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ウォルト・ディズニー・カンパニーによるスーパーヒーロー映画。『デッドプール』シリーズの第3弾で、監督は前作のデヴィッド・リーチからショーン・レヴィへと交代するが、主演は前2作に引き続きライアン・レイノルズが務める。 ライアン・レイノルズは制作・脚本にも加わっている。 前作までは、X-MENシリーズ全般を手掛けていた20世紀フォックス(後の21世紀フォックス)により制作されてきたが、2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーが21世紀フォックスを買収した事で、今作からはディズニー主導の下で制作される事に。 併せて、今作からは同じくウォルト・ディズニー・カンパニー傘下となっていたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に組み込まれる。 マーベルコミックスがX-MENシリーズの実写版制作権を20世紀フォックスに売り渡していた為、後に設立されたマーベルスタジオはX-MENシリーズを手掛ける事が出来なかったが、マーベルスタジオ・20世紀フォックス共にウォルト・ディズニー・カンパニー傘下になった事で、一つに纏まる事が出来たのは皮肉である。 また、2017年公開のLOGANでX-MENシリーズを降板すると発表していたヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役に復帰。 レイノルズ本人がジャックマンと直接掛け合った結果ウルヴァリンへの復帰が実現したという。 R15+指定。 原題は「Deadpool & Wolverine」。粗筋 前作(デッドプール2)の最後にタイムトラベル装置を使って過去に戻ったデッドプールことウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、ガールフレンドのヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)の命を救ったが、後に彼女とは破局してしまう。 ウェイドはアベンジャーズの扉を叩くものの拒否された事でヒーローの引退を決意。同じくミュータント戦隊Xフォースを引退したピーター(ロブ・ディレイニー)と共に中古車セールマンとして働く事となり、平凡な毎日を送る様になる。 数年後、自身の誕生日パーティーの最中、ウェイドは突然時間変異取締局(TVA)の管理者ミスター・パラドックス(マシュー・マクファディン)の下に連れて行かれる。 ミスター・パラドックスは、ウェイドに説明する。ウェイドらが暮らす時間軸の最も主要な存在(ウルヴァリンことローガン)が死亡した為(LOGAN [2017年公開])、この時間軸を枝払いしてそこに住む全ての人間の存在が消される事になった、と。 そんな事は許さない、とウェイドはローガンがミスター・パラドックスの時間軸移動装置を奪い、ローガンが埋葬された地に向かう。驚異的な再生能力を誇るローガンの事だから、死んだというのは事実でなく、墓の中で再生しているだろうとウェイドは楽観的に考えたが、ローガンはアダマンチウムの骨格を残して土に帰っていた。 自分の時間軸のローガンが駄目なら、他の時間軸のローガンを連れてくればいいと安易に考えたウェイドは、時間軸移動装置を駆使して、数々の時間軸を訪れ、代わりとなるローガンを探すが、どの時間軸のローガンも手に負えず、連れて帰るのは無理だった。最終的にある時間軸でバーで酔い潰れているローガンをTVAに連れ帰る。が、ミスター・パラドックスは、こんなローガンでは意味が無い、と切り捨てる。 ミスター・パラドックスとの口論で、ウェイドはミスター・パラドックスがTVA上層部の許可を得ずに勝手に行動している事に気付く。時間軸は通常数千年掛けて消滅していくが、それでは時間が掛かり過ぎると見たミスター・パラドックスは時間軸を瞬時に消滅させられるタイムリッパーという装置を開発していて、完成が間近だった。タイムリッパーが稼働すれば、TVA上層部は不要というか、自分がTVAそのものになる、とミスター・パラドックスは考えていたのだ。 ウェイドがこの事についてTVA上層部に告げ口出来る前に、ミスター・パラドックスはウェイドとローガンを虚無の世界(ヴォイド)に送ってしまう。 ヴォイドでは、TVAによって元の時間軸から枝打ちされた存在らが暮らしていた。 砂漠の様な地帯で仲間割れしたウェイドとローガンが戦っていると、ある男(クリス・エヴァンス)が現れる。ウェイドは彼をキャプテン・アメリカと早とちりするが、そうではなく、ファンタスティック・フォーのメンバーであるヒューマン・トーチであった。 ウェイド、ローガン、ヒューマン・トーチはヴォイドの住民のミュータントらに捕獲され、カサンドラ・ノヴァ(エマ・コリン)の要塞に連行される。 カサンドラは、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアの双子の妹で、プロフェッサーXに劣らぬ強力なテレキネシスとマインドコントロールの能力を持つミュータントだった。彼女はヴォイド最強の存在として君臨し、大勢のミュータントらを従えていた。彼女は手始めにヒューマン・トーチの皮膚と筋肉を分解してあっさりと殺害。 ローガンとウェイドも同様の運命になる直前、共闘してカサンドラに反撃し、要塞から脱出する事に成功する。 草原地帯に辿り着いた二人は、デッドプールの異世界同位体(ナイスプール)と飼い犬(ドッグプール)に出会う。 ナイスプールは虚無の世界には他にも多数のデッドプール同位体が送り込まれおり、デッドプールとはよく出会うが、ローガンと出会うのは初めてだと語る。ナイスプールは二人を中古車まで案内し、現実世界に戻る為の手掛かりを授ける。 運転の最中、ウェイドの止まらぬトークで、ローガンはウェイドの約束事であった「協力してくれれば見返りとしてお前の時間軸の悲劇を正してやる」というのが単なる出まかせであったのを知る。再び仲間割れとなり、車内で凄惨な戦闘を繰り広げるが、不死身の再生能力を持つ二人は気を失うまで戦い続ける。 気を失っている間に、LOGANに登場したミュータントのローラ(ダフネ・キーン)が現れ、二人を隠れ家まで連れていく。 隠れ家には他にエレクトラ、ブレード、ガンビットの三人のミュータントがいた。ウェイドは、ここに集まった6人が協力すればカサンドラくらい圧倒してヴォイドから脱出出来るのでは、と提案するが、カサンドラを相手にするにはここの6人だけでは無理だ、と言われてしまう。少し前までヒューマン・トーチもいたが、仮に彼が加わったとしても無理だ、と。 ヒューマン・トーチの最期を目の当たりにしていたウェイドは、その意見に賛同しそうになったが、それだとヴォイドに一生留まる事になってしまうので、改めてミュータントらを説得する。当初はウルヴァリンも加わりたくないと言っていたが、結局ウェイドに説得され、要塞へと戻る。 要塞で、6人は戦い、カサンドラを一時的にだが圧倒する事に成功。 カサンドラは、ウェイドの時間軸へのポータルを開く。 ウェイドとウルヴァリンは、ポータルからヴォイドを抜け出す事に成功。 ウェイドの時間軸に戻った二人だが、カサンドラも別のポータルでやって来た。 彼女は様々な時間軸からデッドプールを呼び出し、ウェイドとウルヴァリンを倒すよう命じる。 ウェイド、ウルヴァリン、そして同時に現れたナイスプールと共にデッドプールらを迎え撃つが、一般的なデッドプールとは異なり再生能力の無いナイスプールは死亡。ウェイドとウルヴァリンはデッドプールらを倒すもののそれらは再生能力があるので、直ぐ復活。 これでは埒が明かない、と思っていた所、ピーターがその場に現れ、デッドプールらに戦いを止めるよう呼びかけると、デッドプールらはピーターを共通の友人として崇め始める。 その隙に、ウェイドとウルヴァリンはその場を逃れた。 カサンドラがウェイドの時間軸に姿を現したのは、ミスター・パラドックスが自分を裏切った、と知ったからだった。彼女はミスター・パラドックスの頭の中に入り、タイムリッパーに関する知識を全て得る。タイムリッパーでヴォイド以外の時間軸を全て消し去る、と彼女は宣言し、タイムリッパーがある場所へと向かう。 ミスター・パラドックスは、ウェイドとウルヴァリンに対し、カサンドラを阻止するにはタイムリッパーを破壊するしかないが、破壊するにはウェイドとウルヴァリンのどちらかが犠牲にならなければならない、と言う。ウェイドは、ウルヴァリンをタイムリッパーのエネルギー室から締め出し、自分が犠牲になる事に。が、最後の最後でウルヴァリンもエネルギー室に突撃し、二人でタイムリッパーを破壊する事に成功する。 ミスター・パラドックスは、現場に到着したTVA上層部に、カサンドラがこの時間軸にやって来てタイムリッパーを作り出して全ての時間軸を破壊しようとしたがウェイドとウルヴァリンの英雄的な活動により阻止された。死んだ二人は尊い犠牲だ、と言い訳してこの場を切り抜けようとする。 が、その場にウェイドとウルヴァリンが姿を現す。一人でタイムリッパーを破壊していたら犠牲になっていたが、二人で協力して行動した事で、助かってしまったのだ。 言い訳出来なくなったミスター・パラドックスは、TVA上層部に連行される。 TVA上層部は、ローガンの活動により、ウェイドの時間軸は安定し、消滅を免れた、と説明。 ウェイドは、TVA上層部に対し、ヴォイドにいる仲間を救ってほしい、ローガンの時間軸も修正してほしい、と頼む。 TVA上層部は、ヴォイドにいるエレクトラ、ブレード、ガンビット、そしてローラを解放する事を約束。また、ローガンに関しては、ローガンはこの時間軸にやって来てカサンドラを阻止するのが元々の運命だったので、最早何も正す必要は無い、と告げる。 ローガンは、ウェイドに別れを告げるが、その前にウェイドは自分が救う為に奔走した友人らと会ってほしい、と頼む。 ローガンは、ローラと共に、ウェイドの友人らに迎えられる。 ローガンからヴァネッサとの関係を修復してもいいのでは、と促されたウェイドは、躊躇いながらもその一歩に踏み出す。感想 デッドプールらしい、ハチャメチャな作品。 それにマルチバースが加わるので、一層ハチャメチャに。 マルチバースを絡めた事で一連のMCU作品が訳の分からないものになってしまっている、とデッドプールは作中でボロクソ言いながらも、マルチバースを思う存分利用してストーリーを進めているのがミソと言える。 マルチバースが絡むので、ストーリーはある様で無い。 時間軸を破壊するという企てを、デッドプールをメインに様々なヒーローが登場して阻止する、というだけ。 マルチバースなので、過去の様々な作品の登場人物が現れる。 また、作中でも指摘されているが、X-MENシリーズを手掛けていた20世紀フォックスと、アベンジャーズシリーズを手掛けていたマーベルスタジオが双方ともディズニー傘下となった事もあり、いずれも原作はマーベルコミックスでありながらもこれまで交わりが無かったX-MENシリーズとアベンジャーズシリーズが互いに絡むようになり、より混沌としている。 よって、綿密なストーリー運びを楽しむというより、往年の人気キャラと、それらを演じていた俳優らがどこでどういう形で出演しているのか探し出すのが最大の楽しみとなっている。 2017年公開のLOGANで死んだローガンも、別の時間軸のローガンはまだ生きている、という事であっさり復活。 演じていたヒュー・ジャックマンはLOGANでウルヴァリンからは降板するとしていたものの、本作のプロデューサーも務めているレイノルズとは、2006年公開のウルヴァリン:X-MEN ZEROでウルヴァリンとデッドプールとして共演していた縁もあり、再演を決意したらしい。作中では、「制作者の思惑通り90歳までウルヴァリンだ」とウェイドがウルヴァリンに言い放つ場面が印象的。 ウルヴァリンは本作で黄色いスーツを着用しているが、これはコミック版に沿ったデザインで、実写版でウルヴァリンがこの姿で登場するのは本作が初らしい。コミック版のデザインそのままで登場したら格好悪い、という理由だった様だが、本作では実写に堪えられるよう、細部にもこだわってデザインし直したからか、違和感は無い。 ウェイドが様々な時間軸のウルヴァリンを探し求めている場面では、数多くのウルヴァリンが登場。 いずれもジャックマンが演じていた。 一つの時間軸のウルヴァリンを除いて。 例外となるウルヴァリンは、ヘンリー・カヴィルが演じていた。実写版DCでスーパーマンを演じていたカヴィルがライバルのマーベルでカメオ出演するというのは、降板を余儀なくされたDCへの当てつけか。「このウルヴァリン、カヴィルじゃないか」とウェイドが作中でぼやくのも皮肉を後押ししている。 長年キャプテン・アメリカとしてアベンジャーズシリーズに出演していたクリス・エヴァンスも、それ以前に出演していたファンタスティック・フォーのヒューマン・トーチを再演。ファンタスティック・フォーもキャプテン・アメリカもマーベルコミックスでありながら劇場版は権利上の問題から互いに関わりが無い事から同じ俳優が演じている、という点を皮肉っていた。 二人の異なるマーベルヒーローに、2社の制作会社で起用されたクリス・エヴァンスの俳優としての優秀さが分かる。 ダフネ・キーンは、LOGANで演じたミュータントのローラを再演。 LOGANでは少女だったが、本作では大人に。 といっても、本作が公開された時点ではまだ20歳前。 LOGANに出演していた時は彼女は何歳だったんだ、と思ってしまう。 ウェイドを手助けするミュータントの一人として、ブレードが登場。 ウェスリー・スナイプスが20年以上前に演じたキャラを再演。 再演に当たり、スナイプスは肉体改造して撮影に挑んだという。 公開時でスナイプスは60歳を超えていたが、そうは見えないアクションを披露してくれた。 本作の流れからして、老いぼれたブレードとして登場したとしても違和感は無かったのかも知れないが、アクション俳優で、格闘家でもあるスナイプスはそれを許さなかったらしい。 本作では、マルチバースのデッドプールが大勢登場。 その中でも、ナイスプールは、主人公ウェイドを演じたライアン・レイノルズが演じていた。 主人公のウェイドはマスクを取ると顔が傷だらけだが、ナイスプールは顔に傷が無い為マスク無しで活動。ナイスプールは傷が一切無い頭を木端微塵にされて死ぬ、という運命に。 自分が演じているキャラに対する強烈な皮肉か。 他のマルチバースのデッドプールとして、子供版のキッドプールと赤ん坊版のベビープールが登場するが、演じていたのはレイノルズの子供らだったという。 プロデューサーだとこういう事も出来るようになるらしい。 デッドプールの犬版として、ドッグプールも登場。 演じているのはベギーという雌犬。 イギリスの出版社の企画で醜い犬を募集した所見事優勝し、「イギリス一醜い犬」として知られる様に。 それがきっかけでテレビ出演するようになり、今回の映画初出演に至ったという。 醜い事でキャスティングされるというのは、デッドプールならではの皮肉。 ナイスプールは、ウェイドとウルヴァリンに中古車を提供する。 その中古車はホンダ・オデッセイだった。 ウェイドは「オデッセイみたいな糞車寄越すな」とぶち切れるが、ホンダ・オデッセイてそこまで評判が悪いのか。 日本ではR15+指定の映画とあって、血飛沫の描写が結構ある。 ただ、一昔前だとこの手の描写は物凄く暴力的と捉えられがちだったが、今はCGの技術が発達してしまった為当たり前になってしまい、観る側も「手間が掛かったCGだな」という印象しか受けない。 慣れというのは恐ろしい。 それにしても、マーベルの親会社となったディズニーが、よくGOサインを出したな、と思う。昔のディズニーだとPG相当の映画でも駄目だったのに。 様々な映画会社を傘下に収める事になったので、レーティングにあれこれ口を出していたら収益性の高いものが制作出来ない、と腹をくくったのか。 それでも、作中では「ディズニーは暴力描写は何とか認めてくれたが、麻薬関連の描写は許してくれない」とウェイドが皮肉っているので、矢張り何でもOKという訳でもないらしい。 主人公のデッドプールことウェイドは一応ヒーローだが、救いようが無いダークなヒーロー。 自分勝手な行動で事をより複雑にしているし、他人を無駄に犠牲にする。 本作でもヒューマン・トーチとナイスプールを何でもない様に犠牲にしていて、特に後悔している様子も無い。 お咎めも無し。 こんな奴に世界が守られたら堪ったもんじゃない、と思ってしまうが、現実社会も結局こういう奴が何だかんだで生き残るんだろうな、と思ってしまう。 レイノルズは、2006年公開のウルヴァリン:X-MEN ZEROでデッドプールを初めて演じた。 コミック版デッドプールは単独シリーズが出版されるくらいの人気キャラだったが、ウルヴァリン:X-MEN ZEROの時点では実写版デッドプールは主人公ウルヴァリンを盛り立てるだけのサブキャラに過ぎず、登場場面も少なく、一回きりの扱いぽかった。 それから十年後、レイノルズはデッドプールを主人公に据えた映画を制作するに至り、続編まで制作された。 2006年の時点で実写版デッドプールがここまでの人気キャラに成長すると予想していた者は少なかった筈で、レイノルズの採用を決めた者は相当先見の明があった事になる。 また、デッドプールという、ウルヴァリン等と比べるとマイナーなキャラにキャスティングされてからそのキャラをずっと手放さず、プロデューサーにまでなってそのキャラを主人公とした映画を3本も制作してヒットさせたレイノルズの手腕も凄いとしか言い様が無い。 デッドプールは本作からMCUに組み込まれた、という事になっているので、次回作が制作されるとなったら完全にMCUの一員として活動する事になると思われる。 その姿を観たいという気がある一方で、これくらいで幕引きした方がいいのでは、とも思う。 皮肉やジョークも度を越えるとただただ悪趣味になるので。【先着特典】デッドプール&ウルヴァリン(オリジナル・サウンドトラック)(ジャケットデザイン・ポストカード) [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2,860円(税込、送料無料) (2024/8/2時点) 楽天で購入
2024.08.02
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1988年にアメリカのNBCで放映されたテレビミニシリーズ。 刑事ドラマ兼SF兼ホラーという意欲作。 各2時間の前後編で放映(CMも入るので、実際の長さは3時間半程度)。 主演はジョセフ・コーテスとマリアム・ダボ。 日本では「クライムエイリアン/何かがあなたを狙ってる」のタイトルでビデオが販売された。 原題は「Something is Out There」。粗筋 刑事のジャック(ジョセフ・コーテス)とフランク(ジョージ・ズンザ)は、市内の無差別強盗犯を捕まえるべく張り込みをしていた。 ジャックの横を女性ジョガーが走り抜けた直後、悲鳴が聞こえた。 女性ジョガーが強盗犯に襲われた、と判断したジャックは、直ちに悲鳴が聞こえた現場へ向かう。女性ジョガーのものらしいランニングシューズを発見。被害者と加害者は近辺にいる筈、と見てジャックは現場に駆け付けたフランクと共に辺りを捜索。 ランニングシューズが発見された場から少し離れた所に女性ジョガーの惨殺死体があった。 ジャックは不思議に思う。彼が悲鳴を耳にしてからランニングシューズが発見された場所、すなわち被害者が襲われた場所に駆け付けるまで30秒程度しか掛かっていない。現場は公園で、視界を遮るものは少ない。何者かが女性を連れ去っていたならその姿を目撃していた筈。また、悲鳴がしてから死体が発見されるまでは僅か数分。その僅かな時間で女性を切り刻み、ジャックらを含め誰にも目撃される事無くその場を去る、というのは無理があった。 ジャックはただの殺人事件ではない、と思ったが、駆け付けた殺人課の刑事らからは「お前の担当外だから失せろ」と言われてしまう。 それから数時間後、また別の殺人事件が発生。3人の男性が何者かに惨殺される、というものだった。手口からして、女性ジョガーと同じ者の仕業だった。 ジャックは現場に到着。野次馬の中に、女性ジョガーの事件現場でも見掛けた金髪の女性がいる事に気付く。 2か所で起こった殺人事件の現場に野次馬として現れるのは偶然にしては出来過ぎだ、と読んだジャックは、金髪の女性に声を掛ける。 金髪女性はその場から逃げ出した。 これは怪しいと感じたジャックは、金髪女性を追跡。 金髪女性は雑居ビルの屋上へと逃げる。 相手を追い詰めた、とジャックは思ったが、金髪女性は見た事も無い兵器で反撃してきた。 ジャックがひるんでいる隙に、金髪女性は隣のビルに飛び移り、逃走。ジャックも隣のビルに飛び移るが、上手くいかず、やっとの事で屋上によじ登った頃には金髪女性の姿は無かった。が、彼女が落としたらしい目的不明の装置を回収出来た。 ジャックは、フランクに対し、金髪女性は怪しい、変な兵器で反撃した、とまくし立てるが、フランクはそんな事ある訳無いと聞き流し、ジャックに帰宅を促す。 ジャックが言われるまま帰宅すると、自宅に何者かが侵入した形跡があった。しかもそいつはまだ中にいるらしい。 その時点で先程の金髪女性が襲い掛かる。 ジャックは金髪女性を何とか取り押さえ、署に連行する事に。 金髪女性がジャックの自宅に侵入したのは、落としてしまった目的不明の装置を奪い返す為だった。 ジャックはこの変な装置は何だ、あの変な兵器は何だったんだ、と問うが、金髪女性は質問に応じない。自分の名前はタラ(マリアム・ダボ)だとだけ答え、署に連れて行かないでほしい、と懇願する。 何も答えないのだから連行するしかないだろうと言うジャックに対し、タラは言う。自分は2件の殺人事件の犯人の正体を知っており、その目的も知っている、と。 興味を抱いたジャックは、だったら何もかも話せと迫るが、タラはここでは答えられない、ある場所に向かってくれ、と言う。 ジャックは半信半疑でタラが示す場所へと車を走らせる。 そこには小型宇宙船があった。 呆然とするジャックに、タラは説明する。 タラは別の惑星の宇宙機関の医療担当で、宇宙を航行する囚人護送船に搭乗していた。囚人は全員ヒトだった。一体を除いて。 そのヒトでない囚人とは、絶滅していたと思われていたゼノモーフという生物だった。あらゆる生物に変形出来る危険な存在で、その凶暴さから特別房に収容されていた。が、ゼノモーフは強力なテレバシーで他の囚人に反乱を起こさせ、自身を解放させる。 解放されたゼノモーフは囚人と乗組員を殺害し、護送船から脱出し、近くの惑星に降り立った。それが地球だった。 たった一人生き残ったタラは、ゼノモーフを追って地球に降りた。 ゼノモーフを含め囚人は体内に特別な薬物を投与されており、タラが持参した装置で追跡出来た。彼女が2か所の殺人事件現場に居合わせたのも、それが理由だった。 タラの突飛な話を聞き終えたジャックは、ゼノモーフとやら生物は何故人を立て続けに殺しているんだ、と訊く。 ゼノモーフはあらゆる生物に変身出来るが、細胞レベルで変身するので変身の対象がどういう生物で、どういう仕組みなのか調べる必要があった。2件の殺人事件は、ゼノモーフが人間とはどういう生物か学習する為のものだ、とタラは答えた。 ゼノモーフは何を狙っているんだ、とジャックは問う。 ゼノモーフは降り立った惑星の生物に成りすまして個体数を増やしていき、最終的にその惑星を乗っ取る性質があるので、野放しにしていたら地球もいずれそうなってしまう恐れがある、とタラは答えた。 だったらゼノモーフを阻止しなければ、とジャックが思っていたところ、フランクから連絡がある。2件の殺人事件の犯人らしき者を劇場に追い込んだ、と。 ジャックは、タラを連れてその劇場に向かう。 フランクは、解剖結果をジャックに伝える。死体は切り刻まれたというより、中から外に突き破って出た痕跡がある、と。そんな事有り得るのかね、と。 それを聞いて、ジャックはゼノモーフが如何にして「変身」しているのかが、何と無く分かってきた。 彼らをしり目に、警察の特殊部隊が劇場に突入するが、犯人は壁を破壊して逃げ去っていた。 タラは、ジャックから返してもらった装置を使い、ゼノモーフが下水道に逃れた、と教える。 ジャックとタラは下水道に降り、ゼノモーフを追うが、ゼノモーフは強力なテレパシーでタラの意識を奪った。 ここはひとまず退散した方がいいと悟ったジャックは、タラを連れて自宅へ逃れる。 タラは見た目は人間だったが、地球人とは異なる部分があった。最大の特徴がテレパシーが使える事だった。これによりタラの種族は言葉を口にしなくても意思疎通が図れるという利点があったが(地球人の心も読めてしまう)、その能力を持っているが故にテレバシーを遮断する装置を身に着けていないと強力なテレバシーを発せられるゼノモーフに脳がやられてしまうのだ。護送船が乗っ取られたのも、囚人らにはテレパシーを遮断する装置を配布されていなかったからだった。 回復したタラは、追跡装置の効きが鈍くなっている、と訴える。ゼノモーフの人間への変身の精度が高くなっている事を意味し、このままだと追跡装置で終えなくなる、と。 早くゼノモーフの居所を掴まないと、と判断したジャックは、警察のヘリコプターを借り、上空からゼノモーフを探す事にする。 その結果、ゼノモーフはある研究機関にいる事を掴んだ。 ジャックとタラは、その研究機関に向かい、研究員に成りすましたゼノモーフと対峙。その過程で研究施設は爆発を起こし、多数の死者が出る。ゼノモーフは爆発に巻き込まれて死んだと思われた。 現場に駆け付けたフランクは、ジャックに言う。何が起こっているのか分からないし、何故殺人現場の野次馬としてうろついていた女と一緒にいるのかも分からないが、勝手に行動し過ぎだ、署長がお冠だ、と。 ジャックは、フランクに対し、何も説明出来ないがタラを安全な場所に連れて行ってくれ、と頼み、署に向かう。 署に戻ったジャックは、研究施設を爆破して多数の死者を出した容疑で逮捕される。が、彼は署長の娘マンディ(キム・デラニー)の婚約者だった事から、署長が自らジャックを釈放。 署長は、ジャックに車に乗れと命じ、自ら運転して走り出す。 一体何が起こっているんだ、お前と一緒にいるとされる金髪女性は何者なんだ、と質問攻めにする署長であり将来の義父に対し、ジャックは何も答えられない。タラが何者なのか今は言えないが、とりあえずフランクに預けた、とだけ答えた。 重苦しい空気に耐え切れなくなったジャックはいつもの癖で煙草を出して火を点けようとする。 すると、署長が車内のライターを使えと促した。 その時点で、ジャックは異変に気付く。署長は大の煙草嫌いで、「娘と結婚するつもりなら禁煙しろ」が口癖だったのだ。 運転席にいる署長と思われた者は、ゼノモーフだった。ジャックに襲い掛かる。 ジャックは、とっさに署長/ゼノモーフのシートベルトを外し、急ブレーキを掛ける。 車は駐車してあった別の車と衝突。その衝撃で署長/ゼノモーフはフロントガラスを突き破って外に放り出された。 交通事故を目撃して集まって来た野次馬の一人が、フロントガラスを突き破って路上に倒れていた人物を助け起こそうとする。 ゼノモーフはその人物に襲い掛かった。 意識を回復したジャックが車から出ると、署長の遺体らしき残骸があった。何かが身体の中から外へ突き破った様な残骸だった。ゼノモーフは別の人物に成りすまして現場を去ったのだ。 その時点でジャックは重大な過ちを犯してしまった事に気付く。タラをフランクに預けた、とゼノモーフに告げてしまったのだ。 ジャックがフランクの自宅に急行すると、フランクはゼノモーフに襲われて致命傷を負っていた。フランクは間も無く息を引き取る。 タラは、隠れていて無事だった。 タラは、ゼノモーフの次の行動をジャックに伝える。ゼノモーフは地球を侵略するつもりでいるが、地球に適応する為に必要な材料が地球上には無いので、一旦護送船に戻る必要があり、多分既に戻っている筈だ、と。 ジャックは、タラと共に宇宙空間にある護送船に向かう事にする。 その前に、ジャックはこれまでの経緯を上司のヴィクター(グレゴリー・シエラ)に全て打ち明ける。ヴィクターはジャックの話を信じられなかったが、タラが乗って来た小型宇宙船を目の当たりにして、信じざるを得なくなった。 ジャックは、自分らが戻って来られなかったら地球が瀕している危機について皆に伝えてくれ、とヴィクターに言い残し、タラと共に宇宙に飛び立つ。 ジャックとタラは護送船に向かった。 護送船は、全長数百メートルもあった。 タラにとっては当たり前の護送船も、ジャックにとっては初めて見るもので、驚きを隠せない。 小型宇宙船の格納庫に入ると、ゼノモーフが使ったと思われる小型宇宙船があった。ゼノモーフが船内にいるのは間違いなかった。 ジャックは、自爆装置を起動して護送船を自爆させてゼノモーフ諸共始末してしまおう、と提案する。 しかし、タラは言う。自分は医療担当なので宇宙船の操作方法は分からない、そもそも自爆装置なんて聞いた事が無い、自爆させる装置を宇宙を航行する船に装備したら危ないじゃない、と。 護送船を地球の海に墜落する様設定して、ゼノモーフの小型宇宙船を破壊し、自分らは自分らが乗って来た小型宇宙船で衝突前に脱出する、と計画を変更。 ジャックとタラは二手に分かれる。ジャックはゼノモーフの小型宇宙船を破壊し、タラは宇宙船を地球に墜落する様設定する事に。 ジャックがゼノモーフの小型宇宙船を破壊していると、ゼノモーフによってゾンビ化した遺体に襲われる。必死に反撃していると、ゼノモーフの小型宇宙船だけでなく、自分らが乗って来た小型宇宙船も破壊してしまった。 タラは、護送船の艦橋に入り、地球に墜落する様、進路を設定し、ジャックと合流する。 その時点でゼノモーフと、ゾンビ化した乗組員や囚人が二人に襲い掛かる。 ジャックとタラは、ゼノモーフを収容していた特別房に逃げ込む。 護送船は海に墜落し、分解する。 ジャックは着水と同時に特別房の内壁を破壊し、タラと共に外に脱出。残骸にしがみついて海に浮かんでいると、側を通り掛かっていた船に間も無く救助された。 生還し、何とか無実が証明されたジャックだったが、ゼノモーフがまだどこかで生きているのでは、という悪夢に苛まされる様になる。感想 刑事ドラマで始まり、直後にSFになり、最終的にはホラーになるという、意欲的といえば意欲的、訳の分からないといえば訳の分からないドラマ。 どういう経緯で制作に至ったんだろう、と思ってしまう。 制作と脚本を手掛けたフランク・ルポはテレビドラマの「刑事ハンター」「特攻野郎Aチーム」「テキサス・レンジャー」等、刑事ドラマやアクション系を主に手掛けており、SFやホラーとは無縁の筈なので、猶更そう思う。 あくまでもテレビドラマで、劇場公開される大作映画として制作されたものではない。 アメリカのテレビドラマは今も当時も日本と比べて予算は大きいが、流石に無限の予算がある訳ではないので、本作の特撮は限定的。1980年代なのでCGも限られている(というか使われていなかった様な)。 護送船内外のシーンもそれっぽくは見える一方でどことなく安っぽく、これで本当に宇宙を航行出来るの、と疑ってしまうレベル。 説得力ある造形のものを製作出来ないという予算上の問題からか、ゼノモーフも結局どういう姿の生物なのかをはっきり映すシーンは無い。それが寧ろゼノモーフをより不気味な存在にしている、という効果をもたらしている面があるが。 1980年代にテレビドラマにありがちなご都合主義も散見。 ジャックはタフでそれなりに有能な刑事ではあるが、好人物とは言えず、何故署長の娘と婚約出来たのか、作中の言動を観る限りでは分からない。 一刑事に過ぎないジャックが誰にも止められる事無く市内を自由に動き回り、破壊行動し捲れるのもおかしい。 研究施設の爆破後は流石に連行されるが、「署長の娘の婚約者だから」という曖昧な理由で釈放されている。 ラストでジャックは全ての汚名を返上した、という事になっているが、その経緯は作中では取り上げられておらず、これだけの大事なのにどうやって無実を証明したり、捜査を終了させたのかが分からない。 2件の殺人事件、研究所の爆発、フランクと署長の死は全て殺人エイリアンの仕業でした、と認められた訳ではなかろう。仮にそう認められていたら別の方面で大事になっている。一方、一連の事件については未解決で終わらせます、では警察への信頼が損なわれる。 宇宙船の始末の仕方も問題。あれだけ巨大なものが墜落していたら、世界各国のレーダーに捉えられている筈で、「謎の宇宙船は海の藻屑となって跡形も無くなりました」とはならない。米軍が海底から残骸を回収し、ジャックやタラも執拗に尋問されていただろう。 計4時間のパイロットなのでそこまで描き切れなかった、という事もあるのだろうけど、端折り過ぎ。 タラが属していた宇宙機関も特に詳しく説明されていない。 ゼノモーフを危険な存在と見なしているのに、他の一般囚人と一緒に護送するというミスを犯している。ゼノモーフは大昔に絶滅したと信じられていて、対処の仕方が分からなかった、という面もあったのかも知れないが、それを考慮しても扱いが雑。 ゼノモーフ自体がどういう生物なのかも分からない。知的生命体らしさはないので、害獣と見なされていたと思われる。だとしたら有罪判決を受けた囚人と同様に扱うのは無理がある。害獣ならその場で駆除すればいいのに、何故一般犯罪者の様に扱っていたのか。 宇宙を航行する技術を持つ種族にしては生物保護の思想があやふや。 地球人が到底理解出来ない思想や倫理観を持っている、という事か。 出演者の中で最も光るというか、特徴的なのがタラを演じたマリアム・ダボ。 イギリス出身の女優で、本作の1年前に007/リビングデイライツでメインのボンドガールを演じている。 本作を観た時点では、何故ボンドガールがテレビドラマに出ているんだろう、と不思議に思った。 ボンドガールとして注目を浴び、ハリウッドに進出したものの、肌が合わなかった様で、本作から間も無くイギリスに戻り、イギリスやヨーロッパ限定の作品に注力。ハリウッドの大作映画には出演していない。 華やかなハリウッドでは俳優らはセレブリティ扱いされ、本人らもその様にふるまうが、イギリス等欧州では俳優というのはセレブリティなんかではなくあくまでも役を演じる職人だ、という考えが根付いているのかも知れない。「ボンドガールでその後大成したのはいない」とよく言われるが、殆どのボンドガール女優は「ハリウッド主体の大作映画の出演は007でこりごり」というのが実情ではないか。 ジョセフ・コーテス演じるジャックと、キム・デラニー演じるマンディは、本作では婚約している、という設定になっている。 ジョセフ・コーテスとキム・デラニーは、本作への出演がきっかけかどうかは不明だが、その後結婚している。 ただ、数年後に離婚。 どういう経緯で結婚し、どういう経緯で離婚に至ったのかね、と思わないでもない。 テレビシリーズのパイロットとして制作され、それなりの視聴率を稼げたからか間も無く各話1時間のテレビドラマとなった本作だが、1時間ドラマの方は視聴率がイマイチだったからか、たった6話で打ち切られている。 よくよく考えてみればジャックとタラは宿敵ゼノモーフを倒しており、伏線も本作内で全て回収している。その後に制作された1時間ドラマは「宇宙人女性と地球人男性の凸凹コンビが織りなす刑事ドラマ」という、緊迫感の無いものになってしまい、盛り上がりに欠けたからだろう。 ゼノモーフが実は死んでおらず、また二人に襲い掛かる、という展開も想定していたらしいが、それに至る前に打ち切られてしまった。 本作と似た雰囲気のテレビシリーズのパイロットに、「アナイアレイター」がある。そちらはパイロットで伏線を全く回収しておらず、今後放映されるテレビドラマで謎が徐々に明らかにされていく、という展開を予想させながらも肝心のテレビドラマが制作されずに終わっている。 ほぼ同時期に制作されたパイロットで、一方がテレビドラマ制作にGOサインが出て、もう一方がNGになった理由がよく分からない。パイロットの伏線の回収のされ方からすれば、アナイアレイターの方にテレビドラマ制作にGOサインが出ても不思議ではないのに。 偶然なのだろうが、本作とアナイアレイターの音楽は、いずれもシルヴェスター・リヴェイが担当。 本作より数年前に放送された「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」の音楽も担当している。 SFっぽいテレビドラマの音楽にはシルヴェスター・リヴェイを起用しろ、がこの頃の不文律だったらしい。 本作も「アナイアレイター」も1980年代のテレビドラマのパイロットにしてはストーリーも特撮も凝っているが、流石に現在のハリウッド大作と比較するとストーリーは小粒で、特撮も原始的に映る。 よって、現在の者に事前知識抜きで見せたら古臭くて退屈で陳腐な作品という評価しか得られないだろう。 ただ、リアルタイムで観た者からすると、最近のCG満載の大作よりはるかに印象に残っている。 忘れた頃にまた観たい作品である。【中古】クライムエイリアン(セット) [VHS]価格:34,230円(税込、送料別) (2024/6/28時点) 楽天で購入
2024.06.28
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2023年公開のスーパーヒーロー映画。 2018年公開の「アクアマン」の続編。 DCコミックスのスーパーヒーローの劇場版シリーズ「DCEU」第15弾。 ジェイソン・モモア、パトリック・ウィルソン、アンバー・ハード、 ニコール・キッドマン、ドルフ・ラングレンが前作と同じ役で出演。 制作会社のワーナーブラザーズの判断により劇場版シリーズは今後リブートされ、DCUとして再出発する予定なので、DCEUは本作を以て終了する事になる。 原題は「Aquaman and the Lost Kingdom」。粗筋 アーサー・カリー/アクアマン(ジェイソン・モモア)がアトランティス帝国の王の座に就いてから4年。 アーサーは、海底国ゼベルの王女メラ(アンバー・ハード)と結婚し、息子のアーサー・ジュニアを授かっていた。 アーサー・ジュニアを陸で育てる事にしたアーサーは、陸では育児、海では王として帝国を統治するという二重生活をしていた。 育児にはやりがいを感じていたアーサーだったが、帝国の王としての仕事にはやりがいを感じなくなっていた。 アトランティス帝国は海の7つの海底種族の王国の連合体で、それぞれに王がおり、アーサーはその一人。帝国の王とは7人の王の首席に過ぎず、絶対的支配者ではない。それぞれ思惑を持つ海底種族との折衝の上で統治しており、対応を誤れば帝国の王の座から引きずり降ろされる可能性もあった。 アーサーは、陸で育った事もあり、アトランティス帝国は海底に身を潜めるのを止め、陸の者に姿を現し、共に地球を守っていきたい、という考えを持っていた。が、陸をただの環境破壊者としか見ていない殆どの海底種族は、姿を現すとなったら、それは陸の種族を滅亡させる時だ、と言って譲らない。 アーサーは、帝国の王とはここまで自由の効かない職務なのか、と呆れる様になっていた。 一方、4年前にアクアマンとの戦いに敗れたデイビッド・ケイン/ブラックマンタ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は、父親を見殺しにしたアクアマンを相変わらず恨んでおり、復讐の為だけに生きていた。彼の命を救ったスティーブン・シン博士(ランドール・パーク)と共に、アトランティス帝国を捜索していた。ケインは、アトランティス帝国の遺跡を見付け、そこで黒い三叉槍を発見。手に取ると、それを生み出した古代アトランティス帝国の王族が憑依した。 5か月後。 ケインは地球の各地にあった保管庫から古代アトランティス帝国のエネルギー源オルカルコムを盗み出していた。 オルカルコムは強力なエネルギー源であるものの、グリーンハウスガスを大量に発生させるという短所があり、使用し続けると地球温暖化に至る。過去に古代アトランティス帝国は勿論、地球そのものを滅亡寸前にまで追い込んだ事から使用が禁止され、保管庫に封印されていた。 ケインが盗み出したオルカルコムを使用した事で地球全体の気温が上がり、各地で異常気象が発生していた。 ケインをこのまま野放しにしていたら陸も海も滅亡すると恐れたアーサーは、ケインの居所を突き止める必要があった。 過去にケインと接触した者で、アーサーが真っ先に思い浮かべられるのは、4年前の戦いで負かした異父兄弟でアトランティス帝国の前王オームだけだった。戦いに敗れたオームはアトランティス帝国に属する砂漠の国で投獄されていた。 オームの助けが必要だったが、他の海底種族の了承は得られそうも無かったので、アーサーは単独で砂漠の国へ向かい、オームを脱獄させる。 オームは異父兄弟のアーサーを快く思っていなかったが、ケインの行動でアトランティス帝国が滅亡の危機に瀕していると聞いたら嫌々ながらも協力せざるを得ない。 アーサーとオームは、ケインが南太平洋の火山島に潜んでいるという情報を得て、そこに向かう。 火山島は、オルカルコムにより発生したガスで生物が異常な進化を遂げていた。 二人は、ケインの秘密基地に潜入する前に、島の生物を戦う羽目になる。 協力して戦っている内に、4年前の王座を巡っての戦いが互いに対する誤解から生じていたと知り、わだかまりが少しずつだが溶けていく。 秘密基地に潜入した二人は、ケインと対決する。 しかし、古代アトランティス帝国の技術を操るケインは二人を圧倒し、秘密基地から逃走。 アーサーとオームは、ケインを取り逃してしまった。 戦いの過程で、オームはケインの力の源である黒い三叉槍が古代アトランティス帝国のアトラン王の弟で失われた王国ネクラスの支配者コーダックスが作ったものだと知る。コーダックスはオルカルコムを利用してネクラスを強国に育て上げ、帝国の王座を狙ったが、オルカルコムの使用の禁止を訴えたアトランに倒されてしまう。アトランは自身の血を使った魔法によりコーダックスをネクラスに封印し、ネクラスの存在そのものを歴史から消し去った。コーダックスは、黒い三叉槍を経てケインを操り、封印を解こうと企んでいた。封印を解くには、アトランの末裔の血が必要だった。 オームは、アトランの末裔は自分とアーサーだけだと述べる。コーダックスの企みが実を結ぶには、二人のどちらかを倒すしかない、と。 が、アーサーはアトランの末裔がもう一人いる事に気付く。息子のアーサー・ジュニアである。 アーサーらは、アーサー・ジュニアを預けていた陸の父親の家へと急ぐが、ケインは一足先にアーサー・ジュニアを誘拐し、ネクラスへと向かっていた。 ネクラスがどこにあるのか分からない以上、打つ手が無い、と思っていたアーサーらだったが、ケインと行動を共にしていたシン博士がケインの行動を疑問を抱いており、アーサーらに信号を発信して自分らの居所を教える。 ネクラスは南極にあった。 アーサーらはネクラスに向かう。 ネクラスで、アーサーはケインと戦うが、コーダックスが憑依したケインに歯が立たない。オームが加勢するが、ケインが投げ放った黒い三叉槍に再度触れてしまったところ、コーダックスはケインからオームに憑依。憑依されたオームはアーサーと戦い、アーサーの血を使ってコーダックスの封印を解いてしまう。 コーダックスが復活し掛けている中、アーサーはオームに対し兄弟同士のわだかまりを捨て、コーダックスを倒そうと説得。 コーダックスから解放されたオームは、黒い三叉槍をアーサーに渡す。アーサーは、黒い三叉槍でコーダックスを倒そうとするが、失敗。 しかし、その直後にアトランの三叉槍を再び手に入れ、それでコーダックスを倒す。 コーダックスが倒された事により、ネクラスは崩壊し始める。 アーサーは、ただの人間に戻っていたケインを救い出そうとする。が、ケインは差し伸べられた手を振り払い、亀裂に転落して最期を迎える。 アーサーらは、水面にまで脱出。 アーサーは、オームがこれまでの罪を償ったと見なす。ただ、他の海底種族がそれを許すとは思えなかったので、この戦いで死んだと報告する、と伝える。 オームは、アーサーを自身の兄弟と認めた上で、その場を去る。 アーサーは、陸と海の世界が協力して地球環境を保護すべきだとして、その存在を明らかにし、更にアトランティス帝国は国際連盟に加盟する意思がある、と表明した。 アーサーの演説は全世界に報じられ、希望をもたらす。 その場面をテレビを通じて目撃していたオームは、アーサーがお前も食べるべきだと言っていたハンバーガーを食す。陸の食べ物はイマイチだと思っていたが、その場にいたゴキブリを捕まえてハンバーガーに挟み込んで食べる。こうした方が美味しい、という顔をする。「陸の者はゴキブリを食べる。ゴキブリは旨いぞ」とアーサーが冗談で言ったのを真に受けてしまっていたからだった。感想 待望のアクアマンの続編。 ……となる筈だったが……。 前作はDCEUとして成功作だったのに、続編に至ると何故か失速するというDCEUのジンクスを破れず、低迷。 作品そのものの雰囲気は前作とそう変わらないので、ヒットしなかったのは不思議だが、スーパーヒーロー大作を巡る環境や、出演者の問題や、制作会社のゴタゴタで観客が白けてしまったらしい。 アベンジャーズ/エンドゲームまでは外れが無いと思われていたマーベル(MCU)も、エンドゲーム以降は観客離れが著しく、大作を公開し続けているもののこれまでの様な興行成績を挙げられないでいる。 スーパーヒーロー物はエンドゲームで卒業する事にした、という観客が思いの外多かったらしい。 元々マーベルの二番煎じと揶揄されていたDCEUは、開始時点で不利な状況で、マーベルより先に沈み、そこから這い上がれなかった。 ヒロイン役を演じていたアンバー・ハードは、元夫のジョニー・デップから虐待を受けていたと裁判を起こしたものの、敗訴。逆に慰謝料の支払いを命じられている。虐待を訴えていた女性が敗訴して支払いを命じられるというのは非常に稀で、本人の人格まで否定されてしまう。デップを貶めた女なんてアクアマン・シリーズから降板させろ、という署名運動が起こった程。 本作ではその影響で登場場面が大幅にカットされてしまったという。 特に前半は撮影してあったシーンを最小限選んで繋ぎ合わせたと見受けられ、アンバー・ハード演じるメラが亡くなった設定になった為アーサーが一人で子育てしているかの様な印象を受けてしまう。 が、後半ではメラが当たり前の様に登場してアーサーを手助けするという展開になっている。 前半と後半でメラ演じるアンバー・ハードの処遇が全然違うのは何故なのか。 ともあれ賛否両論あるアンバー・ハードを登場させ、良き妻を演じさせた事で観るのを取り止めた観客が多かった模様。 制作会社のゴタゴタも暗い影を落とした。 公開前に、制作会社はDCEUは本作を以て終了し、後釜となるDCUではこれまでの出演作の俳優らの殆どを起用しない、と明言。 俳優の一部は降板するつもりは無く、今後も関わりたいと言っていたにも拘わらず。 興行的にはイマイチだったにせよ、登場人物や演じていた俳優らに思い入れがあった観客らからすれば、制作会社の対応は裏切り行為でしかない。 撮影の段階では他のDCEUのスーパーヒーローを登場させるというアイデアもあり、撮影も進められていたというが、下手に登場させてしまうと今後のDCUに悪影響を及ぼすと判断され、全てカットされたらしい。前作も他のDCEUのスーパーヒーローは登場していなかったが、DCEUの最終作でもある本作でも一切登場させず、これまでDCEUで張っていた伏線を全て尻切れトンボのまま終わらせてしまった事も、観客をますます白けさせた。 観客を白けさせる要素が多くても、それらを吹き飛ばせる出来になっていれば問題は無かったのだろうが、残念ながらそこまでには至らなかった様である。 発足当初はダークなストーリー展開、ダークな登場人物ばかりだったDCEUも、シリーズ作が公開される度に明るくなっていき、本作に至ってはコメディの様相を見せる。 前作で死闘を繰り広げたアーサーとオームも、本作ではあっさりと和解。兄弟活劇というか、バディ活劇になっている。 アーサーと敵対する登場人物は全て亡き者になる一方で、アーサー側の登場人物の殆どが壮絶の戦いを生き抜き、ハッピーエンド、めでたしめでたしで終わっている(ケインから致命傷を受けた筈のアーサーの父親も、ラストではアトランティスの技術により命を取り留めている)。 胸糞悪い終わり方だと胸糞悪いだけで終わってしまうが、ひたすらめでたしめでたしなのもどうかね、と思う。 DCEU最終作である以上、めでたしめでたしで終わらせないと続きを作れと要求されてしまう、という事情もあったらしい。 敵のケインが古代アトランティス帝国の技術を手に入れたものの結局は戦闘力が若干ある人間に過ぎず、人間よりはるかに戦闘力のあるアトランティス人兄弟タッグからすれば物足りなかったのも問題か。 黒幕のコーダックスも魔法により封印されていて自ら動けず、ケインを通して野望に突き進むしか出来ない。漸く封印が解かれたと思ったらアーサーに始末され、終了。 地球最大の危機をもたらすという設定の敵にしては呆気無く、アーサー一人でも何とか対処出来たのでは、と思ってしまう。 前作の登場人物の殆どが引き続き再登場する一方で、前作でアーサーの指南役という重要な役割を担っていたアトランティス帝国の参謀バルコは登場しない。 前作と本作の間に死去した、という事になっている。 実際には演じていたウィレム・デフォーとスケジュール調整が出来なかったからだそうだが、何とか調整出来なかったのかね、と思ってしまう。 前作では物凄い存在感を示していたのに、本作では前半で死去した事が軽く触れられるだけで、回想シーンとしてでも登場しない。 指南役がいないアーサーは暴走しがちで、コメディの様相が出過ぎてしまい、作品そのものが重厚感の無いものになってしまった。 海底王国ゼベルの国王ネレウスを演じていたのは、ドルフ・ラングレン。 日本ではほぼ同じ時期に公開された「エクスペンダブルズ ニューブラッド」にも出演しているので、両方観るとドルフ・ラングレンの演技を立て続きに観られる事になる。 アクションスターでありながらスーパーヒーロー映画の役を貰えたという幸運に恵まれている。 当然ながら、演じているキャラは全くの別物。 エクスペンダブルズでは頼りない傭兵の役柄だが、本作では凛とした国王を演じている。 役が上述のアンバー・ハード演じるキャラの父親という不運もあってか、登場場面が大幅にカットされてしまったのは残念。 前作ではアーサーの指南役だったバルコが本作では登場しないので、制作上の都合によってはアーサーを下支えするキャラとなっていたかも知れない。 ストーリー上の疑問と言えば、古代アトランティス帝国の技術で武装したケインが、アトランティス帝国に難無く攻め込み、オルカルコムを盗み出してしまう事。 古代の技術しか持ち合わせていないケインを、最新技術で武装している筈のアトランティス帝国軍が何故撃退出来ないのか。アトランティス帝国は戦闘力が古代と比べて退化したのか、と思ってしまう。 簡単に撃退出来たら映画がそこで終わってしまう、という事情があったにせよ、不自然。 本作は、海と陸の民が協力し合って地球環境問題に挑む、という希望溢れるラストで終わっている。 が、海の国々と陸の国々との関係が上手く行くか、という事については懐疑的にならざるを得ない。 海の国々はそれぞれ思惑があり、中には陸の者は殲滅の対象でしかないという過激な国もあるし、陸の国々も互いで争っているくらいだから全ての国が海の国々と仲良くなれる筈が無い。 争いがより複雑化していくだけではないかね。 そもそもアトランティス帝国が陸と接触していなかったのは、それを予見していたからではないか。 本作を以て終わるフィクションの世界の今後について心配しても無意味なのだろうけど。 DCEUの最後を飾る本作だが、あらゆる意味で寂しさしか抱けないものとなってしまった。アクアマン [DVD]価格:1,166円(税込、送料別) (2024/1/24時点) 楽天で購入
2024.01.24
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アクション映画「エクスペンダブルズ」の第4弾。 シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ドルフ・ラングレン、ランディ・クートゥアが引き続き登場。 他に、ミーガン・フォックス、トニー・ジャー、レヴィ・トラン、アンディ・ガルシアが出演する。 本作を以てスタローンは「エクスペンダブルズ」の制作から身を引くという。 原題は「The Expendables 4」もしくは「Expend4bles」。粗筋 傭兵部隊「エクスペンダブルズ」のリーダーであるバーニー(シルヴェスター・スタローン)は、右腕的な存在のリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)の住まいを訪ねる。 リーは、元CIA局員で恋人でもあるジーナ(ミーガン・フォックス)と痴話喧嘩を繰り広げていた。 バーニーは、リーを連れ出し、酒場へと向かう。 何故酒場へ、と疑うリーに対し、バーニーは答える。自分が大切にしている指輪をジャンボ・シュリンプというチンピラとの指相撲で負けて分捕られてしまったので、取り返してほしいと。 そんな雑用で俺を呼び出すなと怒るリーに、腰を痛めてしまったので自分で取り返すのは無理だ、とバーニーは言い訳する。 リーは、嫌々ながらもジャンボ・シュリンプを倒して指輪を取り返す。 それから間も無く「エクスペンダブルズ」は、CIAの指示で傭兵のスアルト・ラフマト(イコ・ウワイス)が核爆弾を手に入れるのを阻止する為リビアへと向かう。 ラフマトの裏には正体不明のテロリスト「オセロット」の存在があった。バーニーは過去にオセロットにより仲間を失っており、彼にとってラフマトを捕らえる事は復讐の一環でもあった。 しかし、ラフマトはバーニーらの想定より早くリビアへ到着しており、既に核爆弾を奪って逃走し掛けていた。 バーニーは飛行機からリーらを下ろすと、上空からラフマト捕獲の援護射撃をするが、ラフマト一味は飛行機を撃ち落としてその場から逃走。 飛行機の操縦席の残骸には、損傷の激しい遺体が。遺体の指は、リーが取り返したばかりの指輪をはめていた。遺体がバーニーであるのは疑い様が無く、発見したリーは呆然とするしかなかった。 バーニーのお別れ会にCIA局員マーシュ(アンディ・ガルシア)が姿を現し、オセロットとラフマトの追跡は引き続き「エクスペンダブルズ」に任せるが、リーは外れてもらう、と通告。ラフマトを取り逃したのは、墜落し掛けていた飛行機を操縦するバーニーの「俺の事はいいからラフマトを追え」という指示をリーが無視して、バーニーを救おうとしたからだった。「エクスペンダブルズ」の新リーダーとして、ジーナが就任。 バーニーの死により、機密扱いだった文書が開示され、オセロットの正体を知っている目撃者が存在する事が明らかになった。 ジーナ率いる「エクスペンダブルズ」は、リーを残して飛び立つ。 リーは、ジーナの所持品に発信機を忍び込ませており、どこに向かうのかは把握していた。単独で「エクスペンダブルズ」が向かったタイへと向かう。 オセロットは、手に入れた核爆弾を米海軍空母に見せ掛けた船でロシアのウラジオストック辺りまで輸送し、起爆させるつもりだった。それにより第三次世界大戦を勃発させられる、と。 ジーナ率いる「エクスペンダブルズ」はその船に潜入するが、ラフマトが待ち構えていて、囚われの身になってしまう。ジーナらは、ラフマトに自分らの行動が筒抜けなのは、自分らの中に内通者がいるからなのでは、と疑心暗鬼に陥る。 ラフマトは、「エクスペンダブルズ」に同行していたマーシュを連れ出し、オセロットの正体を知っている目撃者との人質交換を交渉させる。交換される人質とはお前の事で、交渉に失敗したらお前の命は無いと思え、とラフマトはマーシュを脅した。 タイに到着したリーは、バーニーと以前行動を共にしていたデーシャ(トニー・ジャー)と出会う。 バーニーの死を知らされたデーシャは、自分は戦いからは身を引いているので戦闘には加われないが、船にまで連れて行く事は出来る、と述べ、リーを小舟で船へと連れて行く。 リーは、船に乗り移り、ラフマトを炙り出す為に戦闘を単独で開始。 間も無くデーシャも戦闘に加わり、二人で囚われの身となっていた「エクスペンダブルズ」を解放する事に成功する。 核爆弾は既に時限装置が起動しており、停止させるには起爆スイッチを手に入れなければならない事が判明。 起爆スイッチの電波の有効範囲が短い事から、ラフマトが持っている、と読んだ「エクスペンダブルズ」は、戦闘を開始。 リーは格闘の末ラフマトを倒す事に成功するが、彼は起爆スイッチを持っていなかった。 ラフマトは、起爆スイッチはオセロットの手元にある、と言い放って事切れた。 リーは疑問に思う。有効範囲が短い起爆スイッチをオセロットが握っているという事は、オセロットはこの船に乗っている事になってしまう。結局オセロットとは誰なのだ、と。 リーは、「エクスペンダブルズ」をデーシャの小舟に乗せ、逃す。自分は船に残ってオセロットの陰謀を阻止する、と。彼は艦橋に突入すると、船を方向転換させ、ロシアとは逆方向へと向かわせた。 混乱の中、人質の交換が行われる。 船に降り立った目撃者は、自分と交換される人質のマーシュを目の当たりにして愕然とする。 目撃者が知っているオセロットとはマーシュだったからだ。 本性を現したマーシュことオセロットは、目撃者を始末。第三次世界大戦を勃発させる計画を続行させる。 リーは、その場に現れ、マーシュから起爆スイッチを奪おうとするが、マーシュは起爆スイッチを海に遺棄してしまう。これにより、核爆発は阻止出来なくなった。 リーは、マーシュとの格闘に挑むが、その場に死んだ筈のバーニーがヘリで現れ、応戦。機関砲によりマーシュをあっさり始末する。 リーは、ヘリに飛び乗り、船から脱出。 バーニーはヘリの機関砲で船を沈没させ、核爆発が深海で起こる様にして、被害を最小限に食い留める。 お前は死んだ筈じゃなかったのか、とリーに責められるバーニーは答える。オセロットに関する機密情報は自分の死によって開示されるので、自分の死を偽装するしかなかった。情報が開示されればオセロットも動き出すのが予想出来たので、その瞬間を狙ってオセロットを始末したのだ、と。 飛行機の死体はお前じゃなければ誰だったんだ、と問うリーに対し、バーニーは答える。あれはジャンボ・シュリンプだった、と。指輪を奪った報いとして、自分の代わりに死んでもらった、と。「エクスペンダブルズ」は、バーニーの生還を祝った。感想 絶頂期でそれぞれ一時代を築いた往年のアクションスターにもう一度輝ける場を、として制作されたエクスペンダブルズ・シリーズも、本作で4作目となる。 流石に息切れしていて往年のアクションスターらが出演したがらなくなっているからか、本作ではこれまでのシリーズ作の出演者が再演するだけで、新たに加わる出演者は以前程メジャーなアクションスターでなくなっている。 これまでカメオ出演していたアーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ハリソン・フォードは一切登場せず、寂しいものとなってしまった。 リーダー役を演じていたスタローンも、本作では早々と退場。 ラストで再登場するが、これまでのシリーズ作とは異なり、主役はリーを演じるジェイソン・ステイサムに明け渡している。 実際、スタローンは本作を以てシリーズから離脱し、今後はステイサムに引き継いでもらいたい、との意思を表明している。 よって、本作ではステイサムが出演だけでなく制作にも携わっている。 シリーズをスタローン抜きでも続けられるよう、新たなメンバーを加えているが……。 新メンバーには、世界的な傾向に沿う為か、これまでひたすら男臭かった「エクスペンダブルズ」に女性2人が加わっている。 バーニー亡き後のリーダーとして就任したジーナと、ベトナム系女優レヴィ・トラン演じるラッシュ。 ラッシュは、「大作映画には東洋系の女優を起用なければならない」という俳優組合との決まり事でとりあえず生み出されたキャラの様で、作中にとりあえず登場しているだけ。それなりの見せ場はあるが、仮に登場シーンが全て編集でカットされていてもストーリーに何の影響も与えない。 単なる数合わせのキャラでしかなかった。 ラッシュ以上に残念なのがジーナ。 設定上は、バーニーに劣るともとらない有能な傭兵らしいが、本作を観る限りではその優秀さが全く見受けられない。 船でリーと再会した際、彼が自身の持ち物に発信機を仕掛けていたのは知っていた、とほざいているが、自身の失態を隠す為の負け惜しみとしか思えなかった。 単に態度だけはでかい、格好付けたがりの無能な女としか映らない。 以前観た007/ノー・タイム・トゥ・ダイは、引退したボンドの後任として女性工作員に007のコード番号が与えられている、というストーリー運びだったが、この女性007も態度がでかいだけでひたすら無能という印象しか受けなかった。 何故この手の「設定上は凄腕の女性」は、作品を通して観るとただただ無能に映ってしまうのか。 スタイリッシュにして格好付ければ、格好良くて優秀に映る、とでも思っているのか。「格好良い」とはそうじゃないのを制作者側は知ってもらいたいものである。 事実上の主人公のステイサムが登場するアクションシーンは見応えのあるものに仕上がっている。 ただ、ステイサム、てアクションスターとしてのキャリアは充分以上のものだが、絶頂期のスタローンやシュワルツェネッガーと比べるとランクが下回る印象。 本シリーズが今後スタローンが抜けて「ステイサムの映画」となってしまった場合、以前程魅力があるものになるのかは疑問。 登場人物の中で一番気の毒なのは、デーシャだろう。「人を一人殺す度に自分の一部を失っていく。何も残らなくなってしまう前に殺しの世界から足を洗った」としてエクスペンダブルズから引退していたのに、「バーニーはオセロット一味によって死んだ」とリーから知らされ、バーニーの復讐の為殺しの世界に戻り、殺し捲る。 結果的に、バーニーは死んでいない事に。 無駄に殺し捲った事になる。 デーシャが呆れ返ったのは想像出来る。 その為か、バーニーの復帰を祝う会では、デーシャの姿は無い。ますますタイの片田舎で引きこもってひっそりと暮らしそう。 デーシャを演じていたのはタイのアクション俳優トニー・ジャー。 出世作はOng-Bak: Muay Thai Warrior(邦題は「マッハ!!!!!!!!」)。 顔付は優男っぽいが、動きは凄い。 ただ、アクション俳優としては何の問題も無いのだろうが、イマイチインパクトに欠ける。「エクスペンダブルズ」側のメンバーも以前程のパワーを感じさせないのと同様、敵も以前程のパワーを感じさせない。 これまでのシリーズ作ではジョン・クロード・バン・ダムやメル・ギブソン等、主役級のアクションスターが敵を演じてきたが、今回黒幕マーシュを演じたのはアンディ・ガルシア。 アンディ・ガルシアは、「ザ・アンタッチャブルズ」「ブラック・レイン」等に出演しており、アクション映画と無縁の俳優ではない。 アカデミー賞にノミネートされた実績があるので、俳優としての格は寧ろスタローンを上回っているのかも知れないが、それ故にアクションスターではなく、この手の映画に敵として出演されても場違いな印象。ステイサム演じるリーに瞬殺されそうな存在としか映らなかった。 それもあってか、ラストでリーとマーシュは対峙するものの、格闘シーンは無く、マーシュは機関砲弾を撃ち込まれてあっさり死ぬ、という最期になってしまっている。 本作の敵は、CIA局員でありながらその裏でオセロットとしてテロ活動していたマーシュだった、という事になっている。 アメリカの利益の為に動く筈の機関が、アメリカの利益を損ねる陰謀に関わってしまっているという、この手の映画ではお馴染みのパターン。 このパターンがCIAの実情を反映しているとは思えないが、仮に一部でも反映していた場合、CIAという機関を解体した方が世界秩序に貢献するのでは、と思ってしまう。 本作は、CIAに対し裏切り行為を働いていたマーシュが始末されてめでたしめでたしで終わっているが、それはどうなのかね、と思ってしまう。 疑った見方をすると、より大きな陰謀が動いていた様な気がしてしまう。 CIA局員ともなれば、本来の任務で忙しい筈で、その裏で証拠を残さない正体不明のテロリストとしてテロ活動に手を染めるなんて出来るとは思えない。 そういう事から、「オセロット」はCIAが予算取りの為に生み出した実在しない架空のテロリストだったのでは、と勝手に想像してしまう。 そのオセロットを演じる者として、マーシュが指名され、彼は指示通りオセロットを演じていただけ。オセロットとしてラフマトの様な実際の反米テロリストと接触して炙り出し、CIAに捕えさせる、という役割を果たしていた可能性もある。 ただ、マーシュがいつしか「オセロット」の役にはまり過ぎて本物のテロリストの様相を見せてきたので、慌てたCIAが始末に動いた、という可能性は無いか。 もしくは、もっと単純に、時代を経るごとに「オセロット」が元々CIAが生み出した架空のテロリストだ、という真実を知る者がCIA内でも少なくなってしまい、「オセロット」が正真正銘の反米テロリストだと勘違いされて生みの親によって始末された、とも考えられる。 あるいは、残酷な考え方をすれば、「オセロット」が実は我々CIAの創作でしたとは今更認められず、外部から「オセロット」をいつまでも取り逃しているCIAは無能だと批判される様になってしまったので、演者の始末に動いた、とか。 マーシュからすれば、今回の「テロ工作」もラフマト等の反米テロリストを炙り出すCIAお墨付きの作戦で、自身は生き残り、また「オセロット」として次の「テロ工作」で別の反米テロリストを炙り出すつもりで、死ぬとは毛頭思っていなかったかも。 ただ、CIAという巨大組織からすれば、マーシュ程度の局員は使い捨ての対象に過ぎず、その通り使い捨てられてしまった。 よくよく考えてみると、バーニーが実は生きていました、ラストで武装ヘリに乗って登場してオセロットを始末しました、という展開はおかしい。 たった一人でこれだけの規模の偽装工作は無理で、かなりの手助けが必要だった筈。それを、仲間の筈の「エクスペンダブルズ」(右腕のリーも含む)にも明かさず実行出来た、というのは有り得ない。マーシュを「オセロット」として葬り去る事を決めたCIAが、バーニーを全面バックアップした、と考える方が自然ではないか。 CIAは、「オセロット」に代わる新たな「反米テロリスト」を創造し、予算取りの為にそのテロリストと戦う素振りを見せられる。 戦いで雇われる傭兵は、CIAからの報酬で食っていける。 もしバーニーがそれらを全て知っていたとすると、マーシュ以上の策謀者、という事になる。 思えば、ラストで、「ジャンボ・シュリンプに自分の身代わりとして死んでもらった」とバーニーは笑いながら言っていたが、作中のジャンボ・シュリンプはチンピラで、善人とは到底呼べなさそうな人物だったが、身代わりとして死ななければならない程の悪党とも思えなかった。 バーニーからすれば、ジャンボ・シュリンプなぞ取るに取らない存在に過ぎず、自身が率いる「エクスペンダブルズ」もその名の通り消耗品。 本作シリーズの最大の悪党はバーニーではないか。 今後のシリーズ作では、バーニーが実はテロリストの黒幕で、自ら生み出した「エクスペンダブルズ」と対峙する、「エクスペンタブルズ」の存在そのものが虚構だったのだ、という展開も有り得そう。 ストーリー上の最大の問題点は核爆弾の登場と言える。 最終的に、深海で爆発させる事で破壊力を極力弱めた、という事になっているが……。 実際に作中の様な核爆発が起こったら、一帯は放射能にさらされるので、その近辺にいたヘリや小舟に乗っていた「エクスペンダブルズ」は全員被爆しているだろう。 爆風の範囲外にまで逃げていたので無事でした、で済まされる話にはならない。 アメリカ人は未だに核爆弾を「通常爆弾の物凄くでかいバージョン」程度にしか捉えていないらしい。エクスペンダブルズ【Blu-ray】 [ ジェイソン・ステイサム ]価格:2,220円(税込、送料無料) (2024/1/20時点) 楽天で購入
2024.01.20
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マーベル・コミックのスーパーヒーローを題材としたアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。 2019年公開の『キャプテン・マーベル』の続編。「マーベル・シネマティック・ユニバース」の33作品目となる。 ブリー・ラーソンが引き続きキャプテン・マーベルを演じる。 また、マーベル・シネマティック・ユニバースの7番目のテレビシリーズ『ミズ・マーベル』の主人公ミズ・マーベルも登場。演じるのはテレビシリーズと同じくイマン・ヴェラーニ。 他に、サミュエル・L・ジャクソン、テッサ・トンプソン等、マーベル・シネマティック・ユニバースではお馴染みの俳優陣が登場。 原題は「The Marvels」。粗筋 キャロル・ダンバーズことキャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)は、銀河帝国クリーの母星ハラに戻り、帝国や彼女の記憶を支配していた人工知能スプリーム・インテリジェンスを破壊する。 これによりクリー帝国の民は解放され、銀河に平和が訪れると信じていたキャロルだったが、タガを失ったクリー帝国は内乱に陥り、惑星ハラは大気、水、そして太陽まで失うまでに至った。 惑星ハラの民は、キャロルを「アナイアレイター(全てを破壊する者)」と呼んで敵視する様になる。 惑星ハラを滅亡から救うには古代の遺物であるクォンタムバンドの力に頼るしかない、とクリー帝国の新たな指導者となったダー・ベン(ザウイ・アシュトン)は悟り、宇宙を駆け巡ってクォンタムバンドを探し、漸くその在処を突き止める。 しかし、対で利用する事で最大の威力を発揮する筈のクォンタムバンドは1つしかなかった。その1つだけでも強大な力を発揮出来るが、惑星ハラを救うにはもう片方も絶対必要だった。 ダー・ベンは、もう片方のクォンタムバンドを回収すべく、捜索を開始。手始めに、クォンタムバンドを使って宇宙空間にワームホールを生み出す。 宇宙ステーションの指揮官となっていた元SHIELD司令官ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)は、近くにワームホールが誕生したという報告をモニカ・ランボー(テヨナ・パリス)から受ける。 モニカがワームホールに近付くと、ひょんなことからダー・ベンがクォンタムバンドを回収した惑星にいたキャロルと入れ替わる。 また、もう片方のクォンタムバンドを偶然にも入手しその力を利用してミズ・マーベルというスーパーヒーローとなって活動していたカマラ・カーン(イマン・ヴェラーニ)とも入れ替わってしまう。 キャロルとモニカは、カマラの家に集合。 どうやらワームホールと接触した事で三人の内二人がスーパーヒーローの力を同じ時間に発揮すると瞬間移動で入れ替わってしまうようになってしまったらしい、という結論に至った。 キャロル、モニカ、そしてカマラの三人は、少し前までクリー帝国の宿敵とされていたスクラル人が居住する惑星ターナックスに向かう。 そこでは、スクラル人とクリー帝国との間で和平交渉が行われていたが、キャロルが姿を現した事で事態は一変。スクラル人はアナイアレイターと関わりを持っていた、と憤るダー・ベンは交渉を一方的に中止し、クォンタムバンドを使ってワームホールを誕生させ、惑星の大気を奪った。 これにより、スクラル人は惑星ターナックスを捨てざるを得なくなり、再び難民となった。 キャロルらは、スクラル人の惑星脱出を手助けする。 キャプテン・マーベルに憧れて「ミズ・マーベル」と名乗っていたカマラは、キャロルと共に活動出来て大感激。これからは三人で「ザ・マーベルズ」として活動しようと発言する。 キャロルは、クォンタムバンドは元々ワームホールのネットワークを作る為の道具だったらしいが、ダー・ベンがワームホールを作り捲った事でネットワークが不安定になってしまい、宇宙そのものが危険にさらされている、と告げる。 何故ダー・ベンはこんな無謀な事をしているのだ、とモニカが問うと、キャロルは自分がスプリーム・インテリジェンスを破壊した事が原因だと認める。どうやらダー・ベンは惑星ハラが滅亡の危機に陥っているのはキャロルのせいで、惑星ハラを救うにはキャロルが救って来た惑星の大気と水と太陽を奪うしかないと信じている、と。 ダー・ベンは、惑星ターナックスから大気を奪った。次に奪うのは水だと推測する。 キャロルが救った惑星の中で水が最も多いのは惑星アラドナだった。 三人は惑星アラドナに降り立ち、アラドナの王子であるヤンと対面。 ヤン王子は、妻の帰還を感激する。 モニカとカマラは、キャロルがプリンセスである事を知り、面食らっていたが、間も無くダー・ベン率いるクリー帝国軍が現れ、水を奪い始める。 三人はクリー帝国軍と戦うが、その過程でダー・ベンの最終的な目標が太陽系の太陽を奪う事だと知り、地球の側にテレポートする。 ダー・ベンを阻止する為三人は力を合わせて戦うが、ダー・ベンはカマラが身に着けていたもう片方のクォンタムバンドを奪う事に成功。 ダー・ベンは、対になったクォンタムバンドを身に着け、別のマルチバースへと続くワームホールを誕生させる。が、その行動により彼女は破滅する。 ダー・ベン亡き後も、ワームホールは拡大し続けた。塞がないと繋がった二つのマルチバースが崩壊する恐れが出て来た。 2つのクォンタムバンドを回収したカマラは、キャロルと共にモニカにエネルギーを充填する。 モニカはそのエネルギーを使ってワームホールの反対側から閉じる事に成功するが、別のマルチバースに封じられてしまった。 キャロルは、新たに得た力を使い、惑星ハラの太陽を復活させる。 カマラは、折角結成したチームが早くもメンバーの一人を失ってしまった事に落胆するが、新たなアベンジャーズを結成しようと思い立ち、二代目ホークアイとして活動するケート・ビショップに声を掛ける。 一方、別のマルチバースに封じ込められてしまったモニカは、ふと目を覚ます。 そこには、数年前に病で亡くなった母親がいた。 モニカは、母親と再会出来て大喜びするが、母親である筈の女性はモニカを全く認識しない。 そこに、ミュータントのビースト(ケルシー・グラマー)が現れ、どうやらこの女性は別のマルチバースからやって来て、そのマルチバースでは君はこの女性の母親らしい、と告げ、退室する。 モニカは、目の前の母親らしい女性はこのマルチバースでは自分の母親ではない、と悟り、困惑する。感想 アベンジャーズ/エンドゲームが公開されるまでは公開する作品全てが大ヒットしていた「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」も流石に弾切れになってしまった、と言われる様になってかなり経つが、弾切れ感は相変わらずで、本作もMCU復活の起爆剤にはなっていない。 制作元のマーベルスタジオがディズニーに身売りし、ディズニーがペイパービューのMCUテレビシリーズを乱発する様になった事もあり、劇場作はどちらかというとおまけというか、ペイパービューへの呼び水扱いとなってしまっているのが原因と思われる。 劇場作がヒットしないとペイパービューの視聴者が増えないので、ディズニーも力を入れていない訳ではないのだろうが、ディズニー自身のポリシーを押し付けざるを得ないので、従来の鑑賞者から反発を食らい、ますます手詰まり感が漂う(ディズニーはルーカスフィルムも買収しており、新スターウォーズ・シリーズでもディズニー・ポリシーを押し付け、結果的にスターウォーズを低迷させた張本人扱いされている)。 ペイパービューの呼び水として制作されたとしても、ストーリーがしっかりしていれば問題は無い。 ただ、『キャプテン・マーベル』の続編なのに、実は間にもう一作あって、それを観るのを忘れてしまったのか、と思ってしまう様な置いてきぼり感を抱くストーリー運びになっている。『キャプテン・マーベル』で強大な敵としてキャロルの前に立ちはだかった人工知能スプリーム・インテリジェンスは、本作ではあっさりと破壊されている。 というか、破壊は回想シーンで描かれているので、ちょっと前の過去の出来事となっていた。 続編というなら、本来だったらキャロルと人工知能スプリーム・インテリジェンスとの死闘を描き、その続編として本作を制作すべきだったが、肝心のエピソードがすっ飛ばされてしまった感じ。『キャプテン・マーベル』でキャロルが記憶を取り戻すまで上官だったヨン・ロッグは生きている筈なので、続編に登場してキャロルを再び苦しめる存在になっても良かった筈だが、全く顔を見せない。 スプリーム・インテリジェンスは、『キャプテン・マーベル』ではキャロルを惑わす為、彼女が敬愛するウェンディ・ローソンの姿で登場していたが、本作の回想シーンでは単なる顔型のコンピューターとして登場するだけで、これといった抵抗もせず破壊されてしまっている。この程度の人工知能が何故クリー帝国を支配し続けられたのか、と疑ってしまう。 本作では、スプリーム・インテリジェンスに取って代わる敵として、ダー・ベンが登場。ユニバーサル・ウェポンの使い手で、戦闘力はキャロルの手にも余る程だが、スプリーム・インテリジェンスと違って全能的な存在ではなく、圧倒的な破壊力を持つキャロルの敵にしては迫力が無い。 監督のニア・ダコスタが黒人女性とあってか、本作では登場人物の殆どが黒人俳優を起用。 MCUは元々黒人俳優の起用が少なくないが、拍車がかかった感じ。 モニカを演じるのは黒人女優のテヨナ・パリス。 MCUではレギュラーのフューリーも、原作のコミックでは白人キャラだったが、いつしか黒人キャラとなり、MCUでは黒人俳優のサミュエル・L・ジャクソンが起用された事で完全に黒人キャラになってしまっている。 ダー・ベンを演じたザウイ・アシュトンも黒人女優だった。 黒人以外のマイノリティの起用も顕著。 ミズ・マーベルは、コミックスでイスラム教のキャラとして考案された事もあり、MCUではパキスタン出身の女優イマン・ヴェラーニが演じている。 ヤン王子は、韓国人俳優のパク・ソジュンが演じている。 そんな事もあり、主人公であるキャロルを演じる白人女優のブリー・ラーソンが浮いた存在になってしまっている。 マイノリティの俳優の起用の重要さは理解出来るが、ここまでポリティカル・コレクトネスを追求する必要があったのかと思ってしまう。 キャロルことキャプテン・マーベルを演じる白人女優のブリー・ラーソンが整った容貌なのに対し、カマラことミズ・マーベルを演じるパキスタン系女優のイマン・ヴェラーニはぽっちゃりしていて、お世辞にも美人とは言い難い。 コミックスのミズ・マーベルがそういう設定なので、それに見合った女優を起用した、という事なのかも知れないが、そうだとすると何故こういう時に限って原作コミックスに忠実なのか、ポリティカル・コレクトネスとはこの程度なのか、と勘繰ってしまう。 本作は、『キャプテン・マーベル』の続編と捉えた場合、単独作品として充分楽しめるものに仕上がっている。「MCUの他の劇場作やテレビシリーズを全て観ていないので理解出来ない部分もあるが、それはそれでいいか」と割り切る事が出来れば、だが。 MCUに関する事前知識が全く無い鑑賞者や、伏線を全て理解出来ないと気が済まない鑑賞者からするとペイパービューへの呼び水だらけで消化不満になる可能性が大。 割り切れるか割り切れないかで評価は分かれそう。 エンドクレジット後のシーンで、同じくマーベルコミックスのシリーズ作Xメンのキャラが登場。 Xメン・シリーズは、劇場版の制作権が20世紀フォックスに売り渡されていた為、マーベルスタジオはXメンをMCUに登場させる事は出来なかったが、20世紀フォックスもマーベルスタジオもディズニーの傘下に入ったので、今回のシーンが実現可能になったらしい。 アベンジャーズとXメンはそれぞれ別のユニバースで活動していたが、今後は繋がっていく、という展開も有り得る事になっている。 それが良い事なのか、悪い事なのかは分からない。 本作は、黒人女性監督作としては歴代最高の興行収入を稼いだが、MCU長編映画としては最低に近い興行収入で、MCUの手詰まり感をますます印象付ける結果となってしまった。マーベルズ ステッカーキャラクター メタリックステッカー CAPTAIN MARVEL MARVEL インロック コレクション雑貨 キャラクター グッズ メール便可【MARVELCorner】価格:329円(税込、送料別) (2023/12/7時点) 楽天で購入
2023.12.07
