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【2022年4月1日改訂・追記致しました】 拙著「今宵も、BARへ--『私的』入門講座20章」へのご支援、本当に有難うございます。さて、このたび本文第19章「私の『おすすめ』BAR」を改訂いたしました。 以前からお伝えしていますように、「おすすめ」BARで名前を挙げた店は、原則として、私自身が実際に訪れた店や、個人的に人柄や接客ぶりを知っている店のなかから、あくまで「主観や好み」および、(「今宵もBARへ…」で紹介したような)私なりの「ルール」(基準)で選んでおりますが、今回は、こうした店だけではなく、親友でもあった切り絵作家の故・成田一徹氏から生前に「いい評価」をよく聞かされていたBARからも選びました。 結果として、「おすすめBAR」の数は、42都道府県の約300軒以上にもなりました。なお、過去の「おすすめBAR」リストにあったものの幾つかの理由で外した店もあります。また残念ながら、ここ数年の間に閉店した店は削除いたしました。 毎回書いていることですが、私の「大好きなBAR」「馴染みのBAR」が、他の方にとっても「いいBAR」であるとは断言できないことも、あらかじめご承知おきください。なかにはお値段が少し張るBARもありますが、私が「その対価に見合う価値のある店」と判断した場合は、掲載しています。 この「リスト」が貴方とBARとの良き出会いのための「手掛かり」になれば、これに勝る喜びはありません。連載時や本でも断りましたが、店の住所や連絡先はあえて記していません。「いいBAR」と出会うには、見つけ出すそれなりの努力も必要です。悪しからずご了解ください。【北海道】<札幌>Barやまざき、 Bar Proof、Bar Adonis、Barコオ、The Nikka Bar、ドゥ・エルミタージュ、Malt Bar Kirk Wall、<小樽>Bar HATTA【岩手】<盛岡>Bar BARON、Bar ニート、アルセーヌ・ルパン、<北上>The Slaintheva(スランジーバ)【秋田】Bar Le Verre(ル・ヴェール)、Bar Lady、The Bar 1980【山形・酒田】ケルン【宮城】<仙台>Andante、森羅万象、Bar Arcanciel、Le Bar KAWAGOE【福島・郡山】Bar WATANABE【群馬・高崎】カクテルバー・ポイント【栃木・宇都宮】バー・シャモニー、パイプのけむり本店、パイプのけむり・夢酒OGAWA【埼玉】<さいたま>Shot Bar Peace、Bar SAKAMOTO <春日部>Cooper’s <秩父>EAU DE VIE Hill's Top【千葉・船橋】Bar Cooperage【東京】 <銀座・新橋・有楽町>ルパン、 銀座サンボア、Barオーパ、JBA Bar洋酒博物館、JBA Bar SUZUKI、MORI Bar、Rock Fish、 Bar FAL、Bar Anthem、 数寄屋橋サンボア、Bar Orchard Ginza、 Bar草間ギンザ、 酒向Bar、 スタア・バー・ギンザ、Bar Four Seasons、Bar MUSASHI、酒仙堂、TOSTI、EVITA、Bar SLUGG’s、Bar R、バーBOOK、Syndycate、Bar Satin Doll、バー夕、SCAPA、アトリウム&アトリウム・エン、Bar T.O.、キャンベルタウン・ロッホ <その他のエリア>Bar Fingal、Bar Leaf、Bar 港、Bar RADIO、東京會舘・Main Bar、ガスライト、bar Salvador、Bar Sunface、Bar BenFiddich、Bar Algernon Synfonia、Bar BEE、Jus de Peche、Bar Smoke Salt、Bar Cielo、Bar dr(ディア)、Bar Somethin'、バーリィ浅草、OGURA is Bar、Barフラミンゴ、サンルカール・バー、ABE、琥珀、太陽と星のバー(現在は「あなろぐ村」と改名)、石の華、Bar Caprice、Le Zinc、カエサリオン、Speyside Way、Bar Woody、永楽倶楽部バー・コーナー、Bar Shanks、KAZZ、Bar ラ・ポポット、Bar Tenderly、Bar Heath、Mandarin Bar【神奈川】<横浜>スリー・マティーニ、 Bar Nemanja、Bar Casablanca、Sea Guarddian2、The Dufftown、Bar The Sheep、Bar Noble、Bar GLORY大倉山、Bar MATSUMOTO Bar Eau de Vie【静岡】<沼津>Bar Victory、Frank Bar <三島>Bar 奈良橋、 Bar YUMOTO【長野】メインバー・コート【富山】仏蘭西屋・洋酒肆、Barリクオル、舶来居酒屋・白馬館、Jazz&Liquor ジェリコの戦い【金沢】広坂ハイボール、エスト高橋、倫敦屋酒場、MACHRIHANISH、Bar Spoon【福井】Bar LOTUS、Bar Dufftown【岐阜】BAROSSA Cocktailier、貿易風ミグ、洋酒天国、サフラン【名古屋】<名古屋>Bar Kreis、Yoshino Bar、Bar Barns、酒肆・蘭燈(らんたん)、Bar 立礼(りゅうれい)、Bar ALBION、Bar Old Time、Barノクターン <豊田>Bar Ron Cana【三重】<津>British Pub Pige(ピゲ)、<四日市>Bar Vintage、<桑名>洋酒肆ふるかわ屋【滋賀・彦根】Salon Bar Thistle【京都】フィンランディア・バー、Bar K6、祇園サンボア、 フェロー&フェロー、Bar Rocking Chair、Bar YANAGI、The Common One Bar、K家、Bar Talisker、バードランド、Bar 玄、キャラメル・ママ【大阪】<キタ>Bar K、 Bar BESO、Bar Cluricaun(クルラホン)、北サンボア、 堂島サンボア、北新地サンボア、 Bar Arlequin(アルルカン)、スタンド・アルル、Bar TIME 天神、Bar Cadboll、Bar the Monarch、Bar Hardi、 ギルビヰ、十三トリス、ハイボール小路、Bar Savoy Osaka、Little Bar、Bar Arpeggio、Boby's Bar、Bar HIRAMATSU UMEDA、Bar AUGUSTA、MORITA BAR、天神橋サンボア、ムルソー・セカンドクラブ、オールドインペリアル・バー(帝国ホテル大阪) <ミナミ>OTIS、Just A Little Bit、EVE、 吉田バー、Bros Bar、スコッチバー・タロー、Bar Whiskey、デュエット <その他のエリア>Dramhouse the Root、バー立山、Bar 7th、Bar BABY、Rogin's Tavern、Shot Bar Keith <堺>Whisky Cat、Bar Kiln、Bar中原【兵庫】<神戸・三宮&元町>Bar Mainmalt、Bar YANAGASE、 Bar Savoy 北野坂、Sunshine Bar、Bar Sloppy Joe、Bar Savoy Hommage、Bar Moon-Lite、Bar Alco-hall、Papa Hemingway、Bar Logensitz、Bar Charlie Brown、AZABU Bar、The Avery's、Slice Bar、Bar SONORA、Bar Andante、Bar le Bateau、神戸ロバアタ商会 <その他のエリア>Bar THE TIME(西宮)、Bar Camphorwood(尼崎)、Bar TRIBECA(加古川)【奈良】Bar Cotton Club、Bar Dalwhinnie、Lamp Bar、The Sailing Bar(会員制)【和歌山】Bar Tender、Bar The BARMAN、Bar Roge【広島】<広島>Bar Slaintheva(スランジーバ)、Bar Oldies、Bar Fouque、Bar Brown、Bar Usquebaugh(ウスケボ)、<福山>ROHTA's Bar、暁(福山店)※尾道の本店は現在休止中【岡山&倉敷】Utena Bar、SAMSARA、Bar 北田、Onoda Bar(倉敷)【鳥取】Bar Style、Misty Bar【松江】Bar山小舎、Bar Loch Side、中村Bar【山口・岩国】Bar Prelude【徳島】Bar鴻(こうの)、Long Bar、Bar Glen K、JAZZ BAR SWING、Bar ARCHE(アルシェ)、KOZO's Bar【高松】Bar le Camarade(ル・カマラード)、Barダンク、Barふくろう【松山】Bar 露口、Bar JuJu、Bar 独奏【高知】Bar フランソワ、Walton Bar、Bar Pourer【福岡】<中州>Bar 七島、Bar HIGUCHI、Bar Heart Strings、Bar GITA、Bar倉吉、スタンドバーいしばし、<大名>Bar オスカー、Barセブン・シーズ、Barパルム・ドール、Bar粋七(いきしち)、MOMOTA BAR【長崎】Bar Waverly、Bar Strand【熊本】Bar States、Bar Village【大分・佐伯】カクテルバー玉井【鹿児島】Shot House ハイブリッジ、Bar宮元、池田バー【沖縄(本島/宮古島、石垣島)】バー・ラヂオ、Shot Bar Fox Hole、ハッチャーマン・クラブ、エレファントカフェ(2021年2月1日改訂)【追記(2021.2.1.)】今後も「今宵も、BARへ…」WEB版では、「おすすめ」BARを随時追加していく予定です(製本版は現在絶版です。再版予定は現時点ではございません。悪しからずご了承くださいませ)。 なお、上記に紹介したBarには、その後閉店・移転した可能性のあるBARもございます。ご訪問の際は、事前に現在の営業状態をご確認ください。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2016/02/11
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「今宵も、BARへ--『私的』入門講座20章」の刊行がスタートして3カ月余が過ぎました。販売開始以来、発行部数は約250部となりました。数多くの皆さんの支持を頂き、本当に有難うございます。印刷・製本が追いつかなく、ご注文を頂いた皆さんにはご迷惑をかけて、本当に申し訳ありません。 今回の日記では、この「今宵も、BARへ…」の内容をめぐって、これまで僕のところへ皆さんから頂いている質問に、率直にお答えしていきたいと思います。 Q1.連載を書こうと思った、本にしようと思ったきっかけや狙いは何ですか? A.本の前書きにも記しましたが、ブログや今回の本に込めた願いは、バー業界と僕の好きな個々のお店の繁栄、そしてそこに集う客のレベルアップに尽きます。レベルアップするためには、BARに出会って日が浅い人や、これからBARに通い始める人に、BARでのルールやマナーをきちんと知ってもらいたいと思ったのです。 ブログでは20回に渡り連載しましたが、結構反響が大きくて、アクセスは普段の2倍の、1日平均で約300件近くになりました。読者や馴染みのBARのマスターなどから「ぜひ本にして」という声があったため、とりあえず簡易製本版をつくった次第です。 BAR業界や特定のBARを「よいしょ」する本や、「いいこと」しか書かない本は書店にあふれています。この本はそのような本とは一線を画して、店と客の両方のために綴ったものです。世の中に、「いいBAR」がもっと増えて、BAR業界が繁栄してほしいと願ってつくった本です。だから本の中では、客である我々自身のマナーについて厳しいことを書くとともに、業界に対してもあえて厳しいことを書きました。 本の後書きでも記しましたが、「いいBAR」とは、店と客の両方の努力がなければ生まれない、育たないと僕は信じています。僕はどちらか片方の側だけに立って書いたつもりは毛頭ありません。この本を読む際、そうしたうらんかんろの真意をご理解いただければ幸いです。忌憚のないご意見・ご感想をお聞かせいただければとても嬉しいです。 Q2.周囲の反応はどうですか? A.反応は、客側(友人や同僚など)と店側で分かれますね。客側はほとんどが好意的です。「これから本格的に酒を飲み始める新入社員に読ませたい」「我々がずっと思っていたことを書いてくれた」「こういう類の本はこれまでなかったので有り難い」など、嬉しい声を聞きます。店側の反応も、概ね好評で、「店としても大変参考になる」「若い世代のお客さんに読ませたい」などという声を聞く半面、業界や特定の店を批判的に書いているところに好意的に思っていない人も当然おられますが、それはある程度は予想していたことです。 Q3.「おすすめ」BARはすべてご自身で行かれたBARなんですか? A.本にも書いていますが、まず基本的に、ブログで実名を挙げているBARや、「おすすめBAR」の頁で実名を挙げている店は、すべて僕が訪れたBAR(または親友の成田一徹氏が自信を持って推薦したBAR)です。推測だけで勝手に紹介(論評)するのは無責任で、失礼なことなので、そういうことはしません。 Q4.ブログで名前を出して紹介しているBARには、ブログに書くという「了解」は事前にとっているのでしょうか? A.僕の場合は、ブログをやっていることを明かして、その後ブログの読者になってくれたバーのマスターやレストランの店主の場合には、可能な限り、「近いうちにブログで紹介させてもらいますので、よろしくね」と一応断ります。 一般的に言って「ブログ」の世界では、お店の訪問記=感想などを書く際に、いちいちお店の了解をとっている方はほとんどいません。実際、「ブログ」というのはそういう「暗黙のルールで成り立っている世界」というのが、僕も含めた大多数の共通認識でしょう。僕も、まったく面識もなくて、旅先で初めて訪れたバーやレストラン、料理屋さんのような場合は、ブログで取り上げるかどうかも分かりませんし、いちいち事前了解をとるまではしていません。 法律の専門家に法的なルールについて聞いたところによると、「もちろん、(店側の)了解を取る必要はありません。ご存じのとおり、私たちは公権力との関係では、表現の自由を有していますし、私人の間においても、書きたいことを書くに際して了解を取らないといけないような義務などはありません。世間に出て自分の顔と名前で商売をしながら、『了解もなく書いてくれるな』というのは不合理だと思います」という答えでした。 Q5.事実でないことや名誉毀損的なことを書いてはいけませんよね? A.もちろんです。一番気をつけている点です。意見を聞いた専門家によれば、「ことさらに他人の名誉やプライバシーを侵害するものであったり、虚偽の事実によって営業を妨害するようなものであった際に、民事上または刑事上の責任を問われるのは当然だが、 感想、意見、論評の程度であれば、まず何の問題もないと考えてよい」ということでした。 「Q4のアンサー」の法律専門家の見解にもあるように、「表現の自由」が憲法で保障されていると言っても、ブログという場で世界中の不特定多数相手に発信する以上、文章には当然責任が伴います。根拠ない批判や名誉毀損的なことを書くのは論外ですし、論評する際も、実名で批判的なことを書く際も、多くの人が納得できる説得力のある内容・表現でなければなりません。相手に釈明・反論の機会を提供することも当然必要でしょう。 無責任なことを書いているブログは、よく反論・批判の嵐に遭って閉鎖に追い込まれ、、「炎上」しています。僕もブログをやっている以上は、責任を持った記述に心掛けているつもりですし、万一、批判する際も、原則として相手は匿名にしています。 Q6.BAR業界や特定のBARに厳しいこともあれこれ書いていますが、反発はありませんか? A.もちろん一部にはありました。しかしそれも、想定の範囲内と僕は思っています。チャージ問題など守旧的な店のマスターなどはきっと反発するでしょうね。それも当然予想しています。 本で触れているような特定のBAR(マスター)への批判的見解は、「(僕の)個人的な意見にすぎない」という異論・反論も聞いたことがありますが、僕は、複数の客や業界関係者からも同様の批判的見解(すなわち僕への賛同意見)を聞いていますから、やはりその店(マスター)やその経営方針には何らかの問題があるのだと思います。決して僕だけの偏向した意見ではないのだと信じています。 Q7.ブログではこれまで個々のBARの紹介の際、批判的なことも書いたのですか? A.ブログでの「個々のBARの紹介」では、基本的に批判的なことは一切記していません。そもそも、行って気に入らなかった店を取り上げることはまずありませんし…。例外的に批判的なことを書く場合は、店の名前は匿名にしました。ブログの世界では、訪れたレストランやバーなどについて店の実名を出して批判的なことを書いている人も多いのですが、僕はそこまではするつもりはありませんでした。 Q8.ブログや本で批判的なことを書く際、気を付けたことは何ですか? A.まず、確認されていない不確かな事実や「人の噂」や、他人の経験に基づいて批判するのは絶対にしないというのを基本にしました。そして、事実に基づいて書く(批判する)こと、自分が経験したことに以外を根拠に批判しないこと、の2点を大事にしました。 Q9.匿名で批判的なことを書いても、業界関係者やBARに詳しい人が読めば、誰のことか、どこの店のことか分かるのではないですか? A.それはそうですね。事実や個人的経験を書いている以上、たとえ匿名にしても、詳しい関係者らが読めばおそらく分かるでしょう。それは仕方がないことだと思っています。繰り返しますが、「ことさらに他人の名誉やプライバシーを侵害するものであったり、虚偽の事実によって営業を妨害するようなものでない限り」は、たとえ実名を出しても、我々の社会には「表現の自由」というものがあります。 ただ、僕は「今宵も、BARへ…」では原則匿名で書いていますし、虚偽の事実はまったく書いていませんので、一部の方に、どこの店の誰のことと分かったとしても、それはやむを得ないと思っています。 Q10.最初から最後まで率直に書いていますが、この本が理由で馴染みの店のマスターとの関係が悪化したことはありますか? A.ないとは言えないかもしれませんね。業界団体を批判した部分を快く思っていない方もいます。逆に、「よく書いてくれました。こういう本がほしかったのですよ。お客さんにも勧めたいです」「長年接客をやっていて、最近は惰性やマンネリに陥りがちだったので、接客とは何かを考え直す良いきっかけになりました」と喜んでくれたマスターも多いです。 繰り返し言いますが、僕がこの本で願ったのは、BAR業界と僕の好きなBARの発展・繁栄と客のレベルアップです。長年馴染みのBARのマスターとの関係が一時的には悪化しても、いずれ僕の真意が分かってもらえると信じています。 Q11.簡易製本版の目標部数は? 本格出版はいつ頃になりそうですか? A.一応、目標は大きく2500部です。出版業者の方の話では、この類の趣味的な本は爆発的に売れることはあまりなく、一般書店での販売ルートに載せる場合、「最低2000部」が採算ラインだそうです。それを超えたら、まぁ成功かなぁ…と。 本格出版にあたっては、某出版社から現在見積書も頂いていますが、現在は簡易製本版が好調なので、取りあえずそれに専念しています。2000部を越えたら、本格出版も現実的になるかなぁと考えていますが…。【追記2021年】現在では簡易製本版は絶版で、販売しておりません。WEB版でお読み頂ければ幸いです。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/07/07
