りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年08月10日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ33>



アオくんがいきなり遊園地に行こうと言い出した。

「こないだ友達とみんなで行ったんだけど、
楽しかったから!」

「そうなんだ?飽きない?」

「うん。だって、フジサワさん連れてきたら、
喜ぶかな~って思って。
また違って楽しめそうじゃん。」

どうして、この子はさりげなく、人が嬉しくなるようなこと言うんだろう?
本人はわかって無いだろうけど。

アオくんはジェットコースター系が苦手だった。
私は大好き。
一回だけ付き合ってくれて、
絶叫してるのが可笑しくて、私は大笑いしていた。
降りるとフラフラしてたのがカワイイ。

「この前の時は乗らなかったの?」

「うん。他の友達は乗ったけど、乗らない子と待ってた。」

「子ってことは女の子?」

アオくんは、しまった!って感じで口ごもった。
その表情がカワイくてつい、笑ってしまう。

「ダブルデートか何かじゃないの?
楽しそうだな~!」

「何?フジサワさん?
何で笑ってんの?
それともイジメてんの?」

「何でそう感じるのぉ~?
若者たちが楽しそうでいいな~って思っただけなのにぃ。」

イジメてると言えば、イジメてるような口調だな。
私はそれが楽しくてたまらない。

「別にいいけどさ~、ヤキモチとか焼かないワケ?」

あ、ちょっと拗ねた。
多分その後に続く言葉は、旦那さんがいるから…
だろうな。
口にしないとこが頭がいい。

「焼いてる!焼いてる!
そんなとこに私を連れて来るなんて、ヒド~い!」

私はそう言って、アオくんの腕に手をからめて
腕を組んだ。
そしたら、アオくんはちょっとその手の方を見て、
照れたような嬉しそうな顔をした。

観覧車に乗ると、
夜景がとてもキレイだった。
向かい合って、ぼんやりアオくんが外を見てる。
高校生の交際だって、
こんなに健全じゃないんじゃない?

つまんないから隣に座ってみた。

「何でコッチに来るんですか?」

「だって淋しいんだもん。」

「しょーがないなぁ。」

アオくんが私の肩を抱く。

「フジサワさん、淋しん坊?」

「うん。そうかもね~。」

「僕の友達もそうみたいだよ。
よく一人でいられないみたいで、飲みに行ってる。」

「そうなんだ?」

アオくんは、いっしょに遊園地に行ったらしい男友達の話を、
楽しそうに語った。
多分、よっぽど仲がいい友達なんだろう。

「いい友達がいるんだね。」

大切にしてる話を聞けたようで、
嬉しくなって言った。

「僕もそんな友達が大学でできるなんて思わなかったよ。」

アオくんが、とても嬉しそうに言った。

もうすぐ観覧車が下に着く。
う~ん、健全過ぎてつまんないな。

降りる直前に私はサッとアオくんに軽くキスしてみた。
アオくんが真っ赤になってた。
かわいい!