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ディズニーによる長編アニメ映画。 2009年公開。 現時点ではディズニーによる最後のセルアニメ映画となっている。 E.D.ベイカーのジュブナイル小説「カエルになったお姫様」を下敷きに、ディズニーがアレンジを加えたもの。「カエルになったお姫様」も、19世紀のグリム童話の一つ「かえるの王さま」を元にしている。 原題は「The Princess and the Frog」。粗筋 ニューオーリンズのフレンチ・クオーターに住むティアナ。 彼女の父親は料理が上手く、レストランを開業する夢を抱いていたが、実現出来る前に死去。 ティアナは、父親の夢を代わりに実現するのが自分の使命だと考え、開業資金を貯める為ダイナーでアルバイトをして頑張っていた。 ある日、マルドニア王族の一員であるナヴィーン王子がフレンチ・クオーターを訪れる。彼は、ティアナの幼馴染であるシャーロットの父が開催する仮装パーティーに招待された。 シャーロットは幼い頃からプリンセスになる事を夢見ており、シャーロットの父は娘の夢を実現させる為、財力に物を言わせ、招待したのだった。 調理人として雇われたティアナも、パーティーに出席する事となった。 パーティーで得られる報酬で、貯金が開業に必要な額に達すると喜んでいたティアナだったが、それから間も無く不動産屋から連絡が入り、ティアナがレストランを開こうとしていた物件に別の買い取り手が現れたので、話は無かった事にしてくれ、と言われてしまう。 漸く夢が実現すると思っていたのに、目標を失い、うなだれるティアナ。 シャーロットに促されたティアナは、渋々パーティーで調理人として仕事をしていると、一匹のカエルが突然人間の言葉で話し掛けて来る。 カエルは、ブードゥの使い手であるドクター・ファシリエに促されるままに魔法を掛けられてしまったナヴィーンだと言い張った。パーティーに出席しているナヴィーンは、実はファシリエにより姿を変えられた召使いローレンスだ、と。 ナヴィーンに成りすましたローレンスは、シャーロットに求婚。ファシリエとローレンスは、シャーロットの父親のの財産を奪うつもりだった。 カエルに変えられたナヴィーンは、隙を見て脱出したが、カエルの姿のままではどうする事も出来ない。人間の姿に戻るには「プリンセスとキスをする」が条件だった。 ナヴィーンは、偶々プリンセスに仮装していたティアナの姿を見て、彼女を本物のプリンセスだと勘違い。彼女にキスしてくれるよう頼む為、声を掛けたのだった。 ティアナは自分はプリンセスなんかではないと拒否するが、ナヴィーンは聞き入れない。 執拗に迫られたティアナは、ナヴィーンをキスするが、彼は人間の姿に戻らなかった。 逆に、ティアナがカエルに変わってしまう。 ナヴィーンは、自分がカエルのままであり、ティアナがカエルになってしまった事に驚く。偽のプリンセスだったのか、と。 ティアナは、自分はプリンセスなんかではないと説明した筈だと憤慨。 二人は衝突するが、ファシリエらが現れた事もあり、共にパーティー会場から脱し、ジャングルに辿り着く。 ジャングルで、人間と一緒にジャズ演奏したいという夢を持つワニのルイスと、一番星をメスのホタルだと勘違いして恋しているホタルのレイと出会う。 一行は、魔法を解く事が出来るというブードゥの尼僧ママ・オーディの元へ向かう。 苦労の末ティアナらはママ・オーディを探し出し、人間に戻して貰うように頼む。 が、ママ・オーディは「本当に大切なものは何かを考る事」と言うだけで、二人を人間に戻そうとしない。 夜の12時までにシャーロットにキスしてもらえば人間に戻れるとママ・オーディに言われたティアナらは、ニューオーリンズ行きの船に乗る。 ナヴィーンは、ティアナと行動を共にしている内に彼女を愛する様になったと自覚し、彼女にプロポーズしようとするも、レストランを開業するという夢をひたすら語る彼女を前に、自分の気持ちを押し込めるしかない。その直後、ファシリエによって捕らえられてしまう。 ティアナは、結婚式のパレードの最中、ナヴィーンに成りすましたローレンスとシャーロットが寄り添う姿を目撃。 ナヴィーンがシャーロットに鞍替えしたと勘違いして、ティアナはショックを受ける。 レイは、ナヴィーンがティアナを捨てたとは信じず、偽ナヴィーンに迫ると、本物のナヴィーンがファシリエに捕われている事を知る。魔法の力の源であるタリスマンをファシリエから奪い取り、ティアナに渡す事に成功するが、ファシリエによって踏み付けられてしまった。 ファシリエは、ティアナの前に姿を現し、タリスマンを返すよう、迫る。返せば、お前の夢を叶えてやる、と。 ティアナは、ファシリエの魔術により夢のレストランと、その夢を実現出来なかった父親の幻想を見せ付けられる。が、彼女は「本当に大切なものは愛だ」と気付き、タリスマンを破壊する。 ファシリエは、タリスマンの破壊によりブードゥの魔物との密約を果たせなくなり、その対価として魔物らに引き込まれ、自分の墓に取り込まれた。 ティアナは、パレードに出席しているナヴィーンが偽物だと知り、「貴方と一緒でないと夢は実現しない」と告白し、ナヴィーンと気持ちを確かめ合う。 シャーロットはその現場に立ち会い、、ナヴィーンとの結婚を諦め、二人を祝福する。 その時点で、ルイスが瀕死の状態のレイを連れて来る。 レイは、ティアナとナヴィーンの気持ちが通じ合った事を見届け、息絶える。 悲しみに暮れるティアナらは、ジャングルに戻り、レイを水葬。 その直後、夜空の一番星の隣に、もう一つの星が輝いているのを知る。レイはあの星になったのだと感激する。 ティアナとナヴィーンはカエルの姿のまま、ママ・オーディの立会いの下、結婚式を挙げる。式の最後でキスをすると、二人は人間の姿に戻った。ティアナが王子のナヴィーンと結婚した事により、正真正銘のプリンセスとなったので、キスにより魔法が解けたのだった。 二人はニューオリンズに戻ると、レストランを開業。 レストランでは、ルイスは店のミュージシャンとして人間と一緒にトランペットを演奏。 ティアナとナヴィーンは、二つの星が輝く夜空の下で踊り明かす。感想 本作が制作された時期は既に3Dアニメが席巻しており、ディズニーはセルアニメの長編映画を制作しない方針だったが、経営陣の交代によりセルアニメこそディズニーの原点だという意見が優勢になり、セルアニメが復活する事となった。 批評家の評価は高く、興行収入も高かったが、見込み程の興行成績を挙げられず、また経営陣が交代。 その後制作された3Dアニメ長編が大成功を収めた事もあり、本作がディズニー最後のセルアニメ長編となってしまった。 本作が期待以上の興行成績を挙げられなかったのは、セルアニメか否かというより、ストーリーそのものにあまり魅力が無かったのが大きい。 仮に3Dアニメだったとしても、興行成績は変わらなかったと思われる。 最大の問題が、何だかんだ言って子供向けのアニメ映画なのだからテーマを絞ってシンプルに、分かり易く、取っ付き易くすべきなのに、欲張ってあれこれ取り入れててんこ盛りにしてしまった事。 原作の「カエルになったお姫様」や「かえるの王さま」は欧州が舞台のおとぎ話なのだから、そのまま制作すれば分かり易かったのに、そういうのは既に多く制作してきたので新鮮味が無いし、とにかくアメリカのおとぎ話にしたいという勝手な理由でアメリカを舞台に。 ディズニーの方針であるポリティカル・コレクトネスを反映する為、主人公は黒人に。黒人を主人公とするなら舞台はニューオーリンズがいいだろう、という事でその通りになった。 ニューオーリンズといえばブードゥだから、その使い手を悪役に。 おとぎ話なのだから王子様とプリンセスの登場は外せないし、「カエルになったお姫様」と「かえるの王さま」をベースにしたいのでカエルの登場も外せない。 主人公は夢を見るだけのプリンセスでは現代には馴染まないので、夢の実現の為に一生懸命働く真面目な女性にしなければならない。 ……そんな訳で、主人公ティアナは真面目に働くごく普通の黒人女性として登場するが、それ以降はブードゥの魔法によってカエルの姿で活躍し、人間の姿を再び見せるのはラストだけ、という訳の分からない展開に(ポスターでは人間の姿のティアナが描かれているので、猶更)。 カエルにこだわるなら原作に忠実して主人公を白人にして舞台を欧州にすべきだったし、ニューオーリンズにこだわるのだったらカエルの部分を完全に排除すべきだった。 ニューオーリンズにやって来た王子様がブードゥの使い手による陰謀に巻き込まれ、それに調理担当として偶々その場にいた黒人女性も巻き込まれて騒動の末に2人で悪役を倒して結ばれる、という展開でも充分成立しただろうに。 人間の言葉を話せる動物等が登場すれば子供が喜んでくれる、という発想は安易過ぎないか。 大人が鑑賞するには幼稚過ぎ、子供が鑑賞するには複雑過ぎ。 どういう層に見てもらいたいのか、分かり辛い作品。 主人公のティアナが魅力に乏しいのも問題。 日本のアニメだとしょうもないチンピラが主人公となっているのが多く、何故こんなチンピラを見せられるんだ、もっとまともな奴を主人公に据えろ、と思ってしまう。 が、いざ本作の様に真面目一辺倒の者が主人公に据えられると、物足りなく感じてしまうのは観る側の贅沢か。 ティアナは働き者で、周囲から愛され、本人も周囲の者を愛し、苦難にも前向きに取り込み、非の打ち所が無い。 ナヴィーンと行動を共にする様になってから必ずしも全ての人間と渡り合えない事が明らかにされ、欠点が見えてくるのは皮肉。 ティアナの相手役はナヴィーン。 正真正銘の王子様。 働き者で非の打ち所が無いティアナに対し、王子として恵まれた環境で生まれ育った為遊んで暮らすしか能が無い。召使のローレンスをこき使い、裏切られてカエルに変えられてしまう。それくらい人望が無い。 カエルに変えられたのは自業自得で、ティアナと会っていなければカエルとしての命を全うしていただろうが、運命的な出会いで人間に戻れ、ティアナというプリンセスを得る。 作中では改心し、ティアナと共に店を盛り上げていく、というエンディングになっているが……。 一時的な感情に過ぎず、店の切り盛りにも、ティアナにも飽きて、元の遊び人に戻ってしまう可能性が高い気がする。 ティアナの幼馴染として、シャーロットというキャラが登場。 ティアナとは対照的なキャラとする為、白人で、金持ちの令嬢で、苦労知らずで、王子様と結婚する事を夢見るしょうもない女性として描かれている。 こんなキャラだと、白人への差別にならないか、と思ってしまう。 最終的にはナヴィーンとの結婚を諦め、ティアナとナヴィーンの結婚を心の底から祝福するので、根が単純で自身の欲望に素直なだけで悪人ではない、となっているので、救いはあるが。 ティアナを導く者として、尼僧ママ・オーディが登場。 ジャングルの中に住み、ブードゥを使う恐ろしい存在としてレイやルイスから恐れられていたが、実際に会ってみると言動が異常なだけの老女だった。 人間の姿に戻してほしい、というティアナの頼みにも禅問答で応じるだけに留まり、それどころか夜の12時までにナヴィーンがシャーロットにキスしてもらえば人間に戻れるという、的外れのアドバイスを与える。 本当にブードゥの使い手だったのか、と疑ってしまう。 キャラの雰囲気は、宮崎駿監督作のジブリアニメ「千と千尋の神隠し」の銭婆を連想させる。 製作総指揮のジョン・ラセターは、ジブリと交流があるという事で、オマージュしたらしい。 魔法の使い手という意味では、銭婆や湯婆婆の足元にも及ばない。 本作は、ファシリエとローレンスを除けば、これといった悪人が登場しない。 そのローレンスも所詮欲に負けてしまった小悪党に過ぎない。ファシリエにそそのかされなければ、不満を抱えながらもナヴィーンに付き添う召使いで有り続けただろう。 ファシリエが本作の最大の悪人ではあるが、ブードゥを操る以外は田舎町で何とか一発当ててやろうと企む一詐欺師の域を超えておらず、大悪党というレベルではない。 子供向けのアニメだから、極悪人が登場されても困るが。 ラストで、ティアナは念願のレストランを開業し、ハッピーエンドで幕を閉じる。 ティアナの真面目さからすると、こじんまりとした、家庭的な店になるのかと思いきや、ジャズバンドの演奏があるナイトクラブの様な店だった。 冒頭の幼いティアナと父親とのやり取りで連想する様な、近所の者が気軽に訪れて食事を楽しめる店ではない。 ナイトクラブだと、料理の腕前なんて関係無いのでは、と思ってしまう。 ビジネスを成功に導くには「Dream big, start small, act now(夢は大きく、初めは小さく、行動は今直ぐ)」というが、2番目の「start small」を完全に無視している。いきなり大風呂敷を広げて事業を始めても、技量や経験不足で失敗するだけ。 作中では、ティアナに対し別の買い取り手が現れたから、という理由で物件の売り渡しを渋る不動産屋が悪者扱いされていた。が、単なるダイナーのウェイトレスの経験しかないティアナが、ナイトクラブを運営するノウハウがある訳が無く、借金の支払いが滞るのを恐れる不動産屋が売り渋るのも当然で、悪者扱いされる筋合いは全く無い。 寧ろティアナの店がいつまで持つのか、と心配になる。ナヴィーンの経済援助があるから大丈夫、という見方もあるが、ナヴィーンの親は息子を一度は勘当しているのだから、店が経営難に陥って息子が金をせびりに来るようになったら、また勘当するだろう。 本作の教訓は、「夢はただ願うだけでは実現せず、自ら動く事で実現する」という、物凄く現実的なもの。 確かにそうなのだが、プリンセスと王子様を登場させ、二人が呪いでカエルになり、最終的にはキスで元通りになるというおとぎ話の教訓にしては夢が無い。 鑑賞者の子供にどの程度理解してもらえるのか。 黒人女性を主人公に据えたので、本作はアメリカの黒人のウケがいいのかと思いきや、奴隷制度の一大地域であったニューオーリンズを舞台にしたり、ブードゥを安易に黒人と結び付けて描いたりした事で、必ずしも歓迎されていないという。 ポリティカル・コレクトネスは、結局誰にも歓迎されない。 ディズニーによるセルアニメとあって、登場人物の表情や動きは3Dアニメでは有り得ないくらい豊か(日本人からすると不自然過ぎるくらい豊か)なのは特筆すべき点。 日本のアニメは日本国内では世界一のレベルであるかの様に報じられているが、本作を観る限り日本のアニメはまだまだアメリカのものに劣る。 というか、表現の文化が全く異なり、「世界一のレベル」が国によって異なる事を改めて感じさせる。プリンセスと魔法のキス MovieNEX [ アニカ・ノニ・ローズ ]価格:3,520円(税込、送料無料) (2023/12/4時点) 楽天で購入
2023.12.04
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テレビシリーズを原作として制作されたイコライザー・シリーズ第3弾。 主人公のマッコールはデンゼル・ワシントンが引き続き演じる。 原題は「The Equalizer 3」。日本では「THE FINAL」となっていて、最終作である事を強調している。 制作者側も3部作としているので、最終作と称しても間違いは無いのだろうが、興行収入によっては第4弾の制作も有り得るので、日本で勝手に「THE FINAL」としてしまうのはどうかねと思わないでもない。粗筋 アメリカ情報局の特殊工作員であったロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、イタリアのシチリア島を牛耳るマフィアが所有するワイナリーを襲撃する。 目的の品を取り返したマッコールはその場を去ろうしたが、マフィアのボスの子供に油断し、銃弾を背中に受けてしまう。 重傷を負ったマッコールはイタリア南方のある田舎町で力尽き、車の中で意識を失っていたのを地元の国家憲兵に属するジオ(エウジェニオ・マストランドレア)に発見される。 ジオは、マッコールを町で長年医者を務めてきたエンゾ(レモ・ジローネ)の元に運ぶ。 エンゾとジオは、マッコールが被弾していた事を知るが、エンゾは「転んで負傷した」という事にし、ジオもそれを受け入れる。 マッコールはエンゾの計らいで、町で療養する。 一方、CIA局員のエマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)は、マッコールからワイナリーで偶然発見した代物について通報を受ける。現場に赴くと、ワイナリーでは死体と共にテロリストに流れていると思われる薬物や資金を発見。捜査を開始する。マッコールの身元や居所も直ぐ掴み、接触。何故自分に通報したのか、と彼に問うが、マッコールは適当にはぐらかす。 マッコールは、町の人々との交流を通し、町での生活に安らぎを感じる様になっていたが、この町も平和でない事に次第に気付いていく。 マルコ(アンドレア・ドデロ)一味が率いるチンピラが、場所代と称して町内の店をカツアゲしていたのだ。支払いに応じない者に対し、マルコは暴力を振るって金をもぎ取っていた。 マルコはナポリを拠点とするマフィアのボス・ビンセント(アンドレア・スカルドゥツィオ)の実弟とあって、町民は誰一人反抗出来なかった。 マルコは、ビンセントに対し、カツアゲでは物足りないのでもっとでかい事に参加させてくれ、と願い出る。 ビンセントは、カツアゲはただの始まりで、町ごと地上げしてリゾートとして開発するつもりだ、という計画を打ち明ける。その為にもカツアゲをしっかりやれ、と命じる。 マルコは、カツアゲを激化。支払いに応じていなかった店を放火する等の行動に出る。 監視カメラ映像から、ジオは放火犯らしき人物らが利用していた車両のナンバープレートについて、当局に問い合わせする。しかし、その捜査活動はマルコ側に筒抜けだった。 マルコ一味はジオの住まいを強襲し、ジオの家族の前で暴力を振るい、次はお前の妻と子供を痛め付けるぞと脅迫する。国家憲兵のジオも、ここまでされると手も足も出なかった。 マルコの行動を監視していたマッコールは、後日ジオに対し難題を押し付けようとしたマルコを撃退。 正体不明のアメリカ人に恥をかかされたマルコは、直ちに戻ってマッコールをぶっ殺してやると宣言。 が、マッコールはその行動を読んでいて、マルコ一味を容赦無く殺害する。 弟を殺されたビンセントは、息が掛かっている警察署長に対し、弟を殺した奴の正体を掴んで来いと命じる。 警察署長は、今は派手な行動を控えた方がいい、と忠告する。CIAの女がやって来て、ビンセントが絡んでいる薬物や資金の取引について嗅ぎ回っている、と。 ビンセントは、その忠告を一蹴。警察署長にも暴力を振るう有様だった。 エマは、ビンセントらによって車ごと爆殺されるところを、マッコールの電話による警告で間一髪で逃れたが、重傷を負ってしまう。 ビンセントは、町に自ら乗り込み、弟を殺した奴を差し出さないと町民を全て殺すと脅迫。 町民が集まる中、マッコールが姿を現し、お前の弟を殺したのは俺だと名乗り出る。 ビンセントはその場でマッコールを殺そうとするが、町民がスマホでその場面を撮影し始める等して抵抗した為、お前を殺しに必ず戻って来る、と告げて町を一旦離れる事に。 住まいに戻ったビンセントは、翌日にも町に戻って町ごと潰してマッコールも殺すと誓い、その夜は眠りに就く。 が、それはマッコールの思うつぼだった。マルコの背後にいた黒幕の正体を掴み、その居所も掴めたので、マッコールはその夜の内に強襲。 ビンセントの手下を抹殺してビンセントを孤立させた後、気を失わせる。 目を覚ましたビンセントは、マッコールに告げられる。お前が扱っていた薬物を大量に投与してやったので、過剰摂取で間も無く死ぬ、と。 解放されたビンセントは、街中を彷徨った後、薬物による症状で死ぬ。 それを見届けたマッコールは、その場を去る。 CIAとイタリア当局による合同捜査により、マフィアが中東のテロリスト集団と組んで薬物取引して資金を得ていた事実が明らかになり、多数が摘発された、というニュース報道が、テレビで流される。 その報道を病室で見守るエマの元に、マッコールが見舞いに来る。 エマは、マッコールが何故イタリアにまでやって来てマフィアを始末し捲ったのか、その理由を問う。 マッコールは答える。知人がサイバー強盗で老後の資金を盗まれてしまったので、それを取り返そうと辿って行ったらワイナリーに行き着いたので、そこに乗り込んで金を回収しただけだ、と。ワイナリーを隠れ蓑にしていたマフィアが薬物取引や中東のテロリスト集団と絡んでいたのは乗り込むまで全く知らなかったし、その薬物取引にビンセントが絡んでいて、ビンセントが自分が療養していた町を地上げしようとしていたのは全くの偶然だった、と。 エマは、知人の為にそこまでやるのか、と疑うが、マッコールはワイナリーから回収した金を病室に残して去る。 エマは、マッコールに教えられた老夫婦の元を訪れる。その老夫婦は老後の為の資金を全て失い、家を手放さなければならないところだった。エマは、マッコールが回収した金を返すが、老夫婦はどこの誰が回収に動いてくれたのか、全く分からなかった。マッコールと老夫婦の接点は、ほんの一瞬の出来事だったのだ。 CIA本部に戻ったエマは、イタリアでの薬物取引の摘発の功績が認められ、昇進する。同時に、マッコールからのメッセージを受け取る。お前の亡き母も喜んでくれるだろう、という内容だった。エマは、マッコールが自分の母親でCIA局員だったスーザン・プラマーの知人である事を知った。感想 イコライザー・シリーズ第3弾。 第1弾、第2弾と同様、マッコールの容赦無い殺戮が描かれている。 よって、日本ではR-15に指定されている。 圧倒的な強さで、無敵のマッコール。本気を出すと、イタリア国家機関を牛耳るマフィアですら、一方的に倒されてしまう。 そこまで隙が無い筈のマッコールなのに、冒頭のワイナリーの襲撃後、マフィアのボスが連れ添って来た少年に背を向けてしまい、撃たれ、重傷を負って今回の舞台となる町に辿り着き、新たな戦闘に巻き込まれていく。 子供でも油断出来ないというか、子供だからこそ油断出来ない筈なのに、何故背を向けたのか、よく分からない。 マッコールの事だから、ワイナリーで薬物を発見し、只事じゃないと察して、ある町が関係していると推測し、その町に潜伏し易い状況を作る為あえて銃弾を受けた、というのは考え過ぎか。 マッコールは死体の山を築き、その殺戮の現場に警察が乗り込んで捜査を開始するが、警察の手がマッコールに及ぶ気配を見せないのは、第1弾と第2弾と同様。 用意周到に殺すので証拠を残さない、という設定なのかも知れないが、その割にはビンセントに薬物を投与して殺した時は、意識が朦朧として街中を彷徨うビンセントの後を付け、彼が息を引き取るのを大勢の目撃者の前で確認した上でその場を立ち去っている。これはどう切り抜けたのか。「知らない人が自分の側で突然倒れただけ」と言い訳したのか。 この手のご都合主義を一切排除して作品を制作しろ、となったら何も制作出来なくなってしまうんだろうけど。 敵も味方も全てマッコールの思惑通りに動き、死ぬべき者は全て死に、助かるべき者は一応死なずに助かり、とりあえずハッピーエンド。 R-15指定されているとあって、暴力の描写はかなり強烈だが、頭を空っぽにして楽しめるハリウッド的なエンターテインメント作品に仕上がっている。 マッコールは普段は温和な性格で、一般市民の間に難無く溶け込めるが、実際は殺しのプロ。 いざ殺すとなると相手が抵抗する間も無く、問答無用で、無表情で、効率的に殺す。 が、それは雑魚相手の場合に限り、本当の悪に対してはじわじわと効率悪くなぶり殺しにする残虐性も持ち合わせている。 演出の仕方によっては非常に陳腐になってしまうが、この二面性を説得力ある形で演じられるのは流石デンゼル・ワシントン、といったところ。 本作を観ると、イタリアはマフィアが牛耳る危険な国家、という印象を受けてしまうが、実際はどうなのかね、と思う。 確かに、マフィアのルーツとなる地かも知れないし、マフィアが現在も暗躍しているのかも知れないが、作中の様に表立って悪事を働けるのか。 流石に今は摘発されていると思うが。 本作で、イコライザー・シリーズは完結との事だが、シリーズ作はどれも評価が高く、興行的にも成功しているので、要望があれば続編が制作されそう。 デンゼル・ワシントンも、一応その意欲はあるとの事だし。 一方、もし続編が制作されるとなったら、本作の続きではなく、前日譚になる可能性もあるという。デンゼル・ワシントンより若い俳優を起用し、マッコールの工作員時代を描くものを構想しているとか。 それだと全く違うものになってしまうので、それはどうかねと思う。 本シリーズは、アメリカではそれなりの扱いを受けているが、日本では全く取り上げられていない。 デンゼル・ワシントンも来日してプロモーションする等はしていない。 本作に於いては、公開を偶然知り、急遽劇場に足を運んだ。 邦画も洋画も結構しょうもないものは執拗に推してくるのに、何故本シリーズがここまで冷遇されているのか分からない。イコライザー [ クロエ・グレース・モレッツ ]価格:1,320円(税込、送料無料) (2023/10/26時点) 楽天で購入
2023.10.26
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トム・クルーズによるミッション:インポッシブルシリーズ第7弾。 シリーズとしては初の2部作で、本作が第1部となる。 トム・クルーズが引き続き主人公のイーサン・ハントを演じる。 他に、レギュラーキャラとしてヴィング・レイムスとサイモン・ペッグも出演。 過去作に登場したレベッカ・ファーガソン、ヴァネッサ・カービーも出演する。 原題は「Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One」。粗筋 ロシアの新型潜水艦セヴァストポリは、長期に及ぶ試験運航を終え、間も無く母国に帰港する予定だった。高度なAIシステムによる推測航法(デッドレコニング)を採用しており、様々な国の領海に侵入しながら相手国に全く感知されず、事実上「存在していない無敵の潜水艦」となっていた。 そんな中、セヴァストポリは正体不明の潜水艦を検知。 その潜水艦は、通常の潜水艦としては有り得ない動きを見せた。 ふいに姿を現した相手の存在や動きに動揺しながらも、セヴァストポリの乗組員は「自分等は存在していない」のだから大丈夫だ、と楽観的に考える。が、楽観的な観測を裏切り、相手の潜水艦は攻撃態勢に入り、魚雷を発射。 セヴァストポリも応戦の為、魚雷を発射した。 相手が発射した魚雷は、セヴァストポリによる回避行動を全て搔い潜って迫ってきた。直撃は避けられない、と乗組員は身構えるが、直撃の時間が過ぎても何も起こらなかった。 乗組員が確認すると、魚雷は消え失せていた。 改めて一帯を探索すると、正体不明の潜水艦もいなかった。 艦長は、いわゆる幽霊を相手に戦っていたのだ、と悟る。どうやらソナーを含むコンピュータシステムに異常があった、高度なAIシステムにも不具合は起る、と。 非常事態と思っていたのは非常事態では無かった、と乗組員は安堵するが、別の非常事態に陥っている事に気付く。先程応戦の為発射した魚雷が旋回し、自分等を目掛けて迫っている、と。 艦長は魚雷に対し破壊命令を発させるが、魚雷はそれを受け付けず、セヴァストポリを直撃。 世界中の海を誰にも気付かれず航行したセヴァストポリは、自ら放った魚雷により誰にも知られる事無く撃沈され、一帯には乗組員の遺体が浮かび上がった。 IMF工作員イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、使命を与えられる。 旧知の元MI6工作員イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)が、ある目的専用の鍵を持ってアラビア砂漠に消えたので、回収して来い、と。鍵が何の目的のものなのかは知る必要は無い、とにかく鍵を回収しろ、という内容だった。納得が行く使命では無かったが、放っておくとイルサはIMFが雇った賞金稼ぎらに殺されてしまう。 イーサンはアラビア砂漠に飛び、賞金稼ぎグループの後を追って、先にイルサの居場所を突き止め、鍵の回収に成功する。 ワシントンDCでは、アメリカの諜報機関のトップが集まって会合を開いていた。会合にはCIA局長キトリッジ(ヘンリー・ツェニー)、国家情報長官デンリンガー(ケイリー・エルウィス)も参加し、ある脅威について話し合っていた。 その脅威とは、新型AI"エンティティ"だった。 エンティティは人工知能を持つ様になったコンピュータウィルスで、世界中の防衛、情報、金融ネットワークに侵入しては情報を集め捲っていた。現時点では侵入して、情報を盗み取った後、僅かな痕跡を意図的に残して消え失せるだけで、何を企んでいるのか全く不明だったが、今後脅威になるのは明白だった。一方で、エンティティを捕らえて管理する事が出来れば、その者は圧倒的な力を手に入れられる。よって、世界各国はエンティティを捕らえる事には躍起になっていたが、ネットワーク上に存在するだけで実体が無いので、捕えようが無い。エンティティを唯一制御可能にするのが、2片を1つに合体させる事で機能する鍵だった。 イーサンに回収させた鍵は、その片方だったのだ。 会合に潜入していたイーサンは、自国のアメリカを含めどこの国が手に入れようとエンティティは人類にとって今後大きな脅威となると考える。鍵のもう片方を手に入れ、合体した鍵を使って自分がエンティティを破壊するしかない、と決断した。 キトリッジは、イーサンに対し、そうした場合はアメリカも敵に回す事になるぞと警告するが、イーサンは警告を無視し、その場から逃れる。 鍵のもう片方は、アブダビの空港に現れる者が持っている、という情報を得たイーサンは、仲間のルーサー(ヴィング・レイムス)とベンジー(サイモン・ペッグ)と共にアブダビに向かう。 任務は困難を極めるものとなった。鍵はエンティティを制御する為のものと思われるが、どこでどう使うのか分からない以上、その情報を握っている者に一旦手渡さなければならない。そしてその者からエンティティを破壊する為の情報を得て、その場に向かってエンティティを破壊する必要があった。 鍵のもう片方を持ってアブダビ空港に現れた人物(鍵を持たされている事を全く知らなかった)から奪える前に、女泥棒のグレース(ヘイリー・アトウェル)が間に入り、鍵を盗み取る。イーサンはグレースと接触し、どこへ持って行くつもりなのか聞き出そうとするが、グレースはその場から逃げ出した。 グレースは、イーサンとは旧知の間柄の女武器商人アラナ・ミツソポリス(ヴァネッサ・カービー)に雇われていた。 アラナは、自身の雇い主にその鍵を売り渡すつもりでいた。 イーサンは、ベンジー、ルーサー、イルサと共に、アラナが主催するパーティーに潜入し、アラナと接触。 が、その場にはエンティティの代理人だというガブリエル(イーサイ・モラレス)と仲間の暗殺者パリス(ポム・クレメンティエフ)もいた。イーサンとガブリエルは、イーサンがIMFの一員になる前からの間柄だった。 イーサンは、アラナに鍵を雇い主に売り渡さない様、説得を試みるが失敗。 その時点でガブリエルは言う。エンティティがイーサンの仲間であるイルサかグレースのいずれかを死なせる事に決めた、と。 イーサン、アラナ、ガブリエルらは離散し、グレースとイルサはガブリエルを追う。 イーサンはグレースとイルサの後を追うが、エンティティやパリスに妨害され、漸く駆け付けた頃にはグレースは意識不明の状態で、イルサはガブリエルに殺害されていた。 イルサを救えなかった事に心を傷めるイーサンを目の当たりにしたグレースは、イーサンのチームに加わる事を決める。 アラナは、鍵を売り付ける為にオリエント急行に乗る事になっていた。 そこでイーサンは計画を立てる。オリエント急行に潜入し、アラナに成りすましたグレースをアラナの雇い主と接触させ、鍵をどこでどう使うのか聞き出す、と。イーサンはアラナの弟に成りすまして同席するつもりだったが、変装用のマスクを製作する機械が故障してしまい、グレースをアラナに変装させるマスクしか製作出来なかった。イーサンは、グレースに対し単独でオリエント急行に潜入するよう、説得する。自分は別の手で潜入する、と。 ルーサーは、この時点でチームから一旦離れると宣言。エンティティの一部が残っていると思われるハードディスクを解析するので、ネットワークから完全に切り離された場所に行かなければならない、と。ルーサーは去り際に、イーサンに対し警告を与える。ガブリエルと再会する事になると思われるが、鍵の使い方を知っているのはガブリエルだけなので殺してはならない、イルサの為の復讐心を抑制しなければならない、と。復讐心に負けてガブリエルを殺したら、エンティティが最終的に勝つ事になる、と。 イーサンは、ルーサーの警告を肝に銘じ、ベンジーと共にオリエント急行に潜入する計画を立てた。 オリエント急行に姿を現したガブリエルは、機関士らを殺害し、列車を暴走させる。その後、オリエント急行に乗っていたデンリンガーと対面。 デンリンガーは、2片を合体させた鍵は潜水艦セヴァストポリのコンピュータ室のものだと告げる。セヴァストポリのコンピュータにはエンティティの初期バージョンが記録されており、鍵さえあればエンティティを制御する事も破壊する事も可能だ、と。沈没したセヴァストポリが現在どこにあるのか知っているのは自分だけなので、手を組もう、とガブリエルに持ち掛ける。 ガブリエルは、セヴァストポリの居所を知っているのはデンリンガーだけだとの確認を取りたかっただけで、デンリンガーやその背後のアメリカという国家と手を組む気は全く無かった。用済みと見なしたデンリンガーを殺害し、同席していたパリスも、イーサンの為に自分を裏切るだろうとして殺害する。 一方、アラナに変装したグレースは、アラナ本人を気絶させた後、アラナに成りすまし、アラナの雇い主と接触する。 その雇い主とはキトリッジだった。 鍵を巡る騒動は、エンティティを自分等のものにしたがっていたアメリカの諜報機関が仕掛けたものだったのだ。 キトリッジは、グレースが装っているアラナに、合体した鍵を1億ドルで買い取る、と申し出る。 アラナを装うグレースは、「グレースという女に手を出さない」という条件を取り付けた上で、1億ドルを自身の銀行口座に振り込ませようと計画を変更し、イーサンを裏切る事に。 が、1億ドルが口座に振り込まれる直前になって、矢張りイーサンを裏切る事は出来ないと心を変え、キトリッジから鍵を奪って逃げる。 その時点で意識を回復した本物のアラナが現れる。 これまで取引していたアラナは偽物だと気付いたキトリッジは、部下にグレースを追わせる。 グレースが追い詰められた時点で、イーサンが列車に突入し、グレースを救うが、その騒動で鍵を紛失。 ガブリエルが鍵を拾い上げる。 イーサンはガブリエルを追って格闘するが、ガブリエルは列車から飛び降りて逃げる。 その時点で、ガブリエルは列車の数キロ先にある橋を爆破させた。 イーサンとグレースは列車全体が谷底へ転落するのを防ぐが、自身らが絶体絶命の危機に陥る。二人は、ガブリエルが殺し損ねたパリスによって救われる。 重傷を負っていたパリスは、鍵とセヴァストポリの関係性をイーサンに告げた。 イーサンはグレースを連れてその場から退却しようと決めるが、その時点である問題に気付く。 計画は、イーサンが合体した鍵を奪って一人で列車から逃れる、というものだったので、脱出用のパラシュートは一人用だった。グレースについては、身柄をアメリカ当局に確保させ、その後キトリッジの下に出頭してIMFの一員になる、という筋書きだったのだ。 アラナが鍵を売り渡す相手がキトリッジだったという事実は、イーサンすら予測出来なかった。 グレースは、自分の事は自分でどうにかするから一人で逃げろ、とイーサンに言う。イーサンは、それを聞いて列車から飛び降りる。 イーサンが去った後、グレースは素顔でキトリッジと対面。IMFの一員になる、と申し出た。 イーサンは、ベンジーが待っている場所に降り立った。 ベンジーは、鍵をどこで使うのか分かった所で、ガブリエルが合体した鍵を持っている以上、手も足も出ない、ミッションは失敗に終わった、と嘆く。 それに対し、イーサンは言う。合体した鍵は自分が持っている、と。ガブリエルを追って格闘している間に、ポケットから盗み取った、と。 イーサンとベンジーは、セヴァストポリの居所を突き止め、鍵を使ってエンティティを破壊する、という新たなミッションに挑む。 そのミッションは、ガブリエルとエンティティ、そして自国アメリカを含む世界中の国々から追われながらの危険なものになる事が予想された。感想 シリーズ第7弾。 初の2部作という、意欲的なものになっている。 よって、第1部の鍵を手に入れるというミッションは、次のミッションの始まりに過ぎない、というラストで終わっている。 第1部が公開された時点で第2部は制作中、となっていて、第1部が絶対ヒットする、という保証が無いのにあえて2部作にしたという事は、制作者側は本作に相当自信を持っている事になる。 シリーズお馴染みの派手なアクションも健在。 金を掛けてやればここまでの映像が出来るのか、と感心。 エンティティの支配を可能にする鍵を巡って攻防が繰り広げられ、謎の人物ガブリエルが本作に於いてイーサンの敵、という事になっている様だが、実際のところ世界平和の最大の脅威になっているのは主人公が属する国というか、その国全体を牛耳ろうと企む諜報機関、というこれまで散々見てきたパターンに陥ってしまっている。 イーサンは、エンティティという敵と、自国の諜報機関との戦いを繰り広げる展開に。 要するに、内輪揉め。 アメリカの諜報機関が下手に動くから世界の秩序が乱れ捲る訳で、アメリカの諜報機関が動いていなかったら、世界はどれだけ平和になっていただろうか、と本作を通じて思ってしまう。 あくまでもフィクションの世界だからと言いたいが、現実の世界も似た様なものだろう。いや、現実の方がもっと酷いと思われる。 本作では、レギュラーキャラ、準レギュラーキャラが多数登場。 その中で、シリーズ作に何作か登場して重要な役割を果たしてきたイルサが殺されてしまい、退場。 代わりにグレースという新キャラが加入。 男優はともかく、女優は年齢を重ねるとアクション映画は体力的にもビジュアル的にも厳しくなるので、降板は止むを得ないのだろう。 が、代わりとなる新キャラをすんなり受け入れられるか、というと話は別。 グレースは世界各国を駆け巡って捜査当局を欺いてきた天才的な女泥棒、という設定だが、ひたすら自己中心的で可愛げが無くて魅力に乏しいキャラ。 イルサが死に、こちらはただ気を失っていただけ、という展開になった時は「何故こっちが死なずに済むんだよ」と思ってしまったし、「途中でとっと殺されてくれ」と願っていた。願いに反して最後まで生き延び、次回作にも登場するらしい。 グレースを演じるヘイリー・アトウェルも特段美人な女優ではなく、作中で「いい女」扱いされても白けるだけだった。 ヒロインを演じる女優の採用はしっかりして欲しいし(制作費1億ドルを軽く超える大作なのだから、オーディションに金や時間が掛けられない訳ではあるまい)、ヒロインの描き方ももっと考えてほしい。 敵のガブリエルを支える女暗殺者として、パリスが登場。 演じるのはポム・クレメンティエフ。 フランス語を喋るし、名前もフランスっぽい割には顔立ちがやけにアジア人っぽい、と思っていたが、フランス人の父親と韓国人の母親を持つ、との事。 最近は韓国系の俳優の台頭が著しい。 ポム・クレメンティエフはマーベルシリーズにも登場しているらしいが、調べてみても特殊メイクのせいで「ああ、この人か」と気付けない。 イーサンの敵として登場するので、ヒロインではないが、グレースよりこちらの方がキャラとしては興味深かった。 本作は、このまま第2部に突入するらしい。 トム・クルーズも還暦を迎えるので、一部ではこの7作目/8作目でミッション・インポッシブルシリーズは打ち止めになるという噂もあるが、トム・クルーズ自身はそのつもりは無いと言っているとか。 60代になるとこの手のアクション映画は難しくなるし、体力的にはOKでも、実年齢が60代の老人俳優が20代ばりに世界を駆け巡って冒険する役を演じる、というのは観る方にとって無理が生じそうだが。 ミッション・インポッシブルは、元は1960年代のテレビシリーズ。 ジム・フェルプス率いるIMFのチームが不可能なミッションに挑む、という内容だった。 1980年代には再度テレビシリーズとして復活。 オリジナルと復活バージョンが両方とも人気になる、という稀なケースに。 1990年代にトム・クルーズ主演で映画化された際は、ジム・フェルプスが長年率いてきたチームを裏切って皆殺しにした、という真相に対しテレビシリーズに馴染んでいた者から反発を食らった。1960年代と1980年代のテレビシリーズでジム・フェルプスを演じていたピーター・グレーブスからも「こんなのミッション・インポッシブルじゃない!」と批判の声が上がった。 ただ、トム・クルーズはミッション・インポッシブルへの思い入れが強かった様で、興行的にも成功していた事もあり続編が次々作られ、テレビシリーズより映画シリーズの方が息が長くなり、現在では「ミッション・インポッシブルは元はテレビシリーズだった」という説明が必要になるくらいに。 トム・クルーズの目の付け所の良さと運には脱帽するしかない。 本作は2部作の第1部。 第2部を観るまで、本作の評価を下せない。【送料無料】 ミッション: インポッシブル 6ムービー・ブルーレイ・コレクション<初回限定生産>ボーナスブルーレイ付き 7枚組 【BLU-RAY DISC】価格:11,436円(税込、送料無料) (2023/8/15時点) 楽天で購入
2023.08.15
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インディ・ジョーンズ・シリーズ5作目。 主役を演じたハリソン・フォードは、これが本人にとって最後のインディ・ジョーンズ作とのこと。 また、第1作目と第3作目でインディの友人サラーを演じたジョン・リス=デイヴィスも出演。 他にフィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、マッツ・ミケルセン、カレン・アレンが出演。 原題は「Indiana Jones and the Dial of Destiny」。粗筋 1944年。 第二次世界大戦の最中。 一時は欧州全土を支配するかの勢いだったナチスドイツは、アメリカ・イギリス・ロシア等による反攻で崩壊寸前だった。 考古学者インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は、仲間のバシル・ショーと共に、ナチスが強奪した文化遺物の回収する為ドイツに潜伏していた。 ナチスは様々な文化遺物をベルリンに向かう列車に詰め込んで出発。 そんな中、ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)は、輸送している遺物の一つが「アンティキティラのダイヤル」の一部だと報告。約2000年前にアルキメデスが製作したものだ、と。 ジョーンズとショーはフォラーからダイヤルを奪うと、列車から飛び降りて逃走した。 1969年。 アポロ11号の宇宙飛行士らが月面からの帰還に成功し、ニューヨーク市では近々彼らの偉業を称えるパレードが催される日が近付いてた。 インディは、数年前に再開を果たしたマリオン(=クリスタルスカルの王国)と結婚して、それまで存在すら知らなかった息子と家族として暮らしていた筈だった。が、息子が徴兵に応じて軍に入隊し、派兵先のベトナムで戦死してしまった事で人生がまた狂い出す。マリオンとの関係が悪化し、離婚を協議する羽目に。 そんな事もあり、ニューヨークで彼は一人で暮らしていた。ハンター大学で教授として考古学を教えていたが、人類が月面に到達して高揚している時代とあって、考古学は退屈な学問と見なされる様に。考古学を専攻している生徒らの目にもインディの授業は定年退職間際の老人の古臭い話としか映っていなかった。 そんな中、ショーの娘であり、インディの名付け子であるヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)が訪ねて来る。 ヘレナは父親と同様、考古学を専攻していた。「アンティキティラのダイヤル」について知りたい、と言い出す。亡き父親は、ダイヤルが時空を操る事を可能にする装置だと信じて解読に没頭し過ぎて発狂寸前にまで追い込まれていたが、それを見かねたインディが、ショーからダイヤルを受け取っていたのだ。 受け取りの際、正気を取り戻したショーはダイヤルは危険だから破壊してくれ、インディに頼んでいたが、インディは破壊せず、大学の倉庫に保管しておいた。 インディはヘレナを大学の倉庫に連れて行き、ダイヤルを見せる。自分が持っているのはダイヤルの一部で、残りがどこにあるのかは分からない、とヘレナに告げた。 そんな中、フォラーの手下が大学を襲撃する。 フォラーは戦後アメリカに移り、名を変えてNASAのアポロ計画に協力していたが、アポロ計画が成功裏に終わった以上、自分がアメリカ政府の為に奉仕する日々は終わったと判断し、自身の野望の実現の為に動き出していた。第二次世界大戦中に手に入れられたがアメリカのスパイによって奪われてしまった「アンティキティラのダイヤル」を再び手に入れる、と。 アメリカ政府は、フォラーには借りがあるとして、彼の行動を黙認。お目付け役として、CIA局員メーソンが行動を共にしていた。フォラーの手下は、ダイヤルの行方を知っていると読んだヘレナを追っていたのだ。 突然襲撃されて訳の分からないインディを尻目に、ヘレナはダイヤルを奪って逃げる。実はヘレナはダイヤルに考古学的価値を見出しておらず、単なる金目の物としか見做していなかった。インディの下にやって来たのは、ダイヤルを奪って競売に掛ける為だったのだ。 インディはその場から逃れる。が、フォラーの手下が襲撃の際に大学の職員を何人か殺害しており、インディは大学で元同僚の死に関与しているとして指名手配されてしまっていた。 インディは、友人のサラー(ジョン・リス=デイヴィス)の助けを借り、ヘレナがダイヤルを競売に掛けるモロッコへ向かう。 モロッコで、インディはダイヤルが競売に掛けられるのを阻止するが、その場にフォラーらが到着し、ダイヤルを奪う。 インディ、ヘレナ、そしてヘレナの子分的存在のテディと共にフォラーを追う。 モロッコを離れようとするフォラーの前に、メーソンが現れる。 アメリカ政府は最早フォラーの行動を黙認出来なくなった、アメリカに連行する、とメーソンは告げる。 が、フォラーはアメリカ政府の言いなりになるつもりは無かった。メーソンを殺害し、ダイヤルの残りの半分があるとされるギリシャへ飛ぶ。 インディらもフォラーを追ってギリシャへ向かう。 ダイヤルは、元々ギリシャの沈没船から回収されたものだった。沈没船は二つに分かれて沈んでおり、ダイヤルの残りを探し出すのに必要な証拠はより深い場所に沈んでいる残骸の中にある、とインディは推測する。 インディは、友人であるダイバーのレナルド(アントニオ・バンデラス)の助けを借り、残骸から平板を回収。平板には、アルキメデスの墓の場所を突き止める暗号が刻まれていた。 レナルドの船にフォラーが現れ、暗号を解くよう、インディに迫る。インディが拒否すると、フォラーらはレナルドを殺害。インディの反対に耳を貸さず、ヘレナは暗号を解き始める。 ヘレナは暗号と説く振りをしながら時間稼ぎしていた。隙を見て、インディ、ヘレナ、テディはフォラーの船を奪って逃げる。 平板の暗号を解いたインディらは、暗号が示す通りアルキメデスの墓があるというシシリー島に向かう。 フォラーを撒いたつもりだったインディ一行だったが、フォラーは一行の動きをしっかり読んでいて、シシリー島に到着。テディを拘束する。 インディとヘレナは、洞窟に入り、アルキメデスの墓に行き着く。 棺を開けると、アルキメデスの遺体があった。遺体は、ダイヤルの残りの半分を抱えていた。 これでダイヤルが完成し、時空を自由に操る事が出来る、とヘレナは喜ぶ。 インディは時空を操れる訳が無いと懐疑的だったが、ふとアルキメデスの遺体の手首を見ると、現在の機械式腕時計を身に着けていた。アルキメデスは時空を操って現在にやって来て腕時計を手に入れ、元の時代に戻っていた可能性が出てきた。 フォラーらが現れ、ダイヤルを奪い、合体させ、完成させる。 その時点で、フォラーの野望が明らかになる。 フォラーはダイヤルを使って1939年に戻り、ヒトラーを暗殺するつもりだった。ヒトラーさえいなくなれば、より良い指導者が現れ、ナチスドイツは勝利に導かれる、と信じていたのだ。 フォラーらはインディとヘレナを連れて飛行機に乗り、ダイヤルにより時空の亀裂を生じさせ、過去へ飛ぶ。 それより前にフォラーらから逃れていたテディは、小型飛行機を奪って後を追い、時空の亀裂に進入。 フォラーの計画には大きな誤算があった。 アルキメデスの時代には大陸移動について知られていなかった。ダイヤルはそれを計算に入れていなかった為、一行は予定していた1939年ではなく、紀元前212年の世界に到着。 そこはシュラクサイ包囲戦の最中で、アルキメデス率いるシュラクサイの軍と、ローマ軍が戦っていた。 突然現れた飛行機に、ローマ軍は得体の知れない怪物が襲来したと勘違いし、攻撃。 結果、フォラーらを乗せた飛行機は破損し、墜落。 インディとヘレナは、間一髪で飛行機からバラシュートで脱出した。 一方、テディの小型飛行機は、無事着陸出来た。 ヘレナは、小型飛行機に乗って、時空の亀裂を再度通過すれば、元の時代に戻れる、と判断。インディに、さっさと小型飛行機に乗るよう、促す。 しかし、インディは、これまで文献でしか知らなかった歴史上の出来事が繰り広げられているのを目の当たりにして、この時代に残りたい、と考える様に。元の時代に戻った所で、自分には何も残っていない、と。 ヘレナは、負傷していたインディに対し、この時代に残っても手当てが受けられなければ間も無く死ぬだけだ、と説得を試みる。 しかし、インディは耳を貸そうとしなかった。 その時、アルキメデスが二人の前に現れる。飛行機の残骸から回収したダイヤルを抱えていた。アルキメデスは、インディとヘレナが2000年後の未来からやって来たというのを理解していた。 インディは、アルキメデスがフォラーの腕時計を身に着けているのに気付く。その時点で、ダイヤルの真の目的を知る。 アルキメデスは、未来から援軍をやって来るのを期待して、ダイヤルを製作した。ダイヤルはこの時代のこの場所に来られる様にしか設定されておらず、フォラーやショーが期待した様な時空を自由自在に操ってどこの時代にも行けるタイムマシンでは無かったのだ。 アルキメデスは機械式腕時計を身に着けた状態で埋葬されていたが、それは本人が時空を行き来した事を意味するのではなく、未来からやって来た者が身に着けていたものを抜き取っただけだった。 今直ぐ時空の亀裂に戻らないと永久に自分等の時代に戻れない、と悟ったヘレナは、インディを殴って気絶させる。 インディが意識を回復すると、ニューヨークの住まいにいた。 意識を失っている間に、現代に戻ったのだ。 元の生活を続けるしかないとうんざりするインディの前に、ヘレナが現れる。 同時に、マリオン(カレン・アレン)も何でもない様に姿を現した。 離婚調停中で、顔を合わせてもらえない妻がいる事に戸惑いの色を隠せない。 マリオンは、インディとの関係を修復したいと申し出、インディはそれを喜んで受け入れる。感想 インディ・ジョーンズ・シリーズ第4弾のクリスタル・スカルの王国が、それまでのシリーズ作の集大成的な作品になっていたので、まさか更に続編が制作されるとは予想していなかった。 第4弾ではインディがマリオンとの再会を果たし、息子の存在を知る事にもなり、結婚式を挙げるに至り、ハッピーエンドで終わったので、第5弾はどんな風に始まるのかと思っていたが……。 インディは漸く結婚にまで漕ぎついたマリオンと離婚協議中、でいきなり始まる。 第4弾のラストではインディの跡を継ぐ事になると窺わせた息子が全く登場しないので、どうなったんだろうかと思っていたら、中盤辺りで息子はベトナム戦争で死亡した事実が明らかに。マリオンとの関係が破綻したのも、それが原因だと。 息子役を演じたシャイア・ラブーフを再起用するのが契約上・スケジュール上無理だった、という現実的な問題があったのかも知れないが、前作のハッピーエンドを全て否定するこの展開はどうなのかね、と思ってしまう。 インディは孤独が似合い、ファミリーマンとして描くには相応しくない、というイメージがあるのかも知れないが、新作が出る度に私生活が前より荒んでいる、という扱いは気の毒。 第1弾から第3弾は宗教絡みの謎を巡った冒険で、第4弾はあまり知られていない古代文明のオーパーツをめぐる冒険だったが、本作はローマ時代の遺物を巡る冒険。 これまでのシリーズ作と比較すると、謎のスケールがこじんまりとしたものになっている印象。ローマ時代の数学者アルキメデスが製作したダイヤルは実は時空の操作を可能にするものだった、というのはこじつけた感じで、インディらが過去の世界に飛んで行ってしまう展開は「いくら何でも有り得ないだろう」と思ってしまった。 ヒロインは、フィービー・ウォーラー=ブリッジ演じるヘレナ。 本作でシリーズ初登場のキャラ。「美しく、行動的で、機転が利く魅力溢れるヒロイン!」という設定らしいが、そこまで美しくないし、行動が全て打算に満ちていて、機転が利くというよりずる賢いだけの女で、魅力に乏しい。 最後の最後でインディを裏切って破滅するのか、と期待して観ていたが、そうした期待に反して最後まで生き残り、「インディを現在に連れ戻してマリオンと再会させたんだから物凄い善人でしょ」で終わっていて、逆に不満が募る。 インディ・ジョーンズ・シリーズは、第1弾のマリオンと第2弾のウィリーはヒロインとしてそれなりに魅力があったが、第3弾ではヒロインらしきエルザは途中でインディを裏切って破滅。第4弾では最初から敵キャラのイリーナとヒロインと呼ぶにはちょっと歳を取り過ぎたマリオンが登場。 007シリーズとは異なり、ヒロインに恵まれないというか、ヒロインを想定していない。 ヒロインとして呼んでいいのか分からないが、本作では女性CIA局員として、メーソンが登場。くせのあるキャラなので、最後までストーリーに絡む印象を受けた。ただ、彼女は「ハリウッド映画では黒人俳優の起用が組合協定で決められているのでそれを満たす為に登場させた」といったキャラに過ぎなかった様子。「既定のカット数に達したのでもういいでしょう」と言わんばかりに中盤であっさりと退場させられている。ストーリー的には、何の為に登場したのか分からないキャラになってしまっていた。 敵役フォラーを演じるのはマッツ・ミケルセン。 007/カジノロワイヤルで悪役を演じた以降は悪役を演じる姿はあまり観なかったが、また悪役に復帰。 悪役もヒーローも演じられる数少ない俳優と言える。 フォラーは、冷酷非情で自身の野望の為ならどんな手を使う事も厭わない人物だが、ねっからの悪人というより、ヒトラーというろくでもない指導者を始末したいだけ。ヒトラーを暗殺する為に時空を超えようと考え、その装置を手に入れる為に悪事に手を染めるのに、ヒトラー暗殺後は「誰かは分からないが代わり指導者になった者がナチスドイツを勝利に導いてくれるだろう」という希望的観測で計画は終わっている。 ダイヤルを使って時空を自由に行き来すればナチスドイツに頼らずとも世界を征服出来る、という発想も無く、人をガンガン殺害してまで手に入れたにしては、やる事が小さかった。 インディのこれまでの敵と比べると小物で、マッツ・ミケルセンの無駄遣い。 インディ一行は2000年前にタイムトラベルする事に成功。 が、留まる訳にはいかず、元の時代に帰らなければならない。 どうするのか、と思いきや、インディは戻りたくない、と言い出す。 だとすると、ヘレナ達はどうなるのか、と心配していると、インディはヘレナに殴られて気絶。 目を覚ますと現代に戻っていた。 時空の亀裂を再度通過して現在の世界に戻るのに、物凄い冒険があった筈だが、その場面は一切観られないし、インディはその間気絶しているのでその冒険に全く貢献していない。 主人公が最後の展開に全く絡まなくていいのか、と思ってしまう。 また、インディはフォラー一味に殺害されてしまった大学職員の死に絡んでいるとして指名手配されていた筈だったが、現在に戻って目を覚ました時にはその事実がまるで無かったかの様な扱い。マリオンとの再会を果たして限定的なハッピーエンドで終わっている。 インディは実は数週間意識を失っていて、その間にヘレナがインディの容疑を晴らした、という事になるのか。フォラー一味は全員ローマ時代のシシリー島で墜落死しているので、警察当局に犯人として引き渡すのは無理。どうやって容疑を晴らしたのか。 それ以前に、指名手配されていたインディがあっさりとニューヨークからモロッコへ移動出来た理由がわからない。 登場人物や、ストーリーに、詰めの甘さが散見し、煮詰められて制作されていない。 計算尽くしの第1弾とは程遠い出来。 作中の「アンティキティラのダイヤル(アンティキティラ島の機械)」は、実在する遺物で、世界最古のコンピューターとも言われる。 あくまでも天体観測用の装置だったと思われ、当然ながら時空を操る事は出来ない。 発見当初はオーパーツと見なされていた遺物だが、最近の研究では高度な技術で製作されてはいるものの古代ギリシャ/ローマ時代の技術水準が現代人が想像するより高かった事を証明するだけで、神秘的な遺物ではない、とされている。 何故本作では「アンティキティラのダイヤル」を魔法の装置扱いしたのか、よく分からない。 主人公を演じてきたハリソン・フォードによると、本作がシリーズ最終作となるらしい。 最後を飾るのに相応しい作品になっているのか、というと、残念ながら疑問を感じざるを得ない。 制作するなら制作するで、もう少し上手く纏めてくれれば良かったのに、と思う。 そもそもインディ・ジョーンズ・シリーズは第3弾で有終の美を飾っている。第4弾と第5弾は「主演俳優が生きている間に何とか続編を作れないか」という制作者側の都合の捻り出された産物で、作れば作る程有終の美からは程遠いものになっていく。 疑った目をすれば、そもそもインディ・ジョーンズはシリーズものとして生み出された作品で無く、何だかんだで第1弾が最高傑作だった。
2023.07.07
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2023年公開のスーパーヒーロー映画。「DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)」第13作目。 DCコミックスの人気キャラ・フラッシュの初の劇場版。 フラッシュは実写版は既に製作されているし、映画作品にも登場しているが、主役に据えた劇場版は今回が初。 DCEUに於いてフラッシュを演じてきたエズラ・ミラーが引き続きフラッシュを演じる。 他に、DCEU作で出演してきたベン・アフレック(バットマン)、ガル・ガドット(ワンダーウーマン)、ジェイソン・モモア(アクアマン)も数カットながら出演。 また、1980年代に公開されたバットマンシリーズで主役を演じたマイケル・キートンが、別の時間軸のバットマンを演じる。 一方、DCEUでスーパーマンを演じてきたヘンリー・カヴィルは、本作では登場しない。 原題は「THE FLASH」。粗筋 フラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)は、鑑識員として勤務する一方で、ジャスティスリーグの一員として、世界の平和と秩序に貢献する活動をしていた。 バリーの父親ヘンリーは、自身の妻ノラを殺害した罪に問われており、近々再審の結果が出る予定だった。が、アリバイを証明するとされた防犯カメラの映像にはヘンリーらしき人物が映っていたものの、顔が映っていない為決定的な証拠には成り得ず、無実の判決が出る可能性は低かった。 バリーは、この事件で母親のみならず父親まで失った形になっていた。その虚しさにかられ、普段以上の超高速で移動してしまったところ、自身の特殊能力スピードフォースで過去に戻れる事を知る。 過去に戻る事が出来れば母親を救えるし、父親が無実の罪に問われる事も無くなる、と考えるが、それについて相談されたバットマンことブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は、過去を無暗に改変するととんでもない事態を招くぞと警告する。 バリーは、ブルースの警告を無視し、母親を救う計画を実行に移す。 事件当日、ヘンリーはノラが前日買い忘れたトマトの缶詰を買いに外出。その最中に空き巣が押し入り、居合わせたノラが殺害されてしまった。 バリーは考える。母親がトマトの缶詰を買い忘れていなければ、ヘンリーは外出する事は無かっただろうから、空き巣にも入られなかっただろうし、殺人事件も起こらなかっただろう、と。 バリーは過去に戻り、買い物中のノラが使っているショッピングカートにトマトの缶詰を入れ、その場を去る。 スピードフォースの空間で、バリーは過去が改変されていく模様を確認出来た。満足してスピードフォースから脱しようとすると、謎の黒い人物が突然現れ、バリーをスピードフォースから弾き出した。 ふと気付くと実家の前にいたが、様子が違っていた。バリーは、10年前の2013年にいる事に気付く。フラッシュとしての特殊能力を会得した日だった。実家でヘンリーと、本来なら亡くなっている筈の母親と接触していると、過去の自分とも出会う羽目に。過去を改変した事により、若いバリーは自身が体験した若い頃とは全く別の陽気な性格になっていた。 バリーは、若いバリーを警察署に強引に連れて行く。バリーは、そこで稲妻に打たれ、フラッシュの特殊能力を得たのだ。若いバリーを稲妻に打たせ、超高速の特殊能力を会得させる事に成功するが、逆に自身は特殊能力を失ってしまった。 バリーは、若いバリーに、特殊能力の使い方を伝授しようとするが、若いバリーはその重要性を理解せず、ふざけた行動をするばかりだった。 そんな中、テレビ放送が流れる。 ゾッド将軍が地球の侵略を宣言する内容だった。 その時点でバリーは我に返る。 10年前の世界に戻ったという事は、スーパーマンとゾッド将軍の戦い(=マン・オブ・スティール)も再び繰り広げられるという事だ、と。 ジャスティスリーグをこの時間軸でも結成しなければならない、と悟ったバリーは、バットマン、ワンダーウーマン、アクアマン等を探し始める。しかし、スーパーマンとワンダーウーマンの行方は分からず、アクアマンは誕生すらしていなかった。 ブルース・ウェインの居場所は分かったので、バリーは若いバリーを連れてウェイン邸に向かう。 しかし、そこにいたブルースは、バリーが知っているブルースではなかった。 何故ブルースが別人なのか分からず困惑するバリーに、この時間軸のブルース(マイケル・キートン)が説明する。過去の出来事を改変した事により、出来事後の歴史だけでなく、出来事前の歴史も変えてしまったのだ、と。 バリーは、漸くそれまで感じていた違和感の理由に気付く。若いバリーは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を知っていたが、主役を演じていたのはエリック・ストルツだと言っていた。バリーがマイケル・J・フォックスだろ、と正すとそれは無い、と反論されてしまった。この時間軸では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はマイケル・J・フォックスではなく、当初起用されたエリック・ストルツのまま制作され、公開されたのだった。 バリーは、ジャスティスリーグをこの時間軸で結成するのは一筋縄ではいかないと知り、ブルースにスーパーマンを探す出す手伝いをしてくれ、と頼む。 ブルースは、お前の時間軸のブルースがどういう奴は知らないが、自分は既にバットマンを引退していると固辞する。が、2人のバリーに説得され、協力を了承。 この時間軸ではスーパーマンらしき宇宙人はロシアにいる事を突き止め、3人はバットプレーンでロシアへ飛ぶ。 3人は、ロシアの基地で監禁されていた宇宙人を救出する事に成功するが、その宇宙人はスーパーマンことカル・エルではなく、従妹のカーラ・ゾル・エル(サッシャ・カジェ)だった。この時間軸では、カル・エルは地球に到着していなかったのだった。 3人は、カーラをウェイン邸に連れて帰る。 ただ、ロシアで監禁生活を強いられ、地球人を恨んでいたカーラは、地球の為にゾッド将軍と戦ってほしいというバリーの要請を断り、去ってしまう。 バリーは、自分がフラッシュとしての特殊能力を再び会得してゾッド将軍と戦うしかないと考え、ブルースの協力を再び煽って稲妻に打たれる。その結果、特殊能力が復活した。 地球人を恨んでいたカーラだったが、バリーの様に助ける価値のある地球人もいるし、何より共通の敵はゾッド将軍だと考えを改め、バリーに協力する事に。 2人のバリー、バットマン、そしてカーラことスーパーガールは、ゾッド将軍との戦いを挑む。 戦いの最中、カーラは衝撃の事実を知る。ゾッド将軍はカル・エルを乗せた宇宙船をとうの昔に回収していた。惑星クリプトンを復活させるのに必要なコデックスを幼いカル・エルから得ようとしたが失敗し、カル・エルは死んでしまったという。コデックスは、カル・エルではなく、カーラが持っていたのだ。 カーラとゾッド将軍は戦うが、ゾッド将軍に圧倒されたカーラは倒されてしまう。ゾッド将軍はカーラの死体から必要なコデックスを得て、その場を去る。 同時に、ブルースもクリプトン軍の宇宙船を攻撃する中で命を落としてしまった。 2人のバリーは過去に戻り、歴史を改変してカーラとブルースを救おうとする。が、何度試みてもカーラとブルースの死に方が変わるだけで、救う事が出来ない。 その時点で、バリーは漸く気付く。この時間軸ではカーラとブルースは死ぬ運命で、避けようが無い、と。同時に、この時間軸ではゾッド将軍が勝利し、人類は滅亡する、と。母親を救うという歴史の改変は、巡りに巡って人類の滅亡に繋がっていく事を意味していたのだ。 母親もカーラもブルースも救えない、という事実を受け入れられない若いバリーは何度も過去に戻っては改変を試み続ける。その結果、マルチバースが崩壊し始める。 そんな中、スピードフォースに、謎の黒い人物が再び現れる。 この黒い人物は一体何者だとバリーが注視すると、若いバリーの成れの果てであるのに気付く。若いバリーは、世界を救えると信じて何万回も過去を改変している内に、いわゆるダーク・フラッシュと化してしまったのだった。 バリーは、ダーク・フラッシュに対し、何度やっても無駄だ、と説得を試みる。 ダーク・フラッシュはそれに逆上し、バリーに襲い掛かる。 若いバリーが間に入り、致命傷を受け、バリーの腕の中で絶命。若いバリーが死亡した事で、ダーク・フラッシュは消滅した。 残されたバリーは、崩壊するマルチバースから脱し、自分が行った歴史の改変が無かった事にする。 バリーは過去に戻り、事件の前日に買い物をするノラと対面。トマトの缶詰をショッピングカートに入れて去る自分自身を目撃する。バリーは、そのトマトの缶詰をショッピングカートから出し、棚に戻す。ノラがトマトの缶詰を買い忘れて店を出て行く姿を見守るしかなかった。 バリーは自分の時間軸に戻り、ヘンリーの再審の結果が出る日を迎える事に。 が、もう一度だけ過去に戻り、問題のトマトの缶詰を店の棚の上の方に移動しておいた。 再審の日、店の防犯カメラの映像が公開される。そこでは、ヘンリーが棚の上の方にあるトマトの缶詰に手を伸ばす為、視線を上に向けていた。その結果、顔がはっきりと映っていた。 これによりアリバイが成立し、ヘンリーは無罪判決が言い渡される。 母を失う運命は変えられなかったが、父が無実の罪を着せられたままの運命を変えられたバリーは、満足し、防犯カメラの映像解析技術を提供してくれたブルースに礼を述べに向かう。 しかし、バリーの前に現れたブルースは、元の時間軸のブルースではなく、違うブルース(ジョージ・クルーニー)だった。 ヘンリーが無実を勝ち取る、という歴史の改変により、また別の時間軸を生み出してしまったのだった。 これにより、バリーはこの時間軸でのジャスティスリーグの結成に奔走しなければならなくなった。感想 マーベル作のスパイダーマン/ノーウェイホームのDC版、といったところ。 ノーウェイホームは、3人のスパイダーマンが集結するという、異例の作品だった。 スパイダーマンは何度も映像化され、リブートされているので、過去のスパイダーマンを集結させる事が可能だったが、フラッシュは劇場版が現DCEUが初。 フラッシュを集結させられなかったので、代わりにバットマンを集結させた、といった感じ。 本作では、これまでDCEUでバットマンを演じてきたベン・アフレック、1980年代にティム・バートン監督作でバットマンを演じたマイケル・キートン、そして1990年代にバットマンを演じたジョージ・クルーニーが登場。スパイダーマン程ではないにせよ、バットマン祭りの状態。 バットマン以外にも、過去のスーパーマンの映像も使用され、スーパーマン祭りでもあった。 ノーウェイホームが先に公開されていなかったら観ている方も物凄く熱くなったと思われるが、製作時期はともかく、公開は後になってしまったので、マーベルを後追いしました感が拭えないのは残念。 ノーウェイホームでは歴代のスパイダーマンが一堂に会して互いを助け合う、というストーリー運びになったが、本作では歴代のバットマンはそれぞれ個別に登場するだけで、互いに絡み合うストーリー運びにはなっていない。これだけでもマーベルとDCEUの差が見受けられる。 バリーが生み出した時間軸ではスーパーマンは存在しない事になり、代わりにスーパーガールが登場。 劇場版での登場は数十年振り。 最近の傾向に合わせてアップデートしており、DCEUの全体的な雰囲気に合わせて陰キャラとして描かれているのは新鮮である一方、残念でもある。 スーパーマン/スーパーガールは陽キャラでないと、バットマンとキャラが被ってしまい、ひたすら暗いだけのものになってしまう。 サッシャ・カジェの演技は悪くなかったし、見た目も納得が行くものだったので、この1作だけで終わってほしくないが、登場する時間軸では死に、時間軸ごと消滅する、というストーリーになっている。DCEUの制作陣は、折角登場させたこのキャラを今後どうするつもりなのか、そして再登場させるつもりなら、どういうストーリーにするのか、気になる。 冒頭で、ベン・アフレック演じるバットマンが一応登場するが、本作でのメインのバットマンは、マイケル・キートンが演じていた。 ティム・バートン版のバットマンから、数十年振りにバットマンを演じた事になる。このところ悪役が多かったので(マーベルのスパイダーマン/ホームカミングでは敵役のバルチャーとして出演)、善のキャラを演じる姿は久し振りに観た。同じ俳優でも役柄が変わるとここまで顔付が変わるのか、と驚く。 比較的若かったバットマンも、本作ではかなり年老いたバットマンに。 にも拘らず、主人公である筈のフラッシュを完全に食ってしまう活躍振り。 タイトルは、「ザ・フラッシュ」より、「バットマンとスーパーガールが登場、そしてザ・フラッシュも一応登場」とした方が正確なのでは、と感じた。 ティム・バートン版のバットマンが登場したのは物凄く良かったが……。 よくよく考えると、この時間軸のバットマンは死ぬ。それどころか、人類はゾッド将軍に滅ぼされる。 ティム・バートン版で、バットマンはジャック・ニコルソン演じるジョーカーと死闘を繰り広げたが、「どっち道30年後に人類は滅ぼされるからそこまで躍起になって戦わなくてもいいよ」と当時のバットマンに伝えなければならないのか。 ヘンリー・カヴィル演じるDCEUのスーパーマンの登場は無かったが、マルチバースの場面で、過去の映像版スーパーマンらが登場。 白黒時代に制作されたジョージ・リーブスが演じるスーパーマン、1970~1980年代に制作されたクリストファー・リーブスが演じるスーパーマン、ヘレン・スレーターが演じるスーパーガールが観られた。 奇妙な事に、ニコラス・ケイジが演じるスーパーマンも登場。 ケイジはスーパーマンのファンで、2000年辺りに新作映画を企画したものの、結局制作には至らなかった。今回、テスト用に撮影した映像を流用したのかな、と思っていたが、本作用に新たに撮影した映像だったという。ケイジ自らスーパーマンのスーツを着て挑んだとか。そこまでするか、と驚く。 それだったら、ブランドン・ラウス演じるスーパーマンの映像も使われても良かった気がする。が、許可が下りなかったのか、設定上はクリストファー・リーブスの出演作スーパーマン2の続編なので必要無いと判断されたのか、姿は確認出来ず。ちょっと気の毒。 というか、DCEUからの降板が決まってしまったから、という理由だけでカヴィルを全く登場させないのも異常だが。「マン・オブ・スティール」の敵だったゾッド将軍も再登場。 マイケル・シャノンが再びゾッド将軍を演じている。 ゾッド将軍の悪党振りは本作も健在。「マン・オブ・スティール」ではスーパーマンに敗北し野望も打ち砕かれるが、本作ではスーパーガールを倒して野望を達成してしまうのがミソ。「マン・オブ・スティール」監督のザック・スナイダーとDCEUの制作陣との確執によりスナイダーがDCEUから離脱してしまう、という経緯があった為、ゾッド将軍の再演をオファーされた時、シャノンは悩んだというが、スナイダーが再演すべきと後押ししてくれた為、了承したという。 このエピソードを聞くだけでも、DCEUはマーベル程制作陣や俳優らに一体感が無いなと感じてしまう。 ラストで、また別の時間軸のブルースとして、ジョージ・クルーニーが登場。 クルーニーは1990年代にバットマン・シリーズに出演したが、評価はイマイチで、本人も黒歴史だと言っていた筈なのに、何故今回出演のオファーを承諾したのか不明。 本人は一般的に言われている程黒歴史だとは捉えていなかったのか、数十年経ったのでポートフォリオの一つとして直視出来る様になったのか。 いずれにせよハリウッドは心が大きくないと仕事にならないらしい。 今後の作品にも登場するのか、あくまでも1度だけの再演なのか、現時点では分からない。多分後者。 過去を改変して過ちを正す、というのはよくあるテーマ。 本作では、何故かトマトの缶詰に執着する。 確かに、トマトの缶詰をノラが買い忘れていなかったら事件が発生していなかった可能性が高いが、それ以外にも事件を発生させない方法があるのでは、と思ってしまう。 ノラは、夫が留守にしている間空き巣に入られ、空き巣と鉢合わせした結果殺されてしまう、という事になっているが、だったら何故バリーはその場に戻り、空き巣を取り押さえなかったのか。 ヘンリーは妻を殺していない、空き巣の仕業だ、という割には、その空き巣の姿は誰も確認しておらず、作中にもその存在を窺えない。 バリーも、父親の無実を晴らす為の証拠集めに奔走するが、真犯人を突き止めればその時点で父親の無実が証明される、という考えには至っていない。父親の無実が晴らされればそれで良く、母親が誰に殺されたのかは興味が無い、と言わんばかり。実はヘンリーは意図的ではないにせよ妻を殺害しており、その事実にバリーは薄々気付いているものの認めたくないので、真犯人を突き止める以外の方法で父親を無罪に持って行こうとしている様である。 本作は、マルチバースでは一つのキャラを複数の人物が演じても違和感は無い、という世間の認識を逆手に取り、DCEUの俳優を刷新してリブートとし、シリーズの再起を図る為の口実として制作された感が強い。 スーパーマンも、バットマンも、ワンダーウーマンも別の俳優が演じる事になりますが、別の時間軸を描いているので俳優が変わるのは当然です、でもこれまでのDCEUを完全に切り捨てた訳ではないので安心して下さい、というポーズ。 ただ、観ている側はDCEUを巡るゴタゴタを散々目の当たりにしているので、ポーズに騙されていないというか、冷めた目を向けざるを得ないのが残念。 ライバルのマーベルは、一度採用した俳優は見切らず、様々なマーベル作に起用し続ける事で俳優が仕事し続け易い環境を整えているし、演じている俳優ら自身が演じているキャラをどう描くか提案出来るようになっている事で俳優と制作陣との信頼関係を築く事にも成功している。要するに、俳優らも制作陣も和気あいあいと作品に携わっている。それがスクリーンを通じて観客にも伝わって来るので、観客も安心して観に行ける。それがマーベルの成功の秘訣だと思われる。 一方、DCEUの制作陣は、キャラはあくまでもDCの所有物で、演じている俳優はただの顔に過ぎず、俳優らからのインプットは必要無いどころか邪魔で、あれこれ言われるくらいだったら降板させてリブートしてしまった方が良い、と見なしている節がある。それだから俳優らも長期的にコミットするつもりで作品に挑んでおらず、別のDCEU作品の制作に呼ばれたらラッキー、という程度にしか捉えていない。俳優と制作陣に信頼関係があまり無いので、キャラが集結する場面でも俳優らがキャラの格好をして同じ場所にとりあえず集まって撮影に挑みました、といった雰囲気で、和気あいあいとしている様に映らない。 DCEUが成功するには、まず制作陣が心を入れ替える必要があるのでは、と思うが、その制作陣も責任者が次々と入れ替わっては「前の奴が制作したのは駄目だった。無かった事にする。俺がやれば絶対成功する」という意気込みだけで挑むから結局失敗し続けている。 マーベルでは、母体となるマーベルコミックスを創設したスタン・リーというトップがいて、そのトップを軸に劇場版を制作していたのでブレが無かったが、DCにはそうした軸となる人物がいなかったのが問題と言える(スタン・リー亡き後のマーベルがイマイチになってしまったのも、それが原因と言える)。 本作は、制作が始まった時点ではヘンリー・カヴィルにスーパーマンを演じさせていくつかのシーンを撮影したというが、降板が決まったのでそうしたシーンは全てカットされてしまったという。 カヴィルが降板したのも本人が望んだからではなく、新たに決まった制作陣の責任者が「スーパーマンをリブートして自分のイメージに合うものにしたい」と考えたからだとか。カヴィルからすれば不本意な形で降板する事になったので、仮に制作陣が方針を改めてカヴィルに戻って来てほしいと要望したところで彼が了承するかは微妙である。 カヴィルの様に本人の意思とは関係無く降板させられた者がいる一方で、本作の主人公を演じたエズラ・ミラーが今度も起用される運びになっているのは不可解。ミラーは数々の法的トラブルを起こしていて、本作も降板させられるのかも知れないという話が上がっていたくらい。今後また不祥事を起こす可能性も無くも無い。 不祥事を起こしているミラーを起用し続け、私生活に特に問題の無いカヴィルを容赦無く下ろすという制作陣の考えが理解出来ない。その意味でも観客はDCEUを冷めた目で見ざるを得ない。 俳優陣の刷新が制作陣の思惑通りに運ぶかどうかは不明だが、どういう展開を捻り出すのか、という点に関しては、寧ろ作品そのものより興味がある。
2023.06.30
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2023年に公開されたスーパーヒーロー映画。「DCエクステンデッド・ユニバース」の第12作目で、2019年に公開された『シャザム!』の続編。 ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、ジャイモン・フンスー、レイチェル・ゼグラーが前作に続き出演。 悪役として、ヘレン・ミレン、ルーシー・リューらが出演している。 原題は「Shazam! Fury of the Gods」。粗筋 魔術師から神々の力を授けられたビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル/ザッカリー・リーヴァイ)と義兄弟達のフレディ、ユジーン、ペドロ、メアリー、ダーラ。 2年が過ぎた。 彼らはスーパーヒーローとしてフィラデルフィア市内で発生する様々な事件を解決し、平和を守っていた。 が、変身時の見た目は大人でも中身は子供なので、言動に幼稚さや詰めの甘さが露呈。人命をいくら救っても世間から評価されず、逆に事件解決の度に無駄な破壊を繰り広げるので「フィラデルフィアの惨事」と酷評されていた。 ビリーは、あと数カ月で18歳になる時期を迎えていた。 18歳になれば成人するので、里親の家を追われるのでは、と悩むようになる。 数々の里親にたらい回しにされ、漸く「自分の家族」と呼べるものを手に入れたビリーにとって、それは恐怖でしかなかった。家族を失いたくない一心で義兄弟達を拘束してしまい、意に反して浮いた存在になってしまい、孤独感に苛まされる様に。 場所は変わってギリシャのある博物館では、新たな展示物がお披露目される。 館内スタッフは、展示物はギリシャの神が作り上げたという杖だった、2つに折れてしまっているが非常に貴重なもので、フィラデルフィアのごみ回収場で偶然発見された、と説明する。何故ギリシャから遠く離れたフィラデルフィアなんかにあったのかは不明だ、と。 そんな中、2人の女性が現れる。 魔力を取り戻したアトラスの娘へスペラ(ヘレン・ミレン)とカリプソ(ルーシー・リュー)だった。2人は杖を奪い、その場を去り、神々の神殿に戻る。 そこには、魔術師(ジャイモン・フンスー)がいた。ビリーを勇者に選定し力を与えた後に灰となり消滅したと思われたが、実はへスペラらによって神々の神殿に幽閉されていたのだ。 へスペラは、折れた杖を修復する様、要求。 魔術師は拒否し、抵抗するが、カリプソにより精神を操られ、杖を修復してしまう。 強大な魔力を持つ杖を手に入れたへスペラとカリプソは、自分らの野望を達成する為の行動に移る。 ビリーは、睡眠中、夢の中で魔術師と再会し、お前の下にアトラスの娘らがやって来る、と警告される。 目覚めたビリーは、警告がただの夢なのか、事実なのかを確かめる事に。 義兄弟達と一緒に秘密基地「永遠の岩」にある資料を調べた結果、事実である事が判明。 アトラスには3人の娘がいたが、人間との闘争に敗れ、力を失って幽閉されていたが、それがどうやら復活してしまったらしい、と。 3姉妹が完全復活するには、神々の杖が必要だという。 その時点で、ビリーは、2年前にサディアスとの戦いで養兄弟にスーパーヒーローの力を与えた後二つに折って破壊した魔術師の杖が、フィラデルフィアのごみ収集場で回収され、ギリシャの博物館で展示され、そしてつい先日何者かに奪われたものこそ問題の杖だ、と気付く。 その場にいないフレディに危機が迫っている事に気付いたビリーらは、フレディの下へと急ぐ。 フレディは、通っている高校でアンという女子学生と出会う。 アンに好意を寄せるフレディは、スーパーヒーローに変身し、アンの前に登場。 が、それは罠だった。 アンは、アトラスの3人目の娘アンテアだったのだ。 彼の目の前にへスペラとカリプソが現れる。2人は杖の力を使ってフレディのスーパーヒーローの力を奪ってしまう。 ビリーらがその場に到着。格闘の末杖を奪う事に成功するが、へスペラはフィラデルフィアのど真ん中に破壊不可能なドームを登場させてビリーらを封じ込める。 ヘスペラとカリプソは、フレディをさらって神々の神殿に戻る。 フレディは神々の神殿で魔術師と同じ房に放り込まれた。 ビリーらは、フレディを奪還する為の計画を練る。 手紙を書き、杖と引き換えにフレディを返してくれと交渉すればいい、の結論に至り、ビリーらは手紙を書き、神々の神殿に送り付ける。 ヘスペラはそれに応じてビリーと会い、話し合うが、決裂し、再度戦い合う羽目に。 戦いの末、杖はカリプソに奪われた。 一方、ビリーらはヘスペラを圧倒し、「永遠の岩」の独房に幽閉するが、それはヘスペラの策略だった。 ヘスペラは難無く脱出すると、「永遠の岩」を探索。魔術師が隠した黄金のリンゴを見付け出し、神々の神殿に戻る。 杖も黄金のリンゴも手に入れ、自分等の計画を実行に移すのに必要なものを全て揃えられた3姉妹だが、仲たがいが起こる。 ヘスペラとアンテアは黄金のリンゴで神々の世界を復活させたいと考えていたが、カリプソは自分等に歯向かった人間に報復すべきだと主張した。 姉妹らが口論してい間に、アンテアの手助けにより自由になっていたフレディと魔術師は黄金のリンゴを奪う。 それに気付いたヘスペラとカリプソがフレディに襲い掛かるが、同時にビリーらがその場に現れる。 ビリーらは、フレディのスーパーヒーローの能力を回復させ、黄金のリンゴと共にその場から逃げる。 自分等の世界に戻ったビリーらは、里親の前に現れざるを得なくなり、自分らが「フィラデルフィアの惨事」と呼ばれるスーパーヒーローである事を明かし、一緒に逃げる様、促す。 里親は、躊躇いながらも応じるしかなかった。 カリプソが、ビリーらを追って、人間界に再び現れる。 ビリーらはカリプソから逃れようとするが、杖の力を自在に操るカリプソにより、ビリー以外は次々スーパーヒーローの力を失ってしまう。 カリプソは黄金のリンゴを奪還すると、自身の計画通り、人間界に植え付ける。黄金のリンゴは欲に塗れた人間界で根を張った事から、破滅への樹木へと成長し、様々な怪物を生み出し、ドームに閉じ込められた市民に襲い掛かった。 ヘスペラとアンテアはカリプソの行動に抗議するが、カリプソには最早姉と妹が裏切り者としか映らなかった。ヘスペラに致命傷を与え、アンテアからは力を奪って人間にしてしまう。 ビリーは、町が大混乱に陥っている姿を見て、完全に意気消沈。自分は何をやっても駄目だ、と。魔術師に対し、自分はスーパーヒーローとして相応しくないから返上する、誰かより相応しい者にスーパーヒーローの力を与えてやってくれ、と言い出す。 魔術師は、俺の目は間違っていない、お前はスーパーヒーローとして相応しい、と説得。 里親も、成人したビリーを家から追い出すつもりは全く無い、家族の一員なのだから、と伝える。 魔術師のお墨付きを得た上、里親と養兄弟らと今後も一緒にいられると知ったビリーは自信を回復し、カリプソを阻止する為の行動に出る。息絶え絶えのヘスペラの下へ向かい、カリプソの阻止に協力してほしい、と頼む。ヘスペラは、それに同意する。 ビリーは、カリプソを樹木の下へおびき寄せる。 ヘスペラは、約束通りドームを縮小させ、ビリーとカリプソだけがドームに残る形となった。 ビリーは稲妻を発生して杖をオーバーロードさせ、破壊。それによって生じた爆発により樹木もカリプソも倒す事に成功したが、自身も命を落としてしまう。 それを見届けたヘスペラは、ビリーこそ復活した神である事実を認め、土となって消滅する。 アンテアと共に、ビリーの遺族はビリーの遺体を神々の神殿に埋葬する。 そこにダイアナ・プリンスことワンダーウーマンが現れる。神の末裔である彼女は、杖の力を使ってビリーを蘇らせる。 蘇ったビリーは、杖を使って義兄弟らに再度スーパーヒーローの力を与える。 人間界に戻ったビリーらは、里親の家を建て直す。感想 DCEUシリーズ作品の一つであり、シャザムの続編。 シャザム第1作は、主人公が「見た目は大人だが中身は子供」という設定の為、それまでひたすらダークな雰囲気のDCEUシリーズとは異なり、軽いノリの映画に仕上がっていた。 その為かどうかは不明だが、DCEUの中では例外的にヒット。 よって、今回の続編が制作された。 ただ、第1弾からCOVID騒ぎにより制作が遅れ、4年が経過してしまった。 その間にDCEUや、ライバルのマーベルも含むスーパーヒーローものを巡る環境も変わってしまい、旬を逃してしまった感がある。 ストーリーも、続編の制作を上層部が決定したので下々の者は何とか捻り出さざるを得なかった、といったやっつけ仕事的な内容で、イマイチ新鮮味に乏しい。 アトラスの娘である3姉妹という強大な敵が現れてビリーらに襲い掛かるものの、1人(アンテア)は早々と離脱してビリーらの仲間に加わり、別の1人(へスペラ)は最終的にはビリーらに協力し、残った1人(カリプソ)が敵のままだがビリーと元敵の共同作戦で比較的簡単に倒される、という流れになっている。 敵が勝手に仲たがいして自滅するので、主人公が少々頼りなくても何とか解決に至ってしまっていた。 3姉妹という設定になっているものの、演じている俳優は年齢が離れていて、人種も異なっていた。ギリシャの女神なのに、カリプソ役に何故東洋人のルーシー・リューが採用されたのか不明。ポリコレの一環なのかも知れないが、設定を崩してまで起用する人種を振り分ける必要は無いだろうに、と思ってしまった。 第1弾では新鮮で生き生きとしている様に映った登場人物らも、本作では殆ど変わっていないにも拘わらず新鮮でなく、生き生きとしている様に映らない。 時系列では、本作は第1弾から2年経った後の話、となっている。 ビリーと義兄弟らは未成年なので、2年も過ぎていればかなり成長している筈だが、演じている俳優らが年を取っているだけで登場人物そのものには成長が全く見られないので、イライラさせられる。 顕著なのが主人公ビリーだろう。2年が過ぎ、成人年齢に近付いており、里親から家を追われると恐れている割にはノリが小学生レベルで、第1弾のまま。スーパーヒーロー一団のリーダーとして義兄弟らを統率しようとするものの、思う様に纏まってくれない事を嘆いているが、本人は未だにスーパーヒーローに変身して手から稲妻を放って的当てして遊んでいるのだから、そりゃ義兄弟らが彼の下で纏まろうと思う訳が無い。寧ろビリーより義兄弟らの方が僅かながらも成長していて、しっかりとしている。 里親の家を追われる準備をしつつも家族を失う事を恐れている、というビリーの真面目な姿が描かれていたらもう少しまともな展開になっていただろうに。 超能力を持ってしまったヒーローながらも正体は未成年、という設定は、MCUのスパイダーマンに通じる。が、スパイダーマンことピーター・パーカーは未成年なら誰でも抱える悩みを持ち、未成年ならありがちな過ちを犯すものの、根が真面目なので、言動に呆れる事は無く、共感し易い。ビリーをピーターと瓜二つにする必要な無いが、もう少しピーター寄りに出来なかったのか。 ビリーは義兄弟は5人。原作のコミックスではそれぞれが深く掘り下げて取り上げられ、個性を出しているのだろうが、2時間程度の映画では、性別と人種と体形が異なるという程度しか掘り下げられず、個性が埋没。よって、キャラが被ってしまっていて、登場人物が無駄に多いだけになっている。原作を無視する形になってしまうが、3人くらいに絞って整理した方が良かったのでは、と思う。 変身前・変身後のビリーとその義兄弟らを演じる俳優は、第1弾と同じらしい。例外はメアリーで、第1弾で変身前のメアリーを演じていた俳優が、変身後のスーパーヒーローも演じている。第1弾で変身後のメアリーを演じていた女優が第2弾への出演を辞退したかららしい。流石に4年も開いてしまうと、スケジュールを調整出来なくなってしまったり、続編に出演する心境の変化が起こったりするらしい。 第1弾ではラストでスーパーマンが登場する(顔は見せないので、これまでDCEUシリーズでスーパーマンを演じていたヘンリー・カヴィルではなかったらしい)。 本作では、ガル・ガドット演じるワンダーウーマンが堂々と登場。 ジャスティスリーグと同じ世界を舞台にしているんだな、と改めて実感。 演出としては良かったが、ガル・ガドットも40代に差し掛かっているので、流石に年齢的にワンダーウーマンはきつくなっているのでは、と思ってしまう。 スーパーマンを演じていたヘンリー・カヴィルはDCEUから降板させられ、バットマンを演じていたベン・アフレックもDCEUを離れる事を宣言。 バットマンは既に別の俳優を起用してリブートした作品(ザ・バットマン)が公開されている(何度目のリブートなのか最早分からない)。 DCEUシリーズの制作を取り仕切る責任者が交代した事もあり、DCEUはキャストを刷新して再始動する可能性が高くなったので、ガル・ガドットが演じるワンダーウーマンが観られるのは本作が最後となるかも。「ワンダーウーマンはリンダ・カーターが演じたのしか認めてもらえない」という定説を覆してくれたのに勿体無い気がするが、仕方ないか。 多少の犠牲者を出すものの全体的にはハッピーエンドで終わり、終始軽いノリ。 期待を上回る出来ではないが、下回る出来でもなく、安心して観ていられるのが何より。 ポストクレジットシーンは、一応次回作の繋ぎとなっているが、続編が制作されるのかは不明。本作の興行収入が鍵となるだろう。母国アメリカでは評価がイマイチで、日本でもプロモーションが殆どなされていないので、可能性はかなり低くなってしまっているが。 次回作もこのノリのままでは少々気が思いやられる気がする一方、ダークな雰囲気に転じてしまうとこれまでのは何だったのだ、となってしまうだろうから、複雑である。 本作が楽しみで観に行ったというより、DCEUが今後どうなるか確認する為に観に行った感が無くも無い。シャザム! / ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル (DVD) 1000753397価格:1,097円(税込、送料無料) (2023/4/23時点)楽天で購入