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このブログで先頃連載した「『私的』BAR入門講座」が、「今宵も、BARへ--『私的』入門講座20章」と改題したうえで、簡易製本の本になりました。 神戸・元町「Bar・Heaven」(神戸市中央区栄町通2丁目10-3 アミーゴスビル4F 電話078-331-0558)での販売も予定通り、3月20日から無事スタートしました。 連載に加筆・修正し、全76頁。表紙と裏表紙のワンポイントの切り絵は、あの成田一徹氏が出版を祝って切ってくださいました。感謝感激です! 表紙製作に協力していただいたYさんにも、この場をかりて御礼の言葉を伝えたいと思います。 頒価はワンコインの500円。製作経費を計算したら、ほとんど儲けはありません(涙)。プリンターのインク代が高いぞー(インク代で儲けようする大手メーカーE社、C社にはほんまに腹が立ちます)。 Bar Heavenにはとりあえず20部ほど置いて帰りました。たまたまいたお客さんが購入第一号になってくださり、サインまで求められて恐縮です。Heavenで現物をご覧になったうえで、お気に召したらお買い上げいただければ嬉しいです。「神戸まで行くのは大変だよー」と言う方は郵送もいたしますので、「メッセージを送る」を通じてご相談くださーい。【追記2021年1月】申し訳ございませんが、現在では、製本版は販売しておりません。WEB版のみでお楽しみくださいませ。
2009/03/20
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その20:結び 「いいBAR」が生まれるには ◆店と客、双方が力を合わせてこそ 「いいBAR」が生まれ育つには、店側と客、両者の協力が欠かせない。この「入門講座」でも繰り返し書いたが、「店が客を育て、客が店を育てる」という好循環があってこそ、「いいBAR」が生まれる。ただし、そのBARが「いいBAR」になったかどうかを最終的に評価するのは、やはり、1人ひとりの客であることは間違いない。BARは、大衆(消費者=客)の支持がなければ存立し得ないのである。 誤解をおそれず言えば、例えば、カクテルの味が美味しいかどうかを決めるのは、最終的には、そのカクテルの対価を払う1人ひとりの客であって、バーテンダーやBAR業界の関係者ではない。しかし、BAR業界のカクテル・コンクールでは、「味わい」審査も含めて、身内だけの審査で順位を決めるケースがほとんどである。 「味わい」の審査ならば、一般人でもBARに通い慣れた、カクテルをよく飲みつけた人なら出来るはずだ。「(味わい審査に)一般人を参加させてはどうか」と業界幹部の方に提案したことは何度もあるが、残念ながら、いまだに実現していない(メーカー主催のコンクールでは、有名人の一般審査員が加わることもあるが…)。 業界のコンクールで上位にならなくても、素晴らしいカクテルをつくる優秀なバーテンダーはたくさんいる。だから、コンクールの審査結果というものに、うらんかんろはあまり重きを置いていない。いかなるカクテルも大衆の支持がなければ、客に愛されなければ、それは自己満足でしかないからだ。 ◆後世へ守り育てたい「素晴らしき非日常空間」 この「入門講座」では、オーセンティックBARに通う客が知っておくべきBARでのマナー、ルール、基礎知識などについて詳しく綴った。BARに通うすべての人たちが、そうしたマナーや知識をしっかり身に付けて、BARという素晴らしい非日常空間を「紳士・淑女の社交場」として末永く守ってくれることを心から願う。 同時に、BARのオーナー、オーナー・バーテンダー(マスター)、バーテンダーの皆さんには、これからも「いい客」を育て、「いいBAR」を目指す努力を続けていってほしい。本文中では、BAR業界関係者にとって、いささか耳の痛いようなこともあえて数多く記した。それは誰よりもBARを愛してやまない筆者であればこその言葉と思い、どうかご容赦願いたい。 この「入門講座」が、これからBARという世界をよく知ろうという人たちの「手引き」として役立ち、BAR業界全体ならびに各店の繁栄・発展だけではなく、バーテンダーという素晴らしき職業のさらなる地位向上につながれば、それに勝る喜びはない。 ◇ ◇ ◇【御礼&お知らせ】 全20回に渡った連載はこれで終わります。長い間ご愛読ありがとうございました。【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/17
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その19:私の「おすすめBAR」 ◆あえて「主観」で選んでみたけれど… 楽天ブログではこれまで、日本全国各地で訪れたさまざまなBARのことを綴ってきた。その内容は基本的には、地元関西のほか、旅先や出張先で訪れた「気になるBAR」の訪問記(感想)である。 訪れたBARのことを、「とても居心地が良かった」「(マスターに)親切にされて嬉しかった」などと評価したことはあっても、接客・サービスや雰囲気などをあからさまに批判したことはほとんどない(誉める時は具体的な店名を出すことはあっても、批判する際は「武士の情け」で匿名にした)。逆に、具体的に名前を挙げて、個人的な「おすすめのBAR」というテーマで日記を書くこともしなかった。 むろん、ブログで紹介した中でも幾つかのBARは、個人的に「とても大好きなBAR」であり、「馴染みのBAR」である。だが、私が好きなBAR、馴染みのBARが他の方にとってもそうであるという保証はない。私が日常訪れるBARたちも日々進化し、変化している。過去訪れたBARもその後、進化・変化しているだろう。 今回の「BAR入門講座」でも、当初は「おすすめBAR」というテーマで一項を設けるつもりはなかった。具体的な名前を挙げて、この場で「いいBARです」と紹介するのはあまり気が進まなかった。しかし、二、三の読者の方から、「最後には、『おすすめBAR』を必ず紹介してくれるんでしょうね」「あくまで主観でいいから、あえて書いてほしいな」などという言葉をいただき、やはりそうした要望に少しは応えなくてはいけないと思った。 ◆自分で探し当てる努力も必要 今回紹介する「おすすめBAR」43店は当然、筆者がこれまでに訪れたBARや今も通い続けているBARの中から選んだ。この「入門講座」で記した、いわゆる「いいBAR」の12の条件をすべて満たしている訳ではない。いくつかの条件は満たしていない。貴方にとっての「いいBAR」であるかどうかも、私には分からない。 しかし、30年余のBAR遍歴のなかで、私に「選び抜かれ、残ってきた」BARであることは間違いない。そして、お値段が少し張るBARも一部にあるが、そんなBARも含めて会計は明朗なBARばかりだと思う。また、ここに名前を挙げなかったBARにも、私が通う好きなBARはまだ数多くある。「おすすめ」に入れなかった理由は些細なことだとご理解願いたい。 「おすすめBAR」はあえて名前だけにして、詳しい住所や連絡先は記さなかった。貴方がその素晴らしさに出会いたければ、BARのマスターや友人に尋ねるなり、ネットで検索するなりして自力で探して訪ねてほしい。「いいBAR」と出会うにはそういう努力も必要だ。この「リスト」が貴方とBARとの良き出会いのための「手掛かり」になれば、とても嬉しい(☆印のBARはお値段は少し張りますが、私がその値打ちがあると思うBARです)。【北海道・札幌/小樽】Bar やまざき、 Bar Proof、Bar Adonis、Bar コオ、The Nikka Bar、ドゥ・エルミタージュ、Bar HATTA【秋田】Bar Lady、The Bar 1980【千葉・船橋】Bar Cooperage【東京】ル・パン、 銀座サンボア、 Bar 保志☆、 Bar Taliskar☆、 Bar オーパ、 Bar Slugs’、Bar Riddle、Rockfish、Bar Anthem、数寄屋橋サンボア、Maeda Bar、東京會舘・Main Bar、Helmsdale、 Bar コレオス、Nikka Blender’s Bar、 bar Salvador、Jus de Peche☆、中野ブリック、 Speyside Way【横浜】スリー・マティーニ、 らんぷ、Bar Casablanca、Sea Guardian2【静岡・沼津/三島】Bar Victory、 Bar 奈良橋【富山】仏蘭西屋・洋酒肆、Bar リクオル、舶来居酒屋・白馬館、Jazz&Liquor ジェリコの戦い【金沢】倫敦屋酒場、 MACHRIHANISH【名古屋】Yoshino Bar、Bar Barns、酒肆・蘭燈(らんたん)、Bar 立礼(りゅうれい)【滋賀・彦根】Bar Thistle、Salon Bar Thistle【京都】フィンランディア・バー、 祇園サンボア、 フェロー&フェロー、Bar Rocking Chair、K家、Bar YANAGI、The Common One Bar【大阪】Bar K、 Bar Cluricaun、 Bar Beso☆、 北新地サンボア、 Bar Arlequin、Bar TIME天神、 北サンボア、 Barキャシー、Bar Cadboll、 Bar the Monarch、Bar Sagitta、Bar Hardi、Bar Savoy Osaka、Little Bar、OTIS、 Just A Little Bit、 EVE、 吉田バー、ZAISON、十三トリス、街のあかり、Bar kiln、Whisky Cat、Bar 中原【神戸】Bar Mainmalt、 Bar Yanagase、 Bar Savoy(旧・Bar Savoy北野坂)、 Bar Savoy Hommage、Bar Moon-Lite【奈良】Bar COTTON CLUB、Bar Dalwhinnie【和歌山】Bar Tender、The BARMAN、Bar Roge【広島】Bar Slaintheva(スランジーバ)、Bar Oldies、Bar Fouque、Bar Brown、Bar Usquebaugh(ウスケボ)、Barさくま、Bar壱乃蔵、暁(福山店) ※尾道の本店は現在休止中【岡山/倉敷】Utena Bar、Bar 北田、Onoda Bar、Bar 胤(つぐ)【鳥取】Bar Style、Misty Bar【松江】Bar 山小舎(やまごや)、Bar Loch Side、中村Bar【山口・岩国】Bar Prelude【徳島】Bar 鴻(こうの)、Bar BARATEI、Long Bar、Bar Glen K、JAZZ BAR SWING、Bar ARCHE(アルシェ)、KOZO’S Bar【高松】Bar le Camarade(ル・カマラード)、Bar ダンク、Bar ふくろう 【松山】Bar 露口、Bar JuJu、Marinecco、Bar 独奏、Bar信天翁(あほうどり)【高知】Bar フランソワ、Walton Bar【福岡】Bar オスカー、 Bar Higuchi、 Bar 七島、Bar Heart Strings、Bar GITA、Bar 倉吉、スタンドバーいしばし、Bar Seven Seas、Bar Palme d’Or、Bar粋七(いきしち)、MOMOTA Bar【長崎】Bar Waverly【その20(完)へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。【追記】第19章「おすすめBAR」については、その後何度か内容を更新いたしました。最新の内容は、2016年2月11日付の改訂版でご覧頂けます(内容は2017年以降も追記・修正する形で更新しています)。ただし、この頁につきましては、最初の投稿時のオリジナルな形を残していますが、何卒ご了承ください。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/15
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その18:BARと酒をめぐる雑学(2) ◆洋酒に出会った最初の日本人は? 1549年(天文18年)8月、宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸する。ザビエルはワインを数多く持参していた(ただし、当時は保存技術も発達していなかったこともあり、長い距離を運ぶことを考えれば、おそらくは温度変化に強いポート・ワインかブランデーに近い酒精強化ワインではなかったか)。 そしてザビエルは1カ月後、薩摩藩主の島津貴久に謁見する。布教の許可を得るために、ザビエルがワインを献上したことは十分に考えられる。従って史実にもとづく可能性という点では、日本で最初に洋酒を味わったのは、おそらく藩主・島津とその重臣らだったのではないかと、うらんかんろは想像している。 ザビエルはその後、約1年間鹿児島で宣教活動した。ワインはミサで使うだけでなく、布教のための“道具”として家臣らの接待に使ったに違いない(来日翌年には、周防・長門の大名・大内義隆にワインを献上した記録も残る)。他にも織田信長や豊臣秀吉らが、謁見した宣教師や南蛮貿易の商人らと一緒にワインを楽しんだという話は有名だが、一般庶民がワインを味わえるようになるには江戸末期まで待たなければならなかった。 ◆日本の酒に出会った最初の西洋人は? 一方、外国人が最初に飲んだ日本の酒は、おそらくはザビエルが来日する6年前の1543年(天文12年)、種子島に鉄砲を持ち込んだポルトガル人が味わった焼酎か「どぶろく」だったのではないか。江戸期の長い鎖国時代は、オランダ人などごく一部の外国人が長崎・出島などで日本酒をたしなんだのだろうが、母国へ持ち帰って紹介するということはなかった。長い輸送時間中の保存技術がなかった時代だから、やむを得ないだろう。 その後、1853年(嘉永6年)と翌54年(同7年)、日本に開国を迫るため、米国からペリー艦隊が黒船を率いて浦賀沖にやって来た。ペリー提督一行をもてなすために、幕府が出した料理や酒の記録が残っているが、その酒とは「保命酒」(ほうめいしゅ)という備後・福山生まれの酒だった。「保命酒」についてはかつてブログで一度取り上げたが、熟成感のあるリキュールのような酒である。ロックで飲むとなかなか旨い。米国人が飲んだ初めての日本の酒であったが、果たしてペリーは「旨い」と言ったのかどうか。 ◆正倉院とワイングラス ワインは古代エジプトやローマの頃から飲まれていたことが分かっている。ただし、当時のワインは葡萄酒にハチミツやスパイスを壺の中で熟成させ、時には温めて飲んだというから、今のワインとはかなり趣の違った酒だったろう。我が国でも奈良の正倉院に保存されている御物のなかに、聖武天皇(701~756)愛用のワイングラス(白瑠璃碗)=写真右 ( C )宮内庁正倉院事務所=が残っている。 シルクロードを通って伝えられたササン朝ペルシャ(西暦226~651)時代のグラスで、御物の中でも「螺鈿紫檀(らでんしだん)五弦琵琶」と並ぶ超一級の文化財だ。ワインそのものはペルシャや唐の都・長安などではよく飲まれていたらしいが、残念ながら、聖武天皇自身がこのグラスでワインを飲んだかは定かでない。もし飲まれたという記録があるなら、洋酒を飲んだ最初の日本人ということになる。 正倉院御物の中にはワインの瓶のようなものもあるが、当時宮中でワインは飲まれていたのだろうか?(どなたかご存じでしたらご教示を!)。もし8世紀当時、渡来人によってワインが日本へ持ち込まれていたとしても、前項でも書いたように、長期輸送のための保存技術が発達していなかった時代。どんな味わいだったのか興味は尽きない。 ◆有名人とカクテル 有名人にまつわるカクテルはいろいろある。代表的なものを少し紹介しておくと――。 (1)マティーニ 英国の元首相ウィンストン・チャーチル(1874~1965)が愛したカクテル。彼はとてもドライなマティーニが好きで、最初は、ジン1に対して10~15分の1のドライ・ベルモットを加えるレシピ(普通はジン5に対しドライ・ベルモット1の割合)で飲んでいたが、そのうちドライ・ベルモットは加えずに、ただボトルを眺めながらマティーニを飲むようになったという逸話が伝わっている。 「007」のジェームズ・ボンドが愛したのもマティーニ。だが、ボンドのマティーニは、ジン90ml、ウオッカ30ml、キナ・リレ(ベルモットに似たワインベースのリキュール)15mlというちょっと変わったレシピ。ちなみに考案したのは原作者のイアン・フレミングという。映画では、ボンドの「Vodka Martini, shaken, not stirred(ウオッカベース、シェイクして)」という決めゼリフで有名なシェイク・スタイルのマティーニもよく登場する。 (2)フローズン・ダイキリ(マルガリータ)、モヒート ともにキューバのハバナに暮らした文豪アーネスト・ヘミングウェイがこよなく愛したカクテル。彼がフローズン・ダイキリ(またはマルガリータ)を飲むためによく通った「バー・フロリディータ」と、もっぱらモヒートを飲むために訪れた「バー・ボデギータ」では、今では観光客が、これらのカクテルを競い合うように頼むという。 (3)シンガポール・スリング シンガポールのラッフルズ・ホテル内の「Long Bar」で生まれ、このホテルに滞在した文豪サマセット・モームが愛したカクテルとして、あまりにも有名。しかし今日我々が飲んでいるレシピは、その後ロンドンのサヴォイ・ホテルのバーテンダーが改良したもので、オリジナル・レシピとは違う部分が多い。「Long Bar」では今もこのカクテルが人気No1という。 (4)ギムレット 創作上の人物だが、レイモンド・チャンドラー作の推理小説「長いお別れ」に出てくる探偵、フィリップ・マーロウが好んだカクテル。「ギムレットには早すぎる」というセリフがあまりにも有名。 (5)テキーラ・サンライズ ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが、1972年のメキシコでのツアー中に好んで飲んだことから、その後世界中に大ブレイクしたカクテル。その後、イーグルスがこのカクテルの名前を曲のタイトルにし、これがヒットしたことからさらに有名になった。 ◆日本のBARで人気のカクテルは? NBA(日本バーテンダー協会)の2007年度の会員アンケート調査によれば、各店でオーダーの多い人気のカクテル「総合ベスト10」は(1)ジン・トニック、(2)マティーニ、(3)ギムレット、(4)ソルティ・ドッグ、(5)モスコー・ミュール、(6)サイドカー、(7)ジン・リッキー、(8)ダイキリ、(9)スプモーニ、(10)マルガリータという順位になっている。最近の傾向として、ジン・ベースのきりっとしたカクテルが好まれる傾向にあるようだ。 これが女性客だけに限った調査だと、(1)スプモーニ、(2)ソルティ・ドッグ、(3)ジン・トニック、(4)チャイナ・ブルー、(5)カシス・オレンジ、(6)ファジー・ネーブル、(7)モスコー・ミュール、(8)カルア・ミルク、(9)カシス・ソーダ、(10)シー・ブリーズ、ホワイト・レディ(同点)だったそうな。ご覧のように、甘口、中甘口の飲みやすいカクテルにやはり人気は集まっていて、辛口、中辛口なのはマティーニ、ギムレット、ジン・リッキーくらい。貴方がカクテルの初心者であれば、こうした有名かつ人気のあるものの中から一つずつ制覇していくのがいいだろう。 上記以外で人気ランキングによく顔を出すカクテルは、ジン・フィズ、スクリュー・ドライバー、シンガポール・スリング、マンハッタン、XYZ、グラスホッパー、トム・コリンズ、カンパリ・ソーダ、カンパリ・オレンジ、キール、ボストン・クーラー、ブルー・ハワイ等々。しかしあまりポピュラーでないカクテルの中にも、美味しいものはたくさんある。知らないカクテルの中から、旨いカクテルを見つけた時は、砂金探しで金を見つけた時のような嬉しさがある。 ◆世界で・日本で人気のウイスキー 洋酒をまだ「舶来の酒」と言っていた1950~60年代の頃、酒には特級、一級、二級という格付けがあった(「従価税」制度=1990年に撤廃された)。その頃、日本国内の酒屋で売っていたウイスキーと言えば、ジョニー・ウォーカーの赤、黒、シーバス・リーガル、オールド・パーくらいで、値段もジョニ赤で6~7千円、黒だと1万円前後、シーバスやパーは1万5千円~2万円くらいする貴重な酒だった。 今では従価税も撤廃されて関税も下がり、並行輸入品も増えたおかげで、3分の1くらいの値段になったのは非常に嬉しい。さらに、国産でも素晴らしい味わいのモルトやブレンディドが造られるようになり、洋酒好きにとっては、今ほど幸せな時代はないかもしれない。 ちなみに、大阪のある有名酒販店での最近のウイスキー売れ行きベスト10は、モルトだと(1)山崎12年、(2)ラガヴーリン16年、(3)マッカラン12年、(4)余市12年、(5)グレンリベット、(6)タリスカー10年、(7)グレンフィディック、(8)ボウモア12年、(9)ラフロイグ10年、(10)白州12年という順位だった。ベスト10にアイラ島産のシングル・モルトが3本。ここまで人気が定着してくるとは…隔世の感がある。ちなみに世界一の販売量を誇るモルトは7位のグレンフィディックという。 一方、ブレンディドのベスト10は、(1)バランタイン、(2)シーバス・リーガル、(3)カティー・サーク、(4)響17年、(5)ジョニー・ウォーカー黒、(6)オールド・パー、(7)ニッカ・クリアブレンド、(8)デュワーズ・ホワイトラベル、(9)角、(10)ホワイト・ホースという。日本ではこのようなランキングだが、世界に目を向けてみると、J&B、フェイマス・グラウス、ベル、ブラック&ホワイト、ヘイグという銘柄も今なお根強い人気を保っている。【御礼&おことわり】「BARと酒をめぐる雑学」の項の執筆にあたっては、ここに記しきれないほどの数多くの先人の書物のほかに、様々な会社、団体、個人のホームページ(HP)を参考にさせていただきました。ここに改めて深く感謝の気持ちを伝えたいと思います。定説がないものについては断定的な記述をするのは避け、諸説あるものについてはできるだけ紹介したつもりですが、間違い・勘違い等がありましたら、遠慮なくご指摘くだされば幸いです。謹んで修正させていただきます。【その19へ続く】 ※20回で終了予定です。【おことわり】「正倉院の白瑠璃碗」の写真以外は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/13
