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日本では法律に抵触するタイトルだが、違反と知りつつ長年渇望していたSACDのリッピングがやっとできるようになった。昔はPS3でSACDのリッピングができるということを知っていて、対応するバージョンのPS3を探していたが、なかなか見つからずそのうち忘れてしまっていた。ところが最近パイオニアとOPPOのBDプレーヤーを使うとリッピングができることが分かった。OPPOは高いので、手ごろなパイオニアのBDP-160か170を狙っていたが、既に生産中止であり、BDP-160の中古もプレミアがついてなかなか手に入れにくくなっていた。いつぞやamazonで割と安い価格で中古が売られていたが、少し色気を出してヤフーオークションで落とそうと思った。実際やってみると、そうは問屋が卸さず、値段が釣り合わなくなり、結局途中で降りてしまった。件のamazonの中古はすでになくなっていて、仕方がないので4000円ほど高い中古を購入した。ところが、これがとんだ食わせ物だった。何しろトレイが動かない。この機種では有名な故障らしいが、結局トレイ開閉用のゴムが劣化で変形していたことが分かった。本当は業者に送り返して直してもらってから再度送ってもらえばよかったのだが、生来気が弱いので、相手の言うままにメーカーとの相談から見積もり、修理までやらされてしまった。欲しかったので仕方がないが、我ながら情けない。修理から戻ってきたのでチェックをしたら正常に動作している。ところが、USBを使おうとしたらうまくいかない。説明書をよく読んだらUSBのフォーマット形式に制限があることを知り、フォーマットしなおしたらうまくいった。原理としては、概略下記のようになる。①USBにスクリプトを組む。②USBをBDプレーヤーに接続する。③PCにDSD抽出用ソフトをインストールする。④BDプレーヤーにSACDを入れて、トレイを閉める。⑤PCのDSD抽出用ソフトを起動する。⑥SACDのDSDファイルがPCにコピーされる。※導入方法はこちらのサイトに詳しい。抽出ソフトはSACD_EXTRACTというソフトで、DSDの二つのファイル形式とISOファイルに対応している。最初コマンドを間違えてISOファイルを抽出してしまい、ISOをDSDに変換するソフトも入れなければならなかったが、オプションのつけ方を変えて本来欲しかったDSFファイルをゲットできた。抽出時間は1時間はかかっていないと思うが、これも速いPCを使っている御利益だろう。TAGはMP3TAGで付けられるので、全く問題がない。一番の問題は、どのデバイスでも再生できるというわけではないので、とりあえず今はネットワークプレーヤーで再生している。通常はiPadのFlacでの再生なので、本当はiPadで再生できればいいのだが贅沢は言ってられない。ここまでは、順調に来たのだが、一つまずいことに気が付いた。上記の問題があるので、どこでも同じ音源を聴くには、CDのファイルとSACDのファイルの二つをリッピングしなければならないことだ。DSDはファイルサイズが大きいこともあり、対策を考える必要があるかもしれない。もう一つ、DSDを抽出しているときエラーが出たらどうするかも、考えなければならない。「めでたしめでたし」と思って次の日に別なSACDのリッピングをしようとしたらBDプレーヤーの電源が入らない。ACコードを何度か抜き差ししたら、電源が入った。最初に動かしたときも、同じ現象が出て、その現象が再現したわけだが、この機種特有の病気のようだ。電源をOFF/ONすると発病するので、今後辛抱強く付き合っていくしかないようだ。昨日せっかく気分が高揚したのに、がっくりしてしまった。今日何枚かやってみたが、抽出はなかなか快適にできる。DSDだとS/Nがいいのはわかっているが、Flacよりも遥かにいいというわけではないので、この方式は、お金と時間を使った割には、あまり活躍する機会はなさそうだ。
2018年06月12日
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この季節に恒例の山中千尋の新作を聴く。今回はいつものPresto Musicからのリリースがなかったため、次に安い ProStudioMasters から税抜きC$13.49で入手した。彼女自身のコメントや演奏については、ユニバーサルのサイトにアップされているので、参考にしてみてはいかがだろうか。今回のテーマはピアニストのバド・パウエル(1924-1966)の生誕100周年と同じ年に生まれた作曲家のヘンリー・マンシーニ(1924-1994)の特集だ。マンシーニが亡くなったのはつい最近のことのように感じていたが、実際にはもう30年も経っているとは驚きだ。月日の経つ速さに、自分が年を取ったことを実感する。彼女のコメントによると、「最初は全編バド・パウエル作品集にすることも考えましたが、それならプレイリストやコンピレーションでパウエル本人の演奏を聴いたほうが良い。より自分らしさを打ち出すアルバムにしたいと考えた結果、この構成になりました」とのこと。また、パウエルを聴くようになったきっかけは、「私はイリアーヌが演奏する『Hallucinations』(アルバム『クロスカレンツ』)やジェリ・アレンが演奏する『Oblivion』(アルバム『イン・ザ・イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』)を通じてパウエルの曲作りに関心を持ち、晩年の演奏も含めて聴くようになりました」とのこと。多くのジャズファンがブルーノートやヴァーヴの作品から入る中、彼女のアプローチは非常にユニークだ。プログラムは、パウエルの曲が4曲、マンシーニの曲が2曲、オリジナルが3曲、そして坂本龍一の曲が1曲という構成だ。パウエルはブルーノートの代表的な2曲と、ヴァーヴの『The Genius Of Bud Powell』からのもので、後者は筆者には馴染みが薄い。「Tempus Fugit」と「Un Poco Loco」は、どちらも快速調でダイナミックな演奏ながら、重量感も感じられる。「Un Poco Loco」ではデイヴィスがカウベルを多用していて、少しうざいと感じる場面もある。「Hallucinations」はテンポを落とし、ニューオーリンズの喧騒を思い起こさせる陽気なマーチに変身していて、踊りだしたくなるような演奏だ。中間部ではそれまでのムードを引き継いだドシャメシャなドラムソロが入る。「Oblivion」も速いテンポで一気呵成に進む。バップ・イディオムの息もつかせぬピアノ・ソロが見事で、カーターのドラム・ソロも曲調に合わせたエネルギッシュなものだ。坂本龍一の「Ai Shiteru, Ai Shitenai」は、坂本の追悼のために入れたのだろうか。愁いを帯びたメロディーがエレクトリック・ピアノの上で進行するスタイリッシュな曲で、こうしたポップな曲を演奏させたらジャズ界では彼女の右に出る者はいないだろう。オリジナルの「Carry On」は、『今回が26枚目のアルバムということで、クオーター(25)という節目を終えて、新たなフェーズに入るという決意を込めて書きました』とのこと。バックでシンセが鳴っており、本来は中間部の3拍子のメロディーがメインテーマだったそうだ。スタイリッシュなメロディーがなかなか良いのに、出来上がったテーマがいまいちでスイッチした理由を知りたいところだ。「Horizon」はブラジル音楽の影響を受けたリズミックかつ抒情的な曲で、暗いところから夜が明けていく情景を描写している。騒がしい曲が多い中で、爽やかな気分を感じさせる1曲だ。マンシーニの「ムーン・リバー」と「ひまわり」は彼の代表作で、聴き手がよく知っているだけに、演奏者にとってはやりにくいのではないかと感じたが、山中の演奏は一切のてらいがなく、重量感がある堂々たるジャズに仕上がっていた。ドラムスの激しい打ち込みから始まる「ムーン・リバー」は、曲のイメージとは異なる硬質でエネルギッシュな演奏で、ハードなピアノのアドリブもぐいぐい進む。「ひまわり」ではテーマの一部音を変えているが、その理由は不明だ。ドラムが忙しなく、ラッセル・カーターは少し叩きすぎている印象がある。録音は先鋭さには欠けるが、厚みと重量感のあるサウンドで悪くはない。オーバーレンジ気味で、ところどころピアノの歪みが聞こえるが、その理由は不明だ。山中千尋:Carry On(Universal Music)24bit 96kHz Flac1.Chihiro Yamanaka:Carry On2. Henry Mancini:Moon River3. Bud Powell:Tempus Fugit4. Ryuichi Sakamoto:Ai Shiteru, Ai Shitenai5. Bud Powell:Hallucinations6. Chihiro Yamanaka:The Horizon7. Bud Powell:Un Poco Loco8. Henry Mancini:Sunflower9. Chihiro Yamanaka:Stride10. Bud Powell:OblivionChihiro Yamanaka(p,key)Yoshi Waki(b)John Davis(ds except track 1,10) )Russell Carter(ds track 1,10)
2024年10月28日
