ふるさと福井

福井県の魚「越前がに」

冬の味覚の王者、越前がに
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「越前がに」の水揚げ風景とセリ風景 (2007年11月10日三国漁港=福井県坂井市で撮影)
冬の味覚の王者「越前がに」、ぎっしりと詰まった身はほんのり甘い
「越前がに」の漁場まで”日帰り漁”、だから新鮮!
「越前がに」、福井の味として広く定着
料亭向け土産用に人気の「越前がに」、通にはむしろ雄よりも喜ばれているという「セイコ」
珍味、セイコの内子(うちこ)
安土桃山時代には都でも親しまれていた「越前がに」
「古事記」にも「越前がに」を思わせるような記述
親ガニになるまでに10年、感謝して味わいたい
カニを買う時のポイント


穏やかな天候が続き関係者の表情も明るい

「越前がに」(ズワイガニ)の水揚げ風景

漁船の生簀からカゴに入れられた「セイコガニ」

雌のセイコガニの水揚げ風景

黄色のタグは「越前がに」の証

標識札”黄色いタック”は 「越前がに」(ズワイガニ)の証

漁船の生簀から取り出した「越前がに」に、
標識札”黄色いタック”を 取り付けていました

三国漁港のセリ風景

「越前がに」のセリの風景
三国漁港のセリ風景

「越前がに」のセリの風景

セリ場に運ばれた「越前がに」

セリ場に運ばれた「越前がに」

冬の味覚の王者「越前がに」、ぎっしりと詰まった身はほんのり甘い

雄のズワイガニ

「越前がに」は北陸の味覚の王者ともいわれていますが、日本海の荒波でもまれて育つため、肉質がひきしまり、ぎっしりと詰まった身はほんのり甘いという。カニのシーズンに入ると、この味覚を求めて、遠く関西、中京方面からも「越前がに」を食べにを多くの観光客が訪れます。「越前がに」の主な水揚げ基地は、越前漁港(越前町)と三国漁港(坂井市)です。平成元年(1989)には「越前がに」が”福井県のさかな”に指定されました。


「越前がに」の漁場まで”日帰り漁”、だから新鮮!

福井県の沖合いは暖流と寒流が交わる地点にあり、良質のプランクトンが豊富な好漁場として知られていますが、ここが「越前がに」の漁場でもあります。その漁場は、越前海岸の各漁港から近く、比較的小さな漁船で”日帰り漁”をすることから、新鮮さを損なうことなく捕り立てのカニが水揚げされるといわれています。福井県で揚げされたカニには、その証として標識札”黄色いタック”が脚に付けられており、お墨付きの「越前がに」かどうか一目で分かるようになってます。


「越前がに」、福井の味として広く定着


福井県で水揚げされた雄のズワイガニは「越前がに」の愛称で広く親しまれ、福井の味として広く定着した感があります。雌のズワイガニは「セイコ」、脱皮して半年以内の雄のズワイガニは「水ガニ」と呼ばれています。しかし一方では、「越前がに」には、雄雌、大小、脱皮の関係などにより、「ズワイ」「セイコ」「水ガニ」などの商取引上の名称がつけられているともいわれています。


料亭向け土産用に人気の「越前がに」、通にはむしろ雄よりも喜ばれているという「セイコ」

雄の「越前がに」は脚を広げると大きさが70~80cmにも達し、みためが豪華なことから料亭向けや土産用に人気があるようです。濃厚なカニ味噌はもちろんですが、身の入りがよく食べごたえがあります。漁獲時期は11月初旬から3月まで。「セイコ」は、外子卵がふ化まじかにまで進み、加えて内子と呼ばれる卵巣が大きく成熟した雌ガニです。大きさは20cm前後と小ぶりですが、通にはむしろ雄よりも喜ばれているともいわれています。漁獲時期は11月初旬から1月末まで。「水ガニ」は脱皮半年以内の甲羅が軟らかい雄をいい、水っぽく、身の入りが少ない。脚の身がズボッと取れることから「ズボガニ」ともいわれています。例年、12月下旬から漁獲が始ります。

珍味、セイコの内子(うちこ)

「越前がに」(雄ズワイガニ)では味わえない珍味、「セイコガニ」(雌ズワイガニ)の卵巣は、内子(うちこ)とも呼ばれています。漁獲される頃のセイコガニは、冬季産卵期(2月)を控え、どれも濃い橙色に卵巣が成熟していることから、食通の間ではむしろ雄よりも「セイコガニ」が好まれているともいわれています。ちなみに、お腹に抱いている受精卵は外子(そとこ)と呼ばれています。