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その17:BARと酒をめぐる雑学(1) ◆BARの起源と発展 古代文明の発展とともに酒が生まれ、酒場も自然と生まれた。街なかに居酒屋ができたのは、古代エジプト、古代ローマ・ギリシャ時代にさかのぼると言われる。居酒屋の風景は壁画にもしばしば登場し、古代ローマの居酒屋跡の遺跡も確認されている。すなわちヨーロッパでは以後、庶民と酒、街の居酒屋は切っても切れない関係として発展してきた。 英国では、どんなに小さな田舎町に行っても、「タヴァーン(Tavern)」や「イン(Inn)」と呼ばれる居酒屋(兼宿屋)が、1軒や2軒は必ずある。「Tavern」は住民たちが一日の終わりに、酒を酌み交わしながら語り合う町や村の社交場でもあった。ロンドンやグラスゴー、エジンバラというような都会では、そんな「Tavern」が発展した「パブ(Pub=Public House)」が広がった。 ヨーロッパでは、日本のような街場のオーセンティックBARはほとんどない。しかし英国では、パブが街場のBARとしての役割を果たし、ロンドンでは街なかにパブが溢れている(ピカデリーサーカスなどの繁華街では、通りに何軒ものパブが軒を連ねるほど)。 同様にフランスではバールやカフェ、ビストロ(または「ブラッスリー」)が、イタリアやスペインではバール(バル)やタベルナが街のあちこちで見られる。街の酒場で飲まれる酒は、英国ではビールが中心で、ウイスキーは意外と少数派だ。一方フランス、イタリア、スペインではワインやシェリーの人気が高い。 ◆英国最古のパブは? 今も残る英国最古のパブは、パブガイドなどでもよく紹介されているが、ロンドンにある「ジ(イェ)・オールド・チェシャー・チーズ(Ye Olds Cheshire Cheese)」。1538年創業で、現存の店は1666年のロンドン大火翌年の1667年に再建されたものだが、コナン・ドイルやチャールズ・ディケンズも通ったことでも知られる。ダビンチ・コードで有名になったテンプル教会のそばの、わかりにくい路地裏にある。興味のある方はロンドン観光のついでに訪ねてみてはいかが(住所:145 Fleet Street, London)。 なお、パブが数万軒あるという英国には自称「英国最古」というパブが他にもいくつかある。例えば、イングランド中部・ノッティンガム近郊の「ジ(イェ)・オールド・トリップ・トゥ・イエルサレム(Ye Olde Trip To Jerusalem)」というパブの創業は、なんと1189年の十字軍の時からという(途切れずに営業してきたか真偽の程は定かでないが…)。ちなみにアイルランドの首都ダブリンにも12世紀末創業というパブがある。 英国最古という訳ではないが、シェイクスピアの生まれ故郷の町、ストラットフォード・アポン・エイボンで最古のパブ「ギャリック・イン」は1594年創業。昔の面影をよく残した、素晴らしい酒場だ。晩年を故郷で暮らしたシェイクスピアもきっと遊んだに違いないパブだ。観光で行かれた際は、ぜひ訪れて地元の美味しいエール・ビールを味わってほしい。 ◆日本最初のBARはホテルで誕生 日本で最初のBARはホテルで生まれた。1860年(万延元年)、横浜の外国人居留地に木造2階建ての「横浜ホテル」。そこに、居留地に暮らす外国人のためのBARが開設されたという。BARと言っても、ビリヤード台のあるいわゆる「プールBAR」だったらしい。 そして、その10年後の1870年(明治3年)、同じ居留地内に本格的なホテル、「横浜グランドホテル」が誕生し、そこに本格的なBARがつくられた。この頃になると、海外から、ウイスキーやブランデー、ジン、ワインなどが次々と輸入されるようになり、洋酒文化の大衆化も進んでいった。 ◆日本で最初の街場のBARは? 1910年(明治43年)に銀座に誕生した「カフェ・プランタン」が街場のBARの原型と言われる。2年後の1912年(同45年)には浅草で、「電気ブラン」で有名な「神谷バー」が開業する。「神谷バー」はいわゆるオーセンティックBARではないが、現存の酒場としては一番古い歴史を持つ(現在の建物は1921年=大正10年=の建築)。 それに続くのが「サンボア」バー・グループ。1918年(大正8年)には神戸・花隈にサンボア・バーの前身、「岡西ミルクホール」が誕生している。「岡西ミルクホール」は今はなく、現存するサンボア・グループ11店の中では、京都サンボアが一番古くて、1925年(大正14年)の開業。その後、昭和に入ると、銀座「Bordeaux(ボルドー)」(1927=昭和2年)、大阪ミナミ「吉田バー」(1931=昭和6年)と続く。「Bordeaux」は山本五十六、米内光政が常連だったことで知られ、店の2階には今も、彼らが使ったテーブル席が残っている。 ◆日本最初のカクテルは? 日本最初の本格的なホテルBARは、すでに書いたように、1870年に開業した「横浜グランドホテル」のBAR。そこに、サンフランシスコからルイス・エッピンガーという米国人が支配人として招かれ、米国仕込みのカクテルを紹介していった。 その彼が、1890年(明治23年)につくったのが「バンブー(Bamboo)」という名のカクテルで、日本生まれ初の創作カクテルにもなった。マティーニのジンの代わりにドライ・シェリーを使い、アルコール度数も抑えて飲みやすくした味わいは幅広い人気を得て、世界中に広まった。そのカクテル名は、竹のように素直でまっすぐでクセがないという特徴から付けられたという。「バンブー」は世界で最も有名な日本生まれのカクテルとして、今日でもなお光り輝いている。 ◆カクテルという言葉の語源は? カクテル(Cocktail)とは、直訳すれば「おんどりの尾」(ちなみに「めんどり」は「Hen」)。しかし、なぜお酒とリキュールやジュース(果汁)を混ぜてつくる飲み物をこう呼ぶようになったのかには、諸説があって、いまだに定説はない。そのいくつかを紹介すると――。 さまざまな本で紹介されている代表的な説 → (1)その昔、メキシコの港町の酒場にイギリスの船員がやって来た。少年が木の枝を回してつくっていた飲み物を見て、船員は「それは何だ?」と尋ねた。すると少年は「コーラ・デ・ガジョ(おんどりの尾)」と答えた。「コーラ…」は木の枝の愛称で、少年は枝のことを聞かれたと思った。船員たちは以来、ミクスト・ドリンクのことを「カクテル」と言うようになったとか。 他にも → (2)アメリカ独立戦争の時代、独立派兵士のパーティーでふるまわれた酒の瓶におんどりの尻尾の羽根が差してあったから (3)18世紀初め、米陸軍とメキシコ軍との休戦協定の宴席で、メキシコ王の娘コクテル(Coctel)がつくった酒が美味しかったことから (4)ニューオーリンズで薬局を営んでいた男がラムベースの卵酒を売り出した。フランス人が多かったニューオーリンズではこれを「コクティエ」と呼んだ。それがいつしか「コクテール」と転じた (5)イギリスのある地方では、雑種の馬を純血種と区別するために尻尾の毛を切った。これを「ドッグズ・テール」と呼んだが、これが「コック・テール」と転じた。かように諸説入れ乱れているが、語源なんて定かでない方が謎めいていて面白い。 ◆日本最初の国産ウイスキー ウイスキーを日本に最初に持ち込んだのは、前述した米国のペリー艦隊だと言われている。明治維新後は、欧米からウイスキーが次々と輸入されるようになった。しかし、国産ウイスキーの誕生には、さらに約半世紀の時間を要した。 1929年(昭和4年)、(株)サントリーの前身「寿屋」が山崎工場(現・山崎蒸留所)で国産ウイスキー第一号を完成させ、「白札」の名で発売する。その後、寿屋の社員だった竹鶴政孝がスコットランド留学後に独立し、北海道・余市で1940年(同15年)「ニッカ・ウイスキー」を生み出した。 現在では、上記のサントリー、ニッカやキリン・シーグラムなどの大手ウイスキー製造業者のほか、国内各地で「地ウイスキー」を造る小規模な蒸留所が続々と誕生している。「国産第一号」の誕生から80年後の今、日本のウイスキー業界は着実に発展を遂げ、味・技術ともに、今では「世界5大ウイスキー」のひとつとして、確固たる地位を築いている。 ◆禁酒法のウソ ケビン・コスナー主演のヒット映画「アンタッチャブル」のおかげで、米国に禁酒法時代(1920~1933)があったのを知っている方は意外と多いかもしれない。米国は建国以来、清教徒(ピューリタン)の影響が強く、飲酒について批判的な人たちが少なくなかった。酒類の製造、販売、運搬等を禁止する禁酒法(合衆国憲法修正第18条)は、酒造と酒場を禁止することで男たちを家庭に回帰させ、犯罪も抑止し、健全な家族を育てるという「国家的な試み」だった。 しかし、米国民のすべてがこの法律に従った訳ではない。金持ちは法律施行までの1年の猶予期間に酒を買い占め、禁酒法施行後は「もぐり酒場」が急増した。アル・カポネに象徴されるようなマフィアのようなギャングは 粗悪な密造酒をつくったり、酒造が合法だったカナダから酒を密輸して「もぐり酒場」で荒稼ぎしたりと、かえって犯罪は増えたという。 一方、禁酒法は家庭内での飲酒までは禁止していなかったため、「もぐり酒場」へ行けない国民は密造酒を買ったり、唯一、酒を取り扱っていた薬局で「医療目的」として購入したりして、家でこっそりと飲んだという(医者の処方箋発行費用の2ドルがあれば、誰でも薬局で酒が買えた)。 禁酒法のおかげで、「ジュースを飲んでるんだ」と言って警察の取り締まりをごまかせるようにと、カクテルが発達したのもこの時代だった。さらに、酒場の廃止で失業した米国のバーテンダーの多くがヨーロッパに渡り、米国生まれのカクテルが広まり、ヨーロッパ発の新たなスタンダード・カクテルも生み出されていった。禁酒法のおかげで欧州のBAR文化が発展したのは、歴史の皮肉と言っていい。 いま振り返れば、世紀の愚法である「禁酒法」は、人間の飲酒への欲望というものは、国家権力をもってしても根絶できないということを証明したのかもしれない(それにしても、宗教で飲酒を禁止し、それを忠実に守っているイスラムの人々はある意味すごく尊敬しています)。【御礼&おことわり】「BARと酒をめぐる雑学」の項の執筆にあたっては、ここに記しきれないほどの数多くの先人の書物のほかに、様々な会社、団体、個人のホームページ(HP)を参考にさせていただきました。ここに改めて深く感謝の気持ちを伝えたいと思います。定説がないものについては断定的な記述をするのは避け、諸説あるものについてはできるだけ紹介したつもりですが、間違い・勘違い等がありましたら、コメント欄で遠慮なくご指摘くだされば幸いです。謹んで修正させていただきます。【その18へ続く】 ※20回で終了予定です。【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。【追記】銀座「Bordeaux(ボルドー)」は残念ながら、2016年末で閉店しました。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/11
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その16:「いいBAR」の条件(3) (8)商魂見え見えの店はやめる 客のグラスが空になっていたら、「ただちに『おかわりはいかがいたしましょう?』と聞きなさい」とマニュアル化しているBARもあると聞いたことがある。真偽の程は分からないが、それに近い教育を従業員にしているBARは確かにある。これは、1杯だけで長時間粘る客に対して、「飲まないんだったら、早く席を空けてくれ」というプレッシャーをかける意味合いもある。 客にたくさん酒を飲んでもらいたいという気持ちは分かる。しかし、グラスが空き次第、すぐに前にやって来て「次は何にいたしましょうか?」と聞くのは、あまりにも商魂見え見えでいただけない。飲み終わった後の余韻に浸り、次は何を飲もうかなぁと考える余裕も与えてくれないのでは、居心地が悪くてくつろげない。 貴方が何軒ものBAR遍歴を重ねていくと、お代わりを尋ねるタイミングが上手な店が分かってくる。飲み終えてほっと一息ついて、「さぁ、次は…」と心の中でつぶやいた時、さっと前にやって来る。よく躾られたバーテンダーは絶妙なタイミングを心得ている。そういうバーテンダーがいるのは、間違いなく「いいBAR」だ。 高い酒ばかり勧めたがるマスターやバーテンダーがいるBARも問題だ。私が開店の案内状をもらって初めて訪れた店でのこと。「貴方のために用意しておきましたよ」と言われ、あるシングル・モルトを勧められたが、これが法外なお値段だったという経験もある(その店の扉はその後一度も開けていない)。 客にも懐(予算)というものがある。ましてや昨今のこの景気低迷で、酒代に使える可処分所得も年々減少している。そういうことに思いやらず、儲かりゃいいでは客に見放されるだけだ。こういうBARには出来る限り行かない方がいい。ただし、口コミなどで事前の情報がない限り、訪れてみないと分からない。「苦い経験も“授業料”の内」と思うしかない。 (9)BGMへのこだわり BARに合うBGMは、個人的にはやはり静かめのジャズやソウル、ロックでなおかつ、やや静かめの洋楽がベストだと思う。個人的には、ジャズならばピアノトリオや優しいヴォーカルものが一番好きだ。ロックやポップスでも騒々しくないものなら大丈夫。邦楽(J-Popや歌謡曲)はなぜかあまりBARの雰囲気にマッチしないと感じるのは、やはりBAR文化が西洋起源のものだからか。 マスターが音にうるさく、ミュージシャンにも詳しい方ならなおいい。私の馴染みのBARでは、「これ、****さんのきっと好きな感じのアーチストですよ」と先取りして教えてくれるバーテンダーもいる。欲を言えば、週に1~3回くらいは生演奏の聴けるスペースのあるBARというのが理想だ。残念ながら、ライブハウス以外でそういう店は関西にはあまりない。そんなライブBARをいつか自分で開けたらというのが、まさに究極の夢だが、こちらの方はさらにハードルは高そうだ(笑)。 (10)マナーのいい上質の客の割合が高いこと 「いいBAR」は店(マスターやバーテンダー)だけの努力ではつくれない。意外に思われるかもしれないが、「いいBAR」は「いい客」がいてこそ成り立つ。いくら優秀な、人柄のいいバーテンダーがいても、その店に集う客の質(マナー)が悪ければ、評判も落ちる。大声で騒いだり、周囲に関せずタバコを吹いたりする客の割合が多ければ、店の雰囲気も悪くなって、やがて客離れも起きるだろう。 では「いい客」が集うBARとなるためには、どうすればいいのか。繰り返しになるが、まず客側がBARのルールを覚え、良きマナー、エチケットを身に付けなければならない。と同時に店側も、客がBARでの良きマナーを身に付けるように育てなければならない。「この客は金払いがいいから」とマナーの悪さに目をつぶってはいけない。営業優先ではダメである。そういう意味では、BARのマスターは独裁者であっていい。 昔は頑固マスターがいて、マナーの悪い客をしかり、諭し、“教育”した。だから、そういう厳しいマスターのいるBARには、マナーのいい上質の客が多かった。そして、常連の客が新しい客を“教育する”ことで店のレベルもまた上がった。そういう好循環があった。繰り返し言うが、マナーのいい上質の客が多いBARは「いいBAR」である。 (11)店は広すぎず、狭すぎず たいしたことではないと思うかもしれないが、店の広さは大切な条件だ。オーセンティックBARは広すぎず、狭すぎずというのが丁度良い。広さで言えば、10坪(33平方m)~12坪(40平方m)くらいが一番落ち着く。10人までのカウンターがあって、テーブルが2つか3つ程度。マスターと従業員(バーテンダー)が1人か2人というのが理想だ。 これくらいの広さのBARなら、カウンターに座れば、どこにいてもマスターの顔が見え、目で会話もできる。話し声も大きくならずにすむ。客の間にも、適度な緊張感と親近感が生まれる。だから、店の広さは大事である。 ただし、10坪では音楽の生演奏(ライブ)は少し厳しい。ピアノとヴォーカルのデュオ・ライブくらいは楽しめるようなスペースを考えたら、15坪(50平方m)くらいあった方がいい。落ち着いたBARの雰囲気と生の音楽空間の両立はなかなか難しい。さて、私の開くBARはどちらに比重を置こうかな…。 (12)マスターやバーテンダーの人柄 最後の条件は、一番大切な条件かもしれない。最終的に、そのBARを好きになれるかどうか、そのBARが「いい」と思えるかどうかは、私の場合、やはりお店の方の「人柄」に負うところが大きい。「人柄」とは、言い換えれば「優しさ」「思いやり」「おもてなしの心」でもある。10年、20年と通い続ける行きつけのBARは、ほぼ例外なしにマスターやバーテンダーの「人柄がいい」店ばかりである。そうでなければ、とうの昔に縁を切っていただろう。 しかし一方で、「人柄」は万人に共通する条件ではない。BARのマスターには、接客・サービス業なのに、いわゆる「ひとくせ」ある方、偏屈な方、無愛想な方もなかにはいる。僕は苦手だが、「バーテンダーとしてプロの仕事をしてくれれば、人柄なんてたいした問題じゃない」と、そういうタイプのマスターが気にならない客も、実際にいる。 人柄がいいか良くないかは、マスターと客との「相性」のような部分も大きい。僕が、あるマスターに好感を抱いても、別の客はそうは思わないケースもある。「頑固が名物」で、かえって人気のあるBAR(マスター)だっている。そういう「ひとくせマスター」のいるBARでも、常連がいて、20年、30年とそこそこ繁盛し続けている例もある。そこがBARという空間の面白い部分でもある。 貴方がBARを選ぶ条件として、お店の方の「人柄」を重視するかどうかは貴方次第だ。私はそれでもやはり、「人柄がいい」マスター、バーテンダーがいるBARの方が好きだ。もし貴方が「人柄」を重視するなら、いろんなBARに出入りするなかで、貴方と相性の合う、「いい人柄だ」と思うマスター、バーテンダーを見つけていくことが大切だ。そういう人が見つかれば、そこが貴方にとっての「いいBAR」ということになる。 ◇ ◇ ◇ 美味しいカクテルが飲めても、珍しいレアな酒があっても、いくら内装に金をかけていても、BARとは結局のところ、「経営者(マスター)の全人格」を表すものでしかない。「12の条件すべてを満たす理想のバー」にはまだ出会っていない。しかし、いつか12の条件すべてを兼ね備えたBARと出会える日が来るに違いない。そんな夢を抱いて、私は今夜もバー巡りを続けている。【その17へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/09
