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福島第一原発の事故が終息する見込みは立っていない。圧力容器が爆発せず、風が太平洋へ流れていたという幸運に恵まれたが、それでも環境汚染は深刻だ。漏れ出た放射性物質は世界に拡散、東北地方が受けたダメージは大きく、原発周辺地域は長期にわたって人が住めなくなると見られている。 大気中だけでなく、地中、そして海洋の汚染はこれからも続く。小沢一郎議員がウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで語っていたように、「日本がつぶれるか、日本人が生き延びるかどうかという話」になっている。 核の研究者、原子炉の設計者、あるいは地震学者たちから原発の危険性は早い段階から指摘されてきただけに、そうした警告を無視して事故を起こした東京電力の罪は重い。歴代重役会議のメンバーは刑事責任を問われなければならない。 勿論、電力会社と癒着し、自らも甘い汁を吸い続けてきた官僚や政治家も同罪であり、核関連の仕事で潤ってきたメーカーや銀行、あるいは「安全神話」を国民の頭に刷り込んできた「専門家」、教育機関、報道機関も責任を免れない。 ところが、こうした人々の責任が問われる気配はなく、東電の重役は億円単位の退職金を手にし、社員も年金を受け取ることができそうだ。政官財学報が引き起こした災害の尻ぬぐいは庶民に押しつけられそうな流れになっている。しかも、放射性物質に体を蝕まれながら。 それに対し、環境破壊を阻止しようとした人に対する処罰は厳しい。2008年、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権はユタ州の原野における掘削権を石油/ガス産業に売却しようとしたのだが、この決定を批判、入札を妨害した学生(当時)、ティム・ドクリストファーに対して懲役二年と1万ドルの罰金がソルトレークシティの裁判所で言い渡された。資金的な裏付けがないにもかかわらず落札したことが理由だ。 2008年といえば、事実上、ブッシュ政権最後の年。この入札はブッシュ政権最後の大安売りであり、売却自体が違法だとする非難の声が巻き起こっていた。実際、次のオバマ政権は売却を止めている。ドクリストファーは違法行為を阻止したのだと主張する人もいるが、確かにそうした見方もできる。彼の行動は意味があった。だからこそ、裁判所は彼を許すことができなかったのかもしれない。
2011.07.27
ソマリアの飢饉が問題になっている。干魃もさることながら、内戦による国土の荒廃が大きな原因になっていることは間違いないだろう。 内戦の背景には欧米の利権が深く関係している。最近、日本もソマリアの隣国、ジブチに自衛隊の基地を建設して隊員を常駐させ始めたが、このジブチはソマリア支配の拠点であり、日本もソマリア問題に手を突っ込んだということを意味している。 欧米、特にアメリカやイギリスがソマリアを重要視するのは国が位置している場所に起因している。インド洋から紅海を経てスエズ運河を抜け、地中海へ入るための入り口に面しているからだ。 このルートが封鎖されると船は南アフリカの喜望峰を回らなければならなくなり、物資の輸送に大きな影響が出てくる。「アフリカの角」と呼ばれるように、その突き出た形もソマリアの軍事的な重要度を高めた一因だろう。 言うまでもなく、このスエズ運河の建設を着想したのはフランスの外交官だったフェルディナンド・ド・レセップス。1859年に着工、1869年に完成している。 当初はフランスとエジプトが出資するスエズ海洋運河会社が経営していたが、1875年にイギリスがエジプトから同社株のうち44%を買い取って会社を支配、1882年にはイギリス軍が運河地帯を占領している。スエズ運河社はイギリスの世界戦略を実現する役割を負っていたと見るべきだろう。 現在、中東/北アフリカにおいて大きな影響力も持っているイスラム同胞団の創設にもスエズ運河社は深く関わっている。1928年、同胞団が創設される際に資金を出しているのである。 この団体を組織したハッサン・アル・バンナの娘と結婚したサイド・ラマダンはイギリスやアメリカの情報機関に協力してたとも言われているが、この人物は第2次世界大戦が終わった直後、ハマスのルーツとも言える組織を作っている。 つまり、ヤシル・アラファトが健在だった当時のPLO(パレスチナ解放機構)を揺さぶるため、米英やイスラエルがハマスにつながる団体を支援していたのは必然だったと言えるだろう。 また、同胞団は1954年、ガマール・アブデル・ナセルの暗殺を試みている。ナセルのようなナショナリスト、あるいはコミュニストを壊滅させようと必死だった米英両国の思惑に合致した行動だったと言える。 同胞団は組織が巨大化するにつれ、さまざまな考え方の人間が参加するようになっているという側面もあるが、歴史を振り返るならば、少なくとも反欧米団体と単純に分類すべきではない。 ホスニ・ムバラクを大統領の座から引きずり下ろしたエジプトの民主化運動でもイスラム同胞団の影がチラチラするが、こうした状況をアメリカが嫌がっているとは言えない。この組織は少なくとも一時期、米英の別働隊として動いていたことがあるのだ。 パレスチナ問題でも言えることだが、米英をはじめとする「先進国」が最も恐れているのは「名もなき民衆」の覚醒と蜂起であり、そうした動きの芽が出てきたなら、速やかに摘んでしまおうとするだろう。そのためにも監視システムの強化は急務、ということだ。 監視/治安システムのほか、軍事力、食糧、エネルギーはアメリカの支配層にとって世界を支配し、富を吸い上げるための重要な柱になっている。