音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月19日
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テーマ: Jazz(1967)
カテゴリ: ジャズ




 マイルス・デイヴィスは、オルガン奏者ジミー・スミスを指して「ジャズ界8番目の不思議」と評したそうだが、そもそも「ジャズ界の七不思議」って何なのであろうか。某盤のライナーで「8番目の前にそもそも7つ目までは何なのさ」とくだらないつっこみを入れているのを読んだような気がする。それを読んだ時、「人が貴重なお金を払って買うレコード(CDだったか?)のライナーにこんなことつまらんことを書くな!」と思った。けれど、このブログのような、見るのは所詮タダの場でなら、こんな話題もいいかと思うので書くことにする。七つの不思議すべてはわからないけれど、第一番目の不思議は、筆者の中では、はっきりしている。それは、セロニアス・モンクというピアニストの曲・演奏、さらに言ってしまえば、彼の存在自体である。

 本盤はブルーノート・レーベルのいわゆる「1500番台」の初期の一枚である。タイトルは『ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol. 1』(Blue Note 1510)。当時のブルーノート盤は、別々に発売しつつもVol.1とVol.2に分けてリリースされることが多かった。実際、セロニアス・モンクの『ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック』も、そのパターンで、Vol.2が連番で存在する(Blue Note 1511)。Vol. 1には主として1947年の録音、Vol. 2には主に1951~52年に吹き込まれたものが収録されている。

 ブルーノートでの吹き込みの後、モンクは1952年以降にプレスティッジ、1955年からはリバーサイドで様々なアルバムを録音する。したがって、初めてモンクを聴く人が、プレスティッジやリバーサイドのアルバムを最初に手に取る可能性は高いし、実際、それらの中にはいくつもの名盤が含まれている。それでもなお、ブルーノート盤の2枚、とりわけ本作『Vol.1』を無視することはできない。なぜなら、この時点で既にモンクは、"完成品"であった、という事実を知ることができるからである。後々のモンクの作品は、その"完成品"に新機能が加わっていったようなもの、とでも表現すればいいのかもしれない。

 そして、この点こそ、モンクが"ジャズ界最初の不思議"たる所以でもある。1.「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(「ラウンド・ミッドナイト」とも呼ばれる)、8.「エピストロフィー」、9.「ミステリオーソ」といった、後世のジャズ・ミュージシャンが繰り返し演奏する名曲が既に出来上がった"完成品"なのである。残念なことに、当時はさっぱり売れなかったということであるが、やがて時が流れることで、ジャズメンの、さらにはリスナーの耳が追いついた。時代が彼に追いついたからこそ、よく言われるモンクの「ヘンテコな具合」に、少なくとも発売当時に比べれば、拒否反応を示す人も少なくなっているだろうと思う。実際、60年以上が経過した今、このアルバムを聴いても、録音状態こそ明らかに古い時代のものとはいえ、中身がほとんど風化していないことに驚きを禁じえない。否、彼が未来を先取りしていたからこそ、当時は受け容れられなかったのであって、現在も古くなってはいない、と言うべきなのだろうか。

 ちなみに、セロニアス・モンクには「バップの高僧」というキャッチフレーズが与えられてきた。英語でmonkは"修道士、高僧"の意味で、モンクの名とこの意味を引っかけたネーミングと思われる。この形容は今でもよく用いられているけれど、あまりに近づきがたい印象を与えるこの悪趣味なネーミングは、早めに忘れた方がいいと思う。この初期のアルバムを聴けば、モンクは別に山ごもりをする僧侶でもなければ、清貧生活を送る修道士でもないことがわかる。ただ一言、「ジーニアス(天才)」。これで必要十分である。近づき難い響きのネーミングでもって、彼を近づき難い存在にまつりあげるのは、結果的にモンクの音楽の体験者を減らすことにつながり、もったいない話だと思う。



[収録曲]
1. 'Round About Midnight
2. Off Minor
3. Ruby My Dear
4. I Mean You
5. April In Paris
6. In Walked Bud
7. Thelonious
8. Epistrophy
9. Misterioso
10. Well You Needn't
11. Introspection
12. Humph


録音:

1947.10.15 (7と12); Idresse Suliman (tp), Danny Quebec West (as), Billy Smith (ts), Thelonious Monk (p), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)

1947.10.24 (2、3、5、10、11); Thelonious Monk (p), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)

1947.11.21(1と6); George Taitt (tp), Sahib Shihab (as), Thelonious Monk (p), Robert Paige (b), Art Blakey (ds)

1948.7.2(4、8、9); Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), John Simmons (b), Shadow Wilson (ds)








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Last updated  2013年02月09日 10時05分49秒
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