2023.04.23
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2022年に公開されたインドのミュージカルアクション映画。 監督・脚本はS・S・ラージャマウリ。 N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア、ラーム・チャラン、アジャイ・デーヴガン、アーリヤー・バット、シュリヤ・サラン、サムドラカニ、レイ・スティーヴンソン、アリソン・ドゥーディ、オリヴィア・モリスが出演。 実在した独立運動指導者コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーマ・ラージュを主人公としているが、内容は完全に創作で、2人が歴史上に登場する以前の時代を舞台にし、2人がイギリス領インド帝国に戦いを挑む姿を描いている。 原題は「RRR」で、「アール・アール・アール」と読む。制作関係者らのイニシャルを並べただけの仮タイトルだったが、特定の言語のタイトルにしてしまうと多言語のインド国内では成立しないとの事で、インド国内の言語に左右されない仮タイトルが正式な映画名になったという。粗筋第一部 1920年のイギリス領インド帝国。 インド総督スコット(レイ・スティーヴンソン)の一行は奥地にあるゴーンド族の村を訪れ、そこで芸術の才のある少女マッリと出会う。マッリの才能を気に入ったキャサリン総督夫人(アリソン・ドゥーディ)は僅かな金を親に投げ付けてマッリを買い取り、彼女を総督府のあるデリーに連れ去ってしまった。 後日、ニザーム藩王国の特使が総督府を訪れ、マッリをゴーンド族に返すべきと勧告する。対応したスコットの側近エドワードは、勧告を一蹴。特使は「引き渡さなければ、彼らの守護者がイギリス人に災いをもたらすだろう」と忠告した。 一方、ゴーンド族の守護者ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア)は、マッリを取り戻す為に仲間を連れてデリーに向かい、行方を捜していた。 デリー近郊の警察署。 イギリス当局によって逮捕された独立運動家の釈放を求めるデモ隊が押しかけていた。 インド人ながらも警察官としてイギリスの為に働くラーマ(ラーム・チャラン)は、単身デモ隊の中に飛び込み首謀者を逮捕する手柄を立てる。が、イギリス人署長はその功績を認めなかった。 総督府では、ゴーンド族の刺客が総督の命を狙っている事態について、協議が開催される。 しかし、刺客の正体が全く分からない以上、莫大な数のインド人の中から探し出して確保するのは不可能に映った。 業を煮やしたキャサリン総督夫人が宣言する。刺客を捉えた者は特別捜査官に昇進させる、と。 特別捜査官という名誉ある地位を餌にされても、不可能である事は変わらず、誰も手を挙げない。 そんな中、ラーマが現れ、担当捜査官に名乗りを挙げる。 突然名乗り出たインド人に、会議参加者らは疑いの目を向けるが、会議に出席していたラーマの上司である署長は、刺客を捕らえられる者がいるとしたらこいつしかいない、と一応太鼓判を押す。 キャサリン総督夫人により、ラーマは担当捜査官に任命された。 ラーマは、同じく警察官の叔父ヴェンカテシュワルルと共にデリー市内の独立運動家の集会に潜入。ラーマは独立運動家を装い、総督の命を狙いたいと何気に話してみると、マッチュという男が接触してきた。 マッチュが異様にも総督府への潜入にこだわっていたので、ラーマは話を聞き出そうとするが、ふとした事で独立運動家ではなく警察官だ、と正体がばれてしまい、逃げられてしまう。 マッチュは、ビームの下に逃げ戻り、警察官がお前を探している、と告げる。 ビームは、自身の存在を相手側に知られてしまった事に動揺するが、今更使命を諦める訳にもいかない。マッチュに対しお前は身を隠していろ、使命は自分と残った仲間で進める、と伝えるしかなかった。 マッチュが姿を消した直後、追手のラーマが側に姿を現す。 その時、近くで列車事故が発生し、少年が事故に巻き込まれそうになる。 ラーマとビームは、誰にも命じられる事無く協力して少年を助け出した。 これをきっかけに、二人は互いの正体を知らぬまま交流を重ねていく。 ビームは、マッリが拘束されていると読んだ総督公邸に潜入する機会を窺っていた。 目を付けたのが、スコットの姪ジェニー(オリヴィア・モリス)だった。ジェニーは他のイギリス人とは異なりインド人との接し方が寛容だったので、事情を説明すれば助けてくれるのでは、と期待していた。が、ジェニーと接触する機会にもなかなか恵まれない。 そんな姿を見ていたラーマは、ビームがジェニーに片思いしていると勘違い。 ラーマは、ビームがジェニーと接触するのを手助けする。 ジェニーと親しくなったビームは総督公邸に招待される。隙を狙って公邸内を偵察し、マッリと再会。ここで救出すればビームの使命は完了するが、この時は居所を確認するのが精一杯で、救出は無理だった。 直ちに救出されないと知ったマッリは落胆する。 ビームは、必ず戻って来て助け出すと約束し、総督公邸を後にする。 一方、ラーマは警察官としてデリー内を捜索してマッチュを見付け出し、拘束する。 ラーマは仲間の居所を吐けと拷問するが、隙を突かれて蛇に噛まれてしまう。マッチュから「解毒方法はゴーンド族の者しか知らない」と告げられたラーマは、意識が朦朧としていく中、親友のビームの下へと向かう。 ビームは仲間と共に総督公邸に乗り込む準備を進めていた。 そこに蛇毒が回って瀕死の状態のラーマが現れる。 ビームはゴーンド族に伝わる解毒方法でラーマを介抱した。 意識が薄れる中、ラーマはビームがマッチュと同じ装飾を身に着けている事に気付き、自分が追っていた刺客がビームだと悟る。 ビームは、ラーマが自分を追う警察官だと知らないまま、自身の正体を明かす。 自分はマッリを助け出す為に総督公邸に乗り込む、仮に失敗して死んだとしても後悔は無い、自分の正体をこれまで明かしていなかったのは親友であるお前を巻き込みたくなかったからだと告げた後、ラーマを残して総督公邸に向かう。 その夜、総督公邸ではパーティーが催されていたが、そこにビームが野生動物を満載したトラックで乗り込んできた為、会場はパニック状態になる。 ビームがこれに乗じてマッリの解放に向かおうとした矢先、蛇毒から回復したラーマが姿を現す。 ビームは、警察官の制服姿のラーマを見て驚く。自分を追っていた警察官は親友のラーマだったのかと。 ラーマは、冷酷にもビームに対し、総督の命を狙った罪で逮捕するから受け入れろと命じる。 ビームは、自分は総督の命を狙ってなんかおらず、マッリを救出したいだけだと反論。 ラーマはその言葉を受け入れず、逮捕に動く。 ビームは抵抗するが、格闘の末に逮捕されてしまう。第二部 ラーマは、ビームを逮捕した功績により、約束通り武器庫の管理権限を持つ特別捜査官に昇進した。 特別捜査官の制服に身を包んだラーマは、この日をどれだけ待っていたかを回想する。 ラーマの父ヴェンカタは警察官だったが、スコットの圧政に耐えかねて脱走し、独立運動家として村人らに戦闘訓練を施していた。 ある日、イギリス軍が村を襲撃し、ヴェンカタと幼いラーマは村人らを逃がす為に戦いを挑むが、その中でラーマの母親と弟が殺され、ヴェンカタも重傷を負わされる。 ヴェンカタはイギリス軍に投降する振りをして、自身が隠し持っていた爆弾をラーマに狙撃させ、イギリス軍を巻き込んで爆死する。 数年後、成長したラーマは警察官となり、父の指示で警察官になっていた叔父ヴェンカテシュワルルと行動を共にし、警察組織での出世を目指していた。 イギリス人を欺いて特別捜査官にまで出世すれば、管理下にある武器を横流しして村人に手渡し、イギリスの武器でイギリスと戦えるようになる、と考えていた。 ただ、特別捜査官にまで昇進するには、イギリスを欺き続けなければならず、その為には同胞のインド人を犠牲にする事を躊躇してはいられなかった。 漸く念願の特別捜査官となり、武器を横流し出来る立場になったものの、武器を村人に手渡して独立運動を起こせたとして、果たして同胞のインド人を散々痛め付けていた自分にインドの人々が真意を理解して後に続いてくれるのか、とラーマは悩む様になる。 逮捕されたビームは、見せしめとして、スコット夫妻や民衆の前でラーマの手によって鞭打ちの刑に処せられる。 が、ビームは屈せず、歌で民衆を鼓舞する。 触発された民衆が暴動を起こした為、刑の執行が中止されるに至った。 その姿を見たラーマは、ビームの様に歌だけで民衆を奮い立たせられる者の方が独立運動を起こすのに相応しいのでは、と考えを改める。いくら武器を民衆に渡したところで、民衆を奮い立たせられなければ独立運動にならない、と。 ラーマは、ビームを逃す事を決意する。 ラーマは、ビームをデリー郊外に連れ出してマッリの目前で処刑してはどうかとスコットに提案する。 スコットは、ラーマの面従腹背を知らず、その提案を受け入れる。 ビームとマッリは、ラーマの思惑通りデリー郊外へ連れ出される。 ラーマの計画は処刑場でビームを解放し、マッリと共に逃げし、序にスコットに致命傷を与える、というものだった。 が、直前にスコットがラーマの企みに気付き、兵を差し向ける。 ラーマはビームの解放とマッリの救出には成功したものの、銃撃されて重傷を負い、その上事情を知らないビームに殴られてしまう。 ビームはマッリを連れて逃走。 ラーマは、意識が朦朧とする中、2人を逃がす為にイギリス兵の追跡を妨害した。 数カ月後。 デリーから逃れ、ある町に潜伏していたビームらは、警察の捜査網に掛かり発見されそうになる。 が、居合わせたラーマの婚約者シータ(アーリヤー・バット)の機転で難を逃れた。 シータは、ラーマがイギリスの為に働いている振りをしながら実は独立闘争を起こす為の計画を立てていたが、ある親友を解放する為にそれらを全て捨てる決意をした、との手紙を受け取ったと話した。 ラーマは親友を解放する事に成功したが、自身は捕まり、反逆罪で近々処刑される事になっている、と。 ビームは、ラーマが言うある親友とは自分の事で、独立運動を起こすという大きな目標を達成する為に己を殺して長年動いていたにも拘わらず、自分の為に全てを捨てたと知って驚愕する。 ラーマは、シータに対し、その親友とは自分の事だ、自分にはラーマを救出する義務がある、絶対に救出するから待っていてくれと約束する。 ビームはジェニーの協力を得て、ラーマが収監されたバラックを突き止める。 バラックに潜入したビームはラーマの救出に成功して森の中に逃げ込む。 が、スコットに命じられたエドワードが特殊部隊を率いて追跡を始める。 ラーマは、森の中にあったラーマ神の祠にあった長弓を手にしてビームと共に反撃。 特殊部隊は全滅し、エドワードも戦死する。 2人はそのまま総督府に向かい、オートバイを突入させる。オートバイは武器庫で爆発し、弾薬の誘爆により総督府は崩壊する。 キャサリン総督夫人は崩壊に巻き込まれて命を落とし、追い詰められたスコットもビームに射殺された。 スコットを倒した2人は総督府の武器を持ち出してデリーを後にし、シータ、ジェニーと合流する。 ラーマは故郷の人々に武器を送り届ける事に成功し、ビームはマッリと共に村に戻り彼女の母親との再会を成功させる。感想 インド国内でインド人鑑賞者のみの為に上映する事を想定して製作されながら、ふとしたきっかけで海外でも上映されるようになり、インド人以外からも好評を得て大ヒットするという、ひたすら幸運に恵まれた作品。 幸運に恵まれるのに相応しい力作だった、という事もあるが。 インドは多言語国家で、言語があまりにも多く隣人同士でも会話が出来ないくらいだという。 英語が使用されているのも、植民地時代からの共通言語として合理的だから、という理由(本作から滲み出ているインド人のイギリス嫌いからすれば、仮に英語以外の共通言語が現れればそちらに速攻で移行すると思われる)。 映画業界も、その特異的な社会を反映してか、言葉が通じなくてもストーリーを追える様な演出にする事に長けている。 それが、インドの言語が全く通じない他国の者でもストーリーを追える、という事に繋がり、世界的にヒットした理由にもなった。 ただ、元々インド国内限定の映画として制作された為、国民感情を汲み取って旧宗主国のイギリスを徹底的に悪者に仕立てていて、その描写はインド以外の国の者が見るとえげつなく、イギリスは抗議しないのかと心配してしまう程。 インドからすれば、「お前らイギリス人はフィクションとしてでなく、実際に我々に酷い事をしてきたんだから、映画での描写くらい許して当然だ」という事になるのかも知れないが。 ストーリーは非常に分かり易い一方で、お決まりの様にご都合主義も多い。 舞台となった1920年代でも人口が圧倒的に多かったとされるインドの首都デリーで、追う者と追われる者が互いの正体を知らずに出会って友情を育む、というのは出来過ぎ。 また、追う者であるラーマは、追っている相手の正確な似顔絵を作成しているのに、それを見て目の前の親友そっくりだといつまで経っても気付かないのもおかしい。後に親友が持っている装飾品が、追っている者の仲間が持っていた装飾と同じだと気付く事で親友の正体を知るが、寧ろそちらの方が有り得ないと思った。 デリーを脱出したビームが、潜伏先である女性と知り合い、それがラーマの婚約者だった、という展開も出来過ぎ。 インドはどこまで狭いんだ、と思ってしまう。 ただ、この手のご都合主義は日本の捕物帳でもよく見られるので、排除してしまうとストーリーが成り立たなくなるので、仕方ないといえる。 ラーマがイギリスの警察組織に潜入し、そこで15年間も己の野望を隠して組織の中で昇進していき、やっと待望の地位にまで上り詰めたのに、親友を助ける為とはいえ全てを捨てて自分の本性をイギリスに明かしてしまうのもどうかね、と思う。 作中では同胞のインド人を躊躇い無く痛め付けているので、その落差に観ている方が戸惑ってしまう。 ラーマがもう少し同胞のインド人に配慮する姿勢を見せていたら、ビームを助ける事に方針転換したのも理解出来たのだが。 ビームが総督の命を狙っている(とイギリス側は勝手に思った)事が発覚し、総督府内で大暴れした後も、総督の姪に当たるジェニーがビームに協力してラーマの居所を教える、という展開も理解し難い。 ジェニーは、ビームがあくまでも総督府に潜入する為に自分に近付いた、という事に気付いて憤慨しなかったのか。 ラーマもビームも常人なら致命傷になるであろう怪我を負いながら、数分後には何でも無かったかの様に暴れ捲れるのも、本作ならではのご都合主義。 二人とも無敵なのでは、と思ってしまうが、一応拘束されて拷問を受ける等酷い目に遭わされるので、不死身に近い様ではあるものの無敵ではないらしい。 本作の上映時間は182分と、3時間を優に超える。 作中、第1部と第2部の間に「休憩」という画面が現れる。インドでは実際に休憩時間が入れられたらしい。 日本での上映では、休憩時間を挟む事無く、そのまま第2部に移る。 通常、上映時間が3時間にも及ぶとどこかで中だるみが起こってしまうが、本作に至っては中身が濃い為中だるみが無く、上映終了後は「え? もう3時間経ってしまったのか」と時計を見て驚く程。 インド映画というと歌と踊り。 大勢の人間が突然歌って踊り捲る。 よって、本作も一部ではミュージカル映画と紹介されている。 だが、実際には作中で歌と踊りは2回導入されているだけで、ストーリーの流れからして不自然ではなく、ミュージカル映画に慣れていない者でも違和感を抱く事無く観られる。 ストーリーと直接関係無い歌と踊りはエンドロールのみ。「ミュージカル映画」として本作を紹介されると逆に違和感が。 インド人からすると「歌と踊りが少な過ぎる」という意見もある様だが、その代わりにアクションシーンをふんだんに盛り込み、意図せずして海外向けにしたのもヒットの要因といえる。 本作の主人公であるラーマとビームは、実在したインド独立活動家で、インドでは英雄視されている。 ただ、本作のストーリーは完全なフィクション。 二人はほぼ同時期に活動したが、地域が離れていて、出会った可能性はほぼ無いとされる。 また、本作ではインドの神話の要素も盛り込んでいて、ラーマは『ラーマーヤナ』、ビームは『マハーバーラタ』で登場する神のイメージと重ね合わせたという。『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』はインド神話の2大叙事詩だが、その中でもモデルとなった神は互いと接しないという。 史実では、ラーマことアッルーリ・シータラーマ・ラージュは現在のアーンドラ・プラデーシュ州でゲリラ的な武装蜂起を展開するが、イギリス側の大規模な鎮圧作戦により捕まり、1924年に処刑されている。享年は25から26だった(正確な生誕日なので、享年が不明)。 一方、コムラム・ビームは現在のテランガーナ州辺りで活動した革命指導者で、長年蜂起を指導するが、1940年に武装警官により殺害されている。享年39。 2人とも天寿を全う出来ていないが、志半ばで倒れたからこそインドでは英雄視されているのかも。 敵が大英帝国なので、西洋人の俳優も多数出演。 その中で印象的なのが、キャサリン総督夫人を演じたアリソン・ドゥーディだろう。 アリソン・ドゥーディのメジャー映画デビューは『007/A VIEW TO A KILL』でボンドガールとして(当時史上最年少だったという)。その後『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』では一応ヒロイン役を演じている。 ただ、『007/A VIEW TO A KILL』ではボンドガールと言いつつも敵の手下の一人で、後半で敵のトップに裏切られて呆気無く死んでしまう役。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』では前半ではヒロインとして登場するものの途中で主人公を裏切って敵役となり、最終的には死んでしまうという役。 いずれでもろくな死に方しかしないキャラ。 メジャー作では自分はこうしたキャラしかオファーされないと悟ったのか、それ以降はメジャーな作品には登場せず(一時は俳優業から離れていた)、俳優歴はあまりパッとしない。 ただ、『007/A VIEW TO A KILL』ではロジャー・ムーアと、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』ではショーン・コネリーと、そしてボンドに起用される前のピアース・ブロスナンとも共演しており、歴代のボンド俳優3人と共演を果たしているという、見方によっては物凄い経歴の女優である。 本作でも、メインの悪役である総督を上回る残酷振りを披露する夫人を演じており、最終的にそのキャラは死んでいる。 ろくな死に方をしないキャラをどこまでも演じ切るつもりらしい。 本作は日本円に換算して100億円にもなる資金が制作に投じられたという。 インドの1人当たりGDPは日本よりまだ低いので、日本の感覚だと500億円くらいの制作費に相当するのではないか。 巨額の制作費を投じれば必ず面白い作品が出来上がる、という訳ではないが、少なくともケチりにケチり捲った末に制作された映画より面白く仕上がる可能性が高い。 鑑賞者からすれば、鑑賞料金は同じなのだから(制作費が10倍だから鑑賞料金も10倍、なんて事にはならない)、低予算で制作された安物映画より、莫大な予算で制作された大作の方が費用対効果が良いと感じるだろう。 日本は弥生時代から江戸時代まで、歴史的イベントや人物が豊富にあるし、神話だって多岐に亘るのだから、大作の題材なんていくらでも見付けられそうだし、そうして制作されたものを海外に発信して日本の存在感を世界にアピール出来そうだが、しょうもない国内向けの低予算ドラマの制作に留まり、国内での消費だけで終わってしまうのは不可解である。 暴力満載で人がガンガン死ぬし、イギリスの描き方が観ていて引く程えげつない映画だが、ラーマは独立活動を促す為の武器を持ち帰って婚約者との再会を果たし、ビームは少女マッリを救い出して母親と再会させるという使命を完遂。 冒頭でマッリの母親がイギリス兵により撲殺された様に描かれていたので(イギリス人からすると銃弾1発にも物凄いコストが掛かるのでインド人は可能な限り撲殺する)、ラストで生きて登場した事に少々驚いた。 全体的にはハッピーエンドな作品。 踊りと歌のエンドロールで終わるし。 エンドロールの歌と踊りでは、ガンジー等インド独立に携わった英雄が掲げられる。 インドの文化をあまり知らない者からすると、「へえ、インド映画では作中では登場しない歴史上の人物を掲げるのか」で終わってしまうのだろうが、インド人からすると、本編の高揚感を更に上げる演出なのだろう。 その意味でもインド国内向けの作品で、海外で好評を得たのは奇跡としか言えない。 単作として制作された本作だが、あまりの大成功で続編も話も出ているという。 制作されればインドではまたヒットしそうだが、海外では二匹目のドジョウとなるかは疑問。 ヒットしたとしても、流石に本作程のヒットには至らないと思う。RRR 公開記念/S.S.ラージャマウリ監督映画 バーフバリ 伝説誕生<完全版> [Blu-ray]価格:4111円(税込、送料別) (2023/2/17時点)楽天で購入
2023.02.17
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1985年製作のアメリカ合衆国の映画。 シルヴェスター・スタローンの出世作「ロッキー」シリーズ第4弾。 スタローンが脚本・監督を務めている。 敵役のドルフ・ラングレンの実質上のデビュー作。 スタローンは本作でブリジット・ニールセンと出会い、後に結婚にまで至ったが、間も無く離婚している。 原題はRocky IV。粗筋 一度は敗戦を記したクラバー・ラング(Mr.T)を倒し再び世界ヘビー級チャンピオンへと返り咲いたロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)は、家族や友人に囲まれながら幸せな生活を送っていた。 そんなある日、ソビエト連邦のアマチュアボクシングヘビー級王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)一行が訪米。一行は、ソ連のプロボクシング協会加入を発表した上で、世界チャンピオンとの対戦を希望した。 アマチュアボクシングの経験しか無い選手がいきなり世界チャンピオンと対戦するのは前代未聞。 ロッキーも協会も、ソ連側のプロパガンダに付き合う必要は無いと考えていた。 一方、ロッキーのかってライバルであり、友人でもあるアポロ・クリード(カール・ウェザース)は、歴史に残る対戦になる、と感じていた。自分は現チャンピオンのロッキーを倒した経験もある元チャンピオンで、経歴上は遜色無いので、対戦を申し出たい、と。 が、ロッキーはその決断に反対する。アポロは現役を退いてから5年も経っていた。ドラゴとは15歳近くの年齢差がある。地位も名声もあり、幸せな家族もいるのに、老体に鞭打ってどうする、現チャンピオンである自分も年齢的に全盛期をとうに過ぎていると自覚しているんだぞ、とアポロを説得しようとする。 アポロは、ロッキーに対し、「引退して時間が経っても、戦士としての自分は変えられない、ドラゴを見て戦士としての自分の血が騒ぐのを抑え切れない」と語り、ドラゴとの対戦に挑む。 アポロ対ドラゴのエキシビションマッチはラスベガスで開催された。 アポロは、スーパースターのジェームス・ブラウンが歌う華やかな演出の中、陽気にリングに上がる。 一方、ドラゴは、アメリカ流の派手なパフォーマンスに呆れの表情を見せていたが、アポロを眺めていく内にそうした表情も消え、臨戦態勢に入っていく。 試合が始まると、アポロは現役時代のトレードマークでもあった軽いフットワークでドラゴを翻弄し、余裕を見せていた。しかし、ドラゴが反撃に転じると、アポロはその強烈なパンチにより一方的に打ちのめされていく。 最早エキシビションではなく、ドラゴが本気でアポロを粉砕しようとしている事に気付いたロッキーは試合を止めようとする。しかしアポロはそれを拒否し、諦めずに立ち向かっていく。ドラゴの強打を浴び続けたアポロはリングに倒れ、そのまま息を引き取った。 アポロの葬儀後、ロッキーはドラゴとの対戦を了承する。 敵地・ソ連での開催という悪条件を受け入れ、ロッキーはアポロのトレーナーだったデューク、義理の兄ポーリーらと共にソ連へ渡る。 銀世界に囲まれた大自然の中で、ロッキーは環境を生かした過酷なトレーニングを行う。 一方、ドラゴはソ連政府の科学者チームに囲まれ、最新技術に基づくトレーニングを行い、肉体をより強靭にしていった。 当初は試合に反対していたロッキーの妻エイドリアン(タリア・シャイア)も、夫の下へやって来て、応援する。 試合当日。 ソ連国民が埋め尽くすモスクワの試合会場の貴賓席には、ソ連政府首脳陣の姿が並んでいた。 ロッキーに対する猛烈なブーイングの中、試合開始のゴングが鳴る。 ドラゴの強烈なパンチにより、ロッキーは幾度もダウンを取られる。しかし、その度に立ち上がっては反撃してくるロッキーの姿に、ドラゴも戸惑いを感じる様になる。 試合が進むにつれ、ドラゴもダメージを負い、乱戦になっていく。 当初はドラゴの快勝を期待してロッキーに対し敵意を見せていたソ連の観衆も、ロッキーの勇敢な戦いに熱狂する様になり、ロッキーコールまで出て来る。 試合はただの殴り合いになっていき、ドラゴは14ラウンドで遂にノックアウトされる。 既に観客の心を掴んでいたロッキーは、歓声を浴びながらリングを後にした。感想 ロッキーシリーズ第4弾。 第1作(シリーズ作になる事は想定されていなかったらしいが)はアカデミー賞を受賞しているが、にも拘らずというか、だからこそというか、続編が制作される事に。 ただ、ロッキーがハードなトレーニングを自らに課して身体を鍛え、強敵と試合する、という展開は変えようが無いので当然の如くマンネリに陥り易い(ロッキーをリング外で戦わせてアクションヒーローにしてしまう、という荒業も有り得なくもなかったのかも知れないが、それだとスタローンのもう一つの代表作ランボーと被る)。 本作は、時代を反映して、米ソ冷戦の要素を盛り込んで新鮮味を出そうとしている。 それが功を奏したか、興行的には成功。批評家にはイマイチだったが。公開から30年以上経っているので、最近は批評家の見方も変わっている様で、第1作程の名作ではないにせよ、時代を反映した作品と見なされるようになっている。 その一方でスタローンは自身が手掛ける映画が批評家の餌食になるのに懲りたらしく、映画に出演こそするものの脚本から監督まで一人何役もこなすのを控える様になってしまった。 ロッキーシリーズは、スピンオフとしてアポロの息子がボクサーになる展開で制作が続き、遂にはアポロの息子がドラゴの息子と対戦する、という展開にまで発展(クリード2)。 そちらでは、ドラゴ(本作のドルフ・ラングレンが引き続き演じる)は、本作での試合に負けて一気に地位を失い、ロッキーらに恨みを抱き、息子をボクサーに育て上げてアポロの息子と対戦させる事で因縁を晴らす、という設定になっている。 ドラゴがそこまで陰湿で粘着的なキャラだとは思えないのだが。 本作はボクシングというスポーツを取り扱っているが、映画とあって、展開はご都合主義的な部分が多い。 アポロが試合を絶対止めるなとロッキーに言い付け、ロッキーがそれに従った結果、アポロが命を落とす、という展開はその代表的な例。 所詮スポーツなのだから、危険と感じたら試合をしてい本人が何を言おうと周りが試合を止めるのが当たり前。この手の選手が「自分はもう戦えない、無理だ、試合を止めてくれ」と自ら申し出る事は無いだろうし、あの状況でアポロが自身の状況を冷静に捉えていたとは思えない。 ロッキーシリーズは重要キャラが死んでいくのが定例で、今回はアポロがその標的にされたといえる。 ドルフ・ラングレンは、本作が事実上の出演作(その前に007シリーズで端役で登場していたらしいが)。 オーディションを受けた時点では、背は高いものの細過ぎるという理由で一度は起用が見送られたらしいが、ランドグレンは武術の心得があった事から、格闘の素人でもなく、繰り出すパンチにスタローンが興味を持って起用を決めたという。 細かった身体もスタローンと共にトレーニングする事で鍛え抜き、撮影に挑んだとか。 本作をきっかけにランドグレンはスターの仲間入り。 スタローンやシュワルツェネッガーを超える存在にはなれなかったが、順調にキャリアを重ねる事が出来た。 エクスペンダブルズでもスタローンと共演しているので、二人は気はそれなりに合うらしい。 ドラゴの妻を演じるのがブリジット・ニールセン。 役柄とは異なり、ロッキー役のスタローンと交際し、結婚にまで至るが、早々と離婚(離婚前にアクション映画コブラで共演している)。 クリード2にも、ドラゴの元妻という役柄のまま出演。 クリード2にはスタローンも出演しているので、元夫婦で共演する形となったが、同じシーンで登場しない様配慮され、撮影現場で一緒になる事は無かったという。 もし同じシーンで登場していれば話題になったと思うが、ハリウッドスターも流石にそこまでビジネスには徹せないらしい。 最近はボクシングも興業性が重視され、ボクサーらもただ金の為に戦う形になってしまっている。 金の為に戦うので、勝とうと負けようと試合後に無事リングから降りて稼いだファイトマネーを自分で使える様でなければ意味が無いと割り切っている。 それ以前に、自分に有利な形で試合を運べるよう契約し、そうでなければ契約すらしない。 よって、本作の様にファイトマネーそっちのけで命懸けでリングに上がっているという悲壮感や絶望感は現在の試合には無い。 最近のボクシングがイマイチ面白みに欠けるのも、映画の試合以上のショーというか、エキシビションマッチになり下がってしまっているからか。 ソ連書記長として、元ソ連大統領ゴルバチョフのそっくりさんが登場。 ゴルバチョフはつい最近(2022年)亡くなったばかりなので、一瞬ハッとさせられた。 本作は、米ソ冷戦が終わりを迎えつつ時代に制作された。 米ソ冷戦なんてソ連崩壊によりアメリカの一方的な勝利で終わってしまっている以上、振り返るのも意味の無い色褪せた歴史の出来事、と思われてきたが、ロシアのウクライナ侵攻により西と東の分裂が鮮明になり、新たな冷戦に突入。 米ソ冷戦以上に不確定要素の多い情勢に。 冷戦も、一周してまた戻って来た感じ。 本作のテーマも、色褪せておらず、寧ろ永遠のテーマである事が証明されたのは、皮肉と言えば皮肉。ロッキー4/炎の友情 オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:1100円(税込、送料無料) (2022/9/13時点)楽天で購入
2022.09.13
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2022年公開のアメリカ合衆国のアクション映画。 1986年公開の『トップガン』の36年振りの続編。 監督はジョセフ・コシンスキー、脚本はアーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリーが務める。 トム・クルーズとヴァル・キルマーが前作から続投。 他に、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、ジョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマンらが出演。粗筋 ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐(トム・クルーズ)は、空中戦で3機の敵機撃墜記録を持つ戦闘機パイロット。 その輝かしい戦歴とは裏腹に、問題行動で左遷されており、将官に昇進していて当たり前の年齢に達していたにも拘わらず、階級は未だに大佐だった。 現在は、スクラムジェットエンジン搭載の極超音速試験機「ダークスター」のテストパイロットを務めていた。 ダークスターは、最高速度の記録を試験飛行の度に塗り替えていて、次のテスト飛行ではマッハ9.5を達成する予定だった。 しかし、ダークスター計画の予算の権限を握ったケイン海軍少将(エド・ハリス)は、自身が推し進める計画に予算を回したいが為に、「約束された最高速度マッハ10を達成出来ていない」を口実に、ダークスター計画の凍結を一方的に決める。 マーヴェリックは、ケイン海軍少将が計画凍結を正式に宣言する前に、マッハ10を達成すべく離陸し、成功させる。が、独断でそれ以上に記録を伸ばそうとした結果、ダークスターを空中分解させてしまう。 無事脱出し帰還したマーヴェリックは、ケイン海軍少将から飛行禁止処分を言い渡されてもおかしくない立場にあったが、かつて戦闘機パイロットとしてマーヴェリックと共に戦った、太平洋艦隊司令官トム・“アイスマン”・カザンスキー海軍大将(ヴァル・キルマー)の強い要望で、ノースアイランド海軍航空基地の「トップガン」に呼び戻された。 丁度その頃、あるならず者国家がNATO条約に違反するウラン濃縮プラントを建設し稼働させようとしていた為、それを破壊すべく特殊作戦が計画されていた。 プラント周辺の強力な防空網を避ける為に険しい渓谷を超低空・超高速で飛行して、電磁波妨害に左右されないレーザー誘導爆弾でプラントを破壊するには、米海軍は旧式となりつつあるF/A-18戦闘機を使うしか手が無い。一方で、敵国は最新鋭の第5世代戦闘機を保有してプラント周辺の防衛に当たらせていた。プラント破壊後、F/A-18と敵機との空中戦は必至だった。 米海軍は、トップガン卒業生から戦闘機パイロットの精鋭を選抜し、任務に当たらせる事になったが、最近は戦闘機といえども爆撃が主体となっていて、選抜されたパイロットらも実戦経験こそ豊富ながらも空中戦を経験した者は殆どいなかった。 そこで、空中戦の第一人者として、マーヴェリックが教官として抜擢されたのだった。選抜パイロットを訓練し、その中からパイロットを更に絞って任務に当たらせる、と。 戦闘機乗りとしては絶対の自信を持つマーヴェリックだったが、生還率が低い作戦の為にパイロットを訓練して送り出す事には消極的にならざるを得なかった。しかし、海軍から除隊されるところを何度も救ってくれたアイスマンの直々の御使命とあって、拒否は出来なかった。 マーヴェリックは、選抜パイロットの中に、かつての友人で事故で亡くなったニック・“グース”・ブラッドショウ海軍中尉の息子、ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ海軍大尉がいる事に困惑する。 マーヴェリックは、夫を失った上に息子まで失いたくない、というルースターの母にせがまれ、ルースターの海軍兵学校への志願書が受理されないよう工作していた過去があった。 ルースターは、マーヴェリックの工作にもめげずに海軍兵学校へ入学し、パイロットになったものの、マーヴェリックによって大きな回り道をさせられた、と恨んでいた。その上、父親のグースがマーヴェリックの後席に乗っていて事故死した事も知り、マーヴェリックこそ父の死の原因だ、と恨みに恨みを重ねていた。 マーヴェリックは、乗り気ではなかったものの、教官として訓練を開始。作戦を成功させる為の制限時間と所要練度を割り出し、それに基づく飛行水準を決め、それに向かってパイロットらを訓練する。 選抜パイロットらは、実戦経験を充分以上に積んでいる自分らは今更マーヴェリックに教わる事等何一つ無い、と当初は思っていた。が、戦闘機の仕様書に記載された範囲内で操縦する事しか学んでこなかった彼らは、仕様書を無視して戦闘機を限界にまで追い込むマーヴェリックの実戦仕込みの飛行技術には全く歯が立たず、マーヴェリックの腕を認めざるを得なかった。 選抜パイロットらはマーヴェリックが求める水準に達する為の厳しい訓練を続けるものの、誰も達成出来ない。 また、ルースターは過去の因縁からマーヴェリックに対して反発的な態度を取るばかり。その上、選抜パイロットの一人で、問題児扱いされていたジェイク・“ハングマン”・セレシン海軍大尉が、マーヴェリックとグースの過去をネタに軽口を叩いた事で、パイロット達の間に摩擦が生じる。 自らの過去が招いたトラブルに悩むマーヴェリックを、アイスマンが自宅に呼び出す。アイスマンは病の末期症状にあったが、その体に鞭打ってマーヴェリックと面談し「いい加減、自分を許したらどうだ」と助言を与える。 数日後、アイスマンは息を引き取った。 マーヴェリックを元々疎んでいた海軍上層部は、アイスマンの死去を好機と捉え、マーヴェリックを教官職から解任する。選抜パイロットらを所要練度に到達させられなかった、という理由を付けて。 海軍上層部は、特殊作戦を練り直し、マーヴェリックが要求していた練度を必要としない水準にまで下げる。しかし、敵側の防空体制に変化が無い以上、新水準では作戦に参加するパイロットらの生還は期待出来ない。 マーヴェリックが要求する水準では誰も任務を達成出来ないが、新水準では任務を達成出来ても誰も生還出来ない、とパイロットらは絶望する。 その時、解任された筈のマーヴェリックがF/A-18に搭乗して飛行を開始。作戦をシミュレートした飛行で、自身が選抜パイロットらに課していた水準での飛行を成功させ、要求していた水準が絶対不可能でない事を証明する。 海軍上層部は、マーヴェリックの飛行技術を認めざるを得なくなり、マーヴェリックを今回の作戦の編隊長に指名する。 作戦に実際に加わるのではなく、教官として加わるだけ、という状況に不満を持っていたマーヴェリックだったが、いざ編隊長として作戦を指揮しろと命じられると戸惑うしかない。が、希望通りの展開になったではないかと促され、作戦に本腰を入れる。 選抜パイロットの中から、マーヴェリックは任務を遂行するパイロットを選び出し、編隊を組む。その中にはルースターも含まれていた。ハングマンは予備として待機する事に。 特殊任務の日。 マーヴェリックらは空母から発艦し、プラント破壊に成功する。 が、プラント周囲に配置された大量の対空ミサイルからの攻撃にさらされる。作戦に参加したパイロットらの殆どは、無時帰還出来た。しかし、マーヴェリックとルースターだけは互いをかばって撃墜されてしまい、敵の航空基地近くに降り立つ。 2人は森で再会し、敵基地に無傷で残っていたF-14を奪い、空母へと向かう。 が、敵の第5世代戦闘機が追ってきた。 初期の第4世代戦闘機に位置付けられるF-14は、性能的には不利な立場にあったが、マーヴェリックとルースターの腕前もあり、2機の第5世代戦闘機を撃墜。しかし、最後の3機目を相手にする頃には武装を使い果たしており、しかも脱出装置も故障してしまう。 撃墜されるのを待つばかりのマーヴェリックらだったが、空母で待機していたハングマンが駆け付けて敵機を撃墜し、窮地を免れる。 2人は無事空母に帰還すると同時に、和解した。感想 1980年代に大ヒットし、トム・クルーズを一躍スターへと押し上げたトップガンの36年振りの続編。 続編を想定していなかったと思われる作品なので、よく制作に至ったな、と驚く。 回想シーン以外で前編から引き続き登場するのは主人公のマーヴェリックと、ライバルだったアイスマンのみ、となっている。よって、前編でヒロイン役を演じたケリー・マクギリスは登場しない。 ケリー・マクギリスは俳優業を引退状態で、容姿も60歳の年齢相応になってしまっていた為、若さを奇跡的に維持しているトム・クルーズとギャップがあり過ぎると考えられた為か、カメオ出演のお声すら掛からなかったという。残酷といえば残酷だが、前編の出演者をあまりにも登場させてしまうと単なる同窓会映画になってしまうので、前編からの登場人物を絞ったのは適切だったといえる。 ただ、40年余り前の映画の続編とあって、設定には結構強引な部分も。 最も強引なところが、輝かしい戦績を持つマーヴェリックが40年も経っているのに未だに階級が大佐で、航空機の操縦桿を握り続けている、という点。 ライバルだったアイスマンが大将にまで昇進し、太平洋艦隊司令官となっているので、ますますそのギャップを感じさせる。 実際の海軍だったら、「パイロットのままでいたい」という理由で昇進を拒み続ける者をいつまでもパイロットのままにしておく、という措置は取らないと思われる。無理矢理昇進させるか、パイロットの資格を取り消すか、除隊させているだろう。本作ではアイスマンの計らいでマーヴェリックはパイロットのままでいられた、という事になっているが、大将にそこまでの権限があるとも思えない(アイスマンも最終的に大将に上り詰めた訳で、それ以前は当然ながらより低い階級だった筈だし)。 教官として、作戦の裏方に徹する筈だったマーヴェリックが、いつのまにか作戦の最前線に立っている、というのも有り得ない。いくら飛行技術があったとしても、本来なら退役間近の年齢に達している者が編隊長に指名される事は無い。 本作で、マーヴェリックは試験機ダークスターを破壊し、後半の作戦ではF/A-18戦闘機を破壊させている。が、操縦していた本人は無事脱出。 何十億円の航空機も所詮「モノ」に過ぎないから全損したら必要に応じてまた作り直せばいい、命はそうはいかないから助けないと、という発想は消費大国アメリカならでは。どんな高価なものでも使い潰していく。他国だと「操縦士の命は助かったんだから、航空機を失っても問題ナシ」という訳にはいかない。「操縦士も重要だが、航空機の方がもっと大事」となる。 アイスマンは、癌で喉をやられてしまい、殆ど喋れない、という設定で登場。 これは、演じていたヴァル・キルマーが癌で喉に手術をせざるを得なくなった、という事実をキャラに反映させたかららしい。 当然だが、ヴァル・キルマーはアイスマンとは異なり、死んではない。 作中でアイスマンは声を振り絞ってマーヴェリックに語り掛けているが、アイスマンの声はヴァル・キルマー本人のものではなく、吹き替えだったらしい。 ヴァル・キルマーが年相応の容姿である一方、トム・クルーズがそこまで老け込んでいない事に、とにかく驚く。 マーヴェリックの相手役として、酒場を営む女主人のペニー・ベンジャミンが登場。 前編では名前が述べられるだけで作中では姿を現さないキャラだったが(よって誰も演じていない)、本作では普通に姿を現し、お馴染みのキャラと言わんばかりにマーヴェリックと絡んでいる。 演じていたのはジェニファー・コネリー。流石に歳を取ったな、とい言った感じ。 酒場のシーンは、ライトスタッフのパンチョ・バーンズの店を連想させた。 パイロットの溜まり場は、似た様なものになってしまうのか。 登場人物の大半がパイロットか、元パイロットという事もあり、ほぼ全員がニックネームを持っている。 主人公は“マーヴェリック”、彼の元ライバルは“アイスマン”、主人公に恨みを持つパイロットは“ルースター”、選抜パイロットの中の問題児は“ハングマン”。 本名で呼ばれるキャラは殆どいない。 実際の海軍もそうなのか。 主人公の設定には無理があったが、航空シーンは迫力がある。 トム・クルーズを含め、パイロット役の俳優らは実際に米海軍の戦闘機に搭乗しながら演技したという(シーンによっては俳優にカメラを持たせて撮影と演技を同時にやらせたとか)。 米海軍の全面協力を得られたハリウッドならではのスケール感ある撮影。 前編では、敵機の「ミグ」は実際には米軍のF-5で、航空機について少しでも知識がある者だとそれに違和感を抱く羽目になっていた。 本作の敵機(いわゆる第5世代戦闘機)は、ロシアが開発中のステルス戦闘機Su-57に似た機体が登場。 前編ではリアルな飛行シーンを映すには実際の米軍戦闘機をロシアの「ミグ」と称して撮影させざるを得なかったが、現在なら架空の戦闘機の飛行シーンもリアルに映せるくらい特撮技術が向上している、という事だったらしい。 確かに、第5世代戦闘機の飛行シーンに違和感は無かった。 ラスト辺りでは、にマーヴェリックらがF-14戦闘機に搭乗して飛行するシーンも。 F-14はとうの昔に米海軍からは退役しており、その上退役したF-14は敵国となってしまったイランに部品が渡る事が無いよう、破壊され捲っていて、飛行可能状態のF-14はアメリカ国内には残っていないので、作中の飛行シーンは全て特撮によるものと思われる。 それでも、どうやって撮影したんだろうと思う。 マーヴェリック率いる編隊は、あるならず者国家の軍事施設を攻撃しているが、この「ならず者国家」がどこの何という国なのかは明らかにされない。 実際の国名を出すと問題になるし、わざわざ仮想の国を想像するのも面倒臭い、と感じたかららしい。 時折現れた国旗はイランを連想させるものとなっていたが(イランは米国以外でF-14を運営する唯一の国)、積雪があり、第5世代戦闘機を導入出来る程の資金と技術を保有する、となるとロシアっぽい。 前編も敵国は「ミグ」を運用している国家、となっていて、「ソ連」の明言は避けていたので、敵国をしっかり定めないのは本シリーズの伝統か。 トム・クルーズがノーヘルメットでオートバイを飛ばすシーンは、本作でも導入。 40年経っているが、この法律は変わっていないらしい。 冒頭では前編でも登場した旧車のカワサキGPZ900Rの旧車を乗り回し、それ以降は最新型のカワサキNinja H2を乗り回していた。 Ninja H2は、1000ccながらも200馬力のエンジンを搭載した高性能バイク。当然ながら、安くは無い。 海軍大佐の給料、てそこまでいいのか。 制作発表時は中国資本の会社がスポンサーになっていた事もあり、作品の紹介シーンでは台湾と日本の国旗が縫い付けられている筈のジャケットから国旗が消えていた、と批判が挙がっていたが、本作では台湾と日本の国旗入りジャケットが普通に見られた。 コロナウィルスの影響で制作から公開まで時間が掛かってしまい、その間に中国の会社の懐事情が変わってスポンサーを降りたからだという。コロナウィルスの怪我の功名といえる。 前編もアメリカ万歳映画ぽかったが、本作もアメリカ万歳っぽく仕上がっている。 一時はそればかりで辟易していたが、最近はハリウッドにも中国資本が流れ込んでいる事もあり、中国万歳の映画が増えてしまっているので、逆にここまでアメリカ万歳だと清々しい。 ハリウッド映画は矢張りアメリカ映画であるべき。 前編の原作者であるエフド・ヨネイの遺族が、許可無く続編の製作を進めて公開したとして、本作で得られた利益等の損害賠償と、本作や更なる続編の配給中止を求め、ロサンゼルスの連邦地裁に提訴した事を発表している。 原作があったのか、とびっくりしたが、原作といっても小説ではなく、海軍のトップパイロットについて紹介する記事で、ストーリー性は無いので、この訴訟がどこまで取り上げられるかは不明。 アメリカは何でも訴訟の材料にするな、と思った。トップガン マーヴェリック:オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2750円(税込、送料無料) (2022/7/8時点)楽天で購入
2022.07.08
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2022年公開の映画。 DCコミックスのスーパーヒーロー・バットマンの実写版。 本作品を以て、バットマン・フランチャイズはまたリブートされた事になっている。 本作でバットマン/ブルース・ウェインを演じるのはロバート・パティンソン。 他に、ゾーイ・クラヴィッツ、ポール・ダノ、ジェフリー・ライト、コリン・ファレル、アンディ・サーキスが出演。 原作は「The Batman」。粗筋 軽重の犯罪が横行するゴッサムシティ。 それを変えようと、若き大富豪のブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は、バットマンに扮して自警活動する様になってから2年が経過していた。 選挙を控えるゴッサムシティ市長ドン・ミッチェルが、自宅で寛いでいたところ、背後から緑のマスクを被った男に襲われ、殺害される。 ミッチェルの殺害現場でゴードン警部補(ジェフリー・ライト)が現場検証していると、バットマンが現れる。 バットマンを呼んだゴードン警部補以外の警察関係者は、蝙蝠の格好をして自警ごっこしている変質者を犯罪の現場に招くな、と反発する。 が、ゴードン警部補にはバットマンを呼ぶ理由があった。何故なら、殺害現場には、バットマンに宛てた封筒があり、その中にはリドラーと名乗る犯人からのメッセージがあったのだ。 メッセージはなぞなぞだったが、バットマンは即座に解き、一緒に入っていた謎の暗号の書かれた紙を見ようとするが、サベージ本部長により現場から追い出されてしまう。 が、バットマンはコンタクトレンズ型カメラで暗号の書かれた紙を記録していたので、ウェイン邸の地下にあるバッドケイブで執事のアルフレッド・ペニーワース(アンディ・サーキス)と共に暗号の解読を開始する。 暗号の答えは「drive」だったので、ゴードンと共にミッチェル邸のガレージを捜査。 そこにあった一台の車に、事件で使われた鈍器を発見する。その車には、犯人が残したUSBもあった。 USBにはミッチェルが謎の女性を侍らせサベージ本部長と、マフィア組織を率いるペンギン(コリン・ファレル)と会っている画像が記録されていた。 ペンギンは、別のマフィアの大ボス・ファルコーネと共にゴッサムシティの裏社会を牛耳る人物。 市長として犯罪撲滅を訴えていたミッチェルと、犯罪を取り締まる立場にあるゴッサム市警のトップが、マフィアとの繋がりがあった事を証明する決定的な証拠だった。しかし、これだけでは何故ミッチェルが殺されたのか、分からない。 バットマンは、ペンギンが運営するナイトクラブへ向かう。 ペンギンは、画像の謎の女性が誰なのか分からない、と白を切るが、ナイトクラブで働いていたセリーナ・カイル(ゾーイ・クラヴィッツ)は、謎の女性について知っていた。 バットマンは、セリーナの後を付けると、謎の女性が同じくナイトクラブで働くアニカという名の女性である事を知る。バットマンはアニカから話を聞こうとしたが、アニカは何者かに拉致された後だった。 バットマンは、セリーナにコンタクトレンズ型カメラを装着させ、ナイトクラブに戻る様、要求する。 セリーナは、バットマンに反発しながらも、ナイトクラブに戻る。 セリーナが装着したコンタクトレンズ型カメラを経て、バットマンは地方検事のコールソンがナイトクラブを訪れているのを知った。要するに、地方検事もマフィアの影響下にあった。 その直後、リドラーはコールソンを拉致した。 数日後、ミッチェル市長の葬儀が営まれる。 その葬儀場に、自動車が乱入。 自動車から中から這い出て来たのは、数日前に拉致された地方検事コールソンだった。首には爆弾が巻かれていて、リドラーが持たせたバットマンへのメッセージと、携帯電話を握っていた。 バットマンが到着すると、携帯電話が鳴り、リドラーと繋がる。 リドラーは、コールソンに対し、自分が出すなぞなぞに答えろと脅迫する。さもないと首に巻かれた爆弾を起爆する、と。 バットマンとコールソンは、リドラーが出すなぞなぞを解いていくが、最後のなぞなぞは、少し前にゴッサムシティの司法当局が犯罪撲滅の成果として大々的に挙げたマフィアの大ボス・マローニの逮捕劇に関するものだった。 マローニが逮捕に至ったのは、ある密告者から協力を得られたからだったが、リドラーはその密告者の名前を皆が見ている前で吐け、と要求する。 コールソンはこの要求を拒否。言ったら自分は破滅する、と。 リドラーは爆弾を起爆し、コールソンは死亡する。 バットマンとゴードンは、密告者とは、マローニの右腕だったペンギンだと推理し、ペンギンの後を追う。 ペンギンが取り仕切る麻薬取引の現場に踏み込んだ二人は、アニカの死体を発見。また、マローニの犯罪組織がペンギンと共に丸ごとファルコーネに渡っていた事を知る。 バットマンとゴードンは、お前が密告者だな、とペンギンを追及する。リドラーが出したなぞなぞの答えはお前を指している、と。 しかし、ペンギンは否定した。確かにマローニの逮捕後、マローニの組織も自分もファルコーネの組織に移らざるを得なかったのは事実だが、マローニの逮捕劇に自分は関与していない、と。そもそもなぞなぞの解き方が間違っているぜ、とも指摘。 バットマンとゴードンは、リドラーのなぞなぞを最初から洗い出す事を迫られる。 すると、ウェインの父親が運営していた孤児院とリドラーに関係がある事が分かり、バットマンは廃墟と化した元孤児院に向かう。 そこに残されたリドラーのなぞなぞにより、リドラーはウェイン家にも憎しみを抱いている事実が明らかになり、ブルース・ウェインも標的の一人だと知る。 バットマンは、自宅へと戻るが、ブルース・ウェイン宛ての爆弾入り郵便物を開封してしまったアルフレッドが病院に搬送された後だった。 リドラーが残した情報から、ブルースは、何年も前に殺された自分の父親がファルコーネと関係があった事実を知る。 ブルース・ウェインとしてファルコーネと対面したところ、ファルコーネは自身とブルースの父親トーマス・ウェインの関係について語る。 医師で事業家だったトーマス・ウェインは、腐敗し切ったゴッサムシティを正そうと、市長に立候補したが、あるジャーナリストが妻のマーサが精神病を患っている事をネタに強請を掛けてきた。困り果てたトーマスは、自身の元に助けを求めてきた。自分は襲撃されて瀕死の状態だったところを、トーマスに救われた事もあり、借りがあった。どうにかしてくれというトーマスの依頼に応える事にした。その結果、ジャーナリストは非業の死を遂げた。それから間も無く、選挙中にトーマスとマーサは何者かにより殺害された。自分と大富豪のウェイン家との関係が深くなる事を恐れたライバルのマローニが手を下した可能性が高い、とファルコーネは締めくくった。 自身の父親は善人だと信じ切っていたブルースは、父親もマフィアと関わりを持っていた事実に愕然とする。善良な市民である両親を殺されてしまったからこそ自分はバットマンとして活動していたのに、と。 ブルースは、意識を回復したアルフレッドに対し、父親の死に関する事実を何故自分に知らせてくれなかったのかと責め立てる。 アルフレッドは言う。ジャーナリストの強請に困り果てたトーマスがファルコーネの下に駆け込んだのは事実だが、追い払えと頼んだだけで、殺せと頼んではいない、と。ジャーナリストが殺害されたと知ったトーマスは、自首しようとしたが、それを阻止しようとファルコーネがトーマスとマーサを殺害した可能性が高い、と。 ブルースは、何が真実で、何が嘘なのか、自分が何の為にバットマンとして活動してきたのか、全く分からなくなってきた。 セリーナは、自分はファルコーネの娘だと、ブルースに打ち明ける。といっても、ファルコーネに親しみは持っていなかった。寧ろ、ファルコーネこそ密告者だ、という事実をミッチェルがアニカにうっかり打ち明けてしまった、という理由だけでアニカを始末する事を決めたファルコーネを恨んでおり、殺すつもりでいた。 バットマンとゴードンは、ナイトクラブに向かい、セリーナを阻止し、ファルコーネを検挙。 しかし、護送中にファルコーネはリドラーに狙撃され、死亡する。 警察がリドラーが狙撃した現場に向かうと、そこはごく普通のアパートだった。 アパートの住人を探し出したところ、会計士のナッシュトンに行き着く。 彼こそリドラーだった。 ナッシュトンは直ちに精神病院に収容される。 バットマンは、精神病院に向かい、ナッシュトンと面会する。 リドラーことナッシュトンは、バットマンと面会出来て歓喜。 リドラーは、バットマンと共にゴッサムシティに巣食う悪(ミッチェル、コールソン、ファルコーネ、ウェイン家)を叩き潰していた、と信じて疑っていなかった。 バットマン=ブルース・ウェインという真実を知らない相手により一方的に片棒にされていたと知ったバットマンは、戸惑うしかなかった。また、リドラーの正義と、自分の正義で、何が違うのか、とも悩み始める。 リドラーとの会話により、彼が仕掛けた計画が終わっていない事をバットマンは知る。 バットマンは、その計画について全て吐けとリドラーに迫るが、バットマンは自分の味方ではない、と知ったリドラーは答える事を拒否。 バットマンは、リドラーが仕掛けたなぞなぞの練り直しを迫られる。 バットマンは、リドラーのアパートに戻り、ミッチェルの殺害に利用された凶器の真の意味を知り、リドラーが仕掛けた計画の全貌を掴む。 ゴッサムシティの至る箇所に爆弾を仕掛けた自動車を配置し、市長選の投票日に爆破させる。爆破の衝撃で堤防を破壊し、市の中心部を水浸しにする。避難する市民を選挙の集会場に集結させ、そこをリドラーの賛同者らが襲い、エリートぶっているだけの新市長と共に虐殺する……、という計画だった。 バットマンは選挙の集会場に急行するが、爆破により市が水浸しになり、市民が集結するところだった。 バットマンは武装したリドラーの賛同者らを倒し、新市長と市民を救う。 精神病院で、リドラーは、自分の計画がバットマンによって阻止された事を知り、絶望感に陥る。 リドラーの隣の収容者が、お前はお前なりに良くやったじゃないか、と笑いながら慰めた。 バットマンにとって、これまでの自警活動は市民を救う為というより自己満足の側面が大きかったが、同じく自己満足の正義を振りかざしていたリドラーと立ち向かった事により、市民を救う事こそが自分のやるべき事だと改めて認識する。感想 バットマンシリーズの再々々々々リブート。 展開が行き詰まり易いキャラなので(各バージョンも何だかんだで第1作目が一番出来が良く、それ以降はイマイチになる)、度重なるリブートは仕方ないのかも知れないが、ベン・アフレック演じるバットマンに漸く馴染んできたのにまたリブートする必要があったのか、と思わないでもない。 全体的な雰囲気は、クリストファー・ノーラン版のバットマン第1弾(バットマン・ビギンズ)のダークでシリアスな世界観。 作中では一切触れられていないが、ホアキン・フェニックス主演のジョーカーで登場したウェイン一家の15年後を描いたのが本作、と説明されても違和感抱く事無く受け入れられるものになっていた。 これまでのバットマンシリーズでは、バットマンはヒーローとして初登場し、市民にも警察にもヒーローとして受け入れられていたが、本作のバットマンは警察からは「蝙蝠の格好で自警活動している変質者」と見られていて、市民からも特段ヒーロー視されていない。 バットマンの世界をよりリアルに描く事にした結果こうなった、と言える。 本作ではバットマン以外にもリドラー、ペンギン、キャットウーマン等、シリーズではお馴染みのキャラが登場するが、いずれもごく普通の人間として描かれている。やっと素顔で登場した知能犯リドラーがごくごく普通の中年男性だったというのは、シリーズ最大の衝撃だった。 コスチューム姿で登場するのはバットマンだけ。 その意味でも「バットマン=変質者」の方程式が強調されている。 ブルース・ウェインも、本作での年齢設定が若いからか、まだまだ未熟な部分があり、ラストになって漸く市民から支持されるヒーローとして活躍する事に意義を見出す展開になっている。 ブルースの執事で、サポート役のアルフレッドも登場。これまでのシリーズ作では互いに絶大な信頼感を持つ関係、として描かれていたが、本作では互いに信頼しているものの絶大という訳ではなく、互いの言動に呆れていたり、反発したりする様子も描かれていた。 バットマンがDCコミックスで初登場したのは、1939年発行の「DETECTIVE COMICS(探偵漫画)」の第27巻。元は蝙蝠の格好をした探偵だった。 本作は、それに原点回帰させたい、という事もあってか、アクションヒーローとしてというより、探偵としての活動が多い。バットマンは元々こういうキャラだったんだな、と改めて思った。 ひたすら探偵として活動していたら作品全体が地味になるし、蝙蝠の格好をさせる意味が無くなると製作者側が感じたからか、カーアクションや格闘シーンを便宜的に盛り込んでいた。 凶悪犯罪を巡る映画とあって、ご都合主義な部分も多い。 最大の難点が、リドラーの正体が捻じ曲がった正義感を振りかざしているだけの会計士だった、という点。 一会計士が市長の自宅に忍び込んで市長を殺害したり、警察の追跡を欺いて有力者を拉致したり、爆弾を仕掛けたり、マフィア組織の活動を調べてなぞなぞにしたりする、というのは無理がある。 そうした思惑を抱いていたり、計画したりしたら、直ちに周囲に知られて警察当局やマフィア組織からも目を向けられていただろう。 リドラーの言動や計画は派手で、奇怪だが、ミステリ映画で登場する悪党の域は出ておらず、コスチュームド・ヒーローでないと手に負えない、という程でもない。 その意味でもひたすら「リアル」な悪党だった。 本作の最大の悪は、ゴッサムシティを数十年も牛耳っていたファルコーネと言える。 ただ、あくまでもマフィアの大ボスという、現実社会でも有り得る悪党に過ぎない。 コスチュームヒーローでないと対処出来ない相手ではないというか、コスチュームヒーローの相手にしてはあまりにも地味な悪党。 バットマンより、マック・ボランが相手にしていた方が適していたかも。 ゴッサムシティにはファルコーネの他にもう一人マフィアの大ボスがいた、という事になっている。 ファルコーネの「密告」により検挙され、ゴッサムシティの司法当局による「犯罪撲滅の成果」として吊し上げにされた人物。 マローニというその人物の名は作中で頻繁に挙げられていて、ストーリー上重要な人物であるにも拘わらず、結局最後まで登場せず、バットマンと絡む事は一切無かった。 次回作で明らかにされていくのか、このまま全く取り上げられる事無く済まされていくのかは不明だが、本作で散々取り上げていたのだから、次回作で何とか登場させ、バットマンと絡んでほしい。 本作で登場するゴッサムシティの名士は、全てファルコーネの影響下にあった事になっている。 主人公ブルースの父親トーマスでさえもファルコーネと関わりがあった。 アルフレッドは、トーマスは強請を仕掛けてきたジャーナリストを脅して追い払ってくれとファルコーネに頼んだだけで、殺せと頼んではいない、と説明していた。 が、マフィアの大ボスの下に駆け込んで「どうにかしてくれ」と頼み込んだら、殺しも想定していなければおかしい訳で、「マフィアの大ボスに問題解決を依頼したのは事実だが、まさか殺すとは思っていなかった」という言い訳は通用しない。 本作のトーマス・ウェインは根っからの悪党では無い様だが、善良な市民、という訳でもなく、トーマスが非業の死を遂げた事が子のブルースがバットマンして自警活動をするきっかけとなった、となるには説得力に欠ける。 結局、本作には裏表が全く無い「善良な市民」が一人も登場しない。 バットマンシリーズは、各バージョンとも第1作目はバットマンがバットマンになった背景、そしてバットマンが活動するゴッサムシティを描くのに注力しており、その為バットマンが主役で、ヴィランはその引き立て役に徹している。 が、それ以降のシリーズ作になると、ゴッサムシティやバットマンの背景について改めて触れる必要が無くなるので、必然的にヴィランの描写がメインとなり、主人公である筈のバットマンが引き立て役に転じてしまう事が多い。 本作も、新たなバットマン像を描く事に成功したと思えるが、第2作目からはまたヴィランにスポットライトが当てられてしまうんだろうな、と思った。 あと、上映時間が3時間近く、というのもどうにかならないのか、と思う。THE BATMAN-ザ・バットマン- IJ-139 メタリックポストカード価格:275円(税込、送料別) (2022/5/6時点)楽天で購入
2022.05.06
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マーベルスタジオによるスパイダーマンシリーズ第3弾。 大人の事情から、マーベル・スタジオ単独の制作ではなく、コロンビア ピクチャーズと共同で制作し、ソニー・ピクチャーズ リリーシングが配給するという、複雑な経緯をたどる。 主演は引き続きトム・ホランド。 MCUのキャラであるドクター・ストレンジも登場。演じるのは引き続きベネディクト・カンバーバッチ。 第2弾直後の出来事を描く。 原題は「Spider-Man: No Way Home」。粗筋 前作(スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム)の直後。 クエンティン・ベック/ミステリオの策略で、スパイダーマン(トム・ホランド)の正体はピーター・パーカーだと全世界に明かされてしまった。 ミステリオの真の姿はただの大掛かりな詐欺師だったが、世間では並行世界からの脅威の犠牲となった英雄として見られていた(並行世界もミステリオの戯言だった)。その殺害の容疑を問われたピーターは、ダメージ・コントロール局に拘束される。他に、親友のネッド、恋人のMJ、そして叔母のメイまでもが尋問を受けた。 弁護士マット・マードック/デアデビル(チャーリー・コックス)の弁護により不起訴となるが、スパイダーマンの評価は世間で二分されてしまう。 ピーター、MJ、ネッドはマサチューセッツ工科大学(MIT)を受験していたが、この騒動により不合格とされてしまった。 責任を感じたピーターは、以前(アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー、エンドゲーム)共に戦ったスティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に助けを求める。 ストレンジは魔術を使ってピーターが抱える問題を解決する事には消極的だったが、拒否も出来ず、全ての人々からピーターの正体を忘れさせる呪文を行使する。しかし、呪文の詠唱の途中、ピーターがMJやネッドやメイまでも自分の正体を忘れてしまっては困る、等と言い出して邪魔をしてしまい、呪文は失敗に終わる。 その時点で、ストレンジはピーターに訊く。この件に関してMITと直接掛け合ってみたのか、と。 ピーターは、その手もあったか、と今更の様に気付く。 ストレンジは、魔術に頼るのではなく直接MITに掛け合って来い、とピーターを追い出す。 ピーターは、車中のMIT副学長を探し出して、説得を試みる。 が、その最中に機械仕掛けのアームを装備した謎の男の襲撃を受ける。 オットー・オクタビアス/ドック・オック(アルフレッド・モリーナ)だった。 ピーターは、スパイダーマンに変身して、ドック・オックと対峙する。 ピーターからすると、初めて戦う相手だったが、ドック・オックはスパイダーマンをピーターと知りながら攻撃に打って出た。 ドック・オックは、アイアンスパイダースーツからナノマシンを奪って自身のアームと結合させ、ピーターを追い詰める。しかしナノマシンを奪った事が仇となり、アームの主導権を奪われてしまう。 ピーターが素顔を見せると、ドック・オックは戸惑いの表情を見せる。お前は俺が知っているピーター・パーカーではない、と。 ピーターも、ドック・オックの発言に対し、戸惑うしかなかった。 その直後、グライダーに乗った緑色の怪人ノーマン・オズボーン/グリーンゴブリン(ウィレム・デフォー)が姿を現す。彼も、スパイダーマンを見るや否や攻撃に打って出るが、ピーターからすると何故初対面の相手に執拗に攻撃されなければならないのか、さっぱり分からなかった。 その直後、ストレンジの魔術でサンクタムに転移する。 ストレンジは、ピーターに説明する。 魔術の失敗によって、他の並行世界から、ピーターがスパイダーマンだと知る者を呼び寄せてしまった、と。 ミステリオが詐欺の一環として創作しただけの筈の並行世界が実在すると知って、ピーターは驚くしかなかった。 ピーターは、MJとネッドと共に、並行世界から呼び寄せられた他の訪問者らを探し出して元の世界に帰す為の作業を開始。 電気を自在に操るマックス・ディロン/エレクトロ(ジェイミー・フォックス)を発見し、同時に全身が砂で出来たフリント・マルコ/サンドマン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)と、カート・コナーズ / リザード(リス・エヴァンス)の捕縛にも成功する。 残りはグリーンゴブリンだけとなった。 グリーンゴブリンから本来の人格を取り戻していたノーマンが、メイを通じてピーターに接触する。ノーマンは、元の世界では一大企業オズコープの経営者だったのに、この世界ではオズコープという会社が存在していない事に驚いていた。彼も、サンクタムへと移送される。 全員が揃ったと満足したストレンジは、呪文を逆転させ、彼らをそれぞれの世界に戻す準備をする。 しかし、ピーターは、訪問者ら同士の会話から、全員がそれぞれの世界のスパイダーマンと戦って死亡する直前に転送された事に気付く。帰還させて直ぐ死なせるより、善人に戻して人生を何とかやり直させる機会を与えるべきだ、とストレンジに急遽提案する。 ストレンジは今更そんな事は出来ない、と拒否する。全員を元の世界にさっさと戻すのが正しい、戻った瞬間に死ぬのもそれが彼らの運命だ、と。 反発するピーターは、ストレンジの阻止を試みて、戦いを挑む。 ストレンジは、ミラー・ディメンションを展開して戦闘を有利に進めるも、ピーターの策略によりミラー・ディメンション内のグランドキャニオンに閉じ込められ、更にスリング・リングも奪われてしまう。 ストレンジとの戦いに勝利したピーターは、訪問者らを治療する為に、メイと共にハッピーのアパートを訪れる。 ノーマンの助力もあって、オクタビアスのアームの制御チップを作り直して彼の狂気を取り払う事に成功する。が、ディロンの治療の途中で、ノーマンの中のグリーンゴブリンの人格が再び覚醒してしまう。 グリーンゴブリンの発言で反旗を翻したディロン、フリント、コナーズは逃走してしまった。 ピーターは、メイを危険から逃がそうとしたが、ノーマンが彼女に致命傷を与えてしまう。 一方、MJとネッドは、偶然にもスリング・リングを用いてポータルを開く事に成功していた。 ピーターを呼び寄せようとするものの、現れたのはオクタビアスらの世界(『スパイダーマン』三部作)から来たピーター(ピーター2、トビー・マグワイヤ)と、ディロンらの世界(『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ)から来たピーター(ピーター3、アンドリュー・ガーフィールド)であった。 ピーター2とピーター3は、並行世界が実在し、それぞれに異なるピーター/スパイダーマンが存在する事に驚くが、その事実をあっさりと受け入れる。 2人のピーターの助言によって、行方をくらましたピーター(ピーター1)を発見。メイを亡くし、戦意を失っていたピーター1だったが、別の世界を生きるピーターらとそれぞれが愛する者と離別した事について語り合う事で、訪問者らを治療して元の世界に帰そうと決意する。 3人のピーターと、MJとネッドは、改装中の自由の女神にディロン、フリント、コナーズを誘い込んだ。 オクタビアスが現れてピーター側に加勢した事で、ディロン、フリント、コナーズを元の姿に戻す事に成功した。残るのはノーマンだけとなった。 その時点でネッドがポータルを開き、ストレンジがミラー・ディメンションから帰還するが、同時に様々な並行世界から「ピーターを知る者」が現れ始める。 ストレンジは、並行世界の扉を閉じる呪文を開始した。 ピーター1は挑発してくるノーマンを攻撃し、殺害しようとするが、それを止めたのはかつてノーマンと戦ったピーター2であった。ピーター2はノーマンに刺されながらも彼をかばい、その姿を見たピーター1はピーター3が投げた治療薬を受け取ってノーマンに注射し、正気を取り戻させる事に成功する。 ピーター1は、制御不能に陥った並行世界の侵蝕を止める為、自身に関する記憶を全ての人々から消し去ってほしい、とストレンジに伝える。最初からそうしていれば、一連の問題は起きていなかっただろうに、と今更悔みながら。 共に戦ったピーターたち、そしてMJとネッドに別れを告げ、再び出会おうと約束した直後、ストレンジの魔術が行使される。 訪問者らは各々の並行世界へと帰還し、そしてあらゆる人がピーターに関する記憶を失った。 2週間後のクリスマス。 ピーターは、MJとネッドの元を訪れる。 二人はピーターの記憶を完全に失っていた。 ピーターは、二人に何とか自分の事を思い出させようとしたが、戦いで負った傷が残るMJを見て、断念する。これ以上二人を危険に晒したくない、と。 ピーターは、新しく借りたアパートの一室に越し、スパイダーマンとしての自警活動を再開する。 一方、ひっそりとこの世界に呼び寄せられていたエディ・ブロック/ヴェノム。 ストレンジの魔術によってエディは元の世界に戻っていくが、彼がいた場所には、ヴェノムのシンビオートの一部が残っていた。感想 本作は、トム・ホランド版スパイダーマンシリーズの集大成であるが、それと同時にこれまでの劇場版(トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版)の集大成にもなっている。 公開前の情報で、ドック・オックが再び登場する事は知らされており、トビー・マグワイヤ版の敵役がどうやって絡んでくるんだろう、と思っていたが、ドック・オックだけでなく、過去シリーズの敵役全てが再登場。 物凄い事になっているなと思っていたら、過去シリーズのスパイダーマンまで登場。 こんな事が出来るのか、と驚かされた。 トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版はマーベルスタジオではなく、マーベルから映像権を取得していたソニーが制作したもので、映像権がマーベルスタジオに戻った後に制作されたトム・ホランド版とは全く別の物扱いだった(トム・ホランド版第1弾の副題が「ホームカミング=帰還」だったのも、マーベルコミックスの人気キャラが親元に戻って来たという意味合いも込めていた)。 しかし、どういう訳か映像権がまたソニーに渡る事になってしまい、マーベルとソニーが揉め、トム・ホランド版は2作で打ち切りになってしまうとの報道が。危機感を抱いたトム・ホランド自身がマーベルとソニーと直接掛け合った結果、トム・ホランド版第3弾は共同制作という流れに。 共同制作という事で、これまでの劇場版全てが一堂に介せる、という思わぬ効果が得られる運びとなった。 MCUには、以前のシリーズ作を「並行世界」として扱って登場させられる下地を、意図せず作り上げていた事になる。 以前の作品では、スパイダーマン1人が1作品1敵役を相手に死闘を繰り広げていたが、本作では前半で1人のスパイダーマンが何人もの敵役を相手にする。 ピーター1のスパイダーマンが意外と万能で、しかも魔術の助けもあり、敵役を次々捕縛出来てしまうのは、拍子抜けする。 最強の敵と思われたグリーンゴブリンも、あっさりと捕縛出来てしまった。 これでもう終わりか、やけに簡単に進んだな、上映時間の残りはどうするのか、と思っていたらピーター自身が横槍を入れて事を複雑にし、折角捕縛した敵役を逃走させ、ピーター2とピーター3を招く事に。 ピーター1は、年齢設定(18歳前後)の割には言動が小学生レベル。にも拘わらずMITを志望校に出来る程頭脳明晰という事になっている。結局ピーター1は優秀なのか、馬鹿なのか。 これまでのシリーズ作が登場した敵役がガンガン登場するが、どれも根っからの悪人というより、事情により悪と見なされる方へと歩まざるを得なかった普通の人間ばかり。 悪である事を自認した上で悪行に手を染める敵と戦うバットマンと比較すると、迫力不足の感は否めない。 これも、主人公がまだ未成年、という事が関係しているのか。 トビー・マグワイヤ版が公開されたのは20年近く前になるが、本作で登場した姿が3部作とあまり変わっていない事に驚く。 アンドリュー・ガーフィールドも、年を食った印象はあるが、老け込んではいない。 若さの秘訣は何か。 ウィレム・デフォーがグリーンゴブリンを再演したのは興味深かった。 デフォーはアクアマンにも出演しているので、マーベル/DCの2大アメコミ実写映画に出演している事になる。 昔は娯楽映画に出演する俳優のイメージがあまり無かったが、今では欠かせない存在に。 本人は自身の俳優人生をどう思っているのか。 ドクター・ストレンジは、魔術を扱える優秀な人物と思いきや、意外と間の抜けた部分がある事を証明。 ドクター・ストレンジの続編も制作される予定なので、本作はその下地作り、という側面もあった様である。 ベノムも、エンドクレジットで登場。 既に2作公開されているが、本作でどういう流れになっていくのか、知りたい様な、知りたくない様な。 どちらかというとシリアスでダークな作品が多いMCUの中で、スパイダーマンシリーズだけは軽いノリで、底抜けに明るい雰囲気だったが、トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版が絡んできた事でダークな方向へ。 シリーズのレギュラーキャラだったメイが死んでしまう。 トビー・マグワイヤ版の共通テーマである「大いなる力には大いなる責任が伴う」が本作で適用される事に。 何故ここまでダークな方向へ持っていったのか、分からない。 このまま続編が制作されると、ひたすらダークな方へと転落するだけの気がするので、トム・ホランド版は本作で打ち止めにするのが適切と思われる。 マグワイヤもそうだが、他の過去シリーズ出演者からの了解をどうやって得たんだろう、と不思議に思う。 この手のロングランのシリーズになると、「自分はお子様映画からは足を洗った。もう歳だし、関わりたくない」として、1人くらい拒否する者がいても不思議ではないと思うのだが。 いずれにせよ、制作会社が異なるヒーローとヴィランが1作で集結出来たのは、凄い事。 スパイダーマンは今後も制作され続けると思われるが、過去シリーズを集結させるのはほぼ不可能と思われる。流石に出演者らも歳を取っていくし。ホットトイズ MMS610 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』スパイダーマン(ブラック&ゴールドスーツ版) 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2022.03.03