武力は破壊と殺戮のためにあるわけだが、食糧やエネルギーも一種の暴力装置として機能している。兵糧攻めは最も残虐な戦術のひとつであり、エネルギーを断たれれば近代社会は成り立たない。 要するに、食糧を国外に依存し、石油にしろ原子力にしろ、エネルギーをアメリカに支配されている日本はきわめて危うい状態の中にいると言える。 燃料の供給源が限られ、アメリカからの制約が多い原子力の場合、原発自体の危険性を度外視しても、国の安全保障を考えると選択すべきではない。 また、原子力も石油もアメリカの巨大資本が支配しているわけで、どちらに転んでも彼らにとって本質的な問題ではない。逆に、だからこそ、アメリカの支配層は日本が自然エネルギーへシフトすることを嫌うはずだ。 福島第一原発の事故で北日本の農業は壊滅的なダメージを受けた。放射能汚染に対する対策を講じず、「安全デマ」を流すだけの政府の信用は失墜、その影響は国産作物への不信へとつながっている。つまり、食糧支配という観点から見ると、こうした日本政府の政策はアメリカの利益に合致しているわけだ。 本ブログでは何度か書いているので今回は深入りしないが、ソマリアの状況を悪化させた張本人はアメリカである。そのアメリカ次第では、日本がソマリアのようになっても不思議ではない。そんな国と日本は「同盟」を組んでいるのである。 日本の「名もなき民衆」が覚醒したならば、アメリカは食糧やエネルギーを「棍棒」として利用するだろう。「そのとき」のためにも食糧やエネルギーにおけるアメリカへの依存度は少しずつでも小さくし、イスラム同胞団のような存在にも気をつける必要がある。
2011.07.27
九州電力が原発推進のために仕組んだ「やらせメール」、資源エネルギー庁による「不適切・不正確な情報への対応」を目的とした新聞やインターネットの監視が話題になっている。東京新聞によると、メディア情報を監視するために外部委託した費用の総額は本年度分を含め、4年間で約1億3000万円に上るという。 中には「こんなことは昔から知っていた」と言う人もいるが、証拠が出てきた意味は大きい。証拠を握っていてもマスコミが報道しなかったということもあるかもしれないが、外部に情報が出てきた以上、問題にするのは当然である。 ところで、政府や大企業は情報を操作するだけでなく、収集、集積、分析によって一般市民を監視する仕組み、つまり情報を支配するためのシステムを築き上げてきた。ジョージ・オーウェルの小説『1984』に出てくるビッグ・ブラザーのような存在だ。原子力だけがターゲットになってきたわけではない。 勿論、こうした監視システムは日本だけの問題ではない。世界的に見ると1970年代から問題になりはじめ、1990年代から欧米では大騒動だった。この時期、日本のマスコミもこうした状況を知っていたはずだが、この問題に触れようとしなかった。しばらくしてから一部のメディアが取り上げていたが、大半は本筋から外れていた。 この問題に切り込んだ最初のジャーナリストはダンカン・キャンベル。1976年5月号のタイム・アウト誌に「盗聴者」という彼の記事が載っている。マーク・ホーゼンボールとの共著だが、執筆の中心はキャンベルだ。この年の11月、ホーゼンボールはイギリスからの退去が命じられている。 1977年にキャンベルはGCHQ(イギリスの電子情報機関)の極秘事項を明るみに出したとして逮捕された。情報源だったクリスパン・オーブレイとジョン・ベリーも拘束されている。 裁判の結果、ベリーは有罪になって懲役6カ月、執行猶予2年、弁護費用250ポンドの支払いが命じられ、キャンベルとオーブレイは無罪になったのだが、無罪になったふたりには起訴費用として、それぞれ2500ポンドを支払えと命じている。要するに、犯罪は成立しないが罰するという姿勢をイギリスの裁判所は示したわけである。 地球規模の通信傍受システム、ECHELONの存在を最初に指摘したのもキャンベルである。1988年8月のことだ。このシステムはキーワードやアドレスなどをチェックし、コンピュータが自動的に会話内容を記録、分類するとされている。別に「企業スパイ」のためのシステムではない。インテルサットなど衛星を利用した通信のほか、無線や地上のマイクロ波ネットワークを傍受、スパイ衛星もシステムに組み込まれているようだ。 このシステムの動かしているのはUKUSA。UKとはイギリスのGCHQ、またUSAとはアメリカのNSAを指し、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン系国の情報機関も参加している。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの政府はこのネットワークに関与できず、この3カ国を米英両国政府が支配する仕組みとして機能している。形式上、日本もUKUSAに加わっているのだが、アングロサクソン系の国々とは立場が全く違う。 1970年代には情報の収集と分析を行うシステムの開発も進んだ。中でも有名なシステムがPROMIS。INSLAW社が開発した当初は容疑者を追跡することを目的としていたのだが、不特定多数の個人情報をコンピュータ網を利用して集め、分析するために使われるようになる。カネやプルトニウムの動きを追跡するためにも利用されているようだ。 注目を集めた(日本は違うが)大きな理由は、司法省の横領疑惑が持ち上がったからである。INSLAW社は司法省と協力してシステムを開発していたのだが、ロナルド・レーガン政権になると司法省がPROMISを取り上げてしまったのである。