おしゃれ手紙

2011.03.26
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テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: 父の麦わら帽子
木蓮
生まれつきか、生まれてすぐか、父の右半身は不随だった。
明るく口の達者な父は身体障害者の会の会長をやっていた。

そのつながりだと思うが、30代後半の聾唖者(ろうあしゃ)のKさんもうちによく来ていた。
陽気な彼は、身振り手振りで、いろいろしゃべる。
難しいことは、土間に棒切れで字を書いての筆談。
内容は、たぶん、愉快なことだったのだろう。
声にならない声で、Kさんは笑った。

父も陽気な彼の身振り手振りを大笑いしながら答え、同じく難しい言葉は、左手で土間に棒きれで字を書いた。

父は選挙運動なども活発にやっていたので、政治の話をするなどして、Kさんは、父のいい友達だった。

ある日、突然、Kさんの死を知った。

聞けば、盲腸が手遅れになったとのこと。
「戸板に乗せて運んだそうな・・・。」
「かわいそうに・・・。
痛かったろう・・・。」
「ものさえ言えてたら助かったのになぁ・・・。」
「かわいそうに、Kさんの嫁は・・・。」

父と母は、代わる代わる、そう言いながら、涙を流してKさんの死を悔しがった。

今なら、ファックスで知らせることもできる。
Eメールで誰かに助けを求めることもできる。

しかし半世紀以上前は、知らせ手だてもなく手遅れになった聾唖者たちが、どれほどいただろう。


最近、手話を学習する人が増えた。
私も英語を習うように、手話を習ってみたいと思いながら、もう10年以上たった。
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昔 ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。
★2011年3月26日 *父の麦わら帽子:目次*
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Last updated  2011.03.28 17:44:05
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