りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年08月06日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ29>



カチリと歯が当たる。

嘘。
あんなに目を逸らしたり避けたりしてた感じがしたのに、
男の子ってわからない。

いや、もう男の子じゃないんだ。
男だったんだと思った。
不器用にしてくるキスを受け入れていた。
こんなことされるの何年ぶり?
頭の中は妙に冷静なのに、体だけは火照ってくるのがわかった。

アオくんの手がどんどんエスカレートしてくる。
本当は、
こんなふうにヨシカワが強引に来ていたら、
私は拒めなかったと思う。
ヨシカワに抱かれたかった。
ずっと、
ずっと…。

「ダメ…。」

アオくんが固まる。
この子には申し訳ないけど、私は決めた。
忘れさせて欲しい。
忘れたい。
ヨシカワの存在を。
この空虚感を。

一瞬だけでもいい。
もう、何もかも、
壊しちゃいたい。

「ここじゃ、やだ…。」

「う、うん…。」

アオくんが車を出発させた。
この子は本気で私を抱くつもりなんだろうか?
こんなに歳が違う私を。

「アオくん…、いいの?私で?」

「うん…。フジサワさんも、ボクでいいんですか…?」

アオくんのかすれた声が聞こえる。

「うん。」

私が頷くと、アオくんは大きな道路沿いのラブホテルに車を入れた。
本当に車の初心者らしくて、
何度も駐車場に切り替えして入れていた。
いっそ私が変わってあげたいくらい慌てていて、可哀想になった。

車から出ると、
何となくつらそうに見えて、腕をからめてしまった。
アオくんの腕がビクッとする。
こんなことするの、初めてなのかもしれない。

もしも初めてだとしたら、
私を選んだのは、年上で経験があるから、
早く経験したいからかもしれない。

誘った私なら、てっとり早いと思ったのかもしれない。
それならそれで、こっちと利害関係が一致してる。
アオくんに対する罪悪感が少し薄れた。

それでも、いくら好みのタイプの男の子と言っても、
こんなに簡単に寝ていいんだろうか?

これじゃあまるで、援交だよ。
それに、こんなこと本当にしていいのかな?
とんでもないことをしてるんだと思うと、
心臓の音が早くなった。

部屋に入ると、先にシャワーを浴びさせてもらった。
私の方が、歩いてたせいか、服もビショ濡れだった。
出ると次はアオくんがシャワーを浴びに行った。

私は一体何をしてるんだろう。
こんなことをしてていいんだろうか?
いいワケが無い。
でも、ここまで来ちゃったんだし…。

濡れたジーパンを干した。
バスローブになる。

鏡を見ると、自分がだんだん歳をとってきたと実感する。
最近化粧のノリってやつも悪い。
日焼けの跡が少し残るようになった気がする。
コレがシミってやつ?
特に、アオくんみたいな若い子見るとそう思う。
もしも自分がアオくんより年下ならこんなこと思わないかもしれない…。

何だか申し訳ないような気持ちになってきた。
アオくんなら、
これからまだまだ若くてキレイな女の子と出会えるんだろうし、
何も私となんか、しなくていいような気がした。
なんで私なんかと?
可哀想。
ベッドに寝転がる。

いいのかな…ホントに。

シャワーから出てきたアオくんが、私の隣に座って言った。

「やっぱり…、
こんなのダメですよ。やめた方がいい。」

あ、我に返ったのかな?
ちょっと怖がってる気がした。

「そうだね…。やめようか。」

私は洗面所に行って、服を着ることにした。
バカだな、私は。
何やってるんだろう。
こんな若い子相手に。
泣きそうな気持ちになる。
この子を利用しようとした自分が嫌になる。

「今すぐ出てもお金取られちゃうね。悪いことしちゃった。お金出すね。」
今日は現金持ってるし。
せめてこれ位は出そうと思った。

アオくんは力が抜けたらしく、ベッドに寝転んでいた。

「いいですよ。別に。」

「そっか。何だか私が出すと、援交みたいだもんね。」

本当に若い女の子をお金で抱こうとする男の気持ちはわからないけどね。
お金を出すことで良心の呵責を減らすってことなんだろうか。

空しい空気が流れていて、
申し訳なくて、私は無理やり笑顔を作った。

「アオくんも着替えてくれば?」

私はアオくんの隣に座って、この空気を壊したくなってテレビをつけた。
アニメ映画がやっている。
男の子と女の子が手を繋いで、何かから逃げていた。
何だろう?
ハニワかな?土偶?

