音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2010年01月23日
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 ニルス・ロフグレンは1951年、スウェーデン系とイタリア系の両親の家庭に生まれた。1975年からソロ・アーティスト、同時に1984年からブルース・スプリングスティーンのバンド(E・ストリート・バンド)のメンバーとして活躍するヴォーカリストでありギタリスト(ピアノやアコーデオンなども演奏する)。最初のメジャーな仕事は1969年、ニール・ヤングのアルバム『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』へ参加(ピアノ)であり、その後も 『今宵その夜(Tonight's The Night)』 でギター、ピアノ、ヴォーカル参加を果たしたり、クレイジー・ホースのファースト・アルバム(1971年)に参加したりしている。また、一時期はミック・テイラーの後釜として、ローリング・ストーンズのギタリストになると噂されたこともある(結局、この話は流れ、ロン・ウッドの加入となったことを本人が回想している)。さらに後には、リンゴ・スターのバンド(オール・スター・バンド)にも参加経験がある。

 当初、1969年頃に結成したグリンというバンドを中心に活動するが、一部の熱心なファンにしか受け入れられず、なかなか人気に火はつかなかった。グリンのメンバーは、バンドリーダーのニルス・ロフグレンがギターとヴォーカル(必要に応じてピアノ・キーボード)を主に担当し、ボブ・バーバリッチ(Bob Berberich)がドラム、ボブ・ゴードン(Bob Gordon)がベースを担うというシンプルな構成のバンドで、後にはニルスの実弟トム・ロフグレンもギターとしてメンバーに加わった。だが、結局、グリンは大きなヒットを生むことはなく、1971~74年の間に4枚のアルバムを残しただけで解散する。

 この「オール・アウト(All Out)」は、そうしたグリン時代を代表する1曲である。「オール・アウト」が収録されているのは、グリンの1973年発表の同名のアルバム(『オール・アウト(All Out)』)。ちなみにグリン(Grin)というバンド名は“ニヤッと笑う”という意味で、アルバム『オール・アウト』のジャケット・デザインは、大きな口が歯を見せてニヤリと笑っているイラストである。

 以前、 「心はいつもヴァレンタイン(Valentine)」 というニルスの曲を紹介した際、90年代に入って彼のヴォーカルが成熟していったという話を書いたが、この「オール・アウト」は、そうして”歌心に目覚めた”ニルスを生かすことになる曲が既に70年代から生み出され始めていたことを示すものでもある。

 それが演奏としてCDに記録されたものとして、1997年のウィーンでのアコースティック・ライブを収録した盤(1998年リリースの『アコースティック・ライヴ(Acoustic Live)』)所収の「オール・アウト」を聴いてもらいたい。売れない若きバンド時代(それはそれで筆者は好きなのだが)の名曲が、中年を過ぎてヴォーカリストとして磨きのかかったニルスの声で歌われる。敢えて”売れないバンド時代”と書いたが、何らかの拍子で多くの聴衆に受け入れられうるだけの下地がグリンというバンドにはあったことの裏返しでもあり、グリンの再評価がもう少し進んでもいいのかも知れないと思う。



[収録アルバム]

Grin / All Out  (1973年) *オリジナル・ヴァージョン
Grin / The Very Best of Grin Featuring Nils Lofgren (1999年) *同上
Nils Lofgren / Acoustic Live  (1998年) *アコースティック・ライブでの演奏。
ほか





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Last updated  2016年02月04日 22時16分21秒
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