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今まで家族で共有していたデジカメ。このたび、ヘソクリがたまったので、自分専用を買っちゃいました!うれしくて、あれこれ撮っては遊んでいます。それで今日は、私の「読書以外の時間」をご紹介しましょう。私の生活は、読書とパン作りの2本立てです。パンを焼いているときにオーブンから漂ってくる、香ばしい香り。ピチピチという、オーブンから出したばかりのパンの音。ほんとうに、幸せな気持ちにひたることができますよ。これがうちの愛犬、もうすぐ3歳になる若パグのフーガです。こんな顔してますが、性格はとっても明るく人間が大好き。陽気で遊び好き。映画「マリーアントワネット」では、彼女の結婚前も結婚後もパグを可愛がっていました。気づかれましたか?いつもすぐにカメラ目線になっちゃうので、めったに撮れないパグの横顔。ふふふ・・・・みごとにつぶれてるでしょ。これはフーガが赤ちゃんのときですよ。こんな可愛いときもありました。ほんとうに細々とですが、英語の勉強もしています。英語は、勉強してもすぐに効果が見えるものではありません。長い間根気よく続けて、初めて少しずつ上達するもののようです。あら、それってダイエットにそっくりですねえ。どうりで私が苦手なわけです。写真には本がたくさん写っていますが、ほとんどは「ブ」で100円で買ったものです。主婦ですから、毎日料理もしています。年のせいか、この頃は和食、魚中心です。器が好きで、食器は(汁椀も)有田焼です。これはオマケ。私の大切な「読みたい本リスト」です。
2008.01.31
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ブログ友だちdaimajinさんからご紹介いただいた、おいしい本です。たとえば、豆腐よう・・・・・・陰干しした沖縄豆腐を泡盛と紅麹の汁に数ヶ月漬けて熟成させたもの。チーズと練りウニの風味。たとえば、リエット・・・・・・フランスの伝統的保存食。豚肉やガチョウの肉を刻んで煮込み、ペースト状にしたもの。たとえば、鮒ずし・・・・・・琵琶湖に住むにごろ鮒を塩漬けし、あらためて米飯に漬けなおして自然発酵させる。最も歴史の古いなれずし。どうです。おいしそうでしょう。こんな60~70種類の東西の珍味が、短くてきっぷのいい物語と共に紹介されるという、お酒好きにはたまらない本です。ほとんどが、食べたことのないものばかり。私はお酒を飲まないので、悔しいくらいですが、ごはんのおかずにして食べてみたいなあ・・・・!ただ、物語がほとんど短い会話のやりとりだけで構成されているので、登場人物の相関がちょっと分かりにくいかな。女同士の親友だったり、離婚したけど仲のいい元夫婦だったり、いろいろなワケありそうな関係が多いです。それを想像しながら読んで、うすうす分かってきたなと思ったら、すぐに終わってしまう。なにしろ、一つの物語が3ページほどの短さなので、珍味も物語も、かみしめるヒマがありません。珍味というものは、お箸の先でちょびっとつまんで口に入れ、大切に味や舌触りを楽しんだ後、そこにお酒を含んでさらに香りを楽しむもの。とすれば、この本も珍味同様、ひとつひとつ味わいながら読む本なんでしょうね。私みたいに、本も食事もパクリパクリ、モグモグ、おかわり!という無粋な人には、向かない本かもしれません。
2008.01.28
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ここを読んでくださっている、本好きの皆様方に伺います。ベストセラーといわれている本を、ベストセラーだからと言って読むことがありますか?あるいは、ベストセラーだからあえて避ける、ということがありますか?私は、どちらかというと後者の方です。そして、ベストセラーも評判がだんだん落ち着いてきて、読む価値がありそうだぞと思ったときに、読むことはあります。たとえ、流行おくれでも。また、ベストセラーだったとは知らないで、何年もたってから読むことも多いです。(先日の「センセイの鞄」がそうですね。「海辺のカフカ」もそうでした。)この本「趣味は読書。」は、1997年から2002年までのベストセラーを、全て読んだ記録です。かといって、林真理子や柴門ふみが書いているような読書ナビとは、ちょっと違います。はっきりいって、この本のほうが数倍おもしろいです。それは、単に本の内容にとどまらず、ベストセラーになった世相とか、その時期にその本を出版しようと計画した出版社の思惑とか、それをこぞって読んだ世間一般の事情とか、そんなところまで言及しているからです。それから、この本をとてもおもしろくしている最大の理由は、著者の斎藤美奈子さんがすごく冷静で的確な視点を持っているからでしょう。そしてその視点は、小気味よい意地悪で味付けされているので、ますますおもしろいのです。