音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2019年02月12日
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ローカル・バンドの洗練と円熟


 リラン・ロール(Liran’ Roll)というバンドは、メキシコ人以外にはあまり知られていない(とはいえ、メキシコではあちらこちらで本当によく耳にするのも事実な)ローカル・バンドである。1990年代初頭にシーンに登場し、デンバー(Discos y Cintas Denver)というマイナー・レーベルから作品を発表し続けてきた。現在も活動はしているようで、2017年には活動25周年を祝してライヴなども行われているのだけれど、アルバム・リリースは止まっているようで、おそらくこの2011年の『シギエンド・ラ・リネア(Siguiendo la línea)』が現時点としては最後に出たオリジナル・アルバムと思われる(ただしシングルやライヴ盤のリリースは行われている)。

 元々はブルース・ロックに根ざしたメキシコのローカルなロック・バンドで、自国語で歌う自国製ロックの定着に貢献したバンドである。2000年代に入る辺りから次第に洗練されていき、単なる抒情性やスペイン語で歌っているということだけでなく、音楽的にも貫禄が徐々に出てきた。その最終形がかなりまとまった形で示されているのが、本盤といってもいいように思う。

 洗練されようが、はたまた円熟に差し掛かろうが、おそらくは意図的に、このバンドはローカルであり続けようとしているように見える。本盤では1.「ネサ」がその最たるものだろう。表題の“ネサ”というのは、メキシコシティに隣接する貧困地区の名前である。10.「ポエタ・ウルバーノ(都会の詩人)」というのもそうで、“都会”と聞いてパリやニューヨークはたまた東京を想像してはいけない。近代化も“第三世界”もごった煮になったメキシコシティを思い浮かべなければならないのだ。何と言っても詞に出てくるのは、ロック・スターを夢見て朝から地下鉄の車両に乗り込んで弾き語りを長年やり続けている、夢破れた“詩人”なのだから。

 とはいえ、上述の通り、全体としての音作りが精緻化しているのも明らかである。それがよくわかる例としては、4.「ノ・ラ・アガス・デ・ア・ペド」や6.「ラ・バタージャ」なんかが挙げられ、彼らの演奏の質の高さがもはや他のロック・ウルバーノのバンドの比ではないことがわかる。また、随所にゲスト陣も迎え入れられており、目を引くところでは、7.「エス・ディフィシル」ではコロンビア人女性シンガーのルアナ・リベロス(Luhana Riveros)が参加している。さらに、注目したいのは、ラスト曲の11.「シン・トゥ・ラティド」。スペイン人シンガーソングライターのルイス・エドゥアルド・アウテ(Luis Eduardo Aute)のナンバーで、こういう曲をロック・ウルバーノでできるというのも、新境地というか間口の広さと余裕を感じさせる。そんなこんなすべて合わせて考えると、本盤はやはり彼らの“最終形”と言える気がする。個人的には、初めてリラン・ロールを聴くという人がいたら、ぜひこの盤を勧めたいと思う。


[収録曲]

1. Neza
2. Nunca pensé
3. Fúgate conmigo
4. No la hagas de a pedo
5. El grito
6. La batalla
7. Es difícil
8. Es para siempre
9. Escándalo
10. Poeta urbano
11. Sin tu latido

2011年リリース。




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Last updated  2019年02月12日 13時58分02秒
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