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水素は脱炭素目指す世界では、エネルギーキャリアとして期待されています。これまで様々な水素の生成法、採掘法について書いてきました。水素H2エネルギー⑦天然に水素が存在する→2024/2/12ブログ水素H2エネルギー⑥化石燃料から水素をつくる…CO2回収→2024/2/4ブログ水素H2エネルギー⑤化石燃料から水素をつくる→2024/2/3ブログ水素H2エネルギー④「水素H2エネルギー①~③」のまとめ→2024/2/2ブログそのようにして取り出した水素をいかに貯蔵するか、多くの課題があります。「アイアール技術者教育研究所」の記事を利用してまとめます。3分でわかる技術の超キホン 水素の貯蔵方法と貯蔵材料課題①水素H2を容器に貯蔵する:漏洩しやすく沸点が低い現在流通している水素の大部分は、圧縮水素または液化水素として貯蔵されています。(1)高圧水素をタンクにためる水素は高圧で保存すると体積を減らすことができます。しかし容器金属の水素浸食や水素脆化がおこり、漏洩(ひいては爆発)の危険があります。そのため、容器は肉厚のとなり、重くなります。水素ステーションでは特殊なステンレス鋼(18%クロム(Cr)と8%ニッケル(Ni)の鉄合金など)が使用されます。また自動車用水素タンクでは金属、樹脂、炭素繊維など特性が異なる材料を組合せた複層構造が使われます。(2)液化水素で圧縮水素より高密度に保存する水素は液化すると体積が約800分の1となり、圧縮水素より高密度に貯蔵できます。しかし、液体水素の沸点は常圧で-253℃。この温度以下に冷却しなければなりません。貯蔵容器には低温で使用可能なステンレス鋼やアルミが使用され、-253℃を保持するために、真空断熱や多層断熱材等が使用されます。それでも蒸発します。蒸発した水素を圧縮水素として貯蔵するか、安全に排気する設備が必要になります。課題②水素吸蔵材料:水素の貯蔵と放出に使うエネルギーが大きい(1)水素球場合金の代表的はニッケル水素電池の負極に使用されるLaNi5H6があります。水素吸蔵合金では、加圧すると合金中に水素が吸蔵され、水素を吸蔵した状態から減圧すると水素が放出されます(下図)。3)佐藤、折茂「安全かつ高密度に水素貯蔵を実現する材料」応用物理 90(2021) 570-573水素吸蔵合金は、圧縮水素よりも低圧で水素を貯蔵できる、水素放出速度が緩やかといった特徴があります。ボンベに吸蔵合金をつめて利用しますが、安全性は高圧水素より高く、期待されています。(2)水素化マグネシウムMgH2MgH2は、マグネシウム(Mg)に高温高圧化で水素を反応させて作ります。水素の質量密度が高く、常温常圧の大気下でも安定な物質です。水素を放出するには400℃まで加熱して放出。水と反応させてMgH2 + 2H2O → Mg(OH)2 + 2H2 のように発生させる材料が開発されています。(3)錯体水素化物錯体水素化物は、水素を含む錯イオンと金属イオンが結合した材料です。高密度に水素貯蔵ができます。代表的な物質の一つがLiBH4で、全個体電池の電解質材料としても利用が期待されています。しかし、水素が他の構成物質と強く結合しているため、水素放出時に高温加熱が必要です。(4)アンモニアNH3アンモニアは窒素N2と水素H2から合成する方法が確立されています。N2 + 3H2 ⇄ 2NH3 (ハーバー・ボッシュ法)アンモニアは沸点が高い(-33℃)ので液体水素より保存が楽です。水素を取り出すには触媒と高温が必要ですが、そのまま燃料として直接燃焼させることができます。(5)メチルシクロヘキサンC7H14(MCH)メチルシクロヘキサンはトルエンに水素付加して得られます。どちらも常温で液体です。水素を1/500の体積で保存できます。水素放出にはMCHを300℃以上で触媒を使って反応させます。(6)j吸蔵材料の吸蔵密度佐藤、折茂「安全かつ高密度に水素貯蔵を実現する材料」応用物理 90(2021) 570-573多くの吸蔵材料は液体水素より体積密度が高い。つまり、同じ容量のタンクにたくさん貯蔵することができます。質量密度については、原子量の小さい原子を使った吸蔵材料が高くなるようです。多くの材料において水素の吸蔵と放出には高温が必要で、そのための設備とエネルギー低減が課題です。
2024.02.20
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なんと天然の水素も存在します。最も軽い気体ですから、地上に出てきたとしても、あっという間に宇宙空間に逃げ去ってしまうのではないかと思っていました。天然水素の貯留、回収についての記事を見つけましたので紹介します。天然水素の動向 2023/08/31 JOGMEC 小杉安由美こちらの記事から改変・転載①天然水素は多くの地域で確認されている天然水素は、トルコ、オマーン、スペイン、日本(長野県白馬八方温泉)等の世界各地、陸上のみでなく海底(中央海嶺付近の熱水鉱床)においても観測されています。しかし、メタンやヘリウムと混合していることが多く、高純度の水素ガスは珍しいそうです。次の地図は天然水素の分布です。意外に確認されているのですね。②年間水素生産量は天然ガスに比べて少ないけど…全球規模での年間の水素生成量を試算した研究例があります。(下表)。