音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年11月17日
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 エレクトリック・ライト・オーケストラ(Electric Light Orchestra, 略してE.L.O.)は、1970年代初頭にデビューし、当初はストリングスを取り入れた実験的なサウンドを志向していた。70年代後半になると、ジェフ・リン中心のポップ・サウンドの方向性に傾き、 『オーロラの救世主』 (1976年)、『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1977年)、『ディスカバリー』(1979年)など多くのヒットを出した。

 その後もサントラ盤の『ザナドゥ』(1980年)や『タイム』(1981年)などをヒットさせるが、実質的にジェフ・リンの独壇場となり、バンドとしての活動はぎくしゃくし、停滞する。ジェフ・リン自身も嫌気がさしたようで、E.L.O.としての活動に区切りをつけたのが本作『バランス・オブ・パワー(Balance of Power)』(1986年)となった。ちなみに、その後はメンバーの間で“異なるE.L.O.というバンド”(オリジナルメンバーで、本盤でもドラムとパーカッションを担当しているべヴ・べヴァンを中心とするELO Part.2、21世紀に入ってジェフ・リンが復活させたE.L.O.)が存在し、ディスコグラフィー的にはややこしい事態となっている。

 さて、話を『バランス・オブ・パワー』に戻すと、このアルバムは“消化試合”みたいにみなされることが多い。全英9位、全米49位とさして大きなヒットにならなかったものの、作品内容としては、筆者は結構いいと思うし、愛着もある一枚なのだけれど、世間的には人気がないらしい。でもその不人気の理由はなんなのか。内容的にはジェフ・リンのポップ全開という意味では、なかなかいい盤だと思う。

 よく言われるように、ジェフ・リンは“ビートルズの申し子”である。良くも悪くもビートルズ的キャッチーでポップな、それも優れた楽曲を書く。しかも本番が制作されリリースされたのは、80年代まっただ中の、ある意味ではそういうポップさが受けやすかった時期。70年代からE.L.O.を聴いていた人には、シンセ多用のこのポップさに我慢ならぬという人もいたかもしれないが、すでに四半世紀以上たった今からすると、シングル受けしそうな曲、ラジオから流れてくるのにぴったりなポップ・チューンのオンパレードだと思う。

 冒頭の1.「ヘヴン・オンリー・ノウズ」、2.「SO・シリアス」(80年代だから仕方ないとはいえ、なんてダサい邦題のつけ方!)からしてポップさ満開。同様の曲調としては、4.「シークレット・ライヴス」、10.「センド・イット」あたりがお気に入りだが、なんといってもベストは1枚目のシングルとなった8.「コーリング・アメリカ」。これらアップテンポの曲と少し違ったところでは、3.「哀しみの地平線(ゲティング・トゥ・ザ・ポイント)」と9.「エンドレス・ライズ」が、比較的ゆったりとした曲調ながらポップ・センス抜群でよくできている。E.L.O.の歩みを考えながら聴くと抵抗感がある人もいるかもしれないが、本盤単独で作品としてみれば、実に極上のポップなアルバムだと思う。


[収録曲]

1. Heaven Only Knows
2. So Serious
3. Getting to the Point
4. Secret Lives
5. Is It Alright
6. Sorrow About to Fall
7. Without Someone
8. Calling America
9. Endless Lies
10. Send It

1986年リリース。





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Last updated  2012年11月17日 09時33分31秒
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