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2022.03.08
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カテゴリ: こはく文庫
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2020年6月刊
くるみ舎・こはく文庫
著者:すずね凛さん

うなじから背中にかけて大きな傷のあるフィオナは、いつも首元までしっかりと隠れた質素なドレスに身を包んでいる。結婚も諦め、自立した職業婦人として生きていく決意を固めている彼女だったが、ある日、妹・アリシアの結婚式で美貌の大富豪・トンプソン伯爵からダンスに誘われる。男性に声をかけられることなど初めてのフィオナは、驚きつつも喜びに胸をときめかせるが、自分に自信を持てないあまり、トンプソン伯爵の何気ない言葉に傷つき、その場を逃げ出してしまう。数日後、家庭教師の職を探して街を歩いていたフィオナは、トンプソン伯爵と再会する。成り行きで「住み込みの職を探している」と説明すると、トンプソン伯爵は信じられないような提案をしてきて……。
↑楽天ブックスより、あらすじ引用

kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。
自己否定の塊なヒロインが三拍子揃ったヒーローと結婚して変わっていくお話です。


​​ ここからネタバレと感想。

両親の死により没落してしまったオルコット伯爵家の長女フィオナは、現在二歳下の妹・アリシアと共に遠縁の親戚の邸で世話になっている。
元々引き籠り気味ではあったのだが、そんな理由もあって社交界デビューもしていない。
加えてフィオナには幼少時の事故により首から背中にかけて大きな傷跡があることから、結婚も諦めていた。
そんな彼女の元に毎月二十一日になるとベランダに赤い薔薇の花束が置かれるようになってもう十年以上になる。一度、早朝に目覚めた時に花束を置いて去って行く背の高い男性のシルエットを見かけた時からその紳士のことをこっそり「赤薔薇の君」と呼ぶように。

ある晴れた日、その日はアリシアの結婚式であった。
身を寄せ合って生きて来た妹の結婚は喜ばしい事であるが、残された自分は益々親戚の家では肩身が狭くなりそうだ。傷物の自分にまともな縁談が来るはずもないと勉学に励み、家庭教師か翻訳家で生計を立てて行こうと考えている。
結婚を諦めている以上、親戚の家から出て行くなら職業婦人になるしかないのだ。

つい考えに耽っていると会場内がざわついていた。思わず視線を向けると大富豪で貿易王との呼び名も高いトンプソン伯爵が現れたからのようだ。
彼は思わず見とれてしまうような美青年で、つい見つめていると何故かこちらに向けて歩いてくる。
自分の後ろにお目当ての人がいるのかと思いきや、伯爵は彼女の手前で止まりダンスを申し込んできたのだった。
フィオナは踊れないからと断ったが、どうしてもと言う彼に押し切られてダンスをすることになってしまった。踊りながら伯爵はあれこれ話しかけて来たけれど彼女は慣れぬダンスで一杯一杯だ。
取り敢えず、妹の結婚相手であるバレンタイン伯爵のご友人か?と尋ねると、予想通りの答えが返って来た。
思っていたより会話が弾んでダンスの後もつい話し込んでしまったものの、さり気なく自分を褒める彼の言葉に自己否定な性格を煽られた気になって泣き出してしまったフィオナに伯爵はキスをして慰めたのだった。

一連の出来事ですっかりトンプソン伯爵に心奪われたフィオナに待っていたのは辛い現実だ。
アリシアが嫁ぎ、親戚による彼女への厄介者扱いに拍車がかかったようで、離れにある使用人たちの住まいに部屋を移動させられたのを思うに、嫌ならさっさと出て行けと言うことであろう。
こうなったら何としても早めに職を見つけなければと、希望としては住み込みの家庭教師の口を探したが、やはり人気の職業らしく現状は空きが無い。
そう思う通りにはならないかと街中を歩いていると、トンプソン伯爵とばったり出くわしてしまった。
一人あの時のキスを思い出し赤くなっていると、丁度気分転換で散歩をしてた所だからとカフェに誘われたフィオナは、聞き上手な彼に思わず職探しをしていたことを白状させられた。
伯爵令嬢なのに住み込みの働き口を?と不思議そうに尋ねられ、かいつまんで自分の事情を話した彼女に彼は、ならば自分と結婚しないかと切り出した。

