私は断然「coming up」以降のSuede派なので、この「dog man star」というアルバムを異常に持ち上げる流れって苦手なんです。 とはいえ、バーニー在籍時ラストのアルバムということで、その存在感はおそらくずば抜けています。そして、バンドに入った大きな亀裂をそのままアルバムにぶち込んだ感が、かえって歪な美しさを醸し出していると思うんですね。 今はもう、昔ほどの苦手感はありません。彼らの音を何十年も聴いてきて、ようやく全部いいじゃんと思えるようになりました(遅い)。
We are the Pigsのような不穏極まりない音もあれば、the Wild Onesのようにバンド史上に輝く珠玉のバラードもあり。私はHeroineの美しくちょっと歪んだ音が一番好きです。Daddy's Speedingのねじれたラストも、the Powerの野心的な力も、New Generationのキャッチーなのにどこか血の匂いさえ感じる部分も、全部好き。This Hollywood Lifeの破滅的なリリックも、まるでブレバニの別れのアンセムみたいなthe 2 of Usも、陶酔感に満ちたBlack or Blueも、これぞブレの描く女たち、みたいなAsphalt Worldも、あまりにも美しい。 そしてラストのStill Life。絶望しかないのになんでこんなに美しいエンディングなのか。そして、バニがこの後プロデュース業でめっちゃ生かしているストリングスが、このアルバムからは随所に匂います。ロックのアプローチというよりもむしろクラシックなのでは?と思ってしまうほど。