その手口が違法だと会社に訴えられ、1989年には破産裁判所が会社側の主張を認め、司法省はペテン的、欺瞞的、詐欺的な手段でPROMISを横領、さらに不正な手段でINSLAWを清算しようとしたと認めたのである。1989年にはワシントンの連邦地裁でも同じ内容の判決を言い渡され(上級審で破棄されたが)、1992年には下院司法委員会も両裁判所と同じ趣旨の報告書を出している。司法省が横領した・・・大変なことだが、日本で報道されたという話は寡聞にして聞かない。 実は日本の法務省もPROMISに注目、法務総合研究所は1979年3月と1980年3月、2度にわたってPROMISに関する概説資料と研究報告の翻訳を『研究部資料』として公表している。この当時、アメリカの日本大使館に一等書記官として勤務していたのが後の検事総長、原田明夫。実際にINSLAW社と接触していたのは後の名古屋高検検事長、敷田稔である。原田は法務省刑事局長時代、『組織的犯罪対策法(盗聴法)』を推進している。(詳細は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)なお、盗聴法は1999年に成立している。「住民基本台帳ネットワーク」も同じ流れの出来事だ。 こうした情報支配の問題を日本のマスコミは取り上げようとしなかった。世間では「左翼」と見られている記者や編集者も触れたがらなかった。個人的な話になるが、この問題を取り上げてくれたのは月刊の軍事研究である。
2011.07.23
ノルウェーの首都オスロで22日午後3時30分頃(現地時間)に大きな爆発があり、多くの死傷者が出ているようだ。現段階で2人の死亡が確認され、数百名が死亡したという情報も流れている。現地の警察によると爆発の原因は爆弾。少なくともひとつは自動車に仕掛けられていたとも伝えられているが、爆破の目的はわかっていない。爆破の数時間後にはオスロ近くの町で銃撃事件があったというが、詳細は不明だ。 この事件では、少なからぬ人がムラー・クレカールに注目している。スンニ派のクルド人聖職者で、1991年にノルウェーに難民として入国している。イラク北部を拠点とするクルド系の武装グループ、アンサール・アル・イスラムの創設に関わった。この地域はアメリカが設定した「飛行禁止空域」に含まれ、サダム・フセインの攻撃から守られる形になっていた。クルド人はイラク、イラン、トルコにまたがる形で生活、各国を不安定化させる手駒としてイスラエルに協力してきた歴史がある。 そのクルド人の中でもアンサール・アル・イスラムは危険視され、国連からテロリストだと見なされている。2007年にはノルウェーの裁判所が国家の安全に脅威になる人物だという結論を出しているのだが、イラクに戻ると処刑される可能性があるとして国外追放に抵抗、すでにアンサール・アル・イスラムの指導者ではなく、アル・カイダとも関係ないと主張している。 歴史を振り返ってみると、ノルウェーは中東と浅からぬ関係にある。イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互に承認し、イスラエルは入植した地域から暫定的に撤退するといったことが決められた1993年のオスロ合意は有名。 オスロ合意に対する反発はイスラエルとパレスチナ、双方にあった。イスラエル側から参加したイツハク・ラビン首相(当時)は1995年に暗殺され、2000年にはアリエル・シャロンが1000名以上のイスラエル人警官を引き連れて「神殿の丘」を訪れ、その場所はイスラエルのものだと宣言した。 同じ場所にイスラムの聖地「岩のドーム」もあることから、シャロンの発言にイスラム教徒は当然、怒る。つまりシャロンはパレスチナ人を挑発し、和平の機運を粉砕しようとしたわけだ。そして2006年、イスラエル軍がレバノンやガザに軍事侵攻して合意を破壊しようとしている。 イスラエルでは強硬姿勢がエスカレート、最近では「民族浄化」を目的とした法律も制定、「人権擁護団体」を激しく攻撃するようになっているのだが、そうした動きに反比例する形でイスラエルの立場は悪化している。ガザに対する兵糧攻めや軍事侵攻も国際的に非難され、ヨーロッパでもイスラエルに厳しい見方をする人が増え、イスラエル製品のボイコットも広がっている。 ノルウェーでもイスラエルの評判は悪く、今年2月の報道によると、ノルウェーのPR会社5社はイスラエルのイメージを地球規模で改善させるという仕事を断ったという。イスラエルのイメージアップは無理だということだろう。 その一方、ノルウェーのヨナス・ストーレ外相は爆破事件の直前、パレスチナの国連加盟を支持すると語っている。また、ジミー・カーター元米大統領の補佐官を務めたロバート・パスター・アメリカン大学教授は15日、時事通信に対し、オバマ政権はパレスチナの国連加盟を支持すべきだと主張している。 勿論、アメリカやEUには強力な親イスラエル派が存在しているわけで、こうした発言に反発する動きもあるはず。つまり、支配層の内部で対立が生じている可能性がある。こういう場合、本来なら出てこないような話が出てくるものだ。 ところで、イスラエルの情報機関の幹部だったアリ・ベンメナシェによると、1985年の「アキレ・ラウロ号」の事件はイスラエルが仕掛けたものだった。自分たちの正当性とパレスチナ人の残虐性を世界の人々や自国民に印象づけるため、支配下にあるアラブ人を使い、「イスラム教徒のテロ行為」を演出したというのだ。(詳細は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を参照。) ノルウェーの事件がイスラエルの仕業と言っているわけではない。事件を表面的に眺めるだけでは真相に迫れないということである。
2011.07.23