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コテンポラリー・レコード設立70周年を記念して、このレーベルに残したオーネット・コールマンの2枚のアルバム「Something Else!!!! 」(1958)と「Tomorrow is the Question! 」(1959)をまとめた記念ボックスがリリースされた。タイトルが「Genesis of Genius」(天才の創世記)とは、なんと大げさなと言いたいところだが、オーネットは初めからオーネットだったということが分かった。今回の録音はCDとデジタル版のためにオリジナル・テープを新たにハイレゾ化し、バーニー・グランドマン(1943-)によるマスタリングを行った。CDとVinylにはグラミー賞受賞の音楽史家アシュリー・カーンによる写真と詳細なライナーノーツを含む32ページのブックレットが付いている。残念ながらハイレゾには添付されていない。まあ、価格が段違いなので仕方がない。管理人はpresto musicのK国サイトから国内の1/4程で入手。バーニー・グランドマンはコンテンポラリーやA&Mでマスタリングエンジニアとして在籍したことがあり、今回のリマスターには適役だろう。管理人はコールマンはこの後のアトランティックからしか知らないので、初期のコールマンを知るという目的もあり、購入した。フロントはどちらもコールマンとドン・チェリーで、古いほうがクインテット、もう一方はピアノレス・カルテット。個人的には、ピアノがないほうがコールマンの音楽のエッセンスが分かる気がする。フロントは殆ど遊びにも似た自由なプレイで、聴き手にもその楽しさが伝わってくる。特に「Chippie」、「The Sphinx」などの速いテンポの曲でのコールマンのソロには圧倒される。それに比べるとトランペットは幾分小粒。カリプソ風の「Jayne」の明るさも楽しい。「Tomorrow Is the Question」は、騒々しい「Something Else!!!! 」に比べると、ブルースやスローな曲もあり少し落ち着いた雰囲気。それでもコールマンの太く逞しい音と、怪物的なソロには度肝を抜かれる。今聴いても、全く古さを感じさせないのも驚異的。サイドマンは「Tomorrow Is the Question」のシェリーマンのドラムスと後半の3曲に参加しているレッド・ミッチェルの重量感のあるプレイが目立っていた。「Something Else!!!! 」のウォルター・ノリスのピアノは古ぼけて少し引っ込んでいる音で精彩がない。またプレイがハード・バップそのもので、フロントのプレイとはだいぶ違っている。また、ビリー・ヒギンズのシンバル・ワークもうるさい。全体的には作品を含め、楽天的な気分が感じられ、アトランティックでの生真面目さはなく、楽しく聞くことが出来た。伝説の録音エンジニアであるロイ・デュナンの手になる録音は、全体に軽い音で、低音が幾分不足気味ではあるが、響きが整理されていて、ノイズが少なく、とても聞きやすかったことを覚えている。さながらアメリカ西海岸の空気を感じさせるパリッとした録音。LPやCDだと、細身の音だったと思うが、今回は音が太く力がある。押しつけがましさはなく、ノイズ感も少なく、ハイレゾ化がいい方向に作用したのだろう。新しいためか、「Tomorrow Is the Question」のほうが、音の鮮度、広がりとも上だ。例えば「Lorraine」でのシェリー・マンの鼻歌交じりのソロでの、太鼓の皮の振動が実にリアルに感じられる。「Tomorrow is the Question! 」は平面的な音場で、悪く言えば養鶏場のようにぎゅうぎゅう詰めでひしめき合っているような雰囲気がする。参考までに、Rhinoから出ているアトランティックのコンプリート盤「Beauty Is a Rare Thing」から2枚ほど聞いたが、ノイズが多く、音もあまり鮮明ではなかった。このボックスもハイレゾ化されていることを知ったが、今のところ高くて手が出ない。Ornet Coleman:Genesis Of Genius(Craft Recordings CR03507)24bit192kHz Flac1.Invisible2.The Blessing3.Jayne4.Chippie5.The Disguise6.Angel Voice7.Alpha8.When Will the Blues Leave?9.The Sphinx10.Tomorrow Is the Question11.Tears Inside12.Mind and Time13.Compassion14.Giggin'15.Rejoicing16.Lorraine17.Turnaround18.EndlessOrnette Coleman(as) Don Cherry(cornet) Walter Norris(p track1-9) Don Payne (b track1-9) Percy Heath (b track10-15) Red Mitchell (b track16-18) Billy Higgins(ds track1-9)Shelly Manne (ds track 10-18) Recorded February 10 & 22, March 24, 1958(track1-9)January 16, February 23 and March 9–10, 1959(track10-18)at Contemporary's studio in Los Angeles,USA
2022年04月08日
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ジャズ・ジャパンの145号のジャズ・チャートを見ていて、ケイティ・ジョルジュというカナダの歌手の国内盤が山野楽器のチャートでトップになっていることを知った。発売元はMUZAKで、早速調べてみた。海外盤の「No Bounds」というデビューアルバムに「Now Pronouncing」というEPが組まれた「ポートレイト・オブ・ケイティ」という国内仕様のアルバムだった。gyorgyという姓なので、ハンガリー系なのかもしれない。試しにBandcampで調べたところ、ロスレスながら、どちらもラインナップされていて、「No Bounds」が8$、「Now Pronouncing」が何故か$10だった。「Now Pronouncing」はQobuz USでもリリースされていて、確か$5台の筈。なので、MUZAKの「ポートレイト・オブ・ケイティ」のほうが解説もついている筈だし、コストパフォーマンスがやや高い。取りあえず今回は「No Bounds」をゲット。編成はギター・トリオというシンプルなもの。バックが簡素だと歌手の実力がもろに出てくるものだが、清潔感があり立派な歌だ。ハード・バップまっしぐらのヴォーカルで、今どきのロックやフォークなど、あれもこれもと浮気しない潔さが受けているのかもしれない。フレージングには白人系のジャズ歌手の影響が顕著にみられるが、独自のフレージングも聞かれる。声質はややハスキーがかっていて、歌い方に子供っぽいところが残っている。それが現在の彼女の魅力の一つになっているのだろう。スキャット自体はテクニックを誇示するようなものではないが、使い過ぎだ。歌をじっくりと聴きたいところで、ワンコーラスが終わるとすぐスキャットになってしまうので、またかと思ってしまう。スキャットのフレージング自体は、ときどきハッとするようなフレーズが聞かれることがある。プログラムはオリジナルが3曲に、古いスタンダードで構成されていて、多少レトロっぽいところがある。オリジナルは、ややレトロっぽいがジャズ・ヴォーカルの王道を行く作品。「Postage Due」の激しさ、日々の生活の中で出会う様々な人々について書かれた「A Certain Someone」、美しいバラード「Undefined」と他のスタンダードと並んでいても見劣りしない。スタンダードはありきたりではなく、彼女の個性が光る。ミディアムテンポの「East of The Sun」の独特のバウンス感覚や、「I Can't Get Started」での乾いた抒情など、なかなか新鮮に響く。ギターはジョスリン・グールド。カナダのカルガリー出身。趣味のいいギターで、積極的にヴォーカルに絡むのも気持ちがいい。活動をスタートさせたのが2020年からで、同年には早くもデビューアルバム「Elegant Traveler」をリリースしている。これは JUNO's - Canada’s major music awardsの「Jazz Album of the Year」にノミネートされている。今年早くも第2作目「Golden Hour」がリリースされていて、注目されているギタリストなのだろう。トロント出身のベースとドラムスも堅実なサポートぶり。特にThomas Hainbuchのベースが、かなり強力。「Undefined」でのベース・ソロは訥弁スタイルの素朴なものだが、ギターのコンピングと絡んでなかなか味わい深い。ということで、デビューアルバムとしてはかなりの水準で、聴き手は心が温かくなることを感じるに違いない。バンドルとはいえ国内盤がジャズ・チャートのトップになるのも頷けるというか、日本のジャズ・ファンの趣味の良さを感じる。Bandcampでは何故か全7曲中4曲も無料ダウンロードできるので、ご興味のある方はダウンロードしては如何だろうか。Caity Gyorgy:No Bounds(Caity Gyorgy REcords)16bit 44.1kHz Flac1.Caity Gyorgy:Postage Due2.Brooks BowmanEast of The Sun3.Vernon Duke:I :Can't Get Started4.Caity Gyorgy:A Certain Someone5.Jimmy McHugh:I Can't Give You Anything But Love6.Caity Gyorgy:Undefined7.Ray Henderson:Bye Bye Blackbird Caity Gyorgy(vo)Jocelyn Gould(g)Thomas Hainbuch(b)Jacob Wutzke(ds)
2022年08月25日
