或いはこちらに有利な和解に持ち込んだとしても、期待されるほどの効果が実際は得られないことが多いようです。模倣品や海賊版の対策としては、目に余る違法行為を繰り返している会社に的を絞って、訴訟を起こすしかありません。でも、前述のとおり、波及効果が期待できないのです。代金の未払いで訴訟を起こし勝訴したとしても、相手側がいろんな抜け道を用意して支払猶予を勝ち取ったり、債務の存在を認められた法人の資産を他に移転させるなどして、支払えない状況を作ったりします。日本の本社は「勝訴」という大義名分を勝ち取れるわけですから、そこそこ満足しますし、中国でビジネス上のトラブルが長引くと「裁判に訴えろ」とおっしゃいます。でも、知的財産権の問題にせよ、未収金の問題にせよ、案件ごとの裁判で勝訴したからといって、すべてがうまく行くわけではないのです。他に有効な対策があるか、と言えば、何とも答えられないのですが.....
2004.11.16
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Fobus誌の中国長者ランキングが発表されたようです。1位は香港の有名な投資会社の人、2位は最大手家電量販店の人ですから、まあそんなもんか、という感じでした。ところが、3位が中国最大のオンラインゲーム・ベンダー「盛大網絡」の陳さんというCEOということで、なかなかの驚きです。ITバブルの残党で去年ランキング1位だった「網易」というポータルサイトの社長は株価値下がりで6位にランクダウンしたにもかかわらず、このオンラインゲーム屋の陳CEOの資産は13億ドル近く(140億円くらい)もあるとのことですから....この「盛大網絡」はNASDAQに上場していて、株価が高値で維持されていることで、陳CEOの資産の安泰なのですが、他の中国系ポータルサイトが軒並み株価を下げた中で、なぜ安泰だったのでしょうか?もちろん、オンラインゲームのマーケットの拡大性やこの会社が始めたオークションサイトなど新たなネット商売も要因になっていると思います。私は、広告収入に頼らざるを得ないポータルサイトと違って、オンラインゲームの堅実な収入保証システム、即ち【課金システムの確実さ】を大きな評価要因として挙げたいと思います。クレジットカードが普及していない中国で、有料オンラインゲームを楽しむには、プリペイドカードを購入します。このカードに記載されたパスワードを入力して、はじめてゲームができるのです。プリペイドカードは道端のキヨスクなどでも手に入りますから、ヘビーユーザーはカードを使い果たせばスグ購入できます。お手軽なのです。もともと中国ではコンソール(ゲーム専用機)が根付いていません。日本のゲーム機メーカーがソフトの海賊版を恐れるが故、NintendoもPS2も積極的なハード拡販に踏み切れない状況です(PS2には別の事情もあるようですが)。実際、日本のゲームソフトの海賊版は10元(130円)くらいで売られてますから、ソフト収入でハードの赤字を補うようなビジネスモデルが中国では成り立ちにくいのです。パソコンの普及、ネットカフェの浸透(これはいまブレーキがかけられています)もあって、PCプラットフォームのオンラインゲームが主流になるのも、当然といえば当然です。しかもベンダーにとっては、海賊版対策の必要も無く、ほぼ確実に課金でき、しかもプリペイドカードですから前金で現金収入を得られるわけです。この市場が有望なのは明らかですし、この「盛大網絡」にはいまのところ、有望なコンペティターがいません。日本のスクエアエニックスなども中国のオンラインゲームに参入して、単体のタイトルではかなりの人気を得ていますが、タイトル数では「盛大網絡」に太刀打ちできない状態です。[関連記事(日経BP)]中国ネットゲーム調査:国産ゲームへの期待高い、日本勢は低迷そういうわけで、陳CEOが中国第3位のお金持ち、というのも納得できます。なお、この会社最近多角経営に乗り出しているので、これから株を買ったとして引き続き上昇気配でイケるかどうかは、保証出来ません。
2004.11.08