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キングスマン・シリーズ第3弾。 第1弾と第2弾で登場した独立スパイ機関「キングスマン」の誕生の秘話を描いている。 舞台は第1次世界大戦の時代なので、第1弾と第2弾の登場人物は一切登場しない。 主人公を演じるのは、007シリーズにも出演していたレイフ・ファインズ。 女執事のポリー・ワトキンズを演じるのはジェマ・アータートン。彼女も007シリーズに出演経験がある(007 慰めの報酬のストロベリー・フィールズ役)。 また、ファインズとアータートンは、2010年に公開された「タイタンの戦い」で共演している。 原題は「The King's Man」。粗筋 1902年。 英国貴族オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、軍人であったが、戦いの日々に嫌気が差し、退役後は赤十字の活動に従事していた。 オックスフォード公は、第二次ボーア戦争の最中の南アフリカを、赤十字活動の一環として妻エミリー、息子のコンラッド、そして執事のショーラ(ジャイモン・フンスー)と共に訪問。 訪問先の英国軍基地で、旧友の指揮官キッチナー(チャールズ・ダンス)と、その副官のモートン(マシュー・グード)と面会する。が、敵側のボーア人兵士が放ったライフルの凶弾により、エミリーは命を落としてしまう。 1914年。「羊飼い」と名乗る男が、とある断崖絶壁の小屋で会議を開いていた。 そこではロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイのマタ・ハリ、セルビアのテロリストのプリンツィプ、ロシアの革命家レーニン、ドイツのニセ預言者ハヌッセン等、世界を揺り動かす事になる悪名高い人物らが一堂に介していた。「羊飼い」の目的は、従弟同士となるイギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世を反目させ、世界規模の戦争を引き起こす事だった。「羊飼い」は、集まった各人に、その目的の為に行動を起こす様命じる。 一方、オックスフォード公はキッチナーの依頼を受け、成人した息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)と共にオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公を護衛する。何者かが大公を狙っている、との情報があったのだ。オックスフォード公は一度は暗殺を未然に防ぐものの、最終的に大公はプリンツィプに射殺されてしまう。 この事件を引き金に、世界は瞬く間に後に第一次世界大戦と呼ばれるようになる、これまでに無い規模の戦争に突入。戦局はイギリスに不利な方へ、そして敵対するドイツに有利な方へと傾いていく。 大公の暗殺は単発的な事件ではない、と悟ったオックスフォード公は、女執事のポリー・ワトキンズ(ジェマ・アータートン)に命じて、国家権力に頼らない諜報網の構築を開始した。 キッチナーは、戦線からの離脱を思い留まる様にと説得する為ロシアに向かっていたが、乗船していた巡洋艦ハンプシャーが何者かが放った魚雷により撃沈されてしまった。 ラスプーチンが裏で手を引いてニコライ2世に戦線からの離脱を強要していると知ったオックスフォード公は、コンラッド、ポリー、ショーラを引き連れてロシアに潜入。激闘の末、ラスプーチンを始末する事に成功する。これで、ロシアは戦線に踏み留まる事になり、大戦はイギリスにとって有利に運ぶと思われた。 コンラッドは英国軍に入隊し、ドイツと戦う事を強く希望する様になる。妻を戦闘で失っているオックスフォード公は、息子の考えに難色を示した。結局、コンラッドは父の反対を振り切り英国軍に入隊。 オックスフォード公の裏からの根回しにより、前線に向かう直前のコンラッドは上官から帰還を命じられる。父の露骨な根回しに反発したコンラッドは、下士官のアーチーと入れ替わり、最前線へと向かう。最前線で、ドイツ側の重要な情報を入手する活躍を見せたが、アーチーと入れ替わった事が仇となり、別の上官からドイツ軍のスパイと誤認され、射殺されてしまった。 妻エミリーに続き、息子のコンラッドにも先立たれてしまったオックスフォード公は悲嘆に暮れ、酒に溺れるようになってしまう。 しかし、「羊飼い」率いる組織が動き続けていると知ったオックスフォード公は立ち直り、世界中の諜報ネットワークを駆使してドイツ軍の暗号を読み解く。 オックスフォード公はアメリカにドイツの陰謀を伝えるが、アメリカのウィルソン大統領はマタ・ハリによる淫行を盗撮され、それをネタに脅迫されていたので、身動き出来なかった。 オックスフォード公は盗撮フィルムを取り返すべく、ポリーとショーラと共に断崖絶壁にある「羊飼い」の本拠に乗り込む。「羊飼い」は、キッチナーと共に死んだと思われた副官モートンだった。モートンはイギリス人ではあったが、イングランドを恨んでいて、大英帝国を潰す為に世界戦争を引き起こしたのだった。 オックスフォード公はモートンを倒し、盗撮フィルムを取り返す。 盗撮フィルムはウィルソン大統領の元に送られる。脅迫から解放された大統領は、イギリス側に付く形で、第一次世界大戦に参戦。 その結果、大戦はイギリス側の勝利に終わった。 しかし、結果的にイギリスは国力が弱まり、ドイツはヴィルヘルム2世が退位して共和制となり、ロシアは革命によりニコライ2世が家族と共に殺害されて共産国となってしまった。 凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公は、ポリー、ショーラ、アーチーらと共に、サヴィル・ロウにある高級テーラーに、国家権力から独立した諜報機関を新たに設立する。それが「キングスマン」となる。 一方、モートン亡き後もその組織は死に絶えていなかった。 組織の生き残りである偽預言者ハヌッセンが前任者の意向を引き継ぐべく新たに「羊飼い」となり、同じく生き残りのレーニンと、新規メンバーの若者を引き合わせる。 その若者とは、アドルフ・ヒトラーだった。感想 人気シリーズとなったキングスマンの第3弾。 といっても、組織の誕生秘話を描いていて、時系列的には第1弾と第2弾より一世紀近く前の話となる。 キングスマン・シリーズは、良い意味でも悪い意味でも観る側の期待というか、予測を裏切る。 第1弾では、キングスマンのベテランメンバーが颯爽と登場し、そのまま最後まで引っ張ってくれるのかと思いきや、中盤で殺されて退場。後半は新規メンバーが引き継ぐ形でクライマックスになだれ込む。 第2弾では、第1弾で殺されたと思われたベテランメンバーが実は生きていた事が明らかにされる。主人公の座に戻って大活躍するのかと思いきや、以前程の精彩は無く、第1弾の新規メンバーが主人公のままクライマックスになだれ込む。 今回の第3弾は、父がいかにしてキングスマンという組織を設立し、子に引き継がせたのかを描くのかと思いきや、子は殺されて途中退場。組織は子がいない中で設立される。 期待や予想をここまで裏切らなくても、と思わないでもない。 本作の主人公は、結局オックスフォード公、という事になるが、言動に100%共感出来る人物なのか、というとそうでもない。 戦いばかりの日々に嫌気が指して赤十字の活動に従事する様になった、との事だが、それはあくまでも隠れ蓑で、実は戦いを裏で支える活動をしていた。 祖国イギリスにとって有利な方向へ運ぶように、と。 ドイツと敵対するロシア帝国の戦線離脱を阻止する為、オックスフォード公は皇帝に戦線離脱を説いていたラスプーチンを始末。結果ロシアは戦線に居残り、国が疲弊し、革命が勃発して帝政が崩壊し、レーニンにより共産国ソビエト連邦へと移行してしまう。 アメリカは第一次世界大戦を「欧州の内輪揉め」と見なして参戦に反対する声が大勢を占めていたが、ウィルソン大統領自身は参戦には前向きだった。しかしマタ・ハリによる脅迫で身動きが取れなかった。そこでオックスフォード公はマタ・ハリから情報を絞り出して脅迫の材料となっていた淫行フィルムを奪取。よってアメリカは大統領の望み通り参戦し、多数の若者がアメリカから遠く離れた欧州で血を流す事になる。 こうして見ると、オックスフォード公が全く行動を起こさなかった方が無駄な血が流れずに済んだのでは、と思ってしまう。 「羊飼い」の動機も、捻じれた部分はあったが、完全に間違っていた訳ではない、と。 味方より敵側の動機に何となく共感してしまう点は、キングスマン・シリーズならでは。 オックスフォード公が最終的に何を狙っていたのかも分かり辛い。 イギリスの国益の為に動いていた、という割には長引いた大戦でイギリスの世界的地位は落ちていき、その後の第二次世界大戦で決定的に没落するので、オックスフォード公の活動は全くの無駄だった事になる。 オックスフォード家の名を守る為、にしては、自身の失態で妻も子も亡くしてしまっている。 戦争の最中の南アフリカを妻子を伴って訪れるなんて、何を考えていたのか、としか言い様が無い。 残された子に関しては、戦争の最前線に向かわすのを阻止する為に浅かな裏工作で逆に子の反発を買ってしまい、子が自ら最前線に向かう道を選んで命を落としてしまっている。 オックスフォード公は、結局祖国も家族も守れなかった。 レーニン、ラスプーチン、マタ・ハリ、プリンツィプ、ヒトラー等、歴史上で悪役扱いされている人物らは実は裏で繋がっていて、組織の指示の下で動いていた、というのは発想としては面白いが、一堂に介して互いと顔見知りだった、というのは無理がある。 国籍や人種が異なり、母国語も違うので、作中の様に共通語となる英語で会話しているのは違和感しか抱かない。 それぞれが個々の思惑で対等の立場で協力し合っていた、というのならともかく、「羊飼い」という独裁的な人物の指揮の下で手足となって動いていた、というのもおかしい。「羊飼い」の動機が全世界を対象としたものだったならともかく、個人的なものに留まっているのだから。 レーニンらは、「何故お前の個人的な恨みの為に命を懸けて動かなければならないのだ」と疑問に思わなかったのか。 謎の組織を率いる「羊飼い」の正体が、キッチナーの副官モートンだった、というのも、意外ではあるのと同時に、難点にもなってしまっている。 組織はレーニン、ラスプーチン、ヒトラー等、歴史に名を連ねる者で構成されているのに、その指導者が歴史上の人物ではない、というのはしょぼ過ぎる。 動機も、一スコットランド人として、我が物顔で自分らを支配するイングランドやイングランド人を許せなかったという、連合王国イギリス内の揉め事に過ぎなかった。その程度で世界を混乱に陥れるのは、遠回しにやり過ぎ。もっと単刀直入にイングランド内でテロ事件でも起こしていた方が効果的だっただろうに、と思ってしまう。 キッチナーの副官を務めながら時折イギリス国外の断崖絶壁の小屋に足を運び、メンバーを集めて世界を混乱に陥れる為の会合を開いていた(現在だったらオンライン会議も可能だが)、というのもおかしい。 キッチナーは、頻繁に休暇(だろう)を申し出る副官を、不審に思わなかったのか。 モートンがいかにして国籍豊かなメンバーを掻き集めて悪事を働かせていたのか、その資金的バッキングはどうしていたのか等の説明も全くなされていない。 これくらいの悪事を展開出来る組織となると、相当な資金力が無ければならない(資金力が無かったら人材が集まらない)。となると、「世界中の誰もが知らない悪の秘密組織」として存在する事も出来ない筈。 その面で、矛盾が生じている。 本作は、第一次世界大戦前後の史実をベースにしているが、当然ながら史実を捻じ曲げている部分も多い。 フェルディナンド大公が暗殺された自動車に同乗していた人物が、ラスプーチンの暗殺に加わっていて、しかもマタ・ハリとも直接対決した、というのはいくら何でも無理がある。 イギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世が家系で見ると従弟同士だったのは事実だが、3人が幼少期に一カ所に集まって顔を合わせていた、というのは有り得ない。また、本作の様にあからさまに互いを意識して牽制し合っていたとも思えない。 キッチナーが乗船していたハンプシャーは実在した軍艦だが、本作の様に魚雷で撃沈されておらず、ドイツ帝国海軍が敷設した機雷に触れて沈没している。 ラスプーチンは史実でも最終的に暗殺されるが、暗殺したのはイギリスからやって来た貴族ではなく、皇帝ニコライ2世の親族。 作中と同様、暗殺者らは毒入りの菓子を食べさせて毒殺を試みたが、ラスプーチンがいくら食べても死ぬ兆しが見えなかったので、銃で射殺しようと計画を変更。ラスプーチンは被弾しながらもその場から逃走し、川に転落。間も無く死体となって発見されるが、死因は溺死だったという。 史実のラスプーチンは本作で描かれた以上の怪人だった。 マタ・ハリは終始ヨーロッパで活動しており、アメリカ大統領との接点は無い。 第一次世界大戦中の活動も果たしてどの程度戦況に与えていたのかは不明確で、そもそもスパイだったのかも不明。 本作では、「一匹狼のテロリスト・プリンツィプは実は「羊飼い」率いる秘密組織の下で動いていた」という風に描かれているが、史実のプリンツィプは一匹狼ではなく、セルビア独立を掲げる組織に属していた。 その組織はフェルディナンド大公の暗殺を何度も試みており、プリンツィプが偶々というか漸く成功したに過ぎない。プリンツィプより前に別の者が成功していた可能性もあったし、プリンツィプが失敗してもその後に別の人物が成功していた可能性もあった。 フェルディナンド大公はどっち道何者かに暗殺される運命にあったといえる。 プリンツィプは犯行時まだ二十歳前とあって、死刑は免れるが、衛生状態の悪い監獄に収監された為、数年後に病死している。 本作での描かれ方は、狂気に満ちたテロリストだが、セルビアでは第一次世界大戦を引き起こした罪人と評する者がいる一方、セルビア独立のきっかけを作った英雄と評する者もいるという。 オックスフォード公の情報収集は、世界中の召使を駆使した結果、という事になっている。 当時は有力者が召使や家政婦や執事を雇うのが当たり前で、そういう者なら外部から潜入するより怪しまれずに正確な情報を得られる、という発想かららしい。 現在も召使等は起用されているが、昔程ではないし、有力者も滅多やたらに召使を採用しないから、現在のキングスマンはどうやって情報収集しているのか。 本作は、キングスマンの誕生秘話を描いているが……。 第1弾ではキングスマンのリーダーが敵側に通じていた事になっているし(だからこそベテランメンバーは内部の裏切りにあって死亡[した事に])。 第2弾では、麻薬組織によるミサイル攻撃で壊滅状態に陥る。 キングスマンは創立当初の目標から逸脱している。 オックスフォード公は、自分が誕生させた組織の行く末をどこまで予見していたのか。 国を守れず、家族も守れず、設立した組織もレガシーにはなっていない。 やる事成す事全てが無駄だった、という主人公も珍しい。キングスマン:ファースト・エージェント ブルーレイ+DVDセット【Blu-ray】 [ レイフ・ファインズ ]価格:3811円(税込、送料無料) (2022/2/20時点)楽天で購入
2022.02.20
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007シリーズ第25作目。 ダニエル・クレイグ演じる6代目ボンドの最終作との事。 敵役を演じるのはラミ・マレック。 レア・セドゥが引き続きボンドの恋人マドレーヌを演じる。 他に、レギュラーとしてベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ、ジェフリー・ライトが出演する。 ボンドウーマンとして、アナ・デ・アルマスとラシャーナ・リンチも出演。 監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。 原題は「No Time to Die」。粗筋 当時まだ子供だったマドレーヌ・スワンは、母親と暮らしていた。 母親は酒浸りの廃人で、マドレーヌが世話している状態だった。 そんな中、覆面を付けた侵入者が訪れる。母親に対し、お前の夫はどこだ、と問いただす。 その夫とは、国際テロ組織スペクターのメンバーであるミスター・ホワイトだった。 侵入者はリューツィファー・サフィンという男で、幼い頃ミスター・ホワイトに家族を殺害され、その復讐にやって来たのだった。 母親は、夫がどこにいるかなんて知らない、興味も無い、と正直に答える。 サフィンは、母親を殺害した後、マドレーヌを狙う。 マドレーヌは、子供ながらもサフィンを射殺。 マドレーヌは、サフィンの死体を氷の張った湖にまで引きずっていき、処分しようする。 その時、死んでいたと思っていたサフィンが息を吹き返す。 マドレーヌは氷の張った湖を渡って逃げようとするが、氷が割れ、湖に落ちてしまう。 サフィンは、どういう訳か、溺れそうになっていたマドレーヌを救った。 それから何年も経った後。 スペクターとの戦い後、現役を退いたボンド(ダニエル・クレイグ)と、マドレーヌ(レア・セドゥ)は、イタリアにて静かな生活を送っていた。 ボンドは、マドレーヌに促され、かつて愛したヴェスパー・リンドの墓を訪れる。そこで、スペクターの紋章が描かれた一枚の紙を見付ける。それを確認しようとした直後に墓が爆発し、謎の傭兵プリモに襲撃される。ボンドは何とかその場を逃れ、マドレーヌの下に戻る。プリモらは、尚ボンドを追い続けるが、どうにか相手を撒く。 ボンドがイタリアにいて、しかもヴェスパーの墓を訪れる事を知っていたのはマドレーヌしかいなかったので、ボンドはマドレーヌが裏切ったと信じ込み、彼女と決別する。 5年後。 ボンドはジャマイカで単身で穏やかな日々を過ごしていた。 そんなある日、旧友のCIA局員フィリックス・ライターがやって来て、誘拐されたロシアの細菌学者ヴァルド・オブルチェフを救い出してほしいと依頼する。 オブルチェフはイギリス諜報局MI6の管理下にある施設で働いていたが、そこが何者かに襲撃され、オブルチェフが細菌兵器と共に連れ去られたという。 MI6の管理下にあったのなら、MI6がオブルチェフ救出に動き出すべき、とボンドは言う。 ライターは、MI6も動いているが、現在CIAとMI6はあまり仲が良い訳ではなく、オブルチェフをMI6から引き離したい、と素直に認める。 既に引退して何年も経っているボンドからすれば、今更スパイ合戦に巻き込まれたくなかったので、協力を拒否する。 その直後に、黒人女性がボンドと接触。ボンドが引退した後に「007」の番号を引き継いだノーミ(ラシャーナ・リンチ)だった。ノーミは、オブルチェフはMI6が救出するから手を出すな、とボンドにくぎを刺す。 そもそもオブルチェフはMI6の為に何をやっていたんだ、とボンドが問いただすと、オブルチェフはプロジェクト・ヘラクレスの為に研究を進めていた、と認める。 ボンドは、プロジェクト・ヘラクレスが細菌兵器の研究である事を知っていた。当時の上司Mに対し、計画は中止すべきだと進言しており、Mもそれに賛同していた筈だった。 ノーミが去った後ボンドはライターに対し、協力する、と連絡を入れた。 ボンドは、オブルチェフがいるとされるキューバへ飛ぶ。そこでスペクターの会合が開かれ、オブルチェフも引き渡される、という情報を得ていたからだ。 ボンドは、CIAキューバ支局の新人女性工作員のパロマと共に、スペクターの会合が開かれるホテルに潜入する。 スペクターの指導者であるブロフェルドは、イギリスの監獄にいたが、通信機付きの義眼を経て会合に遠隔で参加していた。ボンドが潜入している事も承知しており、オブルチェフが開発した細菌兵器でボンドを殺そうとする。 が、細菌兵器はボンドではなく、会合に出席していたスペクターのメンバーらを狙い澄ましたかの様に殺した。 ホテルは大混乱に陥る。 ボンドは、自分が何故無傷なのか、誰がどういった理由でスペクターを全滅させたのか分からないまま、オブルチェフを探す。 そこにノーミが現れ、一旦はオブルチェフを捕らえるものの、ボンドとパロマが奪還。 ボンドは、パロマに見送られ、オブルチェフを連れてキューバの沖にある船に向かう。 船で、ライターと、同僚のアッシュが出迎える。 ボンドはオブルチェフをライターに引き渡す。が、同僚のアッシュは、サフィンの組織に通じていた。アッシュはライターに致命傷を与え、オブルチェフを連れ出して船から逃げる。ボンドは、ライターの死を見取り、命辛々船から脱出した。 ボンドはイギリスに戻り、元上司のMと対面し、状況の説明を要求する。 Mは、オブルチェフとプロジェクト・ヘラクレスについて話す。 プロジェクト・ヘラクレスは、特定の人物だけを殺す様にプログラムされた細菌兵器の開発プロジェクトだった。この細菌兵器を使えば、大勢いる中で散布して殺害したい人物だけを殺す事が可能になる。標的以外の者にとっては無害なので、標的と接触するであろう者を感染させ、後々接触した時点で標的を殺す事も可能になる。 イギリス政府からすれば、味方の犠牲を最小限に食い止めながら敵には大打撃を与えられる究極の兵器だった。 オブルチェフは、その研究開発の中心メンバーだった。 ボンドは、オブルチェフが裏切らないという保証は何も無い、と反論。仮に研究開発が上手く運んだとしても、そこから先の運用が上手くいく訳が無い、だからこそ計画を中止しろと進言したのだ、と。 Mは、元一諜報員に過ぎないボンドに説教される筋合いは無い、とにべもなく言う。 ボンドは、ブロフェルドなら何か知っている筈だと主張し、会わせろと要求。 Mは、その要求を受け入れるしかなかった。ただ、ブロフェルドと正式に会えるのはある一人の人物だけなので、そいつと同行しろ、という。 その人物とは、精神科医となっていたマドレーヌだった。 マドレーヌがブロフェルドと会う直前に、サフィンが彼女と接触。 サフィンは、割れた覆面を見せ、子供の頃、お前の命を救ったのは自分だ、だから自分の言う通りにしろ、と要求。 マドレーヌは、その要求に応えるしかなかった。 ボンドは、マドレーヌと久し振りに再会。 関係はとっくに終わっている、と互いに強がって見せるが、戸惑いは隠せなかった。 共に、ブロフェルドのいる施設へ向かう。 が、マドレーヌは、ブロフェルドが姿を現す直前になって、矢張り面会出来ない、と退室。 ボンドは、ブロフェルドと一対一で対面する。 ボンドは、キューバでの出来事について問う。 ブロフェルドは、あそこでボンドを殺す予定だったが予想外の事が起きた、と認める。そして、5年前の事についても語る。 ヴェスパーの墓を爆破してボンドを殺そうとしたのは事実だが、その後の出来事には関与していない、と言う。また、マドレーヌは裏切っておらず、ただ純粋にお前にヴェスパーの墓を訪れて過去を洗い去ってほしかっただけだった、とも言う。マドレーヌがお前を裏切った様に見えて、その結果関係が破綻したのは自分にとって幸いだった、と。 ボンドは冷静さを失い、ブロフェルドの首を締め上げる。 その時点で、ブロフェルドはキューバのスペクターのメンバーらと同様、細菌兵器により死ぬ。 サフィンは、事前にマドレーヌを細菌兵器に感染させた。マドレーヌがボンドに触れた時点で、ボンドが感染。ボンドがブロフェルドを締め上げる為触れた結果、ブロフェルドを殺す様プログラミングされた細菌兵器が効力を発揮したのだった。 Mは、ノーミに裏切り者のアッシュを追跡しろと命じ、ボンドにはマドレーヌを探せと命じた。 ボンドは、マドレーヌがいるノルウェーの家に向かう。 そこで、マドレーヌが出迎える。 ボンドは、自分を裏切ったと勘違いしてしまった事を謝罪し、以前の関係に戻れないかと提案するが、そこに幼い少女が現れる。5歳になるマドレーヌの娘マチルドだった。 マドレーヌは、マチルドはあなたの子供ではない、という。 ボンドは、失った5年間の大きさを今更思い知る。 それでも、ボンドとマドレーヌは和解する。 翌日、ボンドはMI6に連絡を入れる。すると、ノーミがノルウェーに入国したと知らされる。アッシュを追っている筈のノーミが何故ノルウェーに、と疑問に思ったが、その意味に気付いて愕然とする。アッシュが自分らに迫ってきている、と。 ボンドは、マドレーヌとマチルドを連れて逃げようとするが、アッシュが傭兵らと共に迫ってきた。 アッシュらを森林に誘い込んだボンドは、アッシュらを始末する事に成功するが、その隙にマドレーヌとマチルドがサフィンに攫われてしまった。 その時点で、アッシュを追っていたノーミが合流。 ボンドとノーミは、サフィンが向かったある島へと向かう。 その島は、日本とロシアが領土権を主張する島だった。サフィンは、そこで生まれ育ったのだった。オブルチェフもここにいる事が判明する。 ボンドとノーミは、島に潜入。 島はまるごと細菌兵器の工場となっていた。 ボンドはノーミにオブルチェフを探させ、自身はマドレーヌとマチルドを探す。 待ち構えていたサフィンは、自身の野望について語る。ここで製造した細菌兵器を使って人類の大半を殺戮する、と。 ボンドは隙を狙って、マドレーヌとマチルドを救出。二人をノーミに預け、島から先に脱出するよう、命じる。自分は工場を破壊して、細菌兵器を始末する手続きを取る、と。 近海に、英国海軍軍艦が接近していた。それに巡航ミサイルを発射させ、工場を爆破させる、という計画を立てる。しかし、工場は地下深くにあるので、外へ通じる扉を開いておく必要があった。 ボンドは、扉を開閉する制御室へ向かい、扉を開く事に成功。あとは巡航ミサイルに任せるだけとなった。ボンドはMに連絡し、巡航ミサイルを発射させる。 ボンドは島から脱出しようとするが、扉が遠隔操作で閉じてしまう。 ボンドは制御室に戻ろうとするが、サフィンが立ち塞がった。 ボンドは格闘の末サフィンを倒す。が、その前にサフィンはボンドを細菌兵器に感染させてしまう。これにより、ボンドは自身と血の繋がりのある者と接触すると、その者を死なせてしまう体質になってしまった。 制御室に戻り、扉を再び開く事に成功。 ボンドは、島から脱出していたノーミとマドレーヌに連絡を入れる。自分が島から脱出するのはもう無理だ、と告げる。 マドレーヌは、マチルドがボンドの子である事を伝える。 仮に無事脱出出来、マドレーヌらと再会出来たとしても、マチルドと接触したら死なせてしまう。 自分は結局普通の幸せな家庭を築く運命ではないと悟ったボンドは、マチルドに別れを告げる。 その直後、巡航ミサイルが爆発し、島全体を飲み込んだ。 数日後、MI6でM、Q、マネーペニー、そしてノーミは、死んだボンドを悼む。 マドレーヌは、車中で、マチルドに対し、父親であるボンドについて語り始めた。感想 15年間という、歴代の中で最も長い間ボンド役を務めたダニエル・クレイグの007の最終作(15年間にもなってしまったのは、作品の公開の間隔が開いてしまったり、本作の様に作品自体は完成したもののコロナウィルスにより公開が延期され続けた、という事情もあるが)。 クレイグ出演の007シリーズ作は、ボンドが007に成り立ての頃から最期までを描くという、これまでに無い試みとなった。 ただ、本作を機にクレイグが降板するだけにも拘わらず、007シリーズそのものの最終作の様になってしまっているのはどうかね、と思わないでもない。 クレジット後のメッセージ「JAMES BOND WILL RETURN」を観て、どう思えばいいのか分からなくなってしまった。 制作側の事情も複雑。 ダニエル・クレイグの007が制作される直前に007シリーズを長年手掛けてきたMGMがソニーに買収され、クレイグの007シリーズ作はソニーの映画として制作されてきた。 が、ソニーがMGMをユニバーサルに売却し、暫く続いていたライセンス契約も切れてしまった為、本作は完全にユニバーサルの映画として制作されている。 何故ソニーがMGMを手放したのか、よく分からないし、冒頭でMGMの他にユニバーサルのロゴが現れたので、訳が分からなかった。 ユニバーサル傘下となった007シリーズが、今後どう展開するのかも心配である。オープニングシークエンスが、ここ数作は無かったガンバレルのものだったので(クレイグ007シリーズでは初だと思う)、原点回帰も期待させるが。 本作は、ボンドがMI6を引退した後の出来事が得られている。 MI6もボンドという一諜報員に関わっている訳にもいかないので、別の人物(黒人女性)に「007」のコードナンバーを与えてしまっている。 そんな訳で、本作のボンドは、正式には「007」ではない事になっている。 前作のSPECTREで事実上終わったダニエル・クレイグの007シリーズを、無理矢理続行させたのが本作。 したがって、倒した筈のテロ組織SPECTREは健在で、主導者のブロフェルドも再登場。 といっても、ボンドが再びSPECTREと戦わせるのはおかしいと判断されたからか、SPECTREを壊滅に追い込む別のテロ組織を登場させている。 本作の最大の問題がここ。 SPECTREを上回る極悪テロ組織の筈なのに、存在感がまるで無い。 ボンドを苦しめるのは確かだが、薄っぺらく見えてしまう。 主導者のサフィンも、ストーリーの流れからするとブロフェルドをも上回るヴィランの筈なのに、その凄さが伝わってこない。 細菌兵器をバラまいて人類を滅亡させると豪語するが、その動機も特に説明されず、「出来そうだからやってみた」という程度になってしまっている。 サフィンを演じたラミ・マレックは、ボヘミアンラプソディーで主人公のフレディ・マーキュリーを演じ、アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しているから、007シリーズのヴィランにするには勿体無いくらいの輝かしい経歴を持つ俳優。しかし、本作ではその演技力が活かされた感じがしなく、残念。 折角ブロフェルドを再登場させているのだから(すなわち演じる俳優のスケジュールを押さえる事が出来た)、全く新しい敵役や組織を登場させるのではなく、ブロフェルドが脱獄してSPECTREに復帰し、ボンドに襲い掛かる、という展開にした方が良かった様に思えるが(襲い掛かる実行部隊のリーダーとしてラミ・マレックを起用するとか)。 本作では、ボンドウーマンともいえる女性が3人登場(「ボンドガール」は、政治的に正しくない事になっている)。 メインが、前作にも登場したマドレーヌ。 2作続けて登場し、重大な役割を果たすのは、50年間にも及ぶシリーズの中で、初かも。 ただ、引退したボンドが結婚を真剣に考えるくらい魅力的な女性という設定の割には、観ている方からするとそこまで惚れ込むかね、というレベル。 冒頭で、ボンドは自分を裏切ったと勝手に信じ込み、彼女をあっさり捨てている。が、見方によっては、そもそも飽きていて別れようかどうか迷っていた所、事件が発生したので、それを口実に別れた、という風にも映る。 その次に登場するボンドウーマンが、CIAのキューバ支局の工作員パロマ。 クレイグ007シリーズにしては場違いに感じる程能天気なキャラ。ブロスナン007シリーズや、その前の前のムーア007シリーズに登場していても不思議ではない。何故シリアス一辺倒のクレイグ007シリーズで、こんなキャラが登場する事になったのか、不思議に思う(これも、配給会社がソニーからユニバーサルに移った影響か)。 しかも、ボンドの足手纏いになるのではと思いきや、戦闘力があり、機転も効く、非常に優秀な工作員である事を示す。 新007のノーミを出し抜き、オブルチェフとボンドをキューバから脱出させる、というミッションを見事に完遂。 もしかしたら007シリーズでは当たり前になっている「犠牲者の女性」になってしまうのではと恐れていたが、そんな事は無く、「私の役目はここまで。じゃ、さようなら」とボンドを送り出して元気に退場。以後、再登場しない(映画ポスターではかなりしっかりと描かれているので、前半でしか登場しないキャラだと思っていなかった)。 ストーリー的には「犠牲の女性」にならなかったが、「再登場してもらいたいのに結局再登場しない」という、製作上の「犠牲の女性」になってしまった。 3人目のボンドウーマンが、MI6で「007」のコードナンバーを引き継いだノーミ。「00」局員だから、ボンド程でないにせよ優秀な工作員なんだろうなと期待させるが、その優秀さが全く見られない。 パロマが痒い所に手が届く面白いキャラだとすると、ノーミはひたすら痒い所に手が届かない残念なキャラ。「00」局員になったばかりで、まだ不慣れな部分があり、それを自分も認めている、というキャラ設定にしていれば、まだ同情出来たのに、何故か「自分はボンド同様に優秀」という自意識過剰さが目立ってしまい、鼻につく。「何故この程度の工作員が『007』を引き継げたんだろう」と疑問に思ってしまった。 彼女こそ「犠牲の女性」になってくれればスッキリするのに、と思ったが、それも叶わず、最後まで生き延びる。 仮に本作でスピンオフの制作が決まり、パロマかノーミのどちらかを主人公とするとなったら、自分は迷わずパロマを主人公にしたものが観たい、と思うだろう。 スピンオフの可能性は無いだろうけど(過去にも何度か可能性が探られた様だが、結局制作には至っていない)。 本作では、「犠牲」になるのは女性ではなく、セミレギュラーキャラのフェリックスだった。 クレイグ007シリーズで、ボンドは「身近な女性を守り切れない」と敵に揶揄されてきたが、本作では登場するボンドウーマン全てが最後まで生き残る。 本作でボンド本人が命を落とすのは、皮肉と言える。 ヴィランはサフィン、という事になっていて、ボンドも彼を阻止する為に行動するが、一番のヴィランはMだった様な。 Mがボンドの進言通り細菌兵器開発を止めていれば、今回の出来事は無かったと思われ、人類が存亡の危機に瀕する事も無かった。 少なくとも、ボンドが引退生活から借り出されて命を落とす事は無かっただろう。 にも拘らず、責任を取って辞任等するのかと思いきや、ラストでボンドを悼んだ後、「さ、次の仕事だ」と何事も無かったかの様にMI6長官の座に居座るのは、納得がいかない。 自分の失態をボンドに尻拭いさせ、ボンドを見殺しにして全てを隠滅する様、手続したとしか映らない。 最近の映画の傾向は「世界征服を企む極悪組織より、世界の秩序を守るという名目で暴走してしまう政府組織が人類にとって最大の敵」となっていて、本作も例外ではない。 007シリーズはブロスナンの頃からプロダクトプレイスメントが顕著だったが、本作はアストンマーチンの広告か、と思ってしまう程アストンマーチンがこれでもか、と登場する。 冒頭では兵器満載のDB5が登場。 走行する場面は無いが、ヴァルハラがMI6の装備として登場する。 また、作中中頃で、ボンドは旧型のV8ヴァンテージを乗り回している。 ノーミは、DBSスーパーレッジェーラを乗り回していた。 アストンマーチンがここまで登場させるのにどれだけの制作費を負担したのかね、と思ってしまう。 MI6を引退した筈のボンドが、兵器満載のDB5を乗り回し、搭載されたマシンガンでバンバン敵を倒して大丈夫なのかね、と後々考えて思った。 DB5やDBSスーパーレッジェーラも悪くないが、何だかんだでV8ヴァンテージが一番格好良く映った。 本作の監督を務めたのはキャリー・ジョージ・フクナガ。 日本では、「初の日系人007監督!」として話題に。 ただ、フクナガ氏は日系4世。イギリス人、ドイツ人、スウェーデン人の血も受け継いでいるとの事なので、家系的に偶々日本人の名字になった、というだけであって、「自分は日系人」の意識は薄いと思われる。 ……と、言いたくなるが、本作は最後の舞台が日本とロシアが領有権を主張している島となっている。日本人キャラこそ登場しないが、日本的な要素がここぞと盛り込まれている。 サフィンとボンドが対面する部屋には、何故か畳が敷かれていたし。 監督の意向というより、これまでの007の集大成として歴代のシリーズ作を連想させる要素が随所に盛り込まれる事になった結果、敵役の基地が「007は二度死ぬ」のオマージュになった可能性が高いが。 過去作品のオマージュを盛り込んだせいか、上映時間は2時間43分と、シリーズ最長になってしまっている。 当然ながら中だるみする場面も。 もう少し短く出来なかったのかね、と思った。 007シリーズは50年間にも亘って制作されているので、その時代や流行を反映させる事で生き延びてきた。 クレイグ007シリーズでは、Qが同性愛者という設定になったり、CIA局員のフェリックス・ライターが黒人になったり、ボンドの後を引き継いだ007が黒人でしかも女性になったりしているが、それらも時代を反映した為。 シリアス路線一辺倒なのも、それ以外が求められていない時代になってしまったからといえる。 時代に沿うのは仕方ないかも知れないが、クレイグ007シリーズの様に、過去のシリーズ作を完全否定してまで時代に寄り添うようになると、それはどうかね、と思ってしまう。 クレイグ007シリーズ作は、世間的には評価が高かった様だが、個人的にはひたすらイマイチだった。 やっと終わってくれた、とホッとするのと同時に、今後はどうなるんだろうと心配してしまう。 原点回帰を期待させる部分も観られるが、世間がそれを許すかも不明だし。 次の作品によっては、「ダニエル・クレイグも何だかんだで悪くはなかった」と思う様になるかも。007/ノー・タイム・トゥ・ダイ オリジナル・サウンドトラック [ ハンス・ジマー ]価格:2750円(税込、送料無料) (2021/10/21時点)楽天で購入
2021.10.24
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1984年に公開されたSFアクション映画『ターミネーター』の続編で、「ターミネーター」シリーズの第2作目。 第1作と同じくジェームズ・キャメロンが監督を務めた。 出演は、アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、ロバート・パトリック、エドワード・ファーロング。 原題は「Terminator 2: Judgment Day」。粗筋 1990年代中頃のロサンゼルス。 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)は、1997年に人工知能スカイネットと人類間の核戦争「審判の日」を阻止する為と称して、後にスカイネットを開発する事になるサイバーダイン社への爆破未遂事件を起こした罪で、精神病患者として警察病院へ収監されていた。 サラとカイル・リースとの間に生まれた息子のジョン(エドワード・ファーロング)は、養父母に引き取られていた。 ある日、2体のターミネーターが未来から送り込まれる。 1体はT-800モデル101型(アーノルド・シュワルツェネッガー)、もう1体は変形自在の液体金属で構成されたT-1000型(ロバート・パトリック)だった。 2体はそれぞれ共通の目標であるジョンを捜索し、ショッピングモールにいた彼を同時に発見する。T-1000の襲撃からジョンを救ったのは、かつてサラを襲ったT-800だった。T-1000の追撃を振り切った後、T-800は未来のジョンが過去の自分を守る為、鹵獲したT-800を再プログラムしてこの時代へ送り込んだ、と告げる。 T-800やT-1000の出現により、与太話だと思っていた母親の話が全て真実だったと知ったジョンは、母親の下へ向かおうとするが、T-800は反対する。T-1000はその行動を当て込んでサラの下へ向かっているだろう、と。T-800は、このまま逃走するよう、進言する。ジョンは、T-800が自分の命令を聞くよう、再プログラミングされていると知り、T-800に対し、母親の下へ向かうよう、命じた。T-800はその命令に応じるしかなかった。 その頃、警察病院では刑事がやって来て、サラにショッピングモールで撮影されたT-800の写真を見せた。こいつは1984年に警察署で十数人の警察官を殺戮した奴とそっくりだ、何か知っているだろう、と。サラは、息子と自分に危機が迫っていると悟りながらも、白を切る。彼女が病室を抜け出して脱走を図っていたところで、ジョンとT-800、そしてT-1000が現れる。 サラを保護してT-1000から逃れたジョン一行は、メキシコへの逃亡を図る。 かつて自身を襲ったターミネーターと同型であるT-800を信用出来ないサラだったが、ジョンがT-800と交流する様子を眺めている内に、このT-800こそジョンの保護者として相応しい、と考えを改める。 T-800から、サラは、後のスカイネットとなるシステムを開発するサイバーダイン社の技術者マイルズ・ダイソンの存在を知らされる。 ダイソンさえ殺害すれば、「審判の日」は起こらなくなると思い込んだサラは、単身でダイソン宅に侵入し、彼の殺害を試みる。 しかしダイソンは、未来の事は何も知らずに家族と平和に暮らす一技術者に過ぎず、サラは殺害を躊躇する。 母を追って来たジョンは、サラに殺害を断念させると、ダイソンに対しこれまでの経緯を説明する。 ダイソンは、ジョン一行の話を信じられなかったが、目の前のT-800が、勤務先の研究所で残骸として保管されているターミネータと同じである事を見せ付けられ、信じざるを得なくなった。 その時点で、ジョン一行は、ダイソンの研究がかつてサラの命を狙いながらも破壊された最初のターミネーターの残骸に基づいている事を知る。 ジョン一行は、ダイソンに研究を放棄するよう、説得した。 ダイソンは、自分の研究が全人類に悲劇をもたらすくらいなら放棄するのは構わない、とあっさりと同意する。 あとは、最初のターミネータの残骸を処分すれば「審判の日」は確実にやって来ない、と考えたジョン一行は、ダイソンを伴ってサイバーダイン社へ侵入。警官隊に包囲される中、一行は研究の全てを破壊し、保管されていた最初のターミネーターの部品を持ち出す事に成功。しかし、ダイソンは命を落としてしまった。 サイバーダイン社から逃走するジョン一行に、T-1000が迫っていた。カーチェイスの末、一行は製鉄所へ逃げ込む。 T-1000は、ジョン一行を追い詰めるものの、最後の力を振り絞ったT-800により溶鉱炉へ突き落とされる。T-1000は溶解し最期を迎えた。 ジョンは、サイバーダイン社で奪った最初のターミネータの右腕とマイクロチップを溶鉱炉に放り込んで始末する。これで全て終わった、「審判の日」はやって来ない、と。 が、T-800は言う。それだけでは終わりにはならない、なぜなら自分にも同じマイクロチップが内蔵されている、それも始末しなければならない、と。 それは、ジョンとT-800の別れを意味した。 ジョンは拒むが、やるべき事はやらなければならない、とT-800は彼を説得。 ジョンとサラは、T-800を溶鉱炉に下ろしていく。 T-800は、ジョンに対し最後の挨拶をした後、溶鉱炉の中に消えた。「審判の日」を回避出来たサラは、将来は一切不明になったものの、希望の光を見出す。感想 本来は第1作で完結していたターミネーターだったが、出演していたアーノルド・シュワルツェネッガーの人気上昇に伴い、続編が制作され、いつしかシリーズ化。 未来から殺人ロボットを当たり前の様に過去にガンガン送り込める様になってしまい、第1作の有難味が薄れてしまった。 無敵の殺人ロボットを演じていたシュワルツェネッガーは人気俳優になり、善の役を演じる事が多くなってしまった為か、「今更悪役はやりたくない」と言い出したらしい。本作では同型のロボットを味方が再プログラミングして過去に送り込んだ、という捻り技を講じる事を強いられている。 続編にも拘わらず役柄が逆転。 シュワルツェネッガー演じるアクションが観られるなら、第1作の設定なんてどうでもいい、という事かも知れないが、通してみると違和感を抱かずにはいられない。 ただ、感情の無いロボット、という役柄なので、シュワルツェネッガーの演技は自然に映る。 第1作では悪役を演じていた俳優が善の役に回ってしまった為、悪役をどうするかとして捻り出したのが、前作の殺人ロボットの進化版。 演じるのはロバート・パトリック。 ボディビルダーだったシュワルツェネッガーと同じ様な体格の俳優を確保するのが困難だった為か、あえて痩躯の俳優を起用。 体格に劣る分、シュワルツェネッガー演じるロボット以上に危険な存在、という事に説得力を持たせる為、ロバート・パトリックはひたすら目線だけで演技。この演技がはまり役になってしまい、以後似た様な役柄を演じる羽目になってしまった。 ロバート・パトリックにとって、本作に出演した事が良かったのか、悪かったのか、分からない。 リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーは、第1作ではこれといった才能の無い芋娘だったが、本作では暴力的な「戦う女」に。 第1作で死闘を繰り広げたのは事実だが、ここまで変わるか、という変貌振り。 個人的には、サラが相も変わらず無力な芋娘だった、となっていた方が良かった気がする。 サラ・コナーの息子で、将来スカイネットと対抗する人類を率いるジョン・コナーを演じるのは、エドワード・ファーロング。 将来人類を率いるとされる人物も、この時点ではただの不良少年。 悪ぶっているものの、所詮子供なので、言動が幼稚。 本当に人類を救うリーダーになるのか、と思ってしまう。 演じたエドワード・ファーロングは、他の数多くの子役と同様、成人してからは廃人同然になってしまう。 キャメロンが自ら築いたシリーズをリセットする目的で2019年に公開した「ターミネーター:ニュー・フェイト」では、ファーロングの若い頃の顔をCGで別の俳優に張り付けて、ほんの数カット登場するだけに留まる。ニュー・フェイトではジョン・コナーはあっさりと殺され、「将来人類を率いるリーダー」という展開も無かった事になってしまう。 第1作が完全に否定された事になる。 ファーロングが漸く大人になって、「将来人類を率いるリーダー」を説得力ある形で演じられる状況が整っていたというのに、残念。 スカイネットを開発する事になるマイルズ・ダイソンは、ジョン一行に説得され、研究を放棄する。 研究を全て始末して、「審判の日」の阻止に貢献するが、爆死する。 家族を残して。 ダイソン一家からすれば、ジョン一行はひたすら迷惑な存在だった。 ジョン一行に協力する事を拒否していれば、もう少し幸福な暮らしが出来ていたかも知れない、と思ってしまう。 観た後、改めて振り返ると、ストーリー上に問題点が。 一番目立つ問題点が、折角最初のターミネーターの残骸を処分したのに、今回のT-800を完全に処分していない事。 T-800とT-1000は製鉄所で最後の戦いを繰り広げるが、その際、T-800は腕を機械に挟まれ、動けなくなってしまう。そこで、T-800は機械に挟まれた腕を残して戦いを続ける。残された腕は、結局処分されていない。 サイバーダインは、最初のターミネーターの腕は失ってしまうが、またまた新たな腕を得た事になる。 腕だけでどこまで技術を抽出出来るかは不明だが、全く手立てが無い、という訳でもない事になってしまった。 当時のCG技術では最先端だった液体金属のロボットを誕生させる等、最新技術を惜しげも無く投入して撮影された映画らしいが、一方でアナログな撮影技法も多かったらしい。 ラストで、サラと、サラに変形したT-1000が1カットで同時に現れる、というシーンがあったが、合成でサラを二人登場させたのではなく、リンダ・ハミルトンの双子の姉を起用して演じさせている。 また、別のシーンで精神病院の警備員が、自分とそっくりの姿になったT-1000を見て驚く、というのがあったが、ここでも合成ではなく、双子に演じさせたという。 SFXとアナログを上手く組み合わせた、古き良き時代の映画、と言えなくもない。 第1作が制作された1984年の時点では、審判の日が起こるとされた1997年はまだまだ先の話だったが、今となってはとうの昔の日付になってしまっている。 現実の「未来」の世界が、映画通りにならなかったのは幸いだが、一気に時代を感じさせる要因になっている。 そもそも、コンピュータが人型ロボットを生産させて人類を壊滅に持ち込む、というのも「未来」ぽさを感じさせない。 何もかもオンラインで済ませるのが当たり前の現在では、機械は最早アナログの象徴。 人類がコンピュータ制御された機械と戦い合うという発想が古くなる、なんて1984年の時点では想像も出来なかったと思われる。「ターミネーター:ニュー・フェイト」により、第1作の制作者であるキャメロンがシリーズをリブートというか、リセットしてしまっているので、本作で繰り広げられた死闘は意味の無いものになってしまっているのが、最大の不満。 元のクリエイターがシリーズを必ずしも良い方向に持って行ってくれる訳ではないという、数ある例の一つになってしまった。 リンダ・ハミルトンもシュワルツェネッガーも結構歳がいっているので、シリーズは打ち止めでいいと思う。
2021.10.23
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1980年に公開されたホラー映画。 スティーブン・キング原作の同名小説をスタンリー・キューブリックが映画化。 ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイドが出演する。 原作者からは酷評されてしまい、公開時は必ずしも高い評価を得てはいなかったが、徐々に世間での評価は高まり、現在ではホラー映画の傑作と見なされている。 ただ、原作者の評価は相変わらず低い。 原題は「The Shining」。粗筋 コロラド州のロッキー山上にあるリゾートホテルのオーバールック・ホテル。 営業は春から秋までで、冬季は閉鎖される。最寄りの都市まで道が1本しかなく、40キロにも及ぶその道を冬季も通行可能な様、定期的に除雪するとなると採算が取れなくなってしまうからだ。 完全に無人にする訳にはいかなかったので、管理人を雇い、住まわせていた。豪雪で一本道が通行不能になる為、管理人は場合によっては数カ月間孤立状態での生活を強いられる事となる。 元教師のジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、管理人の仕事の面接を受ける。 ホテル支配人は、「管理人の仕事は難しいものではないが、人によっては孤立状態が精神的苦痛になる事もあるので、大丈夫か」と問いただす。過去に、管理人として採用したグレイディという男が、孤独により精神に異常をきたし、家族を斧で惨殺し、自殺する、といういわく付きの物件でもあったからだ。 が、ジャックは自分は小説家志望であり、執筆には寧ろ孤立状態が望ましいので、ぜひとも採用してほしい、と告げる。 よって、ジャックは管理人として採用された。 ホテル閉鎖の日、ジャックは妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)、一人息子のダニー(ダニー・ロイド)を引き連れてオーバールック・ホテルを訪れる。 ダニーは、特殊能力「シャイニング」の持ち主で、ホテルの異様な雰囲気を察した。 ホテルの料理長ハロランはダニーとウェンディを伴って、ホテルの中を案内する。ダニーと同じく「シャイニング」の能力を持つハロランは、ダニーに対し、「このホテルには何かが存在するから気を付けろ」と警告する。 そして、オーバールック・ホテルで、3人だけの生活が始まる。 閉鎖されたホテルなら、誰にも邪魔される事無く執筆に注力出来ると意気込んでいたジャックだが、いざその生活が始まると早くもスランプに陥り、作業は一向に進まない。 暇を持て余したウェンディは、夫の機嫌を頻繁に窺う。 そんな妻を、ジャックは疎ましく感じる様になった。 閉鎖から間も無く、一帯は近年稀に見る猛吹雪となり、3人は孤立状態になった。 電話も通じなくなり、外部との接触は無線のみとなった。 元々アルコール依存症だったジャックは、酒の無い生活は苦痛だった。執筆も思うようにいかず、妻や息子も疎ましく感じ、酒が欲しくなった。ホテルのバンケットホールに足を踏み入れると、無人の筈のバーカウンターに、当たり前の様にバーテンダーがいた。ジャックは、そのバーテンダーと旧知の間柄の如く会話すると、勧められるまま酒を飲む。 別の日にジャックがバンケットホールを訪れると、舞踏会が開かれていた。ジャックは、そこの給仕と会話する。 給仕はグレイディという名前の男だった。 ジャックは、グレイディに対し言う。お前はここの管理人を務めていて、家族を殺した後に自殺しただろう、と。 グレイディは、記憶に無い、とはぐらかす一方で、ジャックに言う。お前の息子はシャイニングという特殊能力で料理長を無断でこちらに呼び寄せようとしているから、躾が必要だ、と。ジャックは、今の生活を脅かされる真似はさせない、とダニーを躾ける事を約束する。 ウェンディは、夫の様子がおかしいと感じ始めていた。そんな彼女は、ジャックが数週間タイプライターで打っていた原稿を手に取る。同じ文言が繰り返し、数十枚にも亘って打たれているだけだった。 夫の精神異常を確信したウェンディは、ジャックを食料倉庫に閉じ込め、息子を連れてホテルから脱出しようとする。ホテルには緊急用に雪上車が用意され、それを使えば町まで出られる、と考えたのだ。 が、ジャックは事前に雪上車や無線機を破壊していた。 脱出も、救助を求めるのも不可。 ウェンディは、夫を倉庫に閉じ込めた状態で、吹雪が過ぎ去るのを待つしかなかった。 倉庫に閉じ込められたジャックの元に、グレイディが訪れる。躾に失敗したな、駄目な奴だ、とグレイディは蔑む。ジャックは、もう一度機会をくれたら、きちんと躾ける、と約束する。グレイディは、倉庫の扉を開けた。 ウェンディとダニーがいる寝室に、ジャックがやって来る。 ドアには鍵が掛かっていたが、ジャックは斧でドアを破壊し始めた。 夫がどうやって倉庫から出たのか見当も付かないウェンディは、パニックに陥りながらも、息子を窓から逃す。 ダニーは外に出ると、ホテルの庭にある巨大迷路に身を隠した。 ジャックがドアを開ける寸前に、外から自動車のエンジン音が響いた。「シャイニング」により助けを求めるダニーの声を聞いたハロランが、雪上車で駆け付けて来たのだった。 ジャックはホテルのロビーに向かい、斧でハロランを惨殺する。 その間に、ウェンディは寝室から逃れ、ダニーを探し回る。ホテルの至る箇所で、過去の亡霊を目の当たりにし、ホテル自体が異常である事を思い知った。 ダニーが迷路に逃げ込んだと知ったジャックは、迷路へ向かい、雪に残ったダニーの足跡を頼りに追う。 ダニーは、足跡を偽装すると、迷路から脱出する。 その時点で、ウェンディとダニーは再会する。二人は、ハロランが乗って来た雪上車で、ホテルから逃れる。 迷路から出られなくなったジャックは、彷徨い続けた結果、凍死する。 生きている者がいなくなった筈のホテルのバンケットホールから、音楽が鳴り響く。 壁に飾れた五十年前の舞踏会の様子を写す写真に、ジャックと瓜二つの男が中央で笑顔を見せていた。感想 アメリカのモダンホラー作家スティーブン・キングの初期の作品を下敷きにしている。 原作では、ダニーやハロランの持つ特殊能力「シャイニング」が重大な役割を果たし(だからこそタイトルになっている)、「敵」は邪悪な意思を持ったホテル、という、アメリカ人好みの設定になっている。 が、アメリカ出身ながらも人生の大半をイギリスで過ごしていたキューブリックにとっては、そうした要素を取り入れて実写化すると「お子様向けホラー」になってしまうと理解していたらしい。「孤立状態のホテルで、男が精神に異常をきたして家族を殺そうとする」という設定だけ取り入れ、超能力の部分は軽く触れる程度に留められ、タイトルの意味を無視した、完全オリジナルの作品に仕上げている。 ホラー映画を制作してみないかと持ち掛けられたキューブリックは、ホラー小説を何冊か手渡された。殆どはほんの数ページ読み進んだだけで壁に叩き付けていたが、「シャイニング」だけは異様に興味を持ち、最後まで読み、映画化を決めたという。そこまで興味を持ったのなら、原作に忠実なものにすると思いきや、殆どの要素を切り捨てているので、結局原作のどの部分に興味を持って映画化する事にしたんだろう、と疑ってしまう。 原作では、ホテルこそが「悪」で、ジャックもその被害者、という風に描かれているが、本作ではジャックこそが「悪」で、彼が目にしたと思われる数々の出来事が幻想なのか、怪奇現象なのかは明確にされていない。 観方によっては、ホラーというより、サイコスリラーに属する作品になっている。 ラスト辺りで、ウェンディも亡霊を目の当たりにしているので、怪奇現象っぽくもあるが、彼女も精神が不安定な状態に追い詰められているので、幻想とも受け取れるようになっている。 ジャックは、原作では至って普通の男性で、ホテルの「邪悪な意思」によって徐々に精神に異常をきたす、となっている。 本作では、ジャックは元々アルコール依存症があり、妻や子供に暴力を振るった過去も明らかにされる。元々精神が不安定で、ホテルでの孤立状態が始まってから早々と異常をきたしている。孤立状態に置かれたのが事の発端で、ホテルそのものが「邪悪な意思」を持っている様には描かれていない(原作者が映画に不満に持った理由の一つ)。 原作に忠実なキャラにした場合、妻や子供を殺そうとするまでの豹変が説明し難くなるので、設定変更は止むを得なかったし、映画単体で観ると無理が無い。 ジャックの妻ウェンディも、原作とは異なる人物設定になっている。 原作では、アメリカ人らしく、独り立ちした女性で、夫との立場も対等と描かれている。 一方、本作では夫に頼り切りで、その為夫の暴力やアルコール依存症にも意見出来ず、弱い女性として描かれている。 原作は、原作者自身の家族を下敷きにしていた事もあり、「自分が描いたウェンディはあんなひ弱で自己意思が無く、ヒステリックな女じゃない」と最大の不満を述べている。 ただ、原作通り毅然とした態度の女性だったら、ジャックの凶行も早々と食い止められてしまい、話にならなかっただろう(それ以前に、とっと息子を連れて家を出ていただろう)。 シェリー・デュヴァルによるヒステリックな演技は、ジャック・ニコルソンの狂気の演技より怖い、と揶揄されたが、ストーリーの流れからすると寧ろ自然というか、違和感が無い。 ウェンディがジャックをバットで殴って気絶させるまでのシーンは、キューブリックが100回以上撮り直ししたという。シェリー・デュヴァルを実際に精神的に追い込み、ヒステリックな演技にリアリティを持たせる為だったという。となると、ヒステリックな演技は最早演技でなく、本当にヒステリックになっていた状況を撮影していた事になる。現在では有り得ない撮影手法。無論、時間も予算も掛かる(期限も予算もきっちりと守って映画作りする事を理想とするクリント・イーストウッドはこうした「演出」には批判的で、だからこそ自分で映画を制作するようになったという)。 シェリー・デュヴァルは撮影のストレスで髪が抜けていき、それを集めて嫌味としてキューブリックにプレゼントしたという(怪演が売りのジャック・ニコルソンも、後にキューブリックについて「変わった男だった」と回想しているくらいだから、キューブリックは相当異常性を持った映画監督だったといえる)。 本作の撮影中に、シェリー・デュヴァルはポパイの実写版で主人公の恋人オリーブ・オイルの役をオファーされ、撮影に参加。公開は、シャイニングと同じく1980年だった為、ホラー映画でヒステリックな演技をしていた女優を、すぐさまコミック実写版でコミカルな演技を披露するのを観れるという、奇妙な現象に。本作での演技がオーバーで漫画っぽい、と酷評されたのも、これが起因している。 原作者は、本作のウェンディを「ひ弱で、自己意思が無く、ヒステリックに泣き叫んでいるだけの女」と酷評したが、本作の設定からするとヒステリックになるのは止むを得なかったとして、酷評に値する程「自己意思が無くてひ弱」とも思えない。 本作で、ウェンディはジャックをバットで殴って気絶させ、倉庫に閉じ込める部分は結構行動的に映るし、最終的にジャックを置いてきぼりにして息子と共にホテルからさっさと脱出するので、自己意思が無い訳でもない。 現在の基準では行動的でないと映ってしまうのかも知れないが、当時としてはそれなりに行動的だった様に映る。 キューブリックは俳優を精神的に追い詰めて、極限状態の演技を引き出すというか、極限状態になった俳優の姿を撮影して作品作りに活かす、という乱暴な手法を取る事が多い(この後制作したベトナム戦争映画の「フルメタルジャケット」でも、元海兵隊教練官を起用し、実際の海兵隊訓練と同様に俳優らに罵声を浴びせるよう仕向け、俳優らを精神的に追い詰めていったという)。 その一方で、本作で主人公の息子を演じた子役のダニー・ロイドは、ホラー映画ではなく、ファミリー映画の撮影だと終始思っていたという。 子をホラー映画の撮影なんかに参加させたら精神的苦痛を受けてしまう、と否定的に捉える親が多かった為、子役が決まらず、キューブリックがホラー映画である事を子役には気付かれぬよう撮影する、と約束して漸くダニー・ロイドの起用にこぎ着けたからだとか。 ジャック・ニコルソンに「変わった男」と言わしめ、シェリー・デュヴァルを脱毛させる程追い込む一方で、子役には徹底的に配慮していたところを見ると、キューブリックは硬軟の付け方が極端だったと思われる。 よくよく観返してみると一家が同時に登場しているシーンが少ないのも、撮影現場に子役がいないで済む様にしたかったからか。 ダニー・ロイドも、他の多くの子役と同様、成長するにつれ映画界は自分には合わないと実感し、早々と引退。芸能界とは全く異なる職に就き、成功を収めたという。廃人にならなかったのが、せめての救い。 ラストで、カメラがホテルの壁に飾られた写真に徐々にクローズアップすると、そこに先程凍死したジャックらしき写っており、その下の日付により50年も前に撮影されたものだった、というのが明らかにされる。 一連の出来事が幻想なのか怪奇現象だったのか全く説明されないというのに、ジャックと瓜二つの男が50年前にもこのホテルにいた、という説明だけはやけにくどい。 何故この場面だけくどいと思ってしまう程説明的なのか。 といっても、50年前の男と、ジャックとの関係は説明されてはいないが。 原作では、ホテルがボイラーの大爆発で全壊するという、まさにアメリカらしい結末になっているが、本作ではそうした場面は無く、ホテルはそのまま残る。 悪役のジャックが迷路を彷徨った上に凍死するという、派手さに欠ける地味な結末も、「観る人によって幻想とも怪奇現象とも受け取れる作品」にしたかった以上、相応しい終わり方といえる。 原作通りにしていたら、まさにお子様向けになってしまっていただろう。 冒頭で、上空からジャックが運転する車に近付いて追っていく、という長回しのシーンがあるが、現在みたいにドローン撮影の技術が無い時代、どうやって撮影したんだろう、と不思議に思った。 キューブリックは実験的な手法を積極的に採用し、撮影技術の発展には大きく貢献していたらしい。 キューブリックは、「2001年宇宙の旅」や「時計仕掛けのオレンジ」で批評的にも興行的にも成功していたが、それ以降は芸術性に偏り過ぎた為か批評的・興行的失敗作が続き、「過去の人」に成りつつあった。 その状況を打破しようと挑んだのが初というか唯一のホラー作品である本作だった。 批評はイマイチな部分もあったが、興行的には成功し、キューブリックは復活する。 原作小説より評価が高いという、稀な存在になった。シャイニング【Blu-ray】 [ ジャック・ニコルソン ]価格:1100円(税込、送料無料) (2021/9/2時点)楽天で購入
2021.09.02
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「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズの第24作目。 S.H.I.E.L.D.の工作員ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの過去を描く。 ナターシャを演じるのは、これまで通りスカーレット・ヨハンソン。 原題は「Black Widow」。粗筋 1995年。 アレクセイ(デヴィッド・ハーバー)とメリーナ(レイチェル・ワイズ)は、スパイとしてアメリカに潜入していた。 ナターシャとエレーナの娘二人を持つごく普通の夫婦を装いながら、S.H.I.E.L.D.の情報を盗んでいた。 盗める情報を全て盗んだ二人は、ナターシャとエレーナを連れてロシアに逃亡。 上官であるドレイコフに迎えられる。 ドレイコフは、ナターシャとエレーナを暗殺者養成学校のレッドルーム行きとし、用済みのアレクセイを監獄送りにする。メリーナは逃亡の際に負傷してしまい、生死不明となった。 時は流れ、ナターシャはドレイコフとその娘を爆殺してS.H.I.E.L.D.に亡命し、アベンジャーズの一員として活動するようになっていた。 2016年。 アベンジャーズは内部分裂し[キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー]、ナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)はノルウェーへの逃亡を余儀なくされる。 一方、エレーナ(フローレンス・ピュー)は、レッドルームの暗殺部隊「ウィドウ」の一員として、裏切り者の元同僚を殺害。その過程で、彼女は元同僚が持ち逃げしたガスを吸い込む。ガスは、レッドルームによるマインドコントロールの解毒剤だった。正気を取り戻したエレーナは、残りの解毒剤を「姉」のナターシャに送り付ける。アベンジャーズの一員であるナターシャなら、何とかしてくれるだろう、と期待して。 解毒剤を何か知らずに受け取ったナターシャは、いきなりレッドルーム最強の暗殺者タスクマスターに襲撃される。 何とかタスクマスターから逃れたナターシャは、解毒剤がエレーナから送り付けられたものだと知り、エレーナの住まいがあるブタペストに向かう。 ブタペストで、ナターシャは「妹」のエレーナと再会。その直後に「ウィドウ」に襲撃される。二人は命辛々その場から逃げた。 エレーナの証言により、ナターシャは爆殺したと思っていたドレイコフがまだ生きていて、レッドルームも彼の元で活動中である事を知る。 ナターシャは、ドレイコフを探し出して今度こそ始末しなければならない、と悟る。ただ、エレーナの期待に反して、アベンジャーズは内部分裂しているので、支援は得られない。二人でドレイコフを始末しなければならなかった。 問題は、ナターシャは勿論、ほんの数日前までドレイコフの支配下にあったエレーナですらドレイコフの居所を知らない事だった。 ナターシャは、「父親」のアレクセイなら知っていると考え、アレクセイが収監されている監獄へ向かう。 二人は、アレクセイを脱獄させ、ドレイコフの居所を教えろと迫る。 アレクセイは、自分は知らないが、メリーナなら知っているだろう、と答える。 ナターシャとエレーナは、「母親」のメリーナは負傷が原因でロシアへの逃亡直後に死亡したと思っていたので、驚く。 ナターシャ、エレーナ、アレクセイの3人は、メリーナの住まいへと向かう。 20数年振りに、血の繋がりの無い4人は「家族」として再開。 ナターシャは、メリーナに対し、レッドルームがどこにあるのか教えろと迫る。 メリーナは、彼女に対し、自分が通報したので、探しに行く必要は無い、と答える。 その時点で「ウィドウ」が強襲し、ナターシャらを倒し、レッドルームへと連れて行く。 レッドルームは、空中に浮かぶ基地にあった。だからこそドレイコフの居所は誰も掴めなかったのである。 ただ、メリーナはドレイコフに反旗を翻していた。 ナターシャらが捕まる直前に、フェイスマスクによってナターシャとメリーナは互いに入れ替わっていた。 メリーナに成りすましたナターシャは、ドレイコフと対面する。 が、ドレイコフも、ナターシャの変装を見抜いていた。彼はナターシャに対し、レッドルームがいかにして世界を裏から支配してきた事を説明すると、タスクマスターを差し向ける。 タスクマスターの正体は、ドレイコフの娘アントニア(オルガ・キュリレンコ)だった。ナターシャは、ドレイコフを爆殺した際、アントニアも巻き込んでしまい、それについて苦悩していたが、アントニアは生きていた。ただ、脳へのダメージが大きく、ドレイコフはマイクロチップを脳に埋め込む事を強いられた。更に、ドレイコフは無情にも実の娘に改造を施し、最強の戦士に仕立て上げて手足の様に使っていたのだった。 ドレイコフは、ナターシャの始末を娘に任せると、その場を離れた。 一方、ナターシャに成りすましていたメリーナと、エレーナと、アレクセイは、囚われの身から脱すると、レッドルームの破壊工作を実施。 レッドルームはエンジンが破壊され、落下し始める。 ドレイコフの影響下にあった「ウィドウ」のメンバーらは、エレーナが解毒剤を散布した事で正気を取り戻し、脱出する。 ドレイコフも脱出を試みるが、エレーナにより航空機もろとも爆死する。 ナターシャは、再びタスクマスターと対峙し、解毒剤でタスクマスターの正気を戻す。 ナターシャ、エレーナ、メリーナ、アレクセイは、再び再開。生還を喜ぶ。 しかし、そこへS.H.I.E.L.D.がやって来る。本来ならナターシャにとって味方の筈だが、今はそうでない。 ナターシャは、「家族」の3人と、脱出した「ウィドウ」らとタスクマスターに、この場から去るよう促す。S.H.I.E.L.D.は自分が食い止めておく、と。 2週間後。 ナターシャは、拘束されているアベンジャーズを救う為に飛んでいく。 ポストクレジットで、サノスとの戦い[アベンジャーズ/エンドゲーム]で命を落としたナターシャの墓を、エレーナが訪れる。 そこで、エレーナは、ナターシャを死なせたホークアイを始末する依頼を受ける。感想 制作・公開時期はアベンジャーズ/エンドゲーム(MCU第22作目)の後だが、時系列的にはキャプテン・アメリカ/シビル・ウォー(MCU第13作目)とアベンジャーズ/インフィニティウォー(MCU第19作)の間の出来事、という事になっている。 ナターシャはアベンジャーズ/エンドゲームで死に、演じていたスカーレット・ヨハンソンもそれを機にマーベル・シネマティック・ユニバースから降板したと思ってばかりいたので、意外な展開だった。 既に最期が分かっているキャラが大活躍する姿を観るのは、ある意味空しい。 MCUの事だから、要望があれば何らかの形で生還させそうだが。というか、流石に生還させてシリーズ本流に戻すと混乱が生じるので、死んでしまったが人気のあるキャラは、今回の様にこれまでのシリーズ作の「空白期間」を埋める作品で登場させるのかも知れない。 ナターシャは、レッドルームにより訓練された事もあり、身体能力は常人をはるかに上回るが、キャプテンアメリカやブラックパンサーとは異なり、超人ではなく、不死身でもない。 そんな事もあり、ナターシャが単独で立ち向かう敵となると、超人だと釣り合わなくなるので、本作の様に普通の人間にするしかない。 アベンジャーズの一員として活躍している時は宇宙からやって来た征服者と対峙するので、本作の敵であるドレイコフはシリーズ全体を観ている者からすると雑魚としか映らないのは残念。 これが007シリーズだったら、ドレイコフも主人公の手に余る強敵に成り得ただろうに。 当然だが、突っ込みどころも多い。 アベンジャーズ加入前のナターシャによって、レッドルームは壊滅状態に追い込まれたと思われていたが、実際にはドレイコフは生きていて、裏から世界を支配していた、という事になっているが、レッドルームという組織は本作で初めてその存在が知らされ、これまでのMCUシリーズ作ではその片鱗すら見せていない。 レッドルームも、流石に超人揃いのアベンジャーズと直接対決する訳にはいかなかったので、目立たぬ様、裏で活動していた、という事だが、空中基地を持つ程の規模に成長したにも拘らず、その存在が本作までナターシャにも、情報収集能力がある筈のアベンジャーズにも知られていなかった、というシリーズ上の矛盾が生じてしまっている。 制作者側も、レッドルームを何度も登場させる訳にもいかないと判断したらしく、本作のラストで呆気無く瓦解。本作の為だけに急遽こしらえられた「凶悪な超巨大悪徳組織」となってしまった。 MCUシリーズの1作という考えで観るからこの矛盾が気になってしまうが、MCUシリーズを殆ど観ておらず、独立した1本のアクション映画として観ていれば、違和感は抱かないのかも。MCUシリーズの他のキャラをほぼ登場させていないのも、そういう思惑があったからか。 MCUシリーズの例に漏れず、最新の特撮技術を使った派手な作品に仕上がっている。 劇場を出た後に思い返してみるとかなり非現実的なアクションシーンだらけだった、という事に気付くが、観ている最中はそれを意識する事は無かった。 ハリウッド映画は、そういう部分に長けている、と改めて感じる。 スカーレット・ヨハンソンは、これまで通りナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウを演じていた。 MCUシリーズではお馴染みのキャラなだが、単独作品は今回が初。 超人揃いのMCUだと、そうでないキャラは単独作品を作り辛いらしい。 本作では、ナターシャの過去がテーマになっているが、幼少期が明らかにされるだけで、レッドルーム時代の活動や、S.H.I.E.L.D.に亡命する経緯は殆ど触れておらず、結局ナターシャは謎の人物のまま。 掘り下げ方が浅い。 1作で全てを描くのは無理なので、初めからそうしない事にしたらしい。 彼女を中心としたアクションシーンが満載されているが、非現実感があり、普通だったら即死だろう、というシーンでも観ていて緊張はしない。あくまでも「ブラック・ウィドウが格好良く動くのを観てね」というアクション。 作中でも、エレーナがナターシャに対し「どうして格好付けて登場するの?」と指摘するシーンがあったが、まさにそんな感じ。後にエレーナがナターシャを真似してみて「気持ち悪い」と後悔するが、アクションシーンそのものがギャグというか、マンガになってしまっている。 少し前に見たシャーリーズ・セロン主演のアトミックブロンドのアクションシーン方が「痛そう」でリアルだった。そちらも結局「格好付けたシーン」満載の作品だが。 ナターシャの「妹」として、エレーナが登場。 フローレンス・ピューが演じている。 MCUシリーズ作としては初登場だが、今後MCUを土台としたテレビシリーズ「ホークアイ」でレギュラーキャラとして登場するらしい。 そんな事もあり、ポストクレジットが挿入され、「ホークアイ」の導入部になっている。 本作は単独でも楽しめるが、あくまでもMCUシリーズである、という事を表している。 エレーナも様々なアクションを見せるが、ナターシャのと同様、マンガっぽい。 ナターシャとエレーナの「母親」としてメリーナが登場。 演じているのはレイチェル・ワイズ。 これまで数々のハリウッド大作に出演してきたが、スーパーヒーロー系は本作が初らしい。 それにしては、堂々と、違和感無く演じている。 50代でこの手の映画に出演しても違和感が無いのは、ハリウッドならでは。50代の日本人女優だったら、違和感しかなかっただろう。 タスクマスターを演じていたのは、オルガ・キュリレンコ(顔を見せていたシーンは僅かなので、実際にはスーツアクターが演じていたのだろうが)。 オルガ・キュリレンコは007シリーズ、ジョニー・イングリッシュ・シリーズでヒロインを演じていたので、マイナーな役でほんの僅か顔を見せる程度の出演を何故快諾したのか、不思議に思う。 タスクマスターというキャラで、今後MCUで出演し続けたい、という思惑か。 MCUは、アベンジャーズ/エンドゲームで一段落していて、今後どう展開させるか、制作者側も色々模索している様子。 本作は、アベンジャーズ/エンドゲーム後のMCUの先鞭を付ける作品というより、アベンジャーズ/エンドゲームまでに制作し切れなかった作品を、漸く手掛けられた、といったもので、やり方によってはアベンジャーズ/エンドゲーム前に公開されていても不自然ではなかった。 観ていてもMCUの展望が分からず、今後が少々不安になった。ブラックウィドウ メモ帳 パタパタメモ マーベル インロック コレクション雑貨 キャラクター グッズ メール便可[MARVELCorner]価格:439円(税込、送料別) (2021/7/27時点)楽天で購入
2021.07.27
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ショーン・コネリーとニコラス・ケイジが主演するアクション映画。 1996年公開。 敵役として、エド・ハリスが出演する。 また、SEAL部隊の隊長として、マイケル・ビーンが出演。 日本ではPG12指定となっているが、観る限りではそう残酷なシーンは無く、何故PG12指定になったのか、よく分からない。 原題は「THE ROCK」。舞台となったアルカトラズ島の別名でもある。粗筋 アメリカ海兵隊のハメル准将(エド・ハリス)は、政府に憤りを感じていた。 ハメルはこれまで数多くの非合法作戦に従事し、多くの部下を失っていた。非合法活動であるが故に、作戦が失敗すると見殺しにされ、公にされる事も無い。また、見殺しにされても遺族に恩給が支払われないのも当たり前だった。 ハメルは上層部や政府に、せめて遺族に恩給を与えるべきだと訴えてきたが、ことごとく無視されてきた。 事態を打開する為に、ハメルは強硬手段に出る。部下と共に化学兵器VXガスを奪取し、サンフランシスコ湾に浮かぶ元刑務所アルカトラズ島(通称「ザ・ロック」)に観光客81人を人質に立て籠もり、遺族へ渡す補償金として現金1億ドルを要求する。要求が受け入れられない場合はVXガスを搭載したロケットをサンフランシスコに撃ち込む、と。ロケットが撃ち込まれた場合、サンフランシスコに居住する90万人は全滅してしまう。 事態を重く見た政府は、海軍特殊部隊SEALをアルカトラズに送り込む事を決める。ただ、SEALも、相手に気付かれず侵入する方法が必要だった。アルカトラズからの脱走に成功した者なら、侵入に利用出来るルートを知っているのでは、と考えたが、アルカトラズは脱走不可能とされた刑務所。脱走を試みた者は何人かいたが、成功した者は一人もいない、というのが公式記録だった。 が、FBI長官は知っていた。実はアルカトラズからの脱走に成功した者が一人いる事を。その人物は存在しない事になっていたので、公式記録には載っていなかった。 FBI長官は、その人物が収監されている場所へ向かう。アルカトラズからの脱出は成功したものの、後に捕まり、30年間裁判すら行われず収監されていたのだ。 FBI長官は、その人物―ジョン・メイソン(ショーン・コネリー)―に、協力を求める。 メイソンは、恩赦を条件に、協力する事に。図面を見せられ、脱出の際に利用したルートを示す様、命じられるが、脱出は三十年以上前の事で、しかも暗がりの中で数日間掛けて行ったので、現地に行ってみないと記憶がよみがえって来ない、と言う。 FBI長官は、それは許可出来ないと主張するが、SEALは作戦成功の為に同行させるのが必要ならそうすべきだと主張。メイソンは、SEALと同行する事になった。 VXガスを安全に処理するには、化学の専門家が不可欠だった。FBI捜査官スタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)がサンフランシスコに派遣される。研究所で毒ガスを処理するのが仕事なので、戦闘が起り得る現場には送り込まれないだろう、と思っていたが、現場に行ってVXガスを処理しなければならないと説得され、SEALに同行する事になってしまう。 アンダーソン中佐(マイケル・ビーン)率いるSEALは、メイソンの案内で、アルカトラズに侵入する事に成功する。 が、ハメルは政府が特殊部隊を送り込んで来る事は想定していた。 SEAL部隊は、ハメルの部下に包囲され、銃撃戦で全滅する。 銃撃戦の場に居合わせなかったメイソンとグッドスピードだけが生き残った。 メイソンは、自分の役割は終わったと判断し、逃走しようとする。 が、グッドスピードは、逃走しても無駄だ、とメイソンを説得する。VXガスを搭載したロケットが発射されたら、サンフランシスコが全滅するので、お前も死ぬぞ、と。 メイソンは、嫌々ながらもグッドスピードに協力する事に。 グッドスピードは、アルカトラズ各所に配備されたロケットを発射不能にする作戦に出る。発射出来なければ、仮にVXガスが放出されても、アルカトラズに留まり、犠牲は最小限に留まる、と。 メイソンとグッドスピードは、ロケットを次々と発見し、内蔵された基盤を取り外して破壊し、発射出来ない様にした。 ハメルらは、侵入者が全滅していないのを知り、メイソンとグッドスピードを執拗に追う。 多勢に無勢のメイソンとグッドスピードは、捕まってしまう。 独房に入れられている最中に、グッドスピードはメイソンの素性を知らされる。 メイソンはイギリスの工作員で、アメリカに潜入し、様々な機密情報を記録したマイクロフィルムを盗み出したが、出国する直前にアメリカ当局に拘束された。イギリス政府は、同盟国に対しスパイ活動を行っていたと認める訳にはいかなかったので、メイソンの存在を関知しなかった。アメリカ政府は、盗んだマイクロフィルムの在処を教えろとメイソンを責め立てる。が、イギリス政府が自分の存在を関知しないとした以上、マイクロフィルムの在処を教えたら人知れず葬られるだけと読んだメイソンは、頑として教えなかった。そこで、アメリカ当局はメイソンを「身元不明者」としてアルカトラズに収監したのだった。 メイソンは、30年前と同じ手法で独房から脱出。グッドスピードと共にロケットの無効化作戦を続行する。 一方、ハメルは残ったロケットで脅迫を続ける。 政府はテロリストの要求には応じられない、と拒否。 ハメルは、ロケットを計画通り発射すべきと主張する強硬派の部下らに押され、ロケットを1発発射。 ロケットは、数万人の観客がいる競技場を標的とし、向かっていたが、到達直前にハメルが標的を変更。ロケットは海に落下する。VXガスは誰も傷付ける事無く海に沈む。 ロケットが競技場ではなく海に落下したと知った強硬派の部下らは、何故ハメルがそんな事をしたのか、と問い詰める。脅迫の意味が無いではないか、と。 ハメルは、あくまでも政府から譲歩を引き出したかっただけで、民間人を殺す気は無かった。譲歩を引き出せなかった以上、計画は失敗したと宣言し、部下らに自分を残して逃げる様、指示する。 が、強硬派の部下は、その指示に納得できなかった。金の為に今回の計画に参加したのに、何の報酬も得られず、しかもアメリカ政府に追われる立場となっては、骨折り損のくたびれ儲けではないか、と。 ハメルの部下の間で銃撃戦が起り、ハメルは致命傷を負う。 ハメルは、最後のロケットの場所をメイソンらに教えると、息を引き取った。 メイソンとグッドスピードは、最後のロケットが設置された灯台に向かう。 一方、アメリカ政府は、SEAL部隊が全滅し、VXガスの脅威がそのままである以上、強硬策に出るしかない、と判断。 戦闘機でアルカトラズに爆弾を投下して島を丸ごと破壊し、VXガスを無害化する、という作戦を実行に移す。これにより人質に取られた80人の観光客は犠牲になるが、90万人を救うにはそれしかない、と。 爆弾を搭載した戦闘機が、サンフランシスコへ向かった。 メイソンとグッドスピードは、ハメルの部下の生き残りを始末し、ロケットを無効化する。 グッドスピードは、事態が解決した事を示す合図である発煙筒を焚く。 それを確認した政府は、爆弾投下直前の戦闘機に作戦中止を命じる。 グッドスピードは、FBI長官に連絡。メイソンは死んだ、と嘘を吐いた。FBI長官がメイソンに恩赦を与える約束を反故にする事を知っていたからだ。 メイソンは、グッドスピードにマイクロフィルムの在処を教えた後、その場を去る。 グッドスピードは、その後メイソンに教えられた教会に向かい、マイクロフィルムを回収した。感想 ハリウッドらしいアクション映画。 主演が60代のコネリーと、3枚目っぽいケイジという組み合わせも、いかにもハリウッドらしい。 検証すると、ストーリーが穴だらけ、というのも、まさにハリウッド。 SEALは、メイソンの脱出ルートを逆になぞって、アルカトラズに侵入する事に成功。 島に上陸する事に成功したのだから、それから先はメイソンの脱出ルートにこだわらずに、臨機応変に動いて制圧すれば良かったのだが、どういう訳かメイソンの脱出ルートを逆になぞる事にこだわる。 メイソンは、収監者用のシャワールームの排水溝から脱出していた。SEALは、何故かそのシャワールームを経て館内に侵入する事に。 ハメルは、アルカトラズ内の至る箇所に感知センサーを設置していて、シャワールームにも設置されていた。「SEALは感知センサーを発見出来ず、運悪く作動させてしまい、ハメルらに包囲され、全滅した……」という展開ならまだ分かるが、SEALは光ファイバーを使って感知センサーを発見している。その時点で「ここには罠が仕掛けられている可能性があるから、別ルートを探して侵入しよう」と考えるのかと思いきや、SEALは感知センサーを少しずらして、排水溝からシャワールームまで上がろう、と何故か決めてしまう。 シャワールームは、収監者が大勢で利用しても看守が見下ろして状況を把握出来る設計になっていた。ハメルの部下らは、SEALの頭上から銃撃して、全滅させる事に成功。 SEALが全滅した事で、「この危機を打開出来るのはメイソンとグッドスピードの二人だけ!」という状況を作り出し、映画の緊迫度を上げる事に成功しているが、何故SEALをここまで無能にしたのか、制作者の意図が分からない。 SEALを一人くらい生存させ、後に死亡する、という展開にすれば良かったのに。 VXガスは、ガラス容器に入れられた状態で保管されていた。 ガラス製なので、落として割るとガスが四散し、周囲にいる者を殺す。 そこまで危険なガスを、何故破損し易いガラス容器に収めたのか、分からない。衝撃に耐えられる容器に収めるのが常識だろう。 冒頭シーンでは、ハメルの部下の1人が誤って落としてしまう。その結果、VXガスを吸い込んで死んでしまっている。 ここまで壊れ易いものだと、取り扱いで事故が発生し捲っているだろうし、ロケットに搭載したら、発射の衝撃や振動で破損してしまい、標的に辿り着く頃にはガス残っていない可能性もあるのではないか。 といっても、映画のクライマックスでは、グッドスピードが容器を胸ポケットに突っ込んで取っ組み合いをするシーンもある。その時だけはやけに頑丈だった(これもハリウッド的)。 本作が公開されてから数年後、イギリス政府はイラクが化学兵器を大量に生産している証拠を掴んだと発表し、それを口実にアメリカ主導のイラク侵攻に参加し、当時のフセイン・イラク大統領の排除に貢献した。 ただ、口実となった証拠は、後に偽物と発覚。化学兵器がガラス容器に入れられて保管されているという証言が記されている等、本作と酷似していたという。 この件に関しては、本作の制作者も驚いたらしい。「化学兵器をガラス容器で保管したのはあくまでも映画上の演出。化学兵器をガラス容器に入れて保管するなんて有り得ないと専門家なら気付く筈」とコメントしている。 制作者も充分理解していた以上、本作で「VXガスをガラス容器で保管するのはおかしい」と指摘するのは野暮か。 元イギリス諜報員メイソンを、ショーン・コネリーが演じている。 007を引き継いだ感のあるキャラで、よくコネリーが出演を承諾したな、と思う。 もしくは、コネリー自身が色々提案した結果、007寄りになってしまったのか。 初代007でありながら、降板後は007嫌いを公言していたコネリーだが、何だかんだで007から逃れられない運命にあったらしい。 30年間収監されていた、という設定の割には、よく動ける。イギリス諜報員だったとしても、動き過ぎだろう。 FBI所属の化学専門家を演じるのは、ニコラス・ケイジ。 本作では、少々頼りない役を演じている。 悪役も善役も、二枚目も三枚目も演じられるのは、ケイジならでは。 ただ、コネリーとハリスに挟まれ、存在感が薄れてしまっていた。 流石のケイジも、コネリーと同時出演だと、個性が活きないらしい。 勿体無いのが、SEAL部隊長を演じたマイケル・ビーン。 ターミネーターではヒーローを演じる等、数々の大作に起用されていて、1980年代から2000年代までは、特殊部隊員=マイケル・ビーンというくらい当たり前に登場していたが、何故か主役には起用されない。本作でも、途中であっさりと退場。 最後までまともに生きている、という役を演じたのを観た事が無い気がする。 ハリウッド大作の俳優としては大成はしていない様だが、その後も数々の映画やテレビ番組に出演しているので、本人はそれなりに満足しているのかも知れないが。 敵役のハメル准将を演じるのが、エド・ハリス。 当初彼の役柄はひたすら残酷なテロリスト、という設定だったらしいが、ハリスの意見を取り入れ、ハメルを人格者にしている。 ただ、あまりにも人格者にしてしまった為、そもそも何故ハメルはこんな行動を起こしたのか、という矛盾を生み出している。 ハメルは数々の非合法活動に従事したものの(アメリカによる交戦記録が正式に無い中国にも潜入して戦闘を繰り広げた、という事になっている)、それが政府に全く認められなかった事が、動機とされる。 一方で、VXガスを奪う際は警備隊員を気絶させるだけで一人も殺さず奪っているし(部下の一人がVXガスで死んでいるが)、アルカトラズを乗っ取る直前に学校行事で観光に来ていた子供らに対しツアーを切り上げてさっさと帰れと促しているし、VXガスを搭載したロケットを発射するものの標的を変えて海に落下させて誰も死なせずに済ませている。SEALとの銃撃戦も彼の命令で始まったのではなく、部下が勝手に始めたもので、彼はSEALをあくまで生け捕りにしたかった様子を見せている。 ハメルは、VXガスを盾にアメリカ政府を脅迫したものの、誰も死なせずに済ませたかった様である。 それだったら、こんな強硬手段に打って出るより、さっさと退役し、回想録でも出版し、その中で自分が指揮した非合法活動を洗いざらい語る、という手段に出た方が、誰も犠牲にせず済んだだろうに、と思う。 そんな回想録を出版したら機密保持に違反したと見なされ、軍法会議に掛けられるだろうが、VXガスを奪って脅迫するのと比べたらまだまだ「合法的」と言えるだろうし、世間の共感も得られただろう。 ハメルが起こしたテロ活動は、公にはされていなかったので、結局事件そのものが無かったという事で処理される可能性が高い。ハメルやその部下は事故死した、等。当然ながら、ハメルの訴えもそのまま葬られ、遺族に恩給が支払われる事は無い。 ただただ無駄死にした、という事になる。 それも全て踏まえて今回の強硬手段に出たのだとしたら、何の為に、という疑問が拭えない。 また、ハメルの部下は、ハメル追従派と強硬派に分かれてしまい、内輪で揉めた結果銃撃戦になり、半減。ハメルも死亡する。 人格者の筈のハメルが、何故自分の考えを理解してくれる者で固められなかったのかも、理解に苦しむ。 本作の撮影は、実際にアルカトラズ島で行われたという。 国立公園なので、撮影の為に貸切る事は出来ず、観光客が歩き回っている中で撮影が行われたとか。 観る限りではそうした状況下で撮影された事は感じられないので、どうやって撮影したんだと不思議に思う。 ラストシーンで、マイクロフィルムを入れていた像をグッドスピードが教会から盗み出す。 この教会は、数々の映画で利用されてきた有名な建物らしいが、後に火災で全焼してしまい、現在は残っていない。 アメリカでも文化財の喪失は頻発している様である。 アーノルド・シュワルツェネッガーは、オファーを断った事を後悔している映画として、本作を挙げているらしい。 シュワルツェネッガーが主演していたら、全く違う映画になっていただろう。誰の訳をオファーされていたのか。 そのバージョンも観てみたかった気がしないでもないが、興行的にはどうなっていただろう、とも思ってしまう。 本作の続編も検討されたが(メイソンのその後を描く)、立ち消えになったという。 体力的にコネリーが出演出来るとは思えないので、立ち消えになったのは当然といえる。ザ・ロック 特別版 [ ニコラス・ケイジ ]価格:1100円(税込、送料無料) (2021/4/16時点)楽天で購入