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ユージンコーポロン指揮ノーステキサス・ウインドシンフォニーのGIA WINDWORKSへのラスト・レコーディングの残りの一枚。2019年から2021年に発表された最新作が集められている。この前取り上げた「Sphere」よりいい曲が揃っていて、聴きごたえがある。James M. David(1978-)のウインド・アンサンブルのための交響詩「Flying Jewels」はデヴィッド・ギリングハムのようなダークなサウンドが特徴。彼はこれまでに数々の作曲賞を受賞しており、作品は世界中で演奏されているそうだ。現在、コロラド州立大学の作曲と音楽理論の准教授を務めている。この曲はブライアン・ドイル(1935-)のエッセイに基づいている。このエッセイではヨーロッパ人が北アメリカで初めてハチドリに出会った際に彼らがハチドリをどのように表現したかが語られている。ハチドリは脈拍が「1秒に10回」で、どれだけ強烈で情熱的に生きているかを示しているという。木管の超高速のパッセージがハチドリの高速で動く羽を思い起こさせるようだ。中間部のゆったりとした中間部では、ブルーホエールの1分にわずか8回しか鼓動しない様を表している。少し憂いを帯びた旋律が美しい。後半またハチドリのテーマが返ってくるが、そこにブルーホエールのゆったりとした旋律が重なり、感動的なコーダでエンディングを迎える。金管と木管の対比が素晴らしく効果的で、後半のトロンボーンのサウンドが実に爽快。エンディングのトランペットも実に鮮烈だ。難曲ではあるが今後流行ること必至だろう。「カリブの子守歌」はキューバのハバナで生まれたサックス奏者で作曲家のパキート・デリベラ(1948-)の作品です。ラテンジャズの大御所らしいが管理人は聞いたことがない。リーダーアルバム多数で、グラミー賞も10回以上受賞しているようだ。この曲はジャズ的な要素はなく純粋な吹奏楽のオリジナル。最初に現れるワルツや愁いを帯びたラテン風な旋律がエキゾチックで印象的だ。ティンパレスなどのラテン楽器も使われ、トロピカル・ムードたっぷり。また楽器の使い方が巧みで、特に低音の木管楽器のサウンドが魅力的だ。テンポを速めた後半では木管アンサンブル中心の部分が、サウンド音楽とも実に素晴らしく、この曲も流行る可能性十分だ。ジョゼフ・トゥリンの「And yet your touch upon them will not pass」はConrad Aikenの詩「Bread and Music」の一節からとられた。コーポランの教え子で指揮者のJoan DeAlbuquerque(1967 - 2021)の思い出のために作られた5分ほどの曲。曲の中ではJoan DeAlbuquerqueからとられた音列が使われている。晩秋を思い出させるような哀切に満ちた調べに、時折痛切な響きも聞かれる。グレッグソンのユーフォニアム協奏曲は交響楽団、吹奏楽団、ブラスバンドそれにピアノ伴奏版という4つの編成がある。ユーフォニアムはサウンドがぼんやりしているので、訴える力が弱い気がするが、この曲はヴァラエティに富んだ曲想で大変大白い。特に低音をバリバリと響かせているのは珍しい。最後の「ケルトのバッカナール」はまさに手に汗握るという感じでぐいぐいと迫ってくる。ソロは曲の献呈者であるデヴィッド・チャイルドで、彼は管弦楽伴奏での録音も残している。ユーフォニアムと言えばふやふにゃとしたビブラートの演奏を思い浮かべてしまうが、チャイルドの演奏はビブラートがなく、パリッとした鋭角的なサウンドで、この曲にふさわしい。マイケル・ドハティーの「American Gothic」は原曲(2014)が管弦楽で吹奏楽版は2019年に出版されいる。2楽章は作曲家自身、1、3楽章はDanny Galyenによる吹奏楽編曲である。この曲はアメリカの画家グラント・ウッドが1931年に書いた同名の油絵に基づく作品。第1楽章は作曲者の言葉によると、アイオワ州の田舎の風景を連想させる音楽とのことだが、管理人には東洋的な旋律と不協和音が鳴り響き、ドハティー一流のいかがわしさ満点の曲と感じた。リズミックでテンポの速い第3楽章はグラント・ウッドの「American Gothic」で描かれている三叉のピッチフォークのこと。フィドル(ヴィオリン)も加わった、アイオワの踊りの風景が見えるようだ。ここでも底抜けに明るい風景とは違う、苦みのあるテイストがドハティらしい。第2楽章は冬の風景を描いているが、まとも過ぎてあまり面白くない。録音はハーモニーが少し厚ぼったいが、全帯域にわたってエネルギー密度が高い。ノイズ感は皆無で、ダークなサウンドは曲にふさわしい。なお、ジャケットはグランド・ウッドのyoung corn(1931)で結構インパクトがある。North Texas Wind Symphony:Raspair(Gia Publications GIACD1125)16bit 44.1kHz Flac1.James M. David:Flying Jewels (2021)2.Paquito D’Rivera:Caribbean Berceuse (2021) | (b. 1948)3.Joseph Turrin:And yet your touch upon them will not pass (2021) | (b. 1947)4.Edward Gregson(trans. Jack Stamp):Euphonium Concerto (2020) | (b. 1945), trans. Jack Stamp Dialogues Song Without Words A Celtic Bacchanal7.Michael Daugherty(trans. Danny Galyen)American Gothic (2019) On a Roll Winter Dreams PitchforkDavid Childs(Euph track 4-6)North Texas Wind SymphonyEugene Migliaro CorporonRecorded University of North Texas Winspear Performance Hall, Murchison Performing Arts Center, October 29–November 1, 2021; April 8–11, 2022
2023年05月19日
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ロリンズの有名なヴィレッジヴァンガードでのライブのコンプリート盤がBlueNoteからハイレゾ化されたので早速入手した。もともとはケヴィン・グレイのマスタリングによるBlue Noteの「Tone Poet Vinyl」のシリーズの一つとしてリリースされたもの。その一環としてCDとハイレゾもリリースされたということらしい。今回の売りは初めて7.5ipsのマスターテープからマスタリングされたものであることだ。以前のものはマスターからコピーされたテープなどからマスタリングされたもので、その差は歴然としている。もともと評価の高い録音ではあるが、ここまで違うと評価もだいぶ変わってくるように思う。CDでは最初は1枚、後に2枚組となってリリースされていた。手持ちのコンプリート盤のCD(1999)を見ると、曲目数は変わっていないが、曲順は若干変わっているようだ。録音が失敗したという昼のギグ4曲も含まれている。また午後のギグでの録音は1枚目のCDのトップの「A Night In Tunisia」のみがクレジットされていて、残りの3曲は特にクレジットされていない。今回は残りの3曲も午後のギグと明記されているのは良かった。前述のCDを24bit、192kHzにリッピングしものと今回のハイレゾを比較してみた。全く別ものと言ってもいいほど、違いは大きい。CDもかなりいいのだが、ハイレゾに比べると埃っぽく、詰まったような音に聞こえる。また音の透明度、立ち上がりともハイレゾが優れている。なので、ロリンズのテナーの艶のあるサウンドと、いつもの豪放なプレイとは異なる鬼気迫るような演奏が聴き手に迫ってくる迫力は半端ない。エルヴィンのドラムもCDでは詰まり気味で、ハイレゾの鮮烈な音とはだいぶ違うとはだいぶ落ちる。ただ、鮮明過ぎて、シンバルがうるさく聞こえるが、この方が実演に近いのだろう。夜に比べると昼の音はやや落ちるかもしれないが、ヴァンゲルダーの言うような失敗テイクとは思はなかった。それがマスタリングのためなのかどうかは分からない。昼の部のドラムスのピート・ラロッカは録音当時デビューしたてだが、なかなか頑張っている。ベースはウイルビー・ウエアより昼のドナルド・ベイリーのほうがよく聞こえる。ということで、この演奏に親しんでいる方にこそお勧めしたいアルバムだ。Sonny Rollins:A Night at The Village Vangurd Complete Masters(Blue Note 6512251)24bit 96kHz Flac1.Sonny Rollins:Introduction 12.Burton Lane, Edgar "Yip" Harburg:Old Devil Moon3.Sigmund Romberg:Softly as in a morning sunrise (from The New Moon)4.Sonny Rollins:Striver's Row5.Sonny Rollins:Sonnymoon For Two6.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In Tunisia7.Vernon Duke, Ira Gershwin:I Can't Get Started8.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In Tunisia9.Cole Albert Porter:I've Got You Under My Skin10.Sigmund Romberg:Softly as in a morning sunrise (from The New Moon)11.Cole Albert Porter:What Is This Thing Called Love12.Jerome Kern:All the things you are (from Very Warm for May)13.Sonny Rollins:Introduction 214.Dizzy Gillespie:Woody 'n' You15.Miles Davis:Four16.Gene de Paul:I'll Remember April17.Ted Koehler, Harold Arlen:Get Happy18.Ted Koehler, Harold Arlen:Get HappySonny Rollins(ts)Wilbur Ware(b)Elvin Jones(ds)Donald Bailey(b track 3,6,9); Pete La Roca(track 3,6,9)Recorded November 3, 1957 at The Village Vangurd,NYC
2024年05月24日