ここには、約40冊のベストセラーが紹介されていて、次のような項目に分けられています。1.読書の王道は現代の古老が語る「ありがたい人生訓」である 「大河の一滴」「日本語練習帳」「生き方上手」など2.究極の癒し本は「寂しいお父さん」に効く物語だった 「鉄道員」「子どもにウケル科学手品77」など3.タレントの告白本は「意外に売れない」という事実 「プラトニックセックス」「妻と私」など4.見慣れた素材、古い素材もラベルを換えればまだイケる 「買ってはいけない」「永遠の仔」「話を聞かない男地図が読めない女」など5.大人の本は「中学生むけ」につくるとちょうどいい 「金持ち父さん貧乏父さん」「海辺のカフカ」「模倣犯」など6.ものすごく売れる本はゆるい、明るい、衛生無害 「五体不満足」「ハリーポッター」など「鉄道員」は怪談。「大河の一滴」は辻説法。「永遠の仔」は下火になったアダルトチルドレンもの。「五体不満足」の著者は絵になる障害者。そして、「ハリポタ」は現実逃避文学。そんな具合に、ばっさばっさと料理してくれました。私たちが見逃したベストセラーを、私たちの代わりに読んでくれて、解説までしてくれたこの本。どうですか?ちょっと読んでみたくなりませんか?読んだことのある本もない本も、新たな発見があると思いますよ。 ところで、皆さん、昨年のベストセラー「女性の品格」を、お読みになりましたか?私はちょこっと立ち読みしただけですが、「ケッ!クーダラナイ!」って思いました。斎藤美奈子さんなら、なんて言われたでしょう。知りたいなあ・・・
2008.01.26
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昨日の「センセイの鞄」の続きです。センセイとツキコさんの恋愛は、なかなか恋愛にならなくて、やっと恋愛小説になってきたと思ったら、突然の別れが来ました。その原因とか、そのときの二人の様子とか、そんなことは一切書いてありません。ただ、ツキコさんの手元に、センセイの鞄だけ。ツキコさんはその鞄を開けてみる。あ、私はさっき突然の別れと書いたけれど、突然かどうかも本当はよくわからないのです。だいいち、恋愛小説なのに、愛してるとか何とかという言葉もでてこないし、だからどうしようというプランみたいなものもなし。ツキコさんが、ひとことだけ口に出して言ったこと。この言葉だけが、ツキコさんの深い愛の表現だったみたいです。それは「くそじじい」大人の恋愛に不可欠な家族みたいなものも、ほとんど出てきません。二人は、ちょくちょくデートをしていたようですが、普段どんなふうにつきあってたのかもわかりません。これで、恋愛小説って言えるのか?言えると思いますよ。それも、相当感動的な。だって、私は最後のところで涙ぐんでしまいました。セカチューでも泣かなかった、この私が。スタバのすみっこで、コーヒーのマグ持って。そんなセンセイとツキコさんの、なにげない一日の過ごし方が、この本「パレード」です。そっけないのか優しいのかわからないようないつもの口調で、「昔の話をしてください」とセンセイが言った。ツキコさんのてのひらをぽんぽんとたたきながら。それで、ツキコさんが小学校時代の話をするのです。ツキコさんの話は、小さな童話みたいでとてもかわいくておもしろい。「センセイの鞄」を読んでいない人も、これだけでも楽しいですよ。子どもたちにも読めますよ。そして、何より、「センセイの鞄」を知っている読者は、二人にこんな幸せな時間があったんだと、ホッとするのです。あーよかった。二人は幸せだったんだ。川上弘美さん、「先生の鞄」に、こんなすてきな番外編を書いてくれて、ありがとう。
2008.01.24
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何ていったらいいのかな。こんな小説初めて読みました。感想は ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゆる~~~~~~~~~~~~~~ん ゆら~~~~~~~~~~~~~~ん ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・恋愛小説です。初老の男性と中年にさしかかった女性。元教師と元教え子。彼らの背景はほとんど何もわからないけれど、二人で飲むお酒と肴は、とてもおいしそうです。まぐろ納豆、きんぴら蓮根、塩らっきょう、鱈と春菊が入った湯豆腐、蛸しゃぶ、きのこ鍋・・・・嘘かほんとかわからない、不思議な話。怖い話。でも、嘘でもほんとでもどっちでもいい。肝心なことは何もわからないし、知ろうともしない。でも、ほんとうに大事なことは全部書いてある。テキパキとか、サッサととか、そういうものがいいことで、効率が最優先の世の中。そうしないと仕事にならないってことはよくわかります。でも、たまにはいいではありませんか?センセイとツキコさんといっしょに、今夜は熱燗でもいかがですか?