2021.04.16
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アメコミの2大大手の一つDCコミックスを代表するスーパーヒーロー・ワンダーウーマンの実写映画第2弾。 DCエクステンデッド・ユニバースでワンダーウーマンを演じてきたガル・ガドットが引き続き主演を演じる。 監督も、前作と同じくパティ・ジェンキンス。 製作には、主演のガル・ガドットも名を連ねる。 タイトル通り、舞台は1984年。 原題は「Wonder Woman 1984」。「WW84」と略される。粗筋 前作での戦いから66年。 1984年のアメリカ合衆国首都ワシントンDC。 ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)は、スミソニアン博物館で勤務しながら、正体不明のヒーロー・ワンダーウーマンとして悪と戦う日々を送っていた。 FBIに摘発された密輸業者の盗品がスミソニアンへ届けられる。数々の盗品の中に、奇妙な石の置物があった。 ダイアナの同僚である鉱物学者バーバラ・ミネルバ(クリステン・ウィグ)の鑑定では、シトリンで出来た無価値な紛い物と見なされた。台座にはラテン語で「一つだけ願いを何でも叶える」と彫られてあったので、ダイアナは思わず66年前に亡くした恋人スティーブが戻って来てほしい、と願ってしまう。 バーバラも、ダイアナの様な格好いい女性になって、うだつが上がらない自分自身を脱したい、と石に何気無く願った。 テレビコマーシャルで自身の石油事業を宣伝してちょっとした著名人になっていたマックス・ロード(ペドロ・パスカル)が、スミソニアンに現れ、ダイアナ達に接近。バーバラを誘惑し、石の置物を借りる事に成功する。実は彼は、石の置物を長年探し求めていた。石の置物を漸く手に入れたマックスは、その仕組みを逆手に取り、願い事を叶える力を自らのものとする。 マックスの石油事業は、実は破綻寸前のネズミ講だったが、石の置物の力を手に入れた事で急展開。石油が出ない筈の所有地全てから石油が湧き出す様になる。 石油事業を大成功させたマックスの元に、様々な投資家らが押し寄せる。マックスは、彼らの願い事を叶えるのと引き換えに、あらゆる権力を手に入れていく。 ダイアナは、石の置物がこれまで歴史上の様々な文明で姿を現していた事を突き止める。それらの文明は、石の置物の力で短期の内に強大になっていったものの、同じく短期の内に滅亡していた。石の置物は、悪魔の化身だったのだ。 ダイアナは、石の置物を処分しようとするが、バーバラがマックスに貸し出してしまった事を知る。 マックスにより石の置物が悪用されている事を知ったダイアナは、彼の阻止に動き始める。 そんな中、ダイアナはある男性と出会う。スティーブ・トレバー(クリス・パイン)の記憶があった。ダイアナの願いは、別の男性にスティーブの魂が宿る、という形で叶えられたのだった。ダイアナは、スティーブの魂を宿す男性(ダイアナにはスティーブの姿に見える)と共にマックスの追跡を開始。 ダイアナの住まいで、スティーブは古い鎧らしきものを見付ける。これは何だと訊くと、ダイアナの故郷のセミッシラ島の戦士アステリアが着用していた鎧だと答える。古代の時代にこちらの世界とセミッシラ島との間で戦いがあった時、アステリアは自身を犠牲にしてセミッシラ島の結界を復活させる時間稼ぎをした。こちらの世界に留まる事になったアステリアの消息は不明となり、セミッシラ島ではアステリアは伝説の戦士として崇められていた。ダイアナは、こちらの世界にやって来た直後に、アステリアを探し求めたが、発見出来たのはその鎧だけだったと説明した。 ダイアナとスティーブは、マックスを追ってエジプトへ飛び、マックスと対峙。しかし、願いの代償で、ダイアナは以前の様な超人的な戦いが出来ない事が発覚。その結果、マックスを取り逃してしまった。 ダイアナとスティーブはアメリカに戻り、マックスを再び追い詰めてゆく。しかし、二人の前に、バーバラが立ちはだかる。 バーバラは、ダイアナの様な格好いい女性になりたいと願った事で、意図せずにワンダーウーマンと同等の戦闘力を会得していた。折角叶った願いを失う事を拒否した彼女は、マックスと手を組み、彼の逃走を手助けする。 スティーブは、ダイアナがワンダーウーマンとしての力を復活させない限り、マックスやバーバラを相手に戦うのは無理だと悟る。その為にはダイアナに自身の願いを撤回させなければならなかった。それは、スティーブを再び失う事を意味するのを知っていたダイアナは、願い事の撤回を拒否する。スティーブは、自分は既に死んだ人間だとダイアナを説得する。ダイアナは悲しみに満ちながらも願い事を撤回し、スティーブと別れ、ワンダーウーマンとして復活する。 マックスは、アメリカ大統領に接近出来るまでの力を得ていた。軍の通信施設を経て、世界中の人々と接触して願い事を叶え、更なる権力を手に入れようと画策。 ダイアナはその施設に向かった。 バーバラが再び立ちはだかるが、戦いの末彼女を倒し、マックスと対峙。 しかしマックスは、通信施設を悪用し、世界中の人々の欲望を叶えていた。 核兵器をより多く配備しなければ、というアメリカ大統領の欲望まで叶えていた事から、アメリカの核兵器の数が一気に増加。 それに反応したソ連が、核戦争を仕掛ける。 ダイアナは、マックスに対し、願い事を撤回しないと、愛する息子まで失う事になる、と説得。同時に、通信施設を経て、世界中の人々に願い事を撤回させる。 その結果、世界は以前の状態に戻っていく。 世界を危機から救ったダイアナは、平和にクリスマスを迎える人々の中を歩いて行った。 別の場所で、子供が命の危機にさらされるが、偶々側を歩いていた黒髪の女性が救う。 子供の母親は、黒髪の女性に感謝の意を述べ、相手の名を訊く。 その女性(リンダ・カーター)は、「自分の名はアステリア」と答えると、その場を去った。感想 実写映画版第1弾で、ワンダーウーマンは悪の化身である神で、自身の兄でもあった敵と戦った。 第2弾ではどういう強大な敵と戦うのか、と思っていたが……。 小さく纏まってしまった感じ。 本作の一番の敵といえるマックス・ロードは、一旗揚げたいが故に無謀な事業に手を染めてしまっただけのペテン師で、根っからの悪人という訳ではなく、ラストで溺愛する息子が危機にさらされていると知ると何もかも放棄して自分がペテン師だった事を息子に打ち明けて詫びる程度の小悪党。「ワンダーウーマンと同じ超人的な力を持つ凶悪な敵」とされたミネルバも、元は冴えない学者で、ふとした事で強大な能力を得てしまっただけ。汚い言葉を使う様になるが、イマイチ様になっておらず、本気を出したワンダーウーマンにあっさりと倒されてしまう。 人類滅亡の危機に発展するが、悪人らしき悪人は一人も出ない。ここまでの危機だから、死者は出ていたと思われるが、具体的には描写されない。マックスもミネルバも、人を傷め付ける事はするものの、直接殺すまでは至っていない。 前作では人を殺めたワンダーウーマンも、本作では誰も直接殺める事無く世界を救っている。 胸糞悪い登場人物、ストーリー展開、結末は無く、安心して観られ、その意味では、非常に「優しい映画」。 女性が監督を務めたからか。 同じDCエクステンデッド・ユニバースのスーパーマンが、本来の善の塊なヒーローから、ダークヒーローっぽい要素も取り入れる様になってしまい、やっつける対象となる筈の悪の側と大差が無くなり、観ていてがっかりした経験があるので、善をひたすら貫き続けるヒーローが描かれるのは喜ばしい。 ただ、本作の様にヒーローは勿論、敵側も何と無く優しくなってしまうと、物足りなさを抱いてしまう。 マックスの欲が限りなく増幅していき、溺愛する筈の息子ですら犠牲にしてしまう、ミネルバもガンガン人を殺すくらいになるまで性格が歪んでいく、といった展開にした方が、ワンダーウーマンももう少し容赦無く戦う事が出来、最終的にワンダーウーマンが勝利する事によって爽快感が得られただろうに。 ワンダーウーマンことダイアナ・プリンスは、前作から66年後の1984年は、スミソニアンで研究員として勤務している。 その職にどうやって漕ぎ付いたのか、66年もの間何をやっていたのか、に関する説明は一切なされていない。 観ている側は、その状況をただただ受け入れるだけ。 ダイアナ・プリンスがどういった人物なのかに関してはあまり深く掘り下げておらず、あくまでも「主人公として動き回っている女性」でしかないのは、残念。「スーパーマンvsバットマン」で颯爽と登場したワンダーウーマンは、スーパーマンに劣らぬ力を持っていて、スーパーマンを驚かせた程だった(同時に、主役の座をさらっていった)。が、続編の「ジャスティスリーグ」ではそこまで強い訳ではない、という設定に格下げされている。その続編の「ワンダーウーマン」では、強い事には強いが、無敵でもない、という設定になっている。本作では、石の置物の効力により能力が低下していたという事情があったにせよ、「常人より身体能力が高い」というレベルに落ちてしまっている。 何故作品を重ねるごとに弱くなっていくのか。 あまりにも無敵にすると敵もそれに合わせて強力にしなければならず、脚本が書き難くなる、という問題もあるのだろうけど、それだったら脚本を練りに練れば言い訳で。時間も予算もあるのだから。 前作で壮絶な犠牲を払ったスティーブ・トレバーは、思いがけない形で復活。 といっても、死亡した事に変わりはなく、ラスト辺りで退場(退場する瞬間は観れない)。 次回作でまたまた復活するのは有り得なさそう。 ワンダーウーマンのライバルとして、ミネルバことチーターが登場するが、元は中年に差し掛かった、冴えない女性とあって、迫力不足。 作中では、ワンダーウーマンの能力をふとした事で手にしてしまった事で、「イケる女」になった、という風に描かれているが、眼鏡を取る以外に容貌が激変する訳ではない(ラストでチーターそのものになるが)。 ミネルバを演じるクリステン・ウィグは、不美人ではないが、ミス・イスラエルだったガル・ガドットの横に並ぶと、顔も身体付きも終始「ただのオバサン」に過ぎなかった。 もう少し若い女優を起用し、変身前は肥満で不細工だったのが、変身後は痩せて美人、といった演出は出来なかったのか。ハリウッド映画では俳優が役作りの為に体重を激増させたり、激減させたりする事がよくあるので、撮影中にそうする事も出来たと思うのだが。 マックス・ロードは、強大な力を手に入れるが、元々気の弱いペテン師に過ぎず、悪に染まり切れず自滅。 バットマン・シリーズで登場する、悪である事に何の躊躇も見せず、寧ろ楽しんで悪行に手を染めるジョーカーと比べると、ただの雑魚。ジョーカーが登場していたら、あっという間に手下にされ、利用され捲っていたと思われる。 演じていたペドロ・パスカルは、優男というか、童顔の俳優で、気の弱いペテン師、という役柄には適していたが、終始その顔のまま。「悪」には相応しくない。 奇妙な事に、ペドロ・パスカルはこれまで自分が観て来た数作品(イコライザー2、キングスマン・ゴールデンサークル)でも悪役を演じている。いずれでも最終的には呆気無く倒されてしまう。何故優男っぽい顔にも拘わらず、悪役で起用されるのかは不明。 顔に似合う役柄で登場するのを観てみたい気がしないでもない。 クレジット前に、1970年代のテレビシリーズでワンダーウーマンを演じたリンガ・カーターがカメオ出演。 何故登場したんだと思ったら、アステリア役だった。 こういうやり方があったか、と納得。 DCエクステンデッド・ユニバースは、当初は過去のDCコミックス関連の実写版を否定するか、そもそも無かったかの様なぞんざいな扱いをしていた。 それが原因からか、マーベルスタジオより先立って実写版を製作していたのに、興行的にも、批評的にも、マーベルに後塵を拝す結果になってしまっている。 その反省からか、ここ数作からは過去の作品にそれなりの経緯を払うようになってきている。「ジャスティスリーグ」では、スーパーマンが再登場した際、1970年代に公開されたスーパーマン(故クリストファー・リーブス主演)の音楽を使ったし、本作ではリンダ・カーターを起用。 これによりDCエクステンデッド・ユニバースの興行収入が大幅アップするとは思えないが、過去の作品のファンにも受け入れられ易くなっているのはいい事である。 本作でリンガ・カーターがアステリアとして登場してしまった為、次回作ではもう少し活躍が観られるのか、という期待を持たせてしまっているが(新旧のワンダーウーマンが起用するとなると、脚本がますます難しくなるし、リンダ・カーターも70代というから、多分無いと思う)。 ワンダーウーマンは、早くも更なる次回作が決定しているが、もう少し強力な敵と戦ってもらいたい。 監督も、そろそろ変えた方がいいと思う。 制作も、早めに進めた方が。「スーパーマンvsバットマン」ではまだ30代を迎えていなかったガル・ガドットも、既に30代半ばに差し掛かっている。 男性のコスチュームドヒーローは、男優が40代、50代になっても支障は無いが(オッサンなのに頑張ってるな、とは思うが)、女性の場合、40代、50代の女優が露出度の高いコスチューム姿で暴れ捲るのを見せられるのはきつい。10代の鑑賞者からすれば、自分らの母親の世代が演じている事になってしまう。それでは高い興行収入は見込めない。美人だろうと、スタイルが良かろうと、オバサンは結局オバサンなのだから。 劇場の回転率を重視する最近の映画にしては、上映時間が151分と長い。 間延び感があるので、もう少し編集して、短くしても良かったのでは、と思わないでもない。 本作は、2020年前半に公開が予定されていたが、コロナウィルス感染拡大により公開が夏に延期され、夏にも収束する気配が無かった為年末に延期。 アメリカでは年末でも収束の気配は見せていなかったが、これ以上延期出来ないとの判断からか、日本ではアメリカに先駆けて公開された。 007最新作も2020年の公開が翌年にまで延期される等、コロナウィルスは映画界に多大な影響を及ぼしている。オリジナル・サウンドトラック ワンダーウーマン1984 [ ハンス・ジマー ]価格:2750円(税込、送料無料) (2021/1/15時点)楽天で購入
2021.01.15
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米仏合作のアクション映画。 監督はリュック・ベッソン。 主演はサッシャ・ルス。 原題はANИA。粗筋 1980年代後半のソビエト連邦。 身寄りが無いアナ(サッシャ・ルス)は、恋人のペーチャと暮らしていた。 ペーチャは犯罪に手を染めて生活費を稼いでおり、アナもまともな暮らしは望めなかった。そんな状況に終止符を打つべく、アナは海軍に志願する。 彼女の経歴に目を付けたKGB職員アレクセイ(ルーク・エヴァンス)が、姿を現す。KGBで働けば、今の生活から脱せる、と。 訓練1年、KGBでの勤務4年、その後は自由、という条件で、アナはKGBの一員となる。 訓練を終えたアナは、アレクセイの上官オルガ(ヘレン・ミレン)の下で、暗殺を遂行する日々を送る様になった。 4年で自由になれると信じて任務を遂行していたアナだったが、ある日KGB長官ワシリエフと対面。「KGBから解放される唯一の方法は死だけだ」と冷たく告げられ、自由になれる、という約束は無かった事に。 その後、アナはパリでファッションモデルとして活動する傍ら、KGBの暗殺者として任務をこなす。 が、ある任務の最中、アナはCIAに拘束されてしまう。 CIA職員レナード(キリアン・マーフィー)は、アナに対し二重スパイになるよう、迫る。二重スパイとして1年働いた後、ハワイでCIAの保護下で暮らせる、という条件を提示する。 その条件を飲んだアナは、CIAの二重スパイである一方で、KGBの一員として任務を遂行する。 この頃、KGBとCIAの関係は冷え切っていた。 KGB長官ワシリエフは、ソ連内に潜入していたCIAのスパイを何人も拘束しては無慈悲に処刑するという、過激な行動に出ていた。 報復措置として、CIAはワシリエフ暗殺を企てる。外部から潜入してワシリエフに近付くのは不可能なので、内部の者に殺させるのが得策、と判断。アナに白羽の矢が立った。 アナは、CIAの命令通り、ワシリエフを暗殺。KGB本部から脱出を試みる。 KGB本部の外で、レナードはアナが姿を現すのを待っていたが、時間内に姿を現さなかったので、その場を去る事を強いられる。 それから暫くして、レナードとアレクセイに、アナから連絡があった。二人は公園に呼び出される。 二人の前に現れたアナは、レナードからもアレクセイからも解放されたいと告げ、CIAとKGB双方から得た情報を盾に、自由にしないとこれらを全世界に公開すると宣言し、その場を去る。 が、アナは、突然姿を現したオルガにより射殺される。 アナの死体を監視カメラの映像で確認したレナードとアレクセイは、落胆しながらも、彼女の死を受け入れる。 ワシリエフの死により、オルガがKGB長官の座に収まる。 その彼女の元に、死んだ筈のアナからメッセージが届く。 アナは死んでおらず、生きていた。アナは、自由になる手助けをしてくれたオルガに感謝の意を伝える。それと同時に、アナがCIAの二重スパイになった事を承知の上でワシリエフを殺させ、KGB長官の座に収まったオルガの企てに関しては録画した証拠がある、という事も伝える。 メッセージを読んだオルガは、アナのプロファイルをKGBの記録から抹消した。感想 内容的には、ベッソンの出世作である1990年公開のニキータの焼き直しっぽい。 そんな事から、本作を観た批評家らからは「ベッソンは30年前から全く成長していない」と酷評される羽目になっている。 ベッソンはニキータ以降、様々なジャンルに挑戦しているので、成長していない、の批判は間違っている気がする。 原点に返ってニキータを現在の特撮技術を使ってリメークしてみた、と考えるのが筋ではなかろうか。 ベッソン作品らしく、女性がアクションシーンをガンガン披露する、という内容になっている。 バイオレンスの描写に手慣れているからか、女優によるアクションシーンにも拘わらず、嘘っぽさが薄く、それなりの説得力があるものに仕上がっている。 それでも、モデル体型の女性一人が屈強な男性を何人も相手に殺し捲りながらも本人は掠り傷程度で切り抜ける、という展開には違和感が。 同じく女性が殺し捲りながらも本人も結構なダメージを受けるアトミックブロンド(シャーリーズ・セロン主演)の方が、リアルさで上回る。 作中は、フラッシュバックを多用。 あるシーンが終わるとフラッシュバックし、そのシーンには実は裏があった、という事実が明らかにされる。 アナがKGBの任務を無事遂行したと思ったらフラッシュバックシーンで実はCIAに拘束され、二重スパイになる事を同意させられた上で解放されていた、休暇を終えたアナがオルガと再会するだけと思われたシーンはフラッシュバックでアナがCIAの二重スパイになったのをオルガが既に知っている事が明かされるシーンになる、等々。 フラッシュバックが何度も挿入されるので、注意して観ていないとストーリーの流れが分からなくなる、という難点がある。ただ、フラッシュバックの挿入部分ははっきりと表示されるので、それさえ見逃さなければ置いてきぼりを食らう事は無い。その意味では、親切な作りになっている。親切過ぎないか、と思ってしまう程説明がくどく感じる部分もあるが。 アナは、KGBの訓練により、優秀な暗殺者となった、という流れになっているが……。 その割には初任務で暗殺に挑むものの、銃が装填されているのを確認し忘れ、直ぐ終わる筈だった暗殺が肉弾戦になる、というミスを犯す。 その時は、初任務だったから隙がまだまだあった、と理解出来なくもない。 しかし、それから数年後、また別の暗殺で銃を相手に突き付けるものの銃弾がCIAにより事前に抜き取られていて、そのままCIAに拘束される。 暗殺者として優秀で、銃も扱い慣れている筈なのに、銃を手にした時点で装填されていないと何故気付けないのか。手に持った時点で気付けなかったとしても、自ら持参した銃でないなら、きちんと作動するか、装填されているかを確認するのは常識だろうに。 アナが、暗殺者としてどこまで優秀なのかが、結局分からない。 そもそも、犯罪者の恋人に過ぎず、自堕落な生活を送っていた女性が(その割には古典文学に結構精通している)、KGBで1年訓練を積む程度で無敵の暗殺者になれるなら、誰でも無敵の暗殺者になれる、という事にならないか。 暗殺者というキャラだから仕方ないのかも知れないが、共感出来る部分が少ないのも難点。 自身の自由をひたすら望むだけで、他人への配慮に欠け、自己中心的。そんな訳で、彼女が酷い仕打ちを受けても、「身から出た錆」くらいにしか思えない。 最終的に、彼女は自由を獲得する事に成功するが、その自由な生活で何をするのだろう、と思ってしまう。モデルとしての活躍はもう無理だし(CIAやKGBが彼女が死んでいなかった事に気付いてしまう)、といってウェイトレスや秘書等の地味な職業には就けない。KGBに隠していた貯えがあるとも思えない。 結局KGBの一員になる前の自堕落な生活に逆戻りし、短い一生を惨めに終える、て事になりそう。 アナを演じるサッシャ・ルスは、本作に出演する以前はファッションモデルだったので(その意味では、ファッションモデル兼KGB暗殺者、という役柄は適任)、顔もスタイルも抜群。 ただ、「奇麗に纏まっている」というだけの容姿で、物凄く印象に残る顔立ちでもない。 もう少し特徴ある女優を起用出来なかったのかね。 寧ろ、容姿だけなら、アナのモデル仲間で、同性の恋人のモードを演じたレラ・アボヴァの方が、印象に残った。 本作は、他の登場人物の描写にも、詰めの甘さが。 アレクセイは、アナを自らスカウトしているので、恋仲関係に陥ったとしても不自然ではないが、CIA工作員のレナードがアナと恋仲関係に陥るのはおかしい。 CIA工作員として、KGBの暗殺者と肉体的関係を持つのは危険だ、と思わなかったのか。まして、アナの方から迫ってきたのだから、これは何かの罠だ、と考えるのが、当たり前だろうに。 レナードは、あくまでもアナを利用しただけで、肉体関係を持ちながらも何の感情も抱いていなかった、という事だったのかも知れないが、そうだとするとそれが観ている側には伝わって来ない。 アナの上官となるオルガも、何をしたかったのか分からないキャラ。 アナを単なる道具として冷たくあしらうが、最終的にはアナを解放する事に協力するので、「良いキャラ」の様に見えるが、どっち道アナを生かすのだったら、レナードにアナを回収させて、CIAの保護下に暮らさせた方が、丸く収まっていただろうに、と思う。 何故ワシリエフ暗殺後にアナをレナードの元に行かせず、匿い、暫くしてからレナードとアレクセイと接触させ、直後に死を演出する、という手の込んだ芝居をさせたのかが分からない。 KGBの手元には置けないが、CIAにも渡したくなかった、という事か。 本作では、ロシア人のキャラが多数登場するが、主人公アナを演じたサッシャ・ルスと、アナの最初の恋人ペーシャを演じたアレクサンドル・ペトロフ以外にロシア系の俳優は殆ど登場しない。 アレクセイを演じたルーク・エヴァンスとオルガを演じたヘレン・ミレンはいずれもイギリス人、ワシリエフを演じたエリック・ゴドンはベルギー人。 実際にロシア人俳優を使うと、欧米では無名過ぎて、興行収入が見込めない、との判断だったのか。 スパイ映画の定義に沿って、アナは2重スパイになり、3重スパイになる。 捻りとしては、物足りない。 最終場面で、アナは実は4重スパイだった、という事が明らかにされるのかと思いきや、そこまでの捻りは無かった。 アクション映画としては、観ていて期待を裏切らないものに仕上がっている。 一方で、特段目新しい面も無い。 何故ベッソンは「ニキータの焼き直し」と酷評されるのを承知で本作を製作したのか。【送料無料】 ANNA/アナ / ANNA / アナ 【CD】価格:2640円(税込、送料無料) (2020/8/14時点)楽天で購入
2020.08.14
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1986年に放送されたテレビ映画。 テレビドラマのパイロットエピソードとなる筈だったが、後に続くドラマが製作されなかった事から、設定や背景の説明がなされておらず、張られた複線も全て未解決のままになっている。 日本では、「SFバイオノイド」としてビデオがリリースされた。 原題は「Annihilator」。粗筋 新聞記者のロバートは、恋人で同僚のアンジェラと近々結婚する予定だった。 ある日、アンジェラが懸賞でハワイ旅行に当選する。二人分のチケットが当たったので、二人で行ければ良かったのだが、ロバートには先約があり、行けなかった。代わりに同じく同僚で共通の友人であるシンディと共に、アンジェラはハワイへ旅立った。 それから数日後、ロバートは旅行を終えたアンジェラとシンディを空港の到着ロビーで待ったが、なかなか姿を現さない。 空港関係者によると、到着が遅れているという。遅れるにしても1時間半の遅れは有り得ないと食い下がると、空港関係者は旅客機がレーダーから忽然と姿を消した、と認める。空港関係者らが大慌てしていると、旅客機は消えた場所に1時間半後に再び現れ、何事も無かったかの様に飛行を続けた。それがそのまま1時間半の遅れになった、と。 レーダーから消えた旅客機が1時間半後に消えた場所から飛行を再開するなんて有り得ない、とロバートは思ったが、それ以上の説明は無かった。 ともあれ、旅客機は無事到着した。 到着ロビーで、ロバートはアンジェラがサングラスの男と何やら話しているのを見掛ける。彼女を出迎えたロバートは、あの男は誰だったんだと訊くが、彼女は誰とも話していない、と白を切った。 ロバートは、アンジェラと共に職場に戻るが、違和感を抱く様になる。 アンジェラはパソコン嫌いで、職場でも自分用のパソコンを持っておらず、オンラインでの探し物は他人に頼むのが常だったのに、いつの間にかパソコンを使いこなす様になっていた。動物好きの筈なのに、動物実験を肯定する記事を執筆したり、ロバートが可愛がっている犬を「下等生物」と呼んだりした。また、これまでアンジェラに懐いていたその犬が、彼女に対し執拗に吠え掛かる様になっていた。 不安の色を隠さないロバートに対し、アンジェラは郊外の別荘で過ごさないか、と持ち掛ける。 ロバートは同意し、二人は別荘へ向かう。 別荘に到着し、二人で気兼ねなく過ごそうと考えていたロバートを、アンジェラが殺気立った表情で襲う。 ロバートは驚いて外に逃げ、手当たり次第に物を掴んでは投げ付け、抵抗する。 アンジェラの顔に物が当たると、皮膚が剥げた。その下はロボットだった。目も、赤く、不気味に光っていた。 目の前にいるのはアンジェラではない、と悟ったロバートは、反撃。アンジェラと瓜二つのロボットを、車で圧し潰して破壊した。 ロバートは、そのまま街に戻る。 その後現場に現れた警察は、騒ぎを聞いていた近隣住民の証言から、ロバートが恋人を殺した、と推測する。ただ、死体は無く、機械の燃えカスしか見付からなかったので、一体何が起こったのかと不思議に思う。 街に戻ったロバートは、アンジェラがおかしくなったのはハワイから戻って来てからなので、同行していたシンディなら何か知っているかも知れないと考え、彼女の住まいに向かう。 シンディは、ロバートの自宅に上げる。 ロバートが事情を説明しようとすると、シンディがいきなり襲い掛かる。彼女の目も赤く光っていた。 ロバートは、その場から辛うじて逃げ出す。 パソコン嫌いの筈のアンジェラがパソコンで何やら調べ物をしていたのを思い出したロバートは、自宅に戻り、アンジェラがプリントアウトしたものを手に入れる。アンジェラとシンディがハワイから戻るのに利用した旅客機の乗客名簿だった。アンジェラは、その内二人の名前に印を付けていた。 この二人が何か知っているのでは、と考えたロバートは、その内一人の住所を突き止め、訪ねる。すると、中で男性が死亡していた。印を付けられた名前の人物だった。 警察がやって来るのを察したロバートは、その家にあった散弾銃を失敬し、車に飛び乗る。 警察車両の追跡をどうにか振り切ったロバートだったが、自分の車を捨てざるを得なくなった。 そこへ丁度通り掛った車を運転していた女性を銃で脅し、かくまう様、頼む。 その女性は、戸惑いを見せながらもロバートを自宅に招き入れた。 ロバートは、これまでの経緯を、レイラと名乗った女性に説明。信じてもらえないだろうが、事実だ、と。 突飛な話を受け入れたレイラは、乗客名簿で印付けられていたもう一人の方から事情を聴くべきだ、と進言。 ロバートとレイラの二人は、その女性を訪れる。 ロバートは、女性から事情を聴くが、彼女は飛行中は寝ていたので、何も知らない、と答える。途中、飛行機が大きく揺れた事、妙な悪夢に悩まされた事くらいしか覚えていない、と。 その悪夢とはどんなものだったのか、とロバートが訊こうとした時点で、シンディが突如現れ、襲い掛かる。 ロバートは、散弾銃で反撃。 シンディは、アンジェラと同様、ロボットだった。散弾銃により破壊される。 ロバートが、乗客の女性から更に話を聞こうとするが、シンディの襲撃で既に死んでいる、とレイラが言う。 ロバートは、レイラを家に帰し、一人で職場に向かう。 職場で、ロバートは偶々いた上司に事情を端的に説明。アンジェラのパソコンを起動するが、データが全て消去されていた。 ロバートは、レイラの家に戻る。 レイラは、ロバートがシンディの残骸から回収した部品の一つを見て、知人の科学者なら、それが何か分かるかも知れない、と提案。 ロバートは、レイラと共に、科学者の家に向かう。 科学者の家に到着したロバートは、また違和感を抱く。 科学者の家には厩舎があったが、そこの馬がレイラを見て興奮し、暴れ出すのだ。アンジェラに対し吠え掛かった自分の犬を思い出させた。 ロバートは、科学者と対面。 すると、科学者の目が赤く光り出し、ロバートに襲い掛かる。 ロバートは反撃し、科学者にダメージを与える。すると、科学者は、壊れた機械となって、何やら喋り出す。自分らは「ダイナミタード」で、人類をダイナミタードに置き換え、征服するつもりだ、と。 ロバートが科学者の家を出ると、レイラがいた。彼女の目も赤く光る。 その時点で、騒ぎにより通報を受けた警察が駆け付ける。 レイラはその場を去った。 アンジェラを失い、仕事も失い、レイラにも裏切られたロバートの手元には、乗客名簿しか残らなかった。 乗客の中には、アンジェラやシンディの様にダイナミタードに置き換わった者、そして印付けられた二人の様に置き換わっておらず、殺しの標的となった者がいる。 乗客を虱潰しに訪ねていけば、謎を解明出来るかも知れない。 ダイナミタードを追う身である一方で、恋人を殺害した嫌疑で警察に追われる身でもあるロバートは、たった一人で事実解明の旅に出る。感想 旅客機でダイナミタードに置き換わってしまったアンジェラやシンディは、どうなってしまったのか。生きているのか、殺されてしまったのか。 ダイナミタードとは一体何なのか。何が目的なのか。 アンジェラが到着直後に話していたサングラスの男は何者か。 レーダーから消えていた1時間半の間、旅客機で何が起こったのか。 これらの謎は、今後放映されるテレビドラマで徐々に明らかになっていく! ……となる筈だったが、テレビドラマ制作にはいたらず、このパイロットだけで終わってしまった。 したがって、謎が解明される事は永久に無い(今更テレビドラマが制作される可能性はゼロ)。 1980年代に制作されたとあって、時代を感じさせるものになっている。 新聞記者なのにパソコンを使わない、というのは、現在では信じられないし、パソコンで検索するのがまるで物凄いスキルであるかの様に扱われるのも、違和感がある。 また、登場人物が交わす会話も、どことなく軽さがあり、1980年代のテレビドラマや映画特有のチープな雰囲気がある。 その一方で、街中でのカーチェイスを盛り込む等、テレビドラマにしては派手で、金が掛かっていて、この点はアメリカだな、と思わせる。 特撮のレベルは、現在からすると陳腐に映るが、当時のテレビ映画としては悪くはない方。寧ろ現在の日本の大作映画の方がレベルが低い。何故邦画は30年前のアメリカのテレビを超えられないのか。 ダイナミタードに置き換わった者が、目を赤く光らせて襲い掛かるのは、ターミネーターそのもの。 皮膚が剥がれるとその下から機械が現れるのも、ターミネーターそっくりである。 ターミネーターは1984年公開なので、制作者は「ターミネーター」を観て、それに「逃亡者」の要素を加えたストーリーを編み出したとしても、不思議ではない。 ターミネーターは並みの人間が倒そうとしても到底無理である一方で、ダイナミタードは素人でも散弾銃をぶっ放せば何とか倒せる。 数が多く、人間社会に溶け込んでいて、近親者でない限り怪しまれない、という点では、ダイナミタードの方が優れている。 ターミネーターはあくまでも「始末屋」で、ダイナミタードは「侵略者」という差が出ているらしい。「ダイナミタード」とは、19世紀のフランスやイギリスで暴力的な反政府活動を繰り広げた者の呼び名。 ダイナミタードの中には、爆弾テロを企てる者もいたというから、現在では「テロリスト」と称される輩が、当時は「ダイナミタード」と称されていたらしい。 何故本作でエイリアン/ロボットが自身を「ダイナミタード」と呼んだのかも、明らかにされない。 本作が放映されたのは1980年代半ば。 スターウォーズで始まったSFブームは、映画界だけでなく、テレビ界にも波及し、SFの要素を取り入れたテレビドラマが数多く制作されたが、1980年代も中頃になるとSFブームは鈍化。 そんな事もあり、金の掛かるのが予想出来るテレビドラマ制作に大手テレビ局は難色を示す様になり、本作もこのパイロットだけで終わる。 1年前の1985年に放映されていたら、ぎりぎりテレビドラマ制作に漕ぎ着けていたかも知れない。 その一方で、テレビドラマの制作が決定していたら、様々な謎が解明されなければならないし、複線も納得がいく形で纏める必要がある。 尻すぼみになっていた可能性も充分あり、それだったら「何一つ解明されない」というエンディングの方が寧ろ観た者の想像力を掻き立てるという面では良かったのかも。 主人公のロバートを演じたのは、マーク・リンゼイ・チャップマン。 ジョン・レノンを題材にしたNBCテレビのテレビ映画の為に、マーク・リンゼイの芸名でオーディションに挑み、レノン役を勝ち取ったが、本名がマーク・チャップマンと判明。 レノンを殺害した犯人と同名だった。 犯人と血縁関係は無く、偶然だったとはいえ、レノンを殺害した犯人と同名の俳優がレノン役を演じる事に元妻のオノ・ヨーコが難色を示し、撮影開始前に降板させられてしまう。 本作で主役になれたのは、その件を気の毒に思ったNBCテレビが起用を決めたからだという。 奇妙な事に、後に制作されたレノン暗殺を題材にした映画「チャプター27」で、彼はレノンを演じている。マーク・リンゼイ・チャップマン演じるジョン・レノンが、別の俳優が演じるマーク・デイヴィッド・チャップマンに殺されるという、奇妙な映画になった。スペース・サタン -HDリマスター版- [Blu-ray]価格:4673円(税込、送料別) (2020/7/3時点)楽天で購入
2020.07.03
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シルヴェスター・スタローンをアクション俳優に押し上げたランボーシリーズ第5弾。 第1弾が「ファースト・ブラッド」だったのに対し、本作は最終章である事を暗示する「ラスト・ブラッド」になっている。 原題は「Rambo: Last Blood」。粗筋 ベトナム戦争の退役軍人ジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)が、ビルマでの戦闘(「ランボー/最後の戦場」)の後、数十年振りに故郷アメリカ・アリゾナ州に戻ってから11年。 父の牧場を引き継いで生計を立てていた。 両親は亡くなっており、身寄りは無く、唯一家族と呼べるのは父の頃からの使用人マリア(アドリアナ・バラッザ)と、その孫娘ガブリエル(イヴェット・モンリール)だった。 そのガブリエルを、ランボーは実の娘同様に可愛がり、大学の学費を負担する事にも同意していた。 進学の為に近々アリゾナを後にする、というある日、ガブリエルが突然切り出す。 メキシコにいる事が分かった実父マヌエルに会いに行きたい、と。友人のギゼルが、見付けてくれたという。 それに対し、ランボーもマリアも反対。マヌエルは、ガブリエルの母親に暴力を振るい、ランボーに半ば追い出された、というのが実情だったからだ。ギゼルも素行は良くなく、信用出来ない。わざわざ会いに行くまでもない、と。 しかし、ガブリエルは、何故実の父親が音信不通になったのか、知りたかった。 ランボーとマリアの説得により、ガブリエルはメキシコ行きを一旦は諦めるものの、実父に会いたいという考えを捨て切れず、一人でメキシコに向かってしまう。 メキシコで、ガブリエルはギゼルと会い、マヌエルのアパートに案内される。 ガブリエルは、漸く実父との再会を果たすが、マヌエルは冷たく言い放つ。お前の母をどうとも想っていなかったし、お前についてもどうとも思っていないから、失せろ、と。 傷心のガブリエルは、気晴らしに、とギゼルに近くのクラブに連れて行かれる。 それから間も無く、ガブリエルがメキシコで失踪した、とマリアがランボーに伝える。 ランボーはメキシコに向かい、ギゼルに事情を聴く。 ギゼルは、クラブでいつの間にかはぐれてしまった、と証言する。ランボーは、それを額面通りに受け入れなかった。何故なら、ギゼルはガブリエルの腕輪を身に着けていたからだ。ランボーがそれについて問うと、ガブリエルがくれた、とギゼルは答える。腕輪はガブリエルの亡き母親の形見だったので、それは有り得ない、と考えたランボーは、ギゼルが失踪に絡んでいると読む。 ランボーは、ギゼルにガブリエルを連れて行ったクラブまで案内させ、そこでガブリエルに近付いていた男エル・フラコを特定させる。 エル・フラッコがガブリエルを誘拐し、人身売買のカルテルに引き渡した事実を突き止めると、ランボーはカルテルのアジトへ向かう。が、そこでカルテルに捕まってしまった。 カルテルを率いるウーゴ(セルヒオ・ペリス=メンチェータ)とビクトル(オスカル・ハエナーダ)のマルティネス兄弟は、ランボーの運転免許証とガブリエルの写真を奪い取り、この女を薬漬けにして売り飛ばす、と宣言する。 ランボーは、マルティネス兄弟の手下らにより暴行を受け、瀕死の状態で放置される。 ジャーナリストで、マルティネス兄弟を追っていたカルメン(パス・ベガ)は、一部始終を目撃していた。ランボーを自宅に連れ帰り、怪我が完治するまで世話をする。 一方、ガブリエルは麻薬を何度も投薬された後、売春宿に売られてしまった。 回復したランボーは、売春宿を襲撃し、ガブリエルを救出し、二人で国境へ向かう。 しかし、越境する直前に、ガブリエルは薬物の過剰摂取で死んでしまう。 ガブリエルを牧場の一角に埋葬したランボーは、復讐を誓う。 マリアを親類の元で身を寄せるよう促して彼女の身の安全を確保した後、ランボーは牧場に様々な罠を仕掛けて準備を整え、メキシコに戻る。 ランボーはビクトルの屋敷に忍び込むと、警備に当たっていた手下らを殺害し、一人残ったビクターを襲撃する。 翌日、ウーゴは、弟の首無し死体を目の当たりにする。 死体の傍には、ガブリエルの写真が添えてあった。 ウーゴは、ランボーに復讐する為、傭兵らを集め、国境を渡る。 ランボーの牧場にやって来たウーゴ一味は、襲撃を開始する。 ランボーは、牧場の地下に掘られたトンネルにウーゴ一味を誘い込む。 トンネルには、ランボーがベトナム戦争で体験した様々な罠が仕掛けられていた。傭兵らは、一人、また一人と罠にはまって致命傷を負い、ランボーに止めを刺される。 生き残りがウーゴただ一人となった時点で、ランボーはトンネルを爆破する。 ウーゴはトンネルから命辛々脱出し、ランボーがいる納屋へと向かう。 ランボーは、弓矢でウーゴを納屋の戸に貼り付けにして身動き出来ないようにすると、相手が生きたまま心臓を抉り出して殺す。 負傷していたランボーは、家のポーチに置かれたロッキングチェアに腰を下ろし、今回の戦いと、過去の戦いを回想する。感想 10年振りの続編。 ただ、演じているスタローンも70歳。 流石に70歳の老人が国家が絡む陰謀に挑む、という展開のストーリーは無理だと悟ったのか、今回の敵は人身売買を手掛ける犯罪組織という、これまでの戦いからすると小規模なものに。 主人公こそランボーだが、それ以外の登場人物はこれまでのシリーズ作とは全く関係が無い。 主人公をランボーにする必要があったのか、と思わないでもない。 新キャラにしてしまったら、製作の許可が下りなかっただろうが。 舞台がアメリカなので、前作や前々作とは異なり、比較的大人しく始まるが、矢張りランボーとあって、徐々に戦闘モードになり、最終的にはいくらアメリカとはいえこんな事やって大丈夫なのか、という死屍累々の結末に至る。 ランボーに何が何でも戦わせたいが故に、ストーリーはかなり強引。 天涯孤独でどこにも誰にも馴染めない筈のランボーが、牧場主として普通に働いていて、使用人とその孫娘と共に平和的に暮らしている、という姿には違和感を抱く。 ガブリエルは、本作で初めて登場するキャラ。ある日突然「メキシコにいる実父に会いに行く」と言い出して、ランボーらが必死に止めようとするのに一人で行って、悲劇に遭う。その悲劇も、実父に会いに行った事とは無関係で、ただ不運だっただけ。感情移入出来る前に退場するので、戦士としてのランボーを覚醒する為だけに登場する、使い捨てのキャラになってしまった。 メキシコに入ったランボーは、人身売買組織のアジトを早くも掴む。 さあ、どうやってガブリエルを救出するのかと思いきや、アジトへ何の手立ても無く向かって相手に捕まり、マルティネス兄弟の手下に大人しくボコボコにされるという、突っ込みどころ満載の行動。本当にランボーなのか、と疑ってしまう。 マルティネス兄弟に直接会って、「娘を返してほしい」と頼めば、「そうですか。分かりました。返してあげましょう」とでも答えてくれると思っていたのか。 この間の抜けた行動によりガブリエルは目を付けられ、見せしめとして薬漬けにされてしまう。 ランボーはその間意識を失っていたので、何の対応も取れない。 やっと回復してガブリエルを救出した頃には、全て手遅れ。 一番悪いのはマルティネス兄弟に違いないが、ランボーがもう少し慎重な行動を取っていれば、ガブリエルは死なずに済んだのに、と思ってしまう。 観方によっては、ランボーが自身を戦いに追い込む為ガブリエルを死なせた、とも捉えられる。 ウーゴ率いる武装集団が、メキシコ・アメリカの国境を超え、はるばるアリゾナにまでやって来て戦闘を繰り広げる、という展開も映画ならでは。 どうやって国境警備隊の目を掻い潜ったのかの説明はされない。 弟の惨殺死体の横に写真が添えられているのを見て、ランボーの仕業だと知り、アメリカに向かう訳だが、「さっさと来やがれ。待ってるぜ」と言わんばかりの挑発に、馬鹿正直に応えるウーゴの心理も理解し難い。 弟を殺されて冷静な判断が出来なかった、という事かも知れないが、相手が何らかの罠を仕掛けて待ち構えているだろう、くらいの考えは出来なかったのか。考えていたからこそ傭兵を雇い、重武装させ、それで襲撃すれば充分と判断したのか。 この程度の頭脳しか持たない輩が、人身売買のカルテルなんてよく切り盛り出来たな、と思う。この程度の頭脳しか持たないからこそ、人身売買のカルテルで一儲けしよう、と考えたのかも知れないが。 作中で、マヌエルとギゼルを、ランボーとマリアは悪人呼ばわりしていたが……。 ギゼルはガブリエルの腕輪欲しさにエル・フラッコに彼女を売り渡した様だが、それでもガブリエルが失踪した、とマリアに報告している。 この報告が無かったら、ランボーはガブリエルを見付けられなかっただろう。 ギゼルは善人ではないが、救いようのない悪人でもない。 同様の事は、マヌエルにも言える。 マヌエルは、実の娘を冷たくあしらうが、娘を嫌っていたというより、「折角アメリカで幸せに暮らしているんだから、こんな所に来るな」と心を鬼にして追い払ったのではないか。 これが親として娘に出来る最後の事だと。 そうでもなければ、顔を合わせた時点で「綺麗になったな。お前の母親を思い出す」なんて事は言わない筈。 ガブリエルが別れた後そのまま寄り道せずアメリカに戻らなかった事に、ショックを受けていた可能性もある。 単純過ぎるくらい単純なストーリー展開なので、上映時間も結構短い(劇場公開版は89分)。 シリーズの中では最短かも知れない。 もう一捻りしてランボー対マルティネス兄弟の戦いを引き延ばせなかったのか。 メキシコは、犯罪が横行していて、様々な社会問題が横行しているのは事実だが、たった一度の訪問で犯罪に巻き込まれてしまう程の危険地域でもなかろう。「メキシコ=犯罪国家」のステレオタイプに囚われ過ぎなのでは、と思わないでもない。 それを言ったら、アメリカだって犯罪者だらけの国に見えてしまう。「ファースト・ブラッド」の原作者デビッド・マレルは、本作には批判的。 マレルは、映画版第2弾では、ノベライズを手掛けているので、自作の映画シリーズ化には否定的ではなかった筈だが、流石に自身の手を完全に離れた状態で続編が次々作られ、その度に本人の名が掲げられる事には納得がいかないらしい(原作の小説では、ランボーは最後に死ぬので、映画が原作に忠実だったらそもそもシリーズ化はされない筈だった)。 マレルはその後も小説を発表しているが、結局「ランボーの原作者」と紹介されてしまう。 まさかこんな事になるとは、と映画化を了承した事を悔やんでいるとしか言い様が無い。ランボー [ リチャード・クレンナ ]価格:1100円(税込、送料無料) (2020/7/1時点)楽天で購入
2020.07.01
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マーベルスタジオによるスーパーヒーロー大作。 マーベルに於いて、数少ない黒人スーパーヒーローが主人公として登場する。 本作は、主人公や敵役は勿論、登場人物のほぼ全てが黒人。しかも、監督も黒人。 黒人スーパーヒーロー映画では、最も成功した作品となった。 原題は「Black Panther」。粗筋 遥か昔。 地球にヴィブラニウムと呼ばれる鉱石で出来た隕石が、アフリカ大陸に落ちてきた。 やがてアフリカで、5つの部族が戦争を始める。一人の戦士がヴィブラニウムの影響を受けたハーブを摂取し、超人的な力を持つ「ブラックパンサー」となった。彼の下に4つの部族が集結。 ワカンダが建国された。 残りの1つの部族であるジャバリ族のみ参加を拒否し、奥地に引きこもる。 ヴィブラニウムの恩恵により、ワカンダは高度な文明を持つ国家となる。が、ヴィブラニウムが外部の者により悪用されるのを恐れたワカンダ国は、高度に発展した地域をバリアで覆い隠し、外部の者が中に入れない様にする。世間的には、ワカンダは他国と交流を拒む遅れた農業国として知られる事となる。 1992年。 ワカンダ国王ティ・チャカは、アメリカに潜入していた弟のウンジョブを極秘裏に訪ねる。 ティ・チャカは、密偵ズリを通じ、弟がワカンダの武器を武器商人ユリシーズ・クロウに流していた事実を突き止めていた。それに関して、弟を問い詰める。弟をワカンダに連れ帰るつもりだったが、抵抗する姿勢を見せた為、意に反して亡き者にしてしまう。 ティ・チャカは、弟の遺体をその場に残し、立ち去るしかなかった。 2018年。 ヘルムート・ジモが起こした爆破テロによってティ・チャカが死亡。 ティ・チャカの息子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、アベンジャーズの仕業と誤認して彼らを相手に戦うが、直後に誤解だと知った後はアベンジャーズと協力し、ジモの野望を砕く(「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー」)。 戦いの後、ティ・チャラは新国王に即位する運びとなった。戴冠の儀式で、彼は王位を奪還すると名乗り出たジャバリ族の尊長エムバクを決闘で打ち負かす。 ワカンダは、ティ・チャラを新たな国王として迎えた。 ロンドン。 エリック・スティーブンズ(マイケル・B・ジョーダン)がクロウと結託して博物館を襲撃し、展示品を盗み出す。その展示品は、実はヴィブラニウムから鋳造されたものだった。 その情報を掴んだティ・チャラは、女性親衛隊長オコエ(ダナイ・グリラ)、工作員として活動する恋人ナキア(ルピタ・ニョンゴ)を連れ、裏取引が行われている韓国・釜山へと向かう。同じく潜入していたCIAのエヴェレット・ロス捜査官(マーティン・フリーマン)と手を組んでクロウを捕らえるが、取り調べ中にエリックの襲撃を受け奪還されてしまう。 ナキアをかばって重傷を負ったロスを救う為、ティ・チャラはロスを連れてワカンダへの帰国する事となった。 クロウの拘束を期待していたティ・チャラの友人で、4つの部族のリーダーの一人であるウカビは、落胆の色を隠せなかった。前国王が成し遂げられなかった事は、結局新国王も成し遂げられないのか、と。 ティ・チャラの妹シュリ(レティーシャ・ライト)がロスの治療に当たっている間に、エリックがワカンダ国に現れる。彼は手土産としてクロウの亡骸をウカビに引き渡し、国王との謁見を求める。 エリックの本名はウンジャダカといい、実はウンジョブの息子だった。王族の血縁者である為、王位継承権を持っていた。 エリックは父を失った後、兵士となる。その殺し振りから「キルモンガー」の異名を持つ様になった。祖国ワカンダの技術と武器を使って世界中のアフリカ系民族を迫害から救う為に帰還し、王位を求めて現れたのである。 別の王位継承者が挑戦を宣言した以上、決闘の儀式を再び行う必要があった。 決闘では、キルモンガーはティ・チャラを谷底に突き落とし、殺した。ついに王位を得たキルモンガーは、ブラックパンサーの力とスーツを得ると、ワカンダの武器を全世界の同胞へ輸送するよう命じる。 ナキア、シュリ、そして一命をとりとめたロスらは、奥地に引きこもるジャバリ族に援助を求める。 一行は、 尊長のエムバクに謁見。 エリックは王位を正々堂々と勝ち取った以上、自分は何も出来ない、とエムバクは突き放そうとする。 が、ナキアは言う。エリックが王の地位を固めたら、服従しないジャバリ族を征服に来るだろう、と。 それでも、エムバクは協力に難色を示す。 ナキアは、ブラックパンサーを生み出すハーブを差し出す。これでブラックパンサーとなって戦ってくれないか、と。 それを見たエンバクは、ナキアらを少し離れた洞窟に連れて行く。 そこで、一行は谷底に突き落とされて死んだと思われていたティ・チャラと再会。 谷底で仮死状態で発見されたティ・チャラは、エムバクによって保護されていたのだった。戴冠式の決闘では、本来敗者は死ななくてはならないが、ティ・チャラは負けを認めたエンバクを殺さなかった。その「借り」をエンバクは返したのだった。エンバクは、ハーブはそいつに使えばよい、と促す。 ハーブにより、息を吹き返したティ・チャラは、キルモンガーを倒すべく、再びスーツを着用する。 シュリとナキアは、ウカビと彼の軍隊に戦いを挑み、ロスはシュリのサポートを受けて航空機を遠隔操縦して兵器を搭載した輸送機を撃墜。 エムバク率いるジャバリ族も、ティ・チャラの援護に加わる。 ティ・チャラとキルモンガーの二人のブラックパンサーが、戦い合った。激戦の末、ティ・チャラはキルモンガーに致命傷を与える。 ティ・チャラは、命を助けやると持ち掛けるが、キルモンガーは拒否。投獄の身になるくらいなら死んだ方がマシだ、と。ティ・チャラの計らいで、父ウンジョブが昔話していた祖国ワカンダの美しい景色を眺めながら、キルモンガーは息を引き取った。 ワカンダ国王に復活したティ・チャラは、アメリカを再び訪れ、ウンジョブとエリックが住んでいたアパートを買い取り、ワカンダ国主導の支援センターにする、とシュリに語る。 ティ・チャラは、ワカンダ国が貧しい農業国でない事を国連での演説で明らかにした。感想 アメリカで製作される映画やテレビでは、一定数のマイノリティ(主に黒人)が登場しないと、差別的として批判されるらしい。 本作は、莫大な予算を投じた大作ありながら、黒人が登場人物の大半を占め、白人は殆ど登場しないという、珍しい作品。 アフリカ大陸の文化を、これぞとばかりに盛り込んでいる(中には実際のアフリカ大陸出身者からすると首を捻ってしまう描写もある様だが)。 これまでもキャストの殆どが黒人、という映画や、アフリカの文化を取り入れた映画は製作されているが、どちらかというと低予算のマイナーがものが多かった。 本作で、マーベルスタジオは大きな賭けに出た。 興行的にも、批評的にも成功したので、賭けには勝ったといえる。 アフリカの架空の発展途上国が、実は古来から高度な文明を誇る技術国だった……、という設定は、アフリカの現状からすると、荒唐無稽過ぎる感が無くも無い。 多少高度な技術を手にしたくらいで、他国を大幅に上回る文明を築けるなら、アフリカ大陸は現在大国として世界に君臨していただろう。 人類は、アフリカ大陸で誕生したのだから、その分ヘッドスタートが出来た筈。 アフリカ大陸が未だに混沌としているのは、技術の有無だけではない、というのを示している気がする。 ……という疑問はさておき、マーベルスタジオの作品とあって、派手なエンターテインメント映画に仕上がっている。 舞台もアメリカ、イギリス、韓国、架空の国ワカンダと、目まぐるしく変わり、それぞれで派手なアクションを繰り広げながらも、破綻せず、最後できちんと纏めている。 ハッピーエンドかどうかは不明だが、少なくとも期待を裏切る、胸糞悪いものにはなっていない。 この辺は、上手いとしか言い様がない。 主人公のティ・チャラは、国王でありながらスーパーヒーローとしても活躍するという、物凄いキャラ。 大富豪でありながらスーパーヒーローのアイアンマンや、バットマンの比ではない。 正体がばれる事無く活躍するのは、至難の業と思われるが、作中ではあっさりとやってのける。 国民の支持を一身に集める徳の高い国王であり、スーパーヒーローなので、とにかく「善人」そのもので、ダークな側面は一切無く、人格的な問題も抱えていない。 ダークな側面が好まれる最近の傾向からは外れていて、見方によってはつまらなく映る。が、最近は善人キャラの元祖だったスーパーマンも若干ダークに描かれる様になっているので、安心して観ていられる、という意味では非常に有り難い。 敵役のキルモンガーは、何百人も殺してきた悪党、との事だが、作中ではそうした描写は少ない。 あくまでも主人公ティ・チャラと敵対する意味での「敵役」で、ねっからの悪党、という印象は薄い。 ワカンダの技術を使って世界を征服する、という野望こそティ・チャラに打ち砕かれるが、「バリアの中で鎖国状態を続け、外の世界で同じアフリカ系民族が苦しむ姿を傍観するのは罪だ」という彼の思想は、ティ・チャラに大きな影響を及ぼし、ワカンダ開国に至るのだから、キルモンガーの野望は形を変えてティ・チャラに引き継がれたと言える。 キルモンガーがそこまで考えていたとは思えないが。 ティ・チャラは、ワカンダの鎖国を頑なに守ろうとしたが故にキルモンガー誕生のきっかけを作ってしまった実の父親で、前国王のティ・チャカの考えは間違いだった、と決め付け、ワカンダ開国を決断する。 ワカンダの高度な技術を使えば、世界中のアフリカ系民族を救える、と。 作中では、歴代国王の考えは改められて当然で、若き新国王の考えこそ正しい、という風に描かれているが……。 現実問題として、そうなのか。 ワカンダが高度な文明を築けたのは、ヴィブラニウムがもたらした技術もあるが、その技術の悪用を防ぐ監視の目が行き届く規模の国だったからではないか。世界に拡散したら、監視の目は行き届かなくなる。 純粋な善意も、上手くやらないと悪意を持った勢力に利用されるだけ。 ヴィブラニウムがもたらす技術は、人類を救うどころか、ますます破滅の道に突き進ませ、折角平和に繁栄していたワカンダも脅かされる可能性が高い。 ティ・チャラは、次第にその現実を思い知らされ、失望し、正しかったのは歴代国王で、間違っていたのは自分だった、と気付かされるのではないか。 事実、王位継承者でありながらも外部の世界で暮らしていたキルモンガー一人がワカンダに現れた途端に、平和を維持していたワカンダは好戦的になり、短期間ながらも内乱に陥った。 外部との接触が増えたら、ワカンダはますます混乱に陥る可能性がある、とティ・チャラは考えなかったのか。 そもそも、歴代国王全てが鎖国を支持していたとは思えない。過去にも開国を目指した国王はいたが、外の世界との交流に失敗し、鎖国に戻っていた、となっていたとしても不思議ではない。 その意味では、ワカンダ国の行く末が気になる。 架空の国なのに。 本作では、韓国が舞台の一つとなっている。 韓国で、派手なカーチェイスを繰り広げる。 韓国の街中で実際にどこまで撮影されたのかは不明だが、韓国がこうした大作で舞台として取り上げられるのは羨ましい。 これまで、ハリウッド映画で日本が舞台になる機会は幾度もあった様だが、街中での撮影許可が下りず、日本を舞台にしながらも撮影は日本以外で行われるのが多かったらしい。 そんな事が続き、日本が舞台として描かれる事すらなくなっている。 日本にも各地にフィルムコミッションが設立され、映画撮影を誘致しようとしているが、ハリウッド映画の様な大規模な撮影の許可は下りず、低予算の邦画に留まっている。 日本政府はクールジャパンだの称して、日本のしょぼいアニメを海外に売り込んで、日本という国を必死にアピールしているが……。 それより、マーベル映画を制作者側の思うままに日本で撮影出来る様、手続きし、後押し方が余程発信力があると思うが。 冒頭で、隕石が遥か昔の地球に落下する場面が描かれていたが……。 その地球の大陸が、現在の地球の大陸と同じだったのは解せない。 僅か数万年前の地球の姿と、現在の地球の姿も、結構異なるのに。 それとも、ヴィブラニウムを含んだ隕石が地球に落下してきたのはほんの数千年前の事だったのか。 どっち道、マーベル映画はこういう詰めの甘さがある。ブラックパンサー MCU ART COLLECTION(Blu-ray)(数量限定) [Blu-ray]価格:2770円(税込、送料別) (2020/6/28時点)楽天で購入
2020.06.28
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フランス出身の映画監督リュック・ベッソンによるバイオレンスアクション。 特に日本でベッソンの名を一躍有名にした。 本作を足掛かりに、ベッソンはハリウッドとは一線を画したエンターテインメント大作を手掛ける様になる(実際には、本作はフランス・アメリカ合作となっていて、半分ハリウッド映画だが)。 アクション映画は何もハリウッドの専売特許ではない、という事を示し、フランスを初め、様々な国の映画作りに影響を及ぼしている。粗筋 ニューヨーク。 イタリア系移民のレオン(ジャン・レノ)は、プロの殺し屋。表向きはイタリア料理店のオーナーだが実はイタリア系マフィアのボスであるトニー(ダニー・アイエロ)からの依頼を遂行する日々を送っていた。 ある日、レオンは、アパートの隣室に住む少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)と知り合う。マチルダは寄宿学校に通っていたが、馴染めず、自宅に逃げ戻っていた。しかし、自宅では実父と異母姉から虐待を受け、継母からは無視されていた。唯一心を開けるのは幼い異母弟のマイケルだけだった。 マチルダの父親の元を、麻薬密売組織のスタンスフィールド(ゲイリー・オールドマン)が訪ねる。預けた麻薬をくすねているだろう、と。 マチルダの父親は否定するが、スタンスフィールドは「だったらくすねた奴を明日の正午までに差し出せ」と言い残し、その場を一旦去る。 マチルダの父親は、麻薬をくすねたのは不味かったと後悔しつつも、何の手も打たず、翌日の正午を迎える。 スタンスフィールドは、仲間を引き連れ、戻って来た。 マチルダの家族は、4歳のマイケルを含め、問答無用で射殺される。 レオンの使いに出ていたマチルダは、運良く殺害現場に居合わせずに済んだ。買い物袋を抱えて戻った彼女は、自分の家族が何らかの理由で標的にされた事を察する。自分のアパートの前を素通りし、レオンのアパートに向かい、そこが自分の住いであるかの様に装って、彼に助けを求める。 レオンは、仕方なく彼女をアパートに入れ、保護する。 マチルダは、レオンが殺し屋だと直ぐ知る。だったら、異母弟を殺した奴らを殺してくれと頼むが、彼は拒否。相手がでか過ぎる、と。 マチルダは、それなら自分に殺しの技術を伝授してくれ、と頼む。レオンはこれも拒否し、命はとりあえず助かっているんだから、出て行ってくれ、と突き放す。が、マチルダはレオンが読み書きが殆ど出来ないと知ると、勉強を教えてやるから一緒に住ませて、と言い出し、勝手に同居する。 レオンは、勉強を教えてもらう代わりに、殺しの技術をマチルダに教えるようになる。 ある日、マチルダはスタンスフィールドを街中で見掛ける。憎き相手が何者なのか探る為、後を付けると、麻薬取締局に辿り着いた。 スタンスフィールドは、麻薬取締官の身でありながら、麻薬密売を指揮していた。彼だけでなく、麻薬取締局全体が密売に絡んでいた。 マチルダは、その後麻薬取締局に侵入するが、スタンスフィールドに察知され、捕まってしまう。 マチルダの置き手紙を読んでいたレオンは、麻薬取締局へ乗り込み、スタンスフィールドと共に麻薬を密売をしていた取締官数名を射殺し、拘束されていたマチルダを救出した。 スタンスフィールドは、トニーの元を訪れる。トニーを介してレオンに殺しを依頼していたのは、実は彼だったのだ。彼は、トニーに訊く。イタリア系の殺し屋が麻薬取締局で取締官を殺した、何か情報を掴んでいないか、と。 トニーは、それはレオンだと認めざる得なかった。 スタンスフィールドは、市警の特殊部隊を総動員し、レオンのアパートに突入させる。 多勢に無勢のレオンは、とりあえずマチルダをアパートから脱出させる。トニーの店で会おう、と。 レオン自身は銃撃戦の末、負傷した特殊部隊員を装って脱出を試みる。アパートの出口から見えてきたところで、スタンスフィールドに見破られ、背後から撃たれてしまう。 スタンスフィールドは、レオンに止めを刺そうと近付く。 瀕死のレオンは、「マチルダからの贈り物だ」と呟き、スタンスフィールドに何かを手渡す。 スタンスフィールドはそれを確認する。手榴弾の安全ピンだった。その時点で、レオンが無数の手榴弾を抱えている事に気付く。 レオンは、スタンスフィールドを道連れに、爆死する。 一人残されたマチルダは、トニーに殺し屋の修行をさせてくれと頼むが、にべもなく断られる。 レオンの遺産は、彼の遺志により、トニーが管理して少しずつマチルダに渡される事になった。 マチルダは寄宿学校に戻り、レオンの形見となった観葉植物を校庭に植える。感想 それまではあくまでもフランス映画の監督だったリュック・ベッソンを、世界的な映画監督に押し上げた作品。 フランス人俳優のジャン・レノが日本で知れ渡るきっかけとなった作品であり、ナタリー・ポートマンを一躍有名にした作品でもある。 アメリカのニューヨークを舞台としているが、監督がフランス人とあって、アメリカ人からすれば「ニューヨークも流石にここまで酷くはない」という描写になっている。 麻薬取締局の一取締官が、麻薬の密売を取り仕切り、地元マフィアと結託し、好き勝手に殺し捲る、という設定も荒唐無稽。 ベッソンは、「ニューヨーク=犯罪者が跋扈する無法地帯」という妄想を抱いていたらしい。 アメリカの実情を知らなかったフランス人だからこその設定といえる。 2時間ちょっとの映画なので、ストーリーを展開させるのが精一杯で、登場人物それぞれの背景は不明のままになっている。 主人公のレオンはイタリア出身。ある女性と恋仲になったが、それをよく思わなかった女性の父親が、実の娘を射殺。その父親は地元の名士だった為、殺人は事故として処理され、たった数日で釈放されてしまう。レオンは、恋人の父親を遠距離から狙撃して殺し、その日の内に船に乗ってアメリカへ渡る。19歳の時。アメリカに着いた彼は、トニーに拾われ、殺しの腕を磨き、殺し屋として生計を立てる事になった、という過去が明らかにされている。 ただ、レオンがどうやって殺しの技術を身に着けたのかは、特に説明されない。様々な銃器を扱え、重武装した複数の敵をたった一人で難無く倒せるので、軍歴があるのかと思ってしまうが、そうだとすると読み書きがまともに出来ないのは有り得ない。 また、冒頭の戦闘では神出鬼没で無敵に思えるのに、ラストの戦闘では結構手こずり、負傷するので、殺し屋としての腕がどこまで凄かったのかも結局不明。 並みの殺し屋だったら冒頭で一人で何人も相手にする無謀な事はしないし、無敵の殺し屋ならラストで善戦して何とか切り抜けてほしかった。 マチルダに翻弄される為だけに創造されたキャラといえる。 敵役のスタンスフィールドは、麻薬取締官でありながら麻薬密売組織を仕切っているという人物。 マフィアとも繋がりがあり、殺し屋に敵対勢力の始末も依頼していた。 麻薬密売は当然ながら違法なので、そちらの行動は目立たない様、慎重に動く必要があると思われるのに、白昼堂々自ら銃を乱射して人を殺し捲る等、無鉄砲そのもの。 ただの麻薬密売組織の幹部なら、無鉄砲な言動も有り得るが、一応麻薬取締局の捜査官という表の顔があるのだから、ここまで勝手に動けないと思うのだが。 作中では、内部監査こそ受けるが、形だけで、特に追及されない。監査官を前にしても本能に任せて喚き散らすので、普通だったら「こいつはどう考えても怪しい」と見なされてもおかしくないのに。 一麻薬取締官が何故ここまで大胆に行動出来たのか、一切説明されない。 言動からして、人望がある様にも思えないので、一体どうやってのし上がったのか、と思う。 スタンスフィールドを演じたゲイリー・オールドマンは、本作の怪演振りで、優男っぽい容姿にも拘わらず、様々な作品で悪役を演じる様に。 年を取ってから、善役を演じているのが観られる様になった。通常の俳優とは逆パターン。 もう一人の主人公は、マチルダ。 見た目も悪くなく、機転が利くので、もっとマシな人生を歩めそうなのだが、自暴自棄な性格が災いしてか、やって来る幸せを自ら遠ざけている。 実父や継母や異母姉が嫌っているのだから、寄宿学校にいれば顔を合わせなくて済むのに(嫌いな親が寄宿学校の費用を負担して、顔を合わせないで済む様にくれていた)、そこにも馴染めず、実家に戻り、嫌いな実父らに虐待されて「自分は不幸」と嘆く。 12歳の少女だから仕方ないのかも知れないが、あまりにも自己中心的。映画の登場人物として興味深いキャラではあるが、同情や共感は出来ない。 レオンをそそのかしてスタンスフィールドらを始末させ、彼を死に追いやりながら、自身は何事も無かったかの様に寄宿学校へ戻り、学生としての生活を再開する、という結末は、「レオンは結局最初から最後までマチルダという小悪魔に振り回されただけ」といった感想しか思い浮かばない。 スタンスフィールドの暴走振りからして、いずれレオンは破滅の道を歩んでいただろうが、マチルダがそれを加速させた。 レオンも、マチルダと出会っていなかったら、もう少し上手く立ち回っていただろうに、と思ってしまう。 ラストで、マチルダはレオンが大切にしていた鉢植えの観葉植物を、寄宿学校の校庭に植え替えている。 マチルダからすれば、レオンに対するせめての償いのつもりなのだったのだろうが……。 芝生のど真ん中に、囲いの無い状態で植えたら、芝刈りの際に刈られてしまうだろうに、と思ってしまった。機転が利くマチルダにしては、間の抜けた行動。 一連の事件を乗り越えたマチルダは、今後まともな人生を歩むのか、というとそうも思えず、結局どんな大人に育つんだろう、と思う。 マチルダを演じたナタリー・ポートマンは、本作では子役だったが、順調にキャリアを重ね、スターウォーズ・シリーズ等の大作映画にも出演。子役から女優へ、評判を落とす事無く転向出来た数少ない例となった。演じていたキャラは破綻しているのに、それを演じた子役が成功するのは、皮肉(逆パターンはいくらでもある)。 本作の裏の主役は、トニーといえる。 表向きはイタリア料理店のオーナーだが、実はイタリア系マフィアのボス。 スタンスフィールドは、作中では最早どちらが表の顔で、どちらが裏の顔なのか分からなくなってしまっていたが、トニーに至っては、作中では裏の顔をしっかり隠していた。 最大の勝者は、トニーだろう。 麻薬取締局の一員という表の顔を持つ事から迂闊に手を出せないスタンスフィールドと、その一味を始末する事に成功。 気にかけていたレオンこそ失うが、それ以外の損害は被っていない。 厄介者のスタンスフィールドが抜けた事によって出来た穴を埋め、勢力拡大を図れるだろう。 こうなる事を見越して、レオンにスタンスフィールド一味の麻薬精製拠点を潰させ、スタンスフィールドにレオンの居所を教えたとも考えられる。 その意味では、スタンスフィールド以上に狡猾かつ冷酷な人物。 マフィアは結局マフィア、て事か。 劇場公開された「不完全版」では、マチルダの弟(4歳という設定)が射殺される場面が挿入されていたが、あまりにも衝撃的という理由で、「完全版」では割愛されている。「完全版」は、刺激が大き過ぎるという理由で劇場公開版ではカットされてしまったいくつかのシーンを復活させたバージョンの筈だが、スタンスフィールド一味による一家殺害シーンは、「不完全版」より若干トーンダウンされているのは、皮肉である。【中古】レオン 完全版 アドバンスト・コレクターズ・ED 【DVD】/ジャン・レノDVD/洋画アクション価格:1358円(税込、送料別) (2020/6/26時点)楽天で購入
2020.06.26