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バッハ・コレギウム・ジャパンが盛岡に来たので観に行った。曲はヘンデルの「メサイヤ」全曲。演奏時間が130分で休憩を挟んで3時間余り。退屈するかと思ったが、そんなことはなかった。居眠りもしなかった。となりの人は寝ていたが。。。。この曲は全く知らないので、手持ちのアルヒーフのBOXに入っていたポール・マクリーシュ指揮ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズものを事前に聞いた。合唱のパートが一人というのが売り。さっぱりとした仕上がりで気持ちよく聴けた。今回の演奏では合唱18人(女声は5人づつ、男声は4人づつ)で、澄んだサウンドだった。ダイナミックスはそれほど大きくないが、不安定な部分はなく、最も光っていた。独唱陣では当ブログが知っているのは藤村実穂子だけだったが、発音がドイツ式の英語であまり明瞭ではないことや、あまり声を出していないように感じた。彼女は宗教曲の経験は長いのだろうか。ソプラノの森谷真理は内外のオペラで活躍しているようだ。時々オペラ的に盛り上げてしまうのはどうかと思うが概ね悪くなかった。二人の男性歌手ではザッカリー・ワイルダーの発音がはっきりしてもっとも聴き取りやすかった。曲は「メサイヤ」の前にウェルギリウス「牧歌」第4巻の「偉大なる出来事を歌おう」がバスのベンジャミン・ベヴァンにより朗読された。朗々とした声の朗読でびっくりしてしまった。肝心な歌は次第に尻すぼみになった感じがする。wikiによるとプーブリウス・ウェルギリウス・マーロー(Publius Vergilius Maro、紀元前70年10月15日? - 紀元前19年9月21日)は、ラテン文学の黄金期を現出させたラテン語詩人の一人だそうだ。鈴木の音楽は刺激的な表現はなく、テンポも中庸だったと思う。個人的には、もう少しシャープな表現が欲しいところもあった。オケは安定した伴奏だったが、ハレルヤでテュッティの中から飛び出してくる輝かしいトランペットの音を期待していたが、全体に埋もれてしまって聞こえてこないのが残念だった。第3部でバスのアリアでのオブリガート・トランペットもミスが多くがっくり。大体音自体が地味で、ヘンデルにはミスマッチといったら言い過ぎだろうか。演奏中オーボエの男の方の靴下に目が行った。赤地に太い黒の線が入ったチェックで、場違いではと思って周りを見たら、そうではなかった。男性は真っ赤なネクタイ、女性は赤いコサージュや髪留めを付けている方が多かったからだ。なるほどこれはクリスマスに因んだ演奏会だということに遅ればせながら気が付いたのだ。プログラムに書かれているヘンデル研究で有名な河村泰子さんの丁寧な解説が参考になった。特に、聴きどころについて詳しく書かれていて鑑賞にとても役立った。アンコールは「聖夜」をア・カペラで歌ってくれた。3コーラスで第2コーラスでは現代的なハーモニーになったり、第3コーラスではソプラノ独唱(澄んだ声が美しかった)が入っていたりと工夫がされていて、とても楽しめた。聴衆にとって、またとないクリスマス・プレゼントになったことだろう。バッハ・コレギウム・ジャパン メサイヤヘンデル:オラトリオ「メサイヤ」HWV56(全曲)アンコール:聖夜森谷真理(s)藤村実穂子(a)ザッカリー・ワイルダー(t)ベンジャミン・ベヴァン(bs)バッハ・コレギウム・ジャパン(chor,orch)鈴木雅之(cond)2018年12月16日 盛岡市民文化ホール大ホール 3階4列42番で鑑賞
2018年12月16日
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映画「AKIRA」の音楽は音がいいということは昔から知っていたが、積極的に聴こうとまでは思っていなかった。このところ、音の良いといわれる音源に関心が向いているので、ハイレゾをチェックしたらビクターから「Symphonic Suite AKIRA 2016 ハイパーハイレゾエディション」なるものが出ていることを知った。国内盤なのでそれなりに値段が張り、しばらくお預け状態になっていた。ふとしたことからpresto musicをチェックしたら、192kHz/24bitの音源がリリースされていることを発見。これが上記の ハイパーハイレゾエディションと同じものかどうかは分からないが、 ハイパーハイレゾエディションが2016年のリリースで、presto musicのリリースが2017年なので間違いないだろうということで、ダウンロードしてしまった。芸能山城組は邦楽やアジアなどの音楽が主なので、この音源に興味をもつのはオーディオファンが大半で、音楽に興味をもっているのはごく少数の人たちだろう。音楽的に優れているかは多様な見方があるだろうが、管理人は芸能山城組の音楽は昔から好きなので、最高傑作とはいかないが、なかなか楽しめた。冒頭の「Kaneda」の雷の音からして度肝を抜かされる。気に入ったのは最後の「Requiem」広大な音場に圧倒される。祭りの回想部分で集団でお経を唱えるところも迫力十分。後半の合唱の「ねむれ アキラ ねむれ」の件はなかなか感動的だ。エコーのきいた太鼓も凄味がある。歌詞「唱名」はかなりリアルな音場でずんずんと迫ってくる。「変容」も「唱名」に似た合唱の曲だが、エレクトロニカが加わり、野蛮な雰囲気になっている。「回想」は能楽にスパイスとしてガムラン音楽が入っている感じ。眼前で能を観ているようなリアルさが感じられる。所々に入るシンセの衝撃的な一撃もたいそう効果的だ。曲だけ聞いていると何のことかわからなくなるので、映像を見てどの場面で使われているかを把握することが、正しい理解の仕方だろう。録音はノイズ感の全くない素晴らしいものだが、管理人の環境では真の実力が十分に再現しきれていないところが悔しい。この音を聞いたら、音響設備の整った大きな映画館で観たくなること請け合いだ。ところで、残念なことに、このタイトルはpresto musicのリストから消えてしまっている。幸いなことにQuboz usでもカタログに含まれている。管理人の購入価格より高いが、国内価格よりも¥1500程安い。AKIRA(Original Soud Track Album)(Milan)24bit192kHz Flac1.金田 Kaneda2.クラウンとの闘い Battle Against Clown3.ネオ東京上空の風 Winds Over The Neo-Tokyo4.鉄雄 Tetsuo5.ぬいぐるみのポリフォニー Dolls' Polyphony6.唱名 Shohmyoh7.変容 Mutation8.ケイと金田の脱出 Exodus From The Underground Fortress9.回想 Illusion10.未来 RequiemGeinoh YamashirogumiShoji Yamashiro
2021年11月28日
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多少鮮度が落ちてしまったが、ラン・ランの新譜の感想を一言。今回はアーノンクール指揮ウイーン・フィルと共演したモーツアァトのコンチェルト2曲とソナタ集の二枚組。コンチェルトはバックがアーノンクールのためか、ごくオーソドックスな解釈。テンポも中庸で、落ち着いている。どちらも、意表をつくような表情は皆無でモーツアルトの音楽を楽しめる。k.491のカデンツアは聴いたことのない版でダイナミックな演奏を聴かせていた。ブックレットを見るとリリー・クラウス作でランランがアレンジしているようだ。k.491のラルゲットの中間部の木管アンサンブルの部分のハーモニーがとても美しい。ラン・ランもアンサンブルの邪魔をしていない。ラン・ランと楽員の心の通い合いが伝わってくるようだ。アレグレットでも同じことが言える。k.453も同じ趣向。ウイーン・フィルはこの楽団でなければ出せない木質系のサウンドで、ソロを暖かく包んでくれる。独奏者はさぞかし気持ちがいいのではないだろうか。アーノンクールも特に古楽的なアプローチを強調するわけでもなく、ごくオーソドックスな解釈。サウンドではティンパニが古楽器風のゴツゴツした音の他は特に目立ったところはなかった。二枚目はランランの独奏でピアノ・ソナタがロンドンのロイヤル・アルバートホール、そのほかがパリのサル・コロンヌでのライブ録音。コンチェルトに比べて、あまり精彩がない。思いっきり個性的なアプローチであれば、それはそれで面白いと思うが、新奇な解釈も聴かれない。ロイヤル・アルバート・ホールでのアンコールのトルコ行進曲はさすがに個性的だが、完全に技巧を誇示するショーピースになっていて醜悪としか思えない。まあ、強弱をつけたり、音符の処理を変えてみたり、色々やっているのはわかる。ただ、その結果が聞き手に伝わらないのだ。悪く言えば、「ふ~ん、それで。。。」という感じか。ブックレットの裏表紙にセッションを上から撮った写真が載っている。こういうアングルのショットは初めて見たが、年季の入った床が目に付いた。年月を経て重厚な外観になるのが普通だと思うのだが、単に汚くなっているとしか思えないような代物だ。元々の材質や表面処理が良くないのかもしれないが、黄金の間と呼ばれる割にはお粗末だと感じられるのは私だけだろうか。The Mozart Album:Lang Lang(SONY 88843082532)CD1:Piano Concerto No. 24 in C minor, K. 491Piano Concerto No. 17 in G major, K. 453CD2:Piano Sonata No. 5 in G major, K. 283Piano Sonata No. 4 in E flat major, K. 282Piano Sonata No. 8 in A minor, K. 310March in C major, K. 408/1Piano Piece in F major, K. 33bAllegro in F major, for piano, K. 1cPiano Sonata No. 11 Rondo Alla TurcaLang Lang(p)Vienna Philharmonic OrchestraNikolaus Harnoncourt(cond)Recorded April 14-17,GoldenSaal,Musikverein,Vienna(CD1)November 15,17,2013,Royal Albert Hall,London(CD2,Track 1-9,13)May 18,2014,Saal Colonne,Paris(CD2 Track 10-12)
2015年01月19日