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その15:「いいBAR」の条件(2) (4)話術=トーク カクテルづくり等の技術は一流だが、物静かで寡黙なマスター、バーテンダーもいる(とくに首都圏に多いような気がする)。「おしゃべりなバーテンダーは格好悪い」「むやみに客に話しかけるべきではない」という業界関係者もいる。しかしうらんかんろは、トークの上手い、話していて楽しいマスターの方が断然好きで、評価する。 関西、とくに大阪では一般的に言って、物静かなマスターは好まれない。客もマスターにトーク(会話)を求める。自然と、マスターと客との「距離」が近いBARが多くなる(マスターに“いじられたい”客が多いのか?)。 漫才師の才能までは必要ないが、トークはやはりBARという接客業に携わる人にとっては必要不可欠だ。トークはとくに大阪のマスターやバーテンダーには必須科目だ。多少のボケやツッコミができないとやっていけない(厳しいねー)。 大阪では、トークが上手いマスターのいるBARはいつも賑わっている(例えば、北新地のBar・Kや天満橋のBar・Cadbollなど)。東京でも、銀座のBar保志のマスター、保志さんのようにトークのうまい方の店はいつも客で溢れている。トークの上手いお店にいると居心地が良くて、とても楽しい。だから、やはり「いいBAR」の条件としては欠かせない。 (5)内装などの店の雰囲気 店の雰囲気は、個人的には英国調=パブ調のウッディで、トラディショナルな内装の店が、うらんかんろの理想だ。「なぜ英国調が一番なのか」は感性の問題もあるが、やはり、BARは洋酒を飲む場所であることや、BAR=パブが持つ歴史の重みが大きい。洋酒を飲む場所の内装はやはり、英国調が一番合うと思う。 ライティングは温かい暖色系で、やや暗い店がベスト。しかし、振り返ってみると同じやや暗いライティングでも、モノトーンを基調にした店にも長年通い続けていることに気づいた。だから、そういう雰囲気の店も嫌いではない(マスターの人柄が良ければ、多少の雰囲気の違いは無視できることもあるということ)。 椅子はハイ・スツール(小さな背の付いた高い椅子)で、カウンターの端(客側手前)と足元に金属(真鍮)製のバーがあるBARがいい。高い椅子に座って、姿勢を正してながらゆったりと飲める。低い椅子のBARには馴染めない。ホテルのラウンジBARにあるような、座ると沈み込むようなソファ椅子は、街場のオーセンティクBARにはまったく合わないとまで思っている。この項に関しては極めて独断に満ちた、個人的な好みだけで書いているが、「いいBAR」の内装には、英国調でハイ・スツール、カウンターと足元に真鍮のバーがある――の3つが必須条件だ。 (6)酒やサービスに見合った料金 金には糸目をつけずいくらでも飲める一部のセレブならいざ知らず、普通のサラリーマンにとっては、これは大切な条件だ。大阪・北新地をみても、酒とサービスに見合った、良心的な料金のBARはいつも繁盛しているのは、当然かもしれない。 もっとも、何をもって「良心的」と言うのか、その客観的基準も難しい。ウイスキーなら一般的な小売り価格が分かるので、それが一つの目安となる(市価の4倍、5倍もの料金を取る店を「良心的」と言うのは難しいだろう)。カクテルをつくるのにどの程度手をかけているかも、一つの「目安」だろう。材料の仕入れ値も千差万別で、カクテルをつくる技術料的な部分は店側が決めるべきなので、基準があってないようなものだ(その4~5「注文の仕方」をご参照)。 例えば、ジン・トニックというシンプルなカクテル一つとってみても、1杯の材料費(ジン、氷、ライムまたはレモン、トニック・ウォーター)はせいぜい200~300円だろう。それを500円で売るパブもあれば、1500円で売るBARもある。材料費以外は、バーテンダーの技術料であり、BARが受け取る利益である。 500円のジン・トニックは(例外もあるが)所詮、500円程度の味わいしかないことが多いが、うらんかんろは、1500円を払ってでも飲みたい素晴らしいジン・トニックをつくる優秀なバーテンダーを知っている。しかし、「それが2000円でも飲みますか」と言われたら、NOだ。あるカクテルの価格には「それ相応」の基準も限度もある。 酒やサービスに見合った料金とは何かは、かように表現が難しい。要は、貴方がその料金に見合う「値打ち」があると思えば、そこは「いいBAR」だと思っていい。もちろん、それを的確な判断ができるためには年季=経験も要るので、その域に達するにはそれなりの時間と“授業料”も必要だが…。 言わずもがなだが、「安かろう、悪かろう」は困る。くれぐれも「安いこと=良心的、サービスがいい」ではないことだけは肝に銘じたい。非日常空間で美味しい酒を味わうためにBARに行くのだから、「旨いモルトや極上のカクテルには、それなりの対価が必要」ということも貴方は知らなければならない。 (7)フードに求められるもの BARには本格的なフードは要らない。お酒を楽しむ場所だから、基本は「かわきもの」程度でいいと思う。空腹はBARに行く前に満たしておくべきだろう。しかし、ささやかでもいいが、小腹がすいたとき満たしてくれる、簡単で美味しく、温かい料理があればとても嬉しい。贅沢は言わないが、カツサンドや簡単なパスタ、ピンチョス(バゲットの上にいろんなフードを乗せて一口で食べる品)のようなメニューがあるような店はとても有り難い。 さらに、付き出しひとつとっても毎回とても工夫が凝らしてあったり、「かわきもの」ひとつとっても、メニューにセンスが感じられるようなBARがいい。いつ行っても同じ付き出しという芸のない店もあれば、ナッツひとつとっても、いろんな国や地域のさまざまなナッツを取り寄せたりという研究熱心な店もある。後者の方が「いいBAR」であることは言うまでもない。【その16へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/07
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その14:「いいBAR」の条件(1) さて、長々と書いてきた「BAR入門講座」も終盤に差しかかってきた。この辺りで私の考える「いいBAR」の条件というのをもう一度整理しておくと、以下の12の条件に行き着く(紹介する順序にとくに意図はなく、重要度という意味でもない。どれを重要と考えるかは人それぞれで違ってくる→※以前の日記=08年12月29日の日記「Barカドボール」=でもこのテーマに少し触れたので、少し重複する部分もあるが、お許し願いたい)。 (1)カクテル等の酒づくりの技術に優れている (2)接客・サービスのレベルが高い (3)酒の品揃えが充実し、マスターら店の方の知識も豊富 (4)マスターら店の方のトーク(話術)が長けている (5)内装や椅子、照明など店の雰囲気がいい (6)酒やサービスに見合った明朗な料金である (7)美味しいフードがそこそこある (8)商魂見え見えの経営方針ではない (9)心地よいBGMが流れている(時にはライブもある) (10)そのBARに集う客の質がいい (11)広すぎず・狭すぎず・清潔感もある (12)マスターら店の方の人柄がいい (1)カクテル等の酒づくりの技術 一般的に言って、「オーセンティックBAR」を名乗る店なら、美味しいカクテルやウイスキーは飲めるに違いない。ベテラン・バーテンダーやコンクールで優秀な成績をおさめたバーテンダーのいるオーセンティックBARなら、なおさら期待を裏切らないカクテルをつくってくれるだろう。 しかし、老舗BARと言っても、普段はビールとウイスキー(水割りかハイボール)しか出していない店の場合、カクテルを頼むと、がっかりということも珍しくない。いくら長年BAR経営に携わってきたとしても、普段シェイカーなど振っていなければ期待するのが無理であろう。 どのマスターにもバーテンダーにも得意の分野(カクテル)がある。ハイボールをつくれば絶品という方もいれば、マティーニは誰にも負けないほど素晴らしい方もいる。フルーツ・カクテルの名手がいれば、ボストン・シェイカー(片方がガラス製になったシェイカー)という扱いが少し難しいシェイカーの名人もいる。創作カクテルも日々新しいものが生まれている。だからカクテルを得意とするBARでも、その店のバーテンダーがすべてのカクテルに長(た)けている訳ではない。 もちろん、熱心なバーテンダーは、たとえコンクールで1位をとっても、さらに上を目指して生涯研鑽を積んでいる。そういう姿勢が見られるマスターやバーテンダーがいる店なら、まず間違いなく「いいBAR」だ(30~40代のオーナー・バーテンダーがいるBARにはそういう店が多い)。ただし、そのカクテルが美味しいかどうかを決めるのは、最終的には客である貴方自身。そのためにも舌も含めた五感を普段から十分養っておくことも大切だ。 (2)接客・サービスのレベル 接客・サービスなんて、飲食・サービス業であれば当然のこと。それに物足りないBARがあるから、こういう条件を挙げなければならない。基本的なことだが、言葉遣いも含めて、接客がぞんざいな店には二度と行きたいとは思わない。客のいる目の前で断りなくタバコに火を付けたり、大声で喋るグループ客や店内で携帯を平気で使う客にすぐ注意をしないマスターは論外だが、それだけではない。 私は、かつてBAR業界のコンクールで優秀な成績をおさめたバーテンダーが店長をつとめるBARに友人と一緒に訪ねた。店はほぼ満員の繁盛ぶりだった。そして僕らはマティーニを頼んだ。すると、驚いたことにそのバーテンダーは、ミキシング・グラスで材料をステアしてできたマティーニを、常温のグラスに注いだのだ。普通のオーセンティックBARでは、冷蔵庫で直前まで冷やしたグラスに注ぐか、グラスに氷を数個入れて回してグラスを冷やしてからマティーニを注ぐ。 しかし、彼はただ漫然と常温のグラスに注いだ。マティーニはみるみるうちにぬるくなり、美味しさを失ったことは言うまでもない。いくら忙しいとは言え、これは手抜き以外の何ものでもない。このバーテンダーはカクテルづくりの技術は立派でも、「本当のサービスとは何か」を知らなかったのである。 最高の接客・サービスとは、どういうものを言うのか。ただ丁寧な言葉遣いで客に話しかけることではない。会計を割り引いてくれるのがサービスでもない。客にコートを着せてくれたり、トイレから帰ってくるたびに新しいおしぼりが出すなんてどうでもいい。「当たり前のことを普通にやってくれる」のが僕は一番嬉しい(上記のマティーニづくりも然り)。そして抽象的な表現で申し訳ないけれど、「かゆいところに手の届く」「目と目でお互いの心が伝わる」ような接客・サービスが一番いい。 例えば、モルト・ウイスキーをストレートやロックで飲んでいる時、チェイサーの水がなくなったら、すぐに足してくれる。客の顔色を見て、話したがっていそうだったら、良き話し相手になってくれる(逆に放っておいてほしそうだったら、そっと独りにしておいてくれる)。お代わりを頼みたがっている客がいないかどうか、常に店全体に目配りしている。そして、他の客がいない時にはとっておきの話(情報)を聞かせてくれる。そういう接客・サービスがバーテンダー全員にきちんと躾られている店こそが、うらんかんろは最高の接客・サービスができる店だと信じている。 (3)酒類の品揃えや知識 酒の知識に関して言えば、普通、「オーセンティックBAR」と名乗るプロのマスターなら、一般的な知識は素人よりも豊富だろうから、まず心配ない。最低限の知識さえ持っていてくれればそれでいいと、うらんかんろは思っている。プロであれば、この「入門講座」の「その5:お酒の基礎知識」で書いた内容の何倍もの知識を持っている。 最近では、プロも顔負けの素人客がいる。僕も驚くような凄い「モルト・マニア」もいる。だから、プロがごく一部しか知らない、マニアックな知識を知らなかったとしても、まったく恥ずべきことではない。たとえ、私の知っているカクテルの名前やレシピを、その店のバーテンダーが知らなかったとしても、不思議ではない。以前、広島県の福山でお土産に買ってきた「保命酒」=08年4月28日の日記参照=(ペリーが飲んだ最初の日本の酒)なんて、ほとんどのマスター、バーテンダーは知らなかったが、そんな小さなことでプロを軽蔑しては絶対にいけない。 要は、そのBARやマスター、バーテンダーに、どこまで「理想」を求めるのか、だ。モルト・ウイスキーの場合、欲を言えばキリがない。強いて個人的に基準を挙げれば、シングルモルトのオフィシャル・ボトル(蒸留所販売の正規ルート品)なら少なくとも40銘柄くらいは、ボトラーズ(独立系販売業者)のボトルなら、20銘柄くらいは置いてほしい。ボトラーズのボトルの種類の多さを売りにしているBARもあるが、うらんかんろは、数(種類)よりも、どういう銘柄を置いているかや、客が飲みやすい値段設定のボトルを選んでいるか等、店主のセンスの方が大切だと思う。 四大ホワイト・スピリッツ(ジン、ウオッカ、ラム、テキーラ)やブランデーはカクテルのベースにぜひものだ。ワインは赤、白、シェリーは各数種類ずつは欲しい。他にも欲を言えば、スパークリング・ワインや日本酒、焼酎も少しは置いてほしい。カクテルも一応、スタンダードと言われるカクテルの7~8割はつくれる材料(リキュール等)は揃えておいてほしい。かつて日記=07年2月25日の日記=で書いたような、基本的なリキュールすら置いていないBARではちょっと困る。【その15へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/05
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その13:出会いがあれば“別れ”もある ◆“別れる”理由 気に入って行きつけとなったBARとは、長い歳月をかけて大切に付き合う方だ。あまり“浮気”はしない。長い店だと30年余も通っている。だが、ひと頃よく通っていたのに、何かのきっかけでそのBARへ足が遠のいて、最終的には「縁」が切れてしまうことがある。私の場合も、さまざまな理由で、いくつかのBARとは縁が切れた。 例えば、当初はサラリーマンの懐でも行きやすいBARだったのに、その後、チャージが普通のBARとはケタ違いに高くなってしまったような店。そこの店のカクテルがいかに美味しくても、いかに雰囲気の良い店でも、残念ながら、僕には遠い存在だし、あまり行きたいとは思わない。 他にも特定のBARと“別れた”理由は、不明朗な会計の店/サービスを伴わない意味不明のチャージ・サービス料を取る/常連とそうでない客との差別的な接客/付き出しの工夫のなさ(何年経っても毎回同じ)/口の軽さ(他の客にすぐしゃべる)/トークの面白無さ(成長が見られないこと。真面目一徹はいただけない)などいろいろある。 このような店とは残念だけれど、ある時点で「縁」を切った。こちらの懐にも限界がある。うわべだけの義理でいつまでも付き合う時間も、もったいない。払った金に見合うものがなければ、別れるしかない。 ◆疎遠になる理由 「別れる」とまではいかないが、疎遠になることもある。20年近く通う、何軒かの馴染みのBARには従業員であるバーテンダーが何人もいて、そういう方々は何年かの厳しい修業の後、独立して自分のお店を持たれる。それはそれで個人的にもとても嬉しいことなので、独立の際にはもちろん、お祝いを持ってお邪魔する。 しかし、その後もずっとその新しい店に通い続けるかどうかは分からない。私の残りの人生の時間にも、懐にも限度はある。1カ月にBARに行ける回数等を考えると、今後も付き合っていくBARの数は自ずと限られる。新しく出来た店とのお付き合いも大切だが、やはり、20年、30年と通い続けてきた馴染みのBARとの付き合いや、マスターとの人間関係を僕は守っていきたいと思っている。 だから、新しいBARとはだんだん疎遠になることが多い。それはそれでやむを得ないし、店側に理解してもらうしかない。むしろ、新しいお店のマスターには、プロフェッショナルとして、これから20年、30年とそのBARへ通い続けてくれる、新たな常連客をつくる努力をしてほしい。 独立するというバーテンダーには、うらんかんろはよくこう言う。「BARの数も昔と比べると格段に増えている。それに対して客の数はそう増えていないし、客が使える予算も減っている。だから、客に選ばれるためには自分の店のウリが必要だよ」と。しばらくして再びそのBARを訪れた時、若きマスターがその「ウリ」を見つけ出していたら、嬉しくなって、機会があれば再訪してあげたいという気になる。 マスターが嫌で新しい、若いBARと疎遠になる訳ではまったくない。むしろその後もずっと気にかけているくらいだ。しかし、義理堅さだけではもはや“等距離外交”は難しい。残りの人生を考えると、私はおそらくは、新しく生まれるBARの常連とはなり得ないと思う。 ◆クレームをつける時の覚悟 訪れたBARの客への接客・サービスや料金等で、万一、貴方が「無礼だ」「目に余る」「おかしい」ということがあれば、その場で堂々と、かつ紳士的にクレームをつければいい。その場で言わずに、後で言っても店側とかえってトラブルことが多い。 また、私の経験を振り返っても、言うべきことをその場で言わないと、結局後で後悔するというパターンが多かった(だから、やはり今言わねばならないということは、必ず言うことにしている)。 クレーム言うときは、その店の扉を「二度と開けないくらいの覚悟」も要る。まっとうな対応をしてくれたとしても、やっぱり気まずくなってつい足が遠のき、そのうちまったく行かなくなるということも少なくない。ただ、クレームを付けられて、店側が初めて気付くことだってある。マスターが従業員であるバーテンダーの振る舞いに気が付かないということだって、ある。 ◆客に見放された店はいずれ淘汰される 紳士的に問題点を指摘すれば、普通の店ではまっとうな対応をしてくれるはずだ。私の場合、「あの時言ってくださって、本当に良かったです。言ってくださらなければ永遠に気が付かないままでした」と感謝されることもあった(その店とは20年後の今も、良好な関係が続いている)。 まっとうな対応をしないBARであれば、そういう店は見限ればいい。最近は客のレベルも上がってきている。ネットを通じた口コミも充実している。そういう店はネットに評判を書かれて、そういう事実が伝わり、いずれ客(大衆)に見放されるだけだ。店には客を教育する責任があると同様に、客にも店のことを思い、言うべきことを言ってあげる必要がある。うらんかんろは、指摘すべきはきちんと指摘して、「いいBAR」を育てることが大切だと信じている。【その14へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/03