2008.01.23
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いかに本好きの私といえど、この本は外出先に持って出ることができませんでした。あまりの厚みと重さに、びっくりです。たいした厚みもないのに、上中下巻に分かれている本も多いというのに(例えばダヴィンチ・コードの文庫とか)なんでこの本は一冊になったんだろう。著者の意図か、はたまた出版社の陰謀か・・・と文句を言いつつ読み始めましたが、外出先にもって行く必要はありませんでした。というのも、あまりのおもしろさに、一日半ほどで読んでしまったからです。主人公は、過去のすべてを忘れてしまった青年です。次第に思い出す彼の過去は、悲惨で救いのないものでした。過去を持たない新しい人間として生きていこうとする彼ですが、現実はやはり難しく悲しいことばかりです。偶然彼の相棒となった宮古出身のアキンツは、底抜けに明るくノーテンキ、だけど、無類の純情青年です。彼もまた、現実のつらさに苦しめられます。彼らに関わってくる周囲の人々も、若者ばかりで、みんな若さゆえの苦しさの中で生きている。その中で異質なのが、若者たちのカリスマみたいなイズムと、それに対抗するカマチン。この二人が、しっかりしているように見えて、本当は一番のアマちゃんで頼りないんじゃないかという気がしました。若いうちからそんなに、何もかも分かったフリをしなくてもいいんだよ。もっと苦しんで傷ついてカッコ悪いほうがいいんだよ、って言いたくなりました。他の方はどういうふうに受け取ったのかなあ。感動というのでもない、余韻に浸るというのでもない、ただ若さの持つ温度の高いエネルギーと、若者を取り巻く過酷で暗い状況と、宮古のはじけるような明るい方言とが、渦巻いているような読後感です。家族と話していても、「なんとなんと」とか「オゴエッ」とか、つい口から出てしまいそう。とてもリズミカルな方言でおもしろい。ほんものを聞いてみたいです。温度と湿度の高い小説ですが、この本の表紙がまた、内容にぴったりで感心しました。表紙も含めての作品、という気がします。
2008.01.20
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雫井脩介といえば、あの「火の粉」を書いた人。私のブログ友達どんちゃんが恋してしまったくらい、おもしろい小説を書く人。だから、私もものすごく期待して読み始めました。しか~し!!なんだこりゃ?ミステリーでもトリックでも、なんでもないよ。これ。ちょっと軽いノリのバカっぽい女子大生が主人公。私はバカっぽいと思ったけど、こういうのを現代用語では「天然」と呼ぶらしい。彼女を取り囲む、しっかり者の親友とその元恋人、バイト先で出会った若いイラストレーターと、女友達。登場人物が型にはまりすぎていて、意外性も何もありません。主人公が住んでいるアパートの前の住人が残した日記帳が、タイトルの「クローズド・ノート」なんだけど、特に謎もないし、その内容が現実の生活にクロスすることも、まったくありません。しかも、その日記帳の持ち主とイラストレーターの関係とか、初めっからバレバレで、気づいてないのは主人公だけって感じです。途中で、あまりのおもしろくなさに何度もやめようと思ったのですが、ひょっとしたらこれからおもしろくなるのかもしれない・・・と、とうとう最後まで読んでしまいました。映画化されたそうですが、主人公役の女優の言動ばかりが話題になって、それもまたバカらしいったらありゃしない。ひょっとして、ストーリーがつまらなくて映画の評判を心配した女優が、身を挺して話題づくりをしたのか?と、意地悪おばさんの私は裏を読んでます。というわけですので、私はこの本を決してお勧めいたしません。しかし、それでもこの本を読もうという勇気ある方がいらっしゃいましたら、小説のあとに付いている参考文献の、さらにあとに付いている「あとがき」を、必ず読んでくださいね。この本で、ちょっとしんみりできるとしたら、あとがき以外にはありませんから。
2008.01.16