福島県産の牛を解体してみたら放射性セシウムが検出されたと騒いでいるようだが、牛だけが汚染されているはずがない。多くの人はそう思っているだろう。牛以外の肉、例えばブタにしろ、鶏にしろ汚染されている可能性が高い。野菜にしろ、そして魚介類にしろ、福島第一原発から放出されている放射性物質は汚染し続けているはずだ。(調査しないからデータがない、データがないからそうした事実はない、と官僚はよく言うが。) 汚染された食べ物を口にすれば、その影響を受ける。チェルノブイリ原発の事故による影響を見ても、甲状腺癌や白血病は4、5年後から、ほかの癌や心臓病などは20年から30年後から急増、脳障害も問題になっている。特に胎児や幼児が大きな影響を受けることは多くの研究者や医師が指摘している。50歳代以上の人たちと子どもを同じに扱ってはならないということだ。 大多数の人々、おそらく原発推進派も放射能に汚染された食べ物を口にしたくないと考えているはずだ。電力会社、マスコミ、あるいは原発の状況を早い段階で知る立場にあった人々は家族を速やかに避難させていたというが、そんなものだろう。 農作物が汚染されたことにより、生産者は大きなダメージを受けている。だから都会の人々は放射性物質に汚染された食べ物を受け入れるべきだという主張がある。汚染の度合いを表示し、選択させろと言うことのようだが、当然、多くの人は汚染の少ないものを買おうとするだろう。つまり、より汚染度の低い商品は高く、高い商品は安くなる。 一家族でオトナと子どもの食べ物を分けるという想定は現実的ではない。当然、汚染度の低い商品は富裕層が、汚染度の高い商品は低所得層が買い、食べることになる。最も大きな被害を受けるのは低所得層の子どもたちであり、さらにその子どもたち・・・と続く。そしてあらたな差別が始まる。 放射性物質に汚染された農作物を流通させてはならない。秋の収穫が破滅的であっても所得差別を伴うようなことをしてはならない。餓死者がでないように、早く手を打っておく必要もある。そうしたことにともなうあらゆる損害は勿論、東京電力が負担すべきだ。
2011.07.20
盗聴事件で窮地に立たされているルパート・マードックはオーストラリア生まれで、米英などアングロサクソン系の国々のメディアに大きな影響力を持つ人物。支配層と緊密な関係にあることで知られ、巨大企業や富豪たちにとって都合の良い話を広めるプロパガンダ担当者として重要な役割を果たしてきた。 マードックがメディアの世界に君臨する基盤は父親から受け継いだ資産。1952年に死亡した父親、キースから新聞社の株式を相続したのである。そうした中には「ザ・ニューズ」という夕刊紙を出していたアデレードの会社も含まれていた。父親の死後、ルバートはイギリスのオックスフォードから戻り、1956年には「TVウィーク」という週刊のテレビ雑誌を創刊している。 1960年代になるとルパートは地方紙の買収を本格化、そのうちの1紙がシドニーの「デイリー・ミラー」である。この新聞は1964年にセンセーショナル記事を掲載し、話題になった。ある少女の日記に基づき、ハイスクール生徒の「乱交」に関する記事を掲載して13歳の少年を自殺に追い込んだのだが、この記事には大きな問題があった。個人的な問題を大々的に報じたというだけでなく、事実ではなかったのである。この日記は幻想を書いたに過ぎず、日記の筆者が処女だということが後に確認された。 そうした事件があったにもかかわらず、マードックの新聞は1971年にも「乱交話」を大きく報じている。「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」がイギリスのテレビ局、BBCの人気番組に出演していた人の「乱交」を伝え、15歳の少女を自殺に追い込んだのだ。この話も「ファンタジー」に基づく「報道」だった。ルパートにとって、部数を伸ばす切り札は「乱交話」なのだろう。 しかし、米英の支配層にとってルパートのこうした経歴は「傷」にならないらしく、彼の友人には大物が多い。例えば、1999年に38歳年下のウェンディ・デンと再婚した際に行われた少人数の結婚式に出席した人を見ると、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の息子、つまりジョージ・W・ブッシュ大統領の弟にあたり、住宅金融機関S&Lの不正融資に絡んで名前が出てきたニール・ブッシュ、あるいはロシアからロンドンに亡命した大富豪のボリス・ベレゾフスキー(亡命してからプラトン・エレーニンに改名)らが含まれている。 言うまでもなく、ベレゾフスキーはボリス・エリツィン政権下のロシアでクレムリンと手を組み、「私有化」と「規制緩和」というかけ声の下、公正とは言えない手段で巨万の富を手に入れた人物。彼の交友関係には「ジャンク・ボンド」で有名なマイケル・ミルケン、そしてロスチャイルド卿と息子のナサニエル(ナット)・ロスチャイルドもいる。 ロナルド・レーガンやトニー・ブレアもルパート・マードックと緊密な関係にある。例えば、1983年にレーガン大統領はイギリスを拠点とするメディア界の大物ふたりを呼んで軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について語ったのだが、そのふたりとはルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスだ。そしてBAPが組織された。トニー・ブレアを含め、ブレア政権にはBAPの関係者が少なくなかった。 こうした仕組みを作ろうとした原因はイスラエル軍のパレスチナ人虐殺事件に対する世界的な反発。