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パソコンを動かしていたら突然トロイの木馬ウイルスが侵入したという警告が出て、すぐマイクロソフトに連絡しろという。今は亡きヴィクターのHD-MUSICというダウンロードサイトから購入したカラヤンの蝶々夫人を聴きたいと思って、NASに入れていたファイルを見たら、第2幕までしかない。もともとダウンロードしたドライブを検索したが見つからない。仕方がないので、ブログで取り上げていなかったかチェックしたら取り上げていた。ところがそのサイトをクリックしたとたん、セキュリティー・エラーが出たという現象だ。電話をしたら jessica wolkという女性が出て、話を始めた。たどたどしい日本語で、名前からするとアメリカ人のようで、マイクロソフトの人間だという。何故かプロフィールまで見せてくれた。見るとアメリカ人だが、話をしている相手はどう見てもアジア人の感じだ。いろいろ説明しながら、リモートコントロールのアプリをインストールしろという。アプリはany desk.exeと、LogMeInRescue.exeという2つのファイルだった。どちらもPCをリモート制御するためのソフトだ。操作している途中で、ネットで決済をしたことがあるか、カードを使われたことがあるかなどを聴く。おまけにアダ〇トサイトを見たことがないか、などと聴いてくる。怪しい行為ではないことを、しきりに言うのも変だ。ハッカーの写真が出てくるのも変にサービス精神?が旺盛だ。ここらへんで気が付かないのも我ながら相当鈍い。そして、このままだとPCがブラックアウトしてしまうと再三脅かす。決してキーボードに触るなとか、マウスを動かすな、シャットダウンするな、などとも言う。それなのに何故か警告のアナウンスの音がうるさいので音を小さくしてくれという。いうことが矛盾してませんかと言いたくなる。コマンドプロンプトでtree構造を見せてくれたり、C:\>セキュリティ無効C:\>PCは安全ではありませんC:\>ハッカーが見つかりましたC:\>ネットワークセキュリティなしエラーが見つかりましたという表示を見せてくれたりする。よく見れば、その下に無効なコマンドだと表示されているのだが、その時はPCがそのような状態になっているのだと勘違いしてしまった。あとで考えれば、単にコマンドプロンプトに打ち込んだだけなのだが、管理人も動揺していて、それに気が付かなかったのは我ながら情けない。てっきり無償だと思っていたら、最終的に、保守契約の話になり、4年間で3万円、一生保証?だと4万円だということだった。振り込みはコンビニかネットで、管理人はネットバンキングもしているので、ログインしろと催促してくる。ログイン画面を開いたら、男の人に変わって、ここに振り込めと指示してくる。ここにきて、振込先がベトナム人らしき名前で、完全におかしいことに気が付き、電話を切った。その後タスクマネージャーでアプリを停止し、ソフトを削除した。その後アンチウイルスソフトでウイルスのチェックと削除を行った。振り込みでID、パスワードは見られたかも知れないが、ワンタイム・パスワードを入れないと送金できないので、この詐欺チームは一度だけ送金すればいいと思っていたのかも知れない。結構用意周到に準備していたつもりのような感じだったが、所々で妖しいところがあり、肝心の送金のところがずさんで失敗したようだ。最初から気がつきそうなものだが、管理人も相当鈍い。PCの知識が多少あったので難を逃れたが、何も知らない人だったら、引っかかってしまいそうだ。この詐欺についてはネットにいろいろ出ていて、結構有名な詐欺グループのようだが、いまだに捕まえられていないのは被害届が出ていないからなのだろうか。 ところで、肝心の蝶々夫人のファイルは見つからなかった。HD-MUSICはとうの昔に閉鎖しているので、再ダウンロードもできない。仕方がないので買いなおすしかないかもしれない、と思っていた。念のためHDTRACKSでリリースされているのでチェックしたらトラック数は同じだった。track32の「Gia il Sole」からが第3幕のようだ。カラヤン盤が間違えていたのかと思たが、ゲオルギューとパッパーノの盤も同じ。ところがレナータ・スコットとマゼール盤(1978)は3幕になっている。いつの間にか2幕扱いになっていたのだろうか。どうも締まらない落ちになってしまった・・・マイクロソフトのサポートを装った詐欺にご注意ください
2022年11月18日
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昨年10月13日に行われた武満徹没後20年のオリバー・ナッセン指揮の東フィルによる演奏会のライブ録音。オペラシティ財団の企画、フォンテックの製作、タワーレコードの販売という連携で生まれたアルバム。氏が亡くなってもう20年もたったとは思わなかった。陳腐な言葉だが月日の経つのは早い。ナッセンは作曲家、指揮者として知られているが、武満と親交が深かったそうだ。ブックレットに収録された武満研究の第一人者である小野光子氏のプログラムノートによると、ナッセンが武満を知ったのは1960年代にロンドン交響楽団が武満を取り上げた演奏会を聴いたのを切っ掛けにしてレコードを買い求めたところから始まっているそうだ。当時は「ノヴェンバーステップス」に代表される日本的な間に注目が集まったが、彼は現代的な音群作法と古典的な調性が融合し、詩情あふれる美しさを持つ「グリーン」が気に入ったという。ところで、ナッセンは武満作品は二枚録音している。二枚ともロンドン・シンフォニエッタとの録音。そのうちの一枚はグラモフォンの「20-12」という現代ものを集めたシリーズに含まれていた。今回少し聞いてみたが基本的なスタンスは変わらない。この時の曲は武満の最後の10年間の中から選ばれているが、今回は武満の初期の作品が主で、晩年の作品は「夢の引用」(1991)のみ。グラモフォン盤とはこの「夢の引用」(1991)しかダブっていないのは嬉しい。武満の作品は旋律が親しみやすい曲は合唱曲を除いては殆んどなく、なかなか覚えられないものだ。その中で「夢の引用」はドビュッシーの交響詩「海」からの引用が多く、聞けばすぐわかる作品の一つだ。武満独特のねっとりと絡みつくようなサウンドが心地よい。作曲年代の最も古い「環礁ーソプラノとオーケストラのための」(1962)はあまり演奏されない曲と思う。今回はジュリアス・スーの歌唱(日本語がうまい)と相まって、良い仕上がりとなったことは喜ばしい。武満の初期の作品は静けさの中で突然フォルテが爆発するような音楽が多く、聴いていてドキッとすることがあるが、今回もそれは変わらなかった。古くなっても新鮮さを保っている稀有な例だろう。聴き手の平静な気持ちを、わざと乱しているかのようだ。それが最高に発揮されたのは「テクスチュア」だろう。オケのメンバーを塊としてとらえるのではなく、一人一人に役割を与えるため36人ずつ2つのグループに分けそこにピアニストが加わる形になっている。昆虫の世界のようなミクロの視点から次第に視点が広がり、大きな波のうねりの様なクライマックスに至る。エンディングで平穏が訪れるのも武満の常套手段だ。短い曲だが、実に恐ろしい音楽だ。録音は素晴らしく、会場ノイズも少なくライブとは思えないほどだ。最近タワーレコードの熱心な復刻への取り組みに関心が向かい、少しずつ買い求めているが、その丁寧な仕事は昨今のCDの投げ売りに見られるような単なる消費財としか感じさせないような商売の仕方ではなく、文化として敬意をもって商売している姿に好感を持っていた。このアルバムでもその姿は変わらず、充実したブックレットも作品を知るうえで大変参考になった。没後20年にふさわしい優れたライブ録音だと思う。武満や現代音楽に関心のある方には是非お聴き頂きたい。それにしても、この世界的な作曲家の没後20年という節目にもかかわらず、新録音があまり出ないのは何とも悲しい。また、タワーレコード限定であるために、あまり知られないことだ。もう少し容易に購入できるようにできないものだろうか。Oliver Knussen:Toru Takemitsu Orcgestral Concert(FONTEC X TOWER RECORDS TWFS90013)1. 地平線のドーリア (1966)2. 環礁 ― ソプラノとオーケストラのための (1962)3. テクスチュアズ ― ピアノとオーケストラのための (1964)4. グリーン (1967)5. 夢の引用 ― Say sea, take me! ― 2台ピアノとオーケストラのための (1991)クレア・ブース(ソプラノ) (2、高橋悠治(ピアノ) (3,5)ジュリア・スー(ピアノ) (5)東京フィルハーモニー交響楽団オリヴァー・ナッセン(指揮)録音 2016年10月13日 東京オペラシティコンサートホールでのライブ録音
2017年09月15日
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青森・岩手のツアーで武蔵野音大ウインドアンサンブルがやってきました。日本初演曲有り、バグパイプがフィーチャされた珍しい曲ありと、とてもバラエティに富んだプログラムを大いに楽しみました。勿論演奏も良かったです。今回の指揮は米ミネソタ州・セントクラウド州立大ウインド・アンサンブルの指揮者である。リチャード・K・ハンセン教授の指揮でした。奇をてらったところもなく、曲の本質を表現した指揮だったと思います。 最初はヒンデミットの「ウエーバーによる交響的的変容」。昔はコンクールなどでも結構取り上げられていました。管楽器が活躍する曲で、編曲物としては違和感のない方だと思います。演奏は金管ががなり立てることもなく、落ち着いた解釈。個人的には最後のホルンのB♭-D-Fの音型が聞きたかったのですが、周りに埋没してしまっていて期待はずれでした。 J・フリアーの「リバティー・フォールン」(自由の崩壊)はセント・クラウド州立大の委嘱作品で、世紀末から最近にかけての個人の自由と民主主義の崩壊を描いたトーン・ポエムです。作曲者のJ・フェリアーは若手作曲家として急速に名前を高めているそうです。 元々は約20分の長さでしたが、ハンセン教授の助言により12分に改訂されました。この曲は今回のツアーでの演奏が日本初演になりました。 曲は、パーカッションの強打に始まる劇的な展開を持った曲です。難しいところはなく、分かりやすい曲で、時折鳴らされる打楽器の強打が印象的です。また、最後、人間の運命が終わってしまうことを暗示した所でのアルト・フルートの諦念を感じさせる旋律が印象的でした。今後演奏される機会が増えそうな曲ではないでしょうか。録音が待たれます。 ノーマン・デロージョイオの「中世の旋律による変奏曲」は1960年代の古い曲ですが、私にはあまり馴染みのない曲でした。ドイツの古いクリスマス・キャロルを主題としていて、主題と5つの変奏曲からなります。主題の描き方がとても優しく、各変奏曲の性格もくっきりと描かれていました。この曲もCDで聞いてみたいと思って調べたら持っているCDに入っています。なんたる不覚!前半はこのほかコンクールの課題曲の2つのマーチが演奏されました。 休息後の最初の曲は中村克己作曲のバグパイプをフィーチャーした「バグパイプ・ファンタジー」。作曲者は初めて聞いた名前ですが、調べてみるとクラリネット奏者で作編曲も行っている方でした。 曲が始まってもバグパイプ奏者が出てこなくてきょろきょろしていると暫くしてから、後方からバグパイプの音色が聞こえてきました。