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その12:会計について ◆座っている席で支払う場合が多い 日本国内のオーセンティックBARでは、カウンターやテーブルなど貴方が座っている席でチェック(=会計)をして支払い、席を立つという店が最近は多数派になってきた。だが一方、現在でも、カジュアルなBARなどを中心に、レジで支払うというスタイルの店もなお少なからず存在する。席で支払うか、レジで支払うかの比率は、7:3か、8:2くらいだろうか…。 欧米では、オーセンティックBARが街場にほとんどなく(大衆的なパブは多いが)、BARはホテルに併設されていることが多い。会計スタイルは、BARでもパブでも、請求書の総額に10~15%のチップを加えた金額をテーブルの上に置いて、席を立つという方式が多い。ただし欧米のパブや一部のホテルBARでは、注文するたびに支払う「キャッシュ・オン・デリバリー」(COD)というシステムをとっている店(結構格式ある店でも!)も多いので、要注意だ。なお、「COD」のパブでは基本的にチップは不要だが、気持ちだけを置いても断られることはない。 日本のBARで、席かレジかどちらで支払うのかが分からない場合、「お支払いはどちらで?」と店側に尋ねてみてもいいが、普通は聞くまでもない。周りの(常連客らしき)客がどのように支払うかを観察すればいい(周囲の観察は外国でも役立つ!)。なお日本でも、アイリッシュ・パブ、イングリッシュ・パブを銘打っている店では「COD」方式が主流だ。 ◆支払いはスマートに お勘定を頼むときは、タイミングを見計らいたい。マスターやバーテンダーさんが忙しくしていれば、少し待ってあげるくらいの余裕や優しさがほしい。店内が騒々しくて声が届きにきければ、タイミングをうまく見つけて、目が合った時に左右の指で×印を作って見せればいい。 支払いは紳士らしくスマートにいきたい。笑顔で「きょうはご馳走様でした!」と感謝の言葉もひとこと添えたい。貴方がバーテンダーから紹介してもらったBARや、貴方がこの「うらんかんろの日記」を参考にして選んだ「いいBAR」のほとんどは、明朗会計のはずだ。 貴方が見せられる勘定書は日本の場合、明細を明記してある場合と、総額を書いた切れ端だけという場合の2通りある。いずれの場合も「チャージ」や「サービス料」といった料金が含まれることが多い(もちろん、チャージやサービス料を一切とらない店もある)。もし万一、貴方が「チャージ」や「サービス料」に不可解、不愉快な思いを抱いたとしても、それは店の経営方針だから仕方がない(この問題は別の機会に考えたい)。 もちろん明らかに不明朗な会計だったり、法外な請求だったりした場合は、紳士的にクレーム言うのは構わない。ただし、警察に駆け込んでも「民事不介入」ということで何もしてくれないし、お金が返ってくることは、まずない。 ◆チャージ、サービス料について 「チャージ」は国際的にも日本だけの独特の料金システムで、一種の「サービス料」「席料」のようなものと言われるが、その定義・解釈はBARの数だけあると言ってもいい。日本では「チャージ」を取るBARが多数派である。 サービスに自信があるなら、はっきりと「サービス料」と名乗って取ればいいが、「チャージ」という定義・解釈の曖昧な言葉を使うのは、ある種の後ろめたさなのかもしれない。もちろん、「ノー・チャージ」をうたい文句にしているBARも結構あるし、「チャージ」を取らないBARのサービスが悪いということでは断じてない。 BAR好きの酒呑みの中には、うらんかんろも含めてチャージを「不可解な料金」と思っている人も多いだろう。しかし、それが世のオーセンティックBARの多数派である以上、また1杯で長時間席を独占して粘るような、マナー知らずの輩(やから)がBARからなくならない以上、「席料」という意味でのチャージ料金がなくならないのはやむを得ない(私はもし自分でBARを開く場合には、「チャージ」という曖昧な言葉は使わずに、はっきりと「サービス料」と明示し、その料金も200~300円程度にするつもりだが…)。 なお、チャージをとるBARでは普通、おしぼりが出て、1品くらいの「付き出し(おつまみ)」が付く。しかし時たま、チャージやサービス料をとりながら、おしぼりもなく、付きだし(1品)もまったく出ないというBARに出会うことがある。この店にとってのサービス料とは一体何の対価なのか、ただあきれるしかない。貴方がこういう店に出会ったら、2度と行かない方がいい。不明朗会計でなおかつ低サービスのBARは、客側が排除していくのが業界全体のためにもなるだろう。 ◆チャージは1000円以下のBARを選ぼう もし貴方がBARを選ぶなら、チャージは原則として1000円以下(できれば500円以下が望ましい)の店をお勧めする。チャージを1500円以上取る店もあるが、そういうBARでは、「サービス料」という名目で別途、総額の10~20%の料金を併せて取る店が多い。チャージを取りながら、サービス料も取る。では、「チャージっていったい何に対する対価なのか」「サービス料の2重取りではないか」という批判的な声もよく聞く。 残念ながら日本では、誰が発案したのか知らないが、こういう不可解な商慣習が一部でまかり通っている。だから在日外国人たちはオーセンティックBARよりもノー・チャージのパブに行きたがる。そういう高額のチャージやサービス料を取る店が「いいBAR」であったためしは個人的にはほとんどない(店側から「セレブな気分」にさせられ喜んでいる一部の評論家たちや雑誌は、そんな店を「いいBARだ」と持ち上げているが、本当に酒呑みを愛しているBARはそういう経営方針はしない)。 だがこういう疑問や批判を、消費者(客)側からBAR業界の団体に投げかけても、まともに取り合ってくれることはまずないだろう(「個々の店の経営方針には立ち入りません」と言われるのがオチだ)。1人の客として、店を選別していくしかない。 もし、ガイドブック等で良さそうなBARを見つけても、1000円を超すチャージ料のほかにサービス料までも取るような店なら、初心者の貴方は行かない方が賢明だ。いずれにしても、「チャージ」という不明朗な料金システムが存在している限り、日本のBARはいつまで経っても「国際的なスタンダード」にはなれない。それは、私も含め日本のBAR業界の発展を願っている多くの愛好家たちにとっても、とても残念なことだ(「チャージ」の問題については、06年12月2日の日記で詳しく考察しています。ご参照を)。 ◆明朗会計の店かどうかを見分ける 繰り返しになるが、日本のBARの場合、会計の際なぜか勘定書明細は見せずに「合計金額が記された切れ端」しか客に見せないところが多い。そういう店はほとんどの場合、チャージが加算されている。勘定書明細を客に見せない理由については、「明朗会計だという信頼関係が客との間にあるので明細まで見せることはない」という暗黙の了解が浸透してきたからと言われるが、そういうルール(暗黙の了解)をいつ誰が決めたかは知らない。 私は、会計の公正さに曇りがないのなら、勘定明細を見せる・見せないという些細(ささい)なことは問題にしない。長年通い慣れた馴染みのBARなら信頼があるので、今さら明細を問う必要もない。しかし残念ながら極めてまれに、「(明細を)見せてください」と求めて確認してみたら(=客には当然の法的権利)、不可解な加算を見つけることがある。 個人的経験では、チャージ、サービス料とは別に、「チャーム」というまるでスナックのような料金を加算していたり、ウイスキーの水割りを頼んだら、水(ミネラル)代は別料金で付いていたりしたこともあった。不可解、不明朗な料金請求には、その場できちんとクレームをつけることが大切だ。クレームを付けてもまぁ、「うちはこういう店なんです」と開き直られるのがオチだが、言うべきことは言わねばならない。 そして、貴方がおかしいと思えば、そういう店には2度と行かなければいい。そういう店だということを口コミで教えてあげればいい。「1人の客を失えば10人の客を失うことになる」とあるマスターが言っていたが、まさにその通りだろう。そういう不明朗、不可解なことをする店は、遅かれ早かれ客から見放され、淘汰されると僕は信じている。【その13へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。・こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/02/01
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その11:バーテンダーとどう接するか ◆言葉づかいは丁寧に、見下した物言いは論外 BARのマスターやバーテンダーの年齢は千差万別だ。老舗BARなら人生の先輩でもある、60代、70代でも現役という方ものも珍しくない(現役最高は88歳だ!)。比較的新しい店ならそれに合わせて、マスターも25歳~30歳くらいと、貴方より若いこともある。さらに、マスターが貴方より年上だったとしても、そのBARで働くバーテンダーさんたちは、貴方よりは年下ということもある。 しかし相手の年齢がいくつであれ、そのマスターやバーテンダーがプロであることには変わりはない。彼らは日々誇りを持って仕事に打ち込んでいる。貴方は1人の人間として、言葉を交わす際は、その道のプロには敬意を忘れてはいけない。 たとえ、貴方がどんなに社会的なステイタスが高くとも、どんなに収入を得ていようとも、当然のことだが、職業には貴賤はない。たとえお店の方が明らかに年下であったとしても、目上の人と話すような丁寧な言葉遣いを心がけたい。ことさら敬語を使う必要はまったくないが、決して見下したようなものの言い方はしてはならない。 もっとも、これはどんな職業の方と接する時にも言えることだ。要は、良識ある普通の社会人としての振るまい、言葉遣いをすればいいのである。繰り返し言うが、BARは紳士・淑女の社交場である。丁寧なしゃべり方を聞いて不快感を持つ人などいない。貴方は「マナーのいい素敵な紳士」と店側の記憶に長く残るに違いない。 ◆「Bartender」という言葉 ところで、僕たちが何気なく使っている「Bartender(バーテンダー)」という呼び方は、どういう意味で、いつ頃生まれた言葉なのか。「Bartender」は見ての通り、「Bar(横木)」と「Tender(見張り人、世話人、相談役)」を組み合わせて生まれた言葉である。1930年代の米国内で定着した言葉だが、その起源はそれ以前の「西部開拓時代(1860~1890年)」の宿場にさかのぼると言われる。 「Bar(横木)」とは、西部開拓時代に各地にあった「道の駅(宿場)」の酒場で、酒樽と客を仕切った「横木」のこと(「道の駅」で馬をつないだ「横木」のことという説も)である。「横木」は、マナーの悪い客が酒樽から勝手についで盗み飲みをするのを防ぐ意味合いもあった。そしていつしか、宿場で休息し、酒を飲むことを「Barで飲む」、その後、酒場そのものを「Bar」と言うようになったという。 「Tender」はそのBarの見張り人、すなわちカウンターのなかで客の世話をする店主や従業員のことだった(米国とは少し違うBAR文化を持つヨーロッパでは、「Bartender」という言い方もするが、「Barman」「Barkeeper」などと言うことが多い)。 ◆家族以上の頼れる存在 しかし、「Tenderが持つもう一つの意味「相談役」こそが、うらんかんろは現代におけるBartenderの存在の大切さを象徴していると思う。米国のあるBARでの話だ。ある晩、男が独りでやって来た。彼は仕事で大失敗し、会社も解雇され、愛する人にも捨てられた。 そして、Bartenderにいろいろと悩みを打ち明けた。Bartenderは彼の話し相手となり、その話(悩み)をじっくりと聞いてやった。そして励ました。「たとえ破産しても、生きている限り人生はやり直せる。恋愛なんて、生きてる限りこれからいくらでもできるじゃないか」と。 その10数年後、立ち直って仕事にも成功した彼が、再びそのBARにやって来た。そして、かつて悩みを真剣に聞いてくれたBartenderに対して、「実は10数年前のあの夜、貴方に話を聞いてもらうまでは、私は自殺するつもりでいた。最期の1杯を飲むつもりで来ていた。でもあの時、貴方にいろいろ話を聞いてもらい、励ましてもらったおかげで(自殺を)思いとどまることができた」と涙ながらに話したという。Bartenderとは、ある意味、家族以上に素晴らしい、頼れる存在なのである。 ◆BARには「バーテン」はいない バーテンダーのことを「バーテン」と呼ぶ人が、時々いる。「いる」と書いたが、日本では昔はそう呼ぶ人の方が多かった。かつてオーセンティックBARなど日本国内にほとんどなかった時代、バーテンダーはいわゆる「水商売」に生きる一員として見下され、「バーテン」と呼ばれた。その言い方には、「水商売」全体を見下すニュアンスがにじんでいた。 現代では、客においしい「酒」をつくり、「ホスピタリティ」を与える職業として、バーテンダーは皆、自分の仕事に強い誇りを持っている。Barのマスターやバーテンダーの一部には「いやぁ、バーテンでもいいですよ」と言う人もいるが、「バーテン」は蔑称と受け取るバーテンダーも多い。 貴方はゆめゆめ「バーテンダー」を「バーテン」と呼ばないでほしい。敬意を込めて「バーテンダー」と呼んであげてほしい。そして、友人や同僚などが「バーテン」と言ったら、「その言い方は間違いだ」とそっと教えてあげてほしい(ちなみに女性バーテンダーのことは男性と区別して、最近は「バーテンドレス」と呼ぶこともあるが、まだあまり一般的ではない)。 ◆バーテンダーと馴れ馴れしくしてはいけない バーテンダーと仲良くなるのは楽しい。仲良くなれば、接客も違ってくる。時には美味しいお酒の「おこぼれ」にご相伴(しょうばん)できることもある。しかし店の営業時間内は、バーテンダーはすべての客と平等に接しなければならない。貴方といくら仲が良くても、貴方がどんなに金払いのいい上客でも、カウンターに並んだ客は、社長もヒラも皆平等だ。常連客だからと言って特別扱いはできない。 だから、忙しい時間帯はもちろんだが、たとえ余裕のある時間帯であっても、営業時間中である限り、マスターやバーテンダーとあまり馴れ馴れしくするのはやめたい。友達のような口をきいたりするのも避けたい。そんな行為をすれば、かえって迷惑になる。 貴方がどんなにマスターやバーテンダーと仲良くなっても、店の中ではあくまで「1人の客と店側の人間」という立場を守りたい。店と客は、どんなに常連であっても「一線」を守る方が良い関係が長続きすると僕は信じている。 ◆お店の方に「1杯どうぞ」はいいか BARでは時々、常連客がマスターにビールなどのお酒を勧めている光景を目にする。オーセンティックBARでは、マスターやバーテンダーは酒を勧められても、断ることが多い。客の前で飲むのを美しい所作ではないと考えるバーテンダーもいる一方で、普段からよく客と一緒に飲んでいるマスター(独りでお店を営んでいる人が多い)もいる。 常連客が、素直な感謝の気持ちを込めて、「1杯どうぞ」と勧めたい気持ちも僕は分かる。結論としては、この問いかけに対しては、いいとも悪いとも言えない。その店のマスターの考え方一つだ。「断らない方なら勧めても構わない」としか言えない。 ただし、絶対に「1杯どうぞ」と勧めていけない場合もある。そのマスターがマイカーで通勤していることを貴方が知っている場合は、厳禁だ(帰途にタクシーを使う場合は別だが)。夜に飲めば、どんなに酒に強いマスターでも、朝まで血中アルコールは残る。飲酒運転は犯罪だ。万一、マスターが帰りに検問にかかったり、事故を起こしたら、知っていて勧めた貴方も罪に問われる。店との良好な関係もそこで終わりになる。そういう悲劇だけは絶対に避けたい。【その12へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/30
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その10:席でのマナー(3) ◆全面禁煙の流れは自業自得の部分も 「BARには紫煙が似合う」と言われていたのはもう過去の話だ。世界的な禁煙・嫌煙の流れもあって、愛煙家には厳しいご時世だ。BARでもタバコ呑みは煙たがられ、小さくなっている。日本国内でも、店内禁煙の酒場も最近では時々見かけるようになってきた(世界的には英国内やフランス、オランダ、スウェーデン、ニューヨーク州など米国内の22州、台湾などはすでに酒場やレストランでは全面禁煙となっている)。 喫煙禁止の広がりはある意味、これまで周りにまったく気遣いもせず、好き放題にスパスパやってきた報いだろう。だが、うらんかんろは実は、たまにタバコを吸う喫煙者である。 だからという訳でもないが、BARからタバコを全面的に追放するのは行きすぎのような気がする。そこまで、禁欲的に、健康第一的な世の中=人生もつまらないと思う。人生には「ある程度の害毒」が存在することも知ることは必要だ。 だから、日本のBARが全面禁煙にならないためにも、貴方が喫煙者であればちょっとしたマナーを心掛けたい。店側にも、非喫煙者に思いやりを持ってほしい(分煙も一つの方法だろう)。JTのCMじゃないけれど、貴方がマナーを守り、BAR経営者の意識が変われば、今後も店内での「共存」はできるに違いない。 ◆タバコは周りの人に断ってから まず、そのBARにいる客が全員吸っていない場合は、マスターに確認してから吸いたい(ひょっとして全面禁煙のBARかもしれない)。もし禁煙でなかったら、吸うのはOKだが、カウンターでは必ず隣客に断ってから吸うこと。それが基本マナーだ。 貴方が「吸ってもいいですか?」と隣客に尋ねて、「困ります」と言われることはまずないだろう。だが、万一そう言われたら、残念だけど我慢しよう。貴方に吸う権利があるのと同等に、隣客にも受動喫煙の被害に遭わない権利がある。「店が認めてるじゃないか!」という気持ちも分かる。しかし、今は店内のルールをすべて経営者が決められるという時代ではない。公共の空間である以上、「他人に迷惑をかけない」「他人を思いやる」というのが基本である。 吸う場合も店内の空調(風)の流れに注意して、吸わない人の方へ煙が流れたら、席を替わるくらいの心遣いをしたい。言わずもがなだが、タバコを口にくわえ、吸いながら店に入って来るなど論外だ。無自覚にプカプカ吸いたい放題をやっていては、いずれ日本もBARでの喫煙が法律で禁止されるだろう。そうならないためにもマナーを守ろう。 ◆シガー類やパイプ煙草はNG これには反論もあるだろう。現に、シガーやパイプ煙草を認めて、店内で販売もしているBARもある。「店が認めているんだから、吸ってどこが悪い」という意見もあって当然だ。しかし、シガー類やパイプ煙草は、匂いがきついために、貴方はよくても周りには迷惑になる。おまけにシングル・モルトやワインの、せっかくの味や香りを台無しにする。 シガーやパイプ煙草は、普通のBARでは控えるのが、うらんかんろは「良きマナー」だと思う。普通のタバコの煙なら何とか我慢できるという人でも、シガーやパイプ煙草は迷惑千万であることが多い(うらんかんろもシガー類やパイプは御免だ)。店も客も「公共の空間である」ということを忘れてはいけない。最近では「シガーBar」と銘打って、葉巻をおおっぴらに吸えるBarもある。吸いたい人はそこへ行けばいい。 ついでに言えば、上記のような理由でヘビー・スモーカーやシガー(またはパイプ煙草)スモーカーのウイスキー評論家、ワイン評論家=著名な評論家でも結構いる=による味の評価や意見というものを、僕はほとんど信用していない。シガー等の香りをかぎながら、ウイスキーやワインの芳醇な香りや味や香りをまっとうに、客観的に評価できるとはとても思えない。 たとえ評論家ではなくとも、1人の酒呑みとして考えても、香りを楽しむものを味わいながら、別の香りで打ち消すのは邪道以外の何ものでもない。シガーを吸いたければ、シガーだけの時間にして、モルト・ウイスキーやワインを飲む際は、それに専念すべし。 ◆店内での携帯電話使用など論外 さすがに最近は、店内で傍若無人に携帯で話す輩(やから)は減ってきた。しかし、それでもそんな「基本のキ」すら知らない馬鹿は相変わらず見かける。「携帯電話は、かかってきたら店の外に出て話す」。これが基本だ。 できれば、店内での待ち受け中はマナーモードにしたい。そしてマナーモードにした携帯は本体だけでカウンターの上には置かないこと(ケースに入っている場合は許そう)。机の上でガタガタ震える音は他人には耳障りでしかない。 隣席の客が、席で携帯で話し始めたらどうするか。基本は出来る限り、お店の人から注意してもらうこと。貴方が直接注意するのはできるだけ避ける。直接注意した後、「(口のきき方が)生意気だ」などと逆襲され、ケンカになることだってある。そうなれば店にも迷惑だ。お店の人がなかなか注意してくれなかったり、注意の効果がなかったら、直接注意するのもやむを得ない。その場合も、言葉遣いはできるだけ丁寧に。 ◆写真は撮っていいのか 今では、ほとんどの携帯電話にカメラ機能が付いている。ブログやミクシイでBARやお酒をテーマに書いている人も多いから、最近は、BARでもよくお酒のボトル(ラベル)やカクテルの写真を撮っている人をよく見かける。店側も暗黙の了解で認めているところが多い。 言わずもがなだが、写真を撮る時は(とくにカウンター席では)店側に「写真撮ってもいいですか?」と、断ってから撮るのが大人のマナーである。お酒やグラス(カクテル)やバック・バー(ボトルを並べている棚)の写真なら、ダメという店はまずないと思う。そして一度店側の許可をもらったら、次回からは(マスターが貴方のことを覚えてくれていたら)その都度断る必要はないだろう。 極めてまれに、「写真はお断りしています」というマスターもいるが、そういう時は素直に従うしかない(「写真NG」は、店のPRを雑誌などで積極的にはしていない店に多い)。どうしても撮りたければ隠し撮りをするしかないが、後でトラブった場合は自己責任である。 ◆フラッシュはたかない ボトルやカクテルの写真を撮る場合は、必ずフラッシュ機能は止めて撮ろう。ピカピカ光るのは他の客に迷惑であるうえに、フラッシュをたくとラベルは反射して見にくくなる。カクテルは撮れても周りの風景が真っ黒に沈んでしまい、かえっていい写真にはならない。ノー・フラッシュで撮る方が圧倒的に綺麗に撮れる(なお、一緒に行った仲間との記念写真は、フラッシュ可だが、撮る回数は1、2回にしよう)。 店内のライティングがとても暗いBARで、とてもノー・フラッシュでは映りそうにないという場合は、最近は簡単かつ良質の写真補正ソフト(しかも無料でダウンロードできる!)もある。とりあえず撮ってからパソコンに取り込んで、パソコン上で明るさを補正するという方法もある(とは言っても、限度はあるが…)。 うらんかんろの場合は、小型のマグライト(携帯用懐中電灯)=サイズは長さ8cm、直径1cm=と、ライトを立てる角度可変スタンド(折り畳み式)をいつも鞄に入れている。店内が暗い場合は補助光(スポットライト)として使っているが、これは結構役に立つ。皆さんも一度お試しを。【その11へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/28