思いがけない申し出に断ろうとするフィオナだったが、続けられた彼の話によれば仕事の性質上既婚者の方が都合が良いのだと言う。
だが、かと言って相手は誰でも良いというわけではなく、ある程度優秀な人が好ましい。
その点、独学ではあれど通訳も出来る彼女は打って付けなのだそうだ。
親戚の家を出るために職探しをしているのならば、自分の妻となって永久就職してほしいと請われ、とっくに彼に心奪われていた彼女はその求婚を受け入れるのだった。
彼は改めてセドリック・トンプソンと名乗り、善は急げとばかりに役所へ出向き結婚の証書に二人でサインを済ませると、その足で親戚に結婚の報告をしたのだが、相手が相手なだけに随分と驚かれた。

かくしてフィオナはその日のうちにトンプソン伯爵夫人となったわけだが、貴族とは名ばかりの自分なのに、伯爵邸の使用人たちは彼女を歓迎してくれており、その中でも古参だという執事のドイルは涙を流して喜んでいた。
彼らの期待に応えるためにも精一杯勤めねばと決意したフィオナは、結婚の条件として夫婦の営みの際は必ず明かりを消して欲しい旨セドリックに頼んでいた
彼は快く受け入れ理由も聞かずいてくれたのだが、この醜い傷跡を見られたら嫌われる気がしてどうしても言えないでいる。
無事に初夜を終え、明け方ふいに目を覚ましたフィオナはベランダにあの赤い薔薇の花束が置かれているのに気付いた。そういえば今日は二十一日だったと漸く思い出したものの、どうやって彼女がこの屋敷にいることを知ったのであろう。
そして、その日から花束がフィオナの元に届くことは無かった。

籍を入れて二か月ほど経ち、妻に対して惜しみない賛辞と労いの言葉を欠かさないセドリックのおかげでフィオナは徐々にだが自分に自信を持ち始めていた。
彼は通訳が必要な時や大事な商談の際には必ず彼女を同伴させ、時には意見も求められた。
そして、フィオナが美しく装っているとセドリックは何とも嬉しそうで、結婚前は傷跡を隠すことばかりに気を取られて格好に気を遣わなかった彼女が、今となっては美容と健康に気を力を入れるようになっていた。
世話をしてくれるメイドたちには早々に傷跡のことは知られてしまったが、どうしてもセドリック告げる勇気がないので、メイドたちにも口止めをしている。

それからまた一か月ほど過ぎ、セドリックが新たなビジネスとして買い取った客船を使い豪華客船ツアーを立ち上げることになった。
その宣伝も兼ねてツアー第一の催しとして二人の結婚披露宴を開かないか?と提案された。
籍を入れてもう三ヶ月にもなるが、一生に一度のことだしやはり式は挙げたいだろうという心遣いが何とも嬉しく、フィオナはその日を楽しみにしていた。

そんなある日、トンプソン商会を一人の女性が訪れた。
公爵令嬢だと言うキャサリンはセドリックの昔馴染みらしいが、父親の外交に着いて行っているせいか何か国語も話せるらしい。だが、セドリックがフィオナを自分の妻だと紹介するとあからさまに彼女の顔色が変わった。
キャサリン嬢がセドリックに想いを寄せているのはフィオナもすぐに気が付いた。
だが、わざとらしくしなだれかかるキャサリンを軽くいなしているセドリックを見るに、当人は相手にする気は全く無い様だけれど、フィオナはキャサリンの馴れ馴れしい態度に気分を悪くしていた。

