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2009.02.13
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びっくり箱殺人事件
横溝正史『びっくり箱殺人事件』
~角川文庫、1977年13版(1975年初版)~

 表題作と、金田一耕助シリーズの「蜃気楼島の情熱」の二編が収録されています。「蜃気楼島の情熱」は 『人面瘡(金田一耕助ファイル6)』 の記事にゆずりまして、ここでは表題作についてのみ記事を書いておきます。
 さて、「びっくり箱殺人事件」は、横溝作品の中でも異色の、ユーモア色全開のミステリとなっています。それではあらためて、内容紹介と感想を。

ーーー
 梟座でレヴュー「パンドーラの匣」を企画した熊谷久摩吉、自信はあったもののちょっと心細くなり、多芸多能でスリラーも書く深山幽谷先生のところへ相談に行く。踊り子たちが脚を上げるだけでなくて、スリラー風味を加えましょうという趣向だった。そこで幽谷先生、自分の仲間5名を、怪物団として登場させることにする。フランケンシュタインやハイド氏などなどが、舞台の1シーンで大暴れ、というのである。
 舞台は成功をおさめていたものの、7日目に事件は起こる。まず起こったのは怪物団殴られ騒動。暗がりの中で、怪物団5人と幽谷先生、何者かに殴られ、みな顔にブチができてしまう。ところが殴られたのは6人だけでなく、企画部の田代信吉、レヴュー作家の細木原竜三も、ブチができていた。
 なにはともあれ舞台の幕は開き、女優の紅花子と俳優の石丸が登場する。ところが、花子の台詞や仕草も違い、冒頭で「パンドーラの匣」を開くのは花子のはずなのに石丸が開いた。…とたん、箱の中からナイフが飛び出し、石丸は舞台の上で死亡する…。
 幽谷先生の娘にしてマネージャーの恭子や、トンチンカンな新聞記者、六助なども活躍するも、さらに事件は繰り返される。さて犯人は誰なのか…。
ーーー

 冒頭から、ユーモアあふれる文章で、わくわくしながら楽しく読みました。殴られたらブチはできるし、殴るときの音はボエン(たしか、ドラえもんでもこの擬音があったような…?)。怪物団も、顎十郎くんやシバラクくんなどなど、楽しい名前の人たちです。一人、横溝さん意識しておられたのかどうか分かりませんが、灰屋銅堂さんも登場します。この名前の人物は、「百面相芸人」( 『ペルシャ猫を抱く女』 所収)にも登場するので、嬉しい驚きでした(二人は別人ですが)。
 警察は等々力警部も登場するのですが、これは作者曰くに「捜査陣全体の人格化された人物」とのこと。金田一さんとコンビを組む等々力警部とは別人と考えた方が、ショックは少なくてすみます(笑)  とにかく楽しく笑いながら読めるのですが、それでいて謎解きの妙も楽しめます。本作も昭和23年(1948年)と、戦後の、質の高い作品をもりもり発表しておられた時期のこともあってか、ユーモアだけにとどまらないミステリとしての面白さも抜群です。
 楽しい一編でした。

※表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。

(2009/02/08読了)





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Last updated  2009.02.13 06:23:40
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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