あ、ヨシカワからもらったビデオに入ってたやつだ。
途中で切れてしまってた。

「これ今日やってたんだ…。観てみたかったんだよね。」

「観てから帰りますか?」

アオくんが言う。
すぐ帰るかと思ってたのに、いいんだろうか?
でも、観れるなら観たい。

「うん。」

私は夢中になって観ていた。
しばらくすると、アオくんがベッドに置いていた私の腕を引いた。

え…?
どうしたの?

アオくんが淋しそうにジッと私の方を見ている。
ジッと。
まっすぐに…

私もアオくんの隣に寝転がった。
アオくんが私を引き寄せて、強く腕の中に抱き締めてくる。

あ…

アオくんが私にキスしてきた。
頭の芯が痺れる。

こんなに強引なことする子だと思わなかった。
強い力で、アッと言う間に服がはだける。
あちこちにキスされて、
体中がおかしくなりそうだ。

もうどうなってもいい。
私も彼を求めた。


ねえ、どうして?
どうして、あの時、ごめんなんて言っちゃったの?
私、シュウさんと、もっともっといっしょにいたかったよ。
こんなふうに強引に、
私のことさらって欲しかった。
どうして私、こんなことしてるの?

私、まだ女だった。
このままおばあさんになっていくんだと思ってたのに。
この子が私のこと、まだ女だって、
気付かせてしまった…。

サトシよりもヨシカワのことばかり考えてしまうのが悲しい。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう?

目の前にいる男の子が、
ただ私だけを求めてくれている。
まっすぐに私だけを見てくれている。

アオくんの腕の中にいると、
体中の力が抜けてしまった。
サトシ以外の男と寝ることになるなんて、
心のどこかで現実感がなかった。

こんなふうに、優しく抱き締められるのは、
いつ以来なんだろう?
義務的じゃなく、ホントに温かく、
私のことを抱き締めてくれる腕。
体がすごく熱かった。

「ごめんね…。
こんな、オバサンと…」

アオくんの腕の中で、つぶやいた。
本当にごめんね。

「年齢は関係ないから。
それにオバサンなんかじゃないから。」

アオくんは、また強く私を抱き締めてキスしてくる。
こんなに強く求めてくるのは若いから?
ただ、経験したかったからじゃなかったの?

どうしよう…。
頭の芯がクラクラしてきた。
これは夢じゃないだろうか?
何か自分に都合のいい夢。

「アオくん、熱いね…。
私もう、自分は女じゃないと思ってたよ。
…ただのオバサン。」

本音がポロポロと出てくる。

「このまま、おばあちゃんになっちゃうのかな~って思ってた。」

「何かあったんですか?」

心配そうな顔をアオくんがした。
そんな顔をされると泣きそうになってしまう。
悪くて。
でも、嬉しくて。
自分をまだ欲しがってくれる人がいたなんて。

「ううん、私の気持ちの問題。」

私はアオくんを抱き締めた。
アオくんも私を抱き締めてくれて、ずっと二人で抱き合っていた。


車に乗ると、私はアオくんの存在が、本当にありがたくて、
アオくんの手の上に手を重ねた。
一つ前の駅で車を止めてもらった。

「アオくん、本当にありがとう。
すごく幸せだった…。」

今日は夢でも見てるのかもしれない。
優しい男の子に抱かれて、慰められる夢。

「ボクもです…」

アオくんが、私のことを名残り惜しそうに見ていた。
ありがとう…。
何だか出来過ぎみたいな一日だったよ。
私は笑顔で手を振る。

コレでヨシカワのこと忘れられるかもしれない。
明日から私は目が覚めて、
同じように毎日を送るんだ。

それでも、この一日があったから、
私は大丈夫。
きっと大丈夫だと思う。

大変なことをしてしまったと思うのに、
そのことになぜか罪悪感は無かった。

だって、コレは夢なのだから…。
私を現実に戻す夢…







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最終更新日  2009年08月07日 14時59分19秒
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