青い空とそれよりももっと青い南の海につつまれたこの町の女学校は、今日も若い娘たちの歓声でわきかえっている。新人教師間崎は全校中の人気のまとだったが、生徒の中に一人かわった娘がいた。江波恵子、頭がよく美人で、勉強ができるくせにわざとしないでいる妙にひねくれたところがある。
恵子の母親ハツは不幸な女だった。若い時には生活苦のため何人もの男に近づき、いまでも場末のいかがわしい所で飲み屋をやっていた。そのハツを連れて間崎の下宿を訪れた恵子は「橋本先生は私を嫌ってるの、だからきっと間崎先生が好きなのよ」と真面目くさっていうのだった。
修学旅行の日が来た。東京最後の夜、行方不明になった恵子を、間崎はやっと見つけ出した。「先生、好き、このままどこかへ行っちゃおう……」ひたむきな顔でじっと間崎を見あげた恵子は駄々っ子のように泣きじゃくった。こんなことがいつの間にか“恵子が妊娠した”といいふらされてしまった。
間崎に対するスミ子の態度は冷たかったが、あるとき「いま、先生を必要なのは江波さんです」というのだった。“俺が本当に愛しているのはこの人だ”間崎ははっきりと自分の愛を知った。と同時に、その言葉の裏に秘められたはげしいスミ子の愛の炎も感じとっていた。
ある夜、決心した間崎はハツの飲み屋をたずねて行った。大喜びで迎えた恵子だったが、喧嘩の仲裁に入った間崎はケガをしてしまった。翌朝急を聞いてかけつけたスミ子に、ハツはわざとらしく恵子の介抱ぶりをいいふらし、たまらなくなったスミ子は早々に立ち去った。学校に向かう間崎を送ってきた恵子は「先生、橋本先生と結婚なさい」といい放って、来た道をスタスタと戻っていった。それを見送りながら間崎は恵子の将来を憂慮しつつも己が道を歩もうと決意するのだった。
· 1937 年 11 月 17 日公開 - 製作: 東京発声映画製作所 、配給: 東宝 、監督: 豊田四郎 、脚本: 八田尚之
o 出演: 市川春代 (江波恵子)、 大日向傳 (間崎先生)、 夏川静江 (橋本スミ)、 英百合子 (江波ハツ)ほか - キネマ旬報 日本映画 6 位
· 1952 年 7 月 8 日公開 - 製作:東宝、監督: 市川崑 、脚本:市川崑・ 内村直也 ・ 和田夏十
o 出演: 島崎雪子 (江波恵子)、 池部良 (間崎慎太郎)、 久慈あさみ (橋本スミ)、 杉村春子 (江波ハツ)、 小沢栄 (江口健吉)、 斎藤達雄 (長野教頭)、 伊藤雄之助 (佐々木先生)、 三好栄子 (山形チエ子)、 南美江 (輪井ウメ)、 村上冬樹 (畠山先生)、 見明凡太朗 (山川博士)、 堺左千夫 (安井先生)ほか
·
1962
年 10
月 6
日公開 -
製作: 日活
、監督・脚本:
西河克己
o 出演: 吉永小百合 (江波恵子)、 石原裕次郎 (間崎慎太郎)、 浅丘ルリ子 (橋本スミ子)、 大坂志郎 (山川医師)、 三浦充子 (江波ハツ)、 北村和夫 (江口健吉)、 小沢昭一 (北村敦)、 村瀬幸子 (山形アツ子)、 井上昭文 (畠中登)、 武智豊子 (瀬川フミ)、 殿山泰司 (瀬川善吉)、 三崎千恵子 (山川ヒロ子)ほか
· 1977 年4 月29 日公開 『 若い人 』 - 製作:東宝・ サンミュージック 、監督: 河崎義祐 、脚本: 長野洋
o
出演: 桜田淳子
(江波恵子)、 小野寺昭
(間崎慎太郎)、 三林京子
(橋本スミ子)、 左幸子
(江波ハツ)、 室田日出男
(江口健吉) (
※
東映 )
、 フランソワーズ・モレシャン
(学院長マドモワゼル・マリー)、 太 宰久雄
(佐々木先生)、 山谷初男
(秋本先生)、 一の宮あつ子
(山形先生)、 赤座美代子
(安田先生)、 岡田英次
(岡島先生)、吉永小百合(鮎沢由紀
※
特別出演)ほか
(ウィキ)
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