1982年9月、レバノンでファランジスト党のメンバーがイスラエル軍の支援を受けながら、無防備のサブラとシャティーラ、両キャンプを制圧、建造物を破棄すると同時に、数百人、あるいは3000人以上の難民を殺害、イギリス労働党の内部でもイスラエルの責任を問う声が大きくなったのである。 こうした労働党のイスラエル離れに歯止めをかけ、再び「親イスラエル政党」へ引き戻したのがトニー・ブレアである。1994年1月にイスラエル政府はブレアと妻のチェリー・ブースをイスラエルに招待、その2カ月後にブレアはロンドンのイスラエル大使館で富豪のマイケル・レビーを紹介されている。イスラエル政府がブレアのスポンサーになったと言えるだろう。この年の5月に労働党の党首だったジョン・スミスが心臓発作で急死、ブレアが新党首に選ばれ、1997年の総選挙で労働党は勝利してブレアが首相になった。 マードックは単なる「新聞屋」ではなく、巨大な権力システムでプロパガンダを担当している人物。だからこそ、これまでイギリスの警察も盗聴行為を不問に付してきた。権力層の内部で激しい闘争が始まっている可能性が高い。
2011.07.20
危機的な状況にあるソマリアをアメリカのバラク・オバマ政権は無人機で攻撃している。無人機のターゲットになっている国としては、パキスタン、アフガニスタン、イラク、リビア、イエメンに続いて6番目。各国とも少なからぬ非武装の市民が犠牲になり、反米感情を高めているのだが、アメリカ政府は懲りていないらしい。 アフリカ東部が苦難の道を歩んでいる最大の原因は、欧米の巨大企業、特に石油産業の利権にある。特に、ソマリアは重要な位置を占めている。インド洋から紅海を通り、スエズ運河へ向かう入り口に位置しているということだ。 そこで、ソマリアを含むアフリカ東部がイスラムの勢力圏に入ることをアメリカ政府は嫌がり、反イスラム武装勢力を支援してきた。CIAは秘密裏に毎月10万から15万ドルをそうした勢力へ提供していたが、その仲介役を務めていたのがジブチ駐留のJCTF(統合連合機動部隊)だった。ジブチを拠点にしてアメリカは秘密工作を展開しているようだ。 しかし、こうした工作が思惑通りに進んできたとは言えない。例えば、1993年にソマリアの内戦に介入、その際に首都モガディシュでアメリカ軍のヘリコプターが撃墜されて20名近い米兵が戦死している。この時の出来事を映画化したのが「ブラックホーク・ダウン」である。(ソマリア側は数百名が殺されているのだが) 2006年には、CIAが支援していた武装集団がイスラム勢力に敗北、アメリカ政府は隣国のエチオピアに支援を要請した。一旦はエチオピア軍がイスラム勢力を一掃したのだが、予想された通り、占領を長く続けることはできなかった。エチオピア軍が撤退すれば、イスラム勢力が盛り返してくるだけのことだ。 実際、2009年1月にエチオピア軍が撤退すると「ソマリア再解放連(イスラム法廷連合)」のシェイク・シャリフが大統領に就任、アル・シャバーブなどの武装勢力が戦闘を激化させて首都モガディシオでも多数の死傷者が出る事態になった。 アメリカの介入をアフリカ連合などは批判しているが、それに対してアメリカ政府はソマリアのイスラム勢力がアル・カイダと関係していると主張、「テロとの戦争」だからエチオピアの軍事侵攻は正当な行為だと弁護している。 本ブログでは何度か書いたが、リビアでは現体制を倒すため、米英仏の3国はアル・カイダ系の武装勢力と手を組んでいる。アル・カイダを持ち出してソマリアへの軍事介入を正当化することはできない。 世界の中でも、ソマリア周辺は特に複雑な問題を抱えている地域。そんな複雑に場所に自衛隊は飛び込んでいったのである。昨年夏から海上自衛隊はジブチで拠点、つまり基地を建設、今年7月7日には開所式が行われた。「海賊対策」が目的だとしているが、アフリカ東部がどのような場所なのか、「海賊」がどのような人たちなのかを理解しているのだろうか? ソマリア沖の「海賊」は漁民や沿岸警備隊崩れだとされている。外国の水産会社がソマリアの「主権を侵害してソマリアの水産資源を略奪している」と非難する声があるほか、外国企業が放射性物質を含む産業廃棄物を沿岸に投棄、沿岸の漁師など数万人に健康被害が発生、漁業を続けることも困難になっているとする話も伝わっている。その結果、一部の人々が海賊になったというわけだ。 しかし、こうしたことが言えるのは2000年代の初頭まで。イギリスの民間軍事会社で訓練を受けたというプントランドの「海上警備隊」が海賊行為に深く関与しているとする話も伝わっている。 プントランドはソマリア北東部にあり、1998年からダロッド氏族が独自の地方行政組織の設立、ソマリアの「国家内国家」になっているのだ。このプントランドの有力者が「海賊」を支援、さらに「投資家」が資金を提供してきたと報道されている。アル・シャバーブなどの武装勢力も海賊と深い関係にあると言われている。 スペインから流れてきた情報によると、ロンドンには情報活動を担当するチームが存在し、そこからソマリアの実行部隊へ船舶に関する情報、つまり積み荷やコースなどを衛星電話で連絡しているというのである。しかも、実行グループは襲撃の訓練を受けている。ソマリアの海賊とは、独自の教育/訓練システムやスパイ機関を持ち、最新の通信機器や巨大な資本を有した国際的な組織だということである。 日本が基地を建設する前からジブチにはアメリカとフランスが基地を持っていた。それでもソマリアの海賊を押さえ込めないでいる。そんな相手を海上自衛隊が封じ込めるとは思えない。むしろ、海賊行為を口実にして、海外派兵を推進しようとしているのだろう。その先に何が待ち受けているのか、どの程度の日本人が考えているのだろうか?