研究によって、対象とする生成場やプロセス、計算方法は異なっており、その結果は数万~数千万ton/yearと幅があります。最も楽観的に見積もられているZgonnik (2020) [6] においては、22,680千ton/yearと見積もられています。これは体積に換算すると254 ±91 Bm3/ year (8.97 ± 3.21 Tcf) であり、天然ガスの世界生産量(2019年)の4.1 Tm3 (145Tcf) と比較すると2桁も小さい数字です。しかし、有機物を原料として、続成作用によって生成するまでに非常に長い時間のかかる化石燃料に対して、天然水素は比較的早い反応速度で長期にわたり連続的に生成し続けていることを考慮すると、大量に存在している可能性はあると考えられるそうです。③水素はどのように生成したか(3つのメカニズム)1)水の放射性分解である。岩石中に含まれる微量のウラン、トリウム、カリウム等の放射性元素の壊変により発生する放射線によって水が分解され水素が発生します。2)蛇紋岩化反応:かんらん岩等が変質して蛇紋岩となる際に、水素が発生します。3)水素を大量に含む地球深部のコアや下部マントルから排出された水素が、プレート境界や断層に沿って浅部まで上昇したものです。④利用できそう?③のように生成した水素は天然ガスを貯留する岩盤にたまり、天然ガスと同じように回収できそうです。マリのBourakebougouの例があるマリの首都Bamakoの北部50キロメートルに位置する鉱区(Block25)は、1987年に水井戸掘削の際に水素が発見されたBourakebougouを含む面積43,000平方キロメートルの広大な鉱区です。2017年から2018年にかけて24本(計6,953メートル、深度100~1,800メートル)の試錐を実施しており、2022年5月より新たな試錐も実施しています。2011年にHydroma社がリエントリーし、生産した水素を直接燃焼して発電し、近隣の村に提供するパイロットプロジェクトを2012年から開始し、現在まで電気の供給を続けています。天然水素の利用は始まったばかりですが、天然ガスにくらべて、埋蔵量は少ないものの何億年もかからず生成するので、意外に利用が進むかもしれない。
2024.02.12
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JAXA(宇宙航空研究開発機構 )は2月1日、月面に着陸した月探査機「 SLIMスリム 」が1月31日午前9時頃に運用をいったん終え、電源をオフにする「休眠」状態に入ったと発表しました。太陽電池が発電できない夜を迎えたためで、SLIMが日没直前に撮影した月面の画像も新たに公開しました。月の夜は約2週間続き、昼は約110度以上ある月面温度は氷点下170度まで下がります。夜が明ける2月中旬以降、電源をオンにして再起動する予定だが、温度差200度以上の過酷な環境下では電子機器が壊れる可能性が高く、復活するかどうかはわからないとのことです。もうすぐ、月では日の出です。再起動できることをいのります。これまでのJAXA報告月面探査機SLIMは1月20日、世界初のピンポイント着陸に成功しました。着陸用エンジン1基の不調で月面にひっくり返っていましので、太陽電池に光が当たらず「休眠状態」となっていました。月探査機SLIM:着陸エンジン一基損傷も予定地点をはずさず着陸→2024/1/25ブログ月にはSLIMがいる:小型月直陸実証機軟着陸成功→2024/1/20ブログ太陽光があたり、発電が開始されると、休眠を解き、探査活動が始まります。「昨夜1月28日11時ごろ、SLIMから通信が届き、運用を再開した」と、JAXAはXで報告しました。月探査機SLIMが復活→2024/1/29ブログ
2024.02.10
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メタンを原料とし、水蒸気を使用して合成ガス(水素H2および一酸化炭素CO)を得る「水蒸気改質法」は実用化されていますが、二酸化炭素CO2が発生します。水素H2エネルギー⑤化石燃料から水素をつくる →2024/2/3ブログまた石油や石炭など「化石燃料」と呼ばれる燃料をエネルギーとして使う火力発電でも、CO2が多く排出されます。そこで、水素製造や火力発電のCO2排出量をおさえるため、「CCS」「CCUS」という取り組みの開発が行われています。《CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)》「二酸化炭素回収・貯留」技術です。以下の図は「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」」資源エネルギー庁からこの技術は水素精製工場や発電所などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入する方法です。課題(1)CO2を他の気体から分離させて回収する時にかかるコストです。CO2を吸収する液体を使って化学的に分離する方法、特殊な膜を使ってCO2だけを分離させる方法、固体吸収材を使う方法などがあり、コストも含めた実用的な技術の確立に向けて、研究が進められています。経済産業省が開発を支援した固体吸収材を使って、これまでの技術の半分以下のコストでCO2を分離・回収することを目指すべく、関西電力の舞鶴発電所で実証試験をおこなうことが決まりました。