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人間には生まれながらにして、背負わなければならないものがある。人間はその与えられたものを、自分のものとして生きていかなければならない。この小説のテーマを、そのように私は受け取って、読みました。たいていの人間はある程度の年齢になると、さまざまな問題を抱えて生きています。お金のことだったり、親や子どものことだったり・・・・何の問題もなく、幸せにのんきに生きている人など、一人もいないでしょう。そして、誰もが、その苦難を乗り越えようと必死で努力していることでしょう。しかし、努力した末、どうにもならないことと悟ったら、その苦難と共に生きていくしかありません。この小説は、不幸な事件から離婚した二人が、あるところで偶然再会したところから始まります。元夫は離婚後、いろいろな仕事に手を出しことごとく失敗し、自暴自棄になっています。元妻は愛のない再婚をして、障害のある子供を授かり育てています。この二人の往復書簡だけで、二人の離婚時の気持ちが明らかになり、現在、そして未来へ至る気持ちの変化が表されていきます。手紙を読んでいくと、二人の気持ちが最初は泥のように濁っていたのが、だんだん透き通ってきて、最後には澄み切った水になっていく過程が、よくわかります。そして、未来への展望を感じさせるようにして、手紙のやり取りが終わります。全体に、写真で言えば少しだけぼかしてあるようなソフトな感じのする小説ですが、中で一人だけ、現実的で利発で、おとなしいけれどたくましいという女性が登場します。この女性が登場したおかげで、小説全体がぴりりと引き締まり、読み手は結末の満足感を、より一層確かなものに感じることができました。この小説はすばらしい小説です。いろいろな苦労と共に生きている大人に、ぜひ読んで欲しい小説です。
2008.01.14
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瀬戸内寂聴さんの経歴は、今までいろんなところで、聞きかじったり読みかじったりしてきました。が、ご本人があまり人に知られたくないと思っているのか、具体的なことはどこでも目にすることがなかったように思います。図書館でたまたまこの本「人が好き-私の履歴書」を見つけて、読んでみました。今まではなんとなく、奔放で波乱万丈、激しい恋の転変を経てきた人、そんなイメージを持っていました。なにしろ、良妻賢母が女の唯一の生きる道という時代の人ですから、まさに女だてらに「無頼の徒」と呼ばれていたことでしょう。しかし、彼女の淡々とした筆致のせいか、そんなにたいしたことじゃない。そこにもここにもころがっているような、普通のことだという感じを持ちました。それは、私たちを取り囲む世の中が急激に変わっているからでしょうね。履歴書といえるところは、割と短くさらりと流したという感じで終り、後半は彼女の周囲の人々に関するエッセイになります。広い交友関係の中で、黒岩重吾と新田次郎のやりとりがおもしろかった。ノーベル賞作家大江健三郎には吹きだしてしまいました。やっぱり天才なんだなあと納得しました。 追記 書き忘れました。実は私は、偶然、瀬戸内寂聴さんと同じ飛行機に乗ったことがあります。搭乗前の待合室で、私の座っていたすぐ横の通路を僧衣の寂聴さんが通られたとき、私は思わず姿勢を正し、軽く会釈をしました。何か自然と、そうしたくなるような雰囲気がありました。一瞬のことだったので、寂聴さんが気づかれたかどうかは分かりませんが。その飛行機はすごく揺れたのですが、怖がりの私はそのとき、ちっとも怖いと感じませんでした。寂聴さんと一緒なら死ぬことはないって、理由のない安心感に浸っていました。なぜかそんな気がしました。
2008.01.12
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「小話集」とか「川柳集」とか、ちょっと笑えるおもしろい本と銘打った本ってよくありますね。実は私は、そういう本で「おもしろかった」「よく笑えた」と思ったことは一度もありません。たいていは、クスリともしないし、顔の筋肉もほとんどゆるまない。読み進むうちに、たまーにニヤリとする程度のことです。そういう本はたいてい「笑いでストレスを解消しよう」とかいううたい文句がくっついているものですが、そういう効果はまったくないと断言してもいいです。だけど、この本「必笑小咄のテクニック」は、看板に偽りありません。本当に「必笑」でしたよ。私は電車の中で読みましたが、ときどき声を出して笑いたくなって困ってしまいました。 この本は単におもしろい話を羅列しただけではありません。そのおもしろさを分析し、同じおもしろさの小咄を豊富に紹介し、さらに読者にオチを作らせようとします。