人を食った話

「おふくろの味、覚えてるか？」

「よくスネかじったよな」

「俺たち血を分けた兄弟だしな」

「まあ、指をくわえて見てろ」

「こりゃ脇が甘いな」

「ツメも甘いな」

「耳を傾けて、と、」

「鼻をへし折る」

「口がうまいよな」

「口がすっぱくなるぞ」

「思ったより舌が肥えてるよな」

「眼も肥えてるよ」

「舌の根も乾かぬうちに、」

「舌を巻く」

「あれ、眼が離せないな」

「眼を引くんだよ」

「そして眼をむく」

「眼もくれなきゃ、」

「眼を盗むってか、好きだな」

「腹を割って話そうや」

「知らないうちに足を引っ張ったな」

「今のうちに足洗った方がいいだろうな」

「揚げ足を取るなよ」

「おっと玉にキズだ」

「結構、頭がかたいな」

「もうちょっと頭をひねろよ」

「俺は首をひねるな」

「首が回らないんだ、助けてくれよ」

「ちょっとこっちは今、手が離せないんだ」

「もっと手を回せよ」

「あれ、手を抜いたな」

「手を焼くよな」

「爪の垢もせんじて飲むよ」

「腰を抜かして、」

「けつをまくって、」

「二人で腹のさぐりあいだな」

「キモをつぶして、」

「キモを冷やして、」

「キモ煎りだな」

「結構、骨が折れるなあ」

「罪を憎んで人を肉まん」