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通信事業各社、来年のTD-SCDMA対応3Gサービス商用化に自信 とのことです。TD-SCDMAとは中国が独自に(?)開発している第3世代携帯電話のプラットフォームです。日本だとDoCoMoのFomaがW-CDMA方式、auがCDMA 1XEv-DO方式で第3世代化を推進していますが、中国の場合、China MobileがGPRS形式、China UnicomがCDMA 1X方式を採用し、2.5Gといわれる第3世代よりちょっと劣るケータイサービスを提供しています。日本の場合、女子高生を中心に若者の間でムービーメールがヒットしたお陰で2G→2.5G→3Gへの道のりができたのですが、契約総数3億のケータイ王国中国ではありますが、この2.5Gの普及率が伸び悩みの状況です。ケータイの通話料は若者にしてみればかなり高いので、もっぱら音声通話とショートメールでの利用が中心で、高速通信の恩恵が必要ないですし、30代くらいのお金持ちビジネスマンが魅力に感じるコンテンツやアプリケーションがまだ育ってないからです。それでも、中国の3Gへの参入を目指して、外国の通信システム/設備の企業が必死に売り込んでいます。2.5Gまでは欧米や韓国の通信関連企業が活躍して、日本の通信関連企業は中国にほとんど参入できなかったので、特にW-CDMAが得意なDoCoMoなどは必死で売り込みをかけている様子なのですが、中国政府としては自前のTD-SCDMAを採用したがっている気配を感じています。有人ロケットが飛ばせる技術力を持つ国なのだから、第3世代ケータイのシステムも自前で行きたい、ということと、国家の骨格に関わる通信技術は欧米や日本や韓国に頼りたくない、という気持ちが強いのでしょう。数年前はWindows追放キャンペーンみたいなこともありました。Mocrosoftはアメリカの企業だから、OSに情報流出のプログラムを組み込まれるかもしれない、という意識もあったようで、政府機関を中心にLinuxをベースとした「紅旗」という中国独自(?)のOSの採用を推進したのです。しかし、現状では「紅旗」はあまりヒットせず、中国の政府機関の多くがWindowsを利用しています。ですから3Gについても、TD-SCDMAの採用に関して、慎重な意見が多いのも事実です(そもそも、商用化されてない技術ですし、実験段階でも問題が多いらしいのです)。日本は通信システム/設備においても、携帯電話端末においても、中国市場では大幅に出遅れてしまったので、3Gこそは何とか頑張ってほしいのですが、どうなるでしょうか。
2004.11.04
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天津で「国際携帯電話フォーラム」が開催されるので、準備に行ってきました。中国の通信キャリア(China Mobile, China Unicomなど)が大きな展示ブースで出展していましたが、ノキアやモトローラ、SAMSUNGといった、中国で売れている携帯端末のメーカーはお付き合い程度の参加のようです。そもそも、中国の携帯電話契約数は3億件を越えています。携帯端末は日本のように通信キャリアのブランドで販売しているわけではありません。ノキア、モトローラ、SAMSUNGの3ブランドで6割以上のシェアがあります。日本のブランド、例えば高い技術力でDocomoご用達のNEC、PANASONICはトップ10にも入るかどうかのところで、シェアは1桁。日本ブランドは90年代初めの初動が遅れたのが後を引いたので、現行のGMSは放棄して、CDMAや3Gのほうに力を注ごうとしていて、日本円で10万円以上もする高級機種などに特化する傾向があるのですが、これも果たしてうまく行くかどうか....通信キャリアの再編が政策主導で進められる中、3Gプラットフォームも当然政策に左右されるわけで、日本政府はこの辺の交渉をできる状況になっていません。それに、3億件と言っても中国人民の20%程度にしか行き渡ってません。普及率が8割近い日本とは違います。これから携帯電話を手にしようとする人たちは、安価でシンプル機能の端末を求めるはずです。残りの10億人全員が携帯電話を持てる経済力を持っているわけではありませんが、あと2億~3億人は携帯電話もしくはPHS(中国では「小霊通」と言います)をもてるはずなのです。そっちのマーケットを狙ったほうが、効率が良いし確実なはずなのですが....
2004.10.31
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