(掲載の小咄は、昔からある有名なものや小耳にはさんだものや、自作のもの、いろいろでした)普通、この小咄がなぜおもしろいか・・・なんていう理屈を述べられるとしらけてしまうものですが、ここはさすがに米原万里さん、底抜けの明るさと洞察力で、ジョージブッシュや小泉純一郎らもまな板に乗せられ、痛烈な小咄の主役とされて、それがまた納得させられるおかしさなのです。そしてそして、なにしろシモネッタ・ドッジの異名をとる米原万里さんですから、下ネタも多く、それが下劣になる寸前にさらりとかわして爆笑させる、その異才。本当の才女とはこういう人のことをいうんだなあと感心してしまいました。ここにいくつか紹介しようとおもったのですが、どれもこれもおもしろくて、ご紹介したいものばかり。迷うな~こういうのはいかが?まず男はあわてることなく優しい手つきでスカートを下ろした。それからゆっくりとブラウスをはいだ。次にブラジャーのホックを外して引っ張ると、ブラジャーはそのまま男の足もとにはらりと落ちた。それから男は一気にパンティーを引きずりおろした。今や男の目の前には、むき出しの・・・・・洗濯ロープがあった。ところでこの本のあとがきには、米原万里さん自身が、自分の病気(悪性の卵巣腫瘍)について触れています。つまり、この本は、彼女の壮絶な闘病の日々のさなかに完成させた本ということになります。そんな時に、よりによってこのような本を・・・と絶句しましたが、米原万里さんの人間としてのスケールの大きさと、度量の深さに圧倒され、心から惜しい人をなくしたものと悲しみにうたれました。
2008.01.10
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図書館で予約したのがいつだったのか忘れたくらい、長い間待たされました。やっぱり宮部みゆきさんの人気って、すごいですねえ。読み始めてすぐに、ああこの話は「誰か」からつながってるんだって気づきました。杉村三郎という、逆玉の輿に乗った気弱なサラリーマンが主人公のお話です。何ヶ月か前、「楽園」を読むために「模倣犯」を読み直した私でしたが、今回は「誰か」を読み直すことはしませんでした。だって、あれはあまりおもしろくなかったんです。「楽園」や「模倣犯」を100点とするならば、「誰か」はギリギリ合格の60点くらいかなあという印象でした。「名もなき毒」も似たような感じで、やっぱり60点くらいでした。登場人物はそれぞれに個性的で魅力的。元部下だった原田(げんだ)という女も、ひどい女だけど個性的という点ではとても興味深く、読み手をぐいぐい引っ張ってくれました。個性ある人々の中で、犯人がいちばん描かれていなかったというのも不満の一つです。そして、何よりも、ワクワク感のなかった原因は、肝心の主役杉村三郎が魅力がないということでしょうか。妻の菜穂子は財閥のお嬢様でなかなかいい奥さんですが、自分が情熱傾けて建てた豪華な家(もちろん、一介のサラリーマンに建てられるような家ではありません。)を、事件が起きた家はもう住めないからと簡単に手放そうとします。別に殺人があったわけではないんですが。菜穂子は夫と子どもを連れて父親の屋敷に転がり込み、新しい家を建てようとする。自分の財産でするのだから勝手と言えば勝手ですが、そんなとき、三郎は何も言わないのかなあ、お金のあるなしはともかく、一家の家長として意見はないのか?!と、歯がゆく感じました。
2008.01.08
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長編好きの私も、ちょっとひいてしまうほどの厚み。表紙の絵は、いかにも心の闇を照らす風の、明るい月。そして、タイトルはドーンと「幻覚」。 目次もすごいですよ。「昏睡状態」「強迫性障害」「適応障害」「不能治療」「異常人格」「過剰投与」「人格崩壊」・・・・・これはもう、精神科医療を舞台にした人間の本質に迫る内容に違いない!そう思って読み始めました。それなのに、がっかりでしたよ。渡辺淳一さんの小説で、肩透かしだったのは初めてです。主人公の精神科医は、二つの病院を経営する謎多き30代の美女。その美しさと優秀さに言い寄る男性は山ほどいるんだけど、男嫌いなのか交際する気はなさそうです。語り手は5歳年下の気弱な看護士。この看護士が、まるで中学生の初恋のようにうぶで純粋で、マヌケなんです。これはユーモア小説か?って思ってしまったくらいです。この二人、愛し合うようにはならなかったけれど、何度か体の関係を持ちます。が、そのベッドシーンはちっともいやらしくなくて、看護士のまぬけさに笑ってしまうくらいです。途中から、この女医の抱えている秘密が簡単に想像できて、特に衝撃的な結末ということもなく、あっけなく終わりました。「過剰投与」の理由に迫ることもなかったし・・・本の厚みには圧倒されましたが、読み終わってみれば、まる一日かかりませんでした。あー物足りない。もっと深くて、ずっしりずずーんって感じのものが読みたかったなあ。