2011.07.16
福島第一原発が破局的な事故を起こして以来、「カッサンドラ」という名前が頭から離れない。言うまでもなく、ギリシャ神話に出てくるトロイアの王女。予言の能力を持ち、トロイアの滅亡を警告していたのだが、誰にも信じてもらえなかったという人物である。 今回の事故は「想定外」ではなかった。核物質について研究していた科学者、原発の設計をしていたエンジニア、地震学者などから警告されていたような事故が起こっただけである。そうした警告を多くの日本人は信じようとしなかった。そうした隻眼を有する科学者のひとりが高木仁三郎さんだ。 東京電力の副社長を経て参議院議員になった原発推進派の加納時男さんは「反原発を訴える学者では、2000年に亡くなった高木仁三郎さん以外、尊敬できる人に会ったことがない」と語ったという。 原発推進派にとっても高木さんの経歴を消し去ることはできず、世界的に認められた功績も否定できない。そこで、故人となった「高木さんは」尊敬できると認め、それ以外の「反原発を訴える学者」は尊敬できないと強調したいのだろう。 高木さん以外でも、東京大学原子核研究所の助教授(現在の准教授)時代から原発に反対していた故水戸巌さん、あるいは京大原子炉実験所の海老沢徹さん、小林圭二さん、瀬尾健さん、川野真治さん、そして小出裕章さん、今中哲二さんといった人々はすぐ頭に浮かぶ。また、「日本人初のノーベル賞受賞者」である湯川秀樹さんも日米両政府による強引な原発建設計画には反対、「慎重な上にも慎重でなければならない」としていたという。 原子力発電の設計に携わったエンジニア、例えば田中三彦さんや後藤政志さんも限られた情報に基づいてい的確な分析を行い、政府/経産省/東電のウソを暴いてきた。石橋克彦さんをはじめとする地震学者からの警告も不幸なことに、現実のものとなってしまった。 ただ、それでも今回の事故は運良く「最悪の事態」には至っていない。いわば、この事故も「警告」である。この警告を無視するならば、次は本当に「最悪の事態」になる可能性がある。
2011.07.12
福島第一原発で破局的な事故が起こってから4カ月になる。政府、経産省、そして言うまでもなく東京電力は今でも情報の隠蔽、偽情報を流し続けているのだが、事故を収束させられない状況にあることは間違いない。発電所の周辺20キロメートル以内は4月22日から立ち入りが禁止されている状態だ。放射線量の高さを知られる、あるいは知られたくはないものを見つけられる恐れがあると思っているのだろう。80キロメートル近く離れていても深刻な汚染状況の場所もある。 しかし、それでも今回の事故は運が良かった。圧力容器の内部で水素爆発が起こらず、風が太平洋に向かっていたことから陸の汚染が軽減されたからだ。ともかく最悪の事態には至らずにすんだ。もし水素爆発が起こり、風向きが悪かったなら、日本列島の北半分は壊滅していただろう。 ただ、それでも事故が深刻な状況にあることは確かだ。燃料棒は溶融し、圧力容器の底から格納容器に漏れ落ちている可能性が高いと考えられている。そうなると、融点の関係で圧力容器の壁は融け、溶融物はコンクリートの中にあると思わなければならない。 もし溶融物が地下水を汚染すれば地中の汚染は広がり、海もさらに汚すことになる。発電所の周辺は想像を絶する放射能汚染、つまりチェルノブイリ原発の事故を上回る汚染になると覚悟する必要があるだろう。 原発周辺の深刻な汚染状況を住民へ速やかに伝え、避難させる必要があったのだが、政府/経産省/東電、そしてマスコミは「安全デマ」を流し、被害を拡大させることになった。 こうしたデマを最初に打ち砕いたと言えるのは、ジャーナリストの広河隆一さんや豊田直己さんたちだろう。事故直後の3月13日、原発から約3キロ離れた病院で1000マイクロシーベルトまで測定できるガイガーカウンターの針が振り切れたことを明らかにしたのである。 また、京都大学原子炉実験所の今中哲二助教らは3月28、29の両日に現地を調査、飯館村の一部に「避難を考えた方がいいレベルの汚染」があることを突き止め、報告している。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故による強制移住基準を上回る汚染だということである。 菅直人内閣で官房参与を務めていた小佐古敏荘さんは「原発推進派」として知られていた学者だが、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、「菅内閣は海の汚染や魚への影響について迅速な分析ができておらず、汚染除去コストを最小限に抑えるために特定の放射能の危険性を過小評価している」と述べ、「今年後半、特に日本人の主食である米の収穫が始まった頃に、より広範な、憂慮すべき問題が明らかになるだろう」としている。(ウォール・ストリート・ジャーナル、7月2日付) チェルノブイリ原発の事故では4、5年後から白血病や甲状腺癌が急速に増え、20年を過ぎたあたりから癌だけでなく心臓病も増えているとする報告が出てきた。IAEA(国際原子力機関)などが広めてきた「安全デマ」が崩れ始めている。 そうした中、日本では原発に反対する声が収まってきたのを見計らうようにして「放射線は大したことがない」という話を一部のマスコミが、予想通り、広めようとしている。 放射線に対して女性が危機感を持っているのに対し、体制の中で生きてきた男性の中には事実から目を背けようとしている人が少なくない。そうした人々を「煽る」ことにより、家庭内で原発に批判的な声を封印しようとしているのかもしれない。 それはともかく、放射能汚染の事実は日本人に重くのし掛かってくる。50歳代の人たちは放射能汚染の結果を見ずにすむかもしれないが、30歳代より若い人たちは現実の追いつかれてしまうだろう。
2011.07.10