一方他国では、資源保護の観点から、ズワイガニの仲間の雌がには、漁獲がすべて禁止されているといわれ、国内の北海道周辺でも雌ガニの漁獲が認められていないようです。珍味といわれるのはこのような背景もあるようです。

安土桃山時代には都でも親しまれていた「越前がに」

ところで「越前がに」の歴史は古く、安土桃山時代には「越前がに」の名称で都人にも親しまれていたようです。京都の公家で歌人でもある三条西実隆は、60年余に及ぶ日記「実隆公日記」を残していますが、その永正8年(1511)3月20日には「伯少将送越前蟹一折」などと記されていることから、そう考えられています。「伯少将送越前蟹一折」は「伯少将へ越前蟹一折を送る」という意味のことです。


「古事記」にも「越前がに」を思わせるような記述

一方、日本最古の歴史書「古事記」にも、「越前がに」を思わせるような記述があります。それは「古事記」中巻の応神天皇の条項に書かれています。それによると、応神天皇が近江の国(滋賀県)に行幸された時に酒宴が催され、そこでだされたカニに呼びかけるように「この蟹や  何処(いづく)の蟹  百(もも)伝う  角鹿(つぬが)の蟹  横去らふ…」と即興の歌を読まれたという。この歌の中にでてくる「角鹿(つぬが)の蟹」の角鹿とは敦賀のことをいっていることから、このカニを越前のズワイガニとみるむきもあるようですが、カニは水深200m超の海域に生息していることから、当時の操業能力を考えると、この頃のカニ漁獲を疑問視する見方もあるようです。


親ガニになるまでに10年、感謝して味わいたい

ズワイガニの仲間もそうですが、「越前がに」は卵からふ化した後、幼生は海面に浮上して約3ヶ月のプランクトン生活を始めるそうです。その期間に3回脱皮し、そして4回目の脱皮で海底生活に入ります。それから雌ガニは10回まで、雄ガニは12回までそれぞれ脱皮するのですが、いずれも、海底生活に入ってから11回目脱皮の頃には漁獲してもよい親の大きさになっているようです。また雌雄とも、ふ化してから親の大きさになるまでに10年かかるといわれ、その後何年か生きることから寿命は約20年と考えられているようです。

ところで、「越前がに」の漁獲高は昭和39年(1964)の1091tをピークに減り続け、昭和54年(1979)には210tとピーク時の5分の1に激減しましたが、その後、福井県がカニを保護するための漁礁を設けたり、漁獲の自主規制したことが功を奏し、平成5~6年(1993~1994)には400tを超え、最近では500tに回復しています。しかし、いずれ再び漁獲高が減少するのではないでしょうか。国内では北海道周辺で雌ガニの漁獲が禁止されているものの、市場には結構多くの雌ガニが出回っているようですし、一方では、雌雄とも漁獲されてもよい大きさになるまでに10年も要するのですから、せめて感謝して味わいたいものですね。何もカニだけの話ではないのですが…。


カニを買う時のポイント

カニを買う時のポイントは、小さくても重いものを選ぶ。重みがあるカニは肉が多く美味しいといわれています。また、鮮やかな赤み、艶があり、腹部分を指で押さえてみてより硬いカニを選ぶ。持った時に体液が出るものや、不快な臭いがするものは避けたほういいといわれています。さらに、カニ鍋や焼きガニに使うのでなければゆでたカニを買ったほうが美味しく食べられるといわれています。それだけカニのゆで方は難しいようです。

福井県沖で漁獲された大きな雄ガニは、「越前がに」のブランドで市場に出回りますが、これには福井県内漁港で水揚げされたことを示す標識表「黄色いタック」が付けられています。また、福井県沖で漁獲された雌がに「セイコ」は、もはや最終脱皮を終えた親ガニだけなので、肉質などの心配はないといわれています。

ところで、冷凍されたカニは一般的に輸入物とみられているようです。それは、カニが冷凍されると本来の味を失うため、国内産カニが冷凍されることはまずないと考えられているからです。ただ、生きたカニの輸入物はほぼ一年中入ってくるようですが、生きて輸入されたカニと、国内で水揚げされたカニを区別することは難しいといわれています。



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