「やった!」

「やられた…。」

降りても何だか勝った気分で可笑しかった。
人も減ってきた。
そろそろ帰らなきゃなぁ~。

出口に向かう暗い道端で、
アオくんが、いきなり肩に手をまわしてきて、
キスしてきた。

顔を離したら、真面目な顔してたのに、いきなり笑って、
「お返し!」
と言った。

「やった!」
って言って走り出したので、
私も「やられた!」
って言って追いかける。

楽しい時間はアッと言う間で、
私は学生の頃に戻ったような気持ちになった。

コレって不倫ってやつなんだよね?
もっとズブズブしたもんかと思ってた。


アオくんは、時間があれば電話をかけてきて、
自分に何があったかを話してくれた。
私も、何でもない、
ささやかな職場の日常を話す。
ヨシカワとしていたみたいに。

ヨシカワほどの手応えは無いけど、
すごく楽しかった。

次にはドライブに行く約束をする。
私は仕事を休みにして、
アオくんは学校をサボって。

アオくんは、車庫入れが苦手。
「早く上手に運転できるようになってね~!」

「チェッ!厳しいな~。
はいはい。すぐに上手くなりますよ。
しょうが無いじゃん。
乗ってる年数が違うんだから。」

「あ、何か今、歳の差を言われた気がする~。
でも、そうよね。同じ年数乗ってたら、
アオくんのが絶対上手いよ。」

「そっかな?」

ちょっと嬉しそうな顔をする。
疲れたんじゃないかと思って、
アオくんと運転を交代する。

アオくんはご機嫌でBGMの音楽に合わせて歌う。
もうこの曲も覚えてしまった。
自分だけだったら、知らなかった曲。

アオくんと私は自分達が子供の頃の話や
初恋の話をした。
アオくんの初恋は、幼稚園の先生で、
もしかすると先生は私よりちょっと上なだけかもしれない…と。

こうしてアオくんと付き合っているのは、犯罪なんじゃないか?
二人でそんなことを話して笑う。

不思議な気持ちになった。
サトシといっしょにいても、こんな空気にならない。
ヨシカワとも違う。
相手によって、付き合い方ってこんなに変わるものなんだと思った。

私って狭い世界に生きていたのかもしれない。
誰と付き合っても、
サトシと同じようになるんだと思ってた。

ヨシカワといっしょに、
こんなふうに過ごすことは無い。
もう絶対無い。
それが無性に残念なことに思えた。
戻れるなら、戻ってしまいたくなる。
あのいつでも顔を見れてた頃に。

これって多分、
私の中でヨシカワが理想として膨らんでるんだろうな…。
そう思った。

いっそ、アオくんみたいに、
付き合うだけ付き合って、
納得して終わらせちゃえば良かった。

未練ばかりが残ってる気がした。


「あのお店に入ってみたいな~。」
ペンションみたいなレストランを指さすと、
アオくんは、オッケーと、
ちょっと慣れた感じで車を駐車場に入れることができた。

やるねぇ~!
って、褒めたら、
えっへん!って態度を取った。
ホント、この子って面白い。

食後に聞いてみた。

「ねぇ、同じ歳くらいで、好きな子はいないの?」

アオくんは、私と会ってない間に、
ナンパして、ガンバってみたって話を楽しそうにしていた。

その女の子が自分のこと好きかと思ってたら、
違ったってことを面白可笑しく話す。
私は、何となくその女の子が気になってるんだな?
って、ピンと来た。
多分、遊園地でいっしょだったのも、その女の子だ。

彼が私から全てを奪おうとしないのも、
私が彼にのめりこまないのも、
そんなところから来てるのかもしれない。


「何でそんなこと聞くの?」

「アオくん、優しいし、モテそうだから。
私とじゃもったいないと思って。
友達は、いるんでしょ?」

「うん。いるよ。いるけど…」

ホントはそっちの子と付き合いたいんだろうな…。
そんなこと思った。

この強引で、大胆なことするくせに、
なかなか行動に移さない男の子は、
こっちから何かしかけないと、
自分から何かする勇気なんか無さそう。

好きな子がいても、
あんな偶然は早々起こらないよ?

それとも、その女の子に友達以上を求めて、
嫌われちゃうのが嫌なのかな?
彼なら考えられる。
確実に上手く行くってわかってないと、
ぶつかるのが怖いのかもしれない。

誰でもそうよね。
私もそう。


「もしもね、
アオくんに合う女の子ができたら、それなら、行って。
大丈夫だから。
私大丈夫だから、言ってね。」

もしも私がネックになってるなら、
私は練習台で充分だよ、アオくん。
私は、貴方の存在でずいぶん慰められたよ。
だから、
いついなくなっても大丈夫。

アオくんは、車に戻る途中、ちょっと淋しそうな顔をして言った。

「ごめんね…。」

「何が?」

「僕が若いこと。」

「いいことだよ、若いこと。
私も戻りたいもの。
謝るのは私の方だよ。」

アオくんは、何も言わずに、私をギュッと抱き締める。

彼の行動はわかりやすくていい。
ワケがわからないのは私の方だ。

今は何も考えたくない。
だって、今は、
淋しくないもの。

現実私を抱き締めてくれるのは、
アオくんだけだもの。







続きはまた明日

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最終更新日  2009年08月10日 20時22分43秒
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