東京電力福島第一原子力発電所の大事故を収束させられないでいる。おそらく、自然に収束するのを待つしかないだろう。その間、放射性物質を放出し続けることになる。そうした状況下におかれているにもかかわらず、九州電力玄海原子力発電所2、3号機の運転再開を容認すると佐賀県玄海町の岸本英雄町長は伝えたという。 岸本町長は「全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)」の監事(今年1月1日現在)。この団体は事故から3週間余りを経た4月4日、政府や与党の幹部に対して「緊急要望書」を手渡し、原子力政策については「ぶれないでほしい」と要求したという。原子力政策を今まで通り推進してほしいということだ。 勿論、全原協だけが原子力に執着しているわけではない。例えば、日本経団連の米倉弘昌会長は3月16日に福島第1原発が「千年に1度の津波に耐えている」と主張、「素晴らしい」と絶賛、「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」と発言している。4月11日には、今回の事故で国が東京電力を支援するべき、つまり国民に尻ぬぐいさせるべきだと叫んでいた。 東京電力を中心に広がる原子力利権に群がる人は多く、その範囲も政治家、官僚、大企業だけでなく、学者やマスコミにも広がっている。こうした人々を「原子力村」の住人と呼ぶようだが、この「村」はエネルギー産業の一部にすぎず、エネルギー産業は経済システムの一部にすぎない。その背後には金融/投機集団が存在している。 現在、エネルギー産業を支配しているグループは、石油を支配することで巨大化してきた。かつてはスタンダード石油ニュージャージー、SOCAL(スタンダード石油カリフォルニア、後にシェブロンへ改称)、モービル石油、シェル、BP(ブリティッシュ石油)、テキサコ、そしてガルフ石油の7社、いわゆる「セブン・シスターズ」が君臨していたのだが、今ではエクソン・モービル、シェブロン・テキサコ、BPアモコ、ロイヤルダッチ・シェルの4社に集約されている。(アモコはかつてのスタンダード石油インディアナ) 原発が世界的に広がった1970年代、ウラニウム開発はこうした巨大石油産業によって推進された。現在、ウラニウムの約半分はこうした企業によって支配されているという。大気汚染の規制に反対してきたグループと、原発は「二酸化炭素を排出しない」という荒唐無稽な主張をしてきたグループをたどると根は一緒ということ。原子力の場合は「核兵器」という要素が加わり、軍や情報機関の好戦派や戦争ビジネスが絡んでくるが。 石炭にしろ、石油にしろ、天然ガスにしろ、燃やせば熱も出れば、有害物資も出る。当然、二酸化炭素も排出する。こうしたエネルギー源の使用を押さえるべきだという議論に結びついたのが地球温暖化ガスの排出規制。北極圏などで気温が上昇している現象が出てくると、産業革命の頃から唱えられていた「温暖化仮説」が注目される。二酸化炭素などの温暖化ガスが気温を上昇させているのではないかという説だ。 実験室という微小空間ではなく、さまざまな要素が複雑にからむ地球環境では二酸化炭素などが何らかの引き金になっている可能性も否定できず、二酸化炭素を規制すればほかの有害物質を押さえることもできるということもあり、気候温暖化ガスを抑制するべきだという議論になった。 そうした中、気候温暖化ガスの規制を投機に利用しようという動き、あるいは原発は二酸化炭素を出さないという妄想も出てくるのだが、この辺から反原発派の一部が大気汚染規制派に敵意を感じ始めたようだ。原発を推進するために二酸化炭素を規制するという動きが出てきたと考えたのだろう。 しかし、エネルギー産業の実態や環境規制の流れを見ると、こうした一部反原発派の主張には疑問を感じる。エネルギー産業やその資金源でもある金融資本から見るならば、原発に反対する人々と大気汚染に反対する人々の対立はありがたい話。 かつて、似たような話があった。1960年代のアメリカでは公民権運動が広がり、反戦/平和運動や労働運動と結びつく動きがあった。アメリカが真に民主化される可能性が出てきたのだ。 その象徴的な存在がマーチン・ルーサー・キング牧師。こうした動きに危機感を持ったのが支配層だ。そうした中、学生運動の中から爆弾闘争を展開するグループが現れる。さらに、人種差別、女性差別、労働問題、戦争反対等々、運動が細分化されて全体の力は失われていった。日本でも不可解な爆弾事件や内ゲバで反戦運動は支持されなくなり、市民運動全体が衰退していった。二度と同じことを繰り返してはならないだろう。 なお、キング牧師は1968年4月に暗殺され、その2カ月後にはキング牧師とも親しかったロバート・ケネディ元司法長官も殺された。言うまでもなく、ロバートの兄、ジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月、ソ連との平和共存を訴える演説をしてから5カ月後、ベトナムからの撤兵を決めた直後に暗殺されている。
2011.07.04
金融システムを利用した略奪に苦しんでいるギリシャ。そのギリシャがイスラエルによるガザ攻撃を支援するような動きに出ている。ギリシャの港に終結したガザ支援船の出港を禁止しているのだ。昨年5月31日には公海上で支援船の「マビ・マルマラ」をイスラエル海軍の特殊部隊「シャエテット13」が襲撃、支援船の9名が殺害されている。 犠牲になった9名のうち5名は至近距離から頭部を撃たれていることから「処刑」だった可能性が高いと考えられている。例えば、19歳のアメリカ人、フルカン・ドーガンの場合、後頭部を至近距離から5発撃たれ、2発は足、そして背中にも1発撃たれていた。5名に撃ち込まれた銃弾の数は合計すると30発になる。 昨年の場合、イスラエル軍はジャミングで支援船団と外部との連絡を妨害、船団側が撮影していた映像などは押収して事実を隠そうとしたのだが、それでもイスラエルに対する非難の声は大きくなり、イスラエルは苦しい立場に陥った。 その1年以上前、2008年12月から1月にかけて実行された軍事侵攻でイスラエル軍はガザの経済的、あるいは社会的な基盤になる施設を破壊しただけでなく、国連施設や医療関係者や医療施設を攻撃、住民の住まいを破壊している。