客席をまわって私の所にもきましたが、バグパイプがどういう物か分かりました。これは息を吹き込むのと旋律とは全く無関係なんですね。息を袋に入れてそれが別な管から出てきてそれが縦笛みたいなパイプ(チャンター)に繋がっていてるといった物のようです。音が大きくて、バックがテュッティーでも全然負けません。バグパイプの仕組み・構造 スコットランドでは、ブラスバンドとバグパイプ、吹奏楽とバグパイプの組み合わせでの演奏も良く行われているようですね。今回のソロは東京交響楽団首席クラリネット奏者の十亀正司氏で、趣味で演奏されていると思いますがとても上手いです。東京交響楽団の開演前のロビーコンサートでも演奏されていいらっしゃるようです。最後のほうで、バグパイプの無伴奏ソロがあり、「アメイジング・グレイス」の旋律が聴かれました。ところで、十亀氏のホープページを見ていたら吹奏楽コンクール入門と題して、私にはとても懐かしいことが書いてありました。それは1966ー1967年の全国大会の熱い戦いを描いているもので、その当時の熱気がダイレクトに伝わってくる読み物です。当時を知る人達だけでなく、今の吹奏楽に携わっている方たちにも参考になると思います。 閑話休題 次は、ガンドルフィの「ヴィエントス・イ・タンゴス」。以前、コーポロンのCDでも紹介したことがありますが、タンゴを題材にした意欲作です。リズムを強調する訳ではなく、下敷きにしていた「ラ・クンパルシータ」もさほど強調されていませんでした。しかし、第4部のパーカショニスト達による手拍子、足拍子は迫力がありポーズも決まっていて格好が良かったです。こういうのを見るとCDでは味わえない実演の魅力をまざまざと感じてしまいます。 フランク・ティケリのアメリカ民謡を使った「シェナンドーア」。グレインジャーの「ロンドンデリー・エアー」の米国版といったところです。技術的には平易ですが、高い芸術性によってとても感動的な曲となりました。とくに4回目のフルート3重奏が印象的でした。ODにそのうちの一つ(アルバムNobele Elements)が入っていて聞き直してみましたがなかなかしみじみとしたいい曲です。 最後は、ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(1919)から、「カスチェイ王の踊り」と「終曲」が演奏されました。早めのテンポできびきびと演奏されましたが、迫力的には少し物足りなかったように思います。個人的に注目していたホルンもEを外したのが残念でした。それに主題を一部オクターブ下げていた編曲?が不満でした。まあ、最後にこれをやるのは大変きついのは分かりますし、そのせいかミスもちらほら見えました。 アンコールは3曲。聞いたことのないトロンボーンのグリッサンドが活躍する躍動的な楽しい曲と、吹奏楽コンクール課題曲。最後にスーザの「海を越える握手」が演奏されました。 「海を越える握手」は船の船出を思わせる鐘とチャイムの音から始まり、思いっきりリタルダンドした解釈が意表をつきました。(確かフェネルもこのような解釈だったことを思い出しました)トリオではハープのソロが聞こえたりして普段と違った演奏が楽しめました。(原曲にハープが使われていたかは不明です。編曲だったかもしれません) ということで、大変楽しめた演奏会でした。7月17日には東京オペラシティ・コンサートホールでも演奏会がありますので、お近くの方には是非お聞きになっていただきたいと思います。2007武蔵野音楽大学ウインドアンサンブル演奏会1.ヒンデミット(ウイルソン編):「ウエーバーの主題による交響的変容」より第4楽章「行進曲」2.2007年度全日本吹奏楽コンクール課題曲3.J・フリアー:リバティー・フォールン4.デロ=ジョイオ:中世の主題による変奏曲休息5.中村克己:バグパイプ・ファンタジー6.ガンドルフィ:ヴィエントス・イ・タンゴス7.ティケリ:シェナンドーア8.ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」より十亀正司(バグパイプ)リチャード・K・ハンセン(指揮)武蔵野音楽大学ウインド・アンサンブル2007年7月13日 盛岡市民文化ホール(マリオス) 大ホール
2007年07月15日
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話題の「ヒトラー映画」を見てきた。原作はティムール・ヴェルメシュ作の小説「Er ist wieder da」(彼が帰ってきた)。本国では250万部のベストセラーで、海外でも42か国で翻訳されたそうだ。映画も本国では240万人が動員されたそうだ。映画は2011年のドイツにヒトラーが現れ、彼にまつわる騒動が描かれている。ヒトラーは私のイメージでは背が低いと思っていたのだが、実物は175センチだったそうだ。まあ、ドイツでは普通の身長と思われるが、映画では随分背が高いように思う。実際にヒトラーを演じたオリヴァー・マスッチは身長が190センチ以上だそうだが、不思議と違和感がない。映画はドキュメンタリー・タッチの部分が多く、リアルな感じがする。ドイツ人の表向きの考え方と、裏腹のヒトラー待望論が混在する、ドイツ人の感情の複雑さが表れた映画だ。実際にヒトラーが出現したら、ドイツ人は同じような反応を示しそうな感じがする。最後は、なかなかしゃれたエンディングで、ハッピーエンドで終わるのが救われる。おしいのは画質があまりよくないこと。キャストでは主役のオリヴァー・マスッチは文句なしだが、演説がいまいちシャープでないのが不満。そこに絡むテレビ局のファビアン・ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)の軽さや恋人のフランツィスカ・クレマイヤー(フランツィスカ・ウルフ)も悪くない。特にファビアン・ブッシュのエキゾチックな美しさが印象的だ。テレビ局の局長のベリーニ(カッチャ・リーマン)の美しさも見もの。それにしても、ハイヒールを履いているとはいえ、長身のヒトラーと同じくらいの背丈があり迫力満点だ。ロッシーニの「泥棒カササギ」の音楽が映画にコミカルな軽妙さを与えていて、うまい選曲だ。最初何の曲か思い出せなかったが、帰宅してからやっと思い出した。「泥棒カササギ」か「セミラーミデ」だと思ったのだが、一応音源で確認。私の持病は順調に進行しているようだ。そのほかヨハンシュトラスの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」もロッシーニと同じ路線で、とてもあっていた。ヒトラー映画なのでワーグナーずくしと思ったのだが、「ワルキューレ騎行」くらいしか使われていなかった。映画の性格からいって、これが正解だと思う。小説の表紙がそのまま使われているが、これが髪形だけなのに特徴が表れていて秀逸だ。これを見ていたら、マリア・カラスのイラストを思い出してしまった。印象では顔はなかったと思っていたが、しっかり書かれていてがっかり。ところで、この映画を見た著名人のコメントが、「面白いけど、悪夢が再び起こらないのを願う」みたいに腰が引けているのが面白かった。人間に潜む狂気を感じ取っていたのかもしれないが、それ程深読みする必要はないと個人的には思う。少なくとも、このように思う方が多いうちは、大丈夫だと思う。先ごろ成立した安保法案の真逆だ。それにしても、このコメントが左巻きの人たちが多いのは意図的なものを感じさせる。SEALDsのコメントが入っているのは、ちょっとあからさますぎて笑ってしまう。左巻きの連中は、こういうことに対しての配慮が足りないと思うのは、私だけであろうか。知性よりも感情が優先するところが、左巻き連中の特性で、微笑ましいほどだが。。。公式サイト
2016年07月25日
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このところドビュッシーのレビューが多くなってきた。ハイレゾ中心なので、特定レーベルに偏るのは、価格の関係でしょうがない。今回はハルモニアムンディのドビュッシーシリーズの1つ。演奏はメルニコフ。前奏曲集は全曲ではなく、半分ずつというCDが多い。ドイツグラモフォンみたいに、ポリーにとバレンボイムが分担するというところもある。ハルモニアムンディは第2巻がメルニコフで、第1巻はJavier Perianesという方が担当している。ただ、フィルアップされているのが「海」のピアノ連弾版で、これに惹かれて購入した。例によってeclassicの24bit96kHzのFlacで、価格は$13.94。ここで使用されているピアノはメルニコフの所有する1885年製のエラール。当ブログの認識ではエラールの音は中音が抜けている、いわゆるドンシャリ型だと思っていたが、今回の音は特にそういう感じはしないし、エッジがきつくなく、柔らかい音なのでフランス音楽向きの音だと思う。期待した海はドビュッシー自身のピアノ連弾用の編曲だが、実際には演奏不可能であると自ら認めたらしい。wikiドビュッシーが管弦楽からピアノへの編曲は1895や「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」(1904)がある。これらは、管弦楽を一般の人たちに知ってもらうために、楽譜出版社から依頼されたものという。海で共演しているオルガ・パスチェンコ(1986-)はオルガン、ハープシコード、ピアノ、フォルテピアノを弾き、幅広いレパートリーを持っているようだ。ニューヨークで9歳のときにリサイタルを開いているというから早熟のピアニストだ。肝心の演奏だが、とてもきれいな音で、構造がクリヤーで、ドビュッシーが演奏不可能と断定したことなど微塵も感じさせない。ただ、編曲がモノクロ的で、原曲と別の美しさが出ているわけでもなく、作品としてはあまり面白くないことは確か。最近よく演奏される2台のピアノのための「春の祭典」など、原曲とは別な驚きを与えてくれる。この曲では成り立ちからいって、無いものねだりではあるが、そういう新鮮な驚きが欲しかった。 前奏曲集は音のエッジがそれほどきつくないので、透明度はスタインウェイなどには劣るが、冷たさが感じられず、かつてのドビュッシーの曖昧模糊としたテイストが多少強くなっている。ただ、「花火」のような速いパッセージでは、動きがはっきりしないこともあるのが痛し痒し。テンポは遅めだが、遅いとは感じられない。音楽をじっくりと聞かせるタイプの演奏だからだろう。ダイナミックスの幅も広く、メリハリがある。NASにポリーニの演奏が入っていたので、比較してみたが、ポリーニ版よりも殆どの曲が30秒くらい遅い。第7曲の「月の光が降り注ぐテラス」など、1分半くらい長くなっている。どの曲も味わい深いが、気に入ったのは第10曲 「カノープ」嘆きや呟きがためらいと共に聞こえてくるようだ。第5曲「ヒースの荒野」や第7曲「月の光が降り注ぐテラス」の繊細な演奏も印象深い。この曲を聴くと、気分が落ち込んでしまうのだが、今回の演奏は暗すぎないので、とても好ましい。録音はややオン・マイクだが、適度な距離感が心地よい。Melnikov Debussy:Prelude book1 La Mer(Harmonia Mundi HMM902302)1.Préludes Livre II13.La Mer : trois esquisses symphoniques pour orchestreTranscription de Claude Debussy pour piano à 4 mainsAlexander Melnikov, Érard piano (c. 1885)with Olga Pashchenko (13-15)Recorded 19-22 October,2016年 and 6-7 June ,2017 at Teldec-Studio,Belin