その日からキャサリンは足繁く商会に顔を出し、フィオナがいない際は通訳を買って出ていたと言う。
彼女の父が公爵なこともあってセドリックも無碍には出来ないようだが、それでもフィオナと一緒の時は何よりも妻優先の態度を取っていた。
独善的な性格らしいキャサリンはそれで随分プライドを傷つけられたようで、怒りの矛先は必然とフィオナに向かっていた。

待ちに待った結婚披露宴の日、ツアーの初日を飾るイベントも兼ねているため、フィオナのウェディングドレスは素晴らしい出来栄えの物であった。
そんな彼女に挨拶に来たキャサリンは、わざとそのドレスに持っていたワイングラスの中身をぶちまけ台無しにすると言う暴挙に出た。
態とではない風を装いながら嫌がらせなのは明らかであった。
怒りを押し殺しつつ、彼女が渡して来た予備のドレスに着替える際、背中の傷跡を見られてしまった。
ほくそ笑んだキャサリンはフィオナに更なる恥をかかせるべく、ベールで何とか隠していた傷跡を招待客たちに晒し嘲笑ったのだった。

セドリックに見られたことがショックで式場を飛び出したフィオナは町を彷徨い、衝動的に馬車の前に飛び出そうとした所をセドリックに助けられた。
あのアクシデントで披露宴は中止となり、邸の使用人たち総出でフィオナを探していたのだそうだ。
風呂に入って冷えた体を温められた彼女は、大人しくセドリックの話に耳を傾けた。
キャサリンの嫌がらせは誰が見ても度を越しており、妻を傷つけられて怒り心頭だった彼はその場で絶縁を言い渡したと言う。となれば今後商会にも出入り禁止であろう。

そして、フィオナの背の傷跡についてセドリックは承知の上でプロポーズしたのだと告げられ、彼女は驚いた。
何故なら、その傷跡は彼を守ったために付いたものだからだ。
二人の両親は友人同士で、セドリックとは幼馴染であった。だがある時、お付きを伴い遊びに出掛けた二人は不運にも帰宅途中に酔っ払い同士の喧嘩に巻き込まれた。
背中に刃を突き立てられそうになった彼を庇って間に入ったフィオナの背中を切り裂いた。
傷は深く、生死の境を彷徨っていたフィオナは目覚めると記憶を失くしていたのだった。

セドリックは自分のことすら忘れられてしまった事に大層ショックを受けたものの、いつか絶対大好きな彼女を花嫁に迎えると、相応しい男になるべく努力した。
成人して商会の経営を父から受け継ぎ、仕事も順調になったこともあり、夢であったフィオナとの結婚に踏み切ったのだった。
使用人たちも主人の夢を知っていたが故にあの初日の歓迎ぶりであり、どうりで執事が感動して泣いていたわけだと彼女も納得した。
そして、彼がいつまでも影ながら想っていること伝えるために、事故があった二十一日に欠かさず薔薇を贈り続けていたのだと知ったフィオナは驚きつつも、どれだけあの花束に勇気をもらっていたか語ったであった。 〆



111ページという短編小説ですが、その割にラブシーンが3,4回ほど入ってて、びっくり。 まあこの作家さんだから拘りがあるんでしょう。
赤薔薇の君=セドリックなのはすぐピンときた人も多いのではないでしょうか。
初恋を貫き通した彼にキャサリンが粉掛けていたけれど、そりゃ靡かないのも当然です。
にしてもあの令嬢にはムカつく。オートクチュールのウエディングドレスにワインぶっかけただけでは飽き足らず傷跡まで招待客に見せつけるとは、人の心無いんか。
なんにせよ見事にセドリックにフラれたばかりか、絶縁宣言はかなり堪えたことだろうとは思うので落としどころとしてはあんなものかなと。



評価:★★★☆
お話自体は面白いんですが、自己否定の塊なヒロインの性格が好き嫌い分かれるかも​。





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最終更新日  2022.03.09 09:46:51
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