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その9:席でのマナー(2) ◆長居は無用 BARは長居するものではない。氷が溶けて水っぽくなるほどだらだら飲むのもよくない。2杯、3杯飲み続けて、気が付けばカウンターは満席状態。カウンターの後ろのテーブル席では、カウンターが空くのを待っている客もたくさんいる。でも貴方は、隣客との話がはずんでもう1杯、もう1杯と杯を重ねる。そんな姿は決して美しくはない。 当然、会話ばかりを続けて1杯だけで長居するのも無作法だ。1杯~2杯で2時間も居座ったり、営業時間が過ぎてまで粘って飲んだりも論外だ。貴方は「嫌われる客」としてリストアップされるだけだ。 世界中でも日本だけの「チャージ」という不可解な料金システムは好きではないが、地価の高い都会の盛り場では、貴方の席のスペースにも店側に税負担(固定資産税)がある。1杯だけで延々と居座れては店にとってはたまらない。そんな不届きな客が存在するために、「席料」としてチャージがなくならないのなら、やむを得ない。 ◆1杯約20分を「目安」に 昔、とある老舗BARの老バーテンダーに言われた言葉を今も忘れない。「酒場では、無駄口をたたかず、ささっと2杯ほど、酔っぱらわない程度に飲んで、ささっと帰るのが、格好いい酒呑みだ。BARという空間を独占してはいけない。BARで飲む幸せは、1人でも多くの他人と分かち合うべし」と。 うらんかんろは特別の理由がない限り、1軒のBARでは2杯までとしている。そして1杯を飲むのに約20分余、2杯なら約45分くらい。3杯飲んでも1時間くらいを目安にしている(なお、そのBARのトータルの滞在時間は、次のドリンクを注文するまでの間やバーテンダーがつくる時間もあるので当然、1杯だと約30分、2杯で1時間弱、3杯なら1時間半弱という感じになる)。 酒場での飲み方でもう肝要なことは、もう一つ。「酔っぱらって他人に迷惑をかけない」ということ。酒場は酒を楽しむところで、酔っぱらうところでない。酔っぱらいは、声が大きくなり、他人にからみ、足元はふらつく。あげくの果てにゲロする輩もいる。そんな酔っぱらいほど醜い、恥ずかしい、迷惑な存在はない。酔っぱらって絡む、ゲロを吐くまで飲むなどは論外だ(どうしても我慢できずにゲロを吐きたければ、便所に行って便器を抱いて吐くべし)。 ◆飲んでも飲まれるな 神戸にかつて、コウベハイボールという伝説的なBARがあった。河村さんというマスターは怖い人だった。飲み過ぎて酔っぱらってきた客には、お代わりは認めなかった。「きょうはもうダメ! もう帰りなさい!」。そう言って、酔客を叱り、たしなめた。 うらんかんろは、酔っぱらってスツール(背の高い椅子)ごと転倒して後頭部を打ち、救急車で運ばれた客を見たこともある。酔っぱらって他の客に絡んで、注意をした店の人を殴り、警察に連れて行かれた客も知っている。うらんかんろは、そういう客(「客」とも呼ぶ資格もないが)には、軽蔑はしても、決して同情しない。大怪我をして仕事に穴を開けるのも、警察の留置場で一晩過ごすのも、それは自業自得というものだ。 店や他の客の迷惑を考えてみればいい。想像してみよう。貴方のゲロを掃除する人のことを、救急車を必至で呼ぶ人のことを、床に着いた血を洗う人のことを、壊れた椅子を自腹で修理する店の人の気持ちを…。BARで飲みたければ、想像力の働く大人でありたい。 ◆自分の適量を知り、ペース配分を うらんかんろも酒を飲み始めた頃、飲み過ぎて少し醜態をさらしたことは何度かあった。そういう姿を翌朝思い出し、自己嫌悪に陥った。しかし、人間は学習しなくてはならない。自分が正常に飲めるペース、限度(アルコール総量は人それぞれで違う)というものを貴方は知っておかねばならない。うらんかんろも学習した。そしてここ20年ほどは、BARで酔いすぎて不覚になったことは、一度もない。 貴方には、そういう醜い酔っぱらいには決してなってほしくない。自分の適量を知り、ペース配分を考えながら飲み、明日も美味しくお酒が飲めるように、「そろそろ限界かなぁ」と思うちょっと手前でやめておくのが一番だ。酒は、独りで家に帰れる余力を残して楽しむものだ。 言わずもがなだが、酔ってグラスを倒して割るのも論外だ。どんなに高価なグラスを割ったからと言って、店に1個しかないアンティークのグラスを傷つけたからと言って、グラス代を請求する店はまずないだろう(そんな客に高価なグラスを使ったのは、店側のミスだ)。 店側は、グラスが割れることも計算して、収支計画を立てている。割られて困るような貴重なグラスは、酔った客には使わない方がいいということを、店側も学ぶだろう。しかしもし仮に、酔って割ったのではなく、単なる過失で割ったとしても、次回その店を訪れる際にはお土産を持って謝りに行くような紳士でありたい。 かつての老舗BARのマスターやバーテンダーには、マナーに厳しい方が多かった。うらんかんろは、そうした方々から多くを学んだ。そして、いつかそうした方々に誉められるような、いい酒呑みになろうと誓った。貴方もぜひ格好いい、大人の酒呑みになってほしい。 ◆お酒は残していけないか 頼んだお酒は、最後まで(できれば美味しそうに)飲んであげるのが、つくってくれたバーテンダーへの礼儀だ。しかし、どうしても体調が悪くて飲みきれないこともある。そういう時は無理に飲まずに、残していい。無理に飲んで酔い潰れられた方が店には迷惑だ、金を払っているのは自分(客)だから、卑屈になることはまったくない。ただし残して帰る際、「残してすみません、ちょっと飲み過ぎてしまって…」とひとこと言い添えるのが大人のマナーだ。 うらんかんろも、どうしても飲み干せない場合は、バーテンダーさんに詫びて残すこともある。時には、あまりお勧めはしない方法だが、残りを含めるだけ口に含んでトイレへ行き、洗面所で口から流してしまうこともある(飲んだように体裁を繕うのは、いちおう見栄を張っているから…(笑))。理想を言えば、頼んだお酒は残さないように、体調を考えながらゆっくりとしたペースで飲むのが一番だ。【その10へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/26
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その8:席でのマナー(1) ◆ショート・カクテルはだらだら飲まない ショート・カクテルを、カウンターで1時間近くもかけてだらだら飲んでいる人を、時々見かける。ショート・カクテルは冷やしたカクテル・グラスに入れて供される。BARで供される飲み物でも、最も華やかで美しい。しかし、ひとたびグラスに入った後は、どんどんぬるくなっていく。 ぬるくなったショート・カクテルほど美味しくないものはない。せっかくバーテンダーが心を込めてつくってくれたのだから、感謝と敬意の気持ちを込めて、冷たく、美味しいうちに3口か4口(時間にして15~20分以内に)で飲みきるのが美しいマナーであり、エチケットだ。 ショートを3~4口でなんてとても飲めないという、お酒にそう強くない方は「ロング(スタイル)でお願いします」と告げよう。すると、バーテンダーさんはコブレットなどのロング・グラスに氷を入れて、時にはソーダなどで割って出してくれる(なお、カクテル・グラスを持つ際は、足の部分を親指と人差し指の先でつかみ、中指で台座の部分を抑えて安定を保つ。カクテルが入っているボウルを持つと体温で温まってしまうので、触らないこと)。 ◆むやみに他の客には話しかけない BARにやって来てカウンターで飲む理由は、人によって様々だ。一人で来る人もいれば、カップルもいる。グループもいる。知らない客に話かけられても構わないという人もいるだろうが、話しかけられたくない客やカップルもいる。BARでは基本的に、隣席の客にむやみに話しかけるのはよくないマナーだ。 他人の話の中に、もし自分の興味をひく話題が出てきたとしても、隣のグループ客の中に顔見知りがいたとしても、そこは我慢しよう。いきなりその会話に入っていくのはマナー違反。BARでは誰にでも、プライバシーを邪魔されない権利と、仲間うちだけで静かに酒を楽しむ権利がある。 ただし、マスターやバーテンダーから、「この方は、****の*****さんなんですよ」と紹介されたら、礼儀正しく挨拶して、話し相手になろう。その人物との会話から、思わぬ発見や知識を得て、得をすることだって珍しくない(ビジネスパートナーを得ることだってある)。BARとはそんな場所である。また、どうしても話したければ、直接ではなく、マスター経由で取り次いでもらって相手の意向を聞いてみよう。 ◆BARでのナンパは論外 BARのカウンターに1人で飲みに来ている女性客に、酔った勢いで声をかけている輩(やから)を時々見かける。言わずもがなだが、見知らぬ女性がすぐ隣で独りで飲んでいたとしても、決していきなり声をかけてはいけない。ましてや馴れ馴れしくしたり、口説いたりしてはならない。 BARは女性をナンパするところではない。女性客も“出会い”を求めて1人で来ている訳ではない(時にはそういう人がいないではないが…)。BARがそういう場所と思っているなら、貴方は変な映画の見過ぎだ。「1人で静かに飲みたいと思っているのに、変な男がしつこく声をかけてきて…いやだわ」と思われ、最悪の場合、その女性客はこのBARに「二度と来たくない」と思うだろう。客を失いかねない店からは貴方は嫌われて、「要注意人物」の烙印を押されるのがオチだ。 ◆奢ったり、奢られたりは? もし、同じ常連客と同じBARで2度、3度出会って、向こうも貴方の顔を知っていて、挨拶でもしてきたら、言葉を交わすのもいいだろう。相性が合ったら、「1杯、僕から」と奢ってあげるのもいい。しかし、その相手が女性であったとしても、それでお近づきになろうなんてすぐには考えない方がいい。後で「オレの女にちょっかいを出したな」なんて、ヘンな男が出てこないとも限らない。くれぐれも慎重に、慎重に。あとは自己責任である。 付け加えて言えば、「1杯いかが?」と逆に他の客から勧められたら、どうするか。「いい客」からの申し出かどうか分からなければ、マスターの目を見ればいい。目がイエスかノーかをきっと教えてくれるだろう。でもマスターが頼りにならないと思ったら、最終的には貴方自身が決めるしかない(その「1杯」にいかなる思惑があるかは分からない。後で高い代償を払うかもしれないが、それも含めて自己責任)。 ◆大声でしゃべらない、騒がない BARは静かにお酒を楽しむ場所だ。貴方だけの空間ではなく、他のお客さんと共有するパブリックな空間だ。この「入門講座」ではさまざまな細かいマナー(=BARの掟)に触れてはいるが、要は、「他の客にも店にも迷惑をかけない」「不快な思いをさせない」ことさえ守ればいいのである。 しかし常連の一部には何を勘違いしているのか、自分の家のように振る舞い、大声を出してしゃべり、大声で笑ったり、机を叩いたりし、あげくの果てはマスターに友達同士のようなぞんざいな口をきく客もいる。マナー違反であることは言うまでもない。貴方は決してそんな客にならないでほしい。 自分の声の大きさには、意外と気が付かない人が多いものだ。とくにグループで飲みに来た場合は要注意だ。集団で語り合うとつい声は大きくなる。グループの中には、声の大きい人が一人や二人はいるかもしれない。一人で静かに飲んでいる他のお客さんに迷惑をかけるような行為は、慎みたい。そんな友人がいたら、貴方は逆に注意してあげるべきだろう。以前にも書いたが、大勢でワイワイ騒ぎたければ、居酒屋やスナックへ行けばいい。 ◆カウンターに肘(ひじ)を突いてはいけないか これには両論がある。「肘は突いてはいけない」というマスターもいれば、「カウンターが混んでいない時は、肘くらい突いてもらって、リラックスしてもらってもいいですよ」というマスターもいる。だから一概には言えない。 昔は、京都サンボアの先代マスター(故人)や神戸の老舗BAR「ギルビー」(今は閉店)のマスターのように、「カウンターに肘はつかない!」と注意する怖いマスターもいた。しかし今では、肘をついたくらいで怒るマスターもそういない。しかしだからと言って、貴方はそんな風潮に甘えないでほしい。肘をついたり、ほおづえをついたりしながら飲む姿は決して美しいものではない。酔いすぎてカウンターに寄りかかって、挙げ句の果ては寝てしまうなどは論外だ。 カウンターでは、できれば背筋を伸ばし、綺麗に格好よく飲みたい。そして、店が混んで来たら、椅子を寄せる(詰める)などの心遣いもほしい。余談だが、京都サンボアの先代マスターは「店に入ってきたら帽子やマフラーはとる!」「(付き出しの)南京豆の殻は(灰皿ではなく)下へ落とす!」(=店ではそういうルールだった)などと口うるさい方だった(こういう頑固マスターも少なくなった)。 ◆マスター(バーテンダー)を独占しない マスターとしゃべりたくてそのBARへやって来る常連客は多い。だから、マスターはつら~い人気者だ。カクテルをつくりながらも、たくさんの客の話し相手をつとめなければならい。 しかし、マスター(バーテンダー)も聖徳太子じゃない。1人で同時に多数の客の話し相手はできない。カクテルの注文を受けて、シェイカーを振っている時はおしゃべりをする余裕はない。客と話だけしていても儲からない。酒を売らなければバーテンダー(従業員)に給料も払えない。だから店が忙しい時は、貴方の前にやってきたマスターに、待ってましたとばかりに話しかけ、ずっと独占するのはよくない。 他の客の様子も見よう。店の空気も読もう。貴方以外にもしゃべりたい客がいるかもしれない。忙しい時は、1対1の会話はせいぜい10分以内にとどめよう。それが優しさというものだ(ただし、開店直後など客があまりいない、余裕のある時間なら、精一杯独占して話をしても構わない)。 ◆お酒を真剣につくっている時は話しかけない バーテンダーはグラスを洗うなど何かの作業をしている時でも、話しかけたら大抵の場合、応えてくれる。しかし、シェイカーを振ってカクテルをつくっている時や、ミキシング・グラスでバー・スプーンを回している最中(マティーニなどをつくる際)などは、全神経を集中しているので、話しかけるのはやめたい。 「作業中でも話しかけてもらって構わない」というバーテンダーもたまにいるが、バーテンダーだって人間だ。神経の集中を乱されるのはイヤに決まっている。だから、真剣にカクテルをつくったりしている時はやはり、シェイキングが終わるまで待つような優しさを持ち合わせたい。 なお、カウンターに座る客の話の内容は、たとえ小声であってもバーテンダーには意外と聞こえているものだ。職業柄の習性で、彼らは無意識に耳の神経を集中させている。だから客の話し声はイヤでも聞こえてくる。貴方がこそこそしゃべった他人の噂話や悪口だって、意外と聞こえている。カウンターではそういうことも承知で声の大きさや話す内容には注意しなければならない。 ◆満席の時は席を空ける オーセンティックBARでは、常連客はもちろん、BAR好きの人はカウンター席で飲みたいものだ。しかし、人気があるBARのカウンターは週末などすぐに満席になる。もし自分がそのBARのカウンターで最初の方に座った先客であった場合、満席になってきたら席を空けて、待っている客に譲ってあげよう。 BARの経営者はある意味、客の回転率を上げることで生計を立てている。ノーチャージのBARであっても、客の回転率が上がった方がいいに決まっている。だから1人の客が長々といることより、次々と客が代わる方が有り難い。貴方がもし本当にそのBARを愛する客ならば、そういう心遣いも必要だ。 貴方が1時間以上そのカウンターに座っていて、すでに2~3杯飲んでいるのであれば、満席になったら、次の客に率先して席を譲ってあげよう。貴方は店からも感謝され、席を譲られた客からも喜ばれる。そして貴方は「良い客」としてマスターに一目おかれる。カウンターはそのBARを愛するみんなのもの。貴方がBARを愛するなら、そういう大人になりたい。【その9へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/24
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その7:カウンターでの話題 ◆まずは会社や仕事は忘れよう BARのカウンターに座ったら、とりあえず会社や仕事の話は忘れよう。居酒屋では、仕事のグチや上司の悪口は酒の肴になるかもしれないが、BARではそういう類の話は野暮というものだ。酒もまずくなる。BARは、美味しいお酒や会話を楽しむ非日常の世界。日常の象徴である会社や仕事の話題を口にすれば、永遠に非日常空間には浸れない。 ◆お店の人とは何をしゃべったら…? BARに行き慣れていない(あるいは初めて行った)貴方は、カウンターの目の前に来たバーテンダーと何をしゃべったらいいのか迷うに違いない。そんな時にはまず、例えば、貴方が訪れたそのお店をどこで知ったのかを、マスターやバーテンダーさんに話してみるのがいい。「BARの初心者であること」もはっきり伝えよう。 「****(雑誌名)で紹介されているのを見て…」「BARに詳しい友だちに教えてもらって…」「Bar****のマスターに紹介されて…」「ネットで検索していたら、たまたま出合って…」等々、きっかけはさまざまだろうが、それが会話の糸口になる(貴方が初めての人だと知っている店側も、実は、自分の店の存在をどうやって知ったのかを知りたがっている)。 目の前のバック・バーの棚にある様々なお酒(ボトル)のことを話題にすることも無難だ。ボトルを指さして「あれは何のお酒ですか」と尋ねたり、「ジンって何から作られているのですか? ウオッカとの違いは何ですか?」「ワインとシェリーの違いは何ですか?」と聞いてみるのもいい。 また、「お店で人気のカクテルは何ですか?」「お酒に強くない女性にも飲みやすいのはありますか?」「モルトに挑戦したいんですが、初心者へのお勧めはありますか?」とか具体的に尋ねてみてもいい。バーテンダーは客との会話も商売だ。あれこれ質問されることをいやがる人はまずいない。何かを尋ねたら、そこからまた会話が発展するはずだ。 ◆他の常連客のことを話題にするのはやめよう たとえ貴方がそのBARに何度か来たことがあったとしても、他の常連客のことを話題にするのは避けた方がいい。もし貴方が、自分がいない場で話題をされていると想像すれば、貴方だってあまりいい気分ではないはず。悪口やうわさ話ではなく、誉め言葉であっても避けた方がいい。誉めたいのなら、次回本人と出会った際に直接言えばいい。その方のうわさ話をしていたら、実は、その本人が店にいてずっと話を聞かれていたなんて気まずい事態にならないとも限らない。 ◆政治・宗教の話題はNG BARではとくに、思想信条にかかわる政治や宗教の話は絶対にやめた方がいい。結論の出る話でもない。BARは思想信条を戦わせる場でも、宗教勧誘の場でもない。政治を議論し始めるととめどなくなり、激論となり、ケンカに発展することも珍しくない。声が大きくなり、周囲のお客のひんしゅくを買う。 また、特定の宗教を熱心に語ると、信者勧誘と誤解されて敬遠されるだけ。逆に特定の宗教に批判的なことを言った場合、もし店の客にその信者がいれば気まずくなる(マスターが信者である可能性だって、ある)。何度も言うが、BARは静かに、楽しくお酒を味わう空間である。政治や宗教は極力持ち込まないのが賢明だ。 ◆スポーツ、芸能、旅の思い出、故郷… 逆に、BARでの話のテーマにぴったりなのは、スポーツ、芸能(ゴシップ系)、芸術(映画や美術、文学など)、自分の趣味(趣味の内容にもよるが…)、旅の思い出、故郷の話など。この辺りは一応無難だ。ただし、無難だと言っても、自分が嫌いなチームや嫌いな芸能人の悪口はNG。相手がそのチームや芸能人のファンだとも、客にファンがいないとも限らない。 関西のBARだと芸能人やプロ選手らに遭遇することはほとんどないが、東京では店に芸能人やタレント、プロスポーツ選手が来ていることが少なくない。「ある芸能人の悪口を言っていたら、その本人がカウンターにいた」という笑えない話も聞いたことがある。くれぐれもご用心を。 ◆自分の仕事や商売にからめるな 「ひとつ頼みがあるんだけどねぇ…」「これイチオシ商品なんだけど、できればためしに買ってみてくれない」などと、BARで時々、自分の仕事にからめて、商談まがいの話をしている輩がいる。言われた相手はちょっと困ったような顔をしている。貴方が一緒に飲みに行く相手が会社関係以外の場合、常連客も含めBARで出会う人たちには、さまざまな職業や肩書の方いるはずだ。 仕事も、地位も、性別も、国籍も関係なく、一緒に楽しく飲める。それがBARの醍醐味だ。会社での地位や権限だって、本人の個人的な経済状態だって、1人ひとりみな違う。そこに仕事(ビジネス)上の利害、経済的利害をからめてしまうと、時には貴重な友人関係が崩れ、美味しい酒もまずくなる。BARという空間では、個人的な仕事の利害は持ち出さないことが肝要だ。 ◆下ネタは嫌われる 居酒屋などには、酔うと下ネタを連発するオヤジが必ず1人や2人はいる。うらんかんろも、実は下ネタは決して嫌いではない(笑)。だが、オーセンティックBARは下ネタを肴に盛り上がる場所ではない。気の利いたジョークなら喜ばれるだろうが、下ネタは時と場所を選ぶ。 もし調子にに乗って下ネタを連発すると、貴方は店側や周囲の客にひんしゅくを買い、嫌われることは間違いない。場合によってはマスターから「店の雰囲気を壊さないでくれ」と怒られる羽目になる。ジョークや駄洒落ならまだしも許されるだろうが、下ネタはやはり、居酒屋やスナックの方がよく似合う。くれぐれもご注意を。 ◆お酒やBAR関連の情報は店と共有しよう 貴方がもし全国、いや世界各国のBARやお酒や酒屋さんについて、相当詳しくなったとする。そういう場合は、貴重かつ役立つ情報ならばもったいぶらずに、馴染みのBARのマスターやバーテンダーさんに教えてあげよう。店の人たちも、ありとあらゆるお酒の知識がある訳ではない。全国各地のすべてのBARや酒屋さんについて詳しい訳ではない。 「**県のBAR****はこういう店でしたよ」「***というお酒屋さんではいま*****を安売りしてますよ」「*****の蒸留所はこんなところでしたよ」「****蒸留所のHPでは、ネット通販限定の珍しいモルトが買えますよ」などと教えてもらえると、バーテンダーだって人の子だから、とても嬉しいのだ。 もし、貴方が海外の蒸留所を訪れることがあったら、写真を見せてあげよう。パンフレット類を持って帰ってきてあげよう(できれば相手が気を遣わない程度のお土産も買ってくれば、喜ばれること間違いない)。パソコンや外国語が得意であれば、時にはマスターに代わって、海外から珍しいお酒を取り寄せてあげよう。そうした関係を築くことでBARとの連帯感が生まれ、マスターからの信頼も厚くなる。 ◆他の店との比較はしない BARのオーナーやマスターは、自分のBARを最高の店にしようと日々努力している。しかし、そのBARにはそのBARなりの掟(おきて)や流儀があることも事実だ。そうした流儀がもし貴方の好みに合わないからと言って、「あそこの***というBARではつくってくれたんだけどなぁ…」「***というBARでは、何でもハーフ(・ショット)で飲めたのになぁ…」「定休日は*曜日がいいんだけどなぁ…」などとお店の人の前で、他店と比較してグチを言うのはやめよう。 どのBARのマスターだって、他の店と比較されることはあまり気分のいいものではない。できるだけそのBARの良い部分を育ててあげよう。もし不満な点があれば、「他の店では…」という言い方ではなく、「こんなことしてくれたら嬉しいんだけど…」と言い方をソフトに変えてみよう。建設的な提案であれば、マスターは取り入れてくれるかもしれない。でもそうは言っても、やっぱり流儀(商法)は変えないBARもある。その流儀がどうしても貴方に合わなければ、その店とは別れて、他のお気に入りの店をまた見つければいいのである。【その8へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/22