2018年08月08日
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import_cdからアントニオ・サンチェスの新作がやっと届いた。今回はドイツのWDRビッグバンドとの共演。ご存知のようにWDRはケルンに本拠地を置く西ドイツ放送の略称で、WDRビッグバンドは、ここに所属するビッグバンド。因みに所属オーケストラは有名なケルン交響楽団(現WDR交響楽団)有名なジャズ・ミュージシャンや作曲家を招いて、多数CDをリリースしている。個人的には、ポップなテイストを感じさせるサウンドがあまり好きではない。まあ放送局のビッグバンドなので、なんでもやらなければならないから折衷的なサウンドになるのも仕方がない。今回のCDはアントニオ・サンチェスの作品をヴィンス・メンドゥーサのアレンジと指揮で録音したというもの。メンドーサはアメリカの作編曲家で、彼の曲はゲイリー・バートン、パット・メセニーなどのジャズ・ミュージシャンにより演奏されている。またロビー・ウィリアムズ、ビョーク、エルヴィス・コステロ、ジョニ・ミッチェルなど、様々なジャンルの歌手の編曲も手掛けているそうだ。出典:wikiサンチェス自身、初のビッグバンドとの共演になる。「New Life」から4曲(CD track 1,3,4、CD 2 track1),「The Meridian Suite」から3曲(CD2 track 2,3,4)、「Three Times Three」から1曲(CD track 2)というプログラム。参考までに「The Meridian Suite」の元の演奏を聴いてみたが、これが失敗のもとだった。例えば「Grids And Patterns 」での、ひんやりとしたダークなサウンドと激情的な演奏が爆発し、あらためてこの時の演奏のすごさを感じた。「Channels Of Energy」での荒々しい演奏にも圧倒される。ところが、今回の演奏は素晴らしい演奏には違いないが、元の演奏のスケールや爆発的な力は感じられず、サンチェスのドラミングもきれいごとに終わっているような気がする。そこには録音の質の違いが大きく左右しているとも感じられる。アンサンブル、ソロとも問題はないし、「Channels Of Energy 」後半の熱気など、聴きどころもあるのだが、いかんせん元の演奏に比べると弱弱しく感じられる。元の演奏に注がれたエネルギーとビッグバンドのそれが、あまりにも違いすぎるのではないだろうか。勿論、コンボとビッグ・バンドのスピード感の違いも、演奏が大味になる原因ではある。原曲のイメージを求めると、当ブログのような感想になってしまうのは、仕方のないことかもしれない。例えば「Imaginary Lines 」のように、原曲とはテイストの違う演奏であれば、それなりに楽しめる気がする。ヴォイシングの妙を楽しむという聴き方もある。それにしても、こういう場合、元の演奏が良すぎるというのも困ったものだ。Antonio Sanchez:Channels Of Energy(CAM JAZZ CAMJ-7922) CD 1:1. Minotauro 2. Nooks And Crannies 3. Nighttime Story 4. The Real McDaddy CD 2:1. New Life 2. Grids And Patterns 3. Imaginary Lines 4. Channels Of Energy All music by Antonio Sanchez WDR BIg BandVince Mendoza(arr. cond)Recorded in Cologne (Germany) on 5 - 10 Decemb
2018年09月22日
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恒例の北上サロン音楽会の今シーズンの一回目を聴く。全く知らない方だったが、これが凄かった。名前からわかるようにハンガリーの出身で12歳でバルトーク音楽院入学以来、コンクールで数々の優勝や入賞経験がある。リスト音楽院卒業後日本に拠点を移し、国内のコンクールでも数々の賞を受賞しているそうだ。何しろコンサートの副題が「神童から芸術家へ、変貌を遂げた若き才能」と少しオーバーな表現と思われたのですが、聴いた後はあながちオーバーでもないな、と思った次第。日本で演奏活動をしているのは、奥さんが日本人だからなようだ。youtube Kiraly - Hungarian Folk Songsにご夫妻のクラリネット二重奏がアップされている。彼のホームページを見るとなかなかハンサムな姿が写っている。現在は少し太っていて、おなかも出ている。年はかなり若そうで、せいぜい30代前半だろう。演奏中、やたらと爪先立って演奏するのが面白いが、そのほかの身振りはない。僅かにビブラートをかけた音は太く、音色は暗めで、かなり大きな音がする。超高音域でも線が細くならないのは立派だが、少しうるさくなる。リードミスも殆どなく、テクニックも素晴らしい。タンギングが柔らかく、スラーは滑らかだ。息の長いフレーズも楽々と吹き、グリッサンドもとても馬力がある。プログラムはバロックから現代の音楽まで幅広く構成されていて、出来はあまり凹凸がない。ただサウンドがそういったものなので、どうしてもシリアスな音楽に聞こえないのが損だ。バッハでもかなりロマンティックな演奏で、最近のHIPの演奏とは少し違っている。シューマンも、すごくロマンティックで、ブラームスを聴いているような感じがする。ロヴレリオの「椿姫」にょる幻想曲は「ああ、そは彼の人か」「花から花へ」などのモチーフを使ったもので、華やかな技巧が楽しめる。難曲だが、技術的な破綻は一切なく、安心して聴くことが出来る。プーランクのソナタは速いテンポでさっさと進んでいく。プーランクらしいフランスのエスプリはあまり感じられないが、サウンドが重量級なので聴きごたえは十分。2楽章の抒情はたっぷり楽しませてもらった。後半は前半よりも新しい時代の音楽が演奏された。演奏の前に、難しい曲が多いからといってストレッチを聴衆と一緒に行ったが、こんなことは経験がない。最初はリストの難曲として知られる「ハンガリー狂詩曲第12番」のコハーン自身の編曲。民族色は薄く、難しさは全く感じさせない。自作の「ハンガリー幻想曲」はその名の通りハンガリーの民族色の強い曲。特に新しい技巧は使われていなくて、ごく普通の曲で楽しめた。続いては、バーンスタインのクラリネット・ソナタ。参考までにストルツマンのCDがあったので、聴いてみた。曲のことはすっかり忘れていたのだが、新しい響きとアメリカらしいのどかな気分が横溢してて悪くない。因みに高音域はストルツマンのほうが透明で重くない。現時点ではコハーンのサウンドは透明度が低く、力で押している感じがする。最後の「ラプソディー・イン・ブルー」は原曲通りの進行だが、かなり自由な編曲のようだ。グリッサンドが強力すぎて、いつ終わるのかわからず、ピアノと合わないことも度々。クラリネットは記譜されているのだろうが、かなり即興的な要素の強いフレーズが頻発し、ライブ・パフォーマンスとして、とても面白かった。やるほうは、ピアノともども大変みたいだったが。。。。アンコールは、ピアソラの「オブリビオン」とハンガリーのテンポの速い曲が演奏された。「オブリビオン」は前半がクラリネットの即興的な演奏が続き、後半になってからメロディーが聞こえてくる。この曲の編曲の中でも、異彩を放っているし、とても素晴らしい編曲だった。旋律の歌わせ方が絶妙で、思わずほろりとしてしまった。ピアノの村田千佳さんはかなり力のある伴奏で、オケの分まで弾かなければいけない「ラプソディー・イン・ブルー」も、かなり頑張っていた。この方はどうもリチャード・ストルツマンのように、クラシックだけでなく、広いジャンルで活躍する規格外の演奏家のような気がする。コハーン・イシュトヴァーン クラリネット コンサート第1部1.バッハ:ソナタト単調BWV1020(伝C.P.Eバッハ H.542.2)2.シューマン:抒情小曲集3.ロヴェレリオ:ヴェルディの「椿姫」による幻想曲4.プーランク:クラリネット・ソナタ第2部1.リスト(コハーン編):ハンガリー狂詩曲第12番2.コハーン:ハンガリー幻想曲第1番 youtube3.バーンスタイン:クラリネット・ソナタ4.ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルーアンコールピアソラ:オブリヴィオンその他コハーン・イシュトヴァーン(cl)村田千佳(p)2018年9月23日 北上市文化交流センターさくらホール 小ホールにて鑑賞
2018年09月26日
