音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年02月16日
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前項 は、全体的な話だけで普段の字数を大きくオーバーしてしまった。改めて本項では、『ユーズ・ユア・イリュージョンI』と『同II』それぞれアルバムの内容を見ていくことにする。

 まず、『ユーズ・ユア・イリュージョンI』は、先に述べたように、充満したエネルギーの爆発・発散が聴きどころとなる。メジャー・デビューを飾った前作『アペタイト・フォー・ディストラクション』(1987年)からの延長線上にある1.「ライト・ネクスト・ドア・トゥ・ヘル」や5.「パーフェクト・クライム」、あるいは13.「ドント・ダム・ミー」といったナンバーは、最もわかりやすくその勢いを伝える曲である。

 しかし、バンドの成長を示す曲にもぜひ注目したい。3.「リヴ・アンド・レット・ダイ」はその代表格と言える。この曲は、言わずと知れたポール・マッカートニーのヒット曲だが、これぞガンズという納得の新解釈を提示していて、バンドの成長に加え、余裕や風格すら伺える。ふつうはヒット曲のカヴァーというと、コピー(つまりは“複製”)もどきのものが多いが、ガンズのこの曲の演奏は、まさしく“解釈(interpretation)”と呼べる仕上がっている。同じくバンドの成長は、4.「ドント・クライ」や11.「ザ・ガーデン」、さらには15.「デッド・ホース」といったナンバーから見て取られるように、曲展開とアレンジの懐の深さにも顕著である。

 もう一つ気がつくのは、バンド・メンバーのルーツというか、音楽的バックグラウンドがよくわかるフレーズや演奏が随所にちりばめられていることである。それが特に顕著に凝縮されているのは、一聴すると“中弛み曲”として聞き逃してしまいそうな6.「ユー・エイント・ザ・ファースト」である。こういう演奏ができ、既存の米国音楽の伝統(ブルース、ロック、カントリー)を背景に備えているからこそ、爆発的エネルギーの発散に変えた時の各フレーズがビシッときまるのだろう。ちなみに、10.「ノーヴェンバー・レイン」は本作中で特によく知られたシングル・ヒット曲であるが、本盤中いちばんソフトな曲であり、この名曲が好きだから本盤が気に入るとは限らない。しかし、逆に「ノーヴェンバー~」で本盤を避けている人がいるのだとすれば、それはもったいない話だと思う。

 続いて、もう1枚の『ユーズ・ユア・イリュージョンII』の方に移る。個人的な経験ではこっちの方をよく聴いた。1. 「シヴィル・ウォー」 や3.「イエスタデイズ」に代表されるように、単にエネルギーを“爆発”させたり、ただやみくもに“発散”させるというのではなく、充満したエネルギーを制御しながら溢れ出させる印象の曲が中核を占める。ボブ・ディランのカヴァーである4.「ノッキン・オン・へヴンズ・ドア」も収められていて、『I』のポール・マッカートニーのカヴァーと並んで見事な出来映えの、カヴァー・ヴァージョンとは何たるかの見本のような演奏である。

 充満したエネルギーをずっと押さえ続けていては精神衛生上よろしくない。そんなわけで、5.「ゲット・イン・ザ・リング」(ジャーナリストを名指しで批判した、伏字用語連発の詞が強烈)と6.「ショットガン・ブルース」、さらには映画(『ターミネイター2』)の挿入歌であるヒット曲12.「ユー・クッド・ビー・マイン」といった“ガス抜き曲”も、ちゃんと用意されている。けれども、やはり見事なのは、エネルギーの制御が利いた楽曲こそが『II』の中心を成す点であることは繰り返し強調しておきたい。その最たるもので、本盤の最大の聴きどころのひとつが11.「イストレインジド」である。10分近い大作であるが、その時間的長さをまったく感じさせない名曲・名演奏だと思う。

 最後に、日本国内でのセールス面に関して、苦言を一つ。これら2枚の日本盤解説書の手の抜き様は何とかならなかったのかとライナーを見るたびに今でも思う。筆者が持っているのは両方とも日本盤で、総勢6名もの執筆陣が日本語のライナーを執筆している。かつて日本盤のライナー執筆陣の数はバンドのステータスの指標でもあった。そのことを考えれば確かに破格の扱いだ。けれどもCDを買う少年たちは、どれを購入するか思い悩み、お金を貯めながらCDに大枚をはたくわけである。新譜CDが既に値下がりつつあった時代とはいえ、『I』を買っても『II』を買っても、日本語の解説部分の内容が同じとは、どういうことか。これは、やっぱりレコード会社の手抜きとしか言えないと思う。かくいう筆者も(既に“少年”ではなかったとはいえ、若い頃は今よりずっとお金がなかった)、優先順位をつけてCDを入手していたわけで、実際、リアルタイムで現物のCDを入手したのは『II』だけだった。殿様商売はもはや成り立たなくなっている今のご時世だけれども、当時はまだこんなことが平気で許されていたのが情けない。とはいっても、いまはもう中古であふれるように出回っているので、これら2枚は気軽に聴けるアルバムになった。まだの方や興味をもたれた方は、ぜひこれを機に通して聴いてもらえればと思う。


*本記事の前半(その1)は、 こちら からご覧ください(ジャケ写もリンク掲載しています)。


[収録曲]

(『ユーズ・ユア・イリュージョンI』)
1. Right Next Door To Hell
2. Dust N' Bones
3. Live And Let Die
4. Don't Cry [original]
5. Perfect Crime
6. You Ain't The First
7. Bad Obsession
8. Back Off Bitch
9. Double Talkin' Jive
10. November Rain
11. The Garden
12. Garden Of Eden
13. Don't Damn Me
14. Bad Apples
15. Dead Horse
16. Coma

(『ユーズ・ユア・イリュージョンII』)
1. Civil War
2. 14 Years
3. Yesterdays
4. Knockin' On Heaven's Door
5. Get In The Ring
6. Shotgun Blues
7. Breakdown
8. Pretty Tied Up
9. Locomotive
10. So Fine
11. Estranged
12. You Could Be Mine
13. Don't Cry [alt. lyrics]
14. My World

1991年リリース。





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Last updated  2016年02月18日 20時25分10秒
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