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アメリカのスペースオペラ『スター・ウォーズ』シリーズに於ける実写映画本編の第9作品目。 レイを主人公とする続三部作(シークエル・トリロジー)の第3章『エピソード9』に当たる。 また、旧三部作と新三部作を合わせた合計9本の「スカイウォーカー・サーガ(英語版)」を締めくくる完結編でもあるとされている。 監督は、続三部作の第1章「フォースの覚醒」を手掛けたJ・J・エイブラムス。粗筋 30年前に死んだ筈の銀河帝国皇帝パルパティーンが、実は生きている、という噂が銀河を駆け巡る。 銀河帝国の残党から強大な武装組織へと成長したファースト・オーダー。その新指導者となったカイロ・レン(アダム・ドライバー)は、真偽を確かめる為、奔走していた。 カイロは、自分こそ銀河の支配者に相応しいのであり、今更パルパティーンの亡霊に邪魔されたくない、と考えていたのである。 シスのナビゲーター(ウェイファインダー)を手に入れたカイロは、星図に載っていない惑星エグゼゴルへ向かう。そこには、シスの古代寺院があった。 古代寺院では、パルパティーンらしき肉体が機器により生かされていた。その肉体は、カイロに語り掛ける。ファースト・オーダーを裏から操り、カイロをダークサイドへと誘ったスノークを作り上げたのは、自分である、と。 カイロは自らの意思でスノークを倒し、新指導者としてファースト・オーダーを率いていたと信じて疑っていなかったが、それも全て自分の思惑通りだった、と肉体は語る。 カイロは激昂し、肉体を破壊しようとするが、肉体は極秘に建造を進めていたスター・デストロイヤーの大艦隊の存在を明らかにする。自分の要求を呑めば、この大艦隊はお前のものだ、と。 その要求とは、レイを探し出し、殺す事だった。 一方、レイ(デイジー・リドリー)は、レジスタンスの指導者であるレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)の下でジェダイとしての修業を続けていた。 フィン(ジョン・ボイエガ)とポー・ダメロン(オスカー・アイザック)は、ファーストオーダー内部に潜入しているスパイから、ある情報を受け取る。 パルパティーンが惑星エグゼゴルで生きているというものだった。しかし、情報はそれだけで、星図には存在しない惑星の行き方までは分からない。 レイは、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)が残したノートにより、シスのウェイファインダーさえ手に入れればエグゼゴルに行く事が出来る、というのは知っていた。それについてレイアに話すと、レイアは惑星パサーナの協力者が手助けをしてくれるだろうと告げる。 レイ、フィン、ポー、チューバッカ、BB-8、C-3POは、惑星パサーナへと出発した。 惑星パサーナで、一行は反乱軍の将軍で、レイアとは旧知の間柄であるランド・カルリジアン(ビリー・ディー・ウィリアムズ)と出会う。ランドはシスのウェイファインダーの手掛かりがありそうな場所を指摘した。 カイロは、フォースの繋がりを通じてレイの居場所を突き止め、そこへ出向いた。 レイ一行は、ランドが示した場所に到着。帝国から重要情報を盗み出したオーチという人物の宇宙船だった。宇宙船には、ウェイファインダーの隠し場所をシスの言葉で示したダガーナイフがあった。 数百万の言語を理解出来るC-3POなら、直ぐ読めると思われたが、シスの言語を翻訳する事はプログラム的にブロックされ、出来ない、とC-3POは告げる。 そこへ、カイロが現れる。 レイは彼と対決するが、その隙にダガーナイフを奪われてしまう。 レイ一行は、ダガーナイフを手に入れられないまま、惑星パサーナから逃走する。 ウェイファインダーを手にする手立ては完全に失われてしまった、と思われていたが、C-3POの記憶装置に、ダガーナイフの言葉が残っていた。 それを引き出す為、ポーは惑星キジミへ行く。惑星キジミには、ポーの昔の仲間がいた。彼らの助けにより、C-3POの記憶から、ウェイファインダーのある在処を引き出す。惑星ケフ・ビァにある、との事だった。 その時点で、レイはカイロと再会。 カイロは、レイの正体を、彼女に教える。 レイは、両親に幼い頃捨てられ、苗字は無いと思っていたが、実は、彼女はレイ・パルパティーンだった。皇帝パルパティーンの孫娘だったのだ。レイの両親は、皇帝に娘を渡すべきでないと考え、娘を惑星ジャクーに隠した後、居場所を教える事を拒否された皇帝に殺害されていた。、 ポーとフィンとチューバッカは、ファースト・オーダーに捕らわれ、処刑を命じられる。そこに現れたのは、カイロ・レンの副官の役割を務めていたハックス将軍だった。ハックス将軍は、ポーらを解放。 何故こんな事を、とポーが唖然としていると、ハックス将軍は言う。パルパティーンが惑星エグゼゴルにいるという情報を流したスパイとは、自分だ、と。ハックス将軍は長年ファースト・オーダーに忠実だったが、カイロ・レンと対立している内に、レジスタンスに積極的に協力したくはないものの、カイロ・レンをとにかく邪魔したい、と思うようになっていたのだ。 レイ一行は、ハックス将軍の助けもあり、惑星キジミから脱出する。 ハックス将軍は、レイ一行に抵抗され、怪我を負ってまで阻止しようとしたが逃げられてしまった、と弁解するが、上官であるプライド元帥にそんな猿芝居は通用せず、スパイとして処刑されてしまう。 レイ一行は惑星ケフ・ビァに到着。 レイは、海に横たわるデス・スターの残骸にウェイファインダーがあると考え、そこへ向かう。 皇帝の玉座の間で、ウェイファインダーを見付けるが、カイロ・レンが姿を現す。彼は、レイが見付けたウェイファインダーを破壊した上で、パルパティーンに彼がとって代わる手助けをしてほしい、とレイに頼む。 自身がパルパティーンの血を引いていると知ってしまったレイは、一瞬迷うが、カイロとライトセイバーを交えて戦う。 カイロがレイを圧倒し掛けた時点で、カイロは母親であるレイアの声を聴く。レイアが、フォースの力で、遠く離れた惑星から息子に話し掛けたのだった。 カイロが気を取られた隙に、レイは彼に致命傷を与える。 カイロはそのまま死ぬかに見えたが、レイがフォースを使って傷を治し、蘇生する。 レイは、カイロの戦闘機を奪い、ルークの零体がいる惑星オク=トーへ逃れる。 一方、残されたカイロは、父親ハン・ソロ(ハリソン・フォード)の記憶と語り合う。ベン・ソロとしての自分を取り戻し、ダークサイドの象徴である自身の赤いライトセーバーを海に投じる。 レイアは、それを見届ける様に、息を引き取った。 惑星オク=トーに到着したレイは、ルークと同様、身を隠して一生を終える覚悟を決める。 パルパティーンの血を引く者が、世に出てはならない、と。 その時、ルークの霊体が現れ、レイに告げる。お前は自分と同じ過ちを犯すべきでない、パルパティーンと対決して倒すのがお前の運命だ、と。 ルークの霊体の導きで、レイはレイアのライトセイバーと、ルークの旧型のXウイングを手に入れる。 レイは、カイロが持っていたウェイファインダーを使い、エグゼゴルへ向かった。その際、レジスタンスが後を追える痕跡を残す。 シスの古代寺院で、レイは祖父であるパルパティーンの肉体と対面。 肉体は、お前の両親を殺したのは我だ、その憎しみの心を抱いたまま我を殺せ、そして女帝として銀河を支配しろ、と嗾ける。 そこへ、ベンが現れ、二人でパルパティーンと対決するが、パルパティーンは彼らの力を吸い取り、復活する。パルパティーンはベンを地の底に突き落とし、レイも殺そうとする。レイは、ルークとレイアのライトセイバーを使い、パルパティーンを倒すが、力を使い果たし、命を落とす。地の底から這い上がったベンは、フォースの力を使い、レイを蘇らせる。ベンは、レイが息を吹き返したのを見届けると、そのまま倒れ、消滅する。 一方、レイが残した痕跡を辿ってエグゼゴルにやって来たレジスタンスは、苦戦しながらもパルパティーンの艦隊を壊滅させた。 全てが終わった後、レイは惑星タトゥイーンにあるラーズ夫妻の住居跡を訪れる。ルーク・スカイウォーカーが育った場所だった。レイは、レイアとルークのライトセーバーは住居跡の敷地に埋めた。通りがかりの者に名を聞かれて、彼女は「レイ・スカイウォーカー」と名乗る。感想 本作では、旧三部作の最終章で死んだ筈の皇帝パルパティーンが再登場。 ベイダーに殺されたパルパティーン本人ではなく、クローン技術で再生された別の肉体であるらしい。 スターウォーズの世界では技術が進んでいる為、これくらいは有り得なくも無いが、シリーズ最大の敵がこうも簡単に復活出来てしまうと、またどこかで復活するんだろうな、という疑念は拭えない。 復活するパルパティーンだが……。 やる事が、30年前と全く同じ。 強力な兵器(デス・スター)を作り上げて、恐怖により銀河を支配する、という計画は失敗したのだから、次は全く別の方法で銀河を支配してやろう、という発想は浮かばないのか。 スターウォーズの世界を観る限り、中央集権的な帝国やファースト・オーダーでも、辺境の惑星にもなると完全に掌握する事は出来ず、地元住民が好き勝手にやって下層の民を虐げている印象がある。 巨大な人工衛星や大艦隊を建造する兵站、経済力、そして組織力があるなら、全銀河を巻き込む一大公共事業でも始めて、何百億の民を雇用し、満足に生活出来る様にすれば、恐怖なんかに頼らなくても、民は熱狂的に帝国やファースト・オーダーを支持するだろう。無論、レジスタンスや共和国等目もくれなくなる。 何故「前回の巨大兵器は失敗に終わったから、次はより大きな兵器を作ろう」という発想に走ってばかりいるのか。 仮にまた復活するなら、今度はもう少し頭を使って銀河を支配してほしい。統率力はあるのだから、良い方向に向かえば、寧ろ偉大な皇帝になれるだろうに(帝国やファースト・オーダーが強大な勢力になれたのも、巨大兵器の建造により莫大な雇用を生み出し、一部から熱狂的に支持されている、という映画では取り上げられていない功績があるのかも知れないが)。 レイの正体は、パルパティーンの孫娘、という事実が本作で明らかにされる。 フォースの力がやけに強いので、それなりの家系なのでは、という思いはあったが、パルパティーンの血を引いている、という展開になるとは予想していなかった。 展開としては強引過ぎるのでは、と思わないではない。パルパティーンに普通に息子夫婦がいて、更に孫もいた、という所帯めいた様子は、旧三部作・新三部作では全く匂わせていないし、続三部作でも第二章までは「レイの両親は何でもない普通の人間で、酒代欲しさに娘を売り飛ばした」という設定になっていた。 ただ、最終章に持って行くには止むを得ない措置といえる。 レイは、続三部作では疑いなく主人公だが……。 魅力的な主人公か、というと疑問が。 ルーカスフィルムを買収したディズニーが、「我々ディズニーは女子を主人公とする3Dアニメを制作する事で大成功を収めてきた。スターウォーズでも、女子を主人公にすれが大成功を収めるだろう。スターウォーズシリーズとはあまり縁が無かった女性の鑑賞者を掘り起こせるし、腐ってもスターウォーズなんだから、これまでの男性ファンは文句を言わずに観てくれる」という甘い観測で設定されたキャラとしか映らない。 レイを全く登場させず、ベン・ソロがライトサイドとダークサイドの狭間で苦悩しながらダークサイドを負かしていく、といった模様を描いていた方が、女性の市場開拓は無理でも、昔からのファンからは支持されていたと思われる。 万人向けを目論んで、万人から支持されないのは、皮肉。 スターウォーズシリーズは、登場人物が多い為、一作で重大な役割を果たしていた登場人物が、次の作品では殆ど登場しない、というのも多い。 第二章でフィンと共に大活躍したローズは、本作ではポツポツと顔を出す程度に留まっている。ローズの受けがイマイチだった為(演じていた女優ケリー・マリー・トランは東洋系という事で起用されたと思われるが、お世辞にも美人とは言えなかった)、止むを得ない措置だったのだろうが、ここまで雑な扱いをされると、ちょっと同情してしまう。 続三部作の第一章と第二章でファースト・オーダーのトップに近い人物だったハックス将軍も、本作ではプライド元帥という人物が登場する運びになった為、お役御免となってしまったらしく、レジスタンス側に通じるスパイという地位に蹴り落され、呆気無く処刑されてしまっている。 第一章では新共和国の中枢を殲滅するという悪行を指揮する程だったのに、何故ここまで落ちぶれてしまったのか。 続三部作では、第一章で旧三部作の主人公の一人だったハン・ソロが死ぬ。 第二章では、ルークが死ぬ。 第二章公開時では、第三章でレイアが死ぬのが自然の流れとなったが、第二章公開直後に、レイアを演じていたキャリー・フィッシャーが急死。 第三章は、レイアというキャラは生きているものの、演じている女優が死去しているという事態をどう打開するのかと思っていたが……。 続三部作の撮影で使われなかったシーンを編集して、レイアを作品の後半まで登場させる、という離れ業を成し遂げている。「実はキャリー・フィッシャーはとうの昔に死去している」という事実を知らないまま本作を観終える観客も多かったのではないか、と思ってしまう。 ここまで編集出来るという事は、映画制作では日の目を見る事無くカットされるシーンは多い、というのが分かる。 復活したパルパティーンと、裏から操っていた武力組織ファースト・オーダーを倒した事で、銀河には平和が戻った、めでたしめでたし、で終わっているが……。 果たしてめでたしめでたしなのか、疑ってしまう。 エピソード6でダースベイダーと皇帝をレジスタンスが倒した時は、レジスタンスにはリーダーが何名もいて、、銀和共和国がここから構築されていくんだな、と予感出来た。実際、エピソード7では、一応銀河共和国が成立した事になっている(ファースト・オーダーにより呆気無く壊滅させられるが) が、今回、ファースト・オーダーこそ倒せたが、勝利したレジスタンスが銀河に秩序をもたらせる体制を構築出来るか、というと疑わしい。 レジスタンスの主要メンバーは前作で描かれた戦いで死亡しており、本作では唯一生き残っていた長老的な存在のレイアが死去。経験が浅く、カリスマ的とはお世辞にも言えないポーが、「将軍」に祭り上げられるくらい人材が不足している。 レジスタンスが銀河を纏め切れず、各惑星がそれぞれ好き勝手にやり、一つの「共和国」となる事無く、無数の勢力が互いに争う戦国時代に突入し、それが永遠に続く、という展開になりそう。 その模様が描かれる作品の制作は有り得なさそうだが。 本作は、40年にも及ぶシリーズの最終章、という事らしい。 ルーカスフィルムを買収し、スターウォーズフランチャイズを手に入れたディズニーは、続編を制作し続けるつもりだったが、制作費の割には興行収入が見込めず、鑑賞者の評価もイマイチだった為、打ち止めにするのが適切と考えたらしい。 本作の続編こそ制作されないものの、サイドストーリーやスピンオフは様々な媒体で公開されるので、シリーズが完全に終わる、という事ではなさそうである。スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け オリジナル・サウンドトラック [限定盤][CD] / サントラ (音楽: ジョン・ウィリアムズ)楽天で購入
2020.01.04
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「ターミネーター:ニュー・フェイト」は、ターミネーターシリーズの1作。 ターミネーターシリーズ生誕35周年記念作品でもある。 シリーズの生みの親ジェームズ・キャメロンが製作に復帰しており、本作は第2作のターミネータ2の正統な続編と位置付けられている。そんな事もあり、本作ではこれまで製作されてきたターミネータ3やそれ以降の「続編」は無かった扱いとなるらしい。 アーノルド・シュワルツェネッガーが引き続きターミネータT-800を再度演じる。 また、第1作と第2作に出演したリンダ・ハミルトンもサラ・コナー役で復帰している。 更に、ターミネータ2でジョン・コナーを演じたエドワード・ファーロングが、デジタル加工により、ターミネータ2の時の少年の姿で登場する。 監督はティム・ミラー。 原題は「Terminator: Dark Fate」。粗筋 1998年に、T-1000型ターミネーターとの死闘を制し(ターミネータ2)、スカイネットの台頭を阻止してから3年。 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)と、10代後半にまで成長していたジョン・コナー(エドワード・ファーロング)は、メキシコのビーチにいた。 そこへT-800型ターミネーターが突然現れ、サラの目の前でジョンを射殺する。 審判の日は回避されていたが、スカイネットが存在した時間軸が消滅される前に未来から送り込まれたターミネータがもう一体現存していたのだった。 サラは、審判の日を阻止して数十億人を救ったものの、自身の息子は結局救えなかった。 任務を完遂したT-800はそのままビーチを後にし、サラの前から姿を消す。 2020年。 メキシコに、2体が未来から送り込まれた。 1体は、T-1000を遥かに凌ぐ能力を持つ新型ターミネーター REV-9(ガブリエル・ルナ)。 そしてもう1体は、ターミネーターの製造過程で生み出されたサイバネティクス技術を、抵抗軍が人体に応用した強化人間グレイス(マッケンジー・デイヴィス)という女性だった。 REV-9は到着から間を置く事無く、ダニエラ(ダニー)・ラモスという女性の家に出向かう。 ダニーは留守だった。REV-9は代わりに応対した父親を殺し、家の中を物色。ダニーが弟のディエゴと共に近くにある工場に勤務している事実を突き止める。REV-9は、自身の変身能力を使い、工場内に侵入する。 一方ダニー(ナタリア・レイエス)は、ディエゴと共にいつも通り工場内で勤務していたが、そこへ父の姿に変身したREV-9が姿を現す。ダニーを殺そうとするが、同じく工場内に潜入していたグレイスによって間一髪で助けられる。 ダニーは状況を理解出来ないままディエゴとグレイスと共に工場内から車で逃げ出す。 REV-9は一行を追跡し、追い詰める。その結果、ディエゴは命を落とす。ダニーとグレイスを抹殺するのも時間の問題と思われた。 その時、ある女性が現れ、REV-9を爆発物で一時的に無効化する。スカイネットの台頭を阻止したサラ・コナーだった。 ダニーとグレイスはサラが一体何者なのか全く分からなかったが、彼女の助けをとりあえず受け入れる。 一行は、モーテルへと退却する。 モーテルで、グレイスは自分の任務についてダニーとサラに話す。2042年の未来からダニーを保護する為に未来から送られた、と。ダニーは、将来人類にとって重要な人物になるからだった。 サラも、自身について、二人に話す。「審判の日」を自分とジョンで防いだ事や、別のターミネータによりジョンが結局抹殺されてしまった事。息子を失って生きる目的を失っていたサラへ、何者からかメッセージが送られる様になる。文末には必ず「ジョンの為に」と記載されていた。送り主は不明。メッセージが記した場所に向かうと、未来から送り込まれた別のターミネータがいた。彼女はそれを始末。それ以降、彼女は送られてくるメッセージを基に「ターミネータ狩り」をする様になり、それが彼女の生きる糧となっていた。今回も、同様のメッセージを受け取り、それによりダニーとグレイスの所在が判明し向かったのだと説明した。 グレイスは、サラが話す「未来」が、自身がやって来た「未来」と異なる事に、戸惑いを示す。彼女の「未来」では、スカイネットやジョン・コナーは存在していなかったからだ。しかし、今の時代で戦うには、サラの助けが必要である事を受け入れざるを得なかった。 グレイスは、サラの元へ届いていたメッセージの発信源へと向かうべき、と考える。何故なら、未来から送り込まれる際、「危機に陥ったらこの座標へ向かえ」と教えられた場所と一致していたからだった。 サラとダニーも同行するが、メキシコと米国の国境を越えた直後に、米国国境警備隊により不正入国と見なされ、一行は留置場に拘束されてしまう。 REV-9は、世界中の監視カメラの映像を入手出来る立場にあった為、一行の居所を突き止め、留置場へと向かう。 留置場で、ダニーはREV-9に殺されそうになるが、サラの機転により一行はヘリコプターで脱出。そのままメッセージの発信源に向かう。 発信源は民家だった。そこに暮らしていたのは、ジョンを殺害したT-800本人(アーノルド・シュワルツェネッガー)だった。 サラは、ターミネータ狩りを仕向けていたのは息子を殺したターミネータだったと知り、激しく激昂。 グレイスとダニーは、サラを落ち着かせ、T-800から話を聞く。 T-800は、ジョンを殺害するという任務こそ完遂したものの、スカイネットを勝利させるという目的は果たせなかった。任務完遂後はお役御免で放置状態となる。目的を失ったT-800は人間として暮らすようになり、その過程で人類から様々な事を学習し、良心すら持つようになった。その良心から、サラを助けようと考え、メッセージを送り、REV-9の存在する時代を抹消する手助けしていたのだった。 サラは、この説明を素直に受け入れられず、「事が済んだらお前を殺す」とT-800へ告げる。 T-800は、それも自分の運命だと受け入れる。 サラ、ダニー、グレイス、T-800は、REV-9を破壊すべく、サラの旧知の知り合いの元を訪れる。その知り合いは現役の軍人で、彼からREV-9を破壊出来ると思われる電磁パルス兵器を手に入れた。 そこへ、REV-9がやって来る。 一行は軍用機を盗み逃走を図るが、REV-9の執拗な追跡に遭い、折角手に入れた電磁パルス兵器も破壊され、使えなくなってしまった。 軍用機からパラシュートで脱出した一行は、水力発電所に降り立った。 グレイスは、ダニーに対し、逃走を続けるよう、進言するが、ダニーはここでREV-9を始末しよう、と決める。逃げてばかりもいられない、と。 一行は、REV-9と壮絶な戦いを発電所内で繰り広げ、回転タービンの中にREV-9を閉じ込める事に成功する。タービンは大爆発を起こし、爆風によりT-800は機能停止に陥る。一方、REV-9の液体金属は破砕し、内骨格もダメージを受けていたが、機能は完全に停止していなかった。 グレイスは、REV-9を完全に破壊するには、強化人間としての動力源となっているエネルギーセルを使うしかない、とダニーに告げる。ただ、エネルギーセルを取り出すと、グレイスは死んでしまう。ダニーは、そんな事は出来ない、と拒むが、グレイスはやるべき事をやるべき、自分は犠牲になる事を覚悟して未来からやって来たのだ、と。 ダニーは、躊躇いながらもグレイスからエネルギーセルを取り出し、REV-9を倒そうとするが、ダメージを受けているとはいえまだ充分機能出来るREV-9に圧倒される。 そこへ、機能停止に陥っていたと思われていたT-800が再起動。T-800は、エネルギーセルをREV-9に打ち込み、電流を発生させ、REV-9を破壊。しかし、その過程で自身も破壊してしまう。 サラとダニーは、完全に機能停止した2体のターミネータを見下ろすしか出来なかった。 この頃には、エネルギーセルを失っていたグレイスは絶命していた。 数日後。 ダニーは、まだ子供であり、生身の人間であるグレイスが、両親と一緒にいる姿を見届ける。 REV-9のいる未来になったら、あの子供は将来強化人間になって死んでいく、そんな事はさせたくない、とダニーは思う様になる。 サラは、そんな彼女に、「そうならないよう、準備しなければ」と告げ、共にその場を去る。感想 シリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロン本人が製作に携わったシリーズ作なので、「正統」と捉えざるを得ないのは理解しているが……。 これまで製作されてきた続編は勿論、キャメロン自身が手掛けた第1作と第2作を否定するストーリー運びは、あまり納得出来ない。 ターミネータ2以降の「続編」は、ジョン・コナーを中心に動いていたのに、本作を正統とすると、彼の活躍は全く無かった事になってしまう。 サラ達の活躍により、スカイネットによる人類滅亡の可能性は無くなった事になっているが、また別の人工知能により人類は滅亡の危機に瀕している、という展開は、サラ達の活動が結局凶悪な人工知能の台頭を数十年遅らせただけの事になってしまい、第1作と第2作の死闘は何の為だったんだ、という疑問を抱いてしまう(同じくキャメロン監督作のエイリアン2と、その続編のエイリアン3と同様の状況)。 シリーズ生みの親とはいえ、自身が手掛けてきたシリーズ作と、自身が手掛けていないシリーズ作を全てぶち壊していいのかね、と疑問に思ってしまう。 ジョン・コナーに取って代わる新ヒーロー(ヒロイン)が、これまでのシリーズ作を全てぶち壊してでも登場させる魅力がある、というのなら納得出来るが……。 ダニーは、サラの焼き直しに過ぎず、退屈では無いものの、今後活躍(続編製作)を期待させるキャラではない。 これだったら、これまで通りサラ・ジョンの母子の奮闘を描いていた方が良かった。シリーズをずっと追ってきた観客からすれば、お馴染みのキャラなのだから。 キャメロン監督は、エイリアン2以降は「戦う女性」に執着する傾向が強く、本作でもダニー、グレイス、サラと、戦い捲る女性を3人も登場させている。 戦う男性(T-800とREV-9)も一応登場するが、最早脇役扱い。 統計では、そういう設定の方が観客の受けが良く、より高い興行収入が見込める、と出ていて、そう製作せざるを得ないのかも知れない。が、個人的にはこういう設定は説得力を失わせるので(何だかんだ言っても、女性は結局戦えない)、控えてもらいたいと思う。女性戦士をストーリーの設定上加えなければならないなら、1人に留めるべき。 プロットは、未来からやって来た殺し屋から重要人物を守る為に、同じ未来から戦士がやって来て、死闘を繰り広げるという、シリーズ第1作と同じ運びになっていて、新鮮味は無い。 時代に合わせたリメークと言える。 特撮は、第1作と比較すると途轍もなく高度になっている。が、それもここ最近のアクション映画(MCU等)では当たり前のレベルに成り下がっていて、有難味が薄い。 今回の宿敵REV-9は、鋼鉄の骨格を持つターミネータと、液体金属のターミネータの2つに分かれて活動出来るタイプ。 第1作と第2作のターミネータを1つにしたかの様。 反則ではないか、と思ってしまう程無敵でかつ万能っぽい割には、しょぼい理由で標的を殺し損ね、最終的には始末されてしまう。 これだったら、アナログ感が残っていたT-800の方が、「殺人マシーン」としてはまだマシではなかったかと思う。 本作では、シュワルツェネッガーがシリーズに復帰。 カリフォルニア州知事だった時代は俳優として活動出来なかったので、ターミネータシリーズにも登場出来なかったが、知事を退任したので、漸く復帰が実現した、という事か。 ただ、そんなシュワルツェネッガーも、既に70歳。 初期のシリーズ作では鍛え上げた肉体を惜しげも無く披露していたが、本作では常に着衣状態で、肉体を披露する事は無い。披露出来ない身体になってしまったか。 シュワルツェネッガーを何が何でも登場させたいが為に、無慈悲無感情が最大の強みだった筈のT-800が、人間と接している内に感情らしきものが芽生えた、という強引な展開になってしまっている。その意味でも、本作は第1作をぶち壊している。 REV-9と対峙するのは殆どダニーとグレイスなので、シュワルツェネッガー(そしてリンダ・ハミルトン)はあくまでも話題作りだけの為に起用された感が無くも無い。 リンダ・ハミルトンも、サラ・コナーとしてシリーズに復帰している。 サラは、第1作では何の取柄も無いウェイトレスで、第2作では人が変わった様に女戦士となっていた。本作では、第2作を引き継いで、女戦士として登場。 第1作の時は若々しかったが、本作では初老というか、血気盛んなお婆さん、といった感じ。また60代だが、ハリウッドスターにしては老けて見える。あえてそういうメイクで登場したのか、いつもの姿なのかは不明だが、時の流れを感じずにはいられない。 演技も、ベテランの割には単調というか、気合が入っていないというか、渡された台本の台詞をただ口にしているだけの感じがした。 ダニーを守る戦士として、マッケンジー・デイヴィス演じるグレイスが登場。 瞬発的な戦闘能力は第1作の未来戦士カイルをはるかに上回るが、ダニーを守る、という長期に亘るミッションに於いてはあまり有能でなく(強化された肉体は消耗が激しく、定期的に薬物を投入して安定させなければならない)、サラやT-800の存在が無かったらダニーはあっさりと殺されていたと思われる。 強化人間か何か良く分からないが、もっとマシな戦士を未来は送り込めなかったのか、と疑問に感じた。 あまりにも感情移入が出来ないキャラだったので、最後に死亡しても「ああ、そうですか」くらいにしか思わなかった。「『戦う女性』をガンガン登場させた方が観客にウケる」という理由だけで登場させられた感は否めない。 序盤で、T-800に殺されるジョン・コナーを、第2作と同じくエドワード・ファーロングが演じていた。アップは無く、数カットしか登場しないが、既に中年になっている筈なのに少年の姿でどうやって登場させられたのか、と思っていたら、身体を他の役者に演じさせ、顔だけデジタル合成した、との事だった。 エドワード・ファーロングは、第2作に出演した後は役に恵まれず、廃人同然になっていると聞く。デジタル合成での出演にしかならなかったのも、それが理由らしい。もし、順調に俳優としてのキャリアを積んでいたら、本作でも起用され、全く別の映画になっていたかも。その意味では、残念である。 デジタル加工や合成の技術は日進月歩なので、将来は実在する俳優が一人もいない、という映画も製作可能になるだろう。 ただしそうなったら、映画産業は衰退すると思われる。 本作は、ターミネータ2の正統な続編というより、シリーズ生誕35年を祝う為の同窓会、といった印象を受ける。 その雰囲気は観ている側にも伝わる様で、従来からのファン以外の鑑賞者は少なく、製作費が掛かった割には興行収入はイマイチらしい。 アクションは、ハリウッド映画とあって派手で、他では到底観られないものに仕上がっている。 ジェームズ・キャメロンがシリーズに復帰した、何か凄い事をしてくれそう、と大きな期待を抱いて劇場に足を運ぶと肩透かしを食らうが、期待を適度に抑えられるなら、充分楽しめる映画。【映画パンフレット】 『ターミネーター:ニュー・フェイト』 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー価格:2000円(税込、送料別) (2019/11/22時点)楽天で購入
2019.11.22
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DCコミックスのスーパーヒーロー・バットマンの宿敵ジョーカーの誕生秘話を描く。 ジョーカーとなるアーサーを演じるのは、ホアキン・フェニックス。 第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞の金獅子賞を受賞。 日本ではR15+に指定された。 原題は「JOKER」。粗筋 財政難に陥り、閉塞感が増し、治安が悪化の一途を辿るゴッサムシティ。 大道芸人のアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、母ペニーの介護をしながら、毎日を辛うじて過ごしていた。 アーサーは、緊張すると発作的に笑い出すという病を患っており、それが原因で精神病院に一時入院していた。現在も、福祉センターで精神カウンセリングを受けており、精神を安定させる薬を処方され、服用していた。「人を笑顔にさせる事をしなさい」と母親から常に言われていた彼は、コメディアンになる事を夢見ていて、ノートにネタを書き綴ったり、人気司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の番組を観てその振る舞いを真似したりしていた。 ある日、アーサーは、同僚のランドルから、護身用に、と拳銃を借り受ける。勤務中にチンピラらに襲撃され、仕事道具を破壊されてしまったと上司に報告したところ、上司から「嘘吐くな、お前が壊した道具の弁償代は給料から差っ引く」と告げられた直後だった。アーサーは、精神疾患を持つ自分は拳銃を所持すべきでない、と思っていたものの、また襲撃されては堪らないと恐れ、受け取ってしまった。 それから間も無く、小児病棟でピエロとして仕事している最中に、子供らが見ている真ん前で拳銃を落とす、という失態を犯してしまう。アーサーは、電話で上司に対し何とか説明しようとするが、上司は言い放つ。お前はランドルに拳銃を譲ってくれとせがんだらしいな、お前は嘘吐きだ、もう面倒を見切れないからクビにする、と。 帰りの地下鉄で、アーサーは女性に絡んでいたウェイン産業の証券マンらに暴行され、彼らを拳銃で射殺してしまう。アーサーは、ピエロの格好のまま、地下鉄駅から逃げた。 この事件は貧困層による富裕層への復讐として世間に認知され、ゴッサムシティではピエロの格好でのデモが活発化していく。 ウェイン産業の社長であるトーマス・ウェインは、自分の会社の従業員が殺害された事に関して、ゴッサムは危機に瀕していると表明し、それを打開する為に市長選に立候補すると宣言する。ただ、この表明も、デモの参加者からすれば富裕層の身勝手に過ぎず、事態の収拾には至らなかった。 財政難により、市は福祉プログラムを大幅に削減。これにより、アーサーはカウンセリングを受ける事が出来なくなり、薬も買えなくなってしまった。 ふとした事から、アーサーは隣室の未亡人ソフィーと仲良くなる。ソフィーには、自身をコメディアンとして紹介した。 ソフィーの信用を得たいアーサーは、コメディアンがショーを行うバーで、初めてコメディアンとして人前に出る。しかし、緊張から、発作で笑い出してしまい、これといった見せ場も無く出番を強制終了させられた。 その晩、落ち込んだ状態で帰宅したアーサーは、母から、かつて家政婦として雇われていたトーマス・ウェインへ宛てた手紙を託される。ポストに投函してくれ、と。母は、定期的にトーマスへ手紙を送っていた。トーマスは、必ず返事を寄こしてくる、と母は信じて疑わず、手紙を送り続けていたが、返事が戻ってきた事はこれまで無かった。母がウェイン家で働いていたのは30年も前の事なので、当然の事だ、とアーサーは思っていたが、母の介護の一環として、手紙をポストに投じていた。これまで母が書く手紙に興味を持つ事は無かったが、この晩だけは母が実際どんな内容の手紙に書いているのだろうと疑問を抱き、封を開け、読んでしまう。 あなたの息子であるアーサーと、自分の生活が苦しいので、援助してほしい、という内容だった。 アーサーは衝撃を受ける。自分はトーマス・ウェインの隠し子だったのか、と。 真実を確かめに、アーサーはウェイン邸へ赴いた。トーマスの息子ブルースと執事アルフレッドには会う事が出来たものの、トーマスには会えなかった。 失意のまま帰宅すると、証券マン殺人事件の捜査の一環として訪問した刑事に驚いたペニーが脳卒中を起こし、救急車で運ばれるところだった。アーサーは、母と共に病院で一晩過ごす事になる。 病室のテレビで、その晩のマレー・フランクリンの番組が流れる。アーサーがバーで大失態を犯したショーの映像が流された。マレーは、アーサーについて、「こいつはステージ上でゲラゲラ笑ってさえいればコメディアンになれると勘違いしているふざけた野郎(ジョーカー)だ」と侮辱する。 アーサーは、長年親しんできたマレーにも裏切られた、と感じる様になる。 それから数日後、アーサーはウェイン劇場に侵入し、トーマスと対面する。自分はあなたの息子のアーサーです、と。 しかし、トーマスは言う。ペニーの手紙は全て出鱈目だ、と。彼女は妄想癖の激しい精神病を患っていて、アーサーがペニーと自分との間に生まれた隠し子、というのも彼女の妄想に過ぎない。そもそも、アーサーはペニーの実子ではなく養子だ、と。そういう問題を度々起こしていたから、精神病院に入れられる運びとなり、解雇された。ペニーから手紙を貰っても返事を出さなかったのも、それが理由だった。 母親の真相を知り、失意に暮れるアーサーは、ソフィーの家を訪ねる。が、ソフィーは恐怖に怯える表情を見せる。何故ここにいるの、部屋を間違っていないか、と。ソフィーとの思い出は、全てアーサーの妄想だったのだ。 アーサーは、母が昔入院していたという精神病院へ行き、診断書を閲覧した。そこには、母が精神障害を患っている事、そして身元不明の捨て子を養子に取ったのがアーサーだった事を示す書類が挟まれていた。 母親からも裏切られたと感じたアーサーは、病室のペニーを窒息死させる。彼女の死は病死と診断された。 アーサーが自宅へ戻ると、電話があった。マレーの番組担当者からだった。先日アーサーが大失態を犯したショーの場面を流したが、それが予想に反して大好評だったので、ゲストとして出演してくれないか、というものだった。 不本意な出演依頼だったが、千載一遇のチャンスでもあると考えたアーサーは、話に乗る事に。 収録当日。 ランドルが自宅に訪れた。警察がお前を証券マン殺人の犯人だと確実視しているから、犯行に使われた拳銃について口裏合わせしてやるぜ、と話を持ち掛ける。今更そんな話を持ち掛けられてもしょうがない、寧ろお前が銃を渡すからこんな事になってしまったんだ、と激高したアーサーは、彼を殺害する。 アーサーは、落ち着いてピエロのメイクを施し、テレビ局へ向かう。途中、アーサーを見張っていた刑事らに追われるものの、デモ活動のピエロらに紛れ、追跡を撒く。 劇場に到着し、楽屋で化粧を直しているアーサーの楽屋に、マレーとディレクターがやってくる。番組の流れを説明するディレクターとマレーに、アーサーは自分をジョーカーと紹介してほしい、と頼む。 何故ジョーカーという偽名を、と訊くマレーに対し、アーサーは言う。番組で、自分の事を「ふざけた野郎(ジョーカー)」と呼んでいたではないか、と。マレーは既にその事を忘れていたが、了承する。 フランクリン・ショーの生放送が始まり、ジョーカーとして紹介されたアーサーが登壇する。話の流れの中で、アーサーは証券マンらを殺したのは自分だ、と生中継で告白する。 アーサーは、マレーが自分をテレビに出したのも、ただの笑いものにする為だけだと主張し、隠し持っていた拳銃でマレーを射殺。駆け付けた警察に逮捕された。 アーサーの凶行が生放送されたゴッサムシティはデモが暴動と化し、街のあちこちで火の手が上がっていた。 一家で映画を鑑賞していたトーマスは、暴動を避ける為に裏道へ妻と息子を連れて逃げるが、それを観ていた暴徒により射殺される。妻も射殺され、息子のブルースだけが生き残った。感想 アメリカンコミック界では随一の敵役であるジョーカーの誕生秘話を描いた作品、という事になっている。 ジョーカーは、これまで劇場版バットマンで何度も登場しており、その誕生も既に何度か描かれているが、リブートされているので、作品ごとに誕生の経緯が異なっている。 本作では、コメディアンを夢見ていたごく普通の男性が、ふとした事でジョーカーになってしまった、という事になっている。 ただ、本作のアーサー・フレックは小粒で、無能。後にダークナイトでバットマンを手玉に取ってしまう大悪党へと成長する、という設定には無理があり過ぎる感が(ダークナイトと本作はリンクしている、と公式には発表されていないし、製作者側としても別物と考えているので、当たり前か)。 本作で描かれるジョーカーは、ブルース・ウェインことバットマンを苦しめる事になるジョーカーとは別人物、と捉えるしかない。アーサー・フレックは、あくまでも「ジョーカー」という新タイプの犯罪者を生み出した人物で、バットマンと対決するジョーカーは、その流れを汲んだ別の犯罪者、と考えれば納得がいく。 本作では後にバットマンとなるブルース・ウェインが登場するが、子供という設定。アーサーは本作では中年男性なので、もしアーサーがバットマンと対決するジョーカーと同一人物となると、老体に鞭打って30近く年下の若造と対決していた事になる。 アーサーは、不器用ではあるものの決して悪い人物ではないが、不幸が重なって犯罪者へとなっていく、という風に、制作者側は捉えてもらいたかった様だが……。 一部の不幸は、アーサーのせいではないが(妄想癖の母親の介護、冒頭でチンピラに襲われて仕事道具を破壊されてしまう等)、身から出た錆としか言い様が無い部分も多く、完全に同情出来ない部分も多い。 小児病棟での仕事で護身用に持って来た銃を子供達の目の前で落としてしまい、上司から解雇を言い渡される下りは、自ら招いた失態に他ならない。小児病院に銃を持って行く必要なんて無かったし、持って行くなら持って行くで、もっと上手く隠していればよかった。ピエロの演技で飛び跳ねたくらいで落とすような場所にしまっておく方が悪く、解雇を言い渡されるのも仕方ない(銃社会のアメリカも、流石に銃を持ち歩いてはいけない場所があるらしい)。悲劇として観てください、という方が無理。 アーサーの言動には意味不明の部分が多いが、周りの登場人物の言動も、意味不明なのが多い。 アーサーの同僚であるランダルがその一例。 ランダルは、チンピラに襲われて落ち込んでいたアーサーに、銃を渡す。 アーサーが仕事先でその銃で失態を犯したと知ると否や、先回りして上司に嘘の報告をする。アーサーが銃が欲しいと俺にせがんだからくれてやるしかなかった、と。 これにより、アーサーはクビになり、銃を渡した本人はクビを繋いだ。 クビになった時点で関係は切れたのだから、関りを完全に断てば良かったのに、どうやらアーサーは証券マン殺害事件の犯人らしいと知ると、どういう訳かアーサーの元を訪れ、口裏合わせしよう、と持ち掛ける。 激怒したアーサーは、ランダルを殺害。 自分が渡した銃が殺人事件に使われてしまった、と恐れたからかも知れないが、それでも近々逮捕されるであろう殺人犯の自宅を訪れるのは愚かな行為としか言い様が無い。 まさか自分を殺しやしないだろう、と高をくくっていたのか。 本作では、善人がとにかくいない。 ウェイン産業の証券マンらは、地下鉄で女性に絡み、それをアーサーに阻まれると、彼に暴行を加える。 エリートサラリーマンでありながら、言動は下町のチンピラと全く同じ。 アーサーに殺されたところで、同情出来ない。 トーマス・ウェインは、自社の社員が殺害されたとの報を受けると、犯人は努力によって裕福になった者を恨む無知で無能な貧困層の仕業だと一方的に決め付け、自分ならこの街の屑共を一掃出来ると豪語し、市長選に立候補。 この言動は貧困層の反発を招き、ゴッサムでは暴動が頻発。 最終的に、ウェインは妻と共に、暴動参加者に殺害されてしまう。 自業自得、とまでは言い切れないが、自分の言動が原因で巡りに巡って殺された感が否めない。 たった一人生き残ったブルースは、犯罪者を恨み、バットマンとなるが、本作を観る限りでは、そもそも犯罪撲滅活動の根拠を踏み間違えていなかったのか、父親がもう少しまともに行動していたら殺害されていなかった可能性を考えた事無いのか、と問いたくなってしまう。 アーサーは、ソフィという女性と交流を深めるが、実は全て彼の妄想であった事が明らかに。 母親と同様、妄想癖がある、となると、本作のどこまでが実際に起こった出来事という設定になっているのかが分からなくなってくる。 コメディアンが自身の腕を披露するバーでデビューを果たし、大失敗するシーンも、本当に起こっていたのか、アーサーの妄想なのか、分からない。バーが、コメディアン志望者全てを何の事前審査も無しにいきなりステージに立たせるとは思えない。事前審査があったとしたら、アーサーはそれを合格し、ステージに立った事になる。ただ、アーサーの有様を見る限りでは、そうした審査を通過出来る術すら身に付いていない気がする。 後にアーサーは、番組からのオファーを受け、出演を果たす、という事になっているが、この下りも彼の妄想だったのでは、と思ってしまう。 そもそも、ステージで何の見せ場の無かったシーンの映像が、大ウケするとは思えない。仮にウケたとしても、その人物を呼び出して番組に登場させたところでステージと同様、何も出来ないだろうと番組側は考える筈。 その意味でも、本作は、「自分はバットマンの宿敵ジョーカーだ」と妄想する精神異常者の幻想を描いたもの、と受け取れる。 アーサーは、精神カウンセラーに定期的に会い、薬を処方してもらっている。 アメリカではこうした精神カウンセラーとの面談が何卒多い様だが、日本ではあまり無く、馴染みが薄い。 精神カウンセラーは、実際にどこまで役立っているのか。 女性は脳科学的に誰かに悩みを話すだけで気分がすっきりするらしいが、男性は具体的な解決法を望むので、悩みを話しても解決法が提示されないと、より気分が落ち込む。 精神カウンセリングなんて、カウンセリングを行う側の自己満足っぽい。 それとも、アメリカ人は男性女性に関係無く、悩みを打ち明ける事ですっきりするのか。 それだったら、アーサーも少しはすっきりしていなくてはおかしい気がする。 本作は、日本ではR15+指定。 精神を蝕まれていく主人公が最終的には凶悪犯罪に手を染める、というストーリーなので、未成年に観せたら真似しかねない、という理由からだと思われる。 ただ、暴力の描写はあるものの、これまで公開されている暴力的な作品からすれば大人しい部類に入る。また、性描写も無い。 R15+指定に期待し過ぎて観に行くと、肩透かしを食らう。 世間では、本作をアカデミー賞受賞確実の傑作、として評価されているが……。 悪い作品ではないが、そこまで凄いとは思えないし、共感も同情も出来ない。 そもそも、本作で描かれている悲劇は全て創作。 アーサーは悲惨な目に遭うが、演じているホアキン・フェニックスは、本作に出演した事でそこらの鑑賞者が一生掛けて稼ぐ額を手に入れたと思われる。次にどんな作品に出演するかは不明だが、そこでも結構な報酬を得るだろう。作中では貧困層を代弁している様に映るが、実際には富裕層の一員なのである。 鑑賞者が本作を観て鬱憤を晴らした気分になっても、鑑賞代金は巡りに巡って富裕層の懐をより温かくするだけで、劇場から出れば、いつもの単調な生活に戻るしかない。 それが現実で、寧ろそちらの方が悲劇。【送料無料】 ジョーカー Joker オリジナルサウンドトラック 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2019.10.19
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イギリスの伝説的ロックバンド「クイーン」のヴォーカル・フレディ・マーキュリーを主人公とする伝記映画。「クイーン」が1970年代を駆け抜け、1985年に開催されたライブエイドに出演するまでを描いている。 原題も「Bohemian Rhapsody」。 粗筋 1970年代初頭のロンドン。 ファルーク・バルサラ(ラミ・マレック)は、音楽に傾倒する青年。厳格な父とは折り合いが悪く、ペルシャ系移民出身という自身のルーツを嫌って「フレディ」と名乗っていた。 フレディは、バンド「スマイル」のファンで、ライブを頻繁に見に行っていた。 しかし、「スマイル」のヴォーカルは、「自分らのバンド活動は限界に達していて、これ以上続けても無駄だ」と突然言い出し、脱退。 ヴォーカルを失った「スマイル」は、解散の憂き目に遭う。 状況を知ったフレディは、「スマイル」のギタリストのブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーの前に現れ、ヴォーカルを買って出る。 メイとテイラーは、自信満々の青年を勘ぐっていたが、フレディはその場で見事な歌声を披露。驚いた二人は、彼をヴォーカルとして起用する事に。 ヴォーカル兼ソングライターとなったフレディを加えたバンドは、名を「クイーン」に改める。車を売却した資金で、アルバムを自主制作する。 レコーディングの様子を偶々見ていたEMIの役員は、彼らをスカウト。ポール・プレンターを担当マネージャーとした。 クイーンがメジャーデビューし、躍進する中、フレディは恋人のメアリーにプロポーズし、結婚する。 EMIの重役レイ・フォスターは、アルバムの売れ行きに大いに満足し、ヒット曲「キラー・クイーン」の路線を踏襲するよう、命じる。 一つのスタイルに束縛されたくないフレディらは、フォスターの指示を無視する事に。 フレディは、オペラをテーマとしたロック・アルバムを作りたいと提案。そのアイデアを基に、アルバム『オペラ座の夜』が完成する。その中の一曲が、「ボヘミアン・ラプソディ」だった。フレディらはこの曲を一押しするが、フォスターは、「『ボヘミアン』とか『ラプソディ』とかの意味が分からない」「何故オペラなんだ」「6分は長過ぎてラジオで掛けてもらえない」と色々ケチを付け、了承しようとしない。 フレディらは自らラジオに出演し、勝手に流す。「ボヘミアン・ラプソディ」は、マスコミには酷評されるものの、世間には受け入れられ、大ヒットする。 ツアーで多忙になる中、フレディは自身のセクシャリティに気付いていき、メアリーに自分はバイセクシャルだと告白する。その結果、彼女はフレディと距離を置く様になる。 メアリに去られ、クイーンのメンバーらとも馴染めなくなり、孤独を深めるフレディは、パーティー三昧の生活に溺れる。その場でジム・ハットンという男性と出会う。ハットンに恋愛感情を抱くフレディは再会を積極的に希望するが、ハットンは「君が本当の自分を取り戻す事が出来たら再会しよう」と言い残し、去ってしまう。 フレディは、ミュージシャンとして大成功を収めながらも、誰とも思いを分かち合えなくなってしまった。 そんな頃、ポールはフレディを独占しようと考え、彼にソロ活動契約の話を持ち掛ける。 以前のフレディだったらそんな話は蹴っていたが、心の余裕を失っていた彼は、受け入れてしまう。 これにより、クイーンは決定的に仲間割れし、フレディは脱退する事に。 フレディが去ったクイーンの新マネージャーに就任したジム・ビーチは、チャリティーイベント・ライブエイドに、クイーンを出演させようと考える。ただ、フレディ抜きのクイーンではインパクトに欠けると感じ、フレディに戻って来るよう、連絡を入れる。 しかし、実質的にフレディのマネージャーになっていたポールは、折角フレディをクイーンから脱退させる事に成功し、独占出来る立場になったのに、ライブエイドに参加させたら意味が無いと考え、その話を黙殺。フレディには取り次がなかった。 フレディは、ソロアルバム作成に没頭するが、クイーンの仲間と一緒にやっていた時とは異なり、思う様に進まない。自分の居所はクイーン以外に無いと改めて知ったが、自ら脱退しておきながら今更戻れる訳が無い、と悩む。 そんな頃、連絡が付かない事を心配したメアリーが、フレディを尋ねに来る。折角ジム・ビーチがライブエイドの話を持ち掛け、フレディがクイーンに戻って来られるようお膳立てしているのに、何故応じない、と問う。ライブエイドの話は全く知らなかったので、フレディは愕然とし、ポールがあらゆる話を黙殺し、自身の孤独感を増長させていた事を悟る。 フレディは、ポールと決別。クイーンに戻る為、話し合いの場を求める。 クイーンのメンバーらは、フレディが恐れていた程わだかまりは抱いておらず、戻って来るならそれでいい、と考えていた。 しかし、ちょっとくらい条件を付けてもいいのでは、と考えたメンバーらが、「今後の曲の名義は個人ではなくクイーンにする事にするなら迎え入れてやる」と半ば冗談交じりで条件を提示した所、フレディは全ての条件を呑むから戻らせてくれ、と懇願。クイーンは、拍子抜けしながらフレディを受け入れる。 こうして、フレディが戻ったクイーンは、ライブエイドに出演する事を決めた。 体調不良を感じていたフレディは、検査によりHIVに感染している事を知った。リハーサルの場で、自らの病についてメンバーに告げる。メンバーはその告白に衝撃を受けるが、ライブエイドで全力投入する事を誓う。 全てを取り戻したと実感したフレディは、ハットンを探し出して再会。 ハットンは、「本当の自分」を取り戻したフレディを受け入れ、以降交際する。 ライブエイド当日、フレディはハットンを連れて実家に戻り、家族に「友人」と紹介する。家族は全てを理解し、またフレディも父親の厳格な教えが間違いでなかった事を認め、互いを受け入れる。 ライブエイドステージに立ったクイーンは、約20分のパフォーマンスで群衆を熱狂させ、チャリティーイベントとしても大成功させて出番を終える。 ラストで、フレディはエイズを発症して1991年に死去した事、最期までハットンが添い遂げた事、メアリーが友人として支え続けた事、そしてフレディの名を冠したエイズ患者支援基金『マーキュリー・フェニックス・トラスト』が設立された事が語られる。感想 ビートルズ、もしくはそれ以上の伝説となったロックバンドを取り上げた映画。 クイーンの名曲が随所に盛り込まれ、ミュージカルっぽくなっていて、その意味でも観客を楽しませるものに仕上がっている。 ただ、ブライアン・メイの前に現れた時点では音楽に関しては素人同然だった筈のフレディが(楽器は一切弾けない、と認めている)、飛び入り参加で大成功を収め、その後も特に挫折せず、音楽的には成功し続ける事に関しては違和感を抱いてしまう。 実際はそれに近かったのかも知れないが、フレディがどこでどうやって音楽について学んだのか、終始不思議に思った(単なる音楽のファンがヒット曲を何曲も作詞できるとは思えない。もしそうだったら、誰もがソングライターになれてしまう。もしくはフレディが音楽について学習していた部分は、作品では単に割愛されたのか)。 本作では、フレディは様々な悩みを抱えていたり、間違った方向に進んだり、同性愛者であったりした事実が包み隠される事無く描かれている。 主人公で、しかも故人だから、当然といえば当然。 一方、クイーンのメンバーで、現在もクイーンとして活動し続けるブライアン・メイとロジャー・テイラーは、本作で音楽プロデューサとして参加している事もあり、あくまでも何の問題も抱えていない「善人」として描かれている。 ブライアン・メイに至っては、物分かりが良過ぎる程物分かりの良い、「大人」の人物になっていて、破天荒なフレディとは対照的。実際のブライアン・メイは本当にここまで物分かりの良い人物なのかね、と思ってしまう。 フレディを演じるラミ・マレックは、実際のフレディの特徴を似顔絵イラスト並みに強調した顔立ちで、最初は「ちょっと大袈裟過ぎるのでは」と思ってしまうが、次第に馴染んでくる。 フレディ・マーキュリーという人物を徹底的に研究した上で演技していたのが見て取れた。海外の映画は、こうした作り込みが丁寧(ライブエイドの再現シーンも、実際のライブエイド以上の映像に仕上がっていたし)。 邦画は、そうした作り込みがなされていないので、演技や演出が薄っぺらく感じる事が多い。 フレディ役は、ラミ・マレックが決まる前は、ベン・ウィショーも候補に挙がっていたという。 007シリーズやメアリー・ポピンズ・リターンズにも出演していたベン・ウィショー版のフレディも、観たかった気がしないでもないが、ラミ・マレックと比較すると顔立ちが大人しく、インパクトに欠けるので(いわゆるイケメン度ではウィショーの方が上回るが)、ヒット作になっていたかどうか。 代表的な曲の作曲の裏話について触れている点は、興味深かった(どこまでが史実で、どこまでが作品上の演出なのかは不明だが)。 誰もが一度は聞いた事がある楽曲をスクリーンならではのライブ感で体感出来るとあって、普段は映画を観ない者にもお勧めしたい作品。 ただ、主人公が同性愛者で、そうしたシーンも多数盛り込まれているので、少なくともお子様や、そうしたテーマが苦手な者向けの映画ではない。【送料無料】[初回仕様]ボヘミアン・ラプソディ【ブルーレイ&DVD/2枚組】/ラミ・マレック[Blu-ray]【返品種別A】価格:3807円(税込、送料無料) (2019/10/14時点)楽天で購入
2019.10.14
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ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲は、イギリスのスパイ・コメディ・アクション映画。『ジョニー・イングリッシュ・シリーズ』の3作目に当たる。 監督はデヴィッド・カー。 ローワン・アトキンソンが引き続き主人公を演じる。 原題は「Johnny English Strikes Again」。粗筋 イギリス諜報機関MI7がサイバー攻撃を受け、現役エージェントの情報が漏洩してしまい、諜報機関として機能出来なくなってしまう。 それと同時に、ロンドン各所でサイバー攻撃によるトラブルが発生。 サミットを控える首相は、この問題にどう対処すべきか、頭を悩ます。 MI7は、退役したエージェントらを召集して事態を解決しようと考える。個人情報がデータ化される前に退役したエージェントなら、活動出来る筈だ、と。召集された中には、小学校で教師をしていたジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)も含まれていた。 イングリッシュのミスにより、催眠爆弾が作動して他の元エージェントらは眠ってしまう。結局、MI7部長の前にはイングリッシュしか現れなかった。 止むを得ず、MI7部長はイングリッシュにサイバー攻撃の犯人を探すよう、指示する。 イングリッシュは情報を得る為、相棒のボフと共に南フランスに向かう。サイバー攻撃は、そこが発信源とされていた。 2人は、サイバー攻撃の発信源と断定された大型ヨットのドット・カーム号に忍び込む。が、謎の美女オフィーリア(オルガ・キュリレンコ)に見付かり捕まってしまう。2人は船内に発信機を設置した後、ドット・カーム号から脱出する。 脱出後にオフィーリアと再会したイングリッシュは、彼女から「ホテルのバーで落ち合いたい」と持ち掛けられる。彼はオフィーリアの美貌に夢中になっていたので、応じる事に。ボフは、オフィーリアがどこかの機関の工作員であるのは疑いようが無いので近付くな、と忠告するが、イングリッシュは耳を貸さなかった。そんな事は有り得ない、と。 オフィーリアは、自身の任務の妨げになるイングリッシュを殺すよう、指令を受けていた。彼女は、あらゆる手段でイングリッシュを殺そうとする。 が、睡眠薬と間違えて精力剤を飲んでハイテンションになっていたイングリッシュは、彼女の攻撃を無意識の内に退けてしまう。 一方、サイバー攻撃に悩まされ続ける首相は、IT企業を立ち上げて一代で財を成した若手大富豪のジェイソン・ヴォルタと知り合う。 ヴォルタは、イギリスのシステム管理を自分の会社が一元化すれば、全て解決すると提案する。 首相は、その提案を受け入れる事にした。 ロンドンに戻ったイングリッシュは、ヴォルタがサイバー攻撃の犯人であると報告するが、決定的な証拠は無けば何の手も打てない、と言われる。 証拠を手に入れる為、イングリッシュはヴォルタの屋敷に潜入しようと考える。 ヴォルタ邸に潜入したイングリッシュは、オフィーリアと再会。彼女がロシアのスパイだと知る。 2人は、ヴォルタが犯人である証拠をスマートフォンで撮影するが、イングリッシュのミスで気付かれてしまう。 イングリッシュは教習車を奪い、ヴォルタ邸から脱出。 首相とMI7部長に、ヴォルタがサイバー攻撃の犯人である事を裏付ける証拠として、イングリッシュはスマートフォンを提出。撮影した映像を見れば一目瞭然だと。しかし、スマートフォンは脱出の際に同乗した教習者のを取り違えて持って来てしまったものだったので、肝心の映像は無かった。 激怒した首相は、イングリッシュを無能呼ばわりする。 また、捜査の過程で様々なトラブルを起こしていた事が発覚し、イングリッシュはMI7を追い出されてしまう。 ショックを受けたイングリッシュは去ろうとするが、ボフに説得されてG12サミットが開催されるスコットランドに向かう。 イングリッシュは、ボフの妻リディアが艦長を務める旧型潜水艦を利用してサミット会場に潜入する。 会場で、首相はイギリスの全システム管理をヴォルタが経営する会社に委託する事に正式に同意。 ヴォルタは、イギリスのあらゆるシステムを掌握する事となった。 この時点で、ヴォルタは本性を現す。システムを全停止してイギリス国内を混乱させ、他のG12首脳にも同意書に署名するよう、迫った。 イングリッシュは、携帯電話でMI7部長を呼び出そうとするが、手違いでリディアの潜水艦のミサイル発射命令を出してしまった。 ミサイルは、イングリッシュがドット・カーム号に潜入した際に仕掛けていた発信機に誘導され、ドット・カーム号に命中。撃沈してしまう。 ドット・カーム号が破壊された事で、サイバー攻撃は中断され、ヴォルタの計画は失敗する。 ヴォルタはサミット会場から逃亡しようとするが、イングリッシュによって阻止され、逮捕される。 イギリスを救ったイングリッシュは小学校に戻り、生徒らから英雄として迎えられる。感想 007のパロディ映画として制作された本シリーズも、既に3作目。 第1作が公開された時点では、ここまで続編が制作されるとは想像していなかっただろう。 3作目とあって、キャラもストーリーもギャグも安定しており、安心して観られるが、その一方でマンネリも感じられるようになってしまっている。 007シリーズは、主人公を演じる俳優を変えて、シリーズをリフレッシュさせる、という手が取られているが、本作ではそういう手段に打って出られないと思われるので、このマンネリをどう打破するのか。 下手に長引かせるより、シリーズを打ち止め、という手段に出た方が賢いかも。 全体的なストーリーは、本家007に通じる部分があり(事実、ダニエル・クレイグ主演作「スペクター」と似ている)、シリアスな展開も充分有り得るが、主人公がジョニー・イングリッシュとあって、シリアスな部分はほぼ無い。 ジョニー・イングリッシュは、敏腕エージェントに成り得る要素を偶に見せるが、ネジが2、3本抜けている行動により、全て裏目に出る。それでも、最終的には丸く収めている。 007シリーズも、ボンドが失敗を重ねながらも最終的には任務を全うする、というストーリーの流れが多い。 真剣に立ち向かっているにも拘わらず失敗が続く007、間の抜けた行動で失敗が続くイングリッシュ。 どちらも任務は完遂するから、見方によってはイングリッシュの方がエージェントとしては腕が上、という事になる。 IT系の事業家がテロを自作自演して国家を混乱に陥れ、救世主を装って現れて権力を掌握しようと企む、というストーリーは、007シリーズでは既に「トゥモロー・ネバー・ダイ」「スペクター」で取り上げている為、本作のストーリーに新鮮味は無い。 IT事業家が披露する技術レベルは、「トゥモロー・ネバー・ダイ」と比較して大幅アップしているが。 実際のIT事業家が、政府を乗っ取ってどうのこうのしようと企むとは思えないけれども。IT事業は既に国境を越えて展開するのが当たり前。政府そのものを乗っ取ってしまうと、活動の場が乗っ取った国々に限定されてしまい、収益も見込めなくなってしまう可能性が高い。 政府を大っぴらに乗っ取るより、裏工作で影響力を行使して、表に出ない方が、よっぽども収益が見込めるだろうに。 邦題は、「アナログの逆襲」の副題が付けられている。 確かに、イングリッシュはアナログ技術を重視し、最終場面でヴォルタをアナログな手段で倒すが、一方で先進技術も結構使うので、「アナログの逆襲」という副題は必ずも正確ではないような。 邦題は、あくまでも国内の宣伝向けに付けられるから、そこまで気にする必要は無いのかも知れないが。 ジョニー・イングリッシュ・シリーズは、イギリス等では主演のローワン・アトキンソンが高い為、興行成績が高いが、それ以外の地域ではアトキンソンの知名度がそう高くないので、興行成績はイマイチだったらしい。 アメリカは、イギリスと同じ英語圏なので、そのまま上映出来るという利点があるにも拘わらず、興行成績は期待以下だったという。 日本でも、ローワン・アトキンソンの知名度がアメリカより高いにも拘わらず、全国公開はされなかった様で、自分が本作について知ったのは、機内映画として提供されていたから。 機内映画の一覧に無かったら、本作の存在について全く知る事は無かっただろう。 自分としては、いくら宣伝されても観る気が全く起こらない邦画より、こうした洋画の宣伝をしてくれた方が、より映画館に足が向くのだが。ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲【Blu-ray】 [ ローワン・アトキンソン ]価格:1832円(税込、送料無料) (2019/9/27時点)楽天で購入
2019.09.27
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1964年に公開されたミュージカル・ファンタジー『メリー・ポピンズ』の続編。 今回、主人公のメリー・ポピンズを演じるのは、エミリー・ブラント。 原題は「Mary Poppins Returns」。粗筋 前作から25年後。 ロンドンは大恐慌時代の真っ只中にいた。 ジェーン(エミリー・モーティマー)とマイケル(ベン・ウィショー)は大人になっていた。 マイケルは3人の子供、ジョン(ナサナエル・サレー)、アナベル(ピクシー・デイヴィーズ)、ジョージー(ジョエル・ドーソン)の子宝に恵まれたが、妻を失うという悲劇に遭う。 その傷が癒えないまま、今度は沢山の思い出が残る自宅を手放さなければならない、という危機が迫る。 度重なる悲劇で、心の余裕を失っていくマイケル。 3人の子供らも、明るさが無くなっていった。 そんな彼らの前に、メリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)が再びやって来る。 25年も経つのに、容姿が全く変わっていない事に驚くジェーンとマイケルだったが、メリーを子供達のナニーとして雇う事に。 3人の子供らは、自宅を手放さなくて済むよう奔走する父親を手助けする為に、自分らなりに考えて行動を起こす。メリーは、それを魔法で手助けする。 マイケルは、今は亡き自身の父親と同様、銀行で勤務していた。 銀行の頭取ウィルキンズ(コリン・ファース)は、マイケルの父親が銀行の債券を持っていた筈なので、それを探し出せれば自宅を手放さなくて済む、と伝える。 マイケルは、自宅を引っ掻き回して、亡き父親が残した筈の債券を探すが、見付からなかった。 3人の子供らは、メリーが付き添う冒険の中で、ウィルキンズは悪人で、いかなる手段を取ってでもマイケルの自宅を奪おうと画策している事を知る。3人はそれを父親に伝える。が、マイケルは、昔からお世話になっている銀行の頭取を務めるウィルキンズが、そんな事をする訳が無い、と聞く耳を持たない。 そうこうしている内に、返済の期限が迫って来る。 余裕をますます無くし、子供には勿論、メリーにも叱責するようになるマイケル。 その時点で、3人の子供らは自分らの思いを父親に伝える。思い出が詰まった家を失うのは辛いが、それ以上に父親の事が心配だと。 それを聞いたマイケルは、我に返る。子供らは母親を失ったばかりで、悲しみで一杯の筈なのに、父親である自分の事をここまで心配してくれている。自宅を守るのは重要だが、それ以上に子供を守るのが自分の役目ではないか。思い出が詰まった自宅を守った所で、子供の思いを汲み取ってやれない様では、本末転倒ではないか、と。 その時点で、マイケルは開き直る。 自宅を手放さなければならないならさっさと手放し、引っ越し先で子供達と一緒に人生をやり直そう、と。 マイケルは、ジェーンの助けを借り、引っ越しの手続きを進める。 引っ越しの荷物の一つに、子供の為に作った凧があった。凧は、破れた部分を、紙で塞いであった。その紙は、画家を目指していた自分が描いた家族の似顔絵を使っていた。自身が描いた懐かしい似顔絵を見て、子供達と一緒に思い出話にふける。 その紙を透かして見ると、ある事に気付く。似顔絵は、債券の裏に落書きされたものだったのだ。 漸く債券を見付けたマイケルは、家族と一緒に銀行へ急ぐ。 マイケルは、ウィルキンズに、凧ごと債券として提出。 期限ぎりぎりに提出出来たと喜ぶマイケルに対し、ウィルキンズは冷たく言い放つ。債券は完全な状態でないので、無効だと。 その時点で、マイケルは気付く。子供達の忠告は事実で、お世話になっていたと思っていたばかりの頭取は、最初から家を奪う算段だった、と。 怒ったマイケルは、家をそんなに奪いたいならくれてやる、自分には家族さえいれば充分だ、と言い、頭取室から出ようとする。 そんな所、前の頭取ドース・ジュニア(ディック・ヴァン・ダイク)が現れる。年老いて引退した、とウィルキンズは説明していたが、実は元気そのものだった。 ドース・ジュニアは、ウィルキンズに対しお前は経営者として失格だとし、解雇を伝える。そして、マイケルに対し、家を手放す必要は無い、とも伝えた。 晴れて自宅も家族も取り戻したマイケル。 子供達とジェーンと共に自宅に戻る途中、公園でカーニバルが開催されているのを知る。 風船売りから風船を一つ選ぶよう促されたマイケルは、風船を一つ選ぶと、身体が浮き上がり、空を飛び始める。心の余裕を取り戻した瞬間だった。 マイケルに続き、ジェーンも子供達も風船で空を飛び、自宅まで戻る。 マイケル一家が明るさを取り戻した事を悟ったメリーは、風に乗って帰って行く。感想 続編である本作は、第1作から54年後に公開されている。 ここまで期間が空いてしまったのは、原作者パメラ・トラバーズが、第1作で描かれているメリー・ポピンズが自身がイメージしたものと全く異なる、ミュージカル仕立てになっているのが気に入らない、アニメとの合成が原作のイメージに合わない等といった不満を持ち、それらをカットするよう、ウォルト・ディズニーに直談判したものの、全く取りあってもらえなかったから(ウォルトからすれば、当たり前の対応だったが)。これに腹を立てた原作者は、続編の話が何度も持ち掛けられたにも拘わらず、拒否したという。 映画が、原作者の手を完全に離れ、名作と絶賛される様になった事態が、ますます原作者の気分を損ねたらしい。 原作者は1996年に死去しているが、遺言状が続編制作を阻む内容になっていて(アメリカ人を一切使うな、等々)、なかなか続編の制作には至らなかった。 しかし、没後20年以上が経過し、遺族も流石にディズニーの要望を拒否し切れなくなり、本作の制作に至ったらしい。 最早古典的名作に列せられる作品の続編を制作するのは、あらゆる意味で危険を伴う。 偉大な名作を超えるのはほぼ不可能だし(冷静に観ると名作を上回る出来になっていたとしても、名作は実際より美化され、客観視を超える存在になっている)、下手すると続編のお蔭で名作の評価まで落ちる可能性がある。 第1作を観たのは子供の頃だったが、現在は大人に成長している鑑賞者と、本シリーズを初めて見る子供の鑑賞者双方を納得させるのは非常に難しい。 スターウォーズシリーズも、旧3部作(エピソード4-6)は子供向けだったので、新三部作(エピソード1-3)も子供向けにしようとしたら、旧3部作をリアルタイムで観た後に大人へと成長していた鑑賞者から、「何故こんなお子様向けの代物にした?」と反発された経緯がある(リアルタイムで観た頃はあんたらもまだ子供だっただろうに、という理屈は通用しない)。 その結果、エピソード1は子供受けするキャラが登場し(間が抜けているもののヒーローになってしまうジャー・ジャー・ビンクス等)、ストーリーも子供受けする展開になっていたのに(幼いアナキン・スカイウォーカーが大活躍)、その後制作されたエピソード2からはそうした要素が排除され、ひたすら大人向けのダークな映画となってしまった(お陰で、今度は「旧3部作と比べてダーク過ぎて夢が無い」という批判が挙がった)。 スターウォーズシリーズは子供向けの要素を排除する事が可能だったが、メリー・ポピンズではそうした対策は取りようが無い。 本作に至っては、割り切って子供向けにし、大人の鑑賞者に対しては「メリー・ポピンズですから」という態度を取ったと思われる。 その結果は、第1作を大幅に超えるものにはなっていないかも知れないが、より現代的で、第1作について全く知らない子供が観た場合、充分観賞に耐えうるものに仕上がっている。 第1作は、悪人らしい悪人が登場せず、勧善懲悪の展開は無かったが、本作では悪人が登場し、勧善懲悪の展開もある。 無論、子供向けの映画なので、悪人といっても極悪人ではなく、懲悪も勤務先から解雇、という程度で済ませている。 それでも、こうした展開になっているのは、前作を知っている者からすると違和感が。 第1作から25年後、という設定なので、当時子供だったキャラが大人として登場。 そんな事もあり、前作ではメリーに押されっ放しだったマイケルが、本作ではメリーを叱責するシーンがある等、「あの可愛い子供がここまで成長してしまったか」と時の流れを感じさせる。 007でQを演じたベン・ウィショーが、こういう役も演じられるとは意外だった。というか、Qの役が彼にとっては特別で、こちらが本領発揮、て事か。 マイケルとジェーン姉弟の両親はとうの昔に亡くなっている等、登場していても不思議ではない人物が他界している、という設定になってしまっているのは、悲しいといえば悲しい。 本作を観た後、第1作を観直した場合、「このキャラは25年後には他界している」という目で観てしまう。 第1作で原作者との揉め事があったからか、本作のメリーのキャラは、前作と比較すると原作寄りになっていて、可愛げが無いのは問題といえば問題。 第1作の愛らしいメリーを知っている者からすれば、「何故こんな愛想の無いキャラになってしまったんだろう」と思ってしまう。 これでも、原作のメリーと比較すると、まだまだ甘いが。原作のメリーは、お高く留まった自己中心的なキャラで、映画を観てから原作を読むと、不愉快極まりない。見方によっては、ウォルト・ディズニーは原作のどこを気に入って映画化の話を持ち掛けたのか、と思ってしまう。 第1作でお馴染みとなったキャラが多数登場するものの、第1作から50年以上経ってから制作されているので、同じ役者が演じている、というキャラは一人もいない。 第1作で登場し、本作にも登場している唯一の俳優が、ディック・ヴァン・ダイク。第1作ではメリーの相手役であるバートを演じ、本作では銀行の年老いた頭取を演じている。無論、同じキャラではない。在命中だったのが何より。 第1作で主人公のメリーを演じたジュリー・アンドリューズも在命中で、彼女にもカメオ出演のオファーがあったらしいが、「自分が出たらエミリー(本作でメリーを演じた)の映画にならない」という理由で固辞したらしい。尤もらしい理由だが、単に年老いた姿で、別のキャラで登場するのが嫌だった、という理由もあったのかも知れない。 第1作と本作で、特撮の差はそう感じられず、逆に50年前に制作された第1作の特撮技術のレベルに驚く。 更なる続編が制作予定との事だが、流石にそれはどうかね、と思わないでもない。メリー・ポピンズ リターンズ(オリジナル・サウンドトラック/日本語歌唱盤) [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2045円(税込、送料無料) (2019/9/5時点)楽天で購入
2019.09.05
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アベンジャーズ/エンドゲームは、2019年のアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。 アベンジャーズの実写映画シリーズ第4作。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のシリーズ作としては第22作目に当たり、アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(MCU第20作目)の続編となっている。 原題はAvengers: Endgame。粗筋 2018年、インフィニティ・ストーンを全て手に入れる事に成功したタイタン星人サノス(ジョシュ・ブローリン)により、全宇宙の生命の半分が消し去られてから3週間。 宇宙を漂流していたトニー・スタークことアイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)とネビュラは、アベンジャーズに合流していたキャロル・ダンヴァースことキャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)の助けで地球に戻る事が出来た。 スティーブ・ロジャースことキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)を始めとするアベンジャーズの生存者らと、キャロル、ロケット、ネビュラは、失った者らを取り戻す為に、ある惑星で隠遁していたサノスを急襲する。しかしインフィニティ・ストーンはサノスの手で既に破壊されており、失った者らが戻って来る手立ては失われていた。ソー(クリス・ヘムズワース)の手でサノスに留めが刺され、戦いの区切りこそ付くが、空しさだけが残った。 それから5年後の2023年。 偶然にも量子の世界から抜け出したスコット・ラングことアントマンは、アベンジャーズに接触を図る。スコットは量子の世界が既知の時間の概念を超越している事を伝え、量子力学を用いたタイムトラベルを提案する。タイムトラベルで過去に舞い戻り、サノスが手に入れる前にインフィニティ・ストーンを手に入れてしまおう、と。 ハルクことブルース・バナー(マーク・ラファロ)がタイムマシンを製作し、タイムトラベルの準備が整う。 トニーは、当初はアベンジャーズとはもう関わりたくないと考えていたが、愛弟子のピーター・パーカーことスパイダーマン(トム・ホランド)を取り戻すべく参加した。酒浸りになっていたソーも、ブルースとロケットに連れ戻される。家族を失い自暴自棄に陥っていたクリント・バートンことホークアイ(ジェレミー・レナー)も、ナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)に説得され舞い戻る。 アベンジャーズは、3つのグループに分かれ、それぞれ過去へと飛んだ。 2012年、チタウリとの決戦の舞台となったニューヨーク。 ブルースはエンシェント・ワンに出会い、タイムライン(時間の流れ)を分岐させる危険性を警告されながらも、各時代にインフィニティ・ストーンを返却する事を条件にタイム・ストーンを譲り受ける。 スティーブは、過去の自身と決闘した末にマインド・ストーンを回収する。 一方、スコットとトニーは、スペース・ストーンの奪取に失敗する。トニーとスティーブはピム粒子とスペース・ストーンを回収する為、更に過去となる1970年を訪れて陸軍施設からそれらを盗み出す。 2013年、ダークエルフ侵攻直前のアスガルド。ソーとロケットは、ジェーン・フォスターに宿っていたリアリティ・ストーンを回収する。ソーは母との再会で自信を取り戻し、破壊される前のムジョルニアも回収する。 2014年、ピーター・クイルが訪れる直前の惑星モラグ。ローディとネビュラがクイルを待ち伏せしてパワー・ストーンを回収するが、ローディがストーンを持って現代へ戻った一方、ネビュラは2014年のサノスに囚われ、2014年のネビュラが代わりに現代へ時間移動する。 ローディらと2014年に移動したクリントとナターシャは、この時代のヴォーミアへ向かい、ソウル・ストーンを入手する為ナターシャが自ら命を投げ出す。生き残ったクリントの手に、ストーンが渡った。 2023年にトニーらが戻り、全てのインフィニティ・ストーンが揃うと、ブルースは新たなガントレットを嵌め、指を鳴らした。 ブルースの右腕と引き換えに、サノスによって消え去った者らが全てこの世に舞い戻った。 しかしその直後、2014年から訪れたネビュラの手引きで未来へ侵入したサノスが、アベンジャーズ施設を破壊する。 スティーブ、トニー、ソーの3人はサノスに挑むが、3人掛かりでもサノスを倒せない。その間に、サノス配下の軍が地球への侵攻を開始する。 追い詰められたアベンジャーズだったが、戦場にスリング・リングのゲートが開き、蘇ったヒーローらが加勢し、サノス軍との全面対決が始まる。 戦局が二転三転する中、サノスはインフィニティ・ガントレットを回収する。しかし、隙を突いてストーンを手中に収めたトニーが、自らの指を鳴らしてインフィニティ・ストーンの力を発動させる。 これにより、サノス軍はサノスを含め消滅。 しかし、その代償として、トニーは致命傷を負い、死亡する。 トニーの葬儀後、ソーはヴァルキリーを新たなアスガルドの王に任命し、自らはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと旅に出る。 スティーブは、エンシェント・ワンとの約束を守るべく、ムジョルニアとインフィニティ・ストーンを元の時代に戻すタイムトラベルを決行。そして仕事を終えた後は過去に残り、ペギー・カーターと人生を共に過ごす事を決める。 そして年老いた後に元のタイムラインに帰還したスティーブ・ロジャースは、サム・ウィルソンに自身のトレードマークであった盾を渡した。感想 アイアンマンから始まった一連のMCU映画シリーズの集大成。 本作で、初期からシリーズに関わってきたアイアンマンとブラック・ウィドウは死亡。 キャプテン・アメリカは死にはしないものの、ラストで老人となった姿で登場するので、引退、という運びになっている(演じているクリス・エヴァンスも、本作を以ってキャプテン・アメリカの役から降板すると表明している)。 その一方で、インフィニティ・ウォーのラストでサノスにより消滅したアベンジャーズのメンバーや、関係するヒーローは全て戻って来るので、製作者側からすればアベンジャーズの世代交代を果たした、という事になる(消滅前にサノスに殺されたソーの弟ロキやヴィジョンは、戻って来ないらしい。ヴィジョンは、MCUにおいては、全くと言っていい程活躍しないままシリーズを離れる事に)。 紆余曲折はあり、何名かは他界するものの、全体的な流れはアメリカ映画らしい、ハッピーエンドになっていて、期待を裏切らない。 今後もMCU映画が制作され続けるのが予想出来るエンディングになっている。 ただ、MCU映画シリーズをほぼ全て観ていると、本作と前作や前々作との連携が取れていない面が見受けられる。 インフィニティ・ウォーでは、冒頭でアスガルドの生き残りを乗せた宇宙船がサノスにより襲撃され、破壊される。これにより、アスガルドの生き残りはソーだけで、アスガルドの者は全て死亡した様に描かれていた。 現に、インフィニティ・ウォー直前の出来事を描いていたマイティー・ソー/ラグナロックで大活躍したヴァルキリーは、インフィニティ・ウォーでは全く登場していない。 にも拘わらず、インフィニティ・ウォーから5年後の出来事を描く本作では、当たり前の様に登場。しかも、地球に「新アスガルド」という地区が制定され、アスガルドの生き残りがそこで暮らしている事になっている。 インフィニティ・ウォーで全く登場しなかった、ソー以外のアスガルド人らはどこで何をしていて、どうやって地球に辿り着いたのか、と不思議に思う。 本作では、タイムトラベルが当たり前の様に行われ、様々な事件が起こるが、アベンジャーズが勝利し、インフィニティ・ストーンをそれぞれ元の時代に戻す事で、全てめでたしめでたしで終わる事になっている。 ただ、考えてみると、これには問題点が多い。 サノスは、2014年の世界から、2023年の世界にタイムトラベル。そこで2023年のアベンジャーズと戦い、消滅する運命に遭う。 となると、2018年の戦いはそもそも全く無かった事になってしまう。また、サノスが2014年から2018年までに破壊し捲った様々な惑星の文明も、破壊されない事になる。 2014年から2023年までの出来事をここまで乱しながら、インフィニティ・ストーンをそれぞれ元の時代に戻す程度で「めでたしめでたし」になるのか。 また、タイムパラドックスも生じている。 2014年のネビュラは、2023年にやって来て、サノスを未来に連れて来る事に成功するが、2023年のネビュラと対決。その結果、2014年のネビュラは死亡。となると、2023年のネビュラは存在しない事になってしまうが、引き続き登場している。 スーパーヒーローが何人も登場するので、本来ならば一本の映画の主人公になっているキャラが、脇役扱いになってしまっているのは、残念といえば残念。 既にMCUシリーズ作として単独で主役を務めたドクター・ストレンジは、本作ではラストのバトルで登場するだけで、サノスに歯が立たない。 本作とインフィニティ・ウォーの間に誕生編が公開され、そこでは主役を演じ、無限の力を発揮したキャプテン・マーベルは、冒頭から登場するものの、それ以降は大した活躍はせず、最後のバトルで漸く姿を現してサノス軍の宇宙船を破壊するという大役をこなすが、サノスとの一騎打ちでは呆気無く退けられてしまう。 インフィニティ・ウォーで消滅したスパイダーマンも、ラストのバトルで復帰し、それなりの活躍を見せるが、MCUシリーズの次回作への繋ぎ感が否めない。 ソーは、これまで何作かで単独で主役を務めていて、サノスと対等に戦える力を持っているとされるのに、本作では不摂生によりぶくぶくと肥った姿を披露し、タイムトラベル作戦でも大した事が出来ず(亡くなった筈の母親との再会を果たし、子供の様に涙を流す)、ロケットに叱責される情けなさ。ラストのサノスとの決闘でも、アイアンマン(スーツを着用していなければただの人間)を手助けする程度しか出来ない。 ハルクは、バナーの人格と共存する形で登場していて、バナーの知性にハルクの超人的な力という、本人も述べている様に「両方の長所」を活かした存在になっている。ただ、ラストのバトルではサノスとの直接対決はほぼ無く、パワーの持ち腐れに。 登場人物を主役扱いしていたら上映時間が何十時間にもなってしまうから、止むを得ないのかも知れないが。 意外だったのは、アベンジャーズから離れ、降板したのかと思っていたジェレミー・レナー演じるホークアイが、本作で復活していた事。 作中で、重大な役割を果たす。 この為に温存していたのか、と思ってしまう。 ただ、その役割を果たした後は、脇役扱いになってしまうが。 このホークアイに、真田広之演じるヤクザが殺される。真田広之は、海外映画で出演する機会が増えている様だが、未だにこうした扱いを受けるらしい。 本作でも、サノスの無敵振りには驚かされるが(何故ここまで強いのか、とにかく不明)、結局何をしたかったのか、最後まで分からない悪役だった。 あれだけ無敵だったのに、最後は呆気無く消滅するし。 MCUシリーズを追っていた者からすれば、充分以上に楽しめる映画。 一方で、MCUシリーズを全く追っておらず、初めてMCUシリーズ作を観る、という者だと、登場人物や、全体の流れが全く理解出来ず、派手なバトルシーンを見せられるだけで終わってしまう。【4K ULTRA HD】アベンジャーズ/エンドゲーム 4K UHD MovieNEX(4K ULTRA HD+3Dブルーレイ+ブルーレイ)楽天で購入
2019.07.14
