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2007年10月23日
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作家的時評集(2000ー2007)
高村薫の著書は少ない。雑文集に至っては、「半眼訥訥」しかない。よって、文庫オリジナルのこの「作家的時評集2000-2007」が突然出たのには驚いた。しかも内容に至っては、おそらく著者は突然2000年から新聞や論壇誌に寄稿を始めたのだと思うが、その数が半端ではなかったことを思い知る。信濃毎日新聞、毎日新聞、読売新聞、中国新聞、北海道新聞、神戸新聞、朝日新聞、東京新聞あるいは「論座」「文芸春秋」「週刊文春」「現代」「AERA」。実に精力的に書き一冊の本になった。まだ、2005年のところまでしか読んでいないが、印象的なところをいくつか拾ってみる。まだあまりよくわからないのだけど、この作家の鋭さと同時に健全な「保守」ともいえる立ち位置がわかってきたからである。また、この本を読むことによって、はからずも2000年から今に至る政治を含む社会がどのように「変わってきたか」じつに「一つの見方だけれども」時系列でリアルにとらえることができる。作家としての目が、政治だけでなく、犯罪、ネット社会、会社人間たちの考え方などを容赦なく見続けているからである。まだ全体的な評価はできないけれども、すくなくとも読んでいて退屈はしない本だ。

高村薫は、小泉純一郎と橋本龍太郎が首相をめぐって選挙になった時に、小泉に期待したらしい。ともかく「改革」しなければならない。という気持ちだったらしい。しかし、約二カ月で、おやっと思う。


私はほんの二か月前<小泉がんばれ>と思った有権者の一人として、それでもなお政治の変革を願う者の一人として、ここで見てきた小泉純一郎の語法について、一寸の危うさをおぼえるものである。(「文芸春秋」2001年8月号)


やがてその思いは、2001年9.11を経て、小泉が無条件にブッシュのアフガン侵攻を支持するのを見るに至って、決定的なものになる。

私はこの事件を四月の小泉政権発足という大きな転換点の脈略の中で見ています。小泉政権が誕生したとき、40数年生きていて初めて味わった痛切な感覚は、自分が少数派になったという感覚でした。国民の9割が小泉政権を支持したけど、私は支持できない。私の書いている大衆小説は、大衆の側にいないと成立しません。それが突然少数派になり、さてどうするかと考え込んでしまったのです。(「ダ・ヴィンチ」2001年12月号)

私なんか、いつも少数派だと思っているので、高村氏の気持ちはなかなか理解できませんが、ショックだったのかもしれません。しかし、それは高村氏が変わったのではなく、社会が変わったのに過ぎないのではなかったか、と私などは思うわけです。

この時期高村氏は「新リア王」という80年代の政治を舞台にした小説を書いています。一連の時評はそれらの副産物だったのだろうとは思いますが、政治をまじめに観察した作家が見た小泉の評価がこのようなものだったことに私は興味を覚えます。

私は、日本人が55年体制以降の政治を金権=腐敗という、それは確かに一面ではあるんだけれども、とても表面的な感情で評価した結果、こういう今の時代をまねいていると思うんです。(略)それと国民が複雑なものをちゃんと理解しようとする忍耐をなくしてしまったのが同時並行だったと思えるんです。そういう流れのいきついた果てに小泉政権というのが、ある。一昔前なら小泉さんは絶対表に出てこられない人です。それだけの器でもないし、能力もないし、努力もしていない。(「論座」2003年10月号)

そして悲劇の2005年9.11。高村薫氏は基本的に郵政民営化には賛成だったわけです。けれどもあの解散総選挙には反対だった。議論すべきはもっとほかにあると思っていたからです。しかし、結果はあのような結果になった。

昨夜、私はぽかんとして開票結果を見ていた。そして初めて気づいた。今まで投票に行かなかった「無党派層」は保守だったんだと。おそらく世間はこれまで、無党派層はリベラルだとみなしていたのではないか。それが大いなる勘違いだということが証明された。(朝日新聞2005年9月12日)

とりあえず、高村薫氏の立ち位置をスケッチしてみた。しかし、彼女の文章の魅力は、学者とは全く違う社会の出来事に対する新鮮な見方にある。次回取り上げるときはそのあたりは中心に書いてみたい。





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最終更新日  2007年10月24日 01時08分27秒
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