北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2005.04.21
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日中関係を正常化していくためには、民間や大衆レベルでの文化交流による相互理解が大切だと思っています。特にポップスやテレビドラマやゲームやアニメや映画などの日本のエンタテインメントを、江沢民時代以降強化された"愛国教育"を受けてきている中国の若者に楽しんでもらうことは、いまの日本の状況を知ってもらう上で有効だと思います。
そもそも90年代以降、中国のメジャーなテレビ局で放映される日本関係の映画やドラマは、あの時代の日本軍の"侵略"や"悪さ"を取り上げたものばかりで、コンテンポラリーなテレビドラマもアニメも映画もほとんど放映されていないのですから。
もちろん、時代に敏感な若者は、何もテレビだけではなく、他の手段で、日本のポップカルチャーに接することができます。でもそれは、日本で巻き起こった"韓流"のようなブームにはなりません。数十年前の日本の洋楽ファンが深夜放送でビルボードのチャートを知り、大都市にある数少ない輸入盤専門店に行ってレコードを買うようなもので、特に北京あたりでは日本のコンテンポラリーなエンタテインメントに接している人たちは、マイナーに属します。

テレビで日本のドラマやアニメが放映されなくなったのは、中国の政策(国産コンテンツ制作振興)の影響が大きいのです。日本だけ毛嫌いしているわけではなく、同じ"中国"のはずの台湾や香港制作のテレビ番組の放映にも制限があります。また、日本のテレビドラマやアニメのDVDにしても"正規版"が中国大陸で販売されているケースはほとんどありません。
でも、日本のテレビドラマやアニメ、映画に興味のある人は、そこら中で売っている海賊版DVDやインターネットのコンテンツ・ポータルで容易に見ることはできます。CATVのペイパービューでも見れたりするのですが、こうしたもののほとんども海賊版DVDを使って配信しちゃっているようです。

日本の番組がメジャーなテレビ局でなかなかオンエアされないのは、国内コンテンツ振興のための外国番組規制とセンサーシップ(番組内容の検閲)という大きな障壁があるからですが、DVDやゲームなどはセンサーシップが比較的ゆるいので、正規版がなかなかリリースされない理由は、別のところにもあると考えています。一つは日本のコンテンツの権利処理の未熟さ、もう一つは海賊版が出回るのを恐れて、と言う日本のコンテンツホルダー側の原因です。

コンテンツの権利関係は複雑です。アニメであれば、原作者はもちろん、アニメ制作会社、日本で放映したテレビ局、原作コミックの出版社、さらに広告会社などがそれぞれ関連権利を所有しています。プロジェクトを始める時点で、海外でのオンエアやDVD化についてまで約束していればよいのですが、そうでない場合が多く、中国でオンエアやDVD化の話が出ても各権利者にいちいち承認を取らなければなりません。生身の人間が出演するドラマなんてもっと大変です。映画などは最初から2次使用、3次使用を想定して、権利関係をクリアにしていますが、日本のテレビ番組の場合、そうではないケースが多いのです。

もちろん、日本のコンテンツ・ホルダーが中国で一番心配しているは"海賊版"です。中国で正規版をリリースしても、海賊版がスグ出回ってビジネスにならない、と思ってらっしゃる方が圧倒的に多いようです。でも私に言わせると、 「正規版が出てないから海賊版が出回っている」 のです。事実、北京で出回っている海賊版の日本のDVDのほとんどは、中国大陸で正規版が販売されていないコンテンツです。正規版のライセンスを与えている台湾や香港からの横流しがほとんどです。正規版が出ていないから見たいと思ったら海賊版で見るしかないわけですし、正規版を販売していなければ、海賊版の取り締まりにも迫力がありません。まず正規版を出してから、海賊版のことを考えてみてほしいと思うのです。

日本のコンテンツ・ホルダーに希望したいのは、まず最新作を持ってくること。一世代前の作品などでお茶を濁していると、かつての日本の白物家電や携帯電話のように、いま日本が世界に誇れるコンテンツ産業の中国マーケット参入も手遅れになってしまうでしょう。
そして、信頼できる現地のディストリビュータのモチベーションを利用することです。海賊版が彼らのビジネス上の障壁となるのであれば、彼らが取り締まってくれるでしょう。日本から乗り込んで、海賊版対策などと考えるより格段に有効だと思います。
さらに、編集権である程度譲歩すること。不適切と思われる画面のカットや翻訳について現地ディストリビュータの要求を頑なに拒否するのではなく、柔軟に対応するということです。これはアート(原作者)とビジネスの間に立たされるコンテンツ・ホルダーが最も苦労するところですが。
それで最後は、長期的な視野に立ったビジネス・プランで臨むこと。海賊版DVDの相場が1枚8元という現時点で正規版の価格が5倍も6倍もしたら、なかなか売れはしないでしょう。ですから販売価格も安く抑えなければなりません。いまは簡単には儲からないと思います。でもいずれ正規版が海賊版を駆逐する、と私は信じています。正規版への参入によって、中国のマーケット・ニーズを直接掴む事もできますから、将来中国向けのコンテンツを中国で制作する際にも圧倒的に有利になると思います。
そして、日本の"いま"の文化を中国の若者に触れてもらうことは、将来の両国の関係にきっと有利に働くでしょう。

北京の30歳前後の人たちの多くは、幼い頃「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」をテレビで見て感動したそうです。20代の若者の一部はVCDで「東京ラブストーリー」を見たことがあるそうです。でもいまの大学生は、ゲーマーやアニメフリークを別としてあまり日本の大衆文化に積極的に触れる機会がありません。旧日本軍の"蛮行"テレビ番組だけではなく、いまの日本の若者の生活や考えが見て取れるテレビドラマを多くの人たちが見れるようになったら、あんなデモも起こらなくなると思ったりするのです。





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Last updated  2005.04.21 16:33:57
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