課題(2)CO2を貯留するための地層を見つけること日本では、2012年から、北海道・苫小牧でCCSの大規模な実証実験がおこなわれています。2016年度からは、港内の海底の下にCO2を高い圧力で貯留する作業を開始しました。製油所から供給されたガスの中からCO2とそれ以外の気体を分離し、海底の深くに掘った井戸に、年10万トン規模のCO2を3年間埋めこむ計画です。終了後は2年間、CO2が漏れ出さないようにモニタリングする予定です。《CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)》分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれています。CO2貯留が実現できる上に、石油の増産にもつながるとして、ビジネスになっています。また、化学原料の生産に使われることが考えられているほか、ユニークなところでは、太陽光エネルギーをつかってCO2を燃料に変換する藻を育て、バイオ燃料として利用しようという研究もおこなわれています。CCSやCCUSは水素生産で生じるCO2を排出しない「ブルー水素」にあたります。水素H2エネルギー⑤化石燃料から水素をつくる →2024/2/3ブログ
2024.02.04
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※Iwatani 「水素の製造方法」から太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを利用して水の電気分解で製造した、CO2を一切排出しない水素は「グリーン水素」と呼ばれています電気分解による製法は水素H2エネルギー③水素の作り方1電気分解 →2024/1/15ブログ石炭や天然ガスなどの化石燃料を原料に、高温で分解・改質して水素を製造する方法は製造時にCO2を発生することから「グレー水素」と呼ばれています。化石燃料から製造し、発生したCO2を回収して地中に貯留したり、利用したりする「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」や「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」技術と組み合わせることで、CO2排出量を削減した水素を「ブルー水素」と呼ばれます。ここでは、化石燃料から水素を合成する「グレー水素」と「ブルー水素」について書いていきます。「CO2の回収・貯留・利用」については次回です。水蒸気改質法メタンを原料とし、水蒸気を使用して合成ガス(水素H2および一酸化炭素CO)を得る方法で、最も一般的な工業化された水素製造です。天然ガス(CH4主成分)は下図左上から導入します。「Desulfurization」で硫黄化合物や塩素化合物は触媒毒になるので取り除きます。「Steam Reforming」(右上)で、天然ガスにスチームを加え、高温下(750~900℃)で改質して水素や一酸化炭素などを生成します。CH4 + H2O ⇄ CO + 3H2 + 206kJ/mol「Waste Heat Boiler」(中央)で200~350℃まで冷却され、次のCO転化工程に送られます。この「Waste Heat Boiler」発生したスチームの大部分は改質用スチームに利用されます。「Shift Conversion」(左下)はCOシフト反応といいます。さらに水素を生産します。CO + H2O ⇄ CO2 + H2 -41.2kJ/mol 「PSA Unit」(右下)で水素を分離します。冷却されたプロセスガスは凝縮水を分離した後にPSAユニット(PSA Unit)に供給され、水素と他のガス(CO/CO2/CH4/N2/H2O)を分離します。分離された水素は製品として外部に送られます。残ったガス(Waste Gas)には水素やCO/CH4などが含まれており、水蒸気改質炉の燃料として再利用されます。※PFD&Process国内のほとんどの水素がこの方法で作られています。
2024.02.03
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これまで「水素H2エネルギー①~③」のまとめ水素エネルギーはCO2排出削減というより、日本の「エネルギーミックス」の1要素として解発するのがいいと考えています。水素H2エネルギー①昨今のエネルギーを見る→2024/1/7ブログ①では、エネルギーの現状を確認します。もちろん「水素エネルギー」は現在のエネルギーミックス要素ではありません。水素H2エネルギー②1970年代までは水素H2とCOが都市ガスだった →2024/1/9ブログかつて、水素と一酸化炭素を都市ガスとして供給していました。今はメタンCH4と地域によりプロパンC3H8です。水素H2エネルギー③水素の作り方1電気分解 →2024/1/15ブログ③以降は水素の作り方。電気分解の触媒や条件の新しい研究や産業ベースでの開発を紹介します。今後は、電気分解以外の水素の作り方や貯蔵、運搬、利用について書いていこうと思います。
2024.02.02
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