おしゃれ手紙

2007.09.26
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テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: 父の麦わら帽子


1グラムもムダな贅肉はなかったが、ギスギスした感じはない。
麦わら帽子、白い長袖の木綿のシャツ、作業用のズボン。
どこにでもいる老農夫の姿の中に、特に目立つものは、そのあごにたくわえられた豊かな髭。
麦わら帽子からはみだした、少し長めのくせのある髪。

そんな、老農夫が、田舎の道を歩いていた。

大型の車が老農夫の前を通り過ぎ、止まった。
中から、4人の男が降りてきて、老農夫の前まで引き返して言った。

「すみませんが写真を撮らせて下さい。」

車から降りてきた人は写真家で、老農夫は父である。
父は、快く承知して、写真のモデルになった。

何日かして、父のもとに、お礼にとA4サイズの写真が10枚ほど届けられた。

これまでの人生に満足し、今を楽しんでいるような、笑顔の写真がいろんな角度から撮られていた。
さすがプロと言う私に父は、
「モデルが、ええから・・・」と笑った。

次に私が行った時は、10枚あった写真は2枚しか残ってなかった。

「みんなが、ええ、写真じゃ、欲しい、欲しい言うからあげた。」
怒る私に父は、笑いながら答えた。

残った2枚のうちの1枚は、父の葬式の時の写真になった。
葬儀屋が、こんないい写真はないと誉めた。
僧侶も、
「芸術家が撮った写真のようだ」と式の後、皆に言った。

「芸術家が撮ったんだもん」と私は心の中で言った。
「モデルがいいから・・・」と言いたげに、父は写真の中で笑っていた。

今日は2月26日に死んだ父の月命日。


思い出のひとつのようで そのままにしておく 麦わら帽子のへこみ

           俵 万智
■2002.09.26
●父の麦わら帽子は、◎日本ちょっと昔話◎に移してこちらは消していました。
でも、それが消えてしまって・・・。(ノД`)
もう一度、こちらに、アップしておきます。

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◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。
★9月26日 *父の麦わら帽子:ひょうたん揺れて・・・。
*
UP
・・・・・・・・・・・・・






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Last updated  2007.09.27 14:49:12
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