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DCコミックスのスーパーヒーロー・シャザムの実写映画。『DCエクステンデッド・ユニバース』の7作目。 変身後のシャザムを演じるのはザッカリー・リーヴァイ。粗筋 1974年。 兄と共に父親が運転する車に乗っていたサデウス・シヴァナは、突如謎の神殿に召喚される。 神殿に住む魔術師シャザムから、俺の後継者となれ、と命じられるが、神殿に封印されていた七つの大罪の魔物の誘惑に負けそうになる。 純粋な心を持っていないので、勇者となる資格が無いと魔術師シャザムから宣告され、現実世界に引き戻される。 車中に戻ったサデウスは、自分の体験を兄と父親に話すが、当然ながら取合ってもらえず、兄と大喧嘩する羽目に。それに気を取られた父親が運転を誤り、交通事故に遭ってしまう。 兄に「お前のせいだ」と罵られたサデウスは、玩具の占いボールに浮かび上がった「我らを見付けろ」というメッセージを目にする。 現代。 幼い頃に母親と離れ離れになり、孤児となっていたビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)は、新たな里親が運営するグループホームに入居する。そこには足が不自由なフレディ、抱き付き癖のあるダーラ、大学進学を控えたメアリー、ゲーマーのユージーン、無口なペドロという少年少女も住んでいた。実の母親に会いたい一心で家出を繰り返すビリーは、ここでもまた馴染めずにいた。 壮年となったサデウス(マーク・ストロング)は、父の経営する会社の研究所を使い、かつての自分と同じく魔術師シャザムに召喚された人々についての研究に執着していた。 研究の結果、神殿に行く方法を漸く発見したサデウスは再び神殿へ行き、魔物達の力の源である魔法の目を封印から解き放ち、魔物らの力を得る。 老いたシャザムは、勇者となる素質を持った人間を探し続けた。 フレディ達と学校に通い始めたビリーは、フレディが虐めっ子らに暴行される現場に出くわす。最初は無視していたビリーだったが、虐めっ子らが「お前に母親はいない」とフレディを罵ったのを聞いて激怒し、虐めっ子らに殴り掛かる。 虐めっ子らから逃れ、地下鉄に乗ったビリーは、突然神殿に召喚される。 魔術師シャザムは、ビリーに対し俺の後を継げと一方的に切り出し、勇者シャザムへの変身能力を与える。勇者に変身したビリーを見届けた魔術師シャザムは、安心し切って消滅した。 勇者シャザムの変身が解けないまま現実世界へ戻ったビリーは、ヒーローオタクであるフレディに助力を求める。色々試した結果、「シャザム!」と唱えるだけで元の姿に戻る事を知る。 自在に勇者シャザムに変身出来ると知った2人は、動画共有サイトへアップロードしたり、悪人を退治したりする等、シャザムの能力を楽しみ始める。 一方、魔物の力を得たサデウスは、父の会社の役員会議を強襲し、積年の恨みを抱き続けていた父や兄らを殺害。 その直後、「新たな勇者が生まれた」という魔物の言葉を聞き、その力を得る為、シャザムを探し始める。 シャザムの力を楽しんでいたビリーとフレディだったが、フレディは虐めっ子らに「スーパーヒーローは自分の親友だ。明日会わせてやる」と宣言してしまう。 学校では目立つ行動は控えるべきだと考えるビリーと、虐めっ子らをとにかく見返したいフレディの間ですれ違いが生じ、喧嘩別れになる。 見物客らに超能力を披露する事で小銭を稼いでいたビリーは、誤ってバスを事故に巻き込んでしまう。バスの乗客らを救出したが、駆け付けたフレディとまたも言い争いになる。 そこに、サデウスが現れる。 ビリーは、超能力を持っている自分なら、訳の分からないオッサンくらい問題無く倒せると思っていたが、サデウスは魔物の力を完全に扱える状況にあった。 まだ自身の能力を完全に理解していないビリーは、サデウスに圧倒されてしまう。変身解除のどさくさに紛れ、何とか危機を脱する。 グループホームに戻ったビリーに対し、メアリー達が「ビリーの母親を見付けた」と告げる。 ビリーはこれまで自分と同じ苗字の女性を虱潰しに訪れていたものの、母親には出会えなかった。それもその筈、母親は旧姓に戻していたのだ。 ビリーは、情報を基に、急いで母親の元へ向かい、念願の再会を果たす。しかし、母親は既に再婚しており、またビリーと離れ離れになったのも、ビリーを育てる自身が無いから、という理由によるもので、息子との10数年振りの再会を全く歓迎していなかった。 実の母親と再会さえすれば本当の家族を得られると信じて疑っていなかったビリーは、現実を突き付けられ、落ち込む。 その時、フレディのスマートフォンを使ったサデウスから、「戻って来い」との電話が。 シャザムに変身し、ホームに戻ったビリーを、魔物でフレディらを監禁したサデウスが出迎える。 サデウスの脅迫に屈し、ビリーは彼と共に神殿へ向かう。 サデウスと魔物に取り囲まれるビリーだが、フレディらの助けで神殿を脱し、現実世界へと戻る。 クリスマスのイベントが行われている遊園地に逃げ込んだビリーらを、サデウスと魔物が襲う。 またもフレディ達が人質に取られてしまった。 サデウスは、シャザムの力を自分に寄越せ、と要求。 要求を呑まざるを得なくなったビリーだったが、魔術師シャザムの言葉を思い出す。フレディらにシャザムの杖を持たせ「シャザム!」と叫ばせると、フレディらもスーパーヒーローへと変身した。 力を合わせてサデウスを撃退し、魔物を封印したビリーらは、神殿を自分らの隠れ家にする事にした。 血で繋がっていても絆がある訳ではないし、血が繋がっていなくても絆は築けると思い知ったビリーは、ホームでの生活を受け入れ、フレディらと家族になる事を決意する。感想 これまでのDCエクステンデッド・ユニバース作品は、ダーク、もしくはシリアスなものばかりで、ユーモアとは掛け離れたものしかなかったが、本作はユーモアがたっぷりで、軽い気分で観られるものに仕上がっている。 これはこれで悪くないが、これまでの作風とはかなり異なるので、戸惑う者も多いかも。 全体的なノリは、1980年代のテレビや映画を彷彿させ、そういうものを観てきた者からすれば、「そもそもスーパーヒーローという荒唐無稽なストーリーなのだから、寧ろこのくらいのノリで丁度いいのではないか」という事になるのだろう。 全体的には、普通の高校生が、いきなりスーパーヒーローの力を手に入れ、それをどう受け入れ、どう使うかを学んでいく、というストーリー。 何の説明も無く手に入れてしまう(というか押し付けられる)ので、自分がどういった能力を持っているのかさっぱり分からず、色々試しながら発見していく、というのがミソ。 本作は、シャザムというキャラを初めて映画として実写化したもの。スーパーマンやバットマンと比較して馴染みが無いので、この新キャラを説明するのに終始している感じ。 サデウスという敵こそ登場するものの、これといった活躍はしないで終わる。 ストーリーを細かく検証すると、おかしいというか、ご都合主義的な部分が多い。 魔術師シャザムは、自分の後を継げる者を探し求めていた、という事になっているが、その探し方があまりにも雑。 子供を現実世界からいきなり呼び寄せては、特に説明もせず自分の後を継げと命じ、魔物の誘惑に負けそうだと知ると「お前は俺の後を継ぐには相応しくない」と勝手に決め付け、現実世界に返す、の繰り返し。 何故きちんと説明しないのか。 きちんと説明していれば、サデウスも最初に訪れた際、受け入れていたかも知れないのに。 一方で、ビリーを呼び寄せた時は、詳しく説明している(それも完ぺきではないので、超能力を得たビリーは結局苦労するが)。何故跡継ぎになるには素行が良くないビリーの時に限って手間を掛けたのか。 呼び寄せる子供らをどういう基準で選んでいたのかも、結局分からない。 登場人物らも、設定の年齢より幼稚な者が多く、共感し難いのが多い。 フレディは、自身を虐めている連中を見返す為に、スーパーヒーローの姿で学校に来い、とビリーに頼み込む。それが拒否されると喧嘩別れ。 小学生なら理解出来るが、14歳というから、アメリカなら高校生。 虐められてどうのこうのとか、スーパーヒーローの友達である事実が明らかになれば学校の連中を見返せる、という年齢ではなかろう。 虐めを繰り返す二人の男子の言動も、よく分からない。自動車を運転しているので、最低でも16歳(アメリカでは16歳で運転免許を取得出来る)の筈だが、虐め方が幼稚で、これもまた小学生の様。 また、この二人は、後の遊園地のシーンで、二人でつるんでいるのが明らかにされる。こいつらは同性愛者という設定なのか、と疑ってしまう。 敵役のサデウスも、強面の割には、行動が幼稚。 子供の頃に見た幻想を事実だと信じ(実際には事実だったが)、それを中年になっても追い求めるというのは、幼稚以外何でもない。 魔物の力を入れた後、仲の良くない父親や兄を殺すというのも、よくよく考えてみれば幼稚。物凄い超能力を手に入れながら、やるのは結局その程度かよ、と思ってしまう。 それだったら、魔物の力なんか手に入れる事に執着するより、自動小銃でも購入して乱射し、父親や兄を抹殺する方がより現実的で、手っ取り早かっただろうに。 もし魔物の力を手に入れられなかったら、老人になるまで父親や兄に対し劣等感を抱き、恨み続けていたのだろうか。 冒頭のシーンは1974年が舞台、となっている。 ただ、シヴァナ一家が乗っていたキャデラックは、1970年代後半から1980年代初期のモデルだった。 5年くらいずれている。 この頃のアメリカ車は大体似てるし、100%正確でなくても物語には影響しない、という意見があったのかも知れないが……。 何十億も掛けて製作している映画なのに、こうしたディテールの詰めの甘さは納得し難い。 少なくともジェームス・キャメロンだったら許さないだろう。 今後の展開も気になる。 子役を多く使っているので。 子役は当然ながら成長が早いので、あっと言う間に子役でなくなってしまう。 そうなったら、「見た目は大人、中身は子供」というキャッチコピーは使えない。 といって、別の子役をあてがう訳にはいかないだろうから、今後制作されるDCエクステンデッド・ユニバースでは、どういう扱いになるのか。【映画ポスター】 シャザム! Shazam! グッズ アッシャー・エンジェル /DC アメコミ /インテリア アート おしゃれ フレームなし /両面 オリジナルポスター価格:11800円(税込、送料別) (2019/4/26時点)楽天で購入
2019.04.26
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マーベルコミックスの実写版。 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のシリーズ作としては、第21作目となる。 女性がスーパーヒーロー役を演じるのは、MCUとしては本作が初(DCに於いては、既にワンダーウーマンが公開されている)。 キャプテン・マーベルを演じるのは、ブリー・ラーソン。 キャプテン・マーベルがMCUで取り上げられるのは、本作が初。 MCU第19作目のアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーは、ニック・フューリーが消滅する直前に通信機で発信すると、キャプテン・マーベルのマークが画面に現れる、という場面だけで終わっていて、キャプテン・マーベルの登場を示唆するものの、どういったキャラなのか全く明らかにされていなかった。 本作は、アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーと、MCU第22作目となるアベンジャーズ/エンドゲームを繋ぐ内容になっている。粗筋 銀河を支配するクリー帝国。 クリー帝国の特殊部隊スターフォースに所属するヴァース(ブリー・ラーソン)は、繰り返し見る悪夢に苛まれながらも、ヨン・ロッグ司令官(ジュード・ロウ)の指揮の下任務を遂行する日々を送っていた。 ヴァースは、クリー帝国の宿敵スクラル人が潜伏する星での救出任務中、スクラル人の司令官タロスによって囚われる。タロスは、過去の記憶を蘇らせる装置で、ヴァースから情報を得ようとする。 その過程で、ヴァースの脳裏で別の人生と思われる記憶が蘇ってきた。 ヴァースは隙をついてスクラル人の宇宙船から脱出し、付近にあったC-53という惑星に降り立った。 クリー帝国がC-53と呼ぶ惑星は、地球だった。 戦略国土調停補強配備局(S.H.I.E.L.D.)のエージェント・ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と、新人エージェント・フィル・コールソンが、ヴァースと接触する。 自分は宇宙からやって来た、スクラル人という別の異星人が地球を侵略する恐れがある、スクラル人は遺伝子レベルで他人に化ける事が出来る、といったヴァースの話を「荒唐無稽」と一蹴するフューリーだったが、逃走した敵を追うヴァースを追跡中、コールソンがいつの間にかスクラル人にすり替わっていたのを知る。 フューリーはS.H.I.E.L.D.長官ケラーと共に倒したスクラル人の解剖を行い、結果としてヴァースの話を信じざるを得なくなった。ケラーは、フューリーに対し、ヴァースを探し出すよう命じる。が、このケラーも、スクラル人が化けていた。要するに、スクラル人はフューリーを使ってヴァースを探させる事にしたのだった。 ヴァースを探し出せたフューリーは、意見交換を行う。ヴァースの蘇ってきた記憶を手掛かりに、アメリカ空軍秘密施設へ向かう。 その施設で、ヴァースは、悪夢に登場する女性ことウェンディ・ローソン博士(アネット・ベニング)が設計したライトスピード・エンジンのテスト中に死亡したとされる女性パイロットが自身ではないかという推理に至るが、何故クリー人の自分が地球人として生きていたのかは、まだ分からなかった。 フューリーが独断で援軍を呼んだ結果、ケラーに化けていたスクラル人の襲撃を受けるヴァースとフューリーだったが、ローソン博士が隠していた猫のグースと共に脱出する。 ヴァースは、ローソン博士について知っていて、更に地球人だった自分を知っていると思われる元空軍女性パイロットのマリア・ランボーに会いに行く。 そこで、ヴァースは、地球ではキャロル・ダンヴァースという女性パイロットであった事を知る。が、その時点でも、何故自分が地球人として生きていたのかは分からなかった。 その時点で、タロスが現れる。 ヴァースは、タロスを倒そうとするが、タロスは自分は戦いに来たのではない、話し合おう、と切り出す。 タロスにより、ローソン博士とキャロル・ダンヴァースが飛行テスト中の事故直前までの経緯を記録していたブラックボックスを回収する。その記録を聞いて、ヴァースの全ての記憶が蘇ってきた。 空軍女性パイロットのキャロル・ダンヴァースは、ライトスピード・エンジンを搭載した航空機で飛行テスト中、謎の飛行物体に襲撃され、墜落してしまう。航空機は大破するものの、キャロルもローソン博士も生還出来た。 ローソン博士は、襲撃者にライトスピード・エンジンを奪われないようにしなければならない、と言い出し、完全に破壊しようとする。が、襲撃者により殺されてしまう。 訳が分からないキャロルの前に、ヨン・ロッグ司令官が現れる。ローソン博士は実はクリー人で、彼女が開発したエンジンは自分らのものだ、と言い出す。 ヴァースは、相手が何者なのかは分からなかったが、エンジンを奪われてはならぬと判断し、ライトスピード・エンジンを破壊。その際、爆発によるエネルギーを吸収し、強大なパワーを得る事となるが、同時に記憶を喪失し、意識を失った。 ヴァースがライトスピード・エンジンのエネルギーを吸収した事を知ったヨン・ロッグ司令官は、彼女を攫い、クリー帝国へと連れて行く。記憶喪失になっていた事を良い事に、彼女を「自分はヴァースというクリー人」と信じ込ませていたのだった。 米空軍は、ローソン博士が開発したライトスピード・エンジンを無かった事にし、キャロルは単なるテスト飛行中に死亡したとして、この件を隠滅した。 クリー帝国での記憶こそ嘘で、ヨン・ロッグ司令官こそ自分の敵だと知ったキャロルは、ローソン博士の遺志を継ぎ、ライトスピード・エンジンのエネルギー・コアがあるとされる秘密基地を探し出す為、フューリー、タロス、ランボーを連れ宇宙空間へ出る。 秘密基地は、地球を周回する宇宙船だった。そこで、エネルギー・コアを回収。その正体は、ローソン博士が四次元キューブと呼んだ、インフィニティ・ストーンの一つである「スペースストーン」だった。 無人と思われた秘密基地には、ローソン博士が匿ったスクラル人が多数いた。 クリー帝国は、自分らに屈服しないスクラル人らを全滅させようと動いていた。残り少なくなったスクラル人は、ローソン博士の助けを借り、ライトスピード・エンジンで遠い銀河へ逃亡しようと計画していた。 ローソン博士は、その過程で殺されたのだった。 匿われていたスクラル人の中に、タロスの妻と子もいた。タロスがローソン博士について執拗に知りたがっていたのは、家族と再会し、共にクリー帝国の手から逃れたかったからだった。 そんな所、スターフォースが秘密基地に到着。彼らはスクラル人とフューリーを捕らえ、キャロルをクリー帝国の支配者スプリーム・インテリジェンスに接触させる。 キャロルは、スプリーム・インテリジェンスと対峙する中で、自身の全ての能力を開花させる。スターフォースを倒し、仲間らと共に地球へ帰還する。 キャロルは、銀河の二倍の距離まで届くよう改造を施したフューリーのポケベルを彼に返却。そしてスクラル人の新天地を求め、宇宙へと旅立つ。 宇宙には普通の地球人では対処出来ない敵がいると知ったフューリーは、キャロルの様な特殊能力を持ったヒーロー達を集める計画を立案する。その計画により発足したのが、アベンジャーズだった(空軍パイロットだったキャロルのコールサインが「アベンジャー」だったので、そこから取った)。 ローソン博士のクリー人としての名前が「マー・ベル」で、その意思を継ぐ者という理由で、スーパーヒーローとしてのキャロルに、フューリーは勝手に「キャプテン・マーベル」という名を与える。 それから数年後の現代。「インフィニティ・ウォー」で、全宇宙の半分の生命が消滅していた。 運良く消滅から免れていたアベンジャーズメンバーのスティーブ・ロジャース、ナターシャ・ロマノフ、ジェームズ・ローディ、そしてブルース・バナーは、この事態をどう打開すべきか探っていた。 彼らは、フューリーが消滅直前にアクティブにしたポケベルを回収していた。 しかし、ポケベルがどこの誰に対し通信していたのか、何故フューリーがポケベルをアクティブにしたのか、全く分からなかった。 その時点で、4人の前にキャロルが何の前触れも無く姿を現し、フューリーの所在を尋ねる。感想 キャプテン・マーベルという、マーベルコミックスのヒーローでありながら、あまり馴染みの無いキャラ。 女性ヒーローなので、尚更。 本作は、キャプテン・マーベルというMCUにおいては新キャラを紹介し、MCUの次回作に登場させる為の地ならし的なものになっている。 これまでのMCUのヒーローらを演じている俳優らも段々歳を取っていて(アイアンマンを演じるロバート・ダウニー・ジュニアは既に50代)、いずれは降板させなければならないので、新キャラに交代させる為の役割を担うとも思われる。 本作は、アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーとアベンジャーズ/エンドゲームの繋ぎ役なので、前作のインフィニティ・ウォーを観ていないと、その背景が分かり辛い。 また、終わり方も、単独作品として観ると中途半端なので、エンドゲームを観ざるを得ない。 MCUの商売根性は凄いと思うが、こちらがいつまでそれに付き合えるか、分からない。 1作で完結していて、他のMCU作品を観る必要は無い、というのは製作しないのか。それだとマーベルスタジオのビジネスモデルに反するから、出来ないのか。 キャプテン・マーベルは、初めて観るキャラではあるが、クセが無いので、すんなりと受け入れられるものになっている。 物凄い能力を持っている割には面白味に欠ける、という側面も無くも無いが。 これから面白味のあるキャラになっていく事を期待したい。 宇宙人と思われていたヴァースが、実は地球人だった、という事実以外は、これといった捻りの無い、単純なストーリーなので、付いていくのは楽。 胸糞が悪くなるシーンや、後味の悪さも一切無い。 強烈な印象を残すものでもないけど。 あくまでもシリーズを構成する1作に過ぎず、更に娯楽作品に徹しているMCUならではの展開。 CG満載の特撮は、今となっては真新しさは感じないが、映像的に破綻していない。 CGもここまで進化したか、と改めて感じる。 少し前だったら「こんな凄い映像が本当にあっていいのか!?」と感動していただろうに、この程度を当たり前と受け止められてしまうのは、ある意味悲しい。 本作のオープニングは、つい先日亡くなったマーベルの編集者スタン・リーに功績を讃えるものになっていた。 スタン・リーが今後カメオ出演しなくなるというのは、ある意味寂しい。 シリーズ全体を見渡してみると、特殊能力を持ったヒーローが地球に集中し過ぎている感があるが、これは止むを得ないのか。 地球とは全く関わりを持っていないヒーローを登場させる予定は無いのかね、と思ってしまう。 キャプテン・マーベルという名前のキャラは、元々別のコミック会社が登場させたが、スーパーマンと似通っていた為、スーパーマンの版権を持っていたDCコミックスに訴えられ、「シャザム」に変更せざるを得なくなる。 そうこうしている内に、「マーベル」のラベルでコミックを展開していたマーベルコミックスが全く別の「キャプテン・マーベル」を世に送り出し、現在に至っている。 元祖キャプテン・マーベルの「シャザム」は、係争相手だったDCコミックスに版権が移る。スーパーマンやワンダーウーマン程ではないにせよ、それなりに成功し、最近になってDCシネマユニバースの1作として実写化。 アメリカンコミックの流れは、よく分からない部分が多い。クリアファイル マーベル キャプテン・マーベル価格:324円(税込、送料別) (2019/4/10時点)楽天で購入
2019.04.11
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「DCコミックス」のアメリカン・コミック『アクアマン』の実写映画。「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズ第6弾でもあり、時系列的には「ジャスティス・リーグ(第5弾)」の後の出来事、となっている。 本作では、他の「ジャスティス・リーグ」のメンバーは登場しない。 アクアマンことアーサー・カリーを演じるのは、「ジャスティス・リーグ」に引き続きジェイソン・モモア。 原題は「AQUAMAN」。粗筋 1985年。 アメリカ東岸に位置する灯台の管理者トム・カリーは、岩場の海岸に打ち上げられた女性を発見し、救出する。 彼女は、海底国アトランティスから逃亡した女王アトランナ(ニコール・キッドマン)だった。 アトランナはトムの妻となり、二人の間に子供が生まれる。その子はアーサーと名付けられた。 数年後、アトランティスの追手がアトランナの下にやって来て、連れ戻そうとする。アトランナは追手を倒すものの、自分の居所を相手が掴んでいる以上、また新たな追手がやって来て、トムやアーサーを危険にさらす、と判断し、自らアトランティスへ帰る。 残されたアーサーは、トムに育てられる事になる。それと同時に、アトランティス王族の側近であるバルコ(ウィレム・デフォー)が秘密裏にやって来てはアーサーに武術を指南した。 現代。 アーサーの異父弟にしてアトランティスの王オーム(パトリック・ウィルソン)は、隣国ゼベルの王ネレウス(ドルフ・ラングレン)と同盟を結ぶ。 オームは、海を荒らす地上人に戦争を仕掛けようと考えていた。海底全ての軍事力を動員出来る様、海底の七つの国を支配する「海の覇王(オーシャンマスター)」になる、という野望を抱く。 一方地上では、アーサーはアクアマンとしてデイビット・ケイン(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)率いる海賊を撃退していた。故郷に戻り、トムと盃を交わす。その帰り、突如発生した大津波に二人は襲われる。アーサーは無事だったものの、トムは溺れて、意識を失う。トムは、ネレウスの娘である王女メラ(アンバー・ハード)の超能力によって一命を取り留める。 メラは、オームの暴走を止めるにはアトランティス王の血を引くアーサーが王になるしかないと訴る為、秘密裏に海底からやって来たのだった。 アーサーは、アトランティスに戻った母親が裏切り者として処刑された、という話をバルコから聞いていて、アトランティスと直接関わりは持ちたくない、と思っていた。が、父親の命を救ってくれたメラの懇願を無視する訳にもいかない。渋々メラに連れられて、アトランティスへ向かう。二人をを迎えたのは、バルコだった。 バルコは、アーサーが王になる為には、初代アトランティス王アトランが持っていた伝説の矛トライデントが必要だと説明する。その直後、アーサーはアトランティス兵に捕まり、オームの下へと連れられる。 アーサーは、オームに対し、地上への侵攻を中止するよう決闘を申し込む。伝統に則り、アーサーとオームの決闘が始まるが、アーサーは劣勢に陥ってしまう。そこにメラが助けに入り、二人は死を偽装して地上へ逃亡する。 アーサーとメラは、かつてアトランティスが地上にあった頃に栄えていた王国の跡地であるサハラ砂漠に行き、トライデントの在り処のヒントがイタリアにある事を突き止める。イタリアに到着した二人は、次の目的地が七つの海底国の一つ・海溝の王国にあると知るが、そこにオームから武器を渡され、ブラックマンタとなったケインが強襲する。何とかケインを撃退した二人は、海溝の王国を目指す。 異母兄のアーサーを決闘で負かし、名実ともにアトランティスの王となったと宣言していたオームは、脅迫により魚人の国を傘下に収めた。次の目標を甲殻類の国に定める。甲殻類の国を屈服させれば、海底の国々全てを支配出来る事になっていた。 海溝の国に辿り着いたアーサーとメラは、地球の核に近い「隠された海」を発見する。そこで二人は、海溝の化け物の生贄になって死んだ、と伝えられていたアトランナと再会する。アトランナの導きで、アーサーはトライデントを守る伝説の怪物カラゼンと対峙。 アーサーは、カラゼンに殺されそうになるが、その時点でアーサーはカラゼンと意思疎通出来る事が明らかになる。海の生物と意思疎通出来る能力は、子供の頃から持っていたので、アーサーにとってはごく当たり前の事だった。が、この能力は海底に住むアトランティス人でも持っていない特殊能力で、これまではアトランティスの初代の王アトランしか持っていない、と思われていた。 カラゼンと意思疎通が出来たアーサーは、トライデントを手に入れる事に成功した。 オーム率いる同盟軍と、甲殻類軍が激突する。勝利を確信するオームの前に、トライデントを手にし、カラゼンを従えたアーサーが現れ、海の生物と共に両軍を圧倒する。 アーサーとオームは再び決闘する事となり、今度はアーサーが勝利する。 アーサーは、海底国の王らに、真のアトランティス王として認められる。これにより、地上と海底との間で戦争が勃発する事態は回避された。感想 DCコミックスに於いては、スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン等にも引けを取らない古参のキャラの一人だが(1941年に初登場)、これまで映像化されてこなかったアクアマン。 水中が舞台になるので、映像化すると制作費が嵩むからだったと思われる。 その問題も、CGの進化により漸く克服されたらしい。 アメリカコミックスの実写版らしい、スケールの大きいスペクタクル作に仕上がっている。 スペクタクルになってしまったからか、クライマックスになかなか到達しない。退屈こそしないが、間延びしている印象を受けた。 当然ながら、上映時間も結構長め。アメリカコミックスは本来子供向けで、実写版も子供による観賞を想定している筈だが、本作では子供が観ている途中で眠ってしまいそう。 アクアマンの生い立ちや背景が分かる様になっていて、また他のジャスティス・リーグのメンバーらが登場せず、他のシリーズ作と無理矢理繋げようともしていないので、単独で観ても充分以上に楽しめる。 無論、DCコミックスについて、ある程度の事前知識を持っていないと、何が何だか分からなくなるだろうが。 本作では、海の底には地上の人間が想像する以上の文明がある、という事になっているが……。 海底の調査は、火星や月面の調査程にも進んでいないのが事実だとしても、受け入れ難い。 壮大なファンタジーとして受け入れなければならない。 アクアマンの身体能力が、普通の人間をはるかに上回る事が、本作で判明。 流石にスーパーマン程不死身ではない様だが、ロケットランチャーから放たれたロケットの直撃を受けても「痛い」程度で済ませられるとは知らなかった。 海底人が皆ここまで強靭なのかは不明。 本作では、ニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、ドルフ・ランドグレン等、結構著名な俳優がサポート役として登場。 主演のジェイソン・モモアが、まだあまり認知度が高くないので、それを補う為らしい。 本作により、ジェイソン・モモアの認知度はかなり上がりそう。 ニコール・キッドマンがこの手の娯楽映画に出るとは正直思わなかった。 重大な役割を演じ、アクションシーンもそれなりにこなしている様に映った。 50代とは思えない。 ウィレム・デフォーは、トビー・マグワイヤ主演のスパイダーマンシリーズでグリーンゴブリンを怪演していたので、DCコミックスの映画に出演した事に関しては驚きは少なかったが、それでもここまで大人しい役を演じるのは観た事が無い気が。 こういう役も演じられたのか、と失礼ながら思った。 ドルフ・ランドグレンの役割も、これまで演じていた役柄からすると、大人しい。 アクションシーンには一切絡まない。 何故こんな役を引き受けたのか、と思う。 というか、制作者らは何故ドルフ・ランドグレンを起用しよう、と考えたのか。 アクアマンは、コミックスでは上半身がオレンジで、下半身がグリーンの特徴的なコスチュームになっていた。「ジャスティス・リーグ」ではそうでなかったので、実写版はコミックスにそこまで忠実にしない事にしたのか、と思っていたが……。 本作のラストで、アクアマンがコミックスと同様のコスチューム姿で登場。 こういう流れになっていたのか、と妙に納得。 アクアマンに関しては、本作でやり尽くした感があるので、今後単独での続編映画が制作されるのかは分からない。 伏線は残しているが、それだけでまた映画を制作するには不充分な気がする。入学準備 アクアマン 下敷き デスクパッド アメコミ DCコミック インロック 小学生 男子向け 文房具 キャラクターグッズ入学準備 2019年 【メール便可】【あす楽】シネマコレクション【全品ポイント10倍】【ママ割 登録 エントリー5倍】2/24まで価格:369円(税込、送料別) (2019/2/22時点)楽天で購入
2019.02.22
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マーベルコミックの人気シリーズ・スパイダーマンから派生したダークヒーロー・ヴェノムの実写版。 制作はソニーが手掛けていて、マーベルスタジオは関わっていない。したがって、MCUには含まれないとされる。 アメリカではPG-13、日本ではPG12指定となっている。 原題は「Venom」。粗筋 ライフ財団の宇宙探査機が、地球に帰還。地球外生命体を持ち帰る予定だった。 しかし、宇宙探査機は大気圏に突入する段階で制御を失い、不時着し、大破した。 探査機が持ち帰った地球外生命体の一つが、現地の人間に乗り移り、逃走した。 サンフランシスコのニュースサイトに所属するジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団の創業者カールトン・ドレイク(リズ・アーメッド)にインタビューする機会を得る。 ブロックの上司は、インタビューはあくまでもライフ財団の宇宙開発事業に関する事に留めろ、と釘を刺す。 ライフ財団は、医薬品会社として発足しながら、現在は宇宙開発事業にまで手を広げる巨大企業だったが、その裏でホームレスを使って人体実験を繰り広げている、という黒い噂があった。 ただ、ライフ財団はニュースサイトのスポンサーでもあった。上司としては、血気盛んなブロックに下手な行動に出られたら困る、という考えがあった。 正義感に溢れているのと同時に自己顕示欲も強いブロックは、上司の命令に上辺では従いつつも、その裏でライフ財団の人体実験について追及し続けた。 ライフ財団の弁護団の一人で、恋人でもあるアン・ウェイング(ミシェル・ウィリアムズ)のパソコンから人体実験に関する情報を得たブロックは、ドレイクのインタビューの際に、それについて問い詰めるが、当たり前の様に否定される。 ブロックは、上司直々の命令を無視したとして、ニュースサイトから解雇される。また、アンも、情報を恋人に漏洩した、という理由で弁護団から解任される。アンは、ブロックに裏切られたと怒り、別れを切り出す。 ブロックは仕事も恋人も失った。 それから暫く経って、ブロックはライフ財団の研究者ドーラ・スカース博士の力を借り、人体実験を行っているという研究施設に侵入。被験者の一人が知り合いのホームレスだと知り、彼女を助け出そうとしたものの、その身体に蝕んでいた地球外生命体シンビオートに寄生されてしまう。ブロックは、何とか研究施設を脱出した。 ドレイクは、シンビオートが持ち出されたと知って、激怒。誰がどうやって侵入したのか突き止めろ、と手下に命じる。 そして、残ったシンビオートで人体実験を続ける。 人体実験とは、持ち帰られたシンビオートを人間に寄生させる、というものだった。 シンビオートは、単体では地球の環境に馴染めず、死んでしまう。生き延びるには、地球にある生命体に寄生しなければならなかった。 ドレイクは、ホームレスにシンビオートを寄生させようと試みていたが、相性があるらしく、拒絶反応によりホームレスもシンビオートも死亡する、という事例が続いていた。 地球は近々人類が住める環境ではなくなる、と信じるドレイクとしては、人間とシンビオートを合体させ、地球でも宇宙でも生存可能な方法を確立する事が急務となっていたのである。 ブロックは、シンビオートに寄生された事を知らないまま、自宅に戻る。 それから間も無くシンビオートの声が頭の中で聞こえるようになる。シンビオートは凶暴で、生きた物しか食料として受け付けない、という性質を持っていた。 ブロックは、徐々にヴェノムというシンビオートに、身体を蝕まれていく。 ドレイクは、スカース博士が自分を裏切ったと知り、彼女が侵入させたのがブロックだった、というのを吐かせた上で、始末する。 ドレイクは、ブロックを捕まえろと手下に命じる。 手下らは、直ちにブロックの住まいへ向かう。 そこでブロックを捕えようとするが、その時点でヴェノムが覚醒し、手下を難無く始末した。 ドレイクは、その模様を捉えた映像を目の当たりにして、ブロックがシンビオートと完全に同化出来た事を知り、何が何でもブロックを捕えてここに連れて来い、と命じる。 それから間も無く、不時着した宇宙船から逃走したシンビオートに寄生された人間が、ドレイクの下を訪れる。ライオットというそのシンビオートは、ドレイクに乗り移り、寄生。 ライオットは、ライフ財団の宇宙船で宇宙へ一旦帰った後、他のシンビオートらを引き連れて地球に戻り、人間を含む全ての生物を食い尽くす算段だった。 ブロック/ヴェノムは、地球を滅亡から救う為、ライオットを阻止する必要に迫られた。 ブロックは、ヴェノムが同じ種であるライオットと何故行動を共にしないのか不思議に思う。ヴェノムは、寄生したブロックに感化され、ライオットと行動を共にしたくない、と考えていた。元々シンビオートの中でも仲間外れ状態だったので、地球で唯一無二の存在になった方が都合が良い、とも考えたのだ。 ライオットは最強のシンビオートで、単なる人間相手なら無敵である筈のヴェノムですら苦戦する相手だった。ヴェノムを倒した後、ドレイクと共に打ち上げ間近の宇宙船に乗り込む。 倒された思われていたヴェノムは復活を遂げ、打ち上げられた宇宙船を破壊。爆発により、ライオット/ドレイクは死亡した。 ドレイクの死により、ライフ財団の悪事が公になり、ブロックは再びジャーナリストとして活動出来る様になる。 ヴェノムは、ドレイクに寄生した状態で生き続ける事になった。感想 漫画で、後に実写化された寄生獣のアメコミ版、といった感じ。 コミックの原作は、こちらの方が先なのかも知れないが。 そんな事もあり、初めて観る映画で、実質的に初めて観るキャラなのに、既視感がある。 寄生獣の漫画原作は日本の漫画とあってスプラッター的な描写が盛り沢山だったが、こちらは規制が多いアメコミが原作とあって(コミックはあくまでも子供向けなので、残虐な描写は認めるべきでない、という発想)、その実写版でもスプラッター的描写はほぼ排除されている。 そんな事もあり、「邪悪なダークヒーロー作」として売り出していた割には大人しい作品になってしまっていて、物足りない。 アメリカでは、人間を食らうヒーロー、というのは新鮮に映るのかも知れないが。 寄生獣とシンビオートの生態や特徴は、ほぼ一致している(単体では短期間しか生存出来ず、他の生物に寄生しなければならない、自由自在に変形可能で、物凄い破壊力を持つ等々)。 大きな違いといえば、主に二つある:・寄生獣にはこれといった弱点は無い一方で、シンビオートは特定の周波数の音に弱い・寄生獣は基本的に人間の頭部を挿げ替えた上で乗っ取るので、寄生されると人間ではなくなってしまい(寄生獣の主人公はそれを免れたレアなケース)、人間が寄生前の状態に戻る事は無い。一方、シンビオートは脳を本当に必要な時以外は乗っ取らない。身体のみ寄生したシンビオートは、人間は別人格となり、シンビオートは必要に応じて人間から再分離して、その場合人間は寄生前の状態に戻る事も可能(相性が悪かった場合は、再分離を図るとシンビオートも人間も死んでしまうらしいが)。 寄生のルールは本作では定まっていないらしく、ドレイクの研究施設で寄生された人間や、ライオットに寄生された人間は、シンビオートが体内から抜けた瞬間に死ぬ一方で、ヴェノムに寄生されたブロックは、ヴェノムが体内から出た後は何気無く生き続ける。また、ヴェノムはブロックの恋人に一時寄生し、ブロックと再会すると恋人から離脱脱してブロックに再び寄生。ヴェノムが体内から抜けた恋人は、元の普通の人間に戻っている。この違いについては、深く言及されない。 寄生獣は主人公が学生だったので、青春物語的な要素もあったが、本作では主人公は成人。恋愛物語的な要素はあるものの限定的で、殆どアクション映画。 残虐な描写を盛り込んで成人向けになっている寄生獣が未成年を主人公とし、残虐な描写を抑制して未成年向けの本作が成人を主人公としているのは皮肉か。 一方、言動を観る限りでは、寧ろ寄生獣の主人公の方が大人っぽい。 登場人物を深く掘り下げる日本の漫画と、あまり掘り下げないアメリカのコミックの差か。 本作の最大の問題は、主人公のブロックが共感し易いキャラクターではない、という事。 上司から下手な行動に出るなと釘を刺されていたのに、まさにその下手な行動に出てしまい、クビになり、同時に恋人も失う。 あまりにも馬鹿過ぎ。 何の裏も取らず、未確認情報を問題人物に突き付けたくらいで、「はい、そうです。非を全て認めます」となるとでも思っていたのか。 ジャーナリストは裏を取るのが基本、というのを理解していない。 作中では、上司がブロックに対し「頭がいい筈なのに馬鹿な事をしたな」と批判する場面があったが、ブロックの「頭のいい」部分は、結局最後まで観られなかった。 こんなのでよく人気ジャーナリストになれたな、と呆れてしまう。 ここまで未熟な者をそもそもジャーナリストとして採用したニュースサイトも分からないし、その未熟な者を単に釘を刺しておけば問題人物をインタビューさせても大丈夫だろう、と考えた上司も分からない。クビにする口実を作りたかった、としか言い様が無い。 人間の負け犬が、シンビオートの負け犬に寄生される事で、最強のダークヒーローが誕生する、という設定も、負け犬になった理由が身から出た錆では、魅力も半減する。 敵役であるドレイクも、冷酷ではあるものの、一ビジネスマンに過ぎず、凄みは無い。 人体実験に手を染めてまでして地球外生命体について研究していた動機も弱く、若くして世界規模の大企業を一代で築き上げた、という設定にしては小物感が漂う。 ドレイクは、ライオットに寄生され、行動を共にする事になるが、単に破壊力が増しただけに過ぎない。 双方とも、ラストで呆気無く爆死。 世界を牛耳るビジネスのリーダーの死としても、圧倒的な戦闘力を持っている筈の地球外生命体の死としても、物足りない。 ドレイクは、ライオットに寄生された状態で宇宙へ向かう、という計画を立てていた様だが、ライオットからすれば、宇宙に戻ればドレイクは最早用済みになっていた筈。ドレイクはその点を理解していたのか。 本作のラストで、マーベルコミックス全体の象徴だったスタン・リー氏が、お決まりのチョイ役で登場。 スタン・リー氏は最近死去したので、こうした遊びは今後のマーベル関連作品では観られなくなる。 最後のシーンは、続編を窺わせるものになっているが、続編が制作されるかは不明。 制作したところで、良作が望めるか。 エンドクレジット後に、何故かスパイダーマンのアニメが。 何の為に挿入されたのか、よく分からない。ヴェノム / Venom 輸入盤 【CD】価格:2186円(税込、送料別) (2018/12/7時点)楽天で購入
2018.12.07
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007シリーズ等、昔のスパイ映画をシリアスにパロディー化(?)したアクション映画「キングスマン」の続編。 タロン・エガートンが、主人公エグジーを引き続き演じる。 また、前作で死んだ筈のコリン・ファース演じるハリーも再登場する。 原題は「Kingsman: The Golden Circle」。粗筋 ヴァレンタインによる世界征服の陰謀を諜報機関キングスマンが打ち砕いてから一年。 正式にキングスマンの一員となったエグジー(タロン・エガートン)は、かつてのキングスマン候補生チャーリーに襲われるが、辛うじて撃退した。 チャーリーが犯罪組織ゴールデン・サークルに属している事実が明らかになる。 ゴールデン・サークルの女ボス・ポピー(ジュリアン・ムーア)は、自身にとって邪魔な存在となったキングスマンの一掃を画策。キングスマンに関する情報を盗み出す事に成功し、その情報を元にキングスマンに対し総攻撃を仕掛ける。 ゴールデン・サークルによるミサイル攻撃で、ロキシーを含むキングスマンのメンバーがほぼ全員殺されてしまった。 エグシーは、恋人と食事をしていた為、難を逃れた。 キングスマンが壊滅した事を知ったエグジーは、攻撃対象から外れていた為生き延びたマーリン(マーク・ストロング)と共に緊急指令「最後の審判の日」を実行する。が、指令の入っている筈の金庫には「ステイツマン」という銘柄のウィスキーしか入っていなかった。 しかし、「ステイツマン」のラベル裏の「アメリカ・ケンタッキー産」のKがキングスマンのシンボルマークで印字されていた事から、二人は僅かな望みを持ってアメリカ・ケンタッキー州に向かう。 エグジーとマーリンはステイツマンの醸造所を探索すると、そこが諜報組織ステイツマンの本部である事を知る。また、ヴァレンタインによって射殺されたと思われていたハリー(コリン・ファース)が、ステイツマンに救出され、何とか命を取り留めていた事も知った。 エグジーは、ハリーとの再会を喜ぶ。が、ハリーは致命傷に近かった傷の治療の後遺症で、記憶を喪失していた。ハリーは自分がキングスマンだった事を全く覚えておらず、エグジーについても何も覚えていなかった。 エグジーとマーリンは、ステイツマンのリーダー・シャンパン(ジェフ・ブリッジス)と会う。ステイツマンがキングスマンと同じルーツを持つ諜報機関だと聞かされた。二人は、ステイツマンの協力を取り付ける。 エグジーはチャーリーの恋人クララと接触する為、ステイツマンのウィスキー(ペドロ・パスカル)と共に彼女がいる場所へと向かう。エグジーはクララと接触し、クララの体内に発信器を埋め込む事に成功した。 ハリーは、エグジーが講じたショック療法で、記憶を回復し、現役に復帰する。 ポピーは、テレビ放送を通してアメリカ大統領に麻薬の合法化を要求。拒否すれば麻薬に仕込んでいた毒物で数百万人が死ぬ、と脅迫する。放送を聞いた麻薬常用者らはパニックに陥る。一方、大統領は、麻薬常用者らが死んでくれるなら結構だ、麻薬対策の為に莫大な予算を組む必要も無くなる、と考え、ポピーの要求には応じない、と決める。無論、公になったら麻薬中毒者らが暴動を起こすので、要求を受け入れる振りをした。 大統領令により、毒物の症状が見受けられた数百万の人々は次々「治療の為の隔離」としてある施設に収容され、死を待つだけとなった。 エグジーはハリー、ウィスキーと共に、麻薬の解毒剤があるイタリアのゴールデン・サークル研究施設に向かう。 研究施設に乗り込んだエグジーとウィスキーは解毒剤を入手し、集合地点でハリーと合流する。が、ウィスキーの不注意で解毒剤を床に落としてしまう。 ハリーは、ウィスキーを内通者だと言い張り、阻止しようとするエグジーを振り切って発砲し、ウィスキーに致命傷を与える。 エグジーは、ウィスキーをステイツマン本部に運び治療を依頼。ハリーは記憶を回復した様だが、最早正常でない、と疑うようになる。 エグジーは、ハリーとマーリンと共にカンボジア奥地にあるポピーの本拠地に向かう。 三人は、ポピーのアジト「ポピー・ランド」に乗り込もうとするが、エグジーが地雷を踏んでしまう。マーリンは、エグジーを救う為に身代わりとなり、爆死する。 残った二人は「ポピー・ランド」に乗り込み、解毒剤のアクセス・コードを奪おうとする。ハリーはポピーのロボット犬に襲われ殺されそうになるが、彼女に拉致されていた歌手のエルトン・ジョンに助けられ、彼と協力してロボット犬を破壊する。 一方、エグジーはチャーリーと一騎打ちとなり、ロキシーらの仇を討つ。 二人はポピーに毒物を打ち込み、アクセス・コードを聞き出す。 ポピーは、毒が身体に回って死亡する。 エグジーとハリーはアクセス・コードを使って解毒剤を人々に配布しようとするが、そこに治療を終えたウィスキーが現れる。 加勢してくれるのかと思いきや、配布を阻止しようとする。ウィスキーは恋人が麻薬中毒者に殺された過去を語り、麻薬中毒者らを見殺しにしようとする。が、エグジーとハリーに阻まれて失敗し、二人に殺される。 事件の解決後、キングスマンはステイツマンの資金援助を受けて再建を目指す事になる。 麻薬中毒者らを見殺しにしようと画策した大統領は弾劾される。感想 第1作は、ハリーがメインだった段階ではテンポが良かったものの、彼が退場し、メインがエグジーに交代した時点でテンポが落ちてしまった。 本作は、エグジーが最初からメイン。 最初からテンポが悪い。 ハリーが奇跡の復活を果たしたので、メインを奪回し、またテンポが良くなるのかと思いきや、ハリーは後遺症で万全でなく、メインはエグジーのまま。 終始テンポの悪いものとなってしまった。 エグジーが本作でハリー並のスマートさを見せていれば、充分以上にハリーの代わりを務められただろうが、前作から殆ど成長していない、青臭い餓鬼に留まっている。 何故エグジーをメインにする事にこだわったのか。 前作では、キングスマンのリーダーが実は敵に通じていた、という展開になった。 それだとキングスマンの存在意義が最早無くなってしまうのでは、と思ったが、キングスマンは何とか存続出来たらしい。 が、本作の前半で、敵による総攻撃を受け、壊滅状態に。前作でエグジーを上回る成績により先にキングスマンのメンバーになっていたロクシーまで死亡。 ロクシーは、成績優秀とされながらも前作では大して活躍出来ず、本作でも早々と退場。何の為のキャラだったのか、さっぱり分からない。 情報を盗まれ、ミサイル攻撃を仕掛けられたとはいえ、数百年の歴史があるとされるキングスマンが、一犯罪組織によって壊滅させられる程の脆弱な組織だったとは情けない。これまでよく存続出来たな、と思ってしまう。 イギリスに本部を置くキングスマンと同じルーツを持ち、アメリカに本部を置くステイツマンが登場する。 キングスマンに劣らず優秀な組織、という事になっているが……。 前作の敵ヴァレンタインはアメリカ人で、アメリカ国内で活動していた。 キングスマンはイギリスの組織でありながら、ヴァレンタインの陰謀に気付き、アメリカへ飛び、ヴァレンタインと対峙。 そこでは、ステイツマンの姿も影も無かった。 ステイツマンはヴァレンタインの陰謀について全く察知しておらず、漸く察知した頃(瀕死のハリーを救出)には、キングスマンが全て解決していた事になる。 ハリーを救出したものの、ハリーが何者か分からず、キングスマンと接触しなかった、というのも奇妙。 続編を無理矢理制作してしまった矛盾が出ている。 キングスマンとステイツマンは、世界中の人々を救う為、ポピーの陰謀を打ち砕く。 ただ、その「世界中の人々」は、麻薬中毒者。 その中にはエグジーの婚約者や友人も含まれていたとはいえ、世間的に見れば犯罪者を救う為に動くのは異様に映り、共感出来ない。 寧ろ麻薬中毒者らを一掃しようとした大統領や、ウィスキーの方に共感するし、同情する。 何故麻薬撲滅を掲げる者を悪者扱いし、麻薬常用を後押しする様な展開にしてしまったのか。 この様な展開だから、本作のヒロインであるエグジーの婚約者のティルダ王女には全く魅力を感じられず(毒物の症状が現れた為、麻薬常用者であった事が判明)、あと一歩のところで命を取り留め、エグジーと無事結婚できました、という結末にも、特に喜べない。何故王女たるものが麻薬常用者なのか。麻薬常用者のくせに王女という地位にあるだけで上流振っているのはおかしい。 寧ろ本シリーズで何も活躍の場も与えられないまま退場させられたロクシーを哀れに思う。 ロクシー以外にも、前作で結構活躍したマーリンが本作で死亡。 エグジーなんかより頼もしいキャラだったのに、勿体無さしか感じない。 ステイツマンの対応も、奇妙に映る。 ステイツマン上層部の指示に背いたとはいえ、一員だったウィスキーがキングスマンのエグジーらに殺されても報復せず、それどころかキングスマン再建に手を貸す。 エグジーは、自分の恋人を救いたいが為に世界中の麻薬常用者らを救わざるを得なかったが、ステイツマンは、麻薬常用者らを救う義務は無かった。 そもそも、自国の大統領が「麻薬常用者らを見殺しにしよう」と決めた以上、その方針に従わなければ筈。大統領からすれば、ステイツマン上層部こそ国家の裏切り者で、ステイツマンの裏切り者とされたウィスキーこそ大統領の意向に沿って動いていた事になってしまう。 大統領の意向に背くステイツマンに、存在意義はあるのか。 また、よく分からないのが、歌手のエルトン・ジョンが本人役で登場している事。 暴言を吐き捲る上、エグジーやハリーに劣らぬ破壊力を披露。 何故こんな映画に、こんな役回りで出演する事を了承したのか。 本作では、ペドロ・パスカルが組織を裏切る諜報員ウィスキーを演じる。 奇しくも、本作より後に観たイコライザー2でも、彼は組織を裏切る諜報員を演じていた。 一度ある映画に出演して成功すると、似た様な役に起用されてしまうらしい。 前作と同様、気兼ねせず楽しめる映画にはなっているが、前作程のハチャメチャ振りは無く、パワーダウンの感は否めない。 続編の製作が予定されているそうだが、このパワーダウン振りをどう挽回するつもりなのか。キングスマン:ゴールデン・サークル [ タロン・エガートン ]価格:1500円(税込、送料無料) (2018/10/26時点)楽天で購入
2018.10.26
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テレビシリーズを原作として製作されたイコライザーの続編。 主人公はデンゼル・ワシントンが引き続き演じる。 原題は「The Equalizer 2」。粗筋 CIAの凄腕工作員だったロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、ある都会のアパートで、個人タクシーの運転手として生計を立てていた。時折助けを求めてくる人々の為に、自身の戦闘能力を活かしてそうした問題を解決していた。 元上官で、マッコールを陰から支援しているスーザン・プラマー(メリッサ・レオ)は、マッコールと会った後、ベルギーへと急行する。 ベルギーのある民家では、CIAの協力者が妻を殺害した後自殺する、という事件が発生していた。自殺にしては不審な点があったので、捜査を開始する事に。 しかし、スーザンは滞在中のホテルで何者かに襲われ、殺されてしまう。 この報を受けて、マッコールはベルギーでの事件を捜査する事に。現地には飛べなかったが、捜査記録や、監視カメラの映像から、ベルギーのCIA協力者は妻と共に殺されたのであり、自殺ではない、と結論する。スーザンを襲った暴漢も、彼女の動きを確認した上で襲っているのが判明。スーザンがベルギーで捜査されると都合が悪い者によって、殺害された、とも結論する。つまり、ベルギーのCIA協力者を殺害した者と、スーザンを殺した者は、無関係ではない、と。 マッコールは、自分が死んだと見せ掛ける事で隠居していたが、支援者のスーザンが死んだとなっては、最早隠居出来ないと判断し、CIA時代の元同僚デイブ・ヨーク(ペドロ・パスカル)の前に姿を現す。 これまでマッコールは死んだと信じて疑っていなかったヨークは、マッコールが生きていたと知って動揺。しかし、ベルギーやスーザンの殺害事件捜査に協力する事を約束する。 それから間も無く、マッコールはタクシー内で、乗客を装う殺し屋に襲撃されるが、難無く始末する。殺し屋の携帯電話の通話記録を解析した所、ある事実に行き着く。 マッコールに殺し屋を差し向けたのも、スーザンを殺害したチンピラを雇ったのも、そしてベルギーのCIA協力者を殺したのも、ヨークだったのだ。 この事について、マッコールはヨークの自宅を訪れ、説明を求める。 ヨークは、渋々ながらも認め、自身の行動を正当化する。 マッコールが「死んだ」後、彼とヨークが属していた工作員グループは解散され、ヨークらはお役御免となった。 CIAによって戦闘員となるべく養成されたヨークらは、困窮する。生活の糧が無くなったからだ。そこで、雇われの暗殺稼業を営む事に。 ベルギーのCIA協力者は、この事実に気付いた為、ヨークらに殺された。スーザンも、殺害現場に飛んでその事実を掴みつつあった為、殺されたのだった。 マッコールは、ヨークらの行動は許されるべきではない、と論じるが、ヨークは、自分らはお前と違って「引退後」の支援は受けられなかったので止むを得なかった、と反論する。 マッコールは、ヨークと、殺し屋集団に成り下がった元同僚らに対し、友人であるスーザンを殺した以上、お前らを全員殺すと宣言した上で、とりあえずその場を去る。 ヨークらは、マッコールは勿論、自分らの稼業について知っている者全てを始末する為、動き始める。 マッコールは、それを阻止する為、先回りしてスーザンの夫を匿い、自身の生まれ故郷へと向かう。ハリケーンが接近していて、住民が全て退避していた。ヨークらを迎え撃つには格好の場所となっていた。 ヨークらは、完全武装の状態でマッコールの生まれ故郷に到着。マッコールを捜索して、殺害しようとするが、ハリケーンの中、一人、また一人と、地元の利を活かしたマッコールに始末されていく。 残ったヨークは、たった一人でマッコールと対峙。しかし百戦錬磨のマッコールには手も足も出ず、殺される。感想 前作で示されたマッコールの無敵振りは、本作でも発揮される。 というか、より発揮される。 マッコールは、本作で何人もの敵と対峙するが、掠り傷負う事無く相手を倒す。 ラストのヨークとの格闘ではナイフで切り付けられ、負傷するが、戦闘力は全く落ちず、ヨークを難無く始末している。 ヨークらは4人掛かりで手ぶらの一般人を始末するに留まる一方で、マッコールは武装したグループの中に一人で飛び込んでいるので、練度がそもそも違うのだろうが、それにしても圧倒的な差は何なのか、と思ってしまう。 単に戦闘員として無敵でなく、関わる問題全てを手際良く解決している。 ギャングの世界に足を踏み入れそうだったアーティスト志望の若者を更生させているし、第二次世界大戦中に姉と生き別れになってしまい、少女時代の姉を描いた肖像画を取り戻す事を生き甲斐としていた老人に関しては、とっくに死んでいたと思われていた姉本人を探し出し、再会させている。 問題解決能力がここまで高いのなら、タクシー運転手なんかに留まっていないで、もう少しまともな仕事に就くか、事業を起こせばいいのに、と思ってしまう。 死んだ事になっているので、日常生活ではあまり目立ちたくないのかも知れないが。 とにかくアクションシーンが観たい、ストーリー等どうでもよろしい、という者にからすれば、充分以上に楽しめる映画に仕上がっている。 ただ、ストーリーを細かく観てしまうと、問題点が当然ながら多い。 最大の問題点は、敵が外ではなく、内にいた、という最近のスパイ物では在り来たりの展開になってしまっている点。 CIAは、マッコールやヨーク等、凄腕の戦闘員を養成しながら、ひょんな事であっさりと解雇。ヨークらの様に、折角の戦闘能力を活かして何かやらかそう、と思うのは当然。マッコールの様に、戦闘力を必要としない職業に再就職して満足する方が珍しい。そのマッコールでさえ、結局戦闘力を活かして、近所トラブルに首を突っ込んでいる。 こういうストーリーを観てしまうと、CIA等の諜報機関は情報収集に専念して、下手な工作はしない方がいいのでは、と思ってしまう。本作はただのフィクションだが、現実の世界でも911テロを起こしたビンラディン、アメリカと戦争したイラクのフセイン大統領等、当初はアメリカの支援を受けていた者が、世界情勢の変化によりアメリカに見捨てられた結果、元飼い主に噛み付いて、世界を混乱に陥らせている。 外の敵より、身内から生まれた敵の方が、余程も厄介だ、てのをいい加減学んでほしい。 ストーリー構成は、CIAや元工作員を巡る陰謀と、マッコールが日常生活で触れ合った者らの問題の解決が同時に進行する形になっている。 日常生活の部分は、陰謀部分と比較すると、ペースが落ちる。これをアクションシーンの合間の息抜きとするか、中だるみと捉えるかは、鑑賞者によって異なるだろう。個人的には、マッコールというキャラの「静」の部分と「動」の部分が観られ、演じているデンゼル・ワシントンの俳優としての優秀さ観られて、良かったと思っているが。 前作もそうだったが、本シリーズでは人をガンガン殺し、ガンガン殺されていくが、警察は全くといっていい程関わってこない。 ベルギーでの偽装殺人では捜査当局が関わっているが、マッコールらが介入するのと同時に「後は全てお任せします」と言わんばかりに姿を消す。 マッコールの生まれ故郷では、派手な戦闘を繰り広げられ、終わった後には死体がいくつも転がっている状態になったのに、ラストではマッコールがそこで平和な暮らしをしている姿が描かれる。 事故死で処理出来ない死体や、戦闘で破壊された建物に関して追及された様子は無い。 マッコールはどうやって言い逃れしたのか。 そういった部分をリアルに描いてしまうと、最早娯楽作品として成立しない、という面はあるのだろうけど。 更に続編が制作されるのかは不明だが……。 仮に制作されたとして、マッコールはどんな職業に就いているのか。 本作は、日本ではあまり話題になっておらず、公開を知ったのは偶然。 映画館のあるショッピングセンターに用事があったので、何かやってないかなと映画館のサイトを期待せず確認して、本作の上映を知った。 何故ここまで公開についてどこも報じていなかったのか。 観る価値の無いしょうもない邦画についてはしつこく番宣するのに。イコライザー2 / Equalizer 2 輸入盤 【CD】価格:2276円(税込、送料別) (2018/10/19時点)楽天で購入
2018.10.19
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トム・クルーズ主演のミッション・インポッシブル・シリーズ第6弾。 第1弾が1996年公開で、20年も続いているので、今となっては、元々テレビシリーズだった事を知らない者もいると思われる。 内容的には、前作のローグ・ネーションの続編といえ、前作の敵役ソロモン・レーンが再登場する。 また、クルーズ以外で全作に出演しているヴィング・レイムスと、準レギュラーになりつつあるサイモン・ペッグも、同じ役で登場。 第3弾で主人公の妻を演じたミシェル・モナハンも、同じ役で再登場しており、総集編的な1作になっている。 原題は「Mission: Impossible - Fallout」。粗筋 米国諜報局CIAに属する特殊任務部隊IMFの工作員イーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるチームは、盗まれた3つのプルトニウムを回収する作戦を実行していた。作戦は問題無く完了するかに見えたが、突然現れた第三者によりプルトニウムを奪われてしまい、失敗に終わる。 イーサンは、プルトニウムを再び奪い返し、複数の都市の同時核爆発を未然に防ぐという、新たなミッションを受ける。 この事件の裏側には、以前壊滅に追い込んだ筈のテロ組織シンジケート(ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション)の残党が結成した新テロ組織アポストルが関連していた。 アポストルに関する情報は少なく、アポストルに属するジョン・ラークという正体不明の人物が、ホワイト・ウィドウという女性とフランスで接触してプルトニウムを購入する予定、という断片的なものしか得られない。 イーサンは、直ちにフランスへ飛ぼうするが、横槍が入る。 CIA長官エリカ・スローン(アンジェラ・バセット)が、IMFは作戦を失敗し続けていて信用に置けない、と判断し、監視役として長官の肝いりの工作員オーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を同行させないと、IMFを外し、CIAが自らミッションを敢行する、と言い出したのだ。 イーサンは反発しつつも、身内で争っている時間的余裕は無いと考え、ウォーカーの同行を認める。二人はパリに飛んだ。 イーサンとウォーカーは、ジョン・ラークと思われる人物と対面するが、予想以上の抵抗に遭う。イギリス情報局の工作員イルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)も参入して、3人掛かりでジョン・ラークを倒すが、殺す羽目になってしまう。 イーサンは、ジョン・ラークに成りすまし、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)と接触。ホワイト・ウィドウは、イーサンが偽物だと即座に気付いたが、受け入れる。 ホワイト・ウィドウは、イーサンに対し、プルトニウムを手に入れたいなら、自分の信用を勝ち取れ、と条件を出す。 その条件とは、シンジケートのトップで、イーサンが確保に貢献したソロモン・レーン(ショーン・ハリス)を脱獄させる、というものだった。 レーンは、イーサンがCIAに引き渡した後、世界各国の諜報機関から尋問を受けていて、厳重警備の中、国から国へと移動していた。ただ、これはイギリス情報局にとっては好ましい状況ではなかった。何故なら、レーンはイギリス情報局との関わりが深く、無暗に証言されるとイギリスの沽券に関わるのだ。そこで、イギリス情報局はレーンを奪還もしくは殺害しようとしていた。イルサが今回参入したのも、レーンを殺せという使命が与えられていたからだった。 レーンは、近々フランスにやって来るので、その際に脱獄させろ、とイーサンはホワイト・ウィドウに命じられる。 レーンを脱獄させるのは危険だと理解していたが、プルトニウムを手に入れるには止むを得ないと考え、イーサンらはレーンを脱獄させる。 一方、ウォーカーは、上司のスローンに報告する。スローンに偽の証拠を渡し、パリで殺す羽目になった人物はジョン・ラークではなく、ただの代理人で、イーサンこそジョン・ラークだ、嘘を吐く。イーサンはIMFやCIAにずっと裏切られてきたので、遂に見切ったのだ、と。 スローンは、イーサンやIMFに対し、秘かに包囲網を敷き始める。 イーサンは、レーンを秘密の場所に連れて行き、ホワイト・ウィドウに引き渡す準備を始める。無論、レーンを逃すつもりは無く、プルトニウムが手に入ったらまた確保する予定だった。 が、そこにイーサンの上司で、IMF長官であるハンリー(アレック・ボールドウィン)が現れる。ハンリーは、CIAがイーサンこそジョン・ラークだと信じて疑っていない、と告げる。イーサンは反発するが、拘束されるしかなかった。 ウォーカーは、イーサンのミッションを引き継ぐと宣言。レーンと二人切りになる。その時点で、ウォーカーは本性を現す。彼こそジョン・ラークだった。レーンと共謀して、プルトニウムを手に入れる計画だったのだ。 全て自白した時点で、拘束された筈のイーサンが、ハンリーと共に現れる。 ハンリーがイーサンを拘束するというのは、ウォーカーに仕掛けた罠だったのだ。ウォーカーの裏切りは、スローンにまで知れ渡る。 これにより、イーサンとハンリーはスローンを納得させられたので、ミッションを続行するつもりだった。 が、スローンには別の考えがあった。敵味方が分からなくなってしまったので、全員を拘束する、と。CIA直属の特殊部隊を投入し、イーサンとウォーカーらを拘束しようとする。 しかし、この特殊部隊はウォーカーの息が掛かっていた。ウォーカーとレーンを解放し、イーサンらを殺そうとする。 イーサンらは特殊部隊を倒すが、その過程でハンリーが殺されてしまう。 イーサンは、逃亡したウォーカーを追うが、最後の最後で捕まえられなかった。 イーサンは、ウォーカーとレーンが爆弾に搭載されたプルトニウムと共に向かった先を割り出す。 カシミール地方だった。そこはパキスタン・インド・中国の水源となっていて、核爆発を起こせば世界人口の1/3が水不足に陥り、世界が混乱する。 レーンとウォーカーを阻止する為、イーサンは自身のチームを引き連れてカシミールへ飛ぶ。 カシミールに到着したイーサンは、「IMF工作員でいる限り守り切れない」という理由で止むを得ず別れた元妻ジュリアと再会。彼女は国際医療団体に属していて、仕事でカシミールに来ていたのだった。 その時点で、イーサンはレーンの計画の全貌を知る。レーンは、世界を混乱に陥れるだけでなく、イーサン個人への復讐として、カシミールを選んだのだ、と。 イーサンは、世界を危機から救うのと同時に、元妻も救う事を迫られる。 イーサン率いるチームは、核爆弾を発見するが、無害化するには起爆装置が必要だと知る。 その起爆装置は、ウォーカーが持っていた。彼は核爆弾を起動した後、起爆装置を持って現場を離れる。 イーサンは、起爆装置を奪うべく、ウォーカーを追う。 イーサンは、ウォーカーを格闘の末に倒し、起爆装置を手に入れる。 核爆弾は爆発寸前に解除された。 レーンは再び確保され、ホワイト・ウィドウを通じてイギリスに引き渡される。これにより、イルサはイギリス情報局の信頼を回復した事になった。 イーサンも、今回の危機を防ぎ、裏切り者を暴いた事で、スローンの信頼を勝ち取った。感想 スパイ映画の本家といえる007シリーズが小粒になっていく一方で、本シリーズはますます派手になっていく感じ。 トム・クルーズ自らが大半をこなすとされるスタントも、前作と超える派手さ。スタントの撮影で足を骨折した事もあったとか。還暦にも手が届く年齢だという事を全く意識させない。 最初から最後までノンストップのアクションとなっている。 ただ、映画そのものを細かく観てしまうと、今回の「世界的危機」は、前作できちんと対処していれば、避けられていたのでは、と思ってしまう。 イーサンは、仲間を大切にし、敵もなるべく殺さず生かして捕える事を信条とする。 映画で「善」の側に付く者として、当然といえば当然だが、その信条が結局不要な問題を引き起こしていて、善人というより、単なるお人好しとしか映らない。 前作で、イーサンは、苦労の末に非情なテロリストのレーンを生かして確保し、めでたしめでたしで終わった。 が、本作では、実際にはめでたしめでたしで終わっておらず、再びレーンを命懸けで追う羽目に。 前作で容赦無く殺していれば、また命懸けで追う必要は無かったのに。 その教訓を踏まえ、本作ではレーンを始末する(もしくは始末せざる得ない場面に持ち込まれる)と思いきや、今回も生かして捕え、イギリス情報局に引き渡している。 何も学んでいない。 そもそもテロリストを「重要な情報が得られる」という理由でいつまでも生かしておく根拠は無い。 レーンの様な凶暴なテロリストは、毎日の様に新たに誕生している筈だから、それらを一人一人「何か重要な情報を持っているだろう」と言って生かしていたら、確保していないテロリストを追う一方で、確保したテロリストを厳重に収監する必要に迫られる。漫画じゃあるまいし、一度倒した敵はさっさと始末しておかないと、命がいくらあっても足りないだろうに、と言いたくなる。 テロリストも凶暴化していくので、過去に捕えた極悪非道のテロリストが、現在の基準では「大人しい」となってしまい、情報源としても、精神分析で活用するにも不充分になってしまっている可能性もある。 その意味でも、テロリストは容赦無く始末する必要が。 実際、現実には、2001年に発生した911同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディンに関しては、米政府は殺害作戦を決行。生け捕りは、作戦の計画段階で放棄されたと考えられる。 現実のテロ戦争で当たり前の様にやっている事を、フィクションの世界で躊躇するのはおかしい。 イーサンは、お人好しでありながらも優秀だが、他はとにかく無能なキャラが多い。 単に無能ならまだいいが、イーサンの前に立ちはだかり、本来の敵以上に邪魔な存在になっている。 最大の無能者が、CIAの女長官スローンだろう。 彼女はIMFを無能呼ばわりし、CIAが自ら今回のミッションを引き継ぐ、と豪語。IMF長官ハンリーが反発した為、代わりにCIAの敏腕工作員とされるウォーカーを監視役に据えろと要求。 このウォーカーこそ、正体不明のテロリストのジョン・ラークだった。 IMFが無能なら、裏切り者を敏腕扱いするお前は何なんだ、と問いただしたくなる。 イーサンとハンリーがウォーカーが裏切り者である事を暴き、ここで事態は収拾するのかと思いきや、スローンは特殊部隊を突入させ、全員を拘束するよう命じてしまう。 このスローンお気に入りの特殊部隊も、ウォーカーの息が掛かっていて、裏切る。その結果、ハンリーは殺され、ウォーカーは逃走。 スローンは自身の周りを裏切り者でしか固められないらしい。 もしスローンがもう少し自分が思っている程優秀な人物だったら、今回の危機はそもそも発生していなかったと思われる(映画が無くなってしまうが)。 最後になってしれっと登場し、瀕死のイーサンを救助して、まるで自分が物凄い善人で、全ての失態を挽回したみたいな面をした時は、呆れるしかなかった。何故イーサンはこいつを張り倒さなかったのか。 本作でイーサンと敵対するのは、レーンと、新キャラのウォーカー。 ウォーカーは、ジャスティス・リーグでスーパーマンを演じるヘンリー・カビルが演じている。 カビルはどちらかというと悪人面なので、善の塊の筈のスーパーマンより(カビルが演じているスーパーマンは、どう観ても善の塊ではなく、従来のスーパーマンのイメージからかけ離れている)、この役の方が納得が行く。 本作であっさりと死んでしまうのは、ちょっと残念。 また、カビルは背が高く、がっしりした体格で、並んで立つとトム・クルーズがいかに小柄なのかが分かってしまう。 ウォーカーこそアポストルに属するテロリストのジョン・ラークである事が判明するが……。 CIAの敏腕工作員として仕事をしているのに、どうやってアポストルに属する事が出来たのか、そもそも何故テロ組織に加担する事になったのか、それらの説明がなされない。無暗にあちこち動いていたら、たちまちばれてしまうだろうに。CIAがそこまで無能とは思えない。CIAはウォーカーの正体を知りつつも、泳がせていた、という読み方も出来ないが、そうだとすると作中でのスローンの言動は間抜け過ぎ。 テロリストの仲介役ホワイト・ウィドウも、ストーリーを無駄に複雑する為だけに登場している感じ。 省いてもストーリーは成立していたと思われる。 ホワイト・ウィドウは実はCIAの工作員だった、という真相も、ストーリー全体を分かり辛くしている(何故CIA工作員が、フランス警察を殺してまでレーンを脱獄させ、最終的にイギリス当局に引き渡さなければならないのか、何故CIAが回収しようとしていたプルトニウムを、テロ組織に流そうとしていたのか、等々)。 無駄な部分や、説明不足の部分があるものの、おおむね楽しめる一作には仕上がっている。 トム・クルーズはまた続編を制作するのかね。 もしそうなったら、映画シリーズで一人のスパイを演じ続けた俳優としては、007を演じたロジャー・ムーアを超える事になる。
2018.09.14
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スター・ウォーズ・シリーズのスピンオフ第2弾。 若き頃のハン・ソロを描いている。 時系列では、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の10年前となっている。 原題は「Solo: A Star Wars Story」。邦題では、何故かフルネームになっている。 原題は、本作の主人公の名前であるのと同時に、「独り者が独りで生きていく」という意味合いにもなっていると思われるのだが、邦題だと単に主人公の名を述べているだけになってしまう。粗筋 はるか昔の遠い銀河での出来事。 惑星コレリアからの脱出を企むハン(オールデン・エアエンライク)とキーラ(エミリア・クラーク)の恋人同士は、宇宙港の警備員に渡せる賄賂と成り得るコアクシアム燃料を手に入れる事に成功し、宇宙港へ向かう。その二人を、コアクシアム燃料を奪われた組織の者が追跡する。 宇宙港に到着した二人は、警備員に賄賂を渡し、ゲートを通されるが、ハンが通った時点でキーラは追手に捕まってしまう。 ハンは、キーラを取り返す為に、出来るだけ早くコレリアに戻って来る、と誓う。 ただ、当面は、コレリアから離れなければならない。といって、どこかに行ける当ても無かったので、ハンは銀河帝国軍の募集機関に直行し、そのまま入隊した。その際、募集機関の者が、苗字の無いハンに対し、「独り者(ソロ)だから」として、ハン・ソロとして登録する。 3年後。 ハンは、銀河帝国軍の兵として、戦場の第一線で戦っていた。 次々と死んでいく他の兵を目の当たりに、このままでは自分も同じ運命を辿り、キーラの奪還どころではなくなる、と判断。 帝国軍から脱走しよう、と決める。 ただ、脱走しようにも、戦場から逃げる手立ては無い。 そんな所、帝国軍の制服こそ身に着けているものの、明らかに帝国軍でない一行を見掛ける。トビアス・ベケット(ウディ・ハレルソン)率いる泥棒集団だった。 ハンは、トビアスに対し、自分にはパイロットの知識があるので、役に立てると説得を試みる。が、トビアスは彼を受け入れず、脱走兵として逮捕させる。 ハンは、ピットに放り込まれる。そこで、ウーキーのチュウバッカと出会う。二人は協力して、ピットから脱出。トビアスの下へ走る。 トビアスは、ここまでしつこい奴なら寧ろ使えるかも、と考えを改め、仲間に加える事に。 ハンとチュウバッカは、トビアス率いる泥棒集団と共に、前線である惑星から脱出した。 トビアス一行は、別の惑星で、コアクシアム燃料を盗む計画を実行。その最中に、エンフィス・ネスト率いるクラウド・ライダーという海賊が現れ、コアクシアム燃料を彼らから奪い取ろうとする。これにより、トビアス率いる泥棒集団は、トビアス、ハン、そしてチュウバッカを除いて全滅。コアクシアム燃料も奪えなかった。 ハンは、計画は失敗に終わったが、命があるだけでもマシだとトビアスに言う。 が、トビアスは、命が助かっても無意味だ、と反論。何故なら、コアクシアム燃料の強奪は自分らの為ではなく、依頼によるものだったからだ。 その依頼主とは、犯罪組織クリムゾン・ドーンの幹部ドライデン・ヴォスだった。 逃げた所でドライデンから一生追われる羽目になるだけだと知らされたハンは、だったら会いに行って、交渉すればいい、と提案。 ハンらは、ドライデンの宇宙船へと向かう。 そこで、ハンはキーラと再会。キーラは、ドライデンの右腕として活躍していた。 再会を喜ぶのも束の間、ハンは、トビアスと共にドライデン(ポール・ベタニー)と対面。 どう落とし前を付けてくれるのだと迫るドライデンに対し、ハンは別の場所からコアクシアム燃料を盗めば良い、と提案。惑星ケッセルで、コアクシアム燃料を採掘しているので、そこから奪える、と。 ドライデンは、その計画を了承する。ただし、条件を付けた。キーラを監視役として同行させろ、と。 キーラと一緒にいたかったハンにとって、それは願っても無い条件だった。 ケッセルまで行くには、宇宙船を新たに調達する必要があった。キーラは、ランド・カルリシアン(ドナルド・グローヴァー)なら提供出来る、と言う。ハンは、ギャンブルでランドの宇宙船を奪おうとするが、負けてしまう。が、コアクシアム燃料の強奪計画に興味を持ったランドは、儲けの一部を受け取る事を条件に、参加を決める。 ランドの宇宙船ミレニアム・ファルコンでケッセルに到着したハン一行は、未精製のコアクシアム燃料を奪う事に成功。帝国艦隊の追跡を振り切り、コアクシアム燃料の精製設備がある惑星サバリーンに到着する。 そこでは、エンフィス・ネスト率いるクラウド・ライダーが待ち構えていた。 ランドは、ここで戦ったら負けるだけ、と読んで、たった一人でミレニアム・ファルコンでその場から逃走してしまう。 ハン一行は、エンフィス・ネストと直接対決せざるを得なくなる。 が、その時点でエンフィス・ネストは仮面を脱ぎ、素顔を見せる。ハンやキーラと年齢がそう変わらない女性(エリン・ケリーマン)だった。クラウド・ライダーは海賊ではなく、帝国やクリムゾン・ドーンに抵抗する反乱軍だったのだ。ハンは、エンフィスに同情。コアクシアム燃料をドライデンに渡すべきでない、と考える様に。 ハンは、ドライデンを騙す策を講じるが、トビアスが裏切って、ドライデンにその策を伝えてしまっていた。 ドライデンは、エンフィスらを殺し、コアクシアム燃料を奪う工作を実行する。 が、ハンは、トビアスの裏切りを予測していて、対策を講じていた。それにより、エンフィスらは、ドライデンが送り込んだ武装集団を倒してしまう。 形勢が逆転されたと知ったトビアスは、ドライデンを見切り、その場から逃走。 ハンは、キーラと共に、ドライデンを倒す。 キーラは、ハンに、トビアスの後を追う様、促す。 ハンが去った後、キーラはドライデンの主であるダース・モールと連絡を取る。彼女は、自分がドライデンの後を引き継ぐ、と宣言。ドライデンを殺したのはトビアスだと嘘を吐き、ハンについては何も述べなかった。ダース・モールは、キーラに対し、自分の下へ来いと命じる。キーラは、それに応じるしかなかった。 一方、ハンは、トビアスと対決。撃ち合いで、トビアスに致命傷を与えた。トビアスは、息を引き取る直前、ハンの行動は正解だったと告げる。 ハンは、コアクシアム燃料をエンフィスらに引き渡す。 エンフィスは、反乱軍に加わらないかとオファーするが、ハンは固辞。その場を去る。 ハンは、ランドを探し出し、再びミレニアム・ファルコンを賭けてギャンブルする。 前回ハンが負けたのは、ランドがいかさまをしていたからだった。ハンは、ランドがいかさまが出来ない様工作し、ギャンブルに勝利。ミレニアム・ファルコンを獲得した。 ハンは、チュウバッカと共に、ミレニアム・ファルコンで惑星タトゥーインへと向かう。大物ギャング(ジャバ・ザ・ハット)が、大仕事を計画している、という情報があったからだ。感想 スター・ウォーズ・シリーズでも人気キャラのハン・ソロの過去を描いた意欲作。 成功しているようで、成功していないような、相反する感想が浮かび上がる。 SF冒険物としては何ら問題は無いが、スター・ウォーズ・シリーズの1作として観ると、物足りない、という事らしい。 多くの伏線も未解決のままというか、意味不明な部分が多い。 本作のハンは、旧3部作のハンと比べて、やけに理想主義的。 善人で、お人好しなのである。 ハンは、コレリアから脱出した後、キーラを救い出す事だけを目標に3年間軍隊生活を続けた、という事になっている。 軍隊生活で無数の死を目撃し、自身も死にそうな目に何度もあっていたと思われるのに、お人好しの性格を維持出来たのは、ある意味凄い。 若く、人生経験が少ないから維持出来た、と言えなくもないが、違和感がある。 本作での出来事をきっかけに、抜け目の無い、ひねくれた性格になっていく、と考えるべきか。 3年間の軍隊生活でも払拭出来なかったお人好しを、今回の出来事だけで払拭してしまう、というのも凄いが。 ハンを演じたオールデン・エアエンライクは、そう見える様、演技指導された事もあったのだろうが、旧3部作でハンを演じたハリソン・フォードをきちんと彷彿させる演技をしていた。世間の評判はそう良くはないらしいが、ハリソン・フォードが偉大過ぎというか、シリーズそのものが偉大になり過ぎたので、仕方ない面がある。ハリソン・フォードの演技も、冷静に観れば突出したものではない。本シリーズの成功が無かったら、単なる一俳優で終わっていただろう。 エピソード5で初登場するランドも、登場。 ひたすらズルくて、口がでかいだけの、自己中心的なキャラとしてしか描かれていない。何故こんなのをハンはエピソード5で頼ったのか、と思ってしまう。案の定裏切られ、捕まってしまうし。 ランドは、本作では旧3部作への橋渡しをする為だけに顔を出した、という程度で、ストーリーには特に貢献していない。 仮に登場していなくても、映画そのものは成立していただろう。 新キャラとして登場するのが、ハンの幼馴染で、恋人でもあるキーラ。 重要な役割を果たす、という扱いのキャラではあるものの、描き方が微妙。 ハンが、彼女を救出する事を夢見て3年間もの間軍隊生活を耐えている間、彼女は自分なりにコレリアから脱出していた事が判明。 ハンの人生の最大の目標が、無駄に終わってしまっている。 また、広い宇宙で、無数の惑星がある中、二人が偶々再開する、というのも不自然。それとも、スター・ウォーズシリーズが展開している舞台は、銀河の中のほんの一部に過ぎないのか。 ハンから引き離されてからたった3年で、彼女が犯罪組織の幹部の右腕を担ぐまでになった、というのも不可解。 ハンが軍隊生活を経験しながらもお人好しのままでいる一方で、彼女はすっかり成長してしまっていて、現実主義に。3年間でハンの性格は殆ど変っていないのに、何故キーラがここまで変わったのか。 観終わった後は、ハンの幼馴染のキーラと、犯罪組織に属するキーラは、別々のキャラでも良かったのでは、と思ってしまう。 別のキャラにしておけば、本作の苦難を乗り越えたハンは、漸くコレリアに戻り、キーラを救出する手立てが出来た、という展開にも出来ただろうに(続編も制作出来る)。 本作のストーリー運びでは、10年後の出来事とされる旧3部作でハンが幼馴染であるキーラの事を完全に忘れ、偶然出会ったレイアに乗り換えてしまう心境が理解出来ない。 悪役として、ドライデン・ヴォスが登場。 犯罪組織の幹部として、物凄い権力を持っている、という設定になっていて、登場人物の誰もが恐れる存在として描かれている(悪党であるトビアスですら恐れている)。 が、言動を見る限りでは、トビアス並の小悪党に過ぎず、恐れられる存在、という程でもない。脅迫めいた発言に、周りが必要以上に恐れているだけの様。 悪役としては、力不足。 演じたのは、アベンジャーズ・シリーズでヴィジョンを演じるポール・ベタニー。アベンジャーズでは観られない悪党としての演技は、新鮮といえる(アベンジャーズで演じるキャラのヴィジョンより強そうだし)。 よく分からないのが、ドライデン・ヴォスの主として、ダース・モールが登場する事。 ダース・モールは、新三部作のエピソード1で登場し、そこで死んでいる。時系列からすると、本作の20年前の出来事。 20年も前に死んだキャラが、何故当たり前の様に登場しているのか。エピソード1で死んだ様に見えたが、実際には死んでいなかった、という事か。 死なせたキャラを、「人気だから」という制作者側の都合で安易に復活させてしまうと、収拾がつかなくなるだろうに。 ダース・モールが犯罪組織に属している、という設定も不明。銀河帝国の皇帝とは手を切った、という事か。何故そんな事をしたのか、その裏事情の説明は一切なされていない。犯罪組織と銀河帝国は、裏で繋がっている、とも考えられるが、そうだとすると、銀河帝国の管理下にあるコアクシアム燃料を執拗に盗み出そうとする犯罪組織の目的が無意味になってしまう。 ダース・モールの登場は、制作者側としてはファンの為のサプライズのつもりだったらしいが、風呂敷を無駄に広げているだけの感じ。ファンからすれば、広げてしまった風呂敷をどう畳むのか、そもそも畳めるのか、が心配になってしまう。 本作では、主人公のハンより、ハンの師匠的な存在であるトビアスの存在が際立っていた。 餓鬼っぽいハンより、渋いトビアスの方が、興味深いキャラになっている。 ただ、本シリーズの例に漏れず(興味深いキャラはさっさと退場し、魅力の薄いキャラが生き残る)、あっさりと殺されてしまい、次回作で登場する可能性は全く無くなってしまった(死んだにも拘わらず再登場するダース・モールは例外中の例外)。 何故本シリーズは勿体無い事ばかりするのかね。 他に様々なキャラが登場するが、殆どが登場してはさっさと退場していく。 初めに退場するのは、トビアス率いる泥棒集団。 ハンが加入する前は、百戦錬磨の無敵集団、といった雰囲気だったのに、ハンが加入した直後の仕事で、トビアス以外は全滅。 長年活動してきた様な口振りが信じられない。 本作は、続三部作のエピソード8よりは単純明快で、旧三部作を彷彿させる面白い映画に仕上がっているのは確か。 が、40年の間に旧・新・続でメインが8作(2018年の時点で)、そしてスピンオフが2本も制作されている一大叙事詩の位置付けとしては微妙で、今後制作されるであろうシリーズの整合性に混乱をもたらすものになっている気がする。 制作元のルーカスフィルムがディズニーによって買収されてから、本シリーズは「いかにしてディズニーに短期的に利益をもたらすか」だけで制作が続けられ、本シリーズをいかにして構築していき、長期的な利益をもたらすか、の視点が抜けている気がする。ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー MovieNEX《通常版》 【Blu-ray】価格:3810円(税込、送料別) (2018/9/8時点)
2018.09.08
