日々草

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2008.09.10
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秋のサンティアゴ巡礼街道(26)

朝、8時半
素晴らしい朝焼け

標高1150mのエル・アセボからポンフェラーダまで16km
この日の行程は、標高差600mをひたすら下る道

エル・アセボの朝焼け

ローマ道
(Via publicae)

ローマ帝政時代の戦車の轍(わだち)跡が
今も残る険しい急斜面の山道をひたすら下りる

ローマ帝国が作った道

この山道のでこぼこした跡は
その昔、ローマ軍が戦車で通過した跡だと
スペイン人の巡礼者から教わった

ローマ帝国が地中海沿岸から小アジア地域まで
その覇権を確立して隆盛をきわめた時代
「すべての道はローマに通じる」という
言葉通りに、
征服と支配がすすむにつれて
ローマ帝国は
全帝国に国道網を張り巡らした

ローマ道

その時々の軍事目的に奉仕するために建設されたにちがいない道
そして、やがては巡礼街道として
人々が行き交う道として繁盛した道
そして、
2千年後の今も続いている道

ローマ人の作った道
(旅の道ずれフランス人のギュイおじさんが撮影したローマ道)

こんな奥深い山に、どうやって道を建設したのか、

ローマ帝国の権力の巨大さ、
財の大きさや技術の高さ
その壮大さ
時の悠久さには
心打たれる

大きな石ころがごろごろ転がり、
沢歩き同然の道
足元を見ながら一歩一歩と下りる

ふと、見上げると
青いイガを鈴なりにつけた大きなクリの木
ヨーロッパグリ
(英名:Sweet Chestnut / 学名:Castanea sativa)

ポンフェラーダへの山道のクリの実
(クリ: ブナ科クリ属の木の総称。落葉高木、20~35m。
北半球の温暖、湿潤な地域に広く分布。12種あり、日本、朝鮮半島、中国、
西アジアからヨーロッパの地中海沿岸およびアフリカ、アメリカの東部から中部に分布。
ニホングリは渋皮が離れにくいが、ヨーロッパグリやチュウゴクグリは渋皮は離れやすい)

クリの木も
ローマ帝国の時代には
もうそこにあった。
人々の暮らしのなかで食用となり薬用に利用され
人の暮らしを豊かにしていた

クリの栽培の歴史は古く
中国では紀元前5千年の遺跡にクリの果実が発掘されており、
3千年前には陝西(せんせい)でもう栽培されていたという。

日本でもその歴史は古く
「古事記」にその記録がある。
クリの実は食用とされただけではなく、
神の木として、
村祭り、祝事、正月料理など
その地域の行事などと結びつき
人々の暮らしの中に深く根をはって、
2千年の長きを生きて
今にある。

大きな栗の木(ポンフェラーダ) クリの木は長寿。樹齢500~1500年ぐらいになるものもあるという。
樹齢何百年?、見事なクリの木の下で、ミセス・ダンホセと道ずれの巡礼者
フランス人のギュイおじさんとのツウーショット。多分、お二人の合計年齢よりも
長生きしてきたクリの大木。

ヨーロッパグリも栽培の歴史は古く数千年の歴史がある。

古代ローマの初期から、栽培されてきた
実は食用として、ジャムやプディグやケーキのなかに
あるいは、パンをつくる小麦粉の代用に、
あるいは、シリアルの代用に
あるいは、コーヒーの代用にさえなった。

家畜の餌としても使われた

葉やイガは煎じて咳止めの薬となり、
木からはタンニンをとり、
硬い材は、家や船や家具などを作った。
鉄道の枕木となった。

巡礼街道は落ちたクリでいっぱい


ガリシア地方の湿潤な気候は
クリの木の生育にぴったり、
至るとことに大きなクリの木が茂り、
巡礼街道は
落下したクリの実でいっぱい。

PICT0548.JPG

ガリシア地方は
酪農の盛んな農村地域でもあり、


ドングリの餌で飼育された豚は
セルド・デ・ベジョータ
(Cerdo de bellota)
というブランドとなっている。

スベインの代名詞のような
強い陽射しと赤茶けた大地

秋の巡礼街道も、いままでずっと
見渡す限りの枯れた赤茶けた大地の平原が続いていたが
イラゴ峠を越えた辺りから
緑の木々や草の多い景色に変化し始めた

スペインでは珍しい
温暖で湿潤な気候風土の
ガリシア地方

日本人が慣れ親しんでいる
見慣れた緑の茂る景色
大きなクリの木が
たわわに実をつける農家の庭

大きなクリの木のある農家の庭
(クリの食用部は子葉の肥大したもの。ニホングリの成分分析によれば、
100g中蛋白質2.7g 脂質0.3g 炭水化物35.5g カロチン47μg ビタミンA;26IU
ビタミンB1,B2,Cなどのほか鉄、リン、カルシュウムが少量含まれる。
甘グリなどは、糖質を含む炭水化物が53グラムに達する。
日本では、クリご飯、クリ赤飯、栗きんとん、栗羊羹、栗鹿の子、甘露煮など、
懐かしい馴染みふかい料理として、栗は欠かせない。)

サリアからポルトマリンの沿道で見かけた鈴なりに実をつけたクリの大木が茂る農家の風景

人間の歴史よりも、
もっと長い歴史を地球上に刻んできた
クリの木、
その植物の歴史のいのちの悠久さ

秋の巡礼街道は
そのいのちを受け止めて
次へとバトンタッチする実りの秋の中にある






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最終更新日  2008.09.11 21:24:06
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