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2009.01.10
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森博嗣『数奇にして模型 NUMERICAL MODELS』
~講談社ノベルス、1998年~

 S&Mシリーズ第9作です。
 それでは、内容紹介と感想を。

ーーー
1997年、11月下旬(西之園萌絵、22歳;犀川創平、35歳)

 M工業大学・河嶋研究室の大学院生・上倉が、土曜日の夜、何者かに殺害された。部屋の鍵は、上倉と、河嶋、そして上倉と研究の打ち合わせを予定していた寺林の三人しか持っていなかった。第一発見者は、忘れ物を取りに帰ってきた河嶋だった。
 同じ頃、寺林は同大学近くの公会堂で、約束の時間ぎりぎりまで残って作業していた。模型好きが集まる会があり、寺林も参加していたのだが、アクシデントで彼の人形が壊れてしまっていたのだった。人形を修復し、研究室に戻ろうとしたところで、何者かに頭部を殴られた。
 翌朝。寺林は、公会堂の部屋の中で発見される。部屋の鍵はかけられており、一本は彼自身が、もう一本は守衛室にしかなかった。そして、部屋の中にはもう一人倒れていた。彼女は、首を切断された遺体となっていた。
 公会堂のイベントに居合わせた西之園萌絵の従兄にあたる大御坊、萌絵、そして喜多は、首なし死体の第一発見者となる。犀川も、萌絵たちを案じて公会堂を訪れ、次第に事件に関心を深めていく。
ーーー

 シリーズ最終作『有限と微小のパン』と同じく、分厚い1冊です。ノベルスで500頁。読み応えもありますし、物語の興味深いです。
 このシリーズでは、割合動機はどうでもいい、という傾向がありますが、本作では、逆に動機こそが問題となっているような、そんな印象があります。密室の「いかに」のなぞも興味深いですが、今回犀川先生が頭を悩ませるのは、「なぜ」首を切断したか、という問題です。
 今回は金子さんと西之園さんの言い争いも読みどころかと思います。そして、国枝先生と犀川先生のケンカ(?)でほほえましくなる、という(笑) 意外と先生方はしょうもないことで険悪なムードになりますね…。
 なにはともあれ、楽しく読みました。

 それでは、印象に残った部分を引いておきます(文字色反転)。

世の中に、コモンセンスと呼ばれる幻覚が、どれほどあるのだろう?
 空気のように、それはどこにでもある。
 けれど、ここと同じ空気は、実は世界のどこにもない。
 それを知っている人間と、知らない人間がいて、不思議にも同じ社会に生きている。

( 488 頁)

(2009/01/04読了)





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Last updated  2009.01.10 10:03:55
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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