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池井戸潤さんの銀行もの。といえば、絶対におもしろくないわけがない。安心して手に取ることができますね。もちろんこの本もまた、引き込まれるおもしろさで、一日半ほどで読了しました。この作家のすごいところは、私のような経済オンチ、金融オンチでも、ちゃんと銀行内部の話が楽しめるところだと思います。もちろん、銀行やお金の動きが、全部完璧にわかったとは言いません。けど、だいたいの流れがわかり、それがものすごく大切かどうかぐらいはちゃんとわかります。そんなの当たり前と思われるかもしれませんが、それぐらいひどい経済オンチも世の中にはいっぱいいるんですよ。これは小説ですから、その世界(業界)のことを何も知らない人でも、おもしろいと感じさせなければならない。しかも、その業界にうんと詳しい人も、うんざりさせずに楽しませなければならない。この二つのことを、過不足なく満足させることって、すごく難しいと思います。これまで読んできたたくさんの本の中には、それができずに、やたら詳しく掘り下げた説明ばかりになってしまったり、この現象は、世界中で超優秀な研究者しかわからないのだ。難しいことはどうせわからないだろうから書かないのだ。などと、初めから説明を放棄してしまっている小説もありました。(これホントです)それに比べれば、これは本当に上質な小説です。同期入行の親友が巻き込まれた事件のために、銀行の暗部を暴こうとする若い行員。解決に近づいていくにつれて、目の前のもやもやが晴れていく感覚は、ミステリーの最高の楽しみですね。(優秀だった親友はもう帰ってこないという点だけが、とても残念ですが。)
2016.09.17
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文庫本の裏表紙にあるあらすじを見て、この本を買いました。かねがね、文庫本の裏表紙に書いてあることは宣伝文句なのであって、鵜呑みにしてはいけないと、いつも思っていたのですが、パニックものの好きなわたしは、おおいにそそられたわけです。ところが、アマゾンの書評を見てみると、評価はすごく低い!なんだかボロクソに書いてあります。それこそ、そのまんま鵜呑みにしてはいけないけど、あそこまで書かれていると、なんだか読む気が失せてしまいそうでした。が、読んでよかったですよ。おもしろかったです。冒頭のガボンに住む研究者夫婦の話題から始まって、一転北海道の石油掘削基地へ。こんなに大風呂敷広げちゃって、どうやって終結させるつもりだろう。この大惨事に対する解決策が本当にあるのかと、そればかり考えながら読みました。とはいえ、不満がないわけでもありません。ガボンで家族を亡くした富樫さんが、ガボンに渡った経緯についてもっと知りたいです。また、ガボンから命からがら戻ってきてから現在までの経緯も。それから、生物学者の弓削さんの描き方がちょっと・・・若くて美しいロングヘアの女性ってところからして、いかにもって感じでしょ。この女性、大切な交渉の場面で超個人的なことを持ち出して感情的になったり、机に伏して美しい肩をふるわせて泣いたり、まったくのステレオタイプ。そもそも気鋭の学者でありながら、自分の祖母のことを他人に話すとき「おばあちゃん」って呼ぶ。肉親をお母さんだのおばあちゃんだのって呼ぶのは、今どきは普通のことかもしれないけど、わたしとしてはものすごく違和感があるんですよね。これだけで、まず知的な印象は持てませんでした。それにしても、この作家はサラリーマンで、この小説が処女作だそうですよ。たいへんな力量だと思いました。
2016.09.14
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ミステリーには、「イヤミス」という分野があって、イヤミス作家の双璧は真梨幸子と湊かなえだと、友人から聞いたのは2年くらい前のことです。読んだあと、イヤ~な気持ちになるミステリーなのだそうです。わたしはこの二人のどちらも、2,3冊しか読んだことがないし、そこそこおもしろかったけど、そんなに大ファンというわけでもありません。しかし、イヤな気持ちになるとわかっていながら読みたくなるっていう心理は分かるような気がします。怖いけどジェットコースターが大好き。嫌いだけどお化け屋敷には入ってみたい。テレビで心霊写真を見てその夜後悔するのは、毎年のことです。ジェットコースターもお化け屋敷も絶対イヤだという人も、悲しい映画を見て涙を流した後って、スッキリするんじゃありませんか。さて、今回はイヤミスの女王二人の「サファイア」と「6月31日の同窓会」を続けて読んでみました。まず、「サファイア」の方は、どろどろのイヤミスを期待して読んだら正直言って、がっかりすると思いますよ。短編集の最後の2作は連作となっているんですが、その2編がいちばんおもしろかったです。というより、その2編以外はあまりおもしろくありません。ミステリーとしても中途半端で、一つ読み終えて早く次を読みたいという短編ならではの楽しさがありませんでした。次に手に取った「6月31日の同窓会」の方は、読み始めて半ページほどで、真梨幸子の勝ち~、勝負あった~という感じでした。どろどろのストーリー以前に、文章に粘りがあって、ち密にしてなめらか。文章が絡みついてくる感じがします。真梨幸子に比べたら、湊かなえの文章はさらっとしてます。ストーリももちろん。どろどろ度、半端ありません。登場人物が多いときは、整理するために相関図を書きながら読む私ですが、時間も前後し、一人称もころころ変わり、それが誰かがずうっとわからない状態が続くので、相関図を書くことすらできません。結局相関図はあきらめ、どろどろの中に浸かりつつ最後までいっちゃいました。もう、何が何だかわからなくなりつつも引っ張られていくのが、この本の楽しみ方なんですね、きっと。表紙も、ほらこの通り、真梨幸子の方がどろどろです。【中古】【書籍・コミック 新書・ノベルス】真梨 幸子 6月31日の同窓会【中古】afbサファイア (ハルキ文庫)/湊かなえ (著)角川春樹事務所【中古】
2016.09.05
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