音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年11月23日
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テーマ: Jazz(1978)
カテゴリ: ジャズ




 セロニアス・モンク(Thelonious Monk)は、1917年生まれ(1982年没)のジャズ・ピアニスト。ジャズのスタンダードとなった楽曲を多く残した作曲家としても知られている。1940年代初頭から活動を始め、50年代から60年代にかけて主に活躍した。

 ブルーノート・レーベルでのいくつかの録音(40年代後半から50年代初頭、 『ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol. 1』 など)を行なった後、1952年から54年にかけて、セロニアス・モンクはプレスティッジ・レーベルにいくつかの吹込みを残す。その中の1枚が本作『セロニアス・モンク・トリオ』である。ちなみに、本盤は、原題は単にThelonious Monkとしか表記されていないが、しばしばThelonious Monk Trioという名で呼ばれている。

 本アルバムは、1曲目の「ブルー・モンク」だけが7分を超える演奏で、残りはいずれも3分前後の長さなのでとっつきやすい(と言いながらも筆者が特に好きなのはこの1.であったりもする)。それでいて、ピアノ・トリオ(ピアノ、ベース、ドラムの3人編成の演奏)なので、セロニアス・モンクのプレイに落ち着いて耳を傾けることができる。管楽器が入っているわけでもなければ、かといってピアノ独奏(モンクの作品にはピアノだけの演奏のものも何枚かある)でもないので、モンクを初めて聴いてみる人にも向いている1枚だと思う。

 ジャケットは一見するとシンプルだが、落ち着いて眺めると何だかよくわからない意匠の絵(バリトン・サックス奏者として知られるギル・メレのデザイン)である。それでもって、実際に音楽を聴いてみると、やはり一筋縄ではいかない。

 ただ単に"美しい"だけのピアノ演奏を期待している人は、すぐさま本盤に裏切られてしまうだろう。伝統的な音楽理論にあわない音の重なり(不協和音)、ポキポキしたピアノ音が印象的で、時として聴き手を不安な気持ちにすらさせる部分もある。とはいえ、一般にはこの辺が強調され過ぎるきらいがあるので、念のため言っておくと、意味不明のヘンテコな音が延々と続くような音楽ではない。そういう音が随所で意図的に(しかも後述するように、実に効果的に)用いられているのがモンクの音楽の特色の一つと表現すればよいだろうか。

 これらの"ヘンテコ"な音は偶然の産物では決してない。しっかりと計算された上で用いられ、効果を出しているところがモンクのすごいところなのだと感じる。モンクのピアノを指して"幼稚園児のピアノのよう"という形容を見かけることあるが、実際のところ、この形容は少し的が外れているように筆者には思える。というのも、確かに、うわべだけ聴くと、子どもが適当に鍵盤を叩いたような音に聴こえるかもしれない。しかし、ほんの少し落ち着いて聴けば、それが計算ずくであることがわかり、この点が"幼稚園児のピアノ"という表現が与える印象とは決定的に違うのである。この意図的な音の効果により、モンクの音楽は平面的(二次元的)なものにとどまらず、立体的(三次元的)広がりを出すのに成功している。言い換えれば、これらの音は、モンクの頭の中にある伝統的枠組とは違う音のイメージを具現化するための手段だったのであろう。ビル・エヴァンス(ジャズ・ピアニスト)の言葉を借りれば、「この人物は、理論的に自分が何をやっているのかを正確に把握していた」。

 上記のように、モンクの音楽は伝統的な音楽理論の枠組には収まらないものである。それゆえ、ヘンテコな音楽だなどとよく言われるわけだが、現代の耳(それはモンクを消化して出来上がっているとも言える)からすると、もはやそうではないとも言える。要するに、その当時のモンクが時代の先を行っていたということになってしまうのだろうけれど、逆に言えば、時代がモンクに追いついたとも言える。そう考えて"現代の耳"からモンクを聴けば、ヘンテコとか難解とかいう近づき難いイメージは払拭され、もっと親しみのある作曲家/演奏者としてモンクを聴き直すことができるんじゃないかとも思う。



[収録曲]

1. Blue Monk
2. Just a Gigolo
3. Bemsha Swing
4. Reflections
5. Little Rootie Tootie
6. Sweet and Lovely
7. Bye-Ya
8. Monk's Dream
9. Trinkle, Tinkle
10. These Foolish Things


録音&パーソネル:

1952年10月15日(5.~8.)
Thelonious Monk (p), Gerry Mapp (b), Art Blakey (ds)

1952年12月18日(3., 4., 9., 10)
Thelonious Monk (p), Gerry Mapp (b), Max Roach (ds)

1954年9月22日(1., 2.)
Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)






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Last updated  2012年07月13日 03時25分51秒
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