音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年05月06日
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 ハノイ・ロックス(Hanoi Rocks)の名曲第二弾は筆者いち推しの「白夜のトラジディ(Tragedy)」である。なぜ“白夜”かというのは突っ込みどころではないのだけれど、一応述べておこう。彼らが単にフィンランド出身のバンドだから、というだけの理由であるように思われる。同じ理由で、この曲が収録されているデビュー・アルバムの邦題も『白夜のバイオレンス』。原題は、『Bangkok Shocks, Saigon Shakes(バンコクが衝撃を受け、サイゴンが揺れる、の意)』だから、何の関係もない邦題なのである。きっと名付けた人はフィンランド(あるいはスカンジナビア)と言えば、百夜しか思い浮かべられなかったのだろうかなどと勘ぐってしまう(現代の情報化社会とは違い20年近く前のことだから、もしそうであったとしても許すとしよう…)。

 さて、曲の内容はと言えば、原題の「トラジディ」(直訳すれば「悲劇」というギリシア語起源の語)というものだが、「悲劇」というかっこいい響きとは裏腹に、実際にはティーンエージャーの男女の一夜の話だ。しかもそれでもって“人生は悲劇”と歌っているというどうでもいいような内容。実はこの曲はデビューよりもだいぶ前に作られていて、そもそもギターのアンディ・マッコイが15~16歳ぐらいの時に作ったらしいので、この歌詞は仕方ないとしよう。

 とまあ、タイトルに不満はあるわ、詞の内容は何だかなあ、といった感じで、いいところがなさそうに見えるかもしれないが、実はそうではない。この曲のメロディ、構成、そして編曲が抜群なのだ。演奏は決して精緻ではなく、どちらかと言えば粗削りなん感じがするものの、メロディックにして斬新な曲なのである。マイケル・モンローのヴォーカルはセクシーな声だし、所々で降下するベースラインもかっこいい。ギター・ワークもなかなかいいと思うのだが、それはプレイの技術的水準の高さというよりは、曲全体の中でのバランス感覚や効果的なギター音の使い方によるものである。母国フィンランドでは、デビュー・アルバムの先行シングルとして発売されたとのことだが、デビューした時点でこれだけ“輝く原石”だったというのは聴き手も目を見張ったに違いない。

 この曲のもう一つの聴きどころは、このバンドのコーラス・ワークにある。落ち着いてここだけ聴くと案外間抜けな感じにも聞こえるのだが、慣れてくるとこれが結構病み付きになる。そのコーラス・ワークというのは、リード・ヴォーカルとハモるだけではなく、後ろにコーラスで別のメロディをコーラスで付けるというものなのだが、彼らの他の楽曲でも時折見られるので、機会があれば、その効果にも着目してもらいたい。

 ハノイ・ロックスの代表曲を1曲挙げよと言われれば、筆者は誰が何と言おうとこの「白夜のトラジディ」を選ぶ。それぐらい繰り返し聴いた曲でもあるし、一度聴いたら耳について離れず中毒になりそうなタイプの、ハノイ・ロックスのいち推しナンバーといったところである。


[収録アルバム]
Hanoi Rocks / Bangkok Shocks, Saigon Shakes(邦題『白夜のバイオレンス』) (1981年リリース)
その他、各種ベスト盤類にもたいてい収録。


[関連過去記事リンク]
ハノイの曲を思い出す ~その1~「マリブ・ビーチの誘惑」  へ
ハノイの曲を思い出す ~その3~「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」  へ




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Last updated  2010年05月12日 07時31分53秒
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