ニコラス・ペイトンの久々の新作は昨年5月に行われたニューヨークのクラブ「Smoke」でのライブ録音。 HIGHRESAUDIOから$15.2で購入。 今回は殆どがストレート・アヘッドなジャズで、彼のインプロバイザーとしての実力をいかんなく発揮している。 また、ペイトンのピアノ、フェンダーローズ、ヴォーカルがフィーチャーされている。 そのキーボードがトランペット奏者の余技とは思えない程の実力で驚いた。 サンプリングを含めキーボードの使い方が複雑かつ巧妙。 ライブにもかかわらず、楽器の繋ぎもスムーズで、周到な準備があったとは思うが、並みの手腕ではない。 アコースティック・ピアノはオーソドックスなプレイで、軽快なプレイ、リリカルなプレイと間口が広い。 キーボードはフージョン系のプレイでこちらも面白い。 本職のミュージシャンでいえば山中千尋の芸風に似ている気がする。 スタンダードが3曲、ゴルソンのクラシックが1曲、あとはペイトンの自作が並んでいる。 オリジナルは明るい曲が多く、いずれも、なかなか聴かせる。 メインストリーム系の音楽が多いが、「El Guajiro 」のようなキューバ風の作品もあり、守備範囲が広い。 この曲では最初キューバ人が話しているようなくだりがある。 ペイトンだろうか。 「Jazz is a Four-Letter Word 」ではペイトンのラップが入り、ジャズ・ジャイアンツの名前が聞こえる。 ただ、声がこもっていてはっきり聞こえないのが惜しい。 彼のハスキーなヴォーカルをフィーチャーしている曲もある。 否定はしないが、これはさすがに本職はだしとはいかなかった。 フェンダーローズのプレイが楽しめるのは「F」、続く「A」ではアコースティック・ピアノのリリカルでスインギーなプレイが楽しめる。 「A」でのドラムスの切れのいいブラッシュ・ワークもご機嫌だ。 「Five」は軽快なラテン系のノリノリの曲で、聴いているとうきうきしてくる。 ここでのペイトンのトランペットも凄まじい。 スタンダードは正攻法のアプローチで圧倒的なパフォーマンスを示している。 「I Hear a Rhapsody」ではキーボードの出番が多い。 フェンダーローズのイントロからムーディーだが、テンポが速くなると途端に驀進していくそのコントラストが心地よい。 「When I Fall in Love」ではリバーブを効かせたヴォーカルとフェンダーローズの弾き語り。 浮遊感があり、途中からガラッと雰囲気が変わりトランペットのハードなソロが入る。 ペイトンのトランペット・プレイは、柔らかでメロディックなソロが、リー・モーガンを彷彿させるが、強靭さも併せ持ち、ときには圧倒的なパフォーマンスを見せる。 ケニー・ワシントンのドラムスはちょっと表に出すぎることもあるが、軽快なリズムで、終始バンドをプッシュしていて気持ちがいい。 ピーター・ワシントンのベースは重量感がある野太い音を出しているが、そのためか動きが鈍いような気がするのは気のせいだろうか。 録音はとてもいい音で、ライブの雰囲気がビビッドに伝わってくる。 会場ノイズも少なく聞きやすい。 ということで、ペイトンの実力がいかんなく発揮されたアルバムで、彼自身も会心のアルバムだろう。 是非多くの方に聴いていただきたい。
Nicholas Payton:Relaxin' with Nick(Smoke Sessions Records SSR1907)24bit48kHz Flac
1. Nicholas Payton:Relaxin’ with Nick 2. Nicholas Payton:C 3. Nicholas Payton:El Guajiro 4. Benny Golson:Stablemates 5. Nicholas Payton:Eight 6. Nicholas Payton:Jazz is a Four-Letter Word 7. Nicholas Payton:Othello 8. Vincent Youmans / Irving Caesar:Tea for Two 9. Nicholas Payton:1983 10. Nicholas Payton:F (for Axel Foley) 11. Nicholas Payton:A 12. George Fragos, Jack Baker & Dick Gasparre:I Hear a Rhapsody 13. Nicholas Payton:Five 14. Victor Young / Edward Heyman:When I Fall in Love 15. Nicholas Payton:Praalude
Nicholas Payton (tp, p, fender rhodes, vo, effects & samples) Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)
Recorded May 30, 31 & June 1, 2019 at SMOKE Jazz Club in New York City