のぽねこミステリ館

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2007.05.11
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島田荘司『夜は千の鈴を鳴らす』
~光文社文庫、1992年~

 吉敷竹史シリーズの長編です。では、内容紹介と感想を。

 昭和63年(1988年)、10月11日午前、博多駅に着いた<あさかぜ1号>の二人用個室(デュエット)で、女の変死体が発見された。
 女は、不動産関係の事業で成長を遂げた鬼島総業株式会社の社長、鬼島政子。現場の客室は内側からロックされていた上に、死因は、心不全だった。
 東京の吉敷竹史は、この事件に見られる不審な点が解決されないまま、他殺の可能性を否定することに疑問を抱いた。不審な点は、以下のようなものである。
 浜松駅で、女への封筒を駅員に託した男。女は、封筒の中身を燃やしていたが、それを読んだ後に、半狂乱になったらしい。そして、半狂乱になった鬼島が叫んだ、「怖い、怖い、ナチが走ってくる」という謎の言葉。同じく現場から発見された、秘書の男・草間宏司にあてた、一億円の土地譲渡証。
 土地譲渡証から、吉敷は草間を重要な容疑者と考えるが、草間には確かなアリバイがあり、彼女を殺害する動機がないと主張する草間に対する反論もなかった。
 それでも引き下がれないと考えた吉敷は、鬼島政子の実家を訪れる。そこで、彼は驚くべき事件を知ることになる。

 冒頭で、草間さんが完全犯罪を宣言します。…実際、これはほとんど完全犯罪ですね。
 ところで、先日読んだ『本格ミステリー館』で本書がふれられていたのですが、<以下反転> 本書に叙述トリックがあると書かれていました。その部分を読んだときに、しまった、と思ったのですが、もう後の祭り…。そのことを知っていたかせいか、本書で叙述トリックが使われていそうな部分には気付きましたし(だまされましたが)、それに、どこか全体の中でとってつけたような感じもありました。純粋に、読者をだますための仕掛けですね(それが叙述トリックの存在意義だと思いますが…) <ここまで>『本格ミステリー館』の冒頭には、ネタバレしてしまっているような作品のタイトルを挙げて、読者に注意を呼びかけているのですが、『夜は千の鈴を鳴らす』は書いていませんでした。たしかに、どこまでがネタバレなのか、線引きは難しいと思うのですが…。
 とまれ、本書は、吉敷さんと草間さんの頭脳戦という性格が強く、いわゆる社会派的なメッセージ性はありませんでした。これはこれで面白いのですが、最近は、なんらかのメッセージ性や(謎解きの過程で得られる以外の)感動など、単なる犯人当てやトリック解明以外の、+αの部分で楽しんでいるような部分があるので、少し物足りないような気もしました。

 あと、『幽体離脱殺人事件』を読めば、『涙流れるままに』以前の吉敷さんシリーズの長編は(ほぼ)全て読んだことになります。『消える「水晶特急」』は、光文社文庫の新版のシリーズ一覧では吉敷シリーズに分類されていますが、公式HPでは、吉敷シリーズには数えられていないので、とりあえず保留にしておきます。上下巻の『涙流れるままに』を読む前に、買いに行って読む時間もあるかもしれませんが…。
 とまれ、近いうちに、吉敷シリーズのメモ程度の年表を作りたいと思っています。





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Last updated  2007.05.11 06:52:37
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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