読書の部屋からこんにちは!

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2009.02.15
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カテゴリ: 小説
人生にはいろいろな節目がある。
大きいのや小さいの、本人がそれと気づかないまま進行するものもある。
本人は気づかないけれど、赤の他人がそれを感じていたりする。
そんな人生の転機。
転機とまではいかなくても、ゆらめきや迷いのようなものを、ていねいにすくい上げたのが、この短編集です。

どれもおもしろいけれど、やっぱり秀逸は表題作の「人生ベストテン」です。
主人公は39歳。40歳になる直前の女性。
中学の同窓会に出るために、自己紹介の例を4バージョン作るところなんか、私にはその気持ちがよーくわかる。男の人にもわかりますか?
女は非日常の一瞬を盛り上げるために、自分を演出するんです。

○結婚なんか冗談じゃないプライド高き職業婦人
○私も早く結婚したいわと目を輝かせる未婚女
○仕事って楽しい以外特になにも考えていない無邪気な39歳
○長くつきあった恋人とあんまりうまくいっていない物憂げな女

きっと全部ほんとうで、全部ほんとうじゃないんですね。
そこらへんのありふれた女心を、さりげなく描くのが、角田光代さんはほんとうに上手です。

で、主人公はその同窓会で当時つきあっていた岸田くんと再会したと思ったんですが・・・
岸田君と2次会をすっぽかし、ホテルに行った彼女。この後、話は思いがけない方向にいってしまい、ちょっと笑える結末に至ります。
彼女はそれまでの人生ベストテンを並べ替え、この岸田君事件が堂々の一位となりました。


この短編は、主人公の現在とともに、中学生時代から40歳になる流れの中の女心の変化というものも描いています。というより、心は何も変わっていないってことを強調しています。
年月は流れても、13歳の女の子の心は40歳の女性の心の中にいつも存在している。そして、40歳のぬいぐるみを懸命に動かしている。
そんなふうに、私も感じます。
あの頃の私と今の私の、心は何も変わっていない。
あの頃のままの心が、今もここにあるんだってね。





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Last updated  2009.02.15 21:57:21
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