つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2005.09.20
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カテゴリ: Book
中西弘樹/平凡社新書


海岸に打ち上げられたものを集める趣味を,ビーチコーミング(beachcombing)と呼ぶそうです.

comb:【他動詞】(場所など)を徹底的に探索する

ビーチコーミングの面白そうなところは,ある狭い場所を見てるだけなのに,広いひろい領域で起きている現象を,感じられることでしょうか.


拾ったものは何なのか.
それはどこから来たか.
どんな経路でやって来たのか.
どれほどの時間がかかったのか.
それが生き物ならば,ここは生涯のどの辺りか.
これからはじまるのか?
道の途中か?
ここでおわるのか?
それは珍事か,日常か?
偶然か,必然か?

ここは昔どんな海岸だったのか.
ここは今どんな海岸なのか.
これからどう変わるのか.

ここから何が他所へと流れていくのか.
それは流れ着いた先で何を引き起こすのか.




第3章は「観察」から「科学」へと導くための章です.ゴミの数や種類についての,具体的な調査例が示されています.人海戦術を使ってはいるものの,こんな単純な調査で,思わぬ側面から海外とのつながりが見えてきて,とても面白かったです.

第 4,5章にあるような「図鑑」的な部分は,単なる羅列になってるので,もっと工夫してほしかったです.

最後の二つの章では,人為にともなう海岸環境の変化について書かれています.でも,もし私たち素人が,地元の好ましくない現状に気づいた時,どうすればいいのか.それに関しては具体的に提示されていないのが残念です.せっかく上記のような調査をしても,こういう大きな問題にはしょせん役立たずなのか,という印象すら持ちかねません.

提案としては,自分たちがとった記録を,形にして残しておいて,NPOなり,博物館の活動なり,公的な活動の記録として保存できないか試みてはどうでしょう.そういう「形」になったものに対して,役人とか学者とかは,なかなか無視しづらいものだし,何か具体的なアクションにつながるきっかけとなるかもしれません.


◆関連図書

「日本の渚」 (加藤真/岩波新書)
日本の海岸生態系の概説書として,超優良書です.血の通ったすてきな文章です.

「クマとナマコと修学旅行」 (盛口満/どうぶつ社)
漂着生物についても書かれていて,血湧き肉踊る?面白い本です.筆者自筆の精密な絵もいっぱいで,エピソードも面白いです.






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Last updated  2005.09.20 19:07:28
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フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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