2008.01.06
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この本の感想を、どのように書けばいいのか、ずいぶん考えました。書きたいことはたくさんあるように思うんだけど、どういうふうに書いても必ずネタバレしてしまうんです。誰でも、この本を読み始めたら、直江が大学病院のエリートコースを捨てて一般病院に来たわけとか、女を片っ端から犯す理由とか、彼を愛している倫子の運命とか、そういうことを知りたくてたまらなくなると思うんですよ。でも、それは最後の最後まで知らない方が感動が大きいはず。直江が倫子に見せるほんの一瞬の優しさとか、命の助からない患者に対する直江の冷たいようでいて温かい処置、死期を悟った患者に倫子が施してあげる人間の営み・・・・そんなものをよりいっそう感動的に感じるためには、私は本の内容に触れない方がいいと思います。クールでニヒルで腕のいい外科医直江。直江から冷たくあしらわれながらも、愛し続ける看護士の倫子。お金に目がない院長夫婦や、生真面目で不器用な若い医師、堕胎するアイドルタレントなど、その設定は通俗的な印象ですが、人間が生きるということを感動を持って感じることができる名作だと思います。「愛の流刑地」よりずうっといい本です。
2008.01.04
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宮本輝は、私の好きな作家の一人です。多分、好きな作家を10人あげたら、かなり上位に入ってくると思います。が、私はその作品の中に、ちょっと相容れないものを感じることがあります。簡単に言っちゃうと、登場人物が美しすぎてついていけない・・・という感じ。普通かそれ以上の容貌を持ち、知性、理性を備え、やりがいのある仕事をして、普通以上の収入を得ている。一般的にそんなのあり得ないというくらい恵まれている人たち。そういう人が、そういう人ばっかりに囲まれて生きている。小説としてはおもしろいし、熱中して読むんだけど、読み終わった後どうしても嘘っぽいなあという感じがぬぐえないのです。宮本輝の小説が全部そうだというわけではありません。でも、今まで読んだ中にそう感じた本が、何冊かありました。そして、この本「約束の冬」もそうでした。 主人公の留美子が道で高校生からラブレターをもらう冒頭のシーンは、その後何かが起こりそうな予感がして、ちょっとした不気味さとともに、期待でいっぱいになりましたが、その10年後のストーリーが始まってからは、登場人物のほとんどが、見事ですがすがしくて賢い人ばかりです。私がこの小説を嫌いなわけではないんです。とてもおもしろかったんです。が、不満な気持ちがどこかにあるんですよね。ただ、この本の中に胸を打たれたところがひとつありました。留美子と友人の小巻が小樽の海で泳ぐところです。中学生の頃から癌にかかり、死と闘ってきた小巻に、荒れた海の底から「お前には、なんにも怖いものはないんだよっていう、やさしい言葉が聞こえたの。」「聞こえた?小巻ちゃんの耳に?」「うん。心配しなくていいよって・・・」「海が?」「うん。」「いつ?」「2度目の手術をして退院して、ずうっときつい薬を飲んでたころ(略)」死に至る確立の極めて高い難病と直面した小巻の闘い。それは余人には計り知れない思考の時間をも同時に小巻にもたらしたことであろう。そのような渦中で、小巻は確かに聞いたのだ。誰が何と言おうが、小巻の耳には聞こえたのだ。それを信じずして何を信じるというのか・・・。留美子は小巻の長生きのために一つの約束をします。それは、この世でいちばん美しい約束でした。その他にも、この本にはいろいろな約束がでてきます。そして、冒頭のラブレターの約束は、・・・・それは読んでのお楽しみです。
2008.01.02
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