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2005.11.21

番外編１７　桃ニセアリス　誕生編　『不思議の国のアリスとニセアリス』　

テーマ：短編小説を書こう！(490)

カテゴリ：番外編

ＡＣＴ．１　アリスお婆さんとジョセフお爺さん。

　時代ははるか昔。まだ都ではお侍が刀を刺して城下町の警備にいそしんでいた頃……。

あるド田舎の山の中に、古い木造平屋建ての一軒屋がありました。築８０年あまり。でも総ヒノキ造りのその家は、まだまだ地震や台風にはビクともしませんでした。でも台風が来ると窓の障子が全て破れ、そのたびに張り替えなくてはなりませんでした。

張り替えるのはこの家に住むお婆さんの”アリス”の仕事です。お婆さんは大変綺麗な人で、１０代そのままの顔と姿をしていました。
またアリスはどんな仕事をするにも決してグチはこぼしませんでした。ここにもう１人心優しいお爺さん”ジョセフ”が住んでいたからです。ジョセフもまた１０代そのままの顔と姿をしていました。

２人は大変仲が良かったのですが、夫婦ではありませんでした。２年ほど前、アリスがまか不思議な世界を冒険をしている最中に、このジョセフと偶然知り合ったのです。それ以来２人はパートナーとしてこの家に一緒に住むようになったのでした。
心優しく地味なアリスと、同じく温和で落ち着いた性格のジョセフ。２人は息がぴったり合っていました。そしてこの人里離れた山の中で楽しく地味な毎日を過ごしていました。

　ある日の事、アリスは川に洗濯をしに出かけました。家のすぐ裏手に小さな川があるのです。川の水は天然ミネラルが豊富な山の湧き水です。
飲料水として飲むのに良し、
おいしいコーヒーを入れるのに良し、
水彩絵の具の溶き水に良し、
洗濯に良し、
……とこの水はまさに”天からの恵み”そのものでした。
しかもいくら使ってもどこからも水道代の請求は来ませんでした。

アリスは去年の冬に使ったセーターやマフラー、それに男物のコートを持って洗濯する岩場にやって来ました。
思えば去年の冬に、これを着たジョセフといっしょに、都会の”こうべみなと”まで行った思い出があります。普段はずっと山の中で暮らしていましたが、たまには旅行に行こうと、一大決心をして都に足を運んだのです。
”こうべみなと”はとても素敵な所でした。港の夜景が綺麗でした。
アリスはその思い出を頭に思い浮かべながら、手もみ洗いで洗濯をし始めました。

　すると……、
上手の上流から、

”ドンブラコ～、ドンブラコ～”

と何か大きなピンク色の物体が川の中を流れて来るのが見えました。

”ドンブラコ～、ドンブラコ～”

何でしょうか？今まで見た事が無い大きな物体です。
視力が2.0のアリスがよく目を凝らして見ますと、それは大きな桃である事が分かりました。

アリス　　「でもちょっと大きすぎますね……。」

そう言えばこの間、竹やぶで一際大きな竹の子を見つけました。喜んで引き抜いた後に、それは”作り物”である事が分かりました。その竹の子の模型に

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と書かれたプレートが付いていました。
そんな事がありましたので、アリスは
「また何かの勧誘かしら？」と変にその桃の事を疑いました。

小説目次　

→第１話～第１４話
→第１５話・第１６話
→第１７話～

→マンガ『連れ去られたミルキー』

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