この二つの方向性の対比はアルバムの随所に見られる。例えば、2.「ロックン・ロール」と続く3.「限りなき戦い」の対比がそうである。同じくアルバム後半では、8.「カリフォルニア(Going To California)」と9.「レヴィー・ブレイク(When The Levee Breaks)」という連続した二曲にも同じような対比が認められる。これらの例のように、曲と曲の間での対比も可能であれば、同じ曲の中でもそれを見て取ることが可能である。有名な4.「天国への階段」はその典型であろう。この曲は、静と動の対比が素晴らしいと言われることがあるが、“静と動”という表現は、正鵠を射ているようでありながら的が外れているようでもある。“ハード・ロック・バンドとしての静と動”という意味に理解されるのであれば、この表現は正しくないと思う。実際には、フォーク=トラッドな部分と、いわゆる典型的にハード・ロックの流れに位置づけられる両方の要素が曲の見事な展開の中に収められている。言い換えれば、ハード・ロック的要素と非ハード・ロック要素の“融合”こそが本盤を名作にしているのだと思う。
1. Black Dog 2. Rock And Roll 3. The Battle Of Evermore 4.Stairway To Heaven 5. Misty Mountain Hop 6. Four Sticks 7. Going To California 8. When The Levee Breaks