音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月12日
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 ジョーイ・テンペストと言っても、熱心なファン以外からは「誰それ?」という声が聞こえてきそうなアーティストなので、少し人物紹介が必要だろう。80年代にハード・ロックのシーンを牽引したバンド、ヨーロッパ(EUROPE)のヴォーカリストと言えば、心当たりのある人も多くなるかもしれない。EUROPEはスウェーデンが生んだハードロックバンドで、北欧メタルの元祖とされる。人気に火がついたのは80年代前半の日本からであり、当初は北欧様式美や叙情性を強く押し出したアルバムを作っていた。しかし、1986年の『ファイナル・カウントダウン』からはよりポップで売れ筋なハード・ロック路線を取った(下に述べるように、EUROPEは1992年に活動を休止したが、後に2004年に活動を再開している)。

 こんなEUROPEを率いていたのが、ジョーイ・テンペストである。だが、リスナーやレコード業界が求めるポップさとレコード製作・ライブ活動という忙しさも相まってバンドが行き詰ったのか、『プリズナーズ・イン・パラダイス』(1991年リリース)に伴うツアーを最後にバンドとしての活動を休止してしまう。個人的にはこの『プリズナーズ・~』は、アメリカン・ロック・サウンド(といってもどこかに北欧的叙情性はまだ残されていた)という観点からすると、結構いいアルバムだと思ったのだが、やはり本人にとっては行き詰まったような状況だったのかもしれない。

 そして2年半の沈黙の後、1995年にリリースされたのが本作『プレイス・トゥ・コール・ホーム』だ。本作以降、これまでにジョーイは3枚のソロ・アルバムをリリースしているが、個人的には断然この初ソロ作がいい。まず、いい意味で肩の力が抜けている。さらに、何よりも、無理して高音域を使うことなく、だからといって単調な流れに陥ることなく、魅力的なヴォーカルで詞を聴かせてくれる。シンプルなアメリカンロック調のサウンドだが、はやりにまったく流されないタイプの音作りをやっている。ちなみに2作目、3作目も同じような意味でいいアルバムなので、これを聴いて興味がわけば、2作目『アゼリア・プレイス』、3作目 『ジョーイ・テンペスト』 も試してもらいたい(個人的にはこれら2枚のうちでは3作目のほうが出来がいいと思う)。

 さて、この初ソロ・アルバムを出すまでの2年半の間、ジョーイ自身は、「自分自信を取り戻し、今までに起こったこと総てについてよく考える時間」を持ち、「自分が本当に好きなものは何なんだ」ということを考えたらしい。その結果、出てきた本作は欧州(主としてスウェーデン)ではそれなりに売れたようだが、かつてのハードロックバンドEUROPEをイメージしていたファン層にとっては、あまり受けがよくなかった。

 それもそのはず。ソロ・アルバムとして出てきたサウンドはEUROPEとはまったくの別物。ファンの人たちには、メロディアスな部分が以前の作品と通底しているとか、EUROPE後期のアメリカンハード路線の延長と考えれば予想の範囲内だったとか言う人もいるけれど、やっぱり別物だと思う。EUROPEの延長線上にあるものだったら同じバンドや似通ったユニットの再編成でできたはずだし、何がやりたかったのか2年半も沈黙して考え込む必要もなかっただろう。

 そんなわけで、上でさんざんEUROPEのことを書いたけれども、それとは関係なく聴かれるべきアルバムなのである。セールス的には元EUROPEという肩書きが外せなかったというのはわからないでもない。けれど、EUROPEと切り離して売り出す方が新たなファン層を獲得できたのではなかったか。ところが、残念ことに当時の日本盤の帯には次のように書かれていた。

「心から唄える場所に僕は戻ってきた。
 元ヨーロッパのフロント・マン、ジョーイ・テンペスト、待望のファースト・ソロ・アルバム。ヨーロッパ時代の盟友ジョン・ノーラムも一曲参加。」

 きっと最初の1行だけが本人の気持ちを反映していて、2行目以降は本人にもファンにも不幸な売り出され方だったんだろうな、と思う。できれば14年前にさかのぼって、次のように書き変えたいぐらいだ。

「心から唄える場所に僕は戻ってきた。
 ジョーイ・テンペストがヨーロッパ時代を払拭し、新境地を切り拓く。アコースティックでシンプルなロック・サウンドと歌心に溢れる新たな側面!」

 こんな感じで書いた方が、新たなファンも増えただろうし、かつてのEUROPEファンを苦悩におとしめずに済んだと思うのだが、いかがだろうか。



[収録曲]

1. We Come Alive
2. Under the Influence ←おすすめ!
3. A Place to Call Home ←おすすめ!
4. Pleasure and Pain
5. Elsewhere
6. Lord of the Manor ←おすすめ!
7. Don't Go Changin' on Me
8. Harder to Leave a Friend Than a Lover
9. Right to Respect
10. Always a Friend of Mine 
11. How Come You're Not Dead Yet ←おすすめ!
12. For My Country  ←おすすめ!
13. A Place To Call Home (Live Acoustic Version) *日本盤ボーナス・トラック


1995年リリース。





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Last updated  2013年02月09日 10時09分58秒
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