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盛岡吹奏楽団の定期を聴きに行った。今回は長生淳に注目していた。四部作の四季連禱を再構成して短縮し、交響曲としたものを演奏するからだ。四部作と同じくヤマハの委嘱によるもの。楽譜は出版されていないようで、ヤマハの承諾を得て定期に組み入れたという。曲順は秋→冬→春→夏になっている。30分ほどの曲で、スタミナも必要だ。これらの曲はあまりメロディックではないので、初めて聞く人にはなかなか辛いものがあると思う。盛吹の演奏は大きな傷はなく整っていたが、全体的に平板で、長生の特徴であるダイナミックな部分では、もう少し盛り上がって欲しかった。ソプラノサックスとイングリッシュホルンが美しいサウンドで目立っていた。他の木管も充実していた。前半の2曲目のヴォーン・ウイリアムズのチューバ協奏曲は実演では初めて聴いた。ヴォーン・ウイリアムズらしいイギリスの民謡を使った親しみやすい作風だ。山形交響楽団の久保和憲氏は柔らかく豊かなサウンドで、技巧的にも危なげない。ただ、バックと溶け合いすぎているのか、バックが厚すぎるのかわからないが、ソロの細部が聞こえないことがあったのは残念。アンコールにチューバをフィーチャーした「The Leader of a Big-Time Band」が金管5重奏で演奏された。久保氏はインタビューで、エンパイヤ・ブラスのチューバ奏者サム・ピラフィアンの演奏を聴いてチューバを志したそうで、この選曲はそのつながりのようだ。演奏は、バックがずれるところがあり、少し残念だった。後半はタイトルが「神秘の森の音物語」副題が「エルフたちのサウンドチェイス」というもの。エルフとは北欧神話に搭乗する小さな妖精のことだそうだ。このタイトルと曲があっているかどうかは、よく分からない。全体に古い曲が多く、あまり楽しめなかった。チューバをフィーチャーしたスパークの「Song For Ina」はいい曲だったが、他の曲の間に入ると違和感がある。この時の編成はフレンチ・ホルンを除きブラス・バンド仕様という凝ったもの。フレンチ・ホルンはやはり異質なので、テナーホーンで聴きたかった。ところで、MCがつくためか、インタビューが回数、時間共に長い。これで印象を悪くしているのはもったいない。盛岡吹奏楽団第51回定期演奏会1部1.建部知弘:テイクオフⅡ2.ヴォーン・ウイリアムズ:チューバ協奏曲3.長生淳:交響曲第3番「四季連濤」第2部1.スーザ(岩井直溥編)スーザ・マーチ・カーニバル2.モライス・モレイラ(波田野直彦編):恋のカーニバル3.スパーク:Song For Ina4.岩井直溥編:アメリカングラフィティⅦアンコールDon't say that again久保和憲(tuba)盛岡吹奏楽団建部知弘2019年11月23日盛岡市民文化ホール2階L6で鑑賞
2019年11月23日
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クリスマスが近ずくと、クリスマスに因んだ曲を聴くのが習慣になっている。筆者は、例年通り「ボエーム」とか「くるみ割り人形」もさらっと聞いたが、何故かほとんど聞いたことのないバッハの「クリスマス・オラトリオ」を聴いた。最初は手持ちのバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のものを聴いていたのだが、少し物足りなくなってカール・リヒターの古い録音がハイレゾ化されていることを知りダウンロードしてしまった。昨今の古楽による演奏とは全く違う、重厚で悠然としたテンポの演奏であるが、それほど古臭いという感じは受けなかった。長いので、聴きどころを調べて、そこを重点的に聞いた。この演奏ではヴンダーリッヒの歌唱が高く評価されているようで、とりわけ第42曲「コラール: イエスがわが始まりを正し 」は絶賛されていた。なるほど素晴らしい美声で、福音史家の歌唱と共に評価が高いことに頷けた。個人的にはクンドラ・ヤノヴィッツの歌唱に惚れてしまった。清純で可憐という形容でも足りないような素晴らしい歌声だった。また、モーリス・アンドレが加わったトランペットの輝かしさも比類のないものだった。合唱は大編成で、昨今の小編成の透明な響きには劣るのは仕方がない。この演奏に比べるとBCJの演奏はテンポが速く軽やかな演奏だが、第42曲などはせかせかして曲の良さがあまり感じられない。調子に乗ってガーディナーの演奏もダウンロード。こちらはまだあまり聞いていないが、結構ぐいぐいと攻めた演奏のように聞こえる。第42曲はBCJよりもさらに速い。第42曲についていうと、リヒターの演奏が曲の良さが一番引き出されていると思った。また、リヒターの演奏はテンポが遅いことで、クリスマスらしい華やかではあるが、のんびりとした気分が味わえる。ということで、雑感になってしまったが、聞けば聞くほどこの曲の面白さを感じるようになってきたので、もうすこし深堀をしてみようと思う。録音は思ったより悪くないが、テュッティではさすがに混濁が目立つ。Bach, J S: Christmas Oratorio, BWV248(Archiv 4795894)24bit 192kHz FlacChrista Ludwig (contralto)Franz Crass (bs)Fritz Wunderlich (t)Gundula Janowitz (s)Münchener Bach-Orchester, Münchener Bach-ChorKarl RichterRecorded: 1965-02-06,Residenz, Herkulessaal, Munich
2023年12月28日
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宮田大とのセットが割安だったために聴きに行ったコンサート。ヴァイオリンの郷古廉(ごうこ すなお)氏は1993年に宮城県多賀城市で生まれたヴァイオリニスト。今年からNHK交響楽団のコンサートマスターになられたそうだコンサートマスターは3人いるが、正式なコンサートマスターは郷古氏だけ。通常だともう一人いるのだが、そこは第1コンサートマスターを引退し特別コンサートマスターになられた篠崎さんとゲストコンサートマスターで賄っているのかもしれない。郷古さんは映像でも観たことはなかったが、ディボール・ボルガ国際ヴァイオリンコンクール(1967年創設)で2013年に優勝されたそうだ。このコンクールでは、日本人も何人か入賞しており、最近では3人の優勝者が出ている。有名なところでは、前橋汀子が1969年に3位に入賞している。また、カントロフやレーピンといった著名なヴァイオリニストも入賞しており、権威あるコンクールなのだろう。特に目を引くのは、1位なしの年が何回かある点で、それだけ厳しい審査が行われているのかもしれない。閑話休題今回のプログラムはシューベルトや新ウィーン学派、ブゾーニと刺激的な曲が並ぶ興味深い内容であった。おそらくシューベルト以外は盛岡で演奏されたことがほとんどないと思うので、筆者としては画期的なコンサートだと感じた。ところで、筆者には、楽団で演奏している方のソロの演奏には、スケールが小さく主張が弱いという先入観がある。それは、その人がたとえ一流の楽団に所属していても同じなのだが、郷古氏の演奏はのびのびとしており、個性を前面に押し出すことはないものの、適度な主張が繰り広げられ、大変好感を持った。とにかくヴァイオリンの音が大変美しく、音楽も作為的でなく、スムーズに流れるものだ。今回の演奏は新ウイーン学派やブゾーニの作品が大変良かった。今回、シェーンベルクやウェーベルンの音楽を初めて生で耳にしたのだが、彼らの無調音楽には冷たさや無機質な印象はなく、むしろ血の通った、生き生きとした音楽に感じられたのには驚いた。暖かく、肉付きのよいサウンドが彼らの音楽に適度な温もりを与えており、ホールの音の良さもそれを引き立てているように思う。シェーンベルクの「幻想曲」Op.47は晩年の作品で、12音ではあるが冷たい感触は幾分和らいでいる。彼らの演奏は起伏のはっきりした演奏で、ヴァイオリンもピアノも激しい表情を見せる場面があり大変面白い演奏だった。筆者はこの曲を聴いたことがないと思っていたが、実はグールドの演奏を聴いたことがあったと気づいた。ただし、その演奏は今回のような激しいものではなく、印象に残らなかったのも無理はないと感じた。ウエーベルンも聞いたことがない筈で、この5分に満たない曲が大変面白い曲であることが分かった。12音の作品であるが、感情の発露が感じられる激しい部分や、第1曲の救急車の音のようなフレーズが聞こえる部分など、興味深い曲だった。技巧的には難しい曲だそうだが、そのような難しさは感じられず、ウエーベルンの冷徹さもあまり感じられなかった。さすがに現代音楽に強みを持っているのも頷ける。シューベルトはヴァイオリンを弱音重視で演奏しており、そのためかピアノとのバランスが悪く、ヴァイオリンが埋没気味になる場面が多かった。ところが、Andantino と次の Allegro vivace のブリッジ部分から突然音量が上がり、それまでの弱音重視の音楽が演出だったことに気づかされた。この幻想曲はシューベルト特有の親しみやすさが表れた曲であるが、彼らの演奏は優れているものの、あまり親しみやすさが感じられなかった。ブゾーニのヴァイオリン・ソナタは、筆者がこれまで聴いたことのない曲だった。少し前にフランチェスカ・デゴの新譜を入手していたが、未聴のままだったのも理由の一つ。この演奏会の後でデゴの演奏を聴いてみたが、今回の演奏の方がメリハリがあり、くっきりとした演奏で優れているように感じた。この曲はヴァイオリンに高い技術が要求される難曲で、難解なためあまり演奏される機会がない。今回の演奏でも、つまらなくはないが、それほど良い曲だとは思わなかった。長大な3楽章はエンディングの繰り返しが多く、いつまでたっても終わらない感じがして、不満を覚えた。アンコールはバッハのソナタ。それまでとは明らかに違った、ビブラートを殆ど使っていない。明るく温かみのあるサウンドで、心温まる時間を体験できたことが嬉しかった。なお、最初にR.シュトラウスの歌劇「ダフネ」のモチーフを基に作られた「ダフネ練習曲」という無伴奏ヴァイオリンのための小品が演奏された。ということで、現代曲に強い新しい感性を持つヴァイオリニスト、というのが現時点での筆者の感想だ。今回は全く知らない演奏家だったが、新感覚の優れた演奏を聴くことができ、大変有意義な時間を過ごせた。今後のさらなる活躍にも期待したい。郷古廉、ホセ・ガイヤルド デュオ・リサイタル前半1.R.シュトラウス:「ダフネ練習曲」2.シェーンベルク:幻想曲 Op.473.シューベルト:幻想曲ハ長調D.934後半4.ウエーベルン:4つの小品Op.75.ブゾーニ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ホ短調 Op.36aアンコールJ.S.バッハ:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第3番 ホ長調 BWV1016より 第3楽章 Adagio ma non tanto郷古廉(vn)ホセ・ガイヤルド(p)2024年11月23日 盛岡市民文化ホール 小ホール 8列15番で鑑賞
2024年11月28日
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