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その6:お酒の基礎知識 ◆最低限の知識は持っていた方がより楽しい BARに行くために、お酒の知識はどの程度持っていればいいのか。世界中には、プロでも覚えきれないくらいたくさんの種類のお酒がある。そして、お酒を組み合わせてつくるカクテルも、オフィシャルなものだけでも2千種類以上はあり、1980年代以降に世に出たオリジナルなカクテルも加えれば、おそらく1万は超すだろう。 素人である僕らに、そんなに多くの知識は必要ない。詳しいに越したことはないが、プロのバーテンダーと同レベルになるのは、どだい無理な話だ。だが、うらんかんろとしては、BARという空間を楽しみたい方には、これから紹介する知識くらいはぜひ、頭の片隅にでも入れておいてほしいと思う。 知識偏重もよくないが、少しばかりの知識があれば、貴方のBARライフはより楽しいものになる。最低限の基礎知識を持っていれば、カウンターでさらに美味しくお酒が飲めて、マスターやバーテンダーとの会話ももっと弾むことは間違いない。 ◆お酒の分類 大きく分けてお酒には、造り方によって醸造酒(酵母の発酵作用を用いて造る)、蒸留酒(発酵によってできた酒をさらに蒸留して造る)、混成酒(醸造酒や蒸留酒を原料にして果実や薬草、香料、糖類などを混ぜて造る)の3種類がある。 醸造酒の代表的なものは、ワイン、ビール、日本酒。蒸留酒の代表的なものは、ウイスキー、ブランデー、ジン、ウオッカ、ラム、テキーラ、焼酎。混成酒はリキュールが有名。 ◆BARで出される主なお酒 一般的なオーセンティックBARでは、以下に紹介する(1)から(7)までと(11)はまずどこでも置いている。(8)~(10)はある店とない店があるだろう。とくに(10)のシェリーは置いていない店が多い。(12)日本酒と、(13)焼酎はオーセンティックBARではあまり期待しない方がいい。ただし、マスターにこだわりのある方なら、意外とたくさん置いている店もある。 (1)ビール 言わずと知れた大麦とホップで造るお酒。ホップを加えた麦汁を発酵させ、低温で熟成させる。ほぼ全世界で生産されており、ラガー、エール、ケルシュ、ヴァイツェン、ピルスナー、スタウト、黒などいろいろな種類がある。 (2)ウイスキー 大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀類を原料として、糖化→発酵→蒸留という過程を経て、木樽の中で熟成させた酒。産地や原料、製造法などの違いによって、スコッチ・ウイスキー、アイリッシュ・ウイスキー(「ジェイムソン」などで有名)、アメリカン・ウイスキー(「フォアローゼス」などのバーボンで有名)、カナディアン・ウイスキー(「カナディアン・クラブ」などで有名)、ジャパニーズ・ウイスキー(サントリー、ニッカ等々)などがある。 製造法で言えば、大麦だけを原料に造るモルト・ウイスキーと、穀類だけを原料に造るグレーン・ウイスキー、モルト・ウイスキーにグレーン・ウイスキー(穀類だけを原料にしたウイスキー)を混ぜて造るブレンディド・ウイスキーがある。モルト・ウイスキーには、特定の樽だけを瓶詰めしたシングル・モルト(「シングル・カスク」とも言う)と、複数の樽のモルトを混ぜたヴァッティド・モルト(「ピュア・モルト」とも言う)がある。 飲み方には、ストレート、トワイス・アップ(ウイスキーと水が1:1)、ロック、水割り、ソーダ割り(ハイボール)、ハーフ・ロック、ホットなどさまざまなバリエーションがある。どういう飲み方で飲むかは自由だが、スコットランド・アイラ島産のスモーキーな香りのウイスキーや、バーボン・ウイスキーにはソーダ割りが合うように、そのウイスキーに向いた飲み方というのも確かにある。バーテンダーに「お勧めの飲み方は?」と尋ねるのが一番いい。 (3)ブランデー 主に白ブドウ原料のワインを蒸留して、樽に入れ、熟成して造る。主な産地はフランス、ドイツ、イタリア。仏コニャック地方で造られたブランデーはとくに「コニャック」と呼ばれている。 (4)ジン 大麦、ライ麦、トウモロコシなどを糖化、発酵させたあと蒸留し、ジュニパー・ベリー(ねずの実)、コリアンダー、アニス、キャラウェイなどの香味(スパイス)原料を加えた酒。独特の香りはこの香味原料に由来する。カクテル材料のベース(一番多く使う材料)としてよく用いられる。主な生産国はイギリス、ドイツ、オランダ。 (5)ウオッカ 大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモなどを原料とし、糖化・発酵させたあと蒸留し、活性炭などで濾過した無味無臭の酒。ジンとともにカクテルのベースによく用いられる。主な生産国はロシア、ポーランド、フィンランド、アメリカ、カナダ。 (6)ラム サトウキビを原料とする蒸留酒。風味と色によって、ホワイト、ゴールド、ダークの3種がある。主な生産国はキューバ、メキシコ、プエルト・リコ、ジャマイカ、ドミニカ、トリニダード・トバゴなど。ジン、ウオッカと並んでカクテルのベースによく用いられる。 (7)テキーラ 竜舌蘭の一種を発酵させ、蒸留した酒。テキーラもラムと同様、熟成の度合いでいくつかの種類がある。主な生産国はメキシコ。テキーラもカクテルのベースに欠かせない。ジン、ウオッカ、ラム、テキーラなどの度数の強い無色の酒を「ホワイト・スピリッツ」とも言う。 (8)スパークリング・ワイン(シャンパン) ワインに酵母を加えて瓶詰めし、瓶内で2次発酵させて炭酸ガスを溶かした酒。フランス・シャンパーニュ地方で造られるスパークリング・ワインのみ「シャンパン」と名乗れる。イタリアでは「スプマンテ(Spumante)」、スペインでは「カヴァ(Cava)」と呼ばれる。 (9)ワイン 果物(一般的にはブドウ)の果汁を発酵させたあと、樽熟成させた酒(主に赤ワイン。白ワインはタンク熟成が多い)。大きく分けて、原料にブドウの果肉部分だけを使う白、皮と種子も一緒に使う赤、赤ワインの果汁がピンク色になった頃、果汁を分離し、さらに発酵させ、タンク熟成するロゼがある(単純に白と赤をブレンドしてつくるロゼ・ワインもある)。 (10)シェリー ワインにブランデーを加えて造る酒。「酒精強化ワイン」とも言われる。辛口から甘口までさまざまな種類がある。辛口のフィノ、マンサニージャ、中口のアモンティリヤード、オロロソ、甘口のペドロ・ヒメネスなどが有名。主にスペインのアンダルシア地方で造られる(現地ではシェリーのことを「ヘレス」と呼ぶ)。日本でも最近はシェリーを専門にしたBARも増えている。 (11)リキュール 一般的にウオッカなどのホワイトスピリッツに果実、花、薬草などを加えて香りを移し、糖分や着色料を加えて造られる酒のこと。アルコール度数は10度台から40度近くまで実にさまざまだが、20度前後が多い。単独で味わうことは少なく、カクテルの副材料としてよく使われる。単独で使う場合は、ソーダ割りにして供されることが多い(ソーダ割りにすればアルコール度数が7~8度に下がるので、お酒に弱い女性でも飲みやすくなる)。 (12)日本酒 酒造米を原料に、麹(こうじ)、酵母を加えて糖化・発酵させて「もろみ」を造り、これを絞って濾過。さらに火入れしたあと、加水しタンクで熟成させた酒(「本醸造酒」とも言う)。醸造用アルコールを加えることが多いが、最近はアルコールを加えない純米酒や、火入れしていない「生酒」、割り水しない「原酒」、長期貯蔵した「古酒」も人気だ。 (13)焼酎 イモ、麦、黒糖、米、蕎麦(そば)などの原料を使って造る蒸留酒。造り方やアルコール度数の違いで甲類と乙類の2種があるが、甲類は一般的には「ホワイトリカー」と呼ばれ、僕らが普段飲んでいる焼酎は乙類の方。焼酎の中でも、米麹を原料とし、一次もろみから直接蒸留し、カメで貯蔵・熟成して造る酒は「泡盛」(あわもり)と呼ばれる。泡盛は主に沖縄県や琉球諸島で造られている。 ◆カクテルについて BARでは前述したような単一の酒だけでなく、さまざまな材料を元にして、バーテンダーにつくってもらうカクテルも、もう一つの主役だ。実際、オーセンティックBARでは単一の酒よりもカクテルが飲まれる比率が多い。 カクテルはジン、ウオッカ、ラム、テキーラ、ウイスキー、ブランデーなどのベースの酒に、リキュールや果汁、ソーダなどを加えてつくる。そのバリエーション(種類)は本当に、星の数ほどある。 有名なカクテルには、ジンベースの「マティーニ」「ジン・トニック」「ギムレット」「シンガポール・スリング」、ウオッカベースの「モスコー・ミュール」「ソルティ・ドッグ」「スクリュー・ドライバー」「ブラディ・メアリー」、ラムベースの「ダイキリ」「マイタイ」、テキーラベースの「マルガリータ」、ウイスキーベースの「マンハッタン」、ブランデー・ベースの「サイド・カー」などがある。 つくり方で言えば、ほぼすべての材料をシェイカーに入れて、バーテンダーが振って混ぜ合わせる「シェイク」、ミキシンググラスという大ぶりのグラスの中で材料を混ぜ合わせて、別の飲むためのグラスに移す「ステア」、客が飲むグラスの中で直接つくる「ビルド」などがある(材料とクラッシュドアイスをミキサーに入れて混ぜてつくる「フローズン」スタイルもある)。 アルコール度数は一般的に言って、カクテルグラスで供される「ショート・カクテル」は強く、大きめの長いグラスで供される「ロング・カクテル」は弱めである(もちろん例外もある)。もし貴方がアルコールにあまり強くないけれど、ショート・カクテルを飲みたい時は、ベースの量を調整することもできるので、バーテンダーさんにお願いしてみよう(ただし、配合の割合を変えると、「もはや同じ名前のカクテルとは言えない」として、嫌がるバーテンダーさんもいるかもしれないが…)。【その7へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/20
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その5:注文の仕方(2) ◆飲む順番は「ある」とも「ない」とも BARで飲むお酒の「飲む順番」に、とくに決まりがある訳ではない。一般的には「飲み口の軽いものから重いものへ」「あっさりしたものからしっかりした味わいのものへ」「アルコール度数の低いものから高いものへ」と流れていくのがいいと言われる(うらんかんろの場合、1杯目はスコッチウイスキーのハイボールかジン・リッキー、ジン・トニックというのが多いかな…)。 だがそれは、あくまで一般論。要は、貴方の好きなものを好きな順番で飲めばいい。何度も言うが、お金を払うのは貴方だから。実際、いろんなBARのマスターやバーテンダーに聞いてみても、「好きな順番で飲んで、全く構いませんよ」と言う人が多い。 ただ、もし貴方がお酒は飲めるけどそんなに(アルコールには)強くないという場合は、やはり「弱いものから強いものへ」が無難だ。1杯目にマティーニ(「カクテルの王様」と言われるが、度数でも王様だ=とても強い)などは頼まない方がいい。 うらんかんろからのお願いはただ一つ。BARは居酒屋ではない。居酒屋での第一声の如く、「とりあえずビール!」と言う芸のないことだけはやめたい。せっかくだから、BARではプロのバーテンダーしか作れない素晴らしいカクテルや、BARでしか飲めない極上のウイスキー等を1杯は味わってほしい。 ◆うんちくは垂れない・しったかぶりはやめる 貴方がもしBARに通い慣れて、お酒に相当詳しい方であったとしても、お酒のプロであるマスターやバーテンダーの前で、うんちくを垂れるのはほどほどにしよう。知ったかぶりをして、さぞ通い馴れているような振りをして、一緒に行った友人や後輩の前で見栄を張るのもやめよう。プロはすぐに貴方の「化けの皮」をはがしてしまう。とどのつまり、貴方は恥をかくだけだ。 カウンターでうんちくを自慢げに垂れる他人を見ることほど、醜い、つまらぬ絵はない。うんちくを長々としゃべっても、相手はうんざりするだけだし、感心する周りの客も少ないだろう(時に、それは「勘違いの知識」だったということもある)。 唯一、プロがまだ知らない知識や情報(データ)を、謙虚な気持ちで教えてあげることはいい。マスターやバーテンダーがまだ訪れていないBARや蒸留所について、貴方が訪れた際の感想を話してあげたり、写真を見せてあげたりするのはいい。仕入れたばかりの業界情報をそっと教えてあげるも喜ばれることが多い。 ◆他のバーテンダーの創作カクテルを頼んでもいいか 何人かのバーテンダーに聞いたが、ほとんどの方は「正確なレシピがわかっていれば、基本的には構いません。もちろん、まったく同じものはつくれませんがと念は押しますが…」と答えた。うらんかんろも、ガイドブックやパンフレットに載っている別の方の創作カクテルをつくってもらうことがあるが、断られたことは数えるほどもない。 これまでに「それはちょっと…」と断られたおそらく1、2回だけだ。「レシピ通りにつくっても、その方とまったく同じものはできませんし、失礼な気がしますので…」「****さんの『*****』が飲みたければ、ご本人につくってもらった方がいいです」などと言われた。オリジナルの作者と同じ味を求めるつもりなど毛頭なかったのだが、頼まれた方としても、プロとして、あまり心地よいものではないのだろう。 だから、別の方の創作を頼むことはバーテンダーが「構わないですよ」と言っても、頻繁に頼むのもどうかと思う。それなら、そのバーテンダーのオリジナルを頼んであげよう。もちろん、古今東西の長い歴史に生き残ってきた素晴らしいカクテルで、貴方がまだ味わっていないものもまだ数多くあるはずだ。そういうものに目を向けて再発見する方がより面白いかもしれない。 ◆プロに対しては謙虚でありたい お酒の種類やカクテルの数なんて星の数ほどある。毎日のように世界中で新しいカクテルが生まれている。プロのバーテンダーであっても、古今東西すべての酒やカクテルの名前やレシピを把握している人なんて、絶対にいない。知らない酒やカクテルはある。すべての蒸留所の成り立ちを把握している訳ではない。 だから間違っても、「こんなカクテルくらい知らないんですかー?」とか、「****のマスターは知っていたんだけどなぁ…」などというような言葉は、口にすべきではない。貴方の人間としての値打ちが下がるだけ。そのBARでは、もう二度と歓迎されない客になるだろう。 素人である貴方は、かりに知っていたとしても、知らない振りをして教えを乞うぐらいでちょうどいい。もし、本当に貴方がある種のお酒のエキスパートであったとしても、バーテンダーからもし何か聞かれたら答えるという程度でいい。そんな謙虚な姿勢が、貴方を大人の酒飲みにする。 ◆BARでボトル・キープはできるのか オーセンティックBARでは基本的に、スナックやラウンジのようなボトル・キープという制度はない。しかし、時たま「ボトル・キープをやっています」という店も見かけるし、「キープしませんか」というDM葉書も受ける。だが裏話を聞いてみると、お酒のメーカーから抱き合わせで大量に買わされて、やむを得ず「ボトル・キープでもやってさばかないと」というケースがほとんどだ。 しかもキープのお値段は、その銘柄の市販価格の3~5倍。それだけのカネを払っても、次回行って飲むときは、やはり最低1000~2000円くらいのセット料金(水や氷代など)はとられる。貴方はボトルが空になるまでは同じ銘柄のウイスキーを飲み続けないといけない。いろんな種類のお酒を楽しめるのがオーセンティックBARの良さなのに、これでは本末転倒だ。トータルとしてお得なのかどうかもよく分からない。 ボトル・キープができるBARがあったとしても、うらんかんろは決してキープはお勧めしない。勧められても断るのが一番。そんなおカネがあるなら、いろんな酒やカクテルを飲んで勉強するがよし。キープをして飲みたければ、スナックやラウンジに行けばいい。【その6へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/19