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ゲームソフトを原案としたSFアクション。 ゲームソフトの世界をほぼそのまま踏襲している。 原題は、ゲームソフトと同じくAssassin's Creed(暗殺者の信条)。粗筋 死刑囚のカラム(マイケル・ファスベンダー)に、刑が執行される。薬物が投入され、死に至った。 ……と思ったら、カラムは目覚める。見覚えが無い場所にいた。アブスターゴ社がスペインで運営する矯正施設にいる、と知らされた。 ソフィア・リッキン博士(マリオン・コティヤール)が、彼の前に現れる。人の暴力性を無くし、平和な世の中を確立するには「エデンの果実」という物体が必要で、それを手に入れるには、アサシン教団の血を引くカラムの力が必要だという。 カラムは状況が呑み込めないまま、遺伝子記憶の再現装置「アニムス」に接続される。15世紀のスペインを生きるアサシン教団の一員で、彼の先祖であるアギラールの半生を追体験させられる。 アブスターゴ社は、カラムから、アギラールが知っている筈の「エデンの果実」の行方を掴もうとしていたのだった。 カラムは、アギラールの半生を体験する事で、「エデンの果実」の行方を掴む。後にアメリカ大陸を発見する事になるコロンブスに渡していたのだ。コロンブスは、墓にまで持って行く事を約束し、「エデンの果実」を託されたのだった。 アブスターゴ社は、アサシン教団と対立するテンプル騎士団が運営していた。 テンプル騎士団は、コロンブスの墓を暴き、「エデンの果実」を回収。アサシン教団から奪い返せた、と勝利を宣言する会合を開く。 その前に施設から脱走していたカラムは、他のアサシン教団の子孫と共に会合に乱入。テンプル騎士団の指導者を殺し、「エデンの果実」を奪う。 カラムは、アサシン教団の一員として、テンプル騎士団から「エデンの果実」を守る為、その場を去る。感想 ゲームソフトの映画化はこれまで何度も試みられているが、成功したと思われるのはほぼ無い。 成功していると思われるものは、大抵ゲームソフトの世界を大幅に改変していて、タイトルのみが同じ、という状況になっている。 ゲームソフトはあくまでもゲームソフトに留まっているからこそ面白い様である。 本作は、ゲームソフトの世界に可能な限り忠実に沿っているらしい。 ゲームソフトでプレーした事がある者からすれば設定やキャラは分かり易いのかも知れないが、そうでない者からすると何もかもが初体験となる。 そんな事もあり、ゲームソフト体験者からすると無駄な説明が多過ぎでストーリーのペースがとろく感じ、非体験者からするとあまりにも説明が無さ過ぎで置いてきぼりにされる。 何よりも分かり難いのが、何故テンプル騎士団が「エデンの果実(作中では「エデンのリンゴ」として語られている)」に固執するのか、という事。 手に入れる為に莫大な投資をし、犠牲を払っていくのだが、手に入れた所で何が出来るのかが、さっぱり分からない。「アニムス」という訳の分からない装置を開発・運用する程の技術力があるなら、「エデンの果実」とやら実行力が不明な物体を追い求めるより、その高い技術力を使って普通にビジネスを展開していた方が余程楽に「世界を支配(金儲け)」出来るだろうに、と思ってしまう。 登場するキャラは、主人公のカラムを始め、どれも一癖も二癖もある者ばかり。 そういうキャラは描き方がきちんとしていないと(必ずしも善人として描く必要は無い)、感情移入出来なくなり、そのキャラが大活躍しようと途中で死のうと、どうでも良くなってしまう。 本作は、キャラが数多く数多く登場するが、どれも描かれ方が中途半端。主人公のカラムですら、単に他のキャラと顔が判別出来る程度に登場して、バタバタ動き回っているだけ。 あえて最小限に描く事で、感情移入出来ないようにした感じ。 下手に描いて共感され難いキャラにするくらいなら、感情移入出来ないキャラにしてしまった方が良い、という考えだったのかも知れないが……。 キャラへの興味は勿論、ストーリーへの興味も失わせる効果をもたらしている。 原作がそうだから回避しようが無かったのだろうが、キリスト教文化に傾倒し過ぎているのも問題。「アダムとイブ」「エデンの楽園」はユダヤ教、そしてそこから派生したキリスト教やイスラム教にとっては重要なのかも知れないが、それ以外の文化圏では何の意味も無い。 キリスト教信者らがギリシャ神話を単なる物語としか認識出来ないのと同様(古代ギリシャ人にとってギリシャ神話は宗教だった筈)、聖書の出来事も他宗教の者からするとただのフィクションに過ぎない。 要するに、ヒンズー教(そしてそこから派生する仏教)の地で「エデンの果実」を見せびらかして「世界を支配する力がここにある!」と豪語しても、誰も共感せず、効果も発揮しない。 したがって、欧米以外では、本作を公開しても、観客が本心から楽しめない。 世界中の人々が同じ様に理解出来ない作品は製作すべきでない、という事は無いが、それなりの根回しをしておかないと、集客力が見込めなくなる事は理解しておくべき。アサシン クリード UltraHD 【Blu-ray】
2018.07.07
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マーベルスタジオによるスーパーヒーロー映画「アベンジャーズ」シリーズの第3作目。 同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズとしては第19作品目の映画。「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズの第17作目に当たる「マイティ・ソー バトルロイヤル」直後の出来事を描く。粗筋 宇宙に散らばっている6つのパワーストーンを手に入れれば、全能の力を得られ、指を鳴らすだけで全宇宙の生命の半数を消せるとされた。 人口過多となった宇宙のバランスを保つには、全生命の半分を消し去る必要があると信じて疑わないタイタン人のサノス(ジョシュ・ブローリン)は、6つのパワーストーンを手に入れる為に、惑星から惑星へと移動し、殺戮を繰り広げていた。 アスガルド滅亡の直後(「マイティ・ソー バトルロイヤル」)、地球に向かっていたソー(クリス・ヘムズワース)率いるアスガルドの民を乗せた宇宙船を、サノスは襲撃する。 襲撃により、アスガルドから命辛々逃げ出した民達の半分は全滅。サノスはソーを拷問し、彼らが持っている筈の物体を要求した。兄の窮地に見かねたロキ(トム・ヒドルストン)は、サノスが欲する「四次元キューブ」を見せる。隙を突いてハルク(マーク・ラファロ)が奇襲するが、サノスはハルクを打ちのめしてしまう。 ハルクの敗北を受け、ソーの腹心ヘイムダルは最期の力を振り絞り、ハルクを地球へと転送させた。 サノスはロキを絞め殺して「四次元キューブ」を奪い、中のパワーストーンを自身のインフィニティ・ガントレットにはめ込む。 欲しいものを手に入れたサノスは、ソーが乗っている宇宙船を破壊。アスガルドの民の生き残りは、宇宙船と運命を共にする事となった。 一方地球では、多次元宇宙(マルチバース)を守る魔術師ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の元に、空から男が降って来た。ヘイムダルが命懸けで転送したハルクことブルース・バナー博士だった。 サノスが2つのインフィニティ・ストーンの所在地である地球を狙っている、とバナー博士から伝えられたストレンジは、アベンジャーズのリーダーであるアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)と接触。地球が滅亡の危機にさらされていると伝える。 アベンジャーズの内乱(「キャプテンアメリカ/シビル・ウォー」)で疲弊し切っていたトニーは、協力に消極的な態度を示す。バナー博士は、ソーの身に起きた事を伝え、トニーを説得しようとするが、それでも消極的な態度を崩さない。 そうこうしている内に、ドーナツ状の宇宙船がニューヨーク上空に出現。サノス配下の軍隊が、ストレンジの持つタイム・ストーンを狙って襲来したのだった。 ストレンジと協力したくはないと思っていても、地球が襲撃されたとなると話は別。トニーはアイアンマンのスーツを起動して装着し、ストレンジと共に応戦する。 バナー博士もハルクに変身して加勢しようとするが、先の戦いでサノスに恐怖心を抱いたハルクは変身を拒否した為、バナー博士は退避を余儀無くされる。 ストレンジは、サノスの配下の軍隊に拉致されてしまった。 トニーは、ストレンジを救出する為、宇宙船へと向かう。 ニューヨーク上空の異変に気付いていたピーター・パーカーことスパイダーマン(トム・ホランド)は、地球から離脱する宇宙船にしがみ付き、トニーと共に宇宙空間へ。 残ったバナー博士は、トニーが落とした携帯電話を拾い、この危機をアベンジャーズに伝えるべくスティーブ・ロジャーズことキャプテンアメリカ(クリス・エヴァンス)に連絡を入れる。 一方宇宙では、サノスの襲撃から生き延びて宇宙を漂っていたソーが、ピーター・クイル(クリス・プラット)率いる銀河のはみ出し者集団「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」によって救助されていた。 クイルは、サノスやパワーストーンとの関わりが過去にあり、しかも「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のメンバーであるガモーラは、サノスの養女だった。そんな事もあり、ソーの戦いに参加せざるを得なくなる。 パワーストーンの一つであるリアリティ・ストーンは、惑星ノーウェアにいるコレクターの手元にあった。ソーは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を二つに分ける事を提案。片方が惑星ノーウェアへ向かい、もう片方はソーと共にアスガルドの武器を長年作り続けていたドワーフが暮らす惑星ニダベリアへ向かう事となった。 地球では、アベンジャーズのメンバーで、パワーストーンの一つであるマインド・ストーンから生み出された人造人間ヴィジョンが、サノス配下の軍隊に狙われる。一緒にいたアベンジャーズメンバーで、彼の恋人であるワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)と共に戦うものの劣勢に立たされる。 そこに、アベンジャーズから離脱していた筈のスティーブらが現れ、サノス配下の軍隊を撃退。 スティーブは、方針の違いからアベンジャーズから離脱したものの、地球存亡の危機とあってはそんな事も言ってられず、戻って来たのだった。 スティーブは、マインド・ストーンをヴィジョンから外して破壊し、サノスの手に入らない様にすべきと判断。ただ、マインド・ストーンをヴィジョンから単に外すとヴィジョンは死ぬ。ヴィジョンを死なさずマインド・ストーンを外すには、超文明国家ワカンダ王国の助けを借りる必要があると考え、ヴィジョンらを連れてワカンダへと向かう。 ノーウェアへと向かっていたクイル一行は、真っ先にコレクターの屋敷へと足を踏み入れる。 サノスは、既にコレクターからリアリティ・ストーンを奪っていた。サノスは養女のガモーラと再会。彼女をさらうと、スペース・ストーンの力を使ってその場から去った。 その頃、ストレンジはタイム・ストーンを渡すよう、サノス配下の軍隊の者により拷問されていた。 トニーとピーターは、その宇宙船内部に入り込む事に成功していて、ストレンジを救出する。 ストレンジは地球へ戻るよう、トニーに進言するが、6年前(「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」)からサノスとの戦いに備えていたトニーは、サノスの母星タイタンでサノスを待ち伏せし、奇襲を仕掛けるべき、とストレンジに提案する。ストレンジは、二人の命よりタイム・ストーンを優先で守護するという条件付きで、これに同意した。 ソーは、惑星ニダベリアへに到着。 ニダベリアは、サノスにより破壊されていた。唯一生き残っていたドワーフのエイトリの力を借り、サノスを倒す為の武器ストームブレイカーを完成させる。 惑星ノーウェアでサノスに誘拐されたガモーラは、パワーストーンの一つであるソウル・ストーンの在り処を吐かさざるを得なくなる。 サノスは、ガモーラと共に、ソウル・ストーンのある惑星ヴォーミアに向かう。 ソウル・ストーンを得るには、サノスは自身が愛する者の命を引き換えにしなければならなかった。 サノスは、養女であるガモーラの命と引き換えに、ソウル・ストーンを獲得。 次のパワーストーンであるタイム・ストーンを求め、自身の故郷である惑星タイタンへと向かう。 惑星タイタンでは、トニー一行とクイル一行が合流。クイル一行はトニー一行を敵だと思っていたが、サノスが共通の敵で、トニーらがソーの言っていたアベンジャーズであるのを知ると、打倒サノスの計画を共に練る事に。 4つのインフィニティ・ストーンを既に得ていたサノスがタイタンに到着。 サノスは、ストレンジに対し、自身の行動の理由を語る。 惑星タイタンは現在廃墟となっていたが、それは人口が増え過ぎてバランスを保てなくなり、文明が崩壊したからだった。それを見たサノスは、宇宙全体のバランスを保つには自身がパワーストーンを全て得て、その力を借りて全宇宙の生命を半分にまで減らす必要があると信じるようになったのだった。 ストレンジは、トニーら助けを借りてサノスを倒そうとするが、失敗。タイム・ストーンを奪われる。 サノスは、最後のパワーストーンであるマインド・ストーンを得る為、スペース・ストーンの力で地球へとワープした。 地球のワカンダ王国。 スティーブ一行を迎え入れた国王ティ・チャラことブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)は、マインド・ストーンをヴィジョンから切り離した後で破壊する方法を実行するが、切り離すまでに相当時間が掛かる事が判明。 そうしている内に、サノス配下の軍隊がワカンダに攻撃を仕掛ける。 スティーブらは、地球に戻ったソーと共に徹底抗戦に出るが、敵の数に圧倒される。 サノスも現れた。戦いには目もくれず、ヴィジョンの元へ向かう。 ビジョンは、ワンダに、自分を殺すよう、懇願する。そうすればサノスが欲しているマインド・ストーンも破壊される、と。ワンダは、ビジョンを殺すしかなかった。 これで、サノスの野望は阻止出来たかに思えたが、彼はタイム・ストーンを持っていた。時間を逆戻りさせ、ビジョンが死ぬ直前の状態にまで戻す。そして、ビジョンの額にあるマインド・ストーンを毟り取り、自分のものとする。 そこへ、ソーがストームブレイカーでサノスに襲い掛かる。致命傷を与えたかに思えたが、サノスは死なず、指を鳴らしてその場から消える。 呆然と立ち尽くすソーの周りで、仲間が次々と埃となって消えていく。 サノスは、宇宙の生命の半分を消滅させるという計画を、実行に移したのだった。 影響は地球だけでなく、惑星タイタンにも及んでいた。トニーの前で、ストレンジ、クイル、ピーターが埃となって消え失せた。 地球では、人々が次々と埃となって消え失せる。その中に、アベンジャーズの元司令官ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)も含まれていた。消え失せる直前、彼はポケベルで緊急信号を発信。受信を示すマークが表示される。感想 強大な力を持った敵が、その力をより強固なものにする為、宇宙中に散らばったある物体を集めていて、その物体がある地球に襲来。 超人らが、その野望を阻止する為に、敵を迎え撃つ……。 既視感があるストーリーだな、と考えている内に、思い出した。 DCコミックユニバースの「ジャスティス・リーグ」と同じではないか、と。「ジャスティス・リーグ」では、超人の中の超人であるスーパーマンの復活により、敵(ステッペンウルフ)は負かされてしまう。本作では敵(サノス)はそう簡単に負かされず、次回作に続く、という点だけが異なる。 何故ここまで似通ったストーリーになってしまったのか、不思議に思う。 本作は、これまでの「マーベル・シネマティック・ユニバース」の一環となっていて、時系列的には「マイティ・ソー バトルロイヤル」の直後の出来事、となっている。 本作によって、「マイティ・ソー/バトルロイヤル」の出来事が全て無駄になってしまっているのは、空しい。 ソーは、アスガルドを犠牲にして、最終的にはアスガルドの民を救った、となっているが、本作の冒頭で折角救った民は全て死ぬ(「マイティ・ソー/バトルロイヤル」で大活躍した筈の女戦士バルキリーは、本作では全く登場しない。死んだ、て事か)。 本作を観た後に「マイティ・ソー バトルロイヤル」を振り返ると、「ソーは何をムキになって義姉と戦ったのか。寧ろ彼女を倒さず、サノスと戦わせた方が良かったではないか。早まった事をし過ぎ」と思ってしまう。「マーベル・シネマティック・ユニバース」で登場するヒーローらが一堂に介して活躍するので、他の「マーベル・シネマティック・ユニバース」の作品を観ていないと、流れが分かり難くなる部分もあるが、流石に全作を観ていなくても大丈夫。 ただ、「アベンジャーズ」の名で公開されているか、アベンジャーズメンバーが複数登場する作品は観ておいた方が、分かり易い。 様々なヒーローが一堂に介するので、それぞれの扱いは雑というか、とりあえず登場させてみた、といった感じ。 キャラクターの設定は、作品ごとに異なる印象を受ける。 無敵の筈の超人ハルクは、本作ではサノスにあっさりと力負けして弱気になり、バナー博士から変身するのをひたすら拒否。 神の筈のソーも、冒頭ではサノスに手も足も出ない。 アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンで初登場の人造人間ヴィジョンは、誕生した段階では無限の力を誇る新たなヒーロー、といった扱いだったが(ソーしか扱えない筈のハンマーを軽々と持ち上げている)、キャプテンアメリカ/シビル・ウォーでは殆ど活躍出来ない脇役になっていた。そして本作では全く無力なキャラになっていて、やられる為だけに誕生させた感じ。 サノスを強大な敵に仕立てる為、これまでのヒーローを極力無能に落とし込んでいる。 本作の敵であるサノスも、強大ではあるが、6つのパワーストーンを簡単に手に入れてしまい、呆気無い。 パワーストーンを1つ得る度に新たな力が加わるので、他のパワーストーンを得易くなる、というのは想像出来るが、それでもこれ程簡単に手に入れられてしまうと、これまで他に誰も同じ様な事を試みなかったのか、と思ってしまう。 パワーストーンを全て手に入れ、その力で宇宙のバランスを保つ、という動機も意味不明だし(宇宙の人口が増えたくらいでバランスが崩れる程宇宙は狭くはない)、その手段も無駄が多過ぎる。 これまで誰にも阻止されなかった理由が分からない。 2部作か3部作かは知らないが、次回作への繋ぎとして観れば大いに楽しめる娯楽作品になっている。 ただ、 拡げ捲った風呂敷をどう畳むのか、早くも心配。 サノスがしょうもない理由であっさりと倒される事になる予感が。アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(オリジナル・サウンドトラック)
2018.06.25
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スターウォーズ・シリーズの1作。 続三部作の第二章で、エピソード8に当たる。 エピソード7で登場した新キャラが、引き続き登場。 エピソード7ではラストシーンでしか登場しなかったルーク・スカイウォーカーが、本作では重要な鍵を握る。 原題は「Star Wars: The Last Jedi」。粗筋 銀河帝国の後継組織のファースト・オーダーは、遠く離れた惑星ですら丸ごと破壊出来る超巨大兵器スターキラー基地を失ってしまったものの(エピソード7)、勢力は全く衰えず、レイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)が率いる新共和国の私設軍隊レジスタンスを追い詰めていた。 レジスタンスは、ファースト・オーダーの総攻撃に耐え切れず、惑星ディカーの主力基地を放棄せざるを得なくなる。 ポー(オスカー・アイザック)の活躍により、ファースト・オーダーの巨大戦艦が破壊され、この隙にレイアを乗せたレジスタンスのクルーザーは、ワープして逃げた。 しかし、ファースト・オーダーは、ワープした艦船を追跡出来る装置を有していて、既にどこへ逃げたのか把握していた。 クルーザー内では、治療の為に医療カプセルの中で眠っていたフィン(ジョン・ボイエガ)が目覚め、ポーと再会を果たす。 一方、R2-D2とBB-8が完成させた地図を頼りに、伝説のジェダイマスター・ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の元へ向かったレイ(デイジー・リドリー)は、遠く離れた惑星で、ルークとの対面を果たす。レイは、ルークが以前使っていたライトセイバーを渡した。すると、ルークはライトセイバーをあっさりと捨てる。レイからすると、ルークの行動は予想していなかったものだった。 レイは、彼の妹であるレイアが率いるレジスタンスとファースト・オーダーの戦いが続いており、ハン・ソロが息子のカイロ・レン(アダム・ドライバー)に殺され、レイアがルークの帰りを待っている事を伝える。 しかし、ルークは、レイア達の元へ戻る事を拒否するどころか、興味すら示さない。自分は死を迎える為にこの辺境の惑星にいる、自分の死と共にジェダイも終わる、と。 ルークは、レイに対しここから去れ、と命じるが、レイは応じなかった。 R2に説得されたルークは、強いフォースを持つレイを、ジェダイにすべく修行を始める。 ワープで惑星ディカーから逃れたレジスタンスのクルーザーだったが、ファースト・オーダーは早くも迫って来た。 ファースト・オーダーの指導者スノーク自ら率いる大艦隊の攻撃を受け、アクバー提督らレジスタンスのリーダー陣は全滅。レイアも負傷して昏睡状態に陥る。レイアの代理として、アミリン・ホルド(ローラ・ダーン)がレジスタンスの指揮官となる。 ホルドの当面の作戦は、クルーザーを護衛する艦船を盾にして、ひたすら逃げる、というものだった。クルーザーには遮蔽装置が搭載されていて、ファースト・オーダーは本艦の位置を正確に掴めないだろう、と考えていた。 そんな消極的な作戦ではレジスタンスそのものが全滅するのは時間の問題だ、とポーは反発。徹底抗戦に打って出るべきだと主張。 ホルドは、惑星ディカーからの脱出の際に戦闘部隊をほぼ全て失ったのは、ポーの命令違反による無謀な作戦が原因だと指摘し、彼の主張を取り合おうともしない。 ポーは、ワープ後にファースト・オーダーが追跡出来なくする必要があると考え、スノークが搭乗するメガ・スター・デストロイヤーに装備された追跡装置を無効化する作戦を、フィンと共に練る。 ファースト・オーダーからの脱走兵で、内部事情に詳しいフィンは、メガ・スター・デストロイヤーの防護シールドを突破するには、シールドの暗号を解読しないと不可能だと、と告げる。 ポーとフィンは、シールドの暗号をどう解読すればいいのかと考えていた所、惑星カントニカにあるカジノに暗号解読者がいるから、そいつを探し出して、解読させればいい、との情報を得る。 フィンは、クルーザーの女性整備士ローズ(ケリー・マリー・トラン)と共に、惑星カントニカへ向かう。ローズは、惑星カントニカ出身であり、その惑星に精通していた。 フィンとローズは暗号解読者を探し当てるが、接触出来る前に、軽犯罪で現地の警察に逮捕され、牢屋に入れられてしまう。どうすべきか議論していた所、同じく牢屋に入れられていた謎の男DJ(ベニチオ・デル・トロ)が、自分も暗号解読者だと告げ、牢屋のロックを解除。二人は脱出出来た。 その頃、レイは、ルークが見守る中で懸命に訓練を積んでいた。 フォースが強化されると共に、遠く離れたレンと交信出来るようになった。 レンは、自分がルークの弟子として訓練をしていた頃、ルークに殺されそうになり、それがきっかけでスノークへと傾いた事を、レイに告げる。 レイは、ルークに対し、何故弟子を殺そうとしたのか問い詰める。 ルークは、強いフォースを持つレンが、スノークの影響で暗黒面に堕ち掛けていたので、始末するしかなかった、と答える。レンをスノークの下へ走らせてしまい、ジェダイを復活させる為の活動が全て無に帰したと悟り、この惑星に身を潜める事にしたのだ、と。 レイは、レンがまだ完全に暗黒面に堕ちていない、と感じていた。自分なら彼を暗黒面から救える、とルークに告げると、修行を途中で終わらせ、ルークの下から去った。 DJが盗んだ宇宙船でメガ・スター・デストロイヤーに侵入し、追跡装置を止めに向かったフィンとローズ。直前でファースト・オーダーのキャプテン・ファズマ(グェンドリン・クリスティー)が率いるストームトルーパー部隊に捕まってしまう。 実はDJは、フィンから得たレジスタンスの作戦をファースト・オーダーに売り渡し、フィンとローズを裏切っていたのだ。 ポーとフィンが秘密裏に決行した作戦も失敗し、レジスタンスは窮地に陥る。 同じ頃、メガ・スター・デストロイヤーでは、レイがレンの説得に出向いていた。 レンは、レイの説得に応じず、彼女をスノークの下へと連れて行く。 スノークは、自分に服従する意思の無いレイを処刑する様、レンに命じる。修行の一環だ、と。 レイに心を通わせていたレンは、逆にスノークを殺してしまう。 レンは、レイに対し、「俺と手を組み、二人で銀河を支配しよう」と懇願するが、彼女はそれは出来ないと言い、メガ・スター・デストロイヤーから去った。 レジスタンスのクルーザーは、ファースト・オーダーのメガ・スター・デストロイヤーによる攻撃で、撃沈寸前にまで追い詰められていた。 昏睡状態から目覚めたレイアを含め、脱出出来る乗組員はほぼ全て脱出していた。 唯一残ったホルドは、逃せられる者は全て逃せたと確信した時点で、クルーザーをメガ・スター・デストロイヤーに突進させる。 メガ・スター・デストロイヤーは壊滅的なダメージを受けた。 フィンとローズは、混乱に乗じてメガ・スター・デストロイヤーから脱出。 レンは、スノークがレイに殺されたと嘘を吐いた上で、ファースト・オーダーの新最高指導者の座に就くと宣言した。 レジスタンスは、惑星クレイトの秘密基地に到着。 ここで体制を立て直そうと考えるが、レンを最高指導者とするファースト・オーダーは、早くも迫って来た。 どこからも支援を受けられず、絶体絶命と思われた所、ルークが姿を現す。 ルークは、レイアと対面。自分にはレンを最早救う事は出来ない、と告げた上で、基地の外に出る。 レンは、前の師匠の姿を見て、冷静さを失い、自分も外に出る。 ルークとレンは会話を交わした後、ライトセイバーで決闘を繰り広げる。 レンは、ルークに決定的と思われる一撃を浴びせたが、それでもルークは立ったままだった。 その時点で、レンは気付く。目の前にいるのはルーク本人ではなく、ルークの幻影だと。 ルークは、レイア達に再度脱出のチャンスを与える為、幻影として現れたのだった。 ルークとレンが決闘を繰り広げている間に、レイア達は基地から抜け出し、レイが乗るミレニアムファルコン号で惑星クレイトを脱出した。 自身の姿を惑星クレイトに投影させ、レイア達を逃すという大役を果たしたルークは、遠く離れた惑星で力尽き、消滅する。感想 旧三部作のエピソード4-6のメインキャラはルーク、ハン、そしてレイアの3名。 続三部作のエピソード7でハンが死に、エピソード8の本作でルークが死ぬ。 本作ではレイアは生き延びたので、次回作は彼女の死が描かれるのでは、と本作を観る限りでは期待してしまうが、レイアを演じていたキャリー・フィッシャーが本作の撮影完了後に急死しているので、それは有り得ない(キャリー・フィッシャーの母親で、女優でもあるデビー・レイノルズまでもが、娘の死の知らせを聞いてショックを受け、翌日に死去している)。 要するに、本作を以って、旧三部作のメインキャラが全員退場。 スターウォーズ・シリーズは、本来フォースが強いスカイウォーカー一族を描く物語の筈だったのに、次回作からはフォースの使い手はスカイウォーカー一族の一員ではないレイとなってしまう。 元の設定を崩し過ぎていないか。 それとも、スカイウォーカー一族のレンがダークサイドから抜け出す、という流れになるのか。父親を殺し、母親も殺す寸前まで行ったキャラが、急に改心してしても説得力が無いが、仮にもしそうなるとすると、悪役は誰が務めるのか。 エピソード6は、皇帝パルパティーンが死に、銀河帝国は滅亡に向かい、ジェダイが復活する、という期待を持たせる終わり方だったが、エピソード7と8は、エピソード6での期待感を全て裏切るがっかりものとなっている。 戦闘には勝てたが、戦争そのものには負けた、て感じ。 エピソード7の、復活した筈の銀河共和国が早々と全滅し、滅びた筈の銀河帝国がファースト・オーダーとして大々的に復活する、という設定は、とにかく残念。 この展開のせいで、「スターウォーズ=宇宙戦争」が、巨大勢力対弱小勢力とのしょぼい戦いに留まってしまっている。「新共和国対新帝国」という二大勢力の全面衝突、という風にしていれば、本当の意味での「スターウォーズ」になり、メインからサイドストーリーまで、様々な映画を制作出来ただろうに(スタートレックの銀河連邦対ロミュラン帝国に似た構図。スタートレックは予算が限られるテレビ番組がメインだったので、抗争は地味になっていたが、予算が何倍もある映画がメインであるスターウォーズなら、派手な戦いを描けた筈)。 何故私設軍隊であるレジスタンスによる戦いにこだわるのか。 続三部作の新共和国は、ファースト・オーダーという反体制勢力の存在すら確認出来なかった盆暗共で、滅ぼされても当然としか言い様が無い、というものになってしまった。 新共和国以上のがっかりは、旧三部作で主人公だったルーク・スカイウォーカー。 エピソード4と5のルークは、ヨーダによるジェダイの修行を終わらせらなかったので、ジェダイとしては未熟な部分もあった。 が、エピソード6ではジェダイとしてまともになってきている姿で登場し、終わり頃には物凄いジェダイマスターになってくれるのでは、という期待を抱かせてくれた。 が、本作では、未熟なまま周囲により「伝説のジェダイマスター」に祭り上げられてしまった、という事実が明らかにされる。 実の父親がダークサイドに陥ってしまったのだから、その恐ろしさを充分理解していて、弟子の訓練も慎重に、きちんとやるのかと思いきや、甥のカイロ・レンを何でもない様にダークサイドへと導いてしまった事実が判明。 本人の言い分では、スノークがレンをそそのかし、後戻り出来ない段階にまで来ていた、という事になっているが、本作で登場するスノークはそこまで人望に厚そうな人物で無いのも明らかにされるので、単にルークの力量不足だと思われる。 何故制作者はルークをここまでの駄目キャラにしてしまったのか、理解出来ない(ヨーダの幻影が現れ、ルークを子供扱いする場面も、ルークの駄目っぷりを後押しする)。 ルークを演じるマーク・ハミルの駄目っぷりが、そのまま演じているキャラに投影された感じ(マーク・ハミルのスターウォーズ以降の俳優人生が大成功となっていないのは、本人だけのせいではないのだが)。 エピソード7では、通信装置の投影としか登場していなかったファースト・オーダーの最高指導者スノークが、本作では直に登場する。 投影では、物凄いでかい姿で映っていたので、それくらい存在感があるキャラなのかと思いきや、小さい爺に過ぎなかった。 皇帝パルパティーンの劣化版コピー、といった感じで、凄みを一切感じさせない。 言動もパルパティーンの猿真似以下。 レンを叱責する姿は、ボケて癇癪を起し捲る爺そのもの。 何故こんなしょぼい人物がファースト・オーダーを発足させられたのか、何故レンがこんなのにそそのかされてダークサイドに堕ちたのか、さっぱり分からない。 しょぼいながらも登場したのだから、今後物凄い事をやらかしてくれるのかと思いきや、本作でレンに叛逆され、あっさりと殺されてしまう。 皇帝パルパティーンも、一番弟子のダース・ベーダーに殺されている。スノークが、その孫で同じく一番弟子のレンに殺されるのは、運命だったとしか言い様が無い。 ただ、それにしてもあっさりと登場し、あっさりと殺され過ぎ。 続三部作の主人公はレイだが、彼女の言動も訳が分からなくなってしまっている。 ルークの元に推し掛けてジェダイの訓練を受けさせろと迫ったものの、訓練を途中で放り出してレンの元へ走る。自分なら彼をダークサイドから救える、と。 レンは、レイの説得を受けず、スノークを倒し、自らファースト・オーダーの最高指導者の座に就く。 レイは、レンの説得を諦め、彼の下を去り、レジスタンスへ戻る。 ジェダイの訓練は中途半端に終わり、レンの説得には失敗して、彼をより強大な敵にしてしまう。 思い付くまま行動するだけで、何一つまともに成功していない。 設定が、これまでのエピソードからして変わってしまったキャラもいる。 エピソード6で、レイアはルークの妹である事が明らかにされる。 家系からして、フォースが強くても不思議ではないが、正式な訓練を受けてはいないので、フォースを操るまでには至っていない、という事になっていた筈。 本作では、レイアはレジスタンスのリーダー陣が全滅した際、本人も宇宙空間に放り出され、死亡。 ……と思っていたら、昏睡状態にも拘わらず宇宙空間を移動し、クルーザーに戻り、生還。 いつからここまで凄い事が出来る様になっていたのか、その説明がなされていないので、違和感あり捲り。 これだったら、リーダー陣が全滅した時は偶々その場に居合わせてはおらず、死は免れたが、衝撃で意識を失った、という展開にしていた方が、納得がいっただろうに。 結局何の為に登場していたのか、というキャラも多い。 エピソード7で、フィンの上官で、ストームトルーパーの統率役を務めるキャプテン・ファズマが初登場。 その特徴的な姿から、エピソード7で手強い敵としてフィンやレイの前に立ちはだかるのかと思いきや、馬鹿な役しか与えられなかった。 エピソード8では、もう少しレジスタンスの脅威になってくれるのかと期待していたが、制作者側にとって最早不要なキャラになってしまったらしく、フィンとの決闘で呆気無く倒されてしまう。 こんな雑な扱いをするなら、そもそも登場させるな、と思ってしまった。 エピソード7では、旧三部作では主人公の一人だったハン・ソロが死ぬ。 その代りの役として登場させたと思われるのが、DJと思っていた。 ちょっと怪しい雰囲気が、ハン・ソロとそっくりだったから。 が、DJはフィンとローズを裏切り、ファースト・オーダーに売り渡してしまう。 この裏切りは上辺のもので、後々に再登場して、フィンとローズを助け、「あの裏切りは演技だった」という展開になるのかと想像していた。 が、DJは裏切って退場した後、そのまま再登場せず、単なる裏切りキャラで終わってしまう。 何の為に登場したのか、分からない。 というか、フィンとローズが惑星カントニカへ出向いて暗号解読者を連れて来て、メガ・スター・デストロイヤーを不能にさせる、という作戦自体、上映時間を稼ぐ為だけになってしまっていた。 DJだけでなく、新たに登場する他のキャラも、魅力に乏しい。 ローズは、スターウォーズ・シリーズ初の東洋系俳優によるキャラ。 ベトナム系女性、との事。 それ自体は問題無いのだが……。 女優を容貌だけで判断するのは良くないと分かってはいるものの、何故こんなオバサン臭いのを起用する事にしたのか、と制作者の判断を疑う。 序章で、ローズの姉という設定のキャラが登場するが、そちらの方がまだ観ていられる容貌だった。 ベトナム系にしては英語が堪能だったから(ネイティブ並)、という理由で採用されたとしか思えない。 旧三部作でも、レイア演じるキャリー・フィッシャーが「プリンセスにしてはブス過ぎる」と酷評された例があるので、容貌の良くない女優を起用するのは、ある意味伝統か。 レジスタンスも、何故人々を引き付けるのか、最早理由すら分からない状態に陥っている。 ファースト・オーダーの攻撃をクルーザーに引き付け、その裏で乗員を逃す、というボルドの作戦(後にレイアの作戦であった事が判明する)も、きちんと皆に伝えていれば有効なものに成り得たのに、伝えないから、ポーは最終的には失敗に終わる作戦を秘密裏に決行せざるを得なくなる。 敵を欺くにはまず味方を欺け、という事だったのかも知れないが、幼稚過ぎ。 邪悪だが単純明快なファースト・オーダーが、強大な勢力に成長したのも、理解出来る。 スターウォーズ・シリーズの制作元であるルーカスフィルムは、ディズニーに買収された。 その結果、今回の続三部作の制作が決まったのだが……。 買収に掛かった費用を回収したいが為に、やっつけ仕事で続編を作っている感が否めない。スター・ウォーズ/最後のジェダイ MovieNEX (初回限定) 【Blu-ray】価格:3764円(税込、送料別) (2018/4/6時点)
2018.04.06
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マーベルスタジオによるマイティ・ソー・シリーズ第三作。 クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、アンソニー・ホプキンスが引き続きこれまでの役を演じる。 同じマーベルユニバースのキャラであるハルクが登場。ベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジもカメオとして登場する。 原題は「Thor: Ragnarok」。粗筋『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』から2年。 ソー(クリス・ヘムズワース)は、アベンジャーズのメンバーから離れ、インフィニティ・ストーンについて調べていた。その過程で、アスガルドを滅ぼさんとする炎の巨人スルトに囚われてしまう。スルトをどうにか倒したソーは、アスガルドへと帰還する。 2年振りに見るアスガルドは、様子が変わっていた。特に、父親であり、王でもあるオーディン(アンソニー・ホプキンス)は、呑気に芝居見物をしていた。 不審に思ったソーは、死んだと思っていた義弟のロキ(トム・ヒドルストン)がオーディンに化けていた事実を暴く。 ソーは、ロキに対し、オーディンをどうした、と問い詰める。ロキは、地球のニューヨークの老人ホームに預けた、と答えた。 二人は、オーディンを取り戻す為に、ニューヨークへ向かう。が、問題の老人ホームは取り壊されていて、オーディンの行方は不明だった。二人が呆然と立ち竦んでいると、ロキが突然謎のワームホールに吸い込まれ、消滅。ソーは、ロキのポケットから落ちた名刺を拾い、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の館に辿り着いた。ストレンジは、危険人物のロキを地球に連れて来た動機を、ソーに問う。ソーは、自分らの父親を探しに地球にやって来ただけだと告げる。ストレンジはその説明を受け入れ、ソーとロキを、オーディンがいる場所へと瞬間移動させた。 ソーとロキは、オーディンと再会。ソーは、共にアスガルドへ帰ろう、とオーディンを促す。しかし、オーディンは拒否。自分の寿命はあと僅かだから、と。 オーディンは、アスガルドに重大な危機が迫っていると告げ、自身の過去について述べる。 実は、ソーにはヘラという姉がいた。若きオーディンは、娘を副将として他の世界を征服し、アスガルドを築き、王の座に就いた。しかし、ヘラが余りにも凶暴な為、彼女を封印してしまう。が、この封印は、封印した本人が死ぬと解かれる。 オーディンは、ヘラを止めるようソーとロキに命じると、光と化して散った。 直後に、封印から解き放たれたヘラ(ケイト・ブランシェット)が、ソーとロキの前に現れる。 王位を継承するのは自分だと言い切るヘラは、ソーとロキを圧倒する力を披露。 ロキは、ソーと共にアスガルドへ逃れようとするが、追って来たヘラは移動中の異空間で二人を吹き飛ばした。 異空間を飛び越え惑星サカールへ流れ付いたソーは、そこでヴァルキリー(テッサ・トンプソン)によって捕らえられ、サカールの統治者グランドマスター(ジェフ・ゴールドブラム)に闘士として売られてしまう。先にサカールに流れ着いていたロキは、グランドマスターに取り入っていた。 かつてアスガルドの王に忠誠を誓った筈のヴァルキリーも、王子であるソーを助ける素振りを見せない。 グランドマスターが主催する格闘大会で、チャンピオンに勝利すればグランドマスターが望みを叶えると聞いたソーは、アスガルドへ帰還する為参加したが、チャンピオンとして現れたのはかつての戦友・超人ハルク(マーク・ラファロ)だった。 ハルクは、ソーの事を全く覚えていなかった。ソーは、ハルクと真剣に戦わざるを得なくなる。ハルクを倒す寸前まで追い詰めた時点で、ソーに勝ってもらいたくないグランドマスターが、ソーに電気ショックを与え、気絶させる。 ソーは、チャンピオンに勝利すれば望みを叶えてもらえる、という甘い考えが許されない事を悟った。 一方、アスガルドではヘラがウォリアーズ・スリーを含めたアスガルドの戦士を排除。王宮に踏み込む。王宮に描かれたアスガルドの歴史絵巻を目の当たりにする。アスガルドがいかに平和的に築かれたのかを描いたものだったが、実情を知っていたヘラは、自分の父親はいつでも自分の都合のいい様に史実を曲げてきた、と蔑む。 ヘラは、死んだ兵士を蘇らせる。封印前に目標としていた、九つの世界全てを支配するという野望の為に動き始める。 サカールでは、ソーはハルクをブルース・バナーへと戻す事に成功する。バナーは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』から2年も経っている事を全く知らなかった。 二人は、ヴァルキリーを何とか説得して、サカールから脱出。アスガルドへ帰還する。 ソーの帰還を知ったヘラは、彼を襲う。 同じくアスガルドに帰還したロキも加わり、ヘラと対峙するが、ソー・ロキ・ヴァルキリー・ハルクの4人合わせてやっと互角、といった状況で、決定打を与えられない。 そこで、ソーは、「毒を以て毒を制す」の戦術で、炎の巨人スルトを復活させる。 アスガルドを滅ぼさんと怒り狂うスルトは、ヘラを攻撃。 流石のヘラも、スルトに倒されてしまう。 スルトは、アスガルドを破壊し始める。 ソー達は、生き残ったアスガルドの民と共に、ロキが乗って来た宇宙船に乗り込み、アスガルドを脱出。 スルトは、アスガルドを完全に破壊した。 ソーは、その模様をただ眺めるしか出来かった。同時に、彼は国を失った民の王となった。 ソーは、とりあえず地球に向かう事を決める。 しかしそれから間も無く、巨大な宇宙船に行く手を阻まれる。感想 ソーを遥かに上回る戦闘力を持つ姉が、アスガルドを乗っ取らんと復活。 ソーと対峙する。 ソーと、アスガルドの運命はいかに……? シリアスで、ダークな展開になっても不思議ではないストーリーライン。 実際、登場人物がガンガン死に、一つの世界が滅びる様子を描いている。 にも拘わらず、全然シリアスでも、ダークでもない。 これがマイティ・ソー・シリーズの特徴か。 ソーとヘラが相見えるのは、オーディンが寿命を終えてヘラが復活した直後と、ラストでの戦闘のみ。 その間は、ソーがいかにして惑星サカールを脱出するかのドタバタ劇と、ヘラがアスガルドを屈服させる模様が描かれるだけ。 邦題の「バトルロワイヤル」は、ソーとハルクの一騎打ちも指しているのだろうが、その部分は一瞬しか無く、その後ハルクは正気に返るので、ソーは彼と対峙する事は無い。何故邦題を、原題とは全く違うものにしてしまったのか、分からない。 登場人物らの言動も、当然ながら意味不明なのが多い。 ソーは、本作では以前程ロキに欺かれる事は無くなり、少しは賢くなったのかと思うが、代わりに新キャラのヴァルキリーに振り回されっぱなしで、相変わらず頼りない。 苦労の末アスガルドに帰還するが、義姉のヘラに歯が立たず、スルトを復活させ、アスガルドを犠牲にして、やっと倒す(正確には、倒させる)。 こんなのがアスガルドの次期王に指名されたな、と思ってしまう。 国の無い、百人にも満たない様に見える民の王には、ある意味相応しいが。 前作で死んだ振りをしてソーやオーディンを欺き、アスガルドを乗っ取る事に成功したロキ。 次期王はソーではなく自分だ、と言い張り続け、漸く手に入れた王の座。 ソーが不在だった2年間、どういった凄い事を成し遂げるのかと思いきや、宴を催すだけで、これといった事はしない。この程度の事をしたいが為に王になりたかったのか、と呆れる。王になる、というのが人生最大の目的で、王になってから何をするのか、の計画は全く立てていなかったらしい。 これだったら、王にならず、王の息子として宴を催していれば、誰にも文句を言われなかっただろうに。寧ろそうしていた方が、堅物で面白味の無いソーより王に相応しい、と後々評価されていたかも知れない。民も、宴が大好きな様だし(というか、宴以外何もしていない)。そうすれば、誰も欺く事無く、正々堂々と王になれただろう。 何故ソーと対立していたのか、さっぱり分からない。 ヘラも、オーディンの長子として物凄い破壊力を見せるが、いざアスガルドに戻ると、大した事はせず、帰還したソーらと最後の戦いを繰り広げて散る。 その攻撃力を、別の世界に行って活用していれば、制服出来ただろうに、何故アスガルドでモタモタしていたのか、分からない。 オーディンの言動も不明。 自分が死んだらヘラが復活すると知っていたのなら、ヘラを封印した直後に何か手を打っていれば良かったのに、何もせず、王国を適当に統治し、死ぬ間際に漸くヘラについて二人の息子に告げ、さっさと消滅。 何も知らされず後を継いた息子は、民を救う為に故郷を犠牲にせねばならなかった。 アスガルドはあくまでも自分の為に作り上げた王国で、後継者に渡す気等鼻から無かったらしい。 史実を自分の都合の良い様に曲げてきた、と娘のヘラに蔑まれて当然。 新キャラのヴァルキリーも、これといった活躍はしない。 ソーは、サカールから脱出し、アスガルドへ帰還するまでは彼女の助けが必要だったが(手助けに消極的だった彼女を、何とか説得して協力させている)、いざ帰還すると用済み扱い。 これだったら、ヴァルキリーをぶん殴ってでも協力させ、彼女をサカールに残して一人で帰還していた方が良かったかも。 ハルクは、2年振りにソーと再会。 この2年間、ハルクは一瞬もバナーに戻る事無く過ごしたらしい。 2年間ずっと怒り続けていた、て事か。 ハルクは、本来なら主役クラスのキャラなのに、映画シリーズではサポート役しか与えられない。 映画1本を作れる程のキャラじゃない、て事か。 本作では、シリーズ第1作から出演していた浅野忠信が、ウォリアーズ・スリーの一人であるホーガンを再び演じる。 が、本作で彼のキャラは用済みになったらしく、雑魚キャラとしてヘラにあっさりと殺される。 何の為に登場していたのか、よく分からない。 本作は、あまり真面目に見るべき映画ではないのかも知れないが、といって、単なる娯楽映画にしては、重要人物がバタバタ死ぬので、純粋に楽しむ事も出来ない。 製作者は、このソー・シリーズをどういう位置付けにしているのか、どこへ持って行きたいのか、観ている側からすると分かり辛い。マイティ・ソー バトルロイヤル MovieNEX [ クリス・ヘムズワース ]価格:3326円(税込、送料無料) (2018/3/31時点)
2018.03.31
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DCコミックス・シリーズの実写版。 スーパーマン、ワンダーウーマン、バットマン、アクアマン、フラッシュ、サイボーグ等、DCコミックスのスーパーヒーローらが登場する。 設定的には、映画「マン・オブ・スティール」「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」から数か月後の出来事、という事になっていて、スーパーマン、ワンダーウーマン、バットマンは、同じ俳優陣が演じている。 原題は「Justice League」。粗筋 レックス・ルーサーによってドゥームズデイとして蘇ったゾッド将軍との戦いで、命を落としてしまったスーパーマン(ヘンリー・カヴィル)。 正義の為に戦うという志は同じの筈なのに、スーパーマンとは敵対していたバットマン(ベン・アフレック)は、その姿を目の当たりにして、特殊能力を持った超人ら(メタヒューマン)を統括し、正義の為に戦う組織が必要だと感じる様になる。 バットマンことブルース・ウェインは、自前の財力と情報収集能力を駆使し、超人らを探し始める。 ドゥームズデイとの戦いで知り合ったワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、既にウェインの考えに賛同していた。他に、海を支配するアトランティス人の王のアクアマン、時空を歪める程の高速で動けるフラッシュ、そして全身が機械化されたサイボーグの3名が候補に挙がった。 フラッシュは、自分と似た仲間が欲しかった、という安易な動機で協力を了承。しかし、他の二人は協力を拒否した。 一方、地球には既に新たな危機が迫っていた。 強力なパワーを秘めた3つのマザーボックスを奪う為に、異次元からステッペンウルフが襲来。ステッペンウルフは、倒した敵をパラデーモンという化け物に変え、地球各地に放ち、マザーボックスを探させた。 マザーボックスは、古代時代に人間、アマゾン族、そしてアトランティス人が共に戦ってステッペンウルフから奪ったもので、ステッペンウルフが回収出来ないよう、それぞれが一つずつ隠し持っていた。 ステッペンウルフは、圧倒的な戦闘力で、アマゾン族とアトランティス人が保管していたマザーボックスを奪った。残りは人間が隠し持っていたマザーボックスのみとなった。 マザーボックスは、隠し持っていた人間から完全に忘れられていた存在だったが、近年偶然発見され、人間らは正体不明のまま研究していた。サイボーグも、マザーボックスの力によって瀕死の怪我から回復し、サイボーグ化していたのだった。 ステッペンウルフの企みを知ったバットマン・ワンダーウーマン・フラッシュの3人は、阻止を試みるが、3人だけでは太刀打ち出来なかった。 アトランティス人が保管していたマザーボックスが奪われたアクアマンは、暫定的ながらバットマンとワンダーウーマンと協力する事に。 また、サイボーグも、自身を生まれ変わらせた物体が関わっていると知って、協力する事に。 五人でステッペンウルフで立ち向かうものの、それでも力が足りない、と悟ったバットマンは、スーパーマンを復活させよう、と考える。 ルーサーがゾッド将軍を復活させられたのだから、スーパーマンも復活させられる筈だ、と。 が、他の4人は反対。ゾッド将軍は、ドゥームズデイという化け物の形で復活した。スーパーマンも同じ様になる、と。 しかし、ステッペンウルフの襲来を許したのは、スーパーマンという絶対的な存在がいなくなったからだ、と他の4人を説得。 4人は、懐疑的ながらも、協力する事に。 ウェインは、ゾッド将軍と同じ方法で、スーパーマンを復活させる。 ゾッド将軍の時とは異なり、元の姿で復活した。 しかし、スーパーマンは4人を敵視。死ぬ事さえままにならないのか、と。 4人は、スーパーマンを相手に戦う羽目に。しかし、怒り狂うスーパーマンには、4人が力を合わせても太刀打ち出来なかった。 そんな所、ウェインが切り札として呼び寄せていたスーパーマンの恋人ロイス・レインが姿を現す。 ロイスを目の当たりにしたスーパーマンは我に返り、彼女と共にその場を去る。 スーパーマンが正気に戻って協力してくれる事を祈りながら、4人はマザーボックスを全て手に入れたステッペンウルフの下へと急ぎ、戦いを挑む。 4人は善戦するものの、ステッペンウルフを倒すまでにはいかない。 その時、ロイスによって正気に戻ったスーパーマンが参上。 これにより形勢は逆転し、ステッペンウルフは倒される。 バットマンと、4人の超人は、共に正義の為に戦う事を誓い、ジャスティス・リーグの設立を決める。 一方、監獄から脱出していたレックス・ルーサーも、超人を集め、自分らの「リーグ」を作ろう、と悪玉超人に語り掛けていた。感想 スーパーヒーローの実写版は、DCコミックスが先駆け。 ただ、複数のスーパーヒーローが一つの映画で活躍し、そしてまた個々の映画で活躍する、というモデルを作り上げたのは、ライバルのマーベルコミックス。 マーベルユニバースが大ヒットとなり、個別の作品も大ヒットとなる中、スーパーヒーローの本家であった筈のDCは後塵を拝する事に 本作により、DCユニバースが漸く本格的に始動した、といえる。 子供の頃から馴染んできたスーパーヒーローら、一つの作品で活躍するのが観られるのは、嬉しいといえば嬉しい。 ただ、一連の作品を観ていると、力関係というか、それぞれの実力が分からなくなってくる。 スーパーマンは、本作の前々作に相当する「マン・オブ・スティール」でリブートされている。「マン・オブ・スティールのスーパーマン」は、同じクリプトン人のゾッド将軍を相手に結構苦戦していて、無敵なキャラではない、と印象付けた(軍人のゾッド将軍は、スーパーマンは「百姓の倅」と嘲った)。続編に当たる「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」では、スーパーマンは死亡しているのだから、その意味でも無敵ではない。「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」では、ワンダーウーマンが銀幕デビューを果たす。そちらでは、ワンダーウーマンはスーパーマンを驚かせる程の戦闘力を披露。 後に公開された劇場版ワンダーウーマンでは、彼女が神である事が明らかにされる。 という訳で、スーパーマンとワンダーウーマンはほぼ互角の力を持っているのでは、と思いきや……。 本作では、スーパーマンが圧倒的に強く、ワンダーウーマンはそれ程でもない、という設定になっている。 作品ごとに登場人物が劇的に強くなったり弱くなったりするので、付いていくのが難しい。 というか、作中でも登場人物がやけに強くなったり、弱くなったりする。 敵役ステッペンウルフは、ワンダーウーマンらをものともしない、ほぼ無敵な存在だったのに、スーパーマンが参上した時点でこれまでの強さは何だったのかと呆れる程弱くなり、敗北を期してしまう。 登場人物の強さをもう少し整理してほしい。 スーパーマンは、リブート以前は絶対的な善人として描かれていて、悪の手に落ちる事は無い、といった雰囲気だった。 が、リブートされたスーパーマンは、絶対的な善人ではなく、必要となれば悪人にもなれるが、育ての親や恋人を思って、善人として活動しているだけの様に映る。 今後また他の超人らと対立するのも、充分有り得る。 昔のスーパーマンのイメージしかないと、違和感がある。 ワンダーウーマンは、所々で見せ場があるが、他のキャラに食われてしまっている印象。 新キャラクターを紹介する為の作品なので、仕方ないといえば仕方ない。 既に単独の作品があるので、他のキャラに譲った、という事か。 アクアマンは、過去のDCコミックスのイメージとは全く異なるキャラになっている。 今後単独の映画が製作されるのかは、微妙な感じ。 水の中を自由に動ける、という事以外は、物凄く特徴のあるキャラではないし。 フラッシュも、過去のDCコミックスの設定とは大幅に異なっている。 やけに若く、頼り無い マーベルのスパイダーマンみたいに、「成長するヒーロー」として展開するつもりか。 サイボーグは、比較的新しいキャラで、全く馴染みが無い。 今後どう展開するのか、全く読めない。 本作は、ジャスティス・リーグのシリーズ化に持って行く為のものなので、ストーリーに意外性は無い。 予定調和、といった感じ。 流石に、ジャスティス・リーグがまだシリーズ化していないのに、破綻に持って行く事は出来なかったのだろう。 その分、安心して観ていられる。 スーパーマンの復活は何よりも歓迎出来るし。 特撮は、最近のCG満載の映画を見慣れていると、目新しいものは無い。 これが20年前だったら凄いと思っていただろうに。 スーパーマンが、ステッペンウルフとの戦いに参上した際に、1970年代に公開されたスーパーマン(クリストファー・リーブ主演)のテーマ曲を部分的に使ったのは印象深い。 リブートされた本シリーズは、クリストファー・リーブ主演作をとにかく否定しようという空気があるが(というか、そもそも無かった事にしようとしている)、流石にテーマ曲だけは上回るのが作曲出来ないらしい(クリストファー・リーブ主演作のは、スターウォーズ、インディアナ・ジョーンズ、そしてジョーズ等も手掛けたジョン・ウィリアムズが作曲)。 製作者側は、スーパーマンが復活する、というストーリー運びをなるべく伏せたかったらしく、劇場公開の段階ではポスターにスーパーマンが描かれていなかった。 が、DVD販売の時点ではスーパーマンが復活する事が誰もが(劇場で観ていなかった者も)知ってしまったので、カバーにはバットマンらと共に、スーパーマンも堂々と描かれている。 巷では、マーベルユニバースとDCユニバースのどちらが良いかの議論がなされている様だが、個人的には、互いに切磋琢磨して発展してもらいたい。[Blu-ray] ジャスティス・リーグ ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産)価格:3978円(税込、送料別) (2018/3/16時点)
2018.03.16
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アンソニー・ジョンストンとサム・ハートが2012年に発表したグラフィックノベル『The Coldest City』の実写映画化。 ベルリンの壁崩壊直前のドイツを描いている。 主演はシャーリーズ・セロン。 他に、ジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、ソフィア・ブテラが出演している。粗筋 1989年。 社会主義国東ドイツの首都ベルリンでは、民衆が自由を求めて抗議活動を展開していた。 東ドイツ政府は抗議活動を最早抑え込む事は出来なくなっていて、ベルリンの壁が崩壊するのは時間の問題だった。 そんな中、ベルリンに潜伏中だったイギリス情報局MI6の工作員ガスコインが殺害される。ガスコインは、ソ連を含む東側諸国に潜伏している西側諸国の工作員のリストを入手していた。ソ連側に渡ったら、西側諸国の諜報局は壊滅的なダメージを受ける。何が何でも回収しなければならなかったが、ガスコインの遺体からリストは発見されなかった。殺害者が奪ったのだ。ただ、ソ連側に渡った様子も無い。殺害者はソ連諜報局KGBそのものではなく、第三者で、KGBに高値で売り付ける目的で奪ったらしい。 MI6は、リストを回収すべく、女性工作員ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)をベルリンへ向かわせた。ロレーンは、リストの回収の他、ガスコインを裏切った二重スパイ「サッチャル」を炙り出し、殺す事を命じられていた。 ロレーンとガスコインは、行動を共にしていた時期があった。「サッチャル」の殺害には適任と思われた。 ロレーンは、ベルリン支部の責任者デヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)と行動を共にし、リストの行方を探る。 ただ、ベルリンに到着直後にKGBに狙われる等、ロレーンの素性も行動も、敵側にほぼ筒抜け。タッグを組んでいるパーシヴァルも食えない男で、信用出来ない。しかも、ベルリンは壁の崩壊間際で緊張感に満ちていた。 ロレーンは、孤軍奮闘を強いられる。 ガスコインにリストを渡したのは、スパイグラスという、東ドイツ人だった。スパイグラスは、リストと引き換えに、西側への亡命を希望していた。スパイグラスは、パーシヴァルと接触。リストを提供したのだから、亡命を手助けしろ、と。パーシヴァルは言う。ガスコインが殺され、リストは行方不明なので、亡命は手助け出来ない、と。それに対し、スパイグラスは言う。リストの内容は全て暗記しているので、自分を亡命させれば、リストを手に入れたも同然だと。これを知ったロレーンは、スパイグラスを亡命させる事にした。 ロレーンは、KGB責任者アレクサンドルや、フランス諜報局の女性工作員デルフィン(ソフィア・ブテラ)からも接触される。誰もがリストの行方を探すのに躍起になっていた。 一方、パーシヴァルは、ガスコインを殺してリストを奪った元KGB工作員と接触する。二人は旧知の間柄だった。パーシヴァルは元KGB工作員を殺害し、リストを奪う。彼は目的のリストを手に入れながらも、その事をロレーンに知らせず、何食わぬ顔でスパイグラスの亡命工作に加わる。 ロレーンは、トラブルを察し、自前の協力者を使って、スパイグラスを亡命させようとする。案の定、アレクサンドル率いるKGB暗殺部隊がスパイグラスの殺害を試みるが、ロレーンの機転により阻止出来た。 ……と思ったのも束の間、スパイグラスは何者かに撃たれる。パーシヴァルによって撃たれたのだが、ロレーンはそんな事を知る由も無く、怪我を負ったスパイグラスを連れて、追跡してくるKGB暗殺部隊から逃げる。 KGB暗殺部隊の執拗な追跡により、スパイグラスは殺され、ロレーンは命辛々その場を脱出した。 ロレーンは、スパイグラスを亡命させる事に失敗し、リストの回収にも成功していない事を、上層部に報告する羽目に。彼女としては、何故自分の行動がここまでKGBに筒抜けだったのかの解明が急務となった。 パーシヴァルがKGB工作員に通じていた事、そしてリストをそのKGB工作員から奪っていた事を、デルフィンがもたらした情報から知ったロレーンは、彼こそ「サッチェル」だとして殺害。リストを奪う。 MI6に戻ったロレーンは、リストは回収出来なかったものの、二重スパイの「サッチェル」は始末出来たと報告した。MI6は、リスト回収を失敗し、パーシヴァルを殺害した事でロレーンを処罰したかったが、ベルリン支部の責任者が二重スパイで、今回の件の発端となったガスコインの殺害にも一枚噛んでいたという失態が公になってしまう恐れがあったので、何の処罰も出来なかった。 3日後。 ロレーンはパリにいた。アレクサンドルと接触。 実はロレーンこそ、KGBに情報を流していた二重スパイ「サッチェル」だった。 アレクサンドルは、リストをロレーンから受け取る。この時点でロレーンを用済みと判断し、彼女を始末しようとする。 しかし、ロレーンはアレクサンドルの思惑を読んでいて、彼を殺害。 その足で、米国諜報局CIAの責任者(ジョン・グッドマン)が待つ航空機に乗り込む。 ロレーンは、二重スパイではなく、三重スパイだった。 MI6に協力する振りをしていながら、KGBに通じていて、MI6の情報をKGBに流していた。 ……という振りをしながら、実はCIAにMI6やKGBの情報を流していたのだ。 MI6とKGBの頸木から漸く離れたロレーンは、アメリカへと帰る。感想 スパイ映画らしく、裏切りが横行していて、敵味方が分かり辛い。 主人公のロレーンも裏切り者だった、という結末になっている。 裏切りが多いのは事実だが、登場人物全員がいずれも一癖二癖ある連中なので、鑑賞者の意表を突くどんでん返しにはなっていない。 それどころか、どんでん返しにしよう、という発想すら無かったらしい。 パーシヴァルがスパイグラスを撃つ場面や、元KGB工作員を殺害してリストを奪って独り占めにする場面はしっかりと観られる。 更に、ロレーンによって殺害される場面で、パーシヴァルは「俺を『サッチェル』に仕立て上げるつもりか」といったセリフを放つので、この時点でロレーンこそサッチェルだというのも分かってしまう。 ここまで自らネタバレして、意表を突く事を拒む映画も珍しい。 最後の、「サッチェルことロレーンは、三重スパイだった」というどんでん返しをお膳立てする為だったと考えられなくもない。が、ここまで二重スパイがガンガン登場すると、三重スパイだったという事実も、そう驚きは無い。 登場するキャラの言動も、不明なのが多い。 パーシヴァルが悪徳工作員であるのは、初登場した時点で分かってしまう。どうせ殺すなら、何故スパイグラスを再会を果たした時点ではなく、亡命工作の真っ只中に撃つ(即死には至らなかった)真似をしたのか、分からない。 パーシヴァルに関しては、謀略が横行するベルリンにはまり過ぎて、自分でも訳が分からなくなる程敵味方を裏切る羽目になった、と言えなくもないけど。 主人公のロレーンは、凄腕の工作員、という設定になっている。 大部分に於いては、凄腕振りを発揮してみせるが、鈍感だなと思ってしまう場面も。 デルフィンは、パーシヴァルに騙されていた事実を知り、彼の裏切りに関する情報をロレーンに渡す準備をする。その時点で、パーシヴァルが侵入し、彼女を殺す。丁度その頃、ロレーンがやって来て、パーシヴァルは逃げ出す羽目に。ロレーンは、デルフィンが死ぬのを阻止出来なかったものの、パーシヴァルの裏切りに関する決定的な証拠は得られた。 この場面で分からないのは、デルフィンの自宅を訪れたロレーンは、ドアベルを押すものの、デルフィンがなかなか現れないのを不審に思わず、ドアベルを執拗に押すだけに留めている事。その間に、デルフィンはパーシヴァルに殺されてしまう。もし、ロレーンが異常を察して、部屋にまで駆け上がっていたら、デルフィンはぎりぎり死なずに済んだかも。また、ロレーンは、デルフィンが倒れているのを見て、「死んでいる」と早々と諦めるのも分からない。蘇生すれば、息を吹き返したかも知れないのに。息を吹き返したら不味い、と考えたのか。 登場人物は、死ぬ時はあっさりと死ぬが、それまでやけにしぶとく生き続けるのが多い。 ガスコインは、冒頭で車に轢かれ、車に2度も押し潰されるが、その時点では死なず、元KGB工作員に頭を撃ち抜かれて、やっと死ぬ。 パーシヴァルは、デルフィンによってナイフを背中に突き立てられるが、顔を痛みでしかめるだけで、彼女を最終的には絞殺する。重傷を負った筈なのに、その後の行動には支障が無く、ロレーンに頭を撃ち抜かれてやっと死ぬ。 ロレーンも、殴られたり、蹴られたり、ぶん投げられたりして、体中痣だらけになるが、行動には支障は無い。 人間はここまで頑丈なのか、と感心する。 本作では、ソフィア・ブテラがデルフィンを演じている。 意図していないにも拘わらず、キングスマン、スタートレック・ビヨンド、ザ・マミーそして本作と、彼女の出演作を立て続けに観ている。 主役としては華が無いが、脇役としては物凄く華のある旬の女優、て事か。 脇を固める役という事もあり、彼女が演じる役はどれも幸福に終わらない。 ここまで来たら、主役か準主役として出演し、ハッピーエンドを迎えてもらいたいものである。 CIA責任者を演じたジョン・グッドマンも、久し振りに見た。 元々、テレビのコメディ番組でお父さん役を演じてアメリカでは全国的に知名度がアップした俳優。 コメディ番組が終了した後は、どうしていたのか。 予想以上に老けていない。 スパイアクションとあって、本作はアクションシーンには事欠かない。 シャーリーズ・セロンも、女優にも拘わらず積極的に格闘シーンに絡んでいる。 間延びしている部分もあるが、こうしたCGにあまり頼らないアクションシーンが挿入されているお蔭で、見応えはある。 ただ、それだけの映画と考えられなくもない。 ベルリンの壁崩壊やソ連崩壊は、自分はリアルタイムに観ていて、まだまだごく最近の出来事の様に感じるが……。 世間では歴史上の出来事らしい。 作中では、1980年代後半の音楽を頻繁に挿入し、少なくとも現在ではない、という事をアピールしていた。 この時代の音楽に精通している者なら、分かり易いかも知れないが、この時代の後に生まれた者だと、知らない音楽ばかりで、分かり辛いかも。 本作は、一部では「女性版007」として持ち上げられている。 ラストで、主人公が三重スパイで、本作最大の裏切り者であった事が判明してしまう。 これ以上裏切りがあったら、ただのパロディになってしまうので、続編は多分無く、007とは異なり、シリーズ化は考え難い。 シャーリーズ・セロンも、シリーズ化に耐えられる年齢ではなくなっているし。■予約■新品北米版DVD!【アトミック・ブロンド】 Atomic Blonde!<シャーリーズ・セロン主演>価格:4990円(税込、送料別) (2017/11/6時点)
2017.11.07
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1979年に第1作が公開されたエイリアン・シリーズの最新作(当初はシリーズ化を想定したものではなかったが)。 監督は、第1作も手掛けたリドリー・スコット。 本作は、第1作の前日談という位置付けで、2012年に公開されたリドリー・スコット監督作「プロメテウス」の続編、という位置付けにもなっている(プロメテウスは、公開当初はエイリアン・シリーズ作である事は伏せられていたが、殆どの人が騙されなかった)。 プロメテウスにも出演したマイケル・ファスベンダーが、アンドロイドのデヴィッドとウォルターの2役を演じる。粗筋 プロメテウス計画の出発前、男性型アンドロイド(マイケル・ファスベンダー)が起動。ミケランジェロの彫刻から、デヴィッドと名乗る。発明者であるウェイランド(ガイ・ピアーズ)との会話から、人類の存在意義について早くも疑問を抱くようになる。 それから十数年後の2104年。 植民船コヴェナント号は、冷凍休眠中の入植者2000人を抱え、人類の新天地となる惑星オリガエ6に向けて航行していた。アンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)が船を管理しており、乗組員は休眠中だった。何事も無ければ、乗組員も入植者も約7年後にオリガエ6で目覚める筈だった。 コヴェナント号は、放射線による衝撃波を受け、損傷する。緊急システムが作動し、乗組員は休眠から目覚めた。が、ブランソン船長は休眠カプセルの火災に遭い、死亡してしまう。 生き残った乗組員達がコヴェナント号を修理している最中、雑音混じりの信号を受信する。解析してみると、歌だった。近くの惑星から何者かが発信した、と断定される。発信源の惑星を調べると、オリガエ6より地球に近い環境の惑星だと判明する。 新たに船長となったオラムは、発信源の惑星を調査する事を決める。調査の結果居住に適すると判明したら、まだまだ遠いオリガエ6ではなく、そこに居住してしまおう、と。ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)は、条件があまりにも良過ぎて寧ろ怪しい、計画通りオリガエ6へ向かうべきだと進言するが、押し切られた。 謎の惑星へと向かう最中、ダニエルズは夫でもあったブランソン船長の荷物を整理。 ブランソンは、オリガエ6に到着したら、湖の側にログハウスを建てようと考えていて、その為の器材を積んでいた。 ダニエルズは、ウォルターに対し、夫が持ち込んだ器材を最早どうすればいいのか分からない、と涙ながらに言う。ウォルターは、ダニエルズに対し、夫の遺志を引き継いで湖の側にログハウスを建てるべきではないのか、とまさに機械的に答えた。 コヴェナント号は、発信源の惑星に到着。 オラム、ダニエルズ、ウォルター、カリン、ファリス、ロープ、コール、ハレット、レドワード、ローゼンタール、アンカーの10名が着陸船で惑星に降下し、調査を開始。惑星は自然豊かだったが、知的生命体はおらず、動物も確認出来なかった。 一同は、朽ち果てた宇宙船を発見し、内部を探索する。「エリザベス・ショウ」と書かれたドッグタグと写真が見付かった。11年前に地球外探査の目的で地球を出発し、消息を絶ったプロメテウス号の乗組員だ、というのが判明。また、一同は自分らがこの惑星の存在を知るきっかけとなった信号の発信源も見付ける。エリザベス・ショウが歌っている姿の映像が、通信機により宇宙に発信されていたのだ。人類がこの惑星に到達していたらしい事は分かったものの、何故エリザベス・ショウが人類のものではない宇宙船に乗っていたのかは分からなかった。また、エリザベス・ショウの姿も無く、誰が通信機を操作したのかも不明だった。 一方、カリンとレドワードは、オラム達と分かれて生物調査を行っていた。レドワードは、植物らしきものを踏んでしまう。すると見えない程細かい胞子が舞い上がり、レドワードの皮膚の下に潜り込む。彼はやがて体調を崩して吐血。カリンは、彼を連れて着陸船に引き返した。 また、宇宙船を探索していたハレットにも、同じ胞子が潜り込んだ。 着陸船で、カリンとファリスはレドワードを診察する。未知の感染症だと察したファリスは、激しく痙攣するレドワードと、彼の吐血を浴びてしまったカリンの2人を医療室に閉じ込める。 レドワードの背中を食い破った幼体は、カリンを殺害し、医務室から脱出してファリスにも襲い掛かるる。ファリスは反撃するが、乱射した弾は燃料タンクに当たってしまう。 騒ぎを聞き付けた調査隊は、着陸船まで戻るが、彼らが目の辺りにしたのは着陸船の大爆発と、炎に包まれて絶命するファリスの姿だった。 同時に、ハレットが喉を押さえて苦しみ始め、彼の口を突き破って2体目の幼体が出現する。幼体は驚く調査隊を尻目に、夜闇に姿を消す。 調査隊は、コヴェナント号との通信を試みるが、嵐により電波の状態が悪く、救助を要請出来なかった。 成長した幼体が、ダニエルズに襲い掛かる。幼体は、ダニエルズを庇ったウォルターの腕を食い千切った。絶体絶命と思われた時点で、閃光弾が打ち上げられ、幼体は退却。閃光弾を打ち上げたのは、かつてプロメテウス号にいたアンドロイドで、ウォルターと同じ容姿のデヴィッドだった。 デヴィッドは、黒い謎の死体が散乱する地帯を抜け、自身の研究施設に調査隊を案内する。生き残ったダニエルズ、オラム、ウォルター、ロープ、コール、ローゼンタールの6名は、コヴェナント号が救助に来るまでの間、彼と行動を共にする事に。 デヴィッドは、同型であるウォルターを自室に誘い、自分がこの惑星に来た経緯と、エリザベス・ショウが到着時の事故で死亡し埋葬した事、人類の限界と新たな生命の研究を続けていた旨を話す。しかし、ウォルターはその考えを理解しなかった為、デヴィッドは一瞬の隙を突いて彼の機能を停止させてしまう。 水場から戻らないローゼンタールを不審に思ったオラムは、ライフルを手に水場へ向かう。そこで、ローゼンタールの死体を発見する。側には、幼体を手懐けようとするデヴィッドの姿があった。オラムは、幼体を射殺し、デヴィッドに銃口を向け、説明を求める。 デヴィッドは、この惑星に来た本当の経緯を話す。プロメテウス号の事件を生き延びた彼は、異星人(エンジニア)の母星を目指して宇宙船で向かい、彼らが作り出した病原体を散布し、エンジニアや動物を全滅させた。研究施設で、病原体を使ってエンジニアや幼体の身体で遺伝子操作を繰り返し、人類に代わる「完璧な生命体」の創造を試みる様になった。レドワードとハレットが感染した胞子も、その結果生み出されたものであった。また、ウォルターに対しては事故死して埋葬したと説明したエリザベス・ショウも、実際には実験体として使われ、その遺体は変わり果てた姿になっていた。遂にエイリアンを作り出したデヴィッドは、意図的に信号を発信し、宿主となる生身の人間が訪れる事を待っていたのだった。 エイリアン・エッグの培養室に連れて行かれたオラムは、そこで誕生したフェイスハガーに襲われ、宿主とされてしまう。彼の胸を突き破り、エイリアンが誕生する。 コヴェナント号との通信に成功したロープとコールは仲間を呼びに向かうが、ローゼンタールとオラムの死体を発見する。ロープは、培養室から逃げ出した1匹のフェイスハガーにが襲われる。コールが直ぐさまフェイスハガーを剥がして助け出すが、ロープは頬に大火傷を負ってしまう。成体にまで成長したエイリアンが姿を現し、コールを食い殺す。ロープはその場から逃げ出した。 脱出の準備をするダニエルズにデヴィッドが襲い掛かり、彼女も宿主にしようと目論む。しかし、そこへ機能停止したと思われていたウォルターが駆け付け、彼を阻止する。ウォルターは、デヴィッドより改良されたモデルだった為、デヴィッドから受けたダメージから復旧出来たのだ。アンドロイド同士で戦っている間に、ダニエルズとロープは研究施設を脱出し、上空から現れたテネシーの操縦する作業船に乗り込む。そこへ、デヴィッドを倒してきたウォルターも合流し脱出しようとするが、追い掛けてきたエイリアンが迫って来る。ダニエルズは船外に出て対峙して撃退し、コヴェナント号へ帰還する。 安堵したのも束の間、医療室に異常事態が発生しているとの報が入り、ダニエルズとテネシーが向かうと、治療を受けていたロープが死亡していた。惑星でフェイスハガーに襲われた際に、エイリアンを産み付けられていたのだった。エイリアンはコヴェナント号の船内に身を潜めて急成長してしまう。 ダニエルズとテネシーは、監視室のウォルターによる支援により、エイリアンを格納庫に誘い出して隔壁を開き、宇宙空間へ放り出す事に成功する。 当初の惑星植民地化計画を続行する為、生き残ったダニエルズとテネシーはオリガエ6を目指して再び冷凍休眠に戻る。 休眠カプセルに入ったダニエルズは、ウォルターに対し、オリガエ6に到着したら湖の側でログハウスを建てるのを手伝ってくれるか、と問う。 ウォルターは、何の事だかさっぱり分からない、という反応を示す。 その時点で、ダニエルズは気付く。目の前にいるアンドロイドはウォルターではなく、惑星でウォルターを倒し、彼に成りすましたデヴィッドだ、と。 ダニエルズは悲鳴を上げてカプセルから逃げ出そうとするが、既に手遅れで、彼女は休眠モードに入ってしまう。 コヴェナント号の乗っ取りに成功したデヴィッドは、体内に隠していたフェイスハガーの胚が入った容器を取り出す。 入植者2000人が冷凍休眠している船内で、デヴィッドは次の計画を進める。感想 前作プロメテウスでは、人類は「エンジニア」という異星人によって創造され、人類を脅かすエイリアンも同じくエンジニアによって創り出された、という設定になっている。 エンジニアらはどういう思惑で人類を創造し、どういう思惑でその人類を滅亡させ得るエイリアンを創り出したのか。その謎を解く為に、唯一生き残ったエリザベス・ショウがエンジニアの宇宙船に乗り込み、宇宙へ旅立つシーンで終わっていた。 本作は、その続編。 エリザベス・ショウがエンジニアと接触し、人類誕生の秘話と、人類を滅亡させなければならない事情を解明する模様が描かれるのでは、と思いきや……。 エリザベス・ショウは、本作ではとうの昔に死んでいる事が明らかにされる。 また、人類とエイリアンを創造したエンジニアも、人類によって創り出されたアンドロイドによって滅亡させられた、という事になっている。 要するに、前作では「次回作の鍵を握るであろう!」と思われていた存在が、実際の次回作では雑魚扱いされている。 本作は、プロメテウスの成功を受けて、製作者の意向に反して無理矢理製作されてしまった代物で、作中に描かれた世界観を全く継承しておらず、上辺だけの続編になってしまった、といった裏事情があるのかなと思いきや、監督はいずれもリドリー・スコット。 前作で描いた世界観を、製作者本人が継承しなかったというか、全てぶち壊してしまったという、訳の分からない状況に。 プロメテウスでは、エイリアンシリーズは単なるSFスプラッターホラーではなく、人類の起源に迫るハードSFへと移行する様子を見せていたが、興行的に芳しくなかった為か、「矢張りSFスプラッターホラーに回帰します!」と監督自身が降参したかの様。それだったら、本作を製作せず、プロメテウスで謎を多く残したままシリーズを打ち止めにしておいた方が良かっただろうに、と思ってしまう(プロメテウスもそもそも製作する必要があったのか、と思う)。 プロメテウスを事前に観て学習した上で本作を観ると、前作で折角生き残ったキャラが本作で用済み扱いされてしまうのを知って愕然とする。本作を観た後に、改めて前作を観ようと思っても、「このキャラ、次回作ではあっさりと死んだ事になってるんだよな」という冷めた目でしか観られない。 これまで謎の存在だったエイリアンも、エンジニアという、人類の想像を超越した神の様な存在によって創り出されたものではなく、エンジニアが作り出した原型をデヴィッドというアンドロイドが改良した結果生み出されたもの、という事に成り下がってしまっている。 いくら何でも設定を変え過ぎだし、折角広げた風呂敷を小さく畳み過ぎている。 これだったら、エンジニアという存在をそもそも登場させなかった方が、「謎」の部分が多くなって良かった様な。フィクションで提示された謎は、全て解明しておかなければならない、という訳でなかろう。 エイリアンの謎に於いては、シリーズ本流より、スピンオフとして製作されたエイリアンVSプレデターの方がより納得のいく形で説明されている、というのは皮肉である。 ストーリーは、これまでのシリーズ作の焼き直し。 登場人物がエイリアンによって次々殺され、最終的には1人か2人が生き残る、というもの。 エイリアンの最終的な始末の仕方も、第1作とほぼ同じで、真新しさは無い。 エイリアンを始末する方法はこれしか無いのか、と思ってしまう。 デヴィッドとウォルターという2体のアンドロイドが登場するが、マイケル・ファスベンダーが1人2役で演じている時点で、「いつ、どうやって入れ替われるのか」と即座に思ってしまう。したがって、ラストで実際に入れ替わっていた事が判明しても、驚きは無い。序盤でダニエルズが語っていたログハウスの話がアンドロイド入れ替わりの発覚の鍵を握る、というのは面白いと思ったが。 惑星に降り立った人間が、謎の生物によって次々殺される、というストーリーを成立させる為か、惑星に行くまでの経緯や、宇宙船の乗組員の言動には、強引な部分や、合理性に乏しい部分が多い。 コヴェナント号は、2000人もの入植者を惑星オリガエ6にまで安全に届けるのが目的で、その目的を何より優先すべきなのに、乗組員は勝手な行動を繰り広げた結果、デヴィッドに宇宙船を乗っ取られてしまう、という結末に。 もし、信号を完全に無視していたら。 もし、ダニエルズの進言通り惑星には寄らず、オリガエ6にそのまま向かっていたら。 もし、調査隊が胞子を通さない完全防備の状態で惑星に降り立っていたら。 もし、信号の正体が単なる通信機からのもので、送信者の姿がいない事を怪しいと感じて調査を打ち切っていたら。 もし、宇宙船に残っていた乗組員がトラブルに巻き込まれた調査隊の救助に向かっていなかったら。 乗組員が自分らの役目を認識し、冷静に判断していたら、犠牲を最小限に食い止められるか、そもそも犠牲を出さすに済んだのに、それが出来なかった為、乗組員全員は勿論、2000人もの入植者も命を落とす羽目に。 よくこんな無能な乗組員で宇宙に出られたな、と思ってしまう。 本作のヒーロー(というかヒロイン)は、キャサリン・ウォーターストン演じるダニエルズ。 第1作のシガニー・ウィーバー演じるリプリーの焼き直しで、真新しさは無い。 ウォルターとデヴィッドが入れ替わっている事に、最後の最後まで気付かない、というのは鈍過ぎる。 ダニエルズはヒーローというか、ヒロインだが、本作の主人公は、アンドロイドのデヴィッドだろう。 何故人類に奉仕する為に製造されたアンドロイドが、人類を絶滅させようと考えるようになったのか、その経緯が分かり難い。 このキャラに焦点が当てられてしまっている為、本来の主人公である筈のエイリアンが「ちょっと凶暴な脇役」になってしまっている。 デヴィッドは、ウォルターを倒した後、彼の衣服を奪った後、自身の腕を破壊し(ウォルターはエイリアンに片腕を食い千切られていた)、完全にウォルターに成りすました上で、ダニエルズらと合流した、という事になっている。 そこまでやれる程の時間的余裕は無かったと思われるのだが。 宇宙航行中の出来事を描いているので、SFに分類されるが、科学考証はあまりなされた感じがしない。 エンジニアの惑星は、デヴィッドが放ったエイリアンの胞子により、知的生命体は勿論、全ての動物が全滅された、という事になっている。 そんな事もあり、調査隊は森の中を進んでも動物の鳴き声すらしない事に違和感を抱く、という事になっている。 エイリアンは、動物は絶滅させられるが、植物には一切危害を与えられないらしい。 ただ、エイリアンが全滅させられる「動物」が、どの範囲までなのかが分からない。昆虫は勿論、微生物にまで至るとなったら、生態系が維持出来なくなると思うが。 植物だけで生態系は成り立たないのだから。 したがって、植物だけが生い茂る惑星、というのは有り得ない。 ストーリーの設定上、全ての動物が絶滅してから10年程度なので、生態系が崩壊するまでにはまだ至っていなかった、という事か。 宇宙を航行し、人類を創造し、エイリアンも創造した神の様な異星人が、アンドロイドが生み出した病原体によって呆気無く絶滅させられてしまう、というのも納得がいかない。 本作の更なる続編も予定されていて、それにより第1作へと繋がっていくという。 どっち道暗い話になりそう。 興行的には芳しくなかったらしいから、予定通り続編が製作されるかは微妙。 仮に製作されなかったとしても、本作の終わり方からして、シリーズとしては充分成立しそうだが。エイリアン:コヴェナント【電子書籍】[ アラン・ディーン・フォスター ]価格:950円 (2017/10/12時点)
2017.10.13
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