音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年02月04日
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 1966年に出された本オムニバス盤『ホワッツ・シェイキン』。前編では、ザ・ラヴィン・スプーンフルやティム・ラッシュといったフォーク、フォーク・ロック系のアーティスト(しかもそのバックグラウンドにはR&Bも見え隠れする)が、米国におけるブルース・ロックもしくはホワイト・ブルースの背景としてあり、それが反映されているというところを述べた。この後編では、よりブルース・ロック然とした部分に注目して、残りのアーティストと参加曲を見て行きたい。

 まず、ネーム・ヴァリューからしてまず目を引くであろうは、エリック・クラプトン率いるパワーハウス(Eric Clapton & The Powerhouse)である。編成は、ギターのクラプトンのほか、ヴォーカルのスティーヴ・ウィンウッド、ウィンウッドと同じくスペンサー・デイヴィス・グループで一緒だったピート・ヨーク(ドラム)、さらには、マンフレッド・マンのポール・ジョーンズ(ハープ)、ピアノのベン・パルマーといった顔ぶれ。録音は66年3月ということだから、クラプトンがジョン・メイオールのグループ( ブルース・ブレイカーズ )で行った、“神”と呼ばれることになる演奏と、 クリーム の結成の狭間の時期にあたる。もう少し深読みすれば、スティーヴ・ウィンウッドとの組み合わせなんかは、後のブラインド・フェイスの布石という感じもして面白い。

 周知のように、クラプトンは英国出身だが、活動の場や聴衆からの受け入れ度を考えると、こうしたアメリカでの動きの中でも十分意味を持ってブルース・ロックなりホワイト・ブルースなりの普及・成立に関わってきた。その様子が本録音に反映されている。収録されているのは全3曲で、もっとも目を引くのは、7.「クロスローズ(Crossroads)」だろう。ロバート・ジョンソン作のナンバーで、この同じ年にクラプトンが参加・結成したクリームの代表曲の一つとして定着していく曲である。クリームのライヴでの迫力のヴァージョンのイメージとはだいぶ違うと感じる方も多いかもしれないが、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルとポール・ジョーンズのハープ(ハーモニカ)が印象的でこれはこれでなかなかいいヴァージョンと思う。他の収録曲は6.「アイ・ウォント・トゥ・ノウ」と10.「ステッピン・アウト」。前者は、上記のジョン・メイオール盤でも演奏されていたもので、本盤以降にクリームでも演奏している。後者は、インストルメンタルのブルース・ナンバーで、これもまた後にクリームで演奏もしている。余談ながら、この時のエリック・クラプトン&ザ・パワーハウスの吹き込みはもう1曲あったそうで、いまだ未発表音源として残っているとのこと。

 次に、というか本盤でもっとも出色の出来を披露しているのが、ポール・バターフィールド・ブルース・バンド(The Paul Butterfield Blues Band)である。このバンドは前年の65年に デビュー盤 を発表し、同じ66年(マイク・ブルームフィールド在籍期)には、名盤『イースト・ウェスト』を発表している。米国ブルース・ロックの主流を作った、今となっては伝説のバンドである。参加アーティスト中で最多の5曲が収録されているが、いちばん目を引くのが、3.「スプーンフル」だろう。ウィリー・ディクソン作のブルースのスタンダード・ナンバーであるが、上記クラプトンがクリームのデビュー作で取り上げる前にバターフィールドがここで取り上げていて、スリリング極まりない好演を披露している。他の曲も触れておくと、4.「オフ・ザ・ウォール」は、リズムのキレとハープの流暢さで聴かせるインストのブルース曲。8.「ラヴィン・カップ」はポール・バターフィールドのオリジナル曲で、これまたスリリングでとにかくカッコいいブルース・ロックに仕上がっている。9.「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」は、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンIの曲で、勢いのある演奏。逆に14.「ワン・モア・スマイル」は、まったり感を含めギターとヴォーカルの掛け合いがいい味を出している演奏である。

 もう一組の参加アーティストは、アル・クーパー。5.「泣かずにいられない(Can’t Keep From Crying Sometimes)」1曲のみの参加だが、この時期のロック界の様々な動きの陰にしょっちゅういた仕掛け人がこのアル・クーパーであった。ブルース・プロジェクトの別ヴァージョンだが、オリジナル曲でさらりとこんなブルース系ナンバーを披露してしまうあたりは、その才能を再認識させられる。

 すっかり長くなってしまったが、1966年という、既に半世紀近く前のオムニバス盤を2回にわたって取り上げてみた。「今、何が熱いのか」を世に問う盤として登場し、その中にはブルース・ロックという当時の新しい潮流の背景と将来が同居していた。この手のコンピレーションは1~2年たてば使い捨てられる傾向にあることが多いが、この盤は例外的に、現在に至るまでずっと熱いままの好コンピレーションであり続けているように思う。



[収録曲]

1. Good Time Music / The Lovin' Spoonful
2. Almost Grown / The Lovin' Spoonful
3. Spoonful / The Paul Butterfield Blues Band
4. Off the Wall / The Paul Butterfield Blues Band
5. Can't Keep From Crying Sometimes / Al Kooper
6. I Want to Know / Eric Clapton and the Powerhouse
7. Crossroads / Eric Clapton and the Powerhouse
8. Lovin' Cup / The Paul Butterfield Blues Band
9. Good Morning Little Schoolgirl / The Paul Butterfield Blues Band
10. Steppin' Out / Eric Clapton and the Powerhouse
11. I'm In Love Again / Tom Rush
12. Don't Bank on it Baby / The Lovin' Spoonful
13. Searchin’ / The Lovin' Spoonful
14. One More Mile / The Paul Butterfield Blues Band

1966年リリース。


関連記事リンク:
ブルース・ロック好きの必聴・愛聴盤 ~前編~  へ






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Last updated  2012年02月04日 07時28分23秒
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