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その4:注文の仕方(1) ◆できればメニューに頼らずに オーセンティックBARでは、基本的に飲み物のメニューがないところが多い。「ある」方が少数派である。ただし、用意はしていても、カウンターの上には出していないという店もある。どうしてもメニューを参考に見たければ、あるかどうか聞いてみるのがいい。 もしメニューはあった場合でも、店によってそのスタイルはさまざまだ。「ビール¥600~ ウイスキー¥800~ カクテル¥900~」というような簡単に記したものから、そのBARが出せるほとんどすべての飲み物を、値段とともに詳しく紹介しているところもある。店によっては、壁に掛けた黒板などに「本日のおすすめ」として、いくつかのウイスキーやカクテルを書き出しているところもある。 しかしうらんかんろは、BARではたとえ初めてであっても、「メニューに頼らないで注文する」ことをお勧めする。自分が飲みたいものを店の方に伝えて、探していく時間は、マスターやバーテンダーさんとの会話のきっかけにもつながる。言葉のキャッチボールを通じて、自分がどういうものが飲みたいのかをできるだけ具体的に伝えていけば、バーテンダーはきっと貴方に一番合う飲み物を探し出してくれる。 なお「フード・メニュー」も、ほとんどのBARで用意しているはずだし、店内のどこかに黒板などで掲示していることも多い。ただしオーセンティックBARでは残念ながら、かわきもの程度か、簡単なフード(パスタかサンドイッチ等)しかできないところが多い。BARはあくまで酒が主役であり、本格的な料理を店に求めるのは酷というものだ。料理をメインに楽しみたいなら、ダイニングBARやパブに行くがよし。 ◆知らないことは聞こう 初めてのBAR。貴方は、何を頼んでいいのかよく分からない。お酒と言っても、これまでビールやワイン、焼酎(酎ハイ)くらいしか飲んだことがない。ウイスキーやカクテルと言っても、イメージがよくわかない。でも、知らないことは恥ずかしいことではない。教えられることで新たな知識も増えし、発見もある。 分からないことは何でもマスターやバーテンダーに聞こう。「少し甘くて、さっぱりしたカクテルを」「炭酸のはいった爽やかな感じのを」とか、「しっかりした味わいのウイスキーを」とか、ある程度、希望のイメージを伝えると、お店の方はより助かる。逆に、「彼女の雰囲気に合ったものを」などという曖昧な言い方はバーテンダーを困らせる。 可能であれば、簡単なカクテルブックを事前に1冊購入して眺めてみて、飲んでみたそうなカクテルがあればその名前を伝えてみるのもいい。お酒やカクテルに関してマスターやバーテンダーと話をするのも、BARの楽しさであり、たまらない醍醐味だ。 なお、「カクテルの飾りのオリーブやフルーツは食べてもいいのですか?」という質問を、うかんかんろも時々受けるが、基本的にこれは好きに食べていいし、食べなくてもいい。邪魔なら取って紙ナプキンの上にでも置けばいい。とにかく気になることは何でも、お店の方に聞いてみるのが一番いい。 ◆値段の「目安」もいちおう頭に 初めてのBAR。メニューがない場合、いったい1杯の値段はいくらなんだろうと貴方は心配かもしれない。当然だ。貴方の懐(予算)だって限りはある。ただ、普通のブレンディド・ウイスキーやカクテルなら、だいたいの「目安」はある。前者は安い店なら1杯500円くらいでも飲める。まぁ、普通は1杯700~800円くらいからと考えておいた方がいい。後者は1杯800円くらいから。でも銀座や北新地では1000円が最低ライン、1400~1500円とる店だって少なくない。この「目安」を頭の片隅に覚えておこう。 しかし、銘柄や熟成年数で大きく値段の変わるモルト・ウイスキーやワインなどの場合は、うらんかんろですら確かなことは言えないから、初心者の貴方はもっと不安だろう。実際、値段は店によってかなり違う。同じ銘柄の、同じ熟成年数のモルトでも、ある店では800円、別の店では1500円なんてことも珍しくない。また「オールド・ボトル」という古い時代(1950~80年代)のものなら、値段は時価ということになる。 蒸留所自らが販売しているいわゆる「オフィシャル・ボトル」のモルト・ウイスキーなら、一応値段の目安はある。しかし「ボトラーズ」と呼ばれる独立系販売業者のボトルの場合は、基準があってないようなものだ。一般的には、熟成年数が多いほど値段が高くなる。同じ銘柄の10年物が1杯(40ml)1000~1500円だったなら、20年物は1500円~2500円、30年物なら3500~5000円というのが一つの目安かとも思う。 ◆1杯の値段を聞くのはマナー違反か モルト・ウイスキーを飲み慣れているうらんかんろだって、値段が分からず飲むのはとても不安である。だから、BARで飲む時は「これ、1ショットでおいくらですか?」とマスターに尋ねることが結構多い。値段を聞くことはマナー違反、恥ずかしい行為と思う人もいるかもしれないが、まったくそうではない(勘定を払うのは貴方である)。 実際、これまで何人ものマスターやバーテンダーさんに、「(BARで)飲んでみたいモルトやワインなどの1杯の値段を聞くのは失礼な行為なのか」を尋ねたことがあるが、ほぼ例外なく、「1杯の値段が分からなければ遠慮なく聞いてください。全然恥ずかしいことでも、マナー違反でもありませんよ」という答えだった。 だから、高価なモルトやワイン等の場合は、貴方も安心して値段を尋ねたらいい。そして、お酒の味わい=値打ちと値段の釣り合いを学んでいってほしい。もし、尋ねて答えをはぐらかすマスターがいるようなBARなら、もう見限った方がいい。なお、普通のスタンダードなウイスキーやカクテルの場合は、値段を聞くのはあまり格好いい行為ではない。いっぱしの大人としてBARで飲む貴方は、それはやめよう。【その5へ続く】【おことわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/18
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その3:店へ行く時&店に入ったら ◆服装について BAR(ここで言う「BAR」とはオーセンティックBARを指す)は日常を忘れて、静かな雰囲気で、美味しい酒と会話を楽しむ空間だ。言葉を換えれば、非日常を楽しむ「ハレ」の場所である。オーセンティックと言っても、高級ホテルのカクテル・パーティーではない。だから「ドレス・コード」がある訳ではない。 しかしオーセンティックBARにデビューするということは、貴方はいっぱしの社会人、大人の仲間入りをするということだ。大人の世界には、TPOに合わせた大人のマナー、ルールというものがある。「ハレ」の場所を訪れるからには、TPOに合わせた、常識ある、センスある服装で行きたい。 上はTシャツやタンクトップ1枚、下はジーンズや半パンツにサンダルなんて格好で行っても、日本では高級ホテルならいざ知らず、街場のBARで入店を断われることはまずないだろう。ただし、海外ならスタンダードクラスのホテルのBARでも、入店拒否に遭うこともあるので要注意! だが、たとえ入店が認められたとしても、貴方の品性はその時点で「NGの烙印」を押されている。 別にスーツで行く必要はない。ネクタイ着用でなければならないこともない。しかし、ウイーク・デーなら、やはり「きちんとした服装」で飲みたい(なお土・日も開けているBARにウイーク・エンドに行く場合は、カジュアルな格好=許容範囲はあるが=でも構わない)。 ◆勝手に座らない BARのドアをいったん開ければ、そこは他人の家と同じ。自分の家のように勝手に振る舞うのは許されない。カウンターに幾つか空いている席があっても、勝手に座るのはBARのルール違反である。 貴方が座った席は予約席かもしれない。後から遅れて来るお連れ客のために、店側がキープしている席かもしれない。マスターは常にその夜の客と席の配置のことを考えている。新たな客が来た場合も想定して、「常連なら、とりあえず端っこの席でも我慢してもらえる」「タバコをよく吸われる客ならば、同じく喫煙されてる客の隣に」「まったく初めてのお客さんはここに」などと、あれこれ考えている。 斯様(かよう)に、店側にもいろいろと都合がある。たとえカウンターに誰一人なく、貴方がその夜の最初の客であったとしても、どんなに常連であったとしても、勝手に空いている椅子に座わるのはよくない。マスターやバーテンダーさんの指示があるまで待つのが、BARのルールであり、客のマナーだ。 店に入ったらなるべく、客の入りに関係なく、マスターやバーテンダーさんに「どこがいいですか?」と座る場所を尋ねよう。貴方がそう言えば、初対面であるの店の人は、貴方に対して「とてもマナーのいいお客さんだなぁ」と良い第一印象を持つこと間違いない。BARに馴れてくれば、貴方とお店の方との目と目の会話だけで、座る席が分かるようになる。そういうレベルになれば貴方はもう一人前だ。 ◆最低限の挨拶はしよう 普通の社会生活でも、会社でも、初対面の方には「はじめまして、よろしくお願いします」と挨拶するはずだ。初めてのBARでも同じこと。マスターもバーテンダーも初対面の人だ。店に入ったらまず、「こんばんは」ときちんと挨拶しよう。それが大人のマナーだ。 客に慣れている店の人たちだって、初めての客を前にして、少しは緊張している。「こんばんは」とか「初めてですが、いいですか?」などとちょっと一言話せば、空気は一気に和らぐ。相手との距離もぐっと縮まる。相手も貴方のことを「紳士」として認めてくれる。何事も最初が肝心。気持ちよい挨拶でその夜が始まれば、その後のマスターやバーテンダーとの会話もきっと弾むはずだ。 ◆万一、このBARは馴染めないと思ったら ドアを開けた時の雰囲気で、「ちょっとこの店は合わない、馴染めない、イメージがまったく違う」と思うこともある。うらんかんろにも、そういう時がある。そういう時の選択肢は2つだ。我慢して取りあえずそのBARで飲んでみるか、退くか、である。居てみると意外と良かったなんてこともあるが、いつもそうなるという保証はない。 貴方が明らかに、「(そのBARを)私の好みじゃないなぁ」と思った時には、無理をすることはない。静かにドアを閉じて、礼儀正しくその店を後にすればいい。ただし、立ち去る際には「すみません、(店を)間違えたようです」と言うくらいのエチケットは忘れないでいたい。 言わずもがなだが、もう席に座ってしまってからの「やっぱりやめます」は、いくら何でも不細工なマナーで、御法度だ。決断は早めに。席についてしまったら、とにかく1杯は飲むべし。どんなに貴方に合わない店でも、殺されることはない(笑)。【その4へ続く】【おことわり】写真と本文内容は直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/17
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その2: 「いいBAR」と、どうやって出会うか 都会の盛り場には星の数ほどBARがある。初めての貴方は、どこへ行っていいのか分からない。良い店を見つける方法も知らない。「BARに通い慣れている人は、どうやって最初にお店を見つけるのだろう?」と貴方は不思議に思うだろう。 ご安心あれ。BAR通い30年余のうらんかんろですら、100%確実な「いいBAR選びの方法」など持ち合わせていない。雑誌や口コミなどで店の情報を得て、いざ訪れてみたらがっかり、ということは今なおある。しかし、「いいBAR」と出会う確率を8割程度にまで高める術(すべ)は、ある。例えば以下のように--。 (1)BARに通い慣れた人に教えてもらう 情報が信頼できる人であれば、BARが好きで、あちこちの店に通い慣れている人の口コミ情報は、ある意味一番確かである。ただし、その人と貴方との「店を選ぶ際の趣味の違い」「価値観の違い」もあることを、十分承知しておかなければならない。 (2)信頼できる雑誌や本でお店の客観的な情報をつかむ BARを特集する雑誌やBARをテーマにした本はいろいろあるが、一般的に言って、「お店をよいしょ」する提灯持ち記事が多い。取材でお世話になった分、悪いことはまず書かないから、情報は鵜呑みにできない。そういう中でも、雑誌だとミーツやThe Whisky World、BRIO、エスクワイアー、男の隠れ家、などのBAR特集はまぁまぁ信頼できる(ただし、すべてを信用するなかれ)。 単行本だと、切り絵作家の成田一徹氏の本「to the Bar」(朝日文庫)や達磨信氏の本「日本のグッドBAR」(新潮文庫)で紹介されているBARは、(一部に例外もあるが)ほぼすべてが「いいBAR」だと言えるかもしれない。 (3)信頼できるホームページやサイトから情報を得る サントリーやニッカが自社のHPでやっているBARガイドや、サントリーが出版している「ウイスキー・ボイス」「サントリー・クォータリー」での情報は、ある程度は信頼できる。しかし、店の営業支援=お酒の販売促進を狙って紹介していることも事実で、登場しているすべてが「いいBAR」とは限らない。 また、「ぐるなび」「ホットペッパー」などのグルメサイトは、客寄せが最大の目的。マイナス情報はほとんど書いておらず、当たり外れが大きい(割引クーポンを得られる利点はあるが…)。 (4)一度行ったお店のマスターやバーテンダーから、別の店を紹介してもらう この方法も、紹介してくれるマスターやバーテンダーと、紹介された店との個人的関係の濃淡もあって、当たり外れはある。貴方がどういうBARを好むのかをはっきり伝えて、教えてもらうことが大事だ。 うらんかんろも、地方都市へ出張する際にはよく事前に、馴染みのBARのマスターやバーテンダーに「**県で知ってるBARはありますか?」と尋ねる。彼らは僕の店の好みをほぼ知っているから、かなり的確な情報をくれる(あるマスターは最近だと、「僕はこの店のマスターとは懇意にしているけど、店の雰囲気は、***さんの好みではないかもしれません」とはっきり言ってくれる)。 ただ一般論として、BARのマスターやバーテンダーは同業者の店の悪口は言わない。悪口とまでいかなくても、マイナス面にはまず触れない。特定の店の名前を挙げて、「ここはいいBARですか?」という聞き方をしても、そのマスターはまず当たり障りのないことしか言わないので、割り引いて聞くことも肝心だ。 (5)サイトの口コミやブログでの訪店情報を参考にする 最近はお店を評価するグルメサイト(「食べログ」「アスクユー」「グルメGyaO」など)も増えてきた。そこには、訪店した一般人の生々しい感想が記されていることが珍しくない。ただしマイナス情報の場合は、その人と店側とのちょっとした感情のもつれなどが原因ということもあり、100%信用すべきかは迷うところ。が、そういう部分も承知のうえで読めば参考にはなる(逆に、ベタ誉めなどは「やらせ」じゃないかと疑うことも必要)。 また、うらんかんろのように、個人でブログをやっている人が、訪店の感想を率直に記していることもあり、これもとても役立つ。グルメサイト、ブログ、いずれの場合も、調べる入り口はうらんかんろの場合、「グーグル」か「ヤフー」だ。気になる店の名前を打ち込み、検索すれば、思わぬ情報に出会える。インターネットを活用しない手はない。 (6)雑誌等で会計(値段)が明朗なBARを選ぶ 雑誌などのBAR特集などでは、「2杯飲んだ時の目安」などと値段を明示している場合がある。値段(目安)をはっきりうたっている店には、(例外もあるが)会計が不明朗な店は少ない。すなわち、会計明朗なBARには「いいBAR」も多いのも事実だ。ただし雑誌で紹介されている値段はあくまで「目安」であり、貴方が何を飲むかによっても出費は大きく変わる。値段の張るシングルモルトを飲めば、当然支払いは「目安」よりは多くなる。 加えて言えば、チャージの有無や値段、サービス料の有無(10%とか)を、(会計の前・後を問わず)明示している店を選ぼう。そういう店にはいい加減なところは少ない。なお、チャージを取りながらサービス料も取るというBARもある。これは「チャージの二重取りではないか」だという批判もあるが、この問題については別項で論じたい。 (7)業界団体(NBA、HBA、PBOなど)の雑誌やガイドブック、HPを参考にする バーテンダー業界の団体には、街場のBARがNBA(日本バーテンダー協会)、PBO(プロフェッショナル・バーテンダー機構)、それ以外の団体に分かれる(もちろん、「群れるのは嫌い」として、無所属のマスター、バーテンダーも少なくない)。また、主にホテルのバーテンダーが加盟するHBA(ホテルバーメンズ協会)という団体もある。 NBAやPBO加盟のBARには、オーセンティックBARが多い。接客やサービスの水準も高い店が目立つ。また、各団体は独自にガイドブックを発行しており、参考にはなる。ただし、業界団体に入っている=「いいBAR」とは限らないのも事実で、これも要注意。業界団体に所属してなくとも「いいBAR」はたくさんある。従って業界情報は、あくまで参考という程度と考える方がいい。 (8)とりあえず店に入ってみるのも 街を、とくに盛り場を歩いていると、外観や看板などで気になるBARに出合うことがある。そういう時には、リスクはあるが、とりあえず入ってみるのも一案だ。そして、店に入ってとりあえず1杯頼んでみる。メニューもなく、何を頼んでいいか分からない時は、ブレンディド・ウイスキーの水割りかソーダ割り(ハイボール)かビールを頼むのが一番無難だ(これらを頼めば、ボラれることはほとんどないはず)。 そして、カウンターに座ったら、勇気を出して、できる範囲でマスターやバーテンダーとの会話も楽しんでみよう。そして1~2杯飲んでお勘定を頼んで、店を後にする。1~2杯だとその店での滞在時間は20~45分くらいかもしれないが、店の評価や相性は、「BARに通い慣れてくると、最初の30分くらいの印象でほぼ分かるようになる」という人もいる。全面的には賛成しないが、ある程度は同感だ。 (9)経験こそ宝=財産だ こうしていろんなBARをあちこち巡っていくうちに、貴方は自然と「いいBAR」というのが何かが分かってくる。極端なことを言えば、雑誌等に載っている様々な写真(店の外観、内装、バックバー、カウンター、椅子、グラス、マスターの服装、面構えなど)を見て、そして記事を読めば、「いいBAR」かそうでないかを、かなりの確率で「かぎ分けられる」ようになる。うらんかんろも経験を積んで上達した。「経験を踏まえた直感」も意外と大切で、当たることが多い。【その3へ続く】【おとこわり】写真は本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/16
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【前書きの前書き】 BARという空間をあまり知らない人から、時々、「BARに行って飲む際のイロハを教えてください」と言われることがある。僕だって、BARについて何でも知っている訳ではない。イロハ(基本)を語るなんて僭越だと、これまでは思ってきた。 でも僕ももう、30年余、BARという空間と付き合ってきた。まだ全国制覇とはいかないが、各地のいろんなBARを巡ってきた。数多くのマスターやバーテンダー、バーテンドレスと出会ってきた。訪れたBARの数で言えば、相当なものになる。 もうそろそろ、少しくらい偉そうなことを言ってもいいんじゃないかと…。そして同時に、これから少しずつ「大人の階段」を上って、さまざまなBARと出会っていく若い世代に、BARという場所・空間との付き合い方を語り継いでおきたいとも思うようになってきた。 これから始まる連載「私的BAR入門講座」は、主として、これからBARとの付き合いを始める人たちや、まだBARと付き合って日が浅い人たちを念頭に綴(つづ)ろうと思う。ここで言う「BAR」とは「オーセンティックBAR」のことである。 「オーセンティック(Authentic)」とは直訳すれば「本物の」「真正な」「信頼のおける」という意味であるが、簡単に言えば、(1)カウンターがあって雰囲気も良くて(2)美味しいお酒を楽しめて(3)納得できる料金でまっとうなサービスが受けられて(4)カラオケはなく、接待役の女性もいない--BARのことを言う。 全体の構成が固まっている訳ではないので、全部で何回になるかは、終わってみないと分からない。それを最初にお許し願いたい。この「入門講座」が、これからBARをよりもっと知りたい、BARとの付き合い方を学びたいという若い世代の役に立ち、BARという空間を愛する人が1人でも多く増えることを願ってやまない。 ◆その1(前書き):BARはルールのある公共空間である BARは酒場ではあるが、紳士・淑女の社交場でもある。現代のBARにいつも紳士・淑女がやって来るかはともかく、社交場であることには違いない。そして社交場である以上、そこは公共の(パブリックな)空間である。そこで飲むには当然、ルール、マナーというものがある。 BARはくつろぎの空間。だが、決して自宅のリビングルームの延長ではない。カウンターやテーブル席で、くつろぎ、なごむのもいいが、他人も一緒にいる以上、最低限のマナーは必要である。貴方がBARで飲む時には、これをまず十分わきまえ、忘れないようにしたい。 本当にBARの醍醐味を味わいたければ、本当に旨い酒を心地よく飲みたければ、できれば1人か、多くても2、3人以内で行ってほしい。大人数やグループで行くのは決してお勧めしない。大人数で飲みたのなら、キャパの広いカジュアルなサロンBARやダイニングBAR、あるいはパブのような所へ行けばいい。 大人数で行くと、BARの雰囲気を楽しむというよりも、酒を味わうというよりも、会話をすることが目的化してしまう。また、大人数だと話題が分散し、離れたところに座る仲間に話しかけるため、声が自然と大きくなる。 そして、時として盛り上がって、相乗効果もあって大声で騒いでしまい、周囲のひんしゅくを買うことになる。他の客はBARという空間を楽しみ、酒を美味しく味わうことができなくなる。そういう心配もあって、最近では「5人以上の客はお断り」というBARも珍しくない。 くどいようだが、BARは静かな雰囲気の中、酒や会話を楽しむ場所である。大人数で騒ぎたいなら、居酒屋へ行くかスナックを貸し切るのがいい。BARに足を踏み入れる時は、可能な限り1人か少人数で訪れたい。〈「その2」へ続く〉【おことわり】写真は、本文内容とは直接関係ありません。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/01/14
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