音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2007年07月15日
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 青森・岩手のツアーで武蔵野音大ウインドアンサンブルがやってきました。日本初演曲有り、バグパイプがフィーチャされた珍しい曲ありと、とてもバラエティに富んだプログラムを大いに楽しみました。勿論演奏も良かったです。

今回の指揮は米ミネソタ州・ セントクラウド州立大ウインド・アンサンブル の指揮者である。リチャード・K・ハンセン教授の指揮でした。奇をてらったところもなく、曲の本質を表現した指揮だったと思います。

 最初はヒンデミットの「ウエーバーによる交響的的変容」。昔はコンクールなどでも結構取り上げられていました。管楽器が活躍する曲で、編曲物としては違和感のない方だと思います。演奏は金管ががなり立てることもなく、落ち着いた解釈。個人的には最後のホルンのB♭-D-Fの音型が聞きたかったのですが、周りに埋没してしまっていて期待はずれでした。

 J・フリアーの「リバティー・フォールン」(自由の崩壊)はセント・クラウド州立大の委嘱作品で、世紀末から最近にかけての個人の自由と民主主義の崩壊を描いたトーン・ポエムです。作曲者のJ・フェリアーは若手作曲家として急速に名前を高めているそうです。

 元々は約20分の長さでしたが、ハンセン教授の助言により12分に改訂されました。この曲は今回のツアーでの演奏が日本初演になりました。

 曲は、パーカッションの強打に始まる劇的な展開を持った曲です。難しいところはなく、分かりやすい曲で、時折鳴らされる打楽器の強打が印象的です。また、最後、人間の運命が終わってしまうことを暗示した所でのアルト・フルートの諦念を感じさせる旋律が印象的でした。今後演奏される機会が増えそうな曲ではないでしょうか。録音が待たれます。

 ノーマン・デロージョイオの「中世の旋律による変奏曲」は1960年代の古い曲ですが、私にはあまり馴染みのない曲でした。ドイツの古いクリスマス・キャロルを主題としていて、主題と5つの変奏曲からなります。主題の描き方がとても優しく、各変奏曲の性格もくっきりと描かれていました。この曲もCDで聞いてみたいと思って調べたら持っているCDに入っています。なんたる不覚!

前半はこのほかコンクールの課題曲の2つのマーチが演奏されました。

 休息後の最初の曲は中村克己作曲のバグパイプをフィーチャーした「バグパイプ・ファンタジー」。作曲者は初めて聞いた名前ですが、調べてみるとクラリネット奏者で作編曲も行っている方でした。

 曲が始まってもバグパイプ奏者が出てこなくてきょろきょろしていると暫くしてから、後方からバグパイプの音色が聞こえてきました。客席をまわって私の所にもきましたが、バグパイプがどういう物か分かりました。これは息を吹き込むのと旋律とは全く無関係なんですね。

息を袋に入れてそれが別な管から出てきてそれが縦笛みたいなパイプ(チャンター)に繋がっていてるといった物のようです。音が大きくて、バックがテュッティーでも全然負けません。

バグパイプの仕組み・構造

 スコットランドでは、ブラスバンドとバグパイプ、吹奏楽とバグパイプの組み合わせでの演奏も良く行われているようですね。今回のソロは東京交響楽団首席クラリネット奏者の 十亀正司 氏で、趣味で演奏されていると思いますがとても上手いです。東京交響楽団の開演前のロビーコンサートでも演奏されていいらっしゃるようです。最後のほうで、バグパイプの無伴奏ソロがあり、「アメイジング・グレイス」の旋律が聴かれました。

ところで、十亀氏のホープページを見ていたら 吹奏楽コンクール入門 と題して、私にはとても懐かしいことが書いてありました。それは1966ー1967年の全国大会の熱い戦いを描いているもので、その当時の熱気がダイレクトに伝わってくる読み物です。当時を知る人達だけでなく、今の吹奏楽に携わっている方たちにも参考になると思います。

 閑話休題

 次は、ガンドルフィの「ヴィエントス・イ・タンゴス」。以前、コーポロンのCDでも 紹介 したことがありますが、タンゴを題材にした意欲作です。リズムを強調する訳ではなく、下敷きにしていた「ラ・クンパルシータ」もさほど強調されていませんでした。しかし、第4部のパーカショニスト達による手拍子、足拍子は迫力がありポーズも決まっていて格好が良かったです。こういうのを見るとCDでは味わえない実演の魅力をまざまざと感じてしまいます。

 フランク・ティケリのアメリカ民謡を使った「シェナンドーア」。グレインジャーの「ロンドンデリー・エアー」の米国版といったところです。技術的には平易ですが、高い芸術性によってとても感動的な曲となりました。とくに4回目のフルート3重奏が印象的でした。
ODにそのうちの一つ(アルバムNobele Elements)が入っていて聞き直してみましたがなかなかしみじみとしたいい曲です。

 最後は、ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(1919)から、「カスチェイ王の踊り」と「終曲」が演奏されました。早めのテンポできびきびと演奏されましたが、迫力的には少し物足りなかったように思います。個人的に注目していたホルンもEを外したのが残念でした。それに主題を一部オクターブ下げていた編曲?が不満でした。まあ、最後にこれをやるのは大変きついのは分かりますし、そのせいかミスもちらほら見えました。

 アンコールは3曲。聞いたことのないトロンボーンのグリッサンドが活躍する躍動的な楽しい曲と、吹奏楽コンクール課題曲。最後にスーザの「海を越える握手」が演奏されました。

 「海を越える握手」は船の船出を思わせる鐘とチャイムの音から始まり、思いっきりリタルダンドした解釈が意表をつきました。(確かフェネルもこのような解釈だったことを思い出しました)トリオではハープのソロが聞こえたりして普段と違った演奏が楽しめました。(原曲にハープが使われていたかは不明です。編曲だったかもしれません)

 ということで、大変楽しめた演奏会でした。7月17日には東京オペラシティ・コンサートホールでも演奏会がありますので、お近くの方には是非お聞きになっていただきたいと思います。

007武蔵野音楽大学ウインドアンサンブル演奏会

1.ヒンデミット(ウイルソン編):「ウエーバーの主題による交響的変容」より第4楽章「行進曲」
2.2007年度全日本吹奏楽コンクール課題曲
3.J・フリアー:リバティー・フォールン
4.デロ=ジョイオ:中世の主題による変奏曲

休息

5.中村克己:バグパイプ・ファンタジー
6.ガンドルフィ:ヴィエントス・イ・タンゴス
7.ティケリ:シェナンドーア
8.ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」より

十亀正司(バグパイプ)
リチャード・K・ハンセン(指揮)
武蔵野音楽大学ウインド・アンサンブル

2007年7月13日 盛岡市民文化ホール(マリオス) 大ホール







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Last updated  2007年07月15日 17時11分52秒
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