音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2020年03月30日
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カテゴリ: クラシック音楽

普段ルネッサンスなどの古い音楽はほとんど聞かない。
レコード芸術の連載「旬の音盤ためすがめつ」で アカデミー賞を受賞したマショーのノートルダム・ミサが取り上げられていて、その内容がとても興味深かった。
尋常でない演奏であることが、ホストの満津岡信育氏とゲストの矢澤孝樹氏両者の熱気のこもった会話からも窺える。
それほどならとSpotifyで試聴した。
両者の会話の中で出てきた過去の名盤もつまみ聞き。
この録音の凄さが分かってきたので、CDをチェック。
ハイレゾはないようで、安いCDを物色していたら偶然Presto Musicでロスレスが¥1300で売っていたことを発見。
速攻で購入した。
ブックレットもついていて、これはお買い得だった。
この曲はルネッサンス以前のムジカ・ノヴァの音楽なので、昔の録音はいかにも修道院で修道士が歌っているというイメージだ。
年代を経ていくにつれて、そのイメージの殻が破れていく様子がよく分かる。
今回のアルバム以前ではアンサンブル・オルガヌム(Harmonia Mundi)が今回の演奏のイメージの片鱗を感じさせるが、グランドラヴォアの演奏では、それがさらに推し進められ、野卑で過激さを増していることがよく分かる。
矢澤氏の言葉によると、『「微分音的な音程」と「メリスマティックな節回しの即興性」を超絶的な技術水準で行って、突如として別次元に行ってしまった。』と形容している。
管理人はその凄さが理解できないが、上品さ?をかなぐり捨てた徹底度合いがアンサンブル・オルガヌムの演奏とは全く違うことはよく分かる。
面白いのは同じ曲でも全く別な曲のように思えることで、似ていると思う演奏は一つもなかった。
其れほど演奏者の自由度が高い記譜なのかもしれない。
今回の演奏でも、作曲者不詳の曲がマショーの曲に違和感無く挟まれている。
今回の演奏は、そういったこの曲の演奏史をひっくり返すような、大胆な演奏であることは、この曲に不案内な管理人でも理解できる。
従来の透明なサウンドで静謐な音楽というイメージからは大きく外れている。
両者の会話にも出ていたが、ヨーロッパ的な発生とアジアやアラブなどを思わせる地声が混在している。
一聴猥雑でゴタゴタしている感じなのだが、演奏が乱れているわけではない。
バリ島のケチャのイメージに近い。
勿論激しいリズムがあるわけではない。
言わば、「混沌の中に整然とした秩序がある」とでも言えるだろうか。
各声部の主張がはっきりしていて、特に低音部の声と思えないようなサウンドは聞いたことのないサウンドだ。
楽器で言えばコントラ・ファゴットのビリビリいう低音みたいな感じだろうか。
曲によってはミサらしい静けさを感じることもあるが、従来の透明なサウンドとは大違いだ。
力強いことは無類で、死者を祈祷する音楽とはとても思えない。
古い音楽では、こう言う革新的な試みが突然ドカンとやってくることがある。
中世の音楽に親しんでいる方ほど、この演奏の衝撃を強く感じることだろう。
これも音楽の楽しみの一つだ。
例によって24bit 192kHzflacにアップコンバートして聴いているが、とてもいい録音だ。
無伴奏の合唱というと録音が難しい代物だが、混濁も少なく大変美しい。
オン・マイクだが、うるさくはなく迫力が凄い。
オフ・マイクだと演奏の内容が十分に伝わらなかっただろう。
民族音楽的アプローチなので、この録音は演奏をさらに引き立てている。
なお、ブックレットもついているが、指揮者のビョルン・シュメルツァーのライナーノートが哲学的・詩的であまりにも難解なので、内容を知りたい向きは相場ひろさんの優れた翻訳が載っている国内盤がおすすめ。

Machaut: Messe de Nostre Dame

1. Machaut: Inviolata genitrix / Felix virgo / Ad te suspiramus gementes et flentes, M23傷の無い/幸いな処女は/わたしたちはあなたを慕い
2.anon.: Salve sancta parens (Gregorian chant) [MS 5665 / Graduale Triplex / Koninklijke Bibliotheek 71 A 21 めでたし聖なる産みの母
3.Machaut: Kyrie キリエ
4.Machaut: Gloria グローリア
5. anon.: Benedicta et venerabilis:祝福され、尊ばれし聖母マリア
6.anon.: Alleluya: Post partum virgo 御身が生まれてより
7.anon.: Verbum bonum et suave [Sequence: Codex Las Huelgas, 13th Century Spain] 善き甘き御言葉
8.Machaut: Credo クレド
9.Machaut: Plange, regni respublica / Tu qui gregem tuum ducis / Apprehende arma et scutum et exurge, M22 嘆け、王国の/あなたは支配者の群れを/大盾と盾を取って立ち上がってください
10.Machaut: Sanctus サンクトゥス
11.Machaut: Agnus Dei アニュス・デイ
12.anon.: Communio: Beata viscera 幸いな御胎
13.Machaut: Ite missa est イテ・ミサ・エス

グランドラヴォア
ビョルン・シュメルツァー(指揮)

録音:2015年3月25-31日 アントワープ、聖アウグスティヌス教会





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Last updated  2021年12月18日 09時12分19秒
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