その際に化学兵器とも見なされている白リン弾も使用、1300名以上の住民を殺し、4000名以上を負傷させた。 このときの破壊と殺戮でイスラエルに批判的な人を増え、イスラエルの「防御装置」も働かなくなっていた。世界的に見ると、支援船を襲撃したことに対するイスラエルの代償は大きいと言える。 イスラエルはガザを日常的に「兵糧攻め」にしている。軍事侵攻はその合間に実行される残虐行為だ。アラブ系住民がこの地区から逃げ出すか、死に絶えるまでイスラエルは攻撃を続けるつもりだろう。同じことはヨルダン川西岸でも言える。 こうしたパレスチナ問題を生み出した原因は1917年に出された「バルフォア宣言」にあるとも言われている。イギリスのアーサー・バルフォア外相(当時)がロスチャイルド卿宛ての書簡で、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束したのだが、このバルフォア宣言を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーである。 パレスチナに「ユダヤ人の国」を作るという近代シオニズム運動を始めたとされている人物はセオドール・ヘルツル。1896年に『ユダヤ人国家』という本を出版、翌年には第1回シオニズム会議をバーゼルで開いている。その延長線上にバルフォア宣言はあるというストーリーだが、パレスチナに「ユダヤ人国家」を作るというアイデアはヘルツルの前から存在する。 例えば、1838年にイギリスはエルサレムにイギリスは領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、1840年になるとイギリスのタイムズ紙は、イギリス政府がユダヤ人の復興を考えていると報じている。 歴史を振り返ると、「ユダヤ人」がイスラエルの建国を望んだという「定説」には疑問がある。ナチによる弾圧の後でも、大多数のユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアなどへ逃げている。イラクに住んでいたユダヤ人も簡単に動こうとはしなかった。 テンプル騎士団の伝説、あるいは1620年にアメリカ大陸へ上陸したピューリタンの中に「ユダヤ人の国」をパレスチナに建設するべきだと考える人たちがいたという話を別としても、近代シオニズムが始まる半世紀以上前からイギリスの支配層はイスラエルの建国を計画していたことを軽視するべきではない。シオニズム運動を作り出し、ユダヤ人を利用してイスラエルなる国をパレスチナに建国しようとしたのは誰なのか? 現在、ナトーレイ・カルタなどユダヤ教の一部宗派は、イスラエルやシオニズムをユダヤ教と対立する存在だと主張、パレスチナ人と連帯する活動を続けている。この宗派もシオニズムの胡散臭さを感じているのだろう。 さて、今回計画されていたガザ支援活動は、ギリシャ当局によって妨害されている。その命令を無視してガザへ向かおうとしたアメリカの船はすぐ沿岸警備隊に阻止され、ジョン・クラスマー船長は逮捕されている。弁護士のリチャード・レビによると、ベッドもトイレもない留置場の中、食べ物や飲み物も提供されずに拘束されているという。 そのギリシャは現在、財政破綻で苦境にある。巨大金融機関、ゴールドマン・サックスがギリシャの腐敗した支配層と手を組んで国を借金漬けにした。借金の急増を国民やEUに知られないようにしつつ、投機集団からカネを受け取り、その代償として公共部門の収入を差し出すという構図で、庶民を劣悪な環境でこき使おうしている。 そう言えば、テンプル騎士団を史上最初の巨大金融機関と表現する人もいる。
2011.07.04
リビアの内戦が泥沼化、出口の見えない状態になっている。「飛行禁止空域」を設定して「市民を守る」ということで軍事介入は始まったが、実際はまったく違った展開になっている。 NATO軍は親政府派を激しく空爆しているが、そのときに市民を「誤爆」して犠牲者を出しているほか、アルカイダ系の集団を含む反政府派へ武器を供与している。7月1日には最高指導者のムアンマル・アル・カダフィ大佐はヨーロッパへ報復すると警告している。 第2次世界大戦後、NATO加盟国には「秘密部隊」が設置され、イタリアでは左翼グループを装って爆破事件を繰り返した。フランスでは大統領暗殺未遂事件に関係していたと可能性が高い。つまり、リビアと戦っているNATOも西ヨーロッパ諸国にとって警戒すべき対象であり、カダフィ大佐の発言に驚いていては西ヨーロッパで生活できない。 イタリアのジャーナリスト、フランコ・ベキスによると、リビアの内乱を仕掛けたのはフランスだという。発端はリビアの儀典局長だったノウリ・メスマリの亡命で、アフリカの利権を維持するためにこの亡命を利用できると考えたのだろう。 中東や北アフリカの地下には石油が存在、世界支配の源泉になっているのだが、アフリカの中南部には金、ダイヤモンド、レアメタルなどの資源がある。こうした地域が自立できるように支援しているリビアのカダフィ体制を転覆させる必要があるというわけだ。そうした政策の一例がRASCOM(アフリカの衛星通信機構)の設立支援だ。 3月21日付けのフィナンシャル・タイムズ紙によると、リビアの中央銀行が保有する金の量は少なくとも143.8トンを保有する。石油や金を使ってアフリカから欧米を追い出そうとしているのかもしれない。 4月の段階で「カダフィ後」のリビアにNATOは地上軍を派遣するのではないかという観測が流れ、5月にはイギリス兵を思われる集団がリビアで目撃されている。そして7月1日にロシアのドミトリー・ロゴジンNATO特使は、地上軍を派遣する動きが出ていると発言している。 カダフィ大佐を暗殺できれば、それ以降は「カダフィ後」になる。そこで大佐を暗殺しようと